説明

ハニカムフィルタの再生方法

【課題】燃焼再生において生じる熱応力を低減することが可能なハニカムフィルタの再生方法を提供する。
【解決手段】本発明に係るハニカムフィルタの再生方法は、多孔質の隔壁により仕切られた互いに平行な複数の流路を備えるハニカムフィルタの再生方法であって、除去対象物質が堆積した流路内の温度を上昇させて当該除去対象物質を燃焼させる再生工程を備え、再生工程におけるハニカムフィルタ内の最高温度に到達するハニカムフィルタ内の所定位置において、再生工程における単位時間あたりの温度の変化量の絶対値が35℃/秒以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカムフィルタの再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハニカムフィルタは、被捕集物を含む流体から当該被捕集物を除去するセラミックスフィルタとして用いられており、例えば、ディーゼルエンジンやガソリンエンジン等の内燃機関から排気される排気ガスを浄化するための排ガスフィルタとして用いられている。このようなハニカムフィルタは、多孔質の隔壁により仕切られた互いに平行な複数の流路を有している(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2009−537741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、被捕集物を含む流体がハニカムフィルタ内に供給されるに伴い、ハニカムフィルタにおける隔壁の表面や隔壁の内部に被捕集物が堆積する。この場合、被捕集物がハニカムフィルタ内に過剰に堆積すると、ハニカムフィルタ内における流体の移動が妨げられてハニカムフィルタの浄化性能が低下する。そのため、ハニカムフィルタ内に一定量の被捕集物を堆積させた後に、被捕集物を除去対象物質として燃焼除去するためにハニカムフィルタの燃焼再生が行われる。
【0005】
ここで、燃焼再生においてハニカムフィルタに過度の熱応力が負荷されると、ハニカムフィルタの熱破損や溶損が引き起こる場合がある。そのため、ハニカムフィルタの再生方法に対しては、燃焼再生において生じる熱応力を低減することが求められている。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、燃焼再生において生じる熱応力を低減することが可能なハニカムフィルタの再生方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るハニカムフィルタの再生方法は、多孔質の隔壁により仕切られた互いに平行な複数の流路を備えるハニカムフィルタの再生方法であって、除去対象物質が堆積した流路内の温度を上昇させて当該除去対象物質を燃焼させる再生工程を備え、再生工程におけるハニカムフィルタ内の最高温度に到達するハニカムフィルタ内の所定位置において、再生工程における単位時間あたりの温度の変化量の絶対値が35℃/秒以下である。
【0008】
従来のハニカムフィルタの再生方法では、ハニカムフィルタの温度が急激に変化することによってハニカムフィルタに過度の熱応力が負荷される場合がある。この場合、再生工程におけるハニカムフィルタ内の最高温度に到達するハニカムフィルタの位置の温度の変化量が熱応力の大きさに影響を与えていると推測される。一方、本発明では、再生工程におけるハニカムフィルタ内の最高温度に到達するハニカムフィルタの位置の温度の変化量が小さいことにより、燃焼再生において生じる熱応力を低減することができる。
【0009】
隔壁は、チタン酸アルミニウムを含むことが好ましい。この場合、燃焼再生において生じる熱応力を更に低減することができる。
【0010】
ハニカムフィルタは、複数の流路が、第1の流路と、当該第1の流路に隣接する複数の第2の流路とを有しており、複数の第2の流路における一の第2の流路と他の第2の流路とが互いに隣接しており、第1の流路におけるハニカムフィルタの一端側の端部が封口されており、第2の流路におけるハニカムフィルタの他端側の端部が封口されており、第2の流路の軸方向に垂直な第2の流路の断面が、第1の辺と、当該第1の辺の両側にそれぞれ配置された第2の辺とを有しており、第1の流路の軸方向に垂直な前記第1の流路の断面を形成する辺のそれぞれが、第2の流路の前記第1の辺と対向しており、第2の流路の第2の辺のそれぞれが、隣接する第2の流路の第2の辺と対向している構成であってもよい。
【0011】
再生工程において上記所定位置の温度が低下するときの上記所定位置における単位時間あたりの温度の変化量の絶対値は、30℃/秒以下であることが好ましい。この場合、燃焼再生において生じる熱応力を更に低減することができる。
【0012】
上記最高温度は、800〜1250℃であってもよい。再生工程において、除去対象物質が堆積した流路内の温度を燃料の燃焼熱により上昇させてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るハニカムフィルタの再生方法によれば、燃焼再生においてハニカムフィルタに生じる熱応力を低減することができる。これにより、燃焼再生においてハニカムフィルタの熱破損や溶損が生じることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る再生方法において用いられるハニカムフィルタを模式的に示す図面である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態に係る再生方法において用いられる他のハニカムフィルタを模式的に示す図面である。
【図3】図3は、ハニカムフィルタ内の所定位置における温度の測定結果を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0016】
図1は、本実施形態に係る再生方法において用いられるハニカムフィルタを模式的に示す図面である。ハニカムフィルタ100は、図1に示すように、互いに略平行に配置された複数の流路110を有する円柱体である。複数の流路110は、ハニカムフィルタ100の中心軸に略平行に伸びる隔壁120により仕切られている。複数の流路110は、複数の流路(第1の流路)110aと、流路110aに隣接する複数の流路(第2の流路)110bとを有している。流路110a及び流路110bは、ハニカムフィルタ100の両端面に略垂直に伸びている。
【0017】
流路110のうちの一部を構成する流路110aの一端は、ハニカムフィルタ100の一端面100aにおいて封口部130により封口されており、流路110aの他端は、ハニカムフィルタ100の他端面100bにおいて開口している。一方、複数の流路110のうちの残部を構成する流路110bの一端は、一端面100aにおいて開口しており、流路110bの他端は、他端面100bにおいて封口部130により封口されている。ハニカムフィルタ100において、例えば、流路110bにおける一端面100a側の端部はガス流入口として開口しており、流路110aにおける他端面100b側の端部はガス流出口として開口している。
【0018】
流路110a及び流路110bの軸方向(長手方向)に略垂直な断面は、六角形状である。流路110aの断面は、当該断面を形成する辺140の長さが互いに略等しい正六角形状が好ましいが、扁平六角形状であってもよい。流路110bの断面は、例えば扁平六角形状であるが、正六角形状であってもよい。流路110bの断面において互いに対向する辺の長さは、互いに略等しい。流路110bの断面は、当該断面を形成する辺150として、互いに長さの略等しい二つ(一対)の長辺(第1の辺)150aと、互いに長さの略等しい四つ(二対)の短辺(第2の辺)150bと、を有している。短辺150bは、長辺150aの両側にそれぞれ配置されている。長辺150a同士は、互いに略平行に対向しており、短辺150b同士は、互いに略平行に対向している。
【0019】
流路110aは、隣接する流路110aの間に一つの流路110bが配置されることにより、流路110aの配列方向(辺140に略直交する方向)において流路110bと交互に配置されている。流路110aの辺140のそれぞれは、複数の流路110bのいずれか一つの流路の長辺150aと略平行に対向している。すなわち、流路110は、1つの流路110aと、当該流路110aを囲む6つの流路110bとを含む構成単位を有しており、当該構成単位において、流路110aの辺140の全てが流路110bの長辺150aと対向している。流路110bの短辺150bのそれぞれは、隣接する流路110bの短辺150bと略平行に対向している。
【0020】
流路110a,110bの長手方向におけるハニカムフィルタ100の長さは、例えば50〜300mmである。ハニカムフィルタ100の外径は、例えば50〜250mmである。流路110a,110bの密度(セル密度)は、例えば50〜400cpsi(cell per square inch)である。なお、「cpsi」は、1平方インチ当たりの流路(セル)の数を表す。流路110a,110bの軸方向に略垂直なハニカムフィルタ100の断面において、ガス流入側流路の合計面積はガス流出側流路の合計面積よりも大きいことが好ましく、すなわち、流路110bの合計面積は、流路110aの合計面積よりも大きいことが好ましい。
【0021】
1つの流路110aと当該流路110aを囲む流路110bとを含む構成単位において、辺140の長さは例えば0.2〜2.0mmであり、長辺150aの長さは例えば0.4〜2.0mmであり、短辺150bの長さは例えば0.3〜2.0mmである。
【0022】
上記構成単位における隔壁120の厚み(セル壁厚)は、例えば0.1〜0.8mmである。上記構成単位における隔壁120の気孔率は、例えば20〜60体積%である。上記構成単位における隔壁120の気孔径(細孔直径)は、例えば5〜30μmである。
【0023】
上記ハニカムフィルタ100において隔壁120は、多孔質であり、例えば多孔質セラミックス(多孔質セラミックス焼結体)を含んでいる。隔壁120は、流体(例えば、すす等の微粒子を含む排ガス)が透過できるような構造を有している。具体的には、流体が通過し得る多数の連通孔(流通経路)が隔壁120内に形成されている。
【0024】
隔壁120は、チタン酸アルミニウムを含むことが好ましく、マグネシウムやケイ素を更に含んでいてもよい。隔壁120は、例えば、主にチタン酸アルミニウム系結晶からなる多孔性のセラミックスから形成されている。「主にチタン酸アルミニウム系結晶からなる」とは、チタン酸アルミニウム系セラミックス焼成体を構成する主結晶相がチタン酸アルミニウム系結晶相であることを意味し、チタン酸アルミニウム系結晶相は、例えば、チタン酸アルミニウム結晶相、チタン酸アルミニウムマグネシウム結晶相等であってもよい。隔壁120は、チタン酸アルミニウム系結晶相やガラス相以外の相(結晶相)を含んでいてもよい。このようなチタン酸アルミニウム系結晶相以外の相としては、チタン酸アルミニウム系セラミックス焼成体の作製に用いる原料由来の相等を挙げることができる。
【0025】
ハニカムフィルタ100は、公知の方法により製造可能である。例えば、ハニカムフィルタ100の製造方法は、(a)セラミックス粉末と孔形成剤を含む原料混合物を調製する原料調製工程と、(b)原料混合物を成形して、流路を有する成形体を得る成形工程と、(c)成形体を焼成する焼成工程と、を備え、(d)成形工程と焼成工程の間、又は、焼成工程の後に、各流路の一端を封口する封口工程を更に備える。
【0026】
ハニカムフィルタ100は、例えば、ディーゼルエンジン、ガソリンエンジン等の内燃機関からの排ガス中に含まれるすす等のPM(Particulate Matter)を被捕集物として捕集するパティキュレートフィルタとして適する。例えば、ハニカムフィルタ100は、内燃機関の排気通路に配置される。ハニカムフィルタ100では、図1(b)に示すように、一端面100aから流路110bに供給されたガスGが隔壁120内の連通孔を通過して隣の流路110aに到達し、他端面100bから排出される。このとき、ガスG中の被捕集物が隔壁120の表面や連通孔内に捕集されてガスGから除去されることにより、ハニカムフィルタ100はフィルタとして機能する。
【0027】
次に、本実施形態に係るハニカムフィルタの再生方法について説明する。本実施形態に係るハニカムフィルタの再生方法は、ハニカムフィルタの隔壁に捕集された被捕集物を除去対象物質として燃焼除去する。本実施形態に係るハニカムフィルタの再生方法は、例えば、ハニカムフィルタを準備する準備工程と、除去対象物質が堆積した流路内の温度を上昇させて当該除去対象物質を燃焼させる再生工程とを備える。
【0028】
準備工程では、除去対象物質が堆積した流路を有するハニカムフィルタを準備する。そして、ハニカムフィルタのガス流入側の流路(例えば図1における流路110b)を内燃機関の排気管に接続する。
【0029】
再生工程は、例えば、ハニカムフィルタ内の温度が上昇する昇温工程と、ハニカムフィルタ内の温度が低下する降温工程とを有している。
【0030】
昇温工程における昇温方法は、特に限定されるものではなく、除去対象物質が燃焼する温度(例えば、除去対象物質がPMである場合、630℃以上)に達するまでハニカムフィルタ内の温度を上昇させることが可能な方法であればよい。昇温方法としては、例えば、除去対象物質が堆積した流路内の温度を燃料(例えば軽油)の燃焼熱により上昇させる方法が挙げられる。この場合、燃料を流路内で燃焼させてもよく、ハニカムフィルタの外部で燃焼させて得られた高温ガスを流路内に供給してもよい。また、除去対象物質が燃焼する温度に達した時点で燃料の燃焼を停止してもよく、その後も燃料を燃焼させ続けてもよい。なお、燃料の燃焼を停止した後も、除去対象物質の燃焼により生じた燃焼熱によりハニカムフィルタ内の温度が上昇してもよい。昇温方法は、ヒータ等の発熱装置によって直接的に温度を上昇させる方法であってもよい。
【0031】
昇温工程では、酸素ガス等の支燃性ガスを含む供給ガスを流路内に供給することができる。供給ガスは、上記燃料を含んでいてもよい。供給ガスの流量は、内燃機関のエンジンの回転数やトルクによって調整することができる。供給ガスの流量は、昇温工程の途中で変動させてもよく、例えば、除去対象物質が燃焼する温度に達した時点で供給ガスの流量を低減することにより、ハニカムフィルタ内の温度に比して低温の供給ガスが流路内に流入することを抑制してもよい。
【0032】
昇温工程において除去対象物質の燃焼による燃焼熱の発生が弱まるに伴い、ハニカムフィルタ内の温度の変化量が小さくなり温度が上昇しなくなる。ハニカムフィルタ内において記録される最高温度は、除去対象物質を十分に燃焼除去できると共に、燃焼再生において生じる熱応力を更に低減できることから、800〜1250℃であってもよい。当該最高温度は、除去対象物質を更に十分に燃焼除去する観点から、900℃以上が好ましく、1000℃以上がより好ましい。また、上記最高温度は、燃焼再生において生じる熱応力を更に低減する観点から、1200℃以下が好ましく、1150℃以下がより好ましい。その後、ハニカムフィルタ内の温度は降温工程において徐々に低下し、供給ガスの温度(例えば330℃)やハニカムフィルタの外部の温度に達する。
【0033】
本実施形態では、再生工程(昇温工程及び降温工程)におけるハニカムフィルタ内の温度を複数の測定位置で測定した時に、再生工程におけるハニカムフィルタ内の最高温度に到達するハニカムフィルタ内の所定の測定位置の温度の変化量を低く調整する。具体的には、当該測定位置において、再生工程における単位時間あたりの温度の変化量の絶対値は、35℃/秒以下である。すなわち、再生工程におけるハニカムフィルタ内部の温度分布の経時変化を測定した際に、ハニカムフィルタ内において最高温度が記録される測定位置において、式「|dT/dt|≦35(℃/秒)」が満たされている。
【0034】
昇温工程において上記測定位置の温度が上昇するときの上記測定位置における単位時間あたりの温度の変化量は、熱応力を更に低減する観点から、32℃/秒以下であることが好ましい。また、降温工程において上記測定位置の温度が低下するときの上記測定位置における単位時間あたりの温度の変化量は、熱応力を更に低減する観点から、30℃/秒以下であることが好ましく、25℃/秒以下であることがより好ましい。上記測定位置の温度の変化量は、再生工程の条件(例えば供給ガスの温度や燃料の供給量)や、使用するハニカムフィルタの構造により調整することができる。
【0035】
ハニカムフィルタとしては、上記測定位置の温度の変化量を調整し易い観点から、ハニカムフィルタ100のように、複数の流路が、第1の流路と、当該第1の流路に隣接する複数の第2の流路とを有しており、複数の第2の流路における一の第2の流路と他の第2の流路とが互いに隣接しており、第1の流路におけるハニカムフィルタの一端側の端部が封口されており、第2の流路におけるハニカムフィルタの他端側の端部が封口されており、第2の流路の軸方向に垂直な第2の流路の断面が、第1の辺と、当該第1の辺の両側にそれぞれ配置された第2の辺とを有しており、第1の流路の軸方向に垂直な第1の流路の断面を形成する辺のそれぞれが、第2の流路の第1の辺と対向しており、第2の流路の第2の辺のそれぞれが、隣接する第2の流路の第2の辺と対向している、フィルタが好ましい。このような構成を有するその他のフィルタとしては、例えば、図2(a)に示すハニカムフィルタ200や、図2(b)に示すハニカムフィルタ300が挙げられる。
【0036】
ハニカムフィルタ200は、互いに略平行に配置された複数の流路210を有する円柱体である。複数の流路210は、ハニカムフィルタ200の中心軸に略平行に伸びる隔壁220により仕切られている。複数の流路210は、複数の流路(第1の流路)210aと、流路210aに隣接する複数の流路(第2の流路)210bとを有している。流路210a及び流路210bは、ハニカムフィルタ200の両端面に略垂直に伸びている。
【0037】
流路210のうちの一部を構成する流路210aの一端は、ハニカムフィルタ200の一端面において封口部230により封口されており、流路210aの他端は、ハニカムフィルタ200の他端面において開口している。一方、複数の流路210のうちの残部を構成する流路210bの一端は、ハニカムフィルタ200の一端面において開口しており、流路210bの他端は、ハニカムフィルタ200の他端面において封口部230により封口されている。ハニカムフィルタ200において、例えば、流路210bにおける一端面側の端部はガス流入口として開口しており、流路210aにおける他端面側の端部はガス流出口として開口している。流路210a,210bの軸方向に略垂直なハニカムフィルタ200の断面において、ガス流入側流路の合計面積はガス流出側流路の合計面積よりも大きいことが好ましく、すなわち、流路210bの合計面積は、流路210aの合計面積よりも大きいことが好ましい。
【0038】
流路210a及び流路210bの軸方向(長手方向)に略垂直な断面は、六角形状である。流路210aの断面は、当該断面を形成する辺240の長さが互いに略等しい正六角形状が好ましいが、扁平六角形状であってもよい。流路210bの断面は、例えば扁平六角形状であるが、正六角形状であってもよい。流路210bの断面において互いに対向する辺の長さは、互いに異なっている。流路210bの断面は、当該断面を形成する辺250として、互いに長さの略等しい三つの長辺(第1の辺)250aと、互いに長さの略等しい三つの短辺(第2の辺)250bと、を有している。長辺250a及び短辺250bは、互いに略平行に対向しており、短辺250bは、長辺250aの両側にそれぞれ配置されている。
【0039】
隣接する流路210aの間には、当該流路210aの配列方向に略直交する方向に隣接する二つの流路210bが配置されており、当該隣接する二つの流路210bは、隣接する流路210aの断面の中心同士を結ぶ線を挟んで対称に配置されている。流路210aの辺240のそれぞれは、複数の流路210bのいずれか一つの流路の長辺250aと略平行に対向している。すなわち、流路210は、1つの流路210aと、当該流路210aを囲む6つの流路210bとを含む構成単位を有しており、当該構成単位において、流路210aの辺240の全てが流路210bの長辺250aと対向している。流路210bの短辺250bのそれぞれは、隣接する流路210bの短辺250bと略平行に対向している。
【0040】
ハニカムフィルタ300は、互いに略平行に配置された複数の流路310を有している。流路310は、複数の流路(第1の流路)310aと、流路310aと隣接する複数の流路(第2の流路)310bとを有しており、複数の流路310bにおける一の流路310bと他の流路310bとが互いに隣接している。一つの流路310bは、互いに隣接する流路310aの間に配置されている。流路310aにおけるハニカムフィルタ300の一端側の端部、及び、流路310bにおけるハニカムフィルタ300の他端側の端部は、封口部330によりそれぞれ封口されている。ハニカムフィルタ300において、例えば、流路310bにおける一端側の端部はガス流入口として開口しており、流路310aにおける他端側の端部はガス流出口として開口している。流路310a,310bの軸方向に略垂直なハニカムフィルタ300の断面において、ガス流入側流路の合計面積はガス流出側流路の合計面積よりも大きいことが好ましく、すなわち、流路310bの合計面積は、流路310aの合計面積よりも大きいことが好ましい。流路310は、ハニカムフィルタ300の中心軸に略平行に伸びる隔壁320により仕切られている。
【0041】
流路310aの軸方向に略垂直な断面は正方形状であり、流路310bの軸方向に略垂直な断面は正八角形状である。流路310bの軸方向に垂直な流路310bの断面は、第1の辺350aと、辺350aの両側にそれぞれ配置された第2の辺350bとを有している。流路310bの断面において、辺350a同士が互いに対向していると共に辺350b同士が互いに対向しており、互いに対向する辺の長さが互いに等しい。流路310aの軸方向に垂直な流路310aの断面を形成する辺340のそれぞれは、複数の流路310bのいずれか一つの流路の辺350aと対向している。流路310bの辺350bのそれぞれは、隣接する流路310bの辺350bと対向している。
【実施例】
【0042】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0043】
(実施例1)
<原料混合物の調製>
チタン酸アルミニウムマグネシウムの原料粉末(Al粉末、TiO粉末、MgO粉末)、SiO粉末、チタン酸アルミニウムマグネシウムとアルミナとアルミノシリケートガラスとの複合相をもつセラミックス粉末(仕込み時の組成式:41.4Al−49.9TiO−5.4MgO−3.3SiO、式中の数値はモル比を表す。)、造孔剤、有機バインダ、潤滑剤、可塑剤、分散剤及び水(溶媒)を含む原料混合物を調製した。原料混合物中の各成分の含有量は下記の値に調整した。
【0044】
[原料混合物の成分]
Al粉末:37.3質量部
TiO粉末:37.0質量部
MgO粉末:1.9質量部
SiO粉末:3.0質量部
セラミックス粉末:8.8質量部
造孔剤:馬鈴薯から得た平均粒径25μmの澱粉、12.0質量部
有機バインダ1:メチルセルロース(三星精密化学社製:MC−40H)、5.5質量部
有機バインダ2:ヒドロキシプロピルメチルセルロース(三星精密化学社製:PMB−40H)、2.4質量部
【0045】
上記の原料混合物を混練した後に押出成形した。そして、成形体の各流路の一方の端部を封口物で封口した後に焼成することにより、図1に示す構造を有する円柱状の柱状体(DPF)を作製した。流路(貫通孔)の長手方向における柱状体の長さは153mmであった。柱状体の端面の外径は144mmであった。流路の密度(セル密度)は290cpsiであった。正六角形状の流路の一辺の長さは0.9mmであった。扁平六角形状の流路における長辺の長さは0.9mmであり、短辺の長さは0.6mmであった。流路間の隔壁の厚みは12mil(milli-inch、0.30mm)であった。隔壁の気孔率は45体積%であった。隔壁の気孔径は15μmであった。
【0046】
(比較例1)
実施例1と同様の原料混合物を混練した後に押出成形した。そして、成形体の各流路の一方の端部を封口物で封口した後に焼成することにより、断面が正方形状の流路が格子状に配列された柱状体(DPF)を作製した。比較例1の柱状体において、隣接する流路の端部を交互に封口部により封口した。流路の長手方向における柱状体の長さは153mmであった。柱状体の端面の外径は144mmであった。セル密度は290cpsiであった。正方形状の流路の一辺の長さは1.1mmであった。流路間の隔壁の厚みは13mil(0.33mm)であった。
【0047】
(耐熱衝撃性試験)
エンジン試験設備(2.0L直噴型、4気筒、コモンレール方式)を用いて、排気管に固定されたフィルタのガス流入側の流路内に14g/L(リットル)のススを堆積させた。そして、燃料をポスト噴射させることにより、フィルタにおけるガス流入側(上流側)の温度をススの燃焼(再生)が開始する温度(約630℃)にまで上げた。温度が約630℃に達した時点でエンジン回転数を2500rpmから750rpmへ下げ、アイドル状態に減速させた。これにより、ガス流量は220kg/hから50kg/hへ変化し、フィルタへ流入するガス中の酸素濃度は8%から19%へ変化した。フィルタ内部に堆積したススに着火しフィルタ内部の温度が更に上昇して最高温度に達した後、フィルタ内部の温度は低下した。
【0048】
上記試験におけるフィルタ内部の温度分布の経時変化を測定したところ、実施例1のDPFでは、ガス流出側の端部からフィルタの軸方向に約25mm、かつ、フィルタの中心軸線からフィルタの径方向に約50mmの位置の温度が、上記試験におけるフィルタ全体の最高温度(1121℃)に達することが確認された。また、比較例1のDPFでは、ガス流出側の端部からフィルタの軸方向に約25mm、かつ、フィルタの中心軸線からフィルタの径方向に約50mmの位置の温度が、上記試験におけるフィルタ全体の最高温度(1224℃)に達することが確認された。なお、フィルタ内部の温度分布は、複数の流路内に配置された複数の熱電対を用いて測定した。熱電対は、フィルタの中心軸を含む断面においてフィルタの軸方向に約25mm間隔かつフィルタの径方向に約15mm間隔に配置した。
【0049】
最高温度が記録された位置における温度の測定結果を図3に示す。図3(a)は、温度の経時変化を示し、図3(b)は、単位時間当たりの温度の変化量(dT/dt)を示す。図3(b)に示されるように、実施例1のDPFでは、昇温時における温度の変化量が31.6℃/秒であり、降温時における温度の変化量が22.9℃/秒であった。比較例1のDPFでは、昇温時における温度の変化量が78.9℃/秒であり、降温時における温度の変化量が41.2℃/秒であった。上記試験後のDPFを観察したところ、上記アイドル状態下にDPFをおくことによりDPFに顕著に熱応力が負荷されたため、実施例1及び比較例1のいずれにおいてもDPFにクラックが確認されたが、実施例1のDPFでは、比較例1のDPFと比較してクラックの発生量が少ないことが確認された。
【符号の説明】
【0050】
100,200,300…ハニカムフィルタ、110a,210a,310a…流路(第1の流路)、110b,210b、310b…流路(第2の流路)、120,220,320…隔壁、140,240,340…流路(第1の流路)の断面を形成する辺、150a,250a,350a…流路(第2の流路)の断面を形成する辺(第1の辺)、150b,250b,350b…流路(第2の流路)の断面を形成する辺(第2の辺)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質の隔壁により仕切られた互いに平行な複数の流路を備えるハニカムフィルタの再生方法であって、
除去対象物質が堆積した流路内の温度を上昇させて当該除去対象物質を燃焼させる再生工程を備え、
前記再生工程における前記ハニカムフィルタ内の最高温度に到達する前記ハニカムフィルタ内の所定位置において、前記再生工程における単位時間あたりの温度の変化量の絶対値が35℃/秒以下である、再生方法。
【請求項2】
前記隔壁がチタン酸アルミニウムを含む、請求項1に記載の再生方法。
【請求項3】
前記複数の流路が、第1の流路と、当該第1の流路に隣接する複数の第2の流路とを有しており、
前記複数の第2の流路における一の第2の流路と他の第2の流路とが互いに隣接しており、
前記第1の流路における前記ハニカムフィルタの一端側の端部が封口されており、
前記第2の流路における前記ハニカムフィルタの他端側の端部が封口されており、
前記第2の流路の軸方向に垂直な前記第2の流路の断面が、第1の辺と、当該第1の辺の両側にそれぞれ配置された第2の辺とを有しており、
前記第1の流路の軸方向に垂直な前記第1の流路の断面を形成する辺のそれぞれが、前記第2の流路の前記第1の辺と対向しており、
前記第2の流路の前記第2の辺のそれぞれが、隣接する前記第2の流路の前記第2の辺と対向している、請求項1又は2に記載の再生方法。
【請求項4】
前記再生工程において前記所定位置の温度が低下するときの前記所定位置における単位時間あたりの温度の変化量の絶対値が30℃/秒以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の再生方法。
【請求項5】
前記最高温度が800〜1250℃である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の再生方法。
【請求項6】
前記再生工程において、前記除去対象物質が堆積した前記流路内の温度を燃料の燃焼熱により上昇させる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の再生方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−254442(P2012−254442A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−100191(P2012−100191)
【出願日】平成24年4月25日(2012.4.25)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】