説明

ハニカム体の検査装置及び検査方法

【課題】本発明は、ハニカム体を検査するにあたり、セルの曲がりの状態によらずにセルの状態を確度よく検査可能な検査装置及び検査方法を提供することを目的としている。
【解決手段】本発明に係わる検査装置は、並列した多数のセルを有するハニカム体のセルの状態を検査する検査装置であって、前記ハニカム体の一端面にセルを通過する平行光を照射する照明手段と、前記セルを通過し前記ハニカム体の他端面から出た前記光を受光する受光手段と、前記受光手段で受光する光が所定の光量となるよう当該受光手段で受光した光の光量に基いて前記照明手段で照射する光の光量を制御する調光手段とを有する検査装置である。かかる検査装置によれば、ハニカム体のセルの曲がりの状態によらずハニカム体の他端面から出る光の光量は同じレベルとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム体の検査装置に関し、特にハニカム体のセルの状態を検査するに好適な検査装置および検査方法に係るものである。
【背景技術】
【0002】
ハニカム体の一例として、ディーゼルエンジンから排出される排ガス中に含まれる粒子状物質(以下PM=Particle Matterと称する。)を浄化するために使用されるディーゼル・パティキュレート・フィルター(以下DPFと称する。)が知られている。
【0003】
DPFは、図1に示すように、耐熱性を有する多孔質セラミックスからなるセル壁72と該セル壁72で画成された流体通路76からなり、流体通路76の両端面が開口した多数のセル71を有するハニカム体7である。DPFとして使用されるハニカム体7では、市松模様またはチェッカー盤模様となるように一つおきのセル71の一方端面(以下第1開口端面と称する。)73の側の端が、それと逆の模様となるように残りのセル71の他方端面(以下第2開口端面と称する。)74の側の端が封止材で封止される。
【0004】
ハニカム体7をDPFとして使用する場合、セル71に異常が生じると次のような問題が発生する。例えば、セル壁72が変形しセル71に詰まりが生じると、排ガスが通過できる断面積が減少し、排ガスが充分に排気されず、DPFが連結されたエンジンの性能の低下につながる。また、その詰まりにPMが堆積し,PMが燃焼される際に堆積したPMが過熱してセル壁72が溶損する場合がある。溶損が生じると背圧が変化したり、DPFの濾過性能が低下したり、DPFが破壊する可能性が大きくなる。
【0005】
従って、ハニカム体7をDPFとして用いる場合には、セル71に詰まりなどの異常がない状態であることを確認するために検査をする必要がある。そのような目的のセル71の検査装置の一例が、下記特許文献1に開示されている。
【0006】
特許文献1の検査装置9は、図3に示すように、第2開口端面74の側から複数のセル71を通過するように光94を照射する照明手段92と、セル71を通過し第1開口端面73から出た光94を集光して複数のセル71に対応する検査像を形成するテレセントリック光学系912と検査像を撮像するカメラ911を備えた撮像手段91を有している。
【0007】
上記検査装置9によれば、光94の光軸とセル71の軸とがほぼ一致するようにハニカム体7に対し照明手段92が位置決めされ、第2開口端面74の側からセル71を通過するように光94が照射される。セル71を通過した光94は、第1開口端面73から出る。第1開口端面73から出た光94は、テレセントリック光学系912で集光されて複数のセル71に対応した検査像が形成される。検査像は、カメラ911で撮像されモニタ等で表示される。表示された検査像の輝度が規定値以上の場合にはセル71は貫通していると判断する。また、規定値未満の場合にはセル71は貫通していないと判断する。特許文献1の検査装置9によれば撮像されたセル71の検査像に基づいてセル71の貫通度合を適確に判断できる利点がある。
【0008】
ここで、DPFとして採用されるハニカム体7は、たとえばSiC系のセラミックス粉末原料を主体として調整されたスラリーを押出し成形する成形工程と、ハニカム成形体を乾燥する乾燥工程と、ハニカム乾燥体を焼成する焼成工程などを経て製造される。従ってハニカム体7は、例えば、スラリー成分の不均一さや、乾燥または焼成条件の不均一さに起因する不可避のセル71の曲がりを有している。この曲がりは、特に熱的影響に左右されやすい外周部において著しい場合が多い。
【0009】
このように曲がりの生じたハニカム体7の検査に、特許文献1の検査装置9を適用した場合、光94は、曲がっていないセル71は通過しやすく、曲がったセル71は通過しにくくなる。この結果、照明手段92から照射される光94の光量が同一であるにも拘わらず、第1開口端面73から出てくる光94の光量がセル71曲がりの状態で変化し、たとえば図6に示すように、ハニカム体7の第1開口端面73の中心付近では明るく、外周部では暗くなる。このため、暗くなった部分では正常なセル71と詰まったセル71の輝度の差が小さくなるため詰まったセル71を検出できなくなる場合があり、検査の信頼性が損なわれる
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003−270158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、ハニカム体を検査するにあたり、セルの曲がりの状態によらずにセルの状態を確度よく検査可能な検査装置及び検査方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決する本発明に係わる検査装置は、並列した多数のセルを有するハニカム体のセルの状態を検査する検査装置であって、前記ハニカム体の一端面にセルを通過する平行光を照射する照明手段と、前記セルを通過し前記ハニカム体の他端面から出た前記光を受光する受光手段と、前記受光手段で受光する光が所定の光量となるよう当該受光手段で受光した光の光量に基いて前記照明手段で照射する光の光量を制御する調光手段とを有する検査装置である。かかる検査装置によれば、ハニカム体の一端面に照明手段によって光が照射される。照射された光は、ハニカム体のセルを通過し、ハニカム体の他端面から出て受光手段によって受光される。調光手段は、受光手段で受光した光の光量に基づいて受光される光の光量が設定したレベルとなるように照明手段から照射される光の光量を制御する。従って、セルの曲がりの状態によらずハニカム体の他端面から出る光の光量は同じレベルとなる。
【0013】
なお、上記調光手段は、具体的には、前記受光手段で受光した光で撮像された検査像の輝度を算出する輝度演算部と、前記受光手段で受光する光が所定の光量となるよう前記輝度演算部で算出された検査像の輝度に基づき前記照明手段で照射する光の光量を制御する光量演算部とで構成することができる。
【0014】
さらに、前記調光手段は、前記輝度演算部で算出された検査像の輝度と前記照明手段から照射される光の光量との関係式が補正データとして格納されたメモリを有し、前記光量演算部は、前記メモリに格納された補正データに基づいて前記照明手段で照射する光の光量を制御する構成とすることが好ましい。
【0015】
上記課題を解決する本発明に係わる検査方法は、並列した多数のセルを有するハニカム体のセルの状態を検査するため、ハニカム体の一端面にセルを通過する平行光を照射し、ハニカム体のセルを通過して他端面から出た光を受光して検査する検査方法であって、受光する光が所定の光量となるよう受光した光の光量に基いてハニカム体の一端面に照射される光の光量を制御する検査方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の検査装置及び検査方法によれば、照明手段で照射する光の光量は、ハニカム体の他端面から出てくる光の光量が常にほぼ一定となるようにセルの曲がりの状態に応じて制御される。その結果、他端面から出てくる光で形成されるセルの検査像の明るさは、セルの曲がりによらず常に同じレベルとなり、セルの状態の良否を確度よく判定することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施態様の検査装置の概略構成図である。
【図2】図1の検査装置の調光手段における光量計算のフロー図である。
【図3】従来の検査装置の概略構成図である。
【図4】図1の検査装置の調光手段における検査像の一例である。
【図5】図1の検査装置の調光手段における検量線の一例である。
【図6】従来の検査装置による検査像の一例である。
【図7】図1の検査装置における検査像の一例である。
【図8】図1の検査装置におけるフィルタ画像の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明について、その実施態様の一例に基き図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施態様のハニカム体の検査装置の概略構成図である。図2は、図1の検査装置の調光手段における光量計算のフロー図である。図4は、図1の検査装置を用いて検査した際の検査像の概略図である。図5は、図1の検査装置の調光手段において光量の計算に用いる検量線の例である。なお、以下の説明で対象となるハニカム体は、上述したハニカム体7と同様の物であるが、本発明は、例えば金属や樹脂からなるハニカム体の検査にも同様に適用される。さらに、下記説明される検査装置の構成要素は、それぞれ単独に或いは適宜組合せて実施される。
【0019】
本態様の検査装置1は、図1に示すようにハニカム体7の第2開口端面74の一区画にセル71を通過するようにほぼ平行な光14を照射する照明手段12と、第1開口端面73から出た光14を受光する受光手段11と、受光手段11で受光した光14の光量に基づいて照明手段12で照射する光14の光量を制御する調光手段13aを内蔵した処理部13を有している。なお、図1においてハニカム体7は、支持手段である支持台161の上に載置されているが、ハニカム体7の支持手段は、特に図示に限定されることはない。以下、照明手段12、受光手段11、調光手段13aについて説明する。
【0020】
照明手段12は、光14を生成する光源121とコリメータレンズ122を備えている。コリメータレンズ122は、光源121の光をほぼ平行な光14に変換するものである。光源121は、後述する調光手段13aによる調光が容易なように所定の制御信号で光量を自在に制御可能なものが好ましい。なお、照明手段12を、図4(a)に示すハニカム体7の第2開口端面74の区画aに対応するように光14を照射する範囲が調整可能に構成すれば、明確な検査像を得ることができ有利である。
【0021】
受光手段11は、照明手段12から区画aへ照射され、セル71を通過し第1開口端面73から出た光14を受光し、該区画aのセル71の検査像を形成するためのテレセントリックレンズ112と、該テレセントリックレンズ112を通した光を受光し、検査像を撮像するカメラとしてのCCDカメラ111を備えている。なお、本態様では、受光した光14の光量に対応する情報としてセル71の検査像の輝度を採用し、その輝度に基づいて照明手段12における光14の光量の制御をするため、およびモニタ等にセル71の検査像を表示させるために受光手段11としてテレセントリックレンズ112とCCDカメラ111を組み合わせたものを使用しているが、受光手段11としては光14を受光し光量を計測可能なセンサ(例えば光量、照度センサ等)をカメラ等と別途に配したものでもよい。
【0022】
ここで、図1において、水平方向をX軸、鉛直方向をZ軸、X軸、Z軸に直行する方向をY軸、Y軸廻りの軸をθy、Z軸廻りの軸をθzと座標系を定義する。
【0023】
照明手段12は、図1に示すように、ハニカム体7の第2開口端面74の側に配置される。光14の光軸とセル71の軸がほぼ一致するようにハニカム体7と照明手段12の相互の各軸の関係は調整される。受光手段11は、照明手段12から照射され第一開口端面73から出た光14を受光するため、ハニカム体7の第1開口端面73の側にその光軸と照明手段12の光軸とが一致するように配置される。
【0024】
検査台161は、ハニカム体7のセル71の軸と光14の軸とを容易に一致させるために、ハニカム体7をθy軸およびθz軸方向に回転させる光軸合わせ手段16を備えていることが望ましい。なお、光14の光軸とセル71の軸は、照明手段12および受光手段11の軸を一定に保ったまま方向を適宜調整して合わせてもよい。
【0025】
図4(a)に示すように、本態様においてハニカム体7の全体を検査をする場合には、ハニカム体7の第2開口端面74の全体が入るように検査領域Aが設定され、さらに検査領域Aが分割され複数の区画a(a1・・・a35)が設定される。照明手段12と受光手段11は、例えば区画a1からa2・・・a35の順序で移動され、各区画a毎に検査を繰り返しハニカム体7の全体を検査する。
【0026】
照明手段12と受光手段11は区画aごとに人手で移動されてもよいが、照明手段12と受光手段11の位置関係を保持しつつ一体としてYおよびZ軸方向に移動させる移動手段15で移動されることが望ましい。例えば移動手段15としては、照明手段12と受光手段11をそれぞれにYおよびZ軸方向に直動可能に固定したリニアガイドと、サーボモータまたはステッピングモータ等を組合わせて構成することができる。なお移動手段15の移動範囲は、少なくともハニカム体7の直径程度であればハニカム体7の所望の部位の検査が可能となり好ましい。また、上記移動手段15は、ハニカム体7をY軸、Z軸方向に移動させる機構であってもよい。
【0027】
次に、調光手段13aについて説明する。調光手段13aは、受光手段11で受光した光の光量に基づいて照明手段12で照射する光の光量を制御するものであり、受光手段11で撮像された検査像の輝度情報をディジタル値に変換する変換部131と、検査像の輝度情報に基づき区画aの輝度を算出する輝度演算部137と、輝度演算部137で算出された区画aの輝度に基づき照明手段12で照射する光14の光量を算出する光量演算部132と、光量演算部132で算出された光量を制御信号に変換し,照明手段12へ出力する入出力部133と、検査像の輝度情報などのデータを格納するためのメモリ136を有している。
【0028】
変換部131は、受光手段11で撮像された区画aに対応する検査像の輝度をCCDカメラ111の画素ごとにディジタル的な階調に変換する。例えば、ディジタル的な階調として256階調を採用した場合、適宜定めた輝度の最低値を0とし、最高値を255とし、その間の輝度は比例して変換される。
【0029】
メモリ136は、CCDカメラ111の画素の位置とその画素における変換された輝度とを関連付けた輝度情報として格納する領域と、後述するフィルタ画像に係わるデータを格納する領域および光量の補正データを格納する領域を有している。
【0030】
輝度演算部137における動作の原理について説明する。輝度演算部137は、図4(b)に示すように、区画aを複数の小区画wに分割し、各小区画wの平均輝度を求め、各小区画wの輝度を平均し区画aの輝度とする。例えばCCDカメラ111の画素数を100万画素とし、図4(b)に示すように区画a9を25個の小区画w(w1〜w25)に分割した場合には、各小区画wには4万画素が存在する。小区画wの輝度はこの画素に対応した輝度を平均することにより得ることができる。なお、区画aを小区画wに分割するルールや小区画wの平均輝度の求め方は、使用する演算装置の性能等により適宜定めてよい。
【0031】
ここで、図4(b)に示すように、小区画wの検査像には、小区画w25のように全領域にハニカム体7の像が写るもの(第1種の検査像)、小区画w1のようにハニカム体7の像が写らないもの(第2種の検査像)、小区画w8のようにハニカム体7の像が部分的に写るもの(第3種の検査像)の3種の検査像が存在する。輝度演算部137は、第1種の検査像の場合には、その小区画wの輝度を上記の通り区画aの輝度の計算に算入するように判断する。第2種の検査像の場合には計算から除外するように判断する。第3種の検査像の場合には、例えばハニカム体7の像の面積比が設定値以上であれば区画aの輝度の計算に算入し、設定値以下であれば除外するように判断する。
【0032】
ここで、上記第1種の検査像に含まれるセル71が正常で光14が良好にセル71を通過する場合、第1種の検査像と検査の第2種の検査像の輝度がほぼ同等になってしまうため、その検査像のみに基いて輝度演算部137が上記した判断をすることは難しい。そのため、本態様では、小区画wに対応したフィルタ画像と呼ぶデータをメモリ136に格納しておき、フィルタ画像と実際の検査像を比較して上記判断を行うこととした。このフィルタ画像は、例えば、検査対象となるハニカム体7の直径と等しい開口径をもつ平板を準備し、本態様におけるハニカム体7の検査と同様にその平板を検査し、区画aごとに得られた画像データである。このようにして得られたフィルタ画像の例を図8に示す。このフィルタ画像は画像処理で2値化処理されたものであり、ハニカム体7の像が予定される部分が白く、予定されない部分が黒く表示される。
【0033】
ハニカム体7を検査する場合には、輝度計算部137は、ハニカム体7の区画aに対応したフィルタ画像の区画aのフィルタ画像をメモリーから取り出し、ハニカム体7の区画aを小区画wに区分するのと同じルールでフィルタ画像の区画aを小区画wに分割する。輝度計算部137は、フィルタ画像の小区画wにおいて白い部分(ハニカム体7の像があると予定される部分)の小区画wの面積に対する面積比を計算する。輝度計算部137は、算出した面積比に基づいてハニカム体7の小区画wの輝度を区画aの輝度計算に算入するかしないかを判断する。
【0034】
上記輝度演算部137の動作のフローを図2を参照し説明する。
【0035】
メモリ136に格納されている区画aに対応した検査像を取込む(S1)。
【0036】
区画aの検査像について、所定数の小区画wに予め設定したルールに基づき分割する(S2)。
【0037】
小区画w毎に検査像の面積比により区画aの輝度の計算に算入するかどうかを判断する(S3)。算入する場合には、ステップS4に進む。算入しない場合には、ステップS5に進む。
【0038】
小区画wに含まれる画素に対応した輝度の平均値を求め、小区画wの輝度とする(S4)。
【0039】
計算が終了した小区画wの数をメモリ136に予め設定しておいた全ての小区画wの数と比較する(S5)。計算が終了した小区画wの数が少ない場合にはステップS3に戻り、次の小区画wについて処理をする。このようにして小区画w1〜w25の輝度を求める。計算が終了した小区画wの数が等しい場合には、ステップS6に進む。
【0040】
区画aにおける各小区画wの輝度平均値を求め区画aの輝度とする(S6)。
【0041】
次に、光量演算部132について説明する。
照明手段12から照射される光14の光量と区画aにおける検査像の輝度との関係は、図5において実線(以下検量線と称する。)31で示すように、所定の数式で表現可能な曲線で表わされる。従って、図示するように所望の輝度321に対し、輝度演算部137で算出された輝度322が低い場合には、それぞれの輝度に対応する光の光量331、332を求め、その差分(I)を補正するように光源121を制御すればよい。したがって、光量演算部132は、輝度演算部137で算出された区画aの輝度322と所望の輝度311を比較し光源121における光の光量を制御するための制御信号を生成する。ここで、上述した検量線31に対応した補正データはメモリ136に格納されている。
【0042】
光量演算部132の動作について図2を参照し説明する。
【0043】
輝度演算部137の動作フローのステップS6において計算された区画aの輝度が図5における所望の輝度321に対し所定の範囲の中に入っているかを判断する(S7)。区画aの輝度がその範囲に入っている場合には、区画aにおける処理は終了する。
【0044】
所定の範囲に入っていない場合には、メモリ136に格納した、図5に示される検量線31に対応する補正データから区画aの輝度322に対応する光源121の光量のデータ332を求め、所望の輝度321に対応した光量331との差分(I)を求める(S8)。
【0045】
次に求めた差分Iを現在の照明の制御値に加え、照射する光量の新たな制御値とする(S9)。
【0046】
入出力部133は、制御値を制御信号に変換し、照明手段12に出力する(S10)。
【0047】
新たな照明の制御値を用いて照明手段12から光14を照射し、図2で説明した処理を第一開口端面73から出た光14の光量が所定の範囲に入るまで繰り返す。
【0048】
検査装置1の動作を説明する。
ハニカム体7を検査台161にセットする。ハニカム体7が撮像できる位置に照明手段12と受光手段11を移動し、ハニカム体7の第2開口端面74に光14を照射しつつ、ハニカム体7のセル71の軸と光14の光軸の方向とを一致させる。次に図4(a)に示すようにハニカム体7の区画a1に対応した位置に照明手段12と受光手段11を移動し、光14を区画a1に照射する。第1開口端面73から出た光14を受光手段11は受光し、区画a1部の検査像を撮像する。区画a1における検査像の輝度を上述したように輝度演算部137にて計算し、区画a1の輝度が所望の輝度でなければ光源121の光の光量が所定の明るさとなるような制御信号を生成する。目標範囲に入ればそのときの画像を区画の検査像としてメモリに格納する。次に区画a2の位置に移動し、区画a2の検査像を撮像する。このようにして区画a1〜a25の検査像を撮像する。なお、区画aを移動するごとに光軸合わせを行えば、セル71の曲がりによる検査像の明暗の差がより小さくなるので有効である。
【0049】
なお、上記の検査装置では比較的簡単に装置を構成するために、照明手段12は区画aごとに光12を照射し、受光手段11は区画aごとに受光する物としているが、照明手段12は、ハニカム7の第2開口端面74の全体に光14を照射し、受光手段11は第1開口端面73の全てのセル71から出た光を受光する物としてもよい。この場合、照明手段12としては、照射する光14の光量を部分的に調整可能な物が選択される。
【0050】
目視検査を行う場合において、区画aごとに検査像を確認することは不便であり、検査効率の悪化を招く。これを容易かつ効率的に行うために、本態様の検査装置1は、画像合成部134を処理部13に組み込んでいる。
【0051】
画像合成部134は、メモリ136に蓄えられた区画aごとの検査像を合成し、ハニカム体7全体の検査像を形成するものである。これは、受光手段12にて撮像された第1開口端面73の各区画aの検査像の画像情報と、所定の各区画aの検査像を撮像した際の移動手段15の移動量に基づいた各検査像の座標情報からなり、検査像の座標に基づいて各区画aの検査像を合成し、ハニカム体7全体としての検査像を作成する。このように作成された全体検査像は、例えばモニタ等からなる表示部135にて表示され、これを目視確認することで良否判別することができる。
【0052】
表示部135に表示された検査像を確認した場合、図7(b)に示すように白く表示されている部分に対応するセル71は、貫通していることが判る。また、図7(c)に示すように複数のセル71に渉って黒く表示されている部分がある場合、セル71は損傷を受け、詰まりが生じていることが判る。さらに、図7(d)に示すように複数のセル壁72が表示されない部分がある場合、流体通路76が完全に画成されていないことが判る。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、ハニカム体のように多数のセルを有するものだけでなく、例えば長尺の筒体の内部の損傷状態を検査する用途にも利用されうる。
【符号の説明】
【0054】
1 検査装置
11 受光手段
12 照明手段
13 PC処理部
14 光
15 移動手段
16 光軸合わせ手段
3 検量線図
31 検量線
7 ハニカム体
71 セル
72 セル壁
73 第1開口端面
74 第2開口端面
75 外周面
9 従来の検査装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列した多数のセルを有するハニカム体のセルの状態を検査する検査装置であって、前記ハニカム体の一端面にセルを通過する平行光を照射する照明手段と、前記セルを通過し前記ハニカム体の他端面から出た前記光を受光する受光手段と、前記受光手段で受光する光が所定の光量となるよう当該受光手段で受光した光の光量に基いて前記照明手段で照射する光の光量を制御する調光手段とを有する検査装置。
【請求項2】
並列した多数のセルを有するハニカム体のセルの状態を検査する検査装置であって、前記ハニカム体の一端面にセルを通過する平行光を照射する照明手段と、前記セルを通過し前記ハニカム体の他端面から出た光を受光する受光手段と、前記受光手段で受光した光で撮像された検査像の輝度を算出する輝度演算部、及び前記受光手段で受光する光が所定の光量となるよう前記輝度演算部で算出された検査像の輝度に基づき前記照明手段で照射する光の光量を制御する光量演算部を備えた調光手段とを有する検査装置。
【請求項3】
前記調光手段は、前記輝度演算部で算出された検査像の輝度と前記照明手段から照射される光の光量との関係式が補正データとして格納されたメモリーを有し、前記光量演算部は、前記メモリーに格納された補正データに基づいて前記照明手段で照射する光の光量を制御する請求項2に記載の検査装置。
【請求項4】
並列した多数のセルを有するハニカム体のセルの状態を検査するため、ハニカム体の一端面にセルを通過する平行光を照射し、ハニカム体のセルを通過して他端面から出た光を受光して検査する検査方法であって、受光する光が所定の光量となるよう受光した光の光量に基いてハニカム体の一端面に照射される光の光量を制御する検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−300455(P2009−300455A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−212636(P2009−212636)
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【分割の表示】特願2004−83987(P2004−83987)の分割
【原出願日】平成16年3月23日(2004.3.23)
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)
【Fターム(参考)】