説明

ハニカムパネル積層体の製造方法及びハニカムパネル積層体

【課題】べースとなるハニカム材とハニカム材を挟む二つの面材との接着において、剛性が大きく、平面精度の高い平面部材と線条でかつ完全に平坦なハニカム材を提供する。
【解決手段】吸音面、吸音層、反射面からなる積層体において、吸音面は発泡体4よりなり、吸音層はハニカム材と空間部に硬質フォーム材3を充填させた層から成り、吸音層のハニカム材の先端部に接着剤2を塗布し、該先端部を上記吸音面に対して押し当て、該発泡体に食い込ませて接着させた構造を有し、さらにハニカム材の反対側の面となる遮音面は、発泡体6からなり、上記ハニカム材と接する面に接着剤5を一面に塗布し、該ハニカム材セル隔壁1の逆の先端部を上記遮音面に対して押し当て、接着剤を一面に塗布した該発泡体に食い込ませた接着構造を有するハニカムパネル積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は防音・断熱分野を対象としたハニカムパネル積層体の製造方法及び該積層体に関する
【背景技術】
【0002】
ハニカム材を芯材とし、ハニカム材を挟み込む二つの面材を有するハニカムパネル積層体の使用分野には、航空機、鉄道車両、建材がある。これら分野では、軽量化及び強度部材としての使われ方が一般的であり、ハニカムセル空間に充填物のない中空状態で使用されることが多かった。
【0003】
これに対して、ハニカム材を介した両面を吸音、断熱性能を持つ金属或いは繊維強化プラスチック材(FRP,CFRP,KFRP)で構成し、吸音断熱積層体として船舶、航空機等に広く使用されるようになり(特許文献1)、さらにハニカムセル空間を吸音特性を有する部材で充填し、吸音層とし、より遮音特性のよい積層体へと改良されていった(特許文献2)。
【特許文献1】実開昭62−19304
【特許文献2】特許3806744号
【0004】
文献1は考案の名称が「吸音断熱パネル」である。ハニカム材を介した両面に多孔質吸音断熱材であるグラスウール、ロックウールを粘着したパネルであるが、ハニカム材セルは中空である。
【0005】
文献2は発明の名称が「通気性サンドイッチパネルの製造方法及びサンドイッチパネル」である。ハニカムセル空間にフェノールフォームが充填され、吸音層を構成し、ハニカム材を挟み込む二つの面を有し、片方の面に吸音構造を持つ通気性のアルミ繊維材を用い吸音面とし、他方の面には柔軟性がない遮音板を接着し、遮音面としている。

【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ハニカム材をベースとした積層材において、特許文献1及び2に記載の技術では、ベースとなるハニカム材とハニカム材を挟む二つの面材との接着に問題があった。
【0007】
すなわち、ハニカム材を挟むようにして、ハニカム材と接着する面材は、いずれも吸音材または遮音材としての効果を高めるために、主に金属等の剛体が主体で、平面精度の高い材料から構成されている。
【0008】
一方、これら面材に対して、垂直に接着すべき6角形状のハニカム材のセル隔壁の肉厚が薄いため、接着に係るセル隔壁先端部は線条をなし、しかも接着面に対して平坦でなく凸凹である。
【0009】
したがって、剛性が大きく、平面精度の高い平面部材と六角線条でかつ完全に平坦でない部材をバットジョイント状で接着することとなり、接着面積が十分にとれないため、大きな接着力が得られない。
【0010】
また、セル内部に充填されるフォーム材も厚さが不均一なので、接着力の補強には大きな役に立たない。
このように、得られる接着力が小さいために、場合によっては、ハニカム材と面材の間に間隙を生じ、遮音効果を減じ、騒音対策の構造材としては、不適切となり、またハニカムパネル積層体としての全体の強度不足を招来し、建材として、適用範囲が限定されるという問題があった。

【課題を解決するための手段】
【0011】
吸音面、吸音層、反射面からなる積層体において、吸音面はスポンジ系発泡体よりなり、吸音層はハニカム材と該ハニカム材セルの空間部に硬質フォーム材を充填させた層から成り、吸音層を構成するハニカム材のセル隔壁の六角形線条先端部に接着剤を塗布し、該ハニカム材セル隔壁先端部を上記吸音面に対して押し当て、接着剤を塗布した該セル隔壁先端部を該発泡体に食い込ませて接着させた構造を有し、さらに上記吸音面とは平行でかつ該ハニカム材の反対側の面となる遮音面は、スポンジ系発泡体からなり、上記ハニカム材と接する面に接着剤を一面に塗布し、該ハニカム材セル隔壁の接着剤を塗布した先端部と逆側の先端部を上記遮音面に対して押し当て、該セル隔壁先端部を接着剤を一面に塗布した該発泡体に食い込ませた接着構造を有することを特徴とするハニカムパネル積層体の製造方法及びハニカムパネル積層体を提供する。
【0012】
ハニカム材に対する接着に適した吸音面材及び遮音面材の材料として、柔軟なスポンジ系発泡体を選択する。厚さの均一でないハニカム材及びフォーム材に対し、スポンジ系発泡体の柔軟性を生かし、ハニカム材をスポンジ系発泡体に食い込ませ、接着させる。この様にすることで、接着部位は線から面に変わり、接着部位の面積が増え、接着が強固となり、ハニカムパネル積層体全体の造りも安定する。

【発明の効果】
【0013】
ハニカム材を介した吸音面および遮音面の面材として、スポンジ系発泡体の一つである柔軟な気泡ポリエチレンフォーム材を使用し、ハニカム材セルの空間部の充填材として連通気泡の硬質フェノール材を使用し、厚さ15mmで重量0.80.6kg/m、 厚さ38mmでは重量2.0kg/mの軽量で強固な積層体を得た。

【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】ハニカム材セル隔壁先端部に接着剤を塗布した図
【図2】吸音面の気泡ポリエチレンンフォーム材に接着剤のついたハニカ ム材のセル隔壁先端部を食い込ませ接着した図
【図3】ハニカム材セル空間に連通気泡の硬質フェノールフォーム材を充填した図
【図3−1】ハニカム材セル隔壁先端部及び充填フォーム材の凸凹面に平らな 剛体材を合わせた図
【図4】遮音材のポリエチレンフォーム材が加圧によりハニカム材のセル隔壁 先端部に食い込んだ状態と厚さの不揃いな充填フォーム材に密着し、接着した図
【図4−1】図4の遮音面6のハニカム材と逆の面の外側に接着剤及び接着剤 保護紙を貼り付けた図
【図4−2】図4及び図4−1のハニカムパネル積層体を曲げた図
【図5】独立気泡ポリエチレンフォーム材面に剛体材を接着した図
【図5−1】曲げた剛体材に図4−1のハニカムパネル積層体を接着した図
【図6−1】既設の現場駆体(平面構造体)に図4−1のハニカムパネル積層体を接着した図
【図6−2】既設の現場駆体(曲面構造体)に図4−1のハニカムパネル積層体を接着させた図
【図7】ハニカム材セル構造及び曲げ易い方向を示した図
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態における第一の特徴は吸音面の部材に関する。一般にスポンジ系気泡体の気泡構造には、連通気泡構造を有するものと、独立気泡構造を有するものとの2通りがあり、吸音性能では気泡が連通した構造を持つ連通気泡材が適し、遮音性能では、気泡が個々にに独立し、気泡内に発泡ガスが封入された独立気泡材が適する。
【0016】
したがって、吸音面の部材としては、柔軟性に富む連通気泡のスポンジ系気泡体であれば、材質を選ばないが、ポリエチレン、ウレタン、ゴム及びポリプロピレン系の連通気泡体の中から、本発明では、連通気泡で柔軟性を持つポリエチレンフォーム材、密度35kg/mのスーパーオプセル品名LC−3000#NN(三和化工社製)を選択した。

【0017】
本発明の実施形態における第2の特徴は、吸音面材とハニカム材を接着させる粘性接着剤に関する。ハニカム材と吸音面材である連通気泡のポリエチレンフォーム材を接着させる接着剤にエマルジョン系(酢酸ビニール樹脂系、コニシ社製)を使用する。しかし、エポキシ・ウレタン・アクリル・シリコーン系接着剤でも良い。
【0018】
接着剤の選択条件を挙げるとすれば、粘度15,000〜70,000mPas(30°C)が望ましい範囲であり、更に望ましくは30,000〜70,000mPasの範囲が良く、塗布作業時間が20分以上ある材料が良い。
【0019】
本発明の実施形態における第3の特徴は、吸音層を形成するハニカム材に関する。セル形状は選ばないが、材質は紙を基材にしフェノール、ケイ酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、防水剤等を含浸させたハニカム材が適切である。
【0020】
本発明の実施形態における第4の特徴は、ハニカム材セルに充填する吸音フォーム材に関する。連通気泡の硬質フォーム材の中から、硬質フェノールフォーム材密度20kg/mを選択した。フォーム材は水分吸収及び蒸発作用があり、又難燃性については、ライター試験でも着火し難い材料である。又硬質の連通気泡材を採用した第一の目的は吸音機能である。
【0021】
本発明の実施形態における第5の特徴は、遮音材(反射材)に関する。柔軟性を持った独立気泡体の中からポリエチレンフォーム材、密度35kg/mの品名サンペルカL−2501NN(三和化工社製)を選択した。

【0022】
本発明の実施形態における第6の特徴は、遮音機能を持つ独立気泡ポリエチレンフォーム材に塗布してある接着剤に関する。
【0023】
独立気泡のポリエチレンフォーム材には、事前に両面或いは片面に常温硬化型の弾性のある接着剤(主材アクリル樹脂系SKダイン801B、硬化剤ウレタン系樹脂系L−45からなる、綜研化学社製)が一面に塗布され、使用前は保護シートで接着面がカバーされている。

【実施例】
【0024】
図1は、厚さ7mm又は30mmのセルサイズ12mm(相対面するセル隔壁の間隔12mmの正六角形)のフェノール樹脂含浸紙質ハニカム材セル隔壁1とその先端部に塗布した酢酸ビニール系樹脂接着剤2を示す図である。接着剤はハニカム材セル隔壁1の先端部だけでなくセル隔壁立ち上がりの壁面にまで付着させる。
【0025】
図2は接着剤の塗布されたハニカム材セル隔壁1の先端部を吸音面になる厚さ3mm、密度35kg/mの連通気泡ポリエチレンフォーム材4に突き合せ、100kg/m前後の圧力でハニカム材セル隔壁を吸音面材に食い込むようにさせて接着させた図である。
【0026】
加圧により、ハニカム材セル隔壁1の先端部である接着剤塗布部2は柔軟なフォーム材4に食い込み、接着剤によりフォーム材がハニカム材セル隔壁1の先端部を挟む状態で接着され、これによりハニカム材セル隔壁面を含め接着面積が十分に大きくなり、接着強度の向上を実現した。
【0027】
図3はハニカム材セル空間に厚さ7mm又は30mm,密度20kg/mの連通気泡硬質フェノールフォーム材3を押し込み充填した図である。充填圧力でセル充填材である連通気泡硬質フェノールフォーム材が吸音面材である連通気泡ポリエチレンフォーム材に押しつけられることになるので、充填圧力で硬質フェノールフォーム材の連通気泡が壊れない条件の密度バランス、充填圧の選択が重要である。
【0028】
図3はハニカム材セル隔壁1及び充填されたフォーム材3の高さが同一に揃った面状態を示しているが、実際は、その部分を拡大してみると図3−1の状態になっている。この不揃いの面に、硬く面精度が整った遮音材となる剛体(金属板等)遮音面10を接着しようとすると、凹凸のある不揃いの面に剛体遮音面10がなじまず隙間が出来、接着しない部分が発生する。
【0029】
この対策として、遮音面を構成するのに柔軟な遮音材として独立気泡のポリエチレンフォーム材6を選択した。
【0030】
図4は、剛体性を有する遮音面10に代わって、厚さ5mm、密度35kg/mの独立気泡ポリエチレンフォーム材の柔軟性のある遮音面6を用いた場合の状態を示している。また、ハニカム材セル空間には、連通気泡硬質フォーム材3が充填されいる。
【0031】
図3−1に示したように、一般には、ハニカム材セル隔壁1とフォーム材3の高さは不揃いであるが、この状態にあるときに、独立気泡ポリエチレンフォーム材製の柔軟性ある遮音面6をハニカム材セル隔壁1に100kg/mの圧力で押しつけと行くと、図4に示すようにハニカム材セル隔壁1の先端部が遮音面6の独立気泡ポリエチレン材に食い込んだ状態11となる。
【0032】
そこで、ハニカム材セル隔壁1の先端部が食い込んで行く遮音面6の表面に予めアクリル/ウレタン樹脂系接着剤5を塗布して置くとハニカム材セル隔壁1および充填材3に凹凸があっても、柔軟な独立気泡ポリエチレンフォーム材で出来ている遮音面6は、ハニカム材セル隔壁1及び充填材3と全面的に密着する状態11となり、強固な接着力を生じる。
【0033】
図4のアクリル/ウレタン樹脂接着剤5は接着強度の面から選択しているが、本目的に合う強度の接着剤であれば、これに限定されるものでない。
【0034】
また、図4の構造は、遮音面6の肉厚が薄い場合には、ハニカムパネル積層体としての強度はあまり大きくならないので、自立性及び遮音効果には限界がある。
【0035】
自立性及び遮音性を高める一手法として、遮音面の外側にさらに補強のための剛体(金属板等)を貼り付けることが考えられる。
これを実現する為に、図4−1のように遮音面6を構成する独立気泡ポリエチレンフォーム材の両面に接着剤5を塗布(図5で遮音面6の両面に破線で示されている)しておき、ハニカム材セル隔壁1と接触する面と反対側の接着剤面の外側には、剥離し易い保護紙17をさらに貼り付けておく。
【0036】
非通気で質量の大きい剛体材料の保護板7(図5)を貼り付けるにあたり、まず独立気泡ポリエチレンフォーム材の遮音面6に塗られた接着剤5の上に予め張られた保護紙17(図4−1)を剥がし、その後に剛体保護板7をあらためて貼り付けることにより、自立性が高く、また遮音性の高いハニカムパネル積層体が得られる。
【0037】
逆に、図4及び図4−1に示すハニカムパネル積層体の場合、強度アップのための剛体保護板7を接着せず、吸音面、遮音面にはポリエチレンフォーム材を用い、ハニカム材は紙を基材として、フェノール、ケイ酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、防水剤等を含浸させたものを用い、ハニカム材セルの充填材として、連通硬質フェノールフォーム材を採用しており、いずれの材質もカッター、又はハサミで容易に切断できる程度の硬さのものであるので、ハニカムパネル積層体そのものが加工性に優れると言う特徴がある。
【0038】
また、従来技術のハニカムパネル積層体では、ハニカム材を挟み込む吸音面および遮音面の構成材には剛体(金属)が主に用いられていたので、曲面化し難く、曲面状対応形のハニカムパネル積層体が実現できていなかった。
【0039】
ハニカムパネル積層体の実際の使用にあたっては、積層体全体を曲面として利用できると大変都合がよく、曲面対応可能なハニカムパネル積層体の実現が待望されていた。
【0040】
その点、本願請求項1に記載の発明は、吸音面及び遮音面に柔軟性のあるポリエチレンフォーム材を用いているので、曲面対応が可能である。問題はハニカム構造の吸音層が曲面に対応出来るかどうかにある。
【0041】
図7は、ハニカム材が、正六角形のハニカム単位セル16によって平面を隙間なく埋めることによって、強度を発揮する構造になっていることを示している。実際にこの単位セルで敷き詰められたハニカム材を使って吸音層を構成するのであるから、曲げに対しては強く、どの方向も同じ強度を有していると思われる。
【0042】
しかしながら、実際のハニカム層の作り方は、単位セルを敷きつめ繋いでゆく方法ではなく、沢山の帯状の材料を帯面が互いに平行になるように並べ、図7のセル隔壁12のところを接着して作成する。したがって、セル隔壁12のところは、帯状材料が2重になっていて、しかも接着剤で貼り合わせた構成になっている。それに対し、それ以外のセル隔壁は1重構成であり、接着剤も塗布されていない。
【0043】
したがって、セル隔壁12の強度が他に比べて2倍以上は強い構造になっていることが想定される。この条件で、各セル隔壁にひねり応力をかけた場合、相対的に小さいひねり応力でセル隔壁12以外はひねり変形し、セル隔壁12は、相対的に大きなひねり応力をかけないとひねり変形しない。
そこで、図7でセル隔壁12に垂直な面14の面内でハニカムパネル積層体全体を彎曲させよう(例えば15の矢印の方向、紙面にたいして上下方向に曲げる)と、徐々に応力を加えて行くと、比較的初期段階に、セル隔壁12以外のセル隔壁がひねり応力によりひねり変形する。その段階ではセル隔壁12はひねり変形することはないが、この方向に彎曲するには、セル隔壁12がひねり変形する必要がないので、ハニカムパネル積層体全体として彎曲させることが出来る。これに対し、面14とは異なる面内で彎曲させようとすると程度の差はあるが、セル隔壁12がどうしてもひねり変形することが必要になるが、セル隔壁12は、2重構造でしかも接着剤で強固に固められているので、ひねり応力に対する耐力が大きく、容易にひねり変形をしない。したがって、ハニカムパネル積層体を全体として、容易に彎曲させることが出来ない。
【0044】
一般のハニカム材は、セル隔壁12が2重構造を構成し、その接着に接着力が十分に高い接着剤を用いているので、ハニカムパネル積層体を2重構造をしている面に垂直な面内で彎曲させることは容易にできるが、その他の面内では、なかなか彎曲しないと言う特性を持っていることが分かった。
【0045】
したがって、ハニカムパネル積層体は、ハニカム材のセル配置方向に対して曲げ易い方向があるので、曲げて使用する場合には、この曲げ易い方向を捉えて曲げる必要がある。また自立性のために剛体保護板を用いるときには、曲面状の剛体保護板を用意し、ハニカムパネル積層体を曲げ易い方向に曲面状に曲げ、彎曲した独立気泡のポリエチレンフォーム材に塗布してある接着剤面を剛体に押し当て接着させることで目的を達成することが出来る。
【0046】
この原理を応用して、例えば、図4及び図4−1構造体を円弧の矢印13方向(紙面内の上下方向)に曲げた場合を示したのが、図4−2である。また、図5−1は、事前に50Rに曲げられた厚さ2mmのアルミ板8に、全体厚さ15mm(ハニカム材/充填フォーム材厚7mm)で、図4−1の構造を有するハニカムパネル積層体の保護紙17を剥がし、アルミ板8のR面に合わせ、押し当て接着させたものである。
【0047】
図6−1及び6−2は、図4−1を用い、現場の騒音発生源を囲んでいる既設の鉄板(コンクリート・木質材等非通気材の場合もある)の壁面9に合わせ、保護紙17を剥がし、接着剤5によって貼り付けた図である。図6−1は平面板に、図6−2は曲面体に貼り付けた図である。矢印13は紙面内上下の向きに彎曲させたことを示す。
【0048】
また、本発明のハニカムパネル積層体の減音性能について、説明する。
345×320×300H mm角での6面が吸遮音構造のBOXにより、減音性能を測定した結果を表1に示す。測定において、騒音の音源基準はセイコウ目覚まし時計スーパー雷電(直近MAX値100dBA))を使用し、音源はBOXの中心、音源と測定機器(リオンNA−27)の距離は500mmを測定基準とした。尚アルミ板付構造のハニカムパネル積層体の場合のアルミ板厚は、比較基準BOXのアルミ板1.2mm厚に合わせた。


表1 単位:dBA

表1において、本発明(ケース1)は、図4の構造を有するハニカムパネル積層体で、積層体の厚さは38.0mmで、内訳は、連通気泡ポリエチレンフォーム厚3mm、接着剤、ハニカム材及び充填フェノールフォーム厚30mm、接着剤、独立気泡ポリエチレンフォーム厚5mmである。
【0049】
本発明(ケース2)は、図5の構造を有するハニカムパネル積層体で、積層体の厚さは16.2mmで、内訳は、連通気泡ポリエチレンフォーム厚3mm、接着剤、ハニカム材及び充填フェノールフォーム厚7mm、接着剤、独立気泡ポリエチレンフォーム厚5mm、アルミ板厚1.2mmである。
【0050】
本発明(ケース3)は、図5の構造を有するハニカムパネル積層体で、積層体の厚さは39.2mmで、内訳は連通気泡ポリエチレンフォーム厚3mm、接着剤、ハニカム材及び充填フェノールフォーム厚30mm、接着剤、独立気泡ポリエチレンフォーム厚5mm、アルミ板厚1.2mmである。
【0051】
先行技術は、特許文献2の構成を有するハニカムパネル積層体で、積層体の厚さ32.8mm厚で、内訳はアルミ繊維材厚1.6mm、接着剤、ハニカム材及び充填フェノールフォーム厚30mm、接着剤、アルミ板厚1.2mmである。
基準音源は、ハニカムパネル積層体の代わりに、アルミ板厚1.2mmで囲った反射BOXである。
【0052】
本発明(ケース1)と音源基準とを比較をすると、音源基準より周波数全域で11〜23dB減音し、平均で17dBの減音効果があり実用性が確認できた。
【0053】
更に本発明(ケース1)の外側に1.2mm厚のアルミ板を接着させた本発明(ケース3)では、本発明(ケース1)に対して、2500Hz以上で7〜20dB、平均で15dBの減音値の上乗せ効果が確認された。
又本発明(ケース1)を本発明(ケース2)と比較すると、全体厚さが16.2mmと薄いに係らず、3150Hz以上では、本発明(ケース2)の方が、本発明(ケース1)より減音効果が大きいことが分かった。。
【0054】
本発明(ケース2)と吸音構造のない音源基準を比較すると、1250〜2500Hzの周波数帯で10dBの減音、3150〜10000Hzの周波数帯で28〜36dBの減音値を得た。又本発明(その3)では、ハニカム/フォームを30mmの厚さにした効果が出て、1250〜2500Hzの周波数帯で17〜21dBの減音、この領域で本発明(ケース2)に対して、7〜11dB改善。又3150〜10000Hzの周波数帯では33〜38dBの減音値を得た。このことより、3150Hz以上の領域では本発明(ケース2)の全体厚さ16.2mmと本発明(ケース3)39.2mmの厚さの差が出てこないことが分かった。
【0055】
ハニカム材厚さと充填フォーム厚さが同一な先行技術(特許文献2)と本発明(ケース3)の比較では、2500Hz以下で3〜5dB、3150Hz以上では10〜15dB、本発明(ケース3)が良い値を得た。又、先行技術(特許文献2)と本発明(ケース2)の比較では、厚さが前者は32.8mm,後者は、16.2mmと2倍の差があっても4000Hz以上では8〜13dB、後者の方が良い値を示し、本発明の高い有効性を示している。
【0056】
また、本発明の断熱性能の評価であるが、本発明構造の図5で、ハニカム及びフェノールフォーム材厚みが30mmの断熱性能を測定すると熱貫流抵抗値は、1.07m・k/W(建材試験センター測定)であった。
【0057】
この値を断熱材基準である建設省告示第九百九十八号(平成11年3月30日)の0.6m・k/Wと比較すると、基準値以上の熱断熱性能を有することが判明した。
【0058】
また、本発明の難燃性の評価であるが、(社)日本鉄道車両機械技術協会が実施している「鉄道車両用材料燃焼試験」で難燃性の試験を受けた。
【0059】
実施試験体の構成条件は吸音表面材に連通気泡ポリエチレンフォーム材、吸音層にフェノール樹脂含浸ハニカム材にフェノールフォーム材を充填、遮音材に独立気泡ポリエチレンフォーム材、接着剤はエマルジョン系、アクリル・ウレタン樹脂系による図5構造体で、火元を図5における遮音材4側に配置して試験が行われた。試験結果は車材燃試No.23−482Kで報告され、合格した。
【0060】
曲面への対応性については、すでの前述したが、本発明構造体を曲げる場合、6角形ハニカム材要素の扱いが重要になる。
ハニカム材は、ハニカム6角形を形成する6面の内、図7に示したセル隔壁12の2面が2重の接着層で強化されており、接着層であるセル隔離壁12と垂直をなす平面14の中では曲げ易く、セル隔壁12と平行な面内では曲げ難い。
【0061】
この特性と、ハニカム芯材を介し、ハニカム材の両面に接着しているポリエチレンフォーム材の柔軟性を生かすと曲げに追従が出来る。図4−2で、矢印13の円弧方向に曲げた時、内側は収縮し、外側は伸びる。又紙質ハニカム材には固有の弾力性があり追従し易い。
【0062】
接着部の安定についても、柔軟フォームにハニカム材が食い込み、ハニカム材を挟んだ状態の接着状態の本発明製造方法が、伸縮に追従し、接着部の剥離防止の対策になる事が確認された。
【0063】
図4及び図4−1構造を曲げた図4−2及び図5−1は、ハニカム材及びフォーム材は伸縮し、又充填している連通気泡フェノールフォーム材がハニカムセル壁内で固定されていないため、これら材料が自由に動くことで、曲げ伸縮に対する追従性が確保出来た。
【0064】
又実施工面でも、厚さ15mmの図4−1構造を、50Rの曲面構造体に容易に合わせることが容易に出来た。
図5−1及び図6−2を事前に目的物のRに合わせ、図4−1構造に予め曲げ癖をつけておくと取り付けし易い。矢印13の円弧方向に伸縮し、曲面体への取付けが容易になる。
【0065】
又本発明によるハニカムパネル積層体のコストは、表面が剛体である先行技術にみられる金属構造のハニカムパネル積層体と比較すると数分の一になる。
【0066】
生産工程の短縮についても、吸音面に塗布した酢酸ビニール系接着剤の水分は、接着剤に接する連通気泡ポリエチレンフォーム材及びハニカム材に充填した連通気泡硬質フェノールフォーム材が吸水性であることから接着剤の水分を瞬時に脱水させることが出来、工程短縮に結びついた。
【0067】
又遮音面の接着についても別工程で予め塗布した、アクリル/ウレタン樹脂接着剤は独立気泡のポリエチレンフォーム材に合わせるだけで強固な接着強度が得られ、一般的なエポキシ系接着剤(硬化時間が常温で10時間)と比較すると硬化時間短縮及び危険物安全性・臭気対策を得た。

【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明によるハニカムパネル積層体は高周波騒音対策の低価格、薄型・軽量・加工性が要求される分野に有用である。又断熱材としての利用も可能である。
【符号の説明】
【0069】
1:ハニカム材セル隔壁
2: ハニカム材セル隔壁の先端部に塗布された酢酸ビニール系樹脂接着剤3:セル充填材の連通気泡硬質フェノールフォーム材
4:吸音面の柔軟な連通気泡ポリエチレンフォーム材
5:遮音材独立気泡ポリエチレンフォーム材の接着に使用する接着剤
6:遮音材の柔軟な独立気泡ポリエチレンフォーム材
7:平板の剛体材
8:事前に曲げられた剛体材
9:現場の既設遮音構造体の平板及び曲面体(金属、コンクリート製等)
10:遮音材である平らな剛体材
11:ハニカム材がポリエチレンフォーム材に食い込んだ部分
12:ハニカム材の形状を維持する接着部分
13:円弧方向へ曲る方向を示した矢印
14:隔壁に垂直な平面
15:曲げる方向を示した矢印
16:6角形ハニカム材要素図
17:接着剤用の保護紙


【特許請求の範囲】
【請求項1】

吸音面、吸音層、反射面からなる積層体において、
吸音面はスポンジ系発泡体よりなり、
吸音層はハニカム材と該ハニカム材セルの空間部に硬質フォーム材を充填させた層から成り、
吸音層を構成するハニカム材のセル隔壁の六角形線条先端部に接着剤を塗布し、該ハニカム材セル隔壁先端部を上記吸音面に対して押し当て、接着剤を塗布した該セル隔壁先端部を該発泡体に食い込ませて接着させた構造を有し、
さらに上記吸音面とは平行でかつ該ハニカム材の反対側の面となる遮音面は、スポンジ系発泡体からなり、
上記ハニカム材と接する面に接着剤を一面に塗布し、該ハニカム材セル隔壁の接着剤を塗布した先端部と逆側の先端部を上記遮音面に対して押し当て、該セル隔壁先端部を接着剤を一面に塗布した該発泡体に食い込ませた接着構造を有する
ことを特徴とするハニカムパネル積層体の製造方法及びハニカムパネル積層体。



【請求項2】
請求項1に記載の積層体であって、
吸音面を構成するスポンジ系発泡体が連通気泡であり、
吸音層の硬質フォーム材が連通気泡であり、
遮音面を構成するスポンジ系発泡体が独立気泡である
ことを特徴とするハニカムパネル積層体の製造方法及びハニカムパネル積層体
【請求項3】
吸音面及び遮音面に使用するスポンジ系発泡体はポリエチレンフォーム材からなる請求項1又は請求項2に記載のハニカムパネル積層体の製造方法及びハニカムパネル積層体
【請求項4】
充填フォーム材は硬質フェノールフォーム材からなる請求項1又は請求項2に記載のハニカムパネル積層体の製造方法及びハニカムパネル積層体
【請求項5】
鉄道車両用材料燃焼試験の難燃性基準に合格する性能を持つ請求項1又は請求項2に記載のハニカムパネル積層体の製造方法及びハニカムパネル積層体
【請求項6】
独立気泡スポンジ系発泡体面のハニカム材に接着させた面とは反対側の面に、剛体よりなる遮音材を貼り合わせることを特徴とする請求項2記載のハニカムパネル積層体の製造方法及びハニカムパネル積層体
【請求項7】
帯状部材を用いて作成されるハニカム材において、隣接した6角形ハニカム材セルを互いに接着する隔壁面と垂直をなす面内でハニカムパネル積層体を彎曲させ、遮音面のスポンジ系発泡体の両面に塗布された接着剤の内、ハニカム材とは反対側の面に剛体よりなる曲面の遮音材を貼り合せることを特徴とする請求項1又は請求項2記載ののハニカムパネル積層体の製造方法及びハニカムパネル積層体


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図3−1】
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【図4】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図5】
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【図5−1】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−97345(P2013−97345A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242970(P2011−242970)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【特許番号】特許第5127975号(P5127975)
【特許公報発行日】平成25年1月23日(2013.1.23)
【出願人】(506083844)株式会社 静科 (8)
【Fターム(参考)】