説明

ハチ用毒餌剤

【課題】ハチをより効率的に駆除する毒餌剤を実現する。
【解決手段】本発明に係るハチ用毒餌剤は、殺虫剤及び昆虫成長調節剤からなる群から選択される少なくとも1種と、ハチ誘引物質と、2〜4価のアルコールとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハチ用毒餌剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ハチは日本では約3000種が知られ、そのうち刺咬性の強いハチは約20種と言われている。近年、都市周辺の丘陵地帯等の宅地化が進み、ハチによる人的被害が増大しており、特に殺傷力の強いスズメバチによる被害が多発している。
【0003】
スズメバチの駆除方法としてエアゾール剤等のハチ防除用製品が多く製品化されているが、スズメバチを巣ごと駆除し得る効果的な方法の開発が待ち望まれていた。
【0004】
上記のような、スズメバチの巣を崩壊させる方法として、働きバチに毒餌剤を巣中へ運び入れさせる方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
上記方法では、ハチの幼虫の喫食餌料に殺虫成分を添加した毒餌剤を、ハチの成虫(働きバチ)に、何度も同じ餌場から巣の中へ運び入れさせる。そして、このようにして巣中に運び入れられた毒餌剤が、巣の中に居る幼虫によって喫食されることにより、巣中の幼虫を壊滅させる。そして、ハチの成虫は、幼虫が分泌する体液中に含まれるアミノ酸を栄養源としているので、幼虫が壊滅すると、連鎖的に成虫も壊滅し、結果的に巣全体を破壊することができる(特許文献1参照)。
【0006】
また、超吸水性ポリマーが添加された害虫駆除剤を用いる方法も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
上記方法は、害虫駆除剤中に含まれる超吸水性ポリマーが、成虫と幼虫との餌の授受に際して体外へ放出される体液等の水分を吸収することによって乾燥状態の何十倍〜何百倍もの容積に膨れ上がることを利用する。つまり、超吸水性ポリマーを含む害虫駆除剤を働きバチによって巣内部へ持ち込ませ、その後、喫食成分とともに超吸水性ポリマーを摂取した幼虫等を死に至らせるか、あるいは膨れ上がったポリマーによって巣の物理的な機能を喪失させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−47106号公報(2002年 2月12日公開)
【特許文献2】特開2008−63346号公報(2008年 3月21日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記従来の毒餌剤等であってもハチを駆除することはできるが、ハチをより効率的に駆除する毒餌剤が望まれている。
【0010】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ハチをより効率的に駆除する毒餌剤、並びに当該毒餌剤を用いたハチの駆除方法を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を行った。ここで、本発明者は、ハチ誘引物質の含有量を高くすることができれば、毒餌剤はハチにより良く喫食され、ハチを効率的に駆除できると考えた。しかしながら、上記特許文献1に記載の従来の毒餌剤では、含有成分を均一にするために結合剤を多く含有させる必要があり、ハチ誘引物質の含有量を高くすることには限界があった。
【0012】
そこで、本発明者は、更に検討を重ねた結果、所定の多価アルコールを含有させれば、ハチ誘引物質の含有量を非常に高くできることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
即ち、本発明に係るハチ用毒餌剤は、上記課題を解決するために、殺虫剤及び昆虫成長調節剤からなる群から選択される少なくとも1種と、ハチ誘引物質と、2〜4価のアルコールとを含む。
【0014】
上記構成によれば、上記多価アルコールを含有するため、ハチ誘引物質の含有量を高くすることができる。よって、働きバチや幼虫によって喫食され易い毒餌剤を提供することができるため、ハチをより効率的に駆除することができる。
【0015】
また、上記多価アルコールを用いると、成形する際の混合を均一に行うことができるため、製造効率が良い。
【0016】
尚、特開平8−175910号公報には、アリ用毒餌剤に、溶剤としてグリセリンやエチレングリコールが含まれ得ることが開示されている。しかしながら、アリ用毒餌剤は、ハチ用毒餌剤とは対象とする昆虫が異なるため、その含有成分は大きく異なる。このため、当業者であっても、ハチ用毒餌剤にグリセリンやエチレングリコールを含有させることは容易には想到できない。
【0017】
本発明に係るハチ用毒餌剤では、上記多価アルコールの分子量が、62以上、176以下であることが好ましい。
【0018】
上記構成によれば、ハチ誘引物質の含有量をより高くすることができる。よって、働きバチや幼虫により喫食され易い毒餌剤を提供することができるため、ハチをより効率的に駆除することができる。
【0019】
本発明に係るハチ用毒餌剤では、上記多価アルコールは、グリセリン又はブタントリオールであることが好ましい。
【0020】
上記構成によれば、ハチ誘引物質の含有量をより高くすることができる。よって、働きバチや幼虫により喫食され易い毒餌剤を提供することができるため、ハチをより効率的に駆除することができる。
【0021】
本発明に係るハチ用毒餌剤では、上記ハチ誘引物質が、動物性タンパク質であることが好ましい。
【0022】
本発明に係るハチ用毒餌剤では、上記ハチ誘引物質の含有量が50質量%以上、90質量%以下であることが好ましい。
【0023】
上記構成によれば、ハチにより喫食され易い毒餌剤を提供することができる。その結果、ハチをより効率的に駆除することができる。
【0024】
本発明に係るハチ用毒餌剤は、形態が粒状であることが好ましい。
【0025】
上記構成によれば、上記多価アルコールを含有しているため、誘引剤の含有量を高めることのみならず、毒餌剤を硬くすることなく良好に成形することができる。よって、働きバチが巣の中に良好に運べることに加えて、働きバチや幼虫が通常喫食する食物に近い、食感及び有効成分を有する、ハチに喫食され易い毒餌剤を提供することができる。その結果、ハチを効率的に駆除することができる。
【0026】
更には、本発明に係るハチ用毒餌剤は、柔らかく、粘着性があるため、ハチが食べ残したり、くちばしや体で潰したりした後の粉がハチの体に付着する。このため、より効率良く巣へ毒餌剤を持ち込むことができる。
【0027】
尚、上記特許文献1に記載の毒餌剤では、働きバチに毒餌剤を巣の中に効率良く運び入れさせる観点から、毒餌剤を硬く成形する目的で毒餌剤中に結合剤を多く含有させる。このため、毒餌剤におけるハチ誘引物質の含有量を一定以上高くすることができない。
【0028】
本発明に係るハチ用毒餌剤は、殺虫剤を含んでおり、上記殺虫剤が、ネオニコチノイド系化合物、フェニルピラゾール系化合物、ヒドラメチルノン、及びクロロフェナピルからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0029】
また、本発明に係るハチ用毒餌剤は、昆虫成長調節剤を含んでおり、上記昆虫成長調節剤が、幼若ホルモン用化合物、及びキチン合成阻害剤からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0030】
本発明に係るハチ用毒餌剤はスズメバチ用毒餌剤であることが好ましい。
【0031】
本発明に係るハチの駆除方法は、本発明に係る上記毒餌剤をハチに喫食させる工程を含む。
【0032】
上記方法によれば、上述した、本発明に係る毒餌剤を用いるため、ハチは当該毒餌剤を効率良く喫食することになる。このため、ハチを効率的に駆除することができる。
【0033】
具体的には、例えば、毒餌剤に殺虫剤を含有させた場合には、働きバチは毒餌剤を巣に持ち帰り、巣の中に居る幼虫によって当該毒餌剤は喫食される。その結果、幼虫は死亡することになる。そして、巣における成虫/幼虫バランスが崩れ、成虫、幼虫の個体数が減少して巣は機能不全に陥り、巣の機能が消滅(崩壊)することになる。また、働きバチが当該毒餌剤を喫食すれば、働きバチを死亡させることができ、同様に、巣における成虫/幼虫バランスが崩れ、巣の機能が消滅(崩壊)することになる。
【0034】
更には、例えば、毒餌剤に昆虫成長調節剤を含有させた場合には、働きバチは当該毒餌剤を巣に持ち帰ることになり、巣の中に居る幼虫によって当該毒餌剤は喫食される。その結果、幼虫は、正常な変態ができなくなり、蛹化阻害や脱皮阻害等が起き、成虫まで進む個体数が減少する。そして、巣における正常な成虫/幼虫バランスが崩れ、成虫、幼虫の個体数が減少して巣は機能不全に陥り、巣の機能が消滅(崩壊)することになる。
【発明の効果】
【0035】
本発明に係るハチ用毒餌剤は、以上のように、殺虫剤及び昆虫成長調節剤からなる群から選択される少なくとも1種と、ハチ誘引物質と、2〜4価のアルコールとを含む。このため、ハチを効率的に駆除できる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
〔I〕毒餌剤
本実施の形態に係るハチ用毒餌剤は、粒状のハチ用毒餌剤であって、殺虫剤及び昆虫成長調節剤からなる群から選択される少なくとも1種と、ハチ誘引物質と、2〜4価のアルコールとを含む。
【0037】
本実施の形態に係るハチ用毒餌剤が効力を生じるハチとしては、成虫及び/又は幼虫が動物性タンパク質を喫食するハチが好ましく、このようなハチとして具体的には、スズメバチ、アシナガバチ、クマバチが挙げられ、スズメバチに対して特に効力を生じる。
【0038】
上記スズメバチとしては、例えば、オオスズメバチ、キイロスズメバチ、クロススズメバチ、ケブカスズメバチ、コガタスズメバチ、モンスズメバチ、ヒメスズメバチが挙げられる。
【0039】
上記毒餌剤の形態としては、例えば、粒状、粉末状、ジェル状、ペースト状が挙げられ、好ましくは粒状、ジェル状であり、より好ましくは粒状である。
【0040】
尚、上記「粒状」とは、顆粒状、粒子状、タブレット状等の形状を含み、その硬さは問わない。また、その大きさは駆除の対象となる蜂の種類によって適宜設定すればよい。
【0041】
毒餌剤の形態が粒状であれば、上記アルコールを含有しているため、少量の結合剤で毒餌剤を成形することができ、粒を硬くすることなく良好に成形することができる。
【0042】
このため、上記毒餌剤は、働きバチが巣の中に良好に運べることのみならず、働きバチや幼虫が通常喫食する食物に非常に近い、食感及び有効成分を有する。その結果、上記毒餌剤は働きバチや幼虫によって喫食され易く、ハチを効率的に駆除することができる。
【0043】
更には、上記毒餌剤は、柔らかく、付着性があるため、ハチが食べ残したり、くちばしや体で潰したりした後の粉がハチの体に付着し易い。このため、より効率良く巣へ毒餌剤を持ち込むことができる。
【0044】
[1]殺虫剤
上記殺虫剤としては、駆除対象となるハチを死に到らせることができれば特には限定されないが、例えば、イミダクロプリド、ニテンピラム、アセタミプリド、チアメトキサム、チアクロプリド、ジノテフラン、クロチアニジン等のネオニコチノイド系化合物、アセトプロール、エチプロール、バニリプロール、ピリプロール、ピラプルプロール等のフェニルピラゾール系化合物、ヒドラメチルノン、クロロフェナピルが挙げられる。
【0045】
上記殺虫剤は、通常0.001〜50質量%の範囲内で用いることができ、好ましくは0.01〜20質量%の範囲内で用いることができる。
【0046】
[2]昆虫成長調節剤
上記毒餌剤では、殺虫剤を用いず、昆虫成長調節剤を含有させてもよい。これにより、毒餌剤を巣へ持ち帰る働きバチは毒餌剤を食しても死亡しないため、効率的に巣へ毒餌剤を運ばせることができる。そして、毒餌剤を食した幼虫は、正常な変態ができなくなり、成虫まで進む個体数が減少する。その結果、巣における正常な成虫/幼虫バランスが崩れ、成虫、幼虫の個体数が減少して巣は機能不全に陥り、巣の機能が消滅(崩壊)することになる。
【0047】
上記昆虫成長調節剤としては、例えば、メソプレン、ピリプロキシフェン等の幼若ホルモン用化合物、クロルフルアズロン、ビストリフルロン、ジアフェンチウロン、ジフルベンズロン、フルアズロン、フルシクロクスロン、フルフェノクスロン、ヘキサフルムロン、ルフェヌロン、ノバルロン、ノビフルムロン、テフルベンズロン、トリフルムロン、トリアズロン等のキチン合成阻害剤が挙げられる。
【0048】
上記昆虫成長調節剤は、通常0.0001〜20質量%の範囲内で用いることができ、好ましくは0.0005〜10質量%の範囲内で用いることができる。
【0049】
[3]ハチ誘引物質
本発明に適用可能なハチ誘引物質としては、動物性タンパク質、蜂蜜、ジュース類、醗酵乳酸菌飲料、糖類等が挙げられ、動物性タンパク質が好ましい。
【0050】
上記ハチ誘引物質は、通常1〜90質量%の範囲内で用いることができる。毒餌剤の形態が粒状、粉末状、ペースト状である場合には、ハチにより喫食され易くする観点から、50質量%以上であることが好ましく、50〜90質量%の範囲内であることがより好ましく、50〜80質量%の範囲内であることが更に好ましく、50〜70質量%の範囲内であることが特に好ましい。
【0051】
毒餌剤の形態がジェル状である場合には、ハチにより喫食され易くする観点から、10質量%以上であることが好ましく、10〜60質量%の範囲内であることがより好ましく、10〜50質量%の範囲内であることが更に好ましく、10〜40質量%の範囲内であることが特に好ましい。
【0052】
上記動物性タンパク質としては、例えば、ミールワーム、サナギ粉、蜂雄児粉末、オキアミ、魚粉、バッタや蛾等の昆虫類、牛肉、鶏肉等の肉類が挙げられる。
【0053】
尚、特許文献2には、ミールワーム100部、超吸水性ポリマー50部、デキストリン50部からなる粒状の害虫駆除剤が開示されており、吸水性ポリマーの代わりにハチ誘引物質を含有させれば、本実施の形態に係る毒餌剤と同様に、ハチ誘引物質の含有量が高い毒餌剤を実現できるようにも思える。しかし、上記構成では、多価アルコールを含有していないため、成形が不十分であり、形が崩れ易く、働きバチが巣の中に効率良く運ぶことが困難である。
【0054】
[4]多価アルコール
本発明に適用可能な多価アルコールは、糖類を除く、水酸基を2〜4つ有する化合物である。また、上記多価アルコールの分子量は、62〜176の範囲内であることが好ましい。
【0055】
上記多価アルコールとして具体的には、水酸基を2つ〜4つ有する、炭素数2〜8の化合物が挙げられ、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,2,4−ブタントリオール、ペンタントリオール、ヘキサントリオール、ヘプタントリオール、オクタントリオール、ペンタエリスリット、ソルビタンが挙げられ、グリセリン、ブタントリオールが好ましい。
【0056】
本発明に係る毒餌剤は、このような多価アルコールを、上述した殺虫剤及び昆虫成長調節剤からなる群から選択される少なくとも1種と、上述したハチ誘引物質と組み合わせて含んでいることにより、格別な効果を奏する。このような構成は、本発明者らの創意工夫によって見い出された独自の構成である。
【0057】
上記多価アルコールは、通常1〜70質量%の範囲内で用いることができるが、上記ハチ誘引物質の含有量を高める観点から、1〜50質量%の範囲内が好ましく、10〜50質量%の範囲がより好ましく、10〜40質量%の範囲が更に好ましく、10〜30質量%の範囲が特に好ましい。
【0058】
[5]その他
本実施の形態に係る毒餌剤には、上記成分の他に、結合剤、ジェル化剤、増量剤、防腐剤、酸化防止剤、香料等を更に添加してもよい。
【0059】
上記結合剤としては、デンプン、デキストリン、グリコーゲン、ゼラチン、カラギーナン、アルギネート、小麦粉、寒天、糖類、蜂蜜、セルロース誘導体等が挙げられ、デンプン、デキストリン、グリコーゲン、ゼラチン、カラギーナン、アルギネート、小麦粉、寒天、糖類が好ましい。これらを単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。結合剤の含有量は、誘引剤の含有量を高める観点から、1〜45質量%の範囲内が好ましく、5〜40質量%の範囲がより好ましく、5〜30質量%の範囲が更に好ましく、10〜25質量%の範囲が特に好ましい。なお、本実施の形態に係る毒餌剤が上述したような構成を有しているからこそ、結合剤の量を首尾よく低減し得るということを、本明細書を読んだ当業者は容易に理解する。
【0060】
上記ジェル化剤としては、ジェランガム等の化合物が挙げられ、当該化合物の1種またはそれ以上を併用した組成物が挙げられる。ゲル化剤は、通常、0.01〜50質量%の範囲内、好ましくは0.1〜30質量%含有し得る。
【0061】
上記増量剤としては、上記結合剤や、水が挙げられる。上記防腐剤としては、例えば、チアベンダゾール、ベンゾイソチアゾリン等が挙げられる。
【0062】
上記酸化防止剤としては、例えば、BHT(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール)が挙げられる。香料としては、標的とするハチが嫌がるもの以外であれば何でもよい。
【0063】
[6]製造方法
本実施の形態に係る毒餌剤は、通常の攪拌混合機を使用して、常温又は加温下で、上述した各含有成分を混合し、成形することにより製造することができる。
【0064】
本実施の形態では、上記多価アルコールを用いるため、製剤を行う際の混合を均一に行うことができ、製造効率が良い。
【0065】
〔II〕駆除方法
本実施の形態に係るハチの駆除方法は、本実施の形態に係る上記毒餌剤を、ハチに喫食させる工程を含む。これにより、当該毒餌剤を食したハチの巣を崩壊させることができる。
【0066】
具体的には、例えば、標的とするハチがよく飛来する場所に上記毒餌剤を入れたシャーレ等を置くことにより、ハチが飛来して当該毒餌剤を食したり、巣へ運んだりする。そして、殺虫剤等の効果によりハチを死亡させることができる。
【0067】
より具体的には、例えば、毒餌剤に殺虫剤を含有させた場合、働きバチは毒餌剤を巣に持ち帰り、巣の中に居る幼虫によって当該毒餌剤は喫食される。その結果、幼虫は死亡することになる。そして、巣における成虫/幼虫バランスが崩れ、成虫、幼虫の個体数が減少して巣は機能不全に陥り、巣の機能が消滅(崩壊)することになる。また、働きバチが当該毒餌剤を喫食すれば、働きバチを死亡させることができ、同様に、巣における成虫/幼虫バランスが崩れ、巣の機能が消滅(崩壊)することになる。
【0068】
更には、例えば、毒餌剤に昆虫成長調節剤を含有させた場合には、働きバチは当該毒餌剤を巣に持ち帰ることになり、巣の中に居る幼虫によって当該毒餌剤は喫食される。その結果、幼虫は、正常な変態ができなくなり、蛹化阻害や脱皮阻害等が起き、成虫まで進む個体数が減少する。そして、巣における正常な成虫/幼虫バランスが崩れ、成虫、幼虫の個体数が減少して巣は機能不全に陥り、巣の機能が消滅(崩壊)することになる。
【0069】
また、毒餌剤に、殺虫剤と昆虫成長調節剤とを併用した場合には、上記両方の効果が期待できる。
【0070】
毒餌剤の設置場所は、標的とするハチが飛来する場所であればどこでもよいが、日陰であることが好ましい。
【0071】
尚、本実施の形態に係る方法が効力を生じるハチは、上述した、本実施の形態に係るハチ用毒餌剤が効力を生じるハチと同様である。
【実施例】
【0072】
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0073】
〔実施例1〕
ミールワーム粉末50gと、ヒドラメチルノン1.5gと、デキストリン23.5gとを乳鉢に入れよく混合した後、その混合物にグリセリン25gを添加し、押出し造粒機により、押出し及び造粒を行って、粒状の毒餌剤を作製した。
【0074】
上記毒餌剤は水を添加することなく造粒することができ、得られた毒餌剤は、柔らかく、ハチが食べ易いものであった。また、当該毒餌剤は、形が崩れ難く、働きバチが巣の中に良好に運べるものであった。
【0075】
〔実施例2〕
ミールワーム粉末70gと、ヒドラメチルノン1.5gと、デキストリン14.5gとを乳鉢に入れよく混合した後、その混合物にグリセリン14gを添加し、押出し造粒機により、押出し及び造粒を行って、粒状の毒餌剤を作製した。
【0076】
上記毒餌剤もまた水を添加することなく造粒することができ、得られた毒餌剤は柔らかく、ハチが食べ易いものであった。また、当該毒餌剤は、形が崩れ難く、働きバチが巣の中に良好に運べるものであった。
【0077】
〔比較例1〕
ミールワーム粉末50gと、ヒドラメチルノン1.5gと、デキストリン48.5gとを乳鉢に入れよく混合した後、水を添加せずに押し出し造粒を試みたが粒状に成形できなかった。そこで、上記混合物に水25gを添加して、あらためてよく混合した後、押し出し及び造粒を行って、粒状の毒餌剤を作製した。
【0078】
尚、上記造粒では、水の添加が必要であり、造粒及び乾燥後も水分が残るため、得られた毒餌剤における動物性タンパク質(ミールワーム粉末)の含有量は50質量%未満となった。また、得られた毒餌剤は非常に硬かった。
【0079】
〔実施例3〕
ヒドラメチルノン1g、オキアミ60g、デキストリン10g、チアベンダゾール0.1gを乳鉢に入れよく混合した後、その混合物にグリセリン20gと水8.9gを添加し、よく混練し毒餌剤を作製した。
【0080】
〔実施例4〕
イミダクロプリド1g、サナギ粉55g、デキストリン10g、バレイショデンプン14g、チアベンダゾール0.2を乳鉢に入れよく混合した後、その混合物にグリセリン15gと水4.8gを添加し、よく混練した。混練物を押出し造粒機で、押出し及び造粒を行って直径1.2mmの粒状の毒餌剤を作製した。
【0081】
得られた毒餌剤は柔らかく、ハチが食べ易いものであった。また、当該毒餌剤は、形が崩れ難く、働きバチが巣の中に良好に運べるものであった。
【0082】
〔実施例5〕
クロロフェナピル0.3g、バッタ粉50g、小麦粉10g、寒天10g、チアベンダゾール0.2gを乳鉢にいれよく混合した後、その混合物に1,2,4−ブタントリオール15gと水14.5gとを添加し、よく混練し毒餌剤を作製した。
【0083】
〔実施例6〕
ジノテフラン0.1g、サナギ粉60g、デキストリン10g、バレイショデンプン10g、チアベンダゾール0.2gを乳鉢に入れよく混合した後、その混合物にグリセリン15gと水4.7gを添加し、よく混練した。混練物を押出し造粒機により、押出し及び造粒を行って直径1.2mmの粒状の毒餌剤を作製した。
【0084】
得られた毒餌剤は柔らかく、ハチが食べ易いものであった。また、当該毒餌剤は、形が崩れ難く、働きバチが巣の中に良好に運べるものであった。
【0085】
〔実施例7〕
イミダクロプリド0.2g、オキアミ65g、バレイショデンプン15gを乳鉢にいれよく混合した後、その混合物に1,2,4−ブタントリオール15gと水4.8gとを添加し、よく混練し毒餌剤を作製した。
【0086】
〔実施例8〕
ピリプロキシフェン0.05g、魚粉60g、デキストリン15gを乳鉢に入れよく混合した後、その混合物にグリセリン20gと水4.95gを添加し、よく混練した。混練物を押出し造粒機により、押出し及び造粒を行って直径1.2mmの粒状の毒餌剤を作製した。
【0087】
得られた毒餌剤は柔らかく、ハチが食べ易いものであった。また、当該毒餌剤は、形が崩れ難く、働きバチが巣の中に良好に運べるものであった。
【0088】
〔実施例9〕
ジノテフラン0.1g、サナギ粉40g、蜂雄児粉末20g、デキストリン15g、バレイショデンプン10g、チアベンダゾール0.2gを乳鉢に入れよく混合した後、その混合物にグリセリン10gと水4.7gを添加し、よく混練した。混練物を押出し造粒機により、押出し及び造粒を行って直径1.2mmの粒状の毒餌剤を作製した。
【0089】
得られた毒餌剤は柔らかく、ハチが食べ易いものであった。また、当該毒餌剤は、形が崩れ難く、働きバチが巣の中に良好に運べるものであった。
【0090】
〔実施例10〕
水43.8g、グリセリン20gを混合し、湯浴上でジェランガム1gを添加、溶解させた。これにイミダクロプリド0.2g、サナギ粉10g、蜂蜜25gを加えてよく攪拌してジェル状の毒餌剤を作製した。
【0091】
〔実施例11〕
水53.8g、グリセリン30gを混合し、湯浴上でジェランガム1gを添加、溶解させた。これにヒドラメチルノン5g、チアベンダゾール0.2g、蜂蜜10gを加えてよく攪拌してジェル状の毒餌剤を作製した。
【0092】
〔実施例12〕
水48.85g、グリセリン20gを混合し、湯浴上でジェランガム1gを添加、溶解させた。これにジノテフラン0.15g、魚粉5g、蜂蜜25gを加えてよく攪拌してジェル状の毒餌剤を作製した。
【0093】
〔実施例13〕
水52.89g、グリセリン25gを混合し、湯浴上でジェランガム2gを添加、溶解させた。これにピリプロキシフェン0.01g、ジノテフラン0.1g、蜂蜜20gを加えてよく攪拌してジェル状の毒餌剤を作製した。
【0094】
〔比較例2〕
イミダクロプリドを含有させないこと以外は、実施例4と同様の操作を行い、粒状の毒餌剤を作製した。
【0095】
〔比較例3〕
ジノテフランを含有させないこと以外は、実施例12と同様の操作を行い、粒状の毒餌剤を作製した。
【0096】
〔比較例4〕
サナギ粉50gと、カルボキシメチルセルロース25gと、デキストリン25gとを乳鉢に入れよく混合した後、押し出し造粒しようとしたが、少し力を加えるだけで粉々になり、粒状物を得ることはできなかった。
【0097】
〔比較例5〕
ジノテフラン0.1g、サナギ粉40g、蜂雄児粉末20g、デキストリン35g、チアベンダゾール0.2gを乳鉢に入れよく混合した後、その混合物に水4.7gを添加し、よく混練した。混練物を押出し造粒機により、押出し及び造粒を行って直径1.2mmの粒状の毒餌剤を作製した。
【0098】
〔スズメバチを用いた試験〕
30cmの金網ケージを用意し、その中にコガタスズメバチを所定数放ち、一昼夜馴化させた。次に、毒餌剤を10gづつアルミカップに取って、それをケージの床面に置いた。毒餌剤をケージにおいてから24時間後に、スズメバチの挙動を観察し、スズメバチの生死を観察した。結果を表1に示す。
【0099】
【表1】

【0100】
表1に示すように、本発明に係る毒餌剤は、スズメバチ等のハチに良好に喫食されているため、ハチに餌と認識されていることが確認できた。ハチは、餌と認識したものを巣へ持ち帰る習性があるため、本発明に係る毒餌剤はハチにより巣へ持ち込まれる。
【0101】
また、本発明に係る毒餌剤は、ハチ誘引物質の含有量が非常に高く、ハチに喫食され易いため、効率良く巣へと持ち込まれる。その結果、成虫のみならず、巣の中の幼虫に対しても効率良く駆除できる。
【0102】
〔成形した毒餌剤の硬さ試験〕
実施例9及び比較例5で作製した各毒餌剤について、以下のように硬度を測定した。
【0103】
ステンレス製円筒ボールミルポット(アサヒ理化製作所 ボールミル回転架台 型式:
AV−1)にステンレス製鋼球(重量16.64g/個、直径19.9mm)を10個入れた。このポットに毒餌剤5gを入れ、蓋を閉めた。回転数23回/分に調整したローラーの上にこのポットを乗せ、10分間回転させた。その後、毒餌剤を全量取り出し、目開1.0mmメッシュ篩で篩い別けた。そして、1.0mmメッシュの篩に残った毒餌剤の重量を秤量し、次式により硬度を算出した。
【0104】
硬度(%)=(秤量値(g)/5)×100
その結果、実施例9の毒餌剤の硬度は53.2%であり、比較例5の毒餌剤の硬度は97.6%であった。
【0105】
よって、グリセリン等の2〜4価のアルコールを含有しない、比較例5の毒餌剤は非常に硬く、粉砕され難いため、ハチが喫食し難いものであるのに対して、実施例9の毒餌剤は、柔らかく、粉砕され易いため、ハチが喫食し易いものであることが確認できた。
【0106】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明の毒餌剤は、ハチを効率的に駆除することができるため、ハチを駆除する毒餌剤として好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
殺虫剤及び昆虫成長調節剤からなる群から選択される少なくとも1種と、
ハチ誘引物質と、
2〜4価のアルコールと
を含む、ハチ用毒餌剤。
【請求項2】
上記アルコールの分子量が、62以上、176以下である、請求項1に記載のハチ用毒餌剤。
【請求項3】
上記アルコールがグリセリン又はブタントリオールである、請求項1又は2に記載のハチ用毒餌剤。
【請求項4】
上記ハチ誘引物質が動物性タンパク質である、請求項1〜3の何れか1項に記載のハチ用毒餌剤。
【請求項5】
上記ハチ誘引物質の含有量が,50質量%以上、90質量%以下である、請求項1〜4の何れか1項に記載のハチ用毒餌剤。
【請求項6】
形態が粒状である、請求項1〜5の何れか1項に記載のハチ用毒餌剤。
【請求項7】
殺虫剤を含んでおり、
上記殺虫剤が、ネオニコチノイド系化合物、フェニルピラゾール系化合物、ヒドラメチルノン、及びクロロフェナピルからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1〜6の何れか1項に記載のハチ用毒餌剤。
【請求項8】
昆虫成長調節剤を含んでおり、
上記昆虫成長調節剤が、幼若ホルモン用化合物、及びキチン合成阻害剤からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1〜7の何れか1項に記載のハチ用毒餌剤。
【請求項9】
スズメバチ用毒餌剤である、請求項1〜8の何れか1項に記載のハチ用毒餌剤。
【請求項10】
請求項1〜9の何れか1項に記載の毒餌剤をハチに喫食させる工程を含む、ハチの駆除方法。

【公開番号】特開2011−16770(P2011−16770A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−163586(P2009−163586)
【出願日】平成21年7月10日(2009.7.10)
【出願人】(390000527)住化ライフテク株式会社 (54)
【Fターム(参考)】