説明

ハニカム構造体および排ガス浄化装置

【課題】本発明は、端面側で破損や欠けの生じにくいハニカム構造体を提供することを目的とする。
【解決手段】ゼオライトおよび無機バインダを含み、長手方向に沿って、第1の端面から第2の端面に延伸するセル壁によって複数のセルが区画された柱状のハニカムユニットにより構成されるハニカム構造体であって、前記第1の端面側のセル壁の厚さは、前記ハニカムユニットの長手方向の中央部のセル壁の厚さよりも厚く、および/または前記第1の端面側のセル壁の気孔率は、前記ハニカムユニットの長手方向の中央部のセル壁の気孔率よりも小さいことを特徴とするハニカム構造体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体および排ガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車排ガスの浄化に関しては、多くの技術が開発されているが、交通量の増大もあって、まだ十分な排ガス対策がとられているとは言い難い。日本国内においても、世界的にも自動車排ガス規制は、さらに強化されていく方向にある。その中でも、ディーゼル排ガス中のNOx規制については、非常に厳しくなってきている。従来は、エンジンの燃焼システムの制御によってNOx低減を図ってきたが、それだけでは対応しきれなくなってきた。このような課題に対応するディーゼルNOx浄化システムとして、アンモニアを還元剤として用いるNOx還元システム(SCRシステムと呼ばれている。)が提案されている。このようなシステムに用いられる触媒担体として、ハニカム構造体が知られている。
【0003】
このハニカム構造体は、例えば、長手方向に沿って、該ハニカム構造体の一方の端面から他方の端面まで延伸する複数のセル(貫通孔)を有し、これらのセルは、触媒が担持されたセル壁により、相互に区画されている。従って、このようなハニカム構造体に排ガスを流通させた場合、セル壁に担持された触媒によって、排ガスに含まれるNOxが改質されるため、排ガスを処理することができる。
【0004】
一般に、このようなハニカム構造体のセル壁は、コージェライトで構成され、このセル壁には、触媒として、例えばゼオライト(鉄または銅等でイオン交換されたもの)が担持される。この他、セル壁にゼオライトを使用し、ハニカム構造体を形成することが提案されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開WO06/00849号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来のハニカム構造体を触媒担体として使用した場合、ハニカム構造体に流入される高温高圧の排ガスの影響により、ハニカム構造体の使用中に、排ガスの流入側端面およびその近傍に、欠けや破損が生じる場合がある。ハニカム構造体にこのような欠けや破損が生じると、反応に有効な触媒量が低下し、NOx浄化性能が低下してしまう。また、飛散した異物によりセルに目詰まりが生じ、適正な浄化処理ができなくなってしまう場合がある。
【0007】
本発明は、このような問題に鑑みなされたものであり、端面側で破損や欠けの生じにくいハニカム構造体を提供することを目的とする。また、そのようなハニカム構造体を有する排ガス浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、ゼオライトおよび無機バインダを含み、長手方向に沿って、第1の端面から第2の端面に延伸するセル壁によって複数のセルが区画された柱状のハニカムユニットにより構成されるハニカム構造体であって、
前記第1の端面側のセル壁の厚さは、前記ハニカムユニットの長手方向の中央部のセル壁の厚さよりも厚く、および/または
前記第1の端面側のセル壁の気孔率は、前記ハニカムユニットの長手方向の中央部のセル壁の気孔率よりも小さいことを特徴とする。
【0009】
当該ハニカム構造体において、前記第1の端面側のセル壁の厚さは、0.17〜0.37mmであり、
前記ハニカムユニットの長手方向の中央部のセル壁の厚さは、0.15〜0.35mmであることが好ましい。
【0010】
また当該ハニカム構造体において、前記セル壁の第1の端面側のセル壁の気孔率は、20〜35%であり、
前記ハニカムユニットの長手方向の中央部のセル壁の気孔率は、25〜40%であることが好ましい。
【0011】
また、前記セル壁の第1の端面側は、セラミックを含む端部被覆物が備えられていることが好ましい。
【0012】
前記端部被覆物は、前記セル壁の第1の端面および/または第2の端面から、前記ハニカムユニットの長手方向に沿って10mm以下までの領域に設置されていることが好ましい。
【0013】
また、前記端部被覆物は、前記ハニカムユニットに含まれる少なくとも一つの材料を含んでいても良い。
【0014】
あるいは、前記端部被覆物は、少なくともゼオライトと、アルミナまたはジルコニアを含んでいても良い。
【0015】
また前記端部被覆物がゼオライトを含む場合、ゼオライトは、β型ゼオライト、Y型ゼオライト、フェリエライト、ZSM−5型ゼオライト、モルデナイト、フォージサイト、ゼオライトA、またはゼオライトLであっても良い。
【0016】
また、前記ゼオライトは、Fe、Cu、Ni、Co、Zn、Mn、Ti、AgまたはVでイオン交換されていても良い。
【0017】
また、前記ハニカムユニットに含まれる無機バインダは、アルミナゾル、シリカゾル、チタニアゾル、水ガラス、セピオライト、およびアタパルジャイトの群から選定された少なくとも一つの材料を含んでいても良い。
【0018】
また前記ハニカムユニットは、さらに無機繊維を含んでいても良い。
【0019】
そのような無機繊維は、アルミナ、シリカ、炭化珪素、シリカアルミナ、ガラス、チタン酸カリウムおよびホウ酸アルミニウムの群から選定された少なくとも一つであっても良い。
【0020】
また、当該ハニカム構造体は、複数の前記ハニカムユニットを接着層を介して接合することにより構成されていても良い。
【0021】
さらに本発明では、ハニカム構造体と、保持シール材と、金属容器とからなる排ガス浄化装置であって、
前記ハニカム構造体は、請求項1乃至13のいずれか一つのハニカム構造体であり、
前記ハニカム構造体は、前記セル壁の第1の端面が排ガス流入側となるように設置されていることを特徴とする。
【0022】
当該排ガス浄化装置において、前記ハニカムユニットの第2の端面側のセル壁の厚さおよび気孔率は、前記ハニカムユニットの長手方向の中央部のセル壁の厚さおよび気孔率と、実質的に同じであることが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明では、端面側で破損や欠けの生じにくいハニカム構造体を提供することが可能となる。また、そのようなハニカム構造体を有する排ガス浄化装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明のハニカム構造体の一例を模式的に示した斜視図である。
【図2】図1のハニカム構造体を構成するハニカムユニットの一例を模式的に示した斜視図である。
【図3】本発明のハニカム構造体における端部の一例を模式的に示した断面図である。
【図4】本発明のハニカム構造体における別の端部の一例を模式的に示した断面図である。
【図5】本発明のハニカム構造体の別の構成例を示した斜視図である。
【図6】本発明によるハニカム構造体を備える排ガス浄化装置の模式的な構成例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面により本発明の形態を説明する。
【0026】
図1には、本発明によるハニカム構造体を模式的に示す。また、図2には、図1に示したハニカム構造体の基本単位である、ハニカムユニットの一例を模式的に示す。
【0027】
図1に示すように、本発明のハニカム構造体100は、2つの端面110および115を有する。また、ハニカム構造体100の両端面を除く外周面には、外周コート層120が形成されている。
【0028】
ハニカム構造体100は、例えば、図2に示す柱状のセラミック製ハニカムユニット130を、接着層150を介して複数個(図1の例では、縦横4列ずつ16個)接合させた後、外周側を所定の形状(図1の例では、円柱状)に沿って切削加工することにより構成される。
【0029】
図2に示すように、ハニカムユニット130は、該ハニカムユニットの長手方向に沿って一端から他端まで延伸し、両端面で開口された複数のセル(貫通孔)121と、該セルを区画するセル壁123とを有する。なお、ハニカムユニット130は、SCRシステムとして、NOx浄化反応に寄与するゼオライトを含む。従って、本発明によるハニカム構造体を、NOx浄化用の触媒担体として使用する場合、セル壁に、必ずしも貴金属触媒を担持する必要はない。ただし、セル壁には、さらに貴金属触媒を担持しても良い。
【0030】
このように構成されたハニカム構造体100は、例えば、尿素タンクを有する尿素SCRシステムの触媒担体として使用される。この尿素SCRシステムに、排ガスが流通されると、尿素タンクに収容されている尿素が排ガス中の水と反応して、アンモニアが生じる。

CO(NH+HO → 2NH+CO 式(1)

このアンモニアが、NOxを含む排ガスとともに、ハニカム構造体100の一方の開口面(例えば開口面110)から、各セルに流入した場合、セル壁に含まれているゼオライト上で、この混合ガスの間で、以下の反応が生じる。

4NH+4NO+O → 4N+6HO 式(2−1)
8NH+6NO → 7N+12HO 式(2−2)
2NH+NO+NO → 2N+3HO 式(2−3)

その後、浄化された排ガスは、ハニカム構造体100の他方の端面(例えば端面115)から排出される。このように、ハニカム構造体100内に排ガスを流通させることにより、排ガス中のNOxを処理することができる。またここでは、尿素水を加水分解して、NHを供給する方法を示したが、その他の方法でNHを供給しても良い。
【0031】
ここで、従来のハニカム構造体をNOx浄化用の触媒担体として使用した場合、ハニカム構造体の使用中に、ハニカム構造体に流入される高温高圧の排ガスの影響により、排ガスの流入側端面およびその近傍に、しばしば、欠けや破損が生じることが観測されている。ハニカム構造体にこのような欠けや破損が生じると、反応に有効な触媒量が低下し、NOx浄化性能が低下してしまう。また、飛散した異物によりセルに目詰まりが生じ、適正な浄化処理ができなくなってしまう場合があるという問題がある。
【0032】
これに対して、本発明によるハニカム構造体100では、ハニカム構造体100の一方の端面(以下、第1の端面110とする)およびその近傍(以下、これらの部分を合わせて、端面側またはハニカム構造体の「端部」112と称する)が「端部処理」されていることに特徴がある。
【0033】
ここで、「端部処理」とは、ハニカム構造体の「端部」112を、第3の物質で被覆および/または浸透する処理を言う。「端部処理」には、例えば、ハニカム構造体の「端部」112を、スラリー中に浸漬させ、「端部」112にスラリー成分を付着および/または浸透させることが含まれる。また「端部処理」されたハニカム構造体は、以下の(A)〜(C)に示す少なくとも一つの特徴を有する(なお、本発明において、第3の物質(端部被覆物とも言う)で形成された被覆部が存在する場合のセル壁の厚さ、すなわち「端部」の厚さは、セル壁の厚さと、第3の物質(端部被覆物とも言う)で形成された被覆部の厚さの合計の厚さ(図3および図4のT)とする。):
(A)「端部」112において、セル壁の厚さが端部以外のセル壁(ハニカムユニットの長手方向の中央部のセル壁)に比べて厚くなっている。
(B)「端部」112において、セル壁の厚さが、端部以外(ハニカムユニットの長手方向の中央部)のセル壁と実質的に同じで、気孔率が端部以外のセル壁(ハニカムユニットの長手方向の中央部のセル壁)に比べて小さくなっている。
(C)「端部」112において、セル壁の厚さが端部以外のセル壁(ハニカムユニットの長手方向の中央部のセル壁)に比べて厚くなっており、かつ、セル壁の気孔率が端部以外のセル壁(ハニカムユニットの長手方向の中央部のセル壁)に比べて小さくなっている。
【0034】
例えば、ハニカム構造体の「端部」112に、浸透性の低い(粘度の大きい)スラリーを用いた場合、該スラリー成分は、セル壁の表面に留まり、セル壁の気孔(ポア)に浸透しにくく、この状態で固定化される。したがって、そのような場合は、「端部」112は、(A)のような形態になる傾向がある。また例えば、ハニカム構造体の「端部」112に、浸透性の高い(粘度の小さい)スラリーを用いた場合は、そのようなスラリーがセル壁に存在する多数の気孔(ポア)中に侵入しやすいため、セル壁の厚さは、あまりあるいは全く変化しない傾向がある。しかしながら、この場合は、セル壁の気孔(ポア)が第3の物質で充填されてしまうため、(B)のように、「端部」112では、他の部分に比べて気孔率が低下する傾向がある。
【0035】
また、例えば、ハニカム構造体の「端部」112に、浸透性が中程度のスラリーを用いた場合は、スラリーがセル壁に存在する気孔(ポア)に浸透(侵入)するが、浸透(侵入)する割合が(B)の場合よりも少なくなるので、スラリー成分は、セル壁の表面に留まり、その状態で固化される。従って、セル壁の厚さが端部以外のセル壁(ハニカムユニットの長手方向の中央部のセル壁)に比べて厚くなり、セル壁の気孔率は小さくなる傾向がある。この場合は、(A)よりもセル壁の厚さは薄く(セル壁の厚さが端部以外のセル壁(ハニカムユニットの長手方向の中央部のセル壁)よりも厚い)、かつ(B)よりもセル壁の気孔率が小さく(セル壁の厚さが端部以外のセル壁(ハニカムユニットの長手方向の中央部のセル壁)よりも大きい)なる傾向がある。
【0036】
ハニカム構造体100の「端部」112に、このような「端部処理」を行った場合、(A)、(B)、(C)のいずれかの効果により、ハニカム構造体100の「端部」112の強度が向上する。従って、本発明では、使用中に「端部」112に欠けや破損が生じにくいハニカム構造体を得ることができる。
【0037】
例えば、(A)の形態を有するハニカム構造体の場合、「端部」112でのセル壁の厚さは、0.17mm〜0.37mmの範囲である。また、(B)の形態を有するハニカム構造体の場合、「端部」112での気孔率は、20%〜35%の範囲であることが好ましい。
【0038】
例えば、(C)の形態を有するハニカム構造体の場合、「端部」112でのセル壁の厚さは、0.17〜0.37mmの範囲であり、かつ気孔率が20〜35%の範囲であることが好ましい。
【0039】
以下、(A)の特徴が得られるように「端部処理」されたハニカム構造体を例に、本発明の特徴をより詳しく説明する。
【0040】
図3には、本発明によるハニカム構造体100の「端部」112の拡大断面図の一例を模式的に示す。この図に示すように、ハニカム構造体100の「端部」112は、第3の物質で被覆されており、この部分だけ、セル壁の厚さが他のセル壁に比べて厚くなっている。以下、このような、セル壁の厚さの増大に寄与する第3の物質からなる部分を、特に、端部被覆物190と称する。なお図3においては、端部被覆物190は、均一な厚さを有するように示されているが、端部被覆物190は、不均一な厚さで形成されていても良い。
【0041】
なお、ハニカムユニットの長手方向の中央部の位置は、ハニカムユニットの長手方向の中央付近であれば特に限定されないが、中央部を中心とした最大20mm程度の領域を言うこととする。また、端部被覆物190が不均一な厚さで形成されている場合は、端部のセル壁の厚さは、最も厚い部分の厚さとすることにする。
【0042】
ハニカム構造体100の「端部」112に、このような端部被覆物190を備えた場合、前述のように、端部被覆物190の分だけセル壁の123の厚さが増大するため、ハニカム構造体100の「端部」112の強度を向上させることが可能となる。
【0043】
端部被覆物190が備えている領域の幅、すなわち、Z方向に沿った端部被覆物190の長さLは、特に限られないが、長さLは、最大20mm程度が好ましく、10mm以下がより好ましい。
【0044】
図4には、本発明によるハニカム構造体の別の「端部」112の拡大断面図の一例を模式的に示す。この図には、前述の(B)の特徴が得られるように「端部処理」されたハニカム構造体が示されている。すなわち、この図の例では、ハニカム構造体100の「端部」112におけるセル壁の厚さは、端部以外(ハニカムユニットの長手方向の中央部)のセル壁の部分と実質的に等しくなっている。ただし、「端部」112において、気孔率は、端部以外のセル壁(ハニカムユニットの長手方向の中央部のセル壁)に比べて小さくなっている。
【0045】
なお前述の説明から、図3および図4の特徴的構造を有するハニカム構造体では、使用中に「端部」112に欠けや破損が生じにくくなることは明らかであろう。
【0046】
ここで、端部被覆物190は、いかなるセラミックを含む材料で構成されても良く、例えば、ゼオライト、アルミナ、ジルコニアを含んでも良い。例えば、端部被覆物190がゼオライトを含む場合、端部被覆物190自身がNOx浄化反応に寄与するようになる。また、端部被覆物190が、後述するような、セル壁を構成する材料のうち少なくとも1種類の材料を有する場合、端部被覆物190の耐剥離性が向上する。特に、端部被覆物190を、セル壁とほぼ同等の材料組成で構成した場合、端部被覆物190とセル壁123との熱膨張特性が整合し、端部被覆物190の耐剥離性をより一層向上させることができる。
【0047】
端部被覆物190がゼオライトを含む場合、そのようなゼオライトは、β型ゼオライト、Y型ゼオライト、フェリエライト、ZSM−5型ゼオライト、モルデナイト、フォージサイト、ゼオライトA、またはゼオライトLであっても良い。あるいは、ゼオライトは、Fe、Cu、Ni、Co、Zn、Mn、Ti、AgまたはVでイオン交換されていても良い。
【0048】
図3および図4では、ハニカム構造体の一方の端面の端部のみに端部被覆物が備えられた例を説明したが、他方の端面の端部にも、端部被覆物が備えられていても良い。
【0049】
本発明において、ハニカムユニット130は、ゼオライトに加えて無機バインダを含む。さらに、ハニカムユニット130は、強度を向上させるため、ゼオライト以外の無機粒子および/または無機繊維を含んでいても良い。
【0050】
ゼオライトは、例えば、β型ゼオライト、Y型ゼオライト、フェリエライト、ZSM−5型ゼオライト、モルデナイト、フォージサイト、ゼオライトA、またはゼオライトLが好ましい。また、ゼオライトは、Fe、Cu、Ni、Co、Zn、Mn、Ti、AgまたはVでイオン交換されたものであっても良い。また、ゼオライトは、アルミナに対するシリカの重量比が30〜50の範囲であることが好ましい。
【0051】
無機バインダとしては、無機ゾルや粘土系バインダ等を用いることができ、上記無機ゾルの具体例としては、例えば、アルミナゾル、シリカゾル、チタニアゾル、水ガラス等が挙げられる。また、粘土系バインダとしては、例えば、白土、カオリン、モンモリロナイト、セピオライト、アタパルジャイト等が挙げられる。これらは単独で用いても良く、2種以上を併用してもよい。
【0052】
これらの中では、アルミナゾル、シリカゾル、チタニアゾル、水ガラス、セピオライトおよびアタパルジャイトからなる群から選択された少なくとも1種が望ましい。
【0053】
ゼオライト以外の無機粒子としては、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、セリア、ムライト等が望ましい。これらの粒子の前駆体を用いても良い。これらの粒子は、単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。また、これらの中では、アルミナ、ジルコニアが特に望ましい。
【0054】
また、ハニカムユニットに無機繊維を加える場合、無機繊維の材料としては、アルミナ、シリカ、炭化珪素、シリカアルミナ、ガラス、チタン酸カリウムまたはホウ酸アルミニウム等が望ましい。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。上記材料の中では、アルミナが望ましい。なお、ウィスカも無機繊維に含まれるものとする。
【0055】
ハニカムユニットに含まれる無機粒子(ゼオライトおよびゼオライト以外の無機粒子)の量について、望ましい下限は30重量%であり、より望ましい下限は40重量%であり、さらに望ましい下限は50重量%である。一方、望ましい上限は90重量%であり、より望ましい上限は80重量%であり、さらに望ましい上限は75重量%である。無機粒子(ゼオライトおよびゼオライト以外の無機粒子)の含有量が30重量%未満では、浄化に寄与するゼオライトの量が相対的に少なくなる。一方、90重量%を超えると、ハニカムユニットの強度が低下する可能性がある。
【0056】
無機バインダは、固形分として、5重量%以上含まれることが好ましく、10重量%以上含まれることがより好ましく、15重量%以上含まれることがさらに好ましい。一方、無機バインダの含有量は、固形分として、50重量%以下であることが好ましく、40重量%以下であることがより好ましく、35重量%以下であることがさらに好ましい。無機バインダの量が固形分として5重量%未満では、製造したハニカムユニットの強度が低くなることがある。一方、無機バインダの量が固形分として50重量%を超えると、原料組成物の成型性が悪くなることがある。
【0057】
ハニカムユニットに無機繊維が含まれる場合、無機繊維の合計量について、望ましい下限は3重量%であり、より望ましい下限は5重量%であり、さらに望ましい下限は8重量%である。一方、望ましい上限は50重量%であり、より望ましい上限は40重量%であり、さらに望ましい上限は30重量%である。無機繊維の含有量が3重量%未満ではハニカムユニットの強度向上の寄与が小さくなり、50重量%を超えると浄化に寄与するゼオライトの量が相対的に少なくなる。
【0058】
前述のハニカムユニット130の長手方向に対して垂直な断面の形状は、特に限定されるものではなく、ハニカムユニットを接着層を介して接合することが可能であれば、いかなる形状であっても良い。ハニカムユニット130の形状は、正方形、長方形、六角形、扇形などであっても良い。
【0059】
また、ハニカムユニット130のセル121の長手方向に対して垂直な断面の形状は、特に限られず、正方形以外に、例えば三角形、多角形としても良い。
【0060】
ハニカムユニット130のセル密度は、15.5〜186個/cm(100〜1200cpsi)の範囲であることが好ましく、46.5〜170個/cm(300〜1100cpsi)の範囲であることがより好ましく、62〜155個/cm(400〜1000cpsi)の範囲であることがさらに好ましい。
【0061】
ハニカムユニット130のセル壁123の厚さ(「端部」112を除く)は、特に限定されないが、最低限必要な強度および浄化性能の観点から、0.15mm〜0.35mmの範囲であることが好ましい。
【0062】
本発明のハニカム構造体100の形状は、いかなる形状であっても良い。例えば、ハニカム構造体100の形状は、図1に示すような円柱の他、楕円柱、四角柱、多角柱等であっても良い。
【0063】
ハニカム構造体100の接着層150は、接着層用ペーストを原料として形成される。接着層用ペーストとしては、特に限定されるものではないが、例えば、無機粒子と無機バインダを混ぜたものや、無機バインダと無機繊維を混ぜたものや、無機粒子と無機バインダと無機繊維を混ぜたものなどを用いることができる。また、これらにさらに有機バインダを加えてもよい。
【0064】
無機粒子、無機バインダおよび無機繊維としては、前述のようなハニカムユニットを構成する材料と同様のものを使用することができる。また、有機バインダとしては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースなどから選ばれる1種以上が挙げられる。有機バインダの中では、カルボキシルメチルセルロースが望ましい。
【0065】
接着層の厚さは、0.3〜2.0mmの範囲であることが好ましい。接着層の厚さが0.3mm未満では十分な接合強度が得られないおそれがあるためである。また接着層の厚さが2.0mmを超えると、圧力損失が大きくなることがある。なお、接合させるハニカムユニットの数は、ハニカム構造体の大きさに合わせて適宜選定される。
【0066】
ハニカム構造体100の外周コート層120は、前述のようなハニカムユニットを構成する材料と同様の無機粒子、無機バインダおよび無機繊維を含み、さらに有機バインダを含むペーストを原料として形成される。外周コート層120は、接着層150と同じ材料であっても、異なる材料であっても良いが、同じ材料であることが好ましい。接着層同様、剥離やクラックが発生しにくいからである。原料となるペーストには、必要に応じて、酸化物系セラミックを成分とする微小中空球体であるバルーンや、球状アクリル粒子、グラファイト等の造孔剤を添加しても良い。外周コート層の最終的な厚さは、0.1mm〜2.0mmが好ましい。
【0067】
以上の記載では、図1のような、接着層150を介して複数のハニカムユニット130を接合することにより構成されるハニカム構造体を例に説明した。
【0068】
図5に、本発明のハニカム構造体の別の例を示す。なお、ハニカム構造体200は、複数のセル122がセル壁124を隔てて、長手方向に並設された単一のハニカムユニットから構成されること以外、ハニカム構造体100と同様である。なお、図5の例では、ハニカム構造体200の外周面に、外周コート層120が設置されているが、この外周コート層は、形成しても、形成しなくても良い。
【0069】
本発明によるハニカム構造体は、NOx等の排ガス浄化装置に使用することができる。特に、SCRシステム(例えば、尿素SCRシステム)に用いる排ガス浄化装置に適している。図6には、そのような排ガス浄化装置の一構成例を模式的に示す。
【0070】
図6に示すように、排ガス浄化装置500は、主としてハニカム構造体100(または200、以下同じ)、ハニカム構造体100を収容する金属容器512、およびハニカム構造体100と金属容器512との間に設置され、ハニカム構造体100を適切な位置に保持する保持シール材524で構成される。また、排ガス浄化装置500の導入部には、エンジン等の内燃機関から排出された排ガスを導入するための導入管574が接続されており、排ガス浄化装置500の排出部には、排ガスを排出するための排出管575が接続されている。図6において矢印は、排ガスの流れを示している。なお、ハニカム構造体は、端部処理された第1の端面110の側が排ガスの導入側となるようにして、排ガス浄化装置500に設置される。
【0071】
エンジン等の内燃機関から排出された排ガスは、導入管574を通って、金属容器512内に導入され、導入管574と面するハニカム構造体100の第1の端面110から各セルに流入される。セル内に流入した排ガスは、同一のセルを通って、系外に排出される。
【0072】
前述のように、本発明によるハニカム構造体は、「端部」112に「端部処理」が実施されている。従って、そのようなハニカム構造体では、第1の端面110に、高温高圧の排ガスが流入されても、欠けや破損の発生が抑制される。このため、本発明による排気ガス浄化装置500では、目詰まり等の問題が生じにくく、長期にわたって、安定なNOx浄化性能を維持することができる。
【0073】
排ガス導入側にハニカム構造体の端面処理をされている第1の端面の端部が配置された排ガス浄化装置の例を図6に示したが、第2の端面の端部(排ガスの排出部側)にも、端面処理がされていても良い。
【0074】
第1の端面に高温高圧の排ガスが流入するので、第1の端面の端部に欠けや破損が発生しやすく、第2の端面の端部は、欠けや破損が発生しにくい点と、工程数の増加やコスト等を考慮すると、片側(第1の端面の端部)のみに端面処理を施すことが好ましい。
(ハニカム構造体の製造方法)
次に、本発明のハニカム構造体の製造方法を説明する。なお、ここでは、前述の図1のような、複数のハニカムユニットから構成されるハニカム構造体100の製造方法を例に説明する。
【0075】
まず、ゼオライトを含む無機粒子、無機バインダを主成分とし、さらに必要に応じて無機繊維を添加した原料ペーストを用いて押出成形等を行い、ハニカムユニット成形体を作製する。
【0076】
原料ペーストには、これらの他に有機バインダ、分散媒および成形助剤を成形性にあわせて適宜加えてもよい。有機バインダとしては、特に限定されるものではないが、例えば、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレングリコール、フェノール樹脂およびエポキシ樹脂等から選ばれる1種以上の有機バインダが挙げられる。有機バインダの配合量は、無機粒子、無機バインダおよび無機繊維の合計100重量部に対して、1〜10重量部が好ましい。
【0077】
分散媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、水、有機溶媒(ベンゼンなど)およびアルコール(メタノールなど)などを挙げることができる。成形助剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸、脂肪酸石鹸およびポリアルコール等を挙げることができる。
【0078】
原料ペーストは、特に限定されるものではないが、混合・混練することが好ましく、例えば、ミキサーやアトライタなどを用いて混合してもよく、ニーダーなどで十分に混練してもよい。原料ペーストを成形する方法は、特に限定されるものではないが、例えば、押出成形などによってセルを有する形状に成形することが好ましい。
【0079】
次に、得られた成形体は、乾燥することが好ましい。乾燥に用いる乾燥機は、特に限定されるものではないが、マイクロ波乾燥機、熱風乾燥機、誘電乾燥機、減圧乾燥機、真空乾燥機および凍結乾燥機などが挙げられる。また、得られた成形体は、脱脂することが好ましい。脱脂する条件は、特に限定されず、成形体に含まれる有機物の種類や量によって適宜選択するが、400℃、2時間が好ましい。更に、得られた成形体は、焼成することが好ましい。焼成条件としては、特に限定されるものではないが、600〜1200℃が好ましく、600〜1000℃がより好ましい。この理由は、焼成温度が600℃未満では焼結が進行せずハニカムユニットとしての強度が低くなり、1200℃を超えると、焼結が過剰に進行し、ゼオライトの反応サイトが減少してしまうためである。
【0080】
次に、以上の工程で得られたハニカムユニットの側面に、後に接着層となる接着層用ペーストを均一な厚さで塗布した後、この接着層用ペーストを介して、順次他のハニカムユニットを積層する。この工程を繰り返し、所望の寸法の(例えば、ハニカムユニットが縦横4個ずつ配列された)ハニカム構造体を作製する。
【0081】
次にこのハニカム構造体を加熱して、接着層用ペーストを乾燥、固化させて、接着層を形成させるとともに、ハニカムユニット同士を固着させる。
【0082】
次にダイヤモンドカッター等を用いて、ハニカム構造体を、例えば円柱状に切削加工し、必要な外周形状のハニカム構造体を作製する。
【0083】
次に、ハニカム構造体の外周面(側面)に外周コート層用ペーストを塗布後、これを乾燥、固化させて、外周コート層を形成する。
【0084】
複数のハニカムユニットを接着層によって接合させた後(ただし、外周コート層を設けた場合は、外周コート層を形成させた後)に、このハニカム構造体を脱脂することが好ましい。この処理により、接着層用のペーストおよび外周コート層用ペーストに有機バインダが含まれている場合、これらの有機バインダを脱脂除去することができる。脱脂条件は、含まれる有機物の種類や量によって適宜選定されるが、通常の場合、700℃、2時間である。
【0085】
次に、得られたハニカム構造体を用いて、端部処理を実施する。端部処理は、例えば、ハニカム構造体の一方の端部(例えば、端面〜長手方向に沿って約10mmの領域)を、セラミック成分を含むスラリー中に、10〜100秒浸漬させることにより行われる。
端部処理用スラリーとしては、例えば、端部被覆物190を構成する前述のようなセラミック材料のうち少なくとも1種類を固形成分として含むものが使用される。
【0086】
その後、ハニカム構造体を乾燥して焼成し、セラミック成分をハニカム構造体に固定化させることにより、図1に示す形状の、端部処理されたハニカム構造体を得ることができる。複数の異なる形状のハニカムユニットを作製し、これを接合することにより、ハニカム構造体を作製しても良い。
【実施例】
【0087】
以下、実施例により本発明を詳しく説明する。
(実施例1)
まず、Feゼオライト粒子(粒子径2μm)2600重量部、アルミナゾル2600重量部(固形分20wt%)、アルミナ繊維(平均繊維長100μm、平均繊維径6μm)780重量部、メチルセルロース410重量部に、可塑剤および潤滑剤(ユニルーブ)を混合、混練して混合組成物を得た。Feゼオライト粒子は、ゼオライト重量に対して3wt%の分がFeでイオン交換されたものである。ゼオライト粒子を硝酸鉄アンモニウム溶液に含浸させ、Feイオン交換を行った。硝酸鉄アンモニウム溶液の濃度は、ゼオライトが3wt%の鉄を含むように調整したものを用いた。なおゼオライトは、βゼオライトを用いた。イオン交換量は、装置ICPS−8100(島津製作所)を用いて、IPC発光分析により求めた。
【0088】
次に、この混合組成物を押出成形機により押出成形を行い、ハニカムユニット成形体を得た。
【0089】
次に、マイクロ波乾燥機および熱風乾燥機を用いてこれらの成形体を十分乾燥させ、400℃で2時間保持して脱脂した。その後、700℃で2時間保持して焼成を行い、ハニカムユニット(縦35mm×横35mm×全長150mm)を得た。得られたハニカムユニットのセル壁の厚さは、0.25mmであり、セル密度は、63個/cmであり、開口率は、65%であった。
【0090】
次に、得られたハニカムユニットの気孔率を測定した。気孔率測定用のサンプルは、ハニカムユニットを1辺が0.8cmの立方体に切断した後、これをイオン交換水で超音波洗浄し、乾燥させて調製した。気孔率の測定は、自動ポロシメータ:オートポアIII9405(島津製作所製)を用い、0.25psia圧力毎に測定した(以下、気孔率の測定は、全てこの方法により実施した)。気孔率は、30%であった。
【0091】
次に、得られたハニカムユニットの第1の端部(端面〜長手方向に約10mmの領域)を端部処理用スラリー中に浸漬させ、端部処理を行った。端部処理用スラリーは、固形分として、80wt%のFeゼオライト粒子(平均粒子径2μm)と20wt%アルミナゾル(固形分20wt%)とを含むものであり、固形分量がスラリー全体の35wt%となるように調製した。Feゼオライト粒子は、ゼオライト重量に対して3wt%の分がFeでイオン交換されたものである。端部処理は、60秒間行い、その後、ハニカムユニットを乾燥させ、700℃で1時間焼成を行い、第1の端部に端部処理を行ったハニカムユニットを作製した。
【0092】
この端部処理により、ハニカムユニットの第1の端部のセル壁は、0.30mmの厚さとなり、気孔率は、30%となった。
(実施例2)
実施例1の場合と同様の方法により、第1の端部が端部処理された実施例2に係るハニカムユニットを作製した。なお、この実施例では、端部処理用スラリーは、固形分として、80wt%のアルミナ粒子(粒子径2μm)と20wt%アルミナゾル(固形分20wt%)とを含むものであり、固形分量がスラリー全体の35wt%となるように調製した。
【0093】
端部処理により、ハニカムユニットの第1の端部のセル壁は、0.30mmの厚さとなり、気孔率は、30%となった。
(実施例3)
実施例1の場合と同様の方法により、第1の端部が端部処理された実施例3に係るハニカムユニットを作製した。なお、この実施例では、端部処理用スラリーは、固形分として、アルミナゾル(固形分20wt%)のみを含むものであり、固形分量がスラリー全体の35wt%となるように調製した。
【0094】
端部処理前後で、ハニカムユニットの第1の端部のセル壁の厚さは、変化しなかった(0.25mm)が、気孔率は、25%に低下した。
(実施例4)
実施例1の場合と同様の方法により、第1の端部が端部処理された実施例4に係るハニカムユニットを作製した。なお、この実施例では、端部処理用スラリーは、固形分として、ジルコニアゾル(固形分20wt%)のみを含むものであり、固形分量がスラリー全体の35wt%となるように調製した。
【0095】
端部処理前後で、ハニカムユニットの第1の端部のセル壁の厚さは、変化しなかった(0.25mm)が、気孔率は、25%に低下した。
(比較例1)
実施例1の場合と同様の方法により、比較例1に係るハニカムユニットを作製した。ただし、この比較例では、ハニカムユニットに対して、端部処理を実施していない。従って、ハニカムユニットのセル壁の厚さおよび気孔率は、場所によらずほぼ一定で、それぞれ、0.25mmおよび30%であった。
【0096】
実施例1〜4、および比較例1における端部処理用スラリーの組成(固形分)を表1に示した。また、表1には、実施例1〜4、および比較例1に係る第1の端部のセル壁厚さと気孔率、ならびにその他の領域(ハニカムユニットの長手方向の中心部の約10mmの領域(中心から約5mmの領域))におけるセル壁厚さと気孔率を、まとめて示した。
【0097】
【表1】

(チッピング試験)
上記実施例1〜4、および比較例1に係るハニカムユニットを用いて、チッピング試験を行った。チッピング試験は、パイプで構成された傾斜経路に沿って鉄球を転がし、この鉄球を、傾斜経路の最下部に設置されたハニカムユニットの一方の端面に衝突させることにより行った。鉄球には、直径が1.0cmの炭素鋼球を使用し、鉄球の重量は、4.1gとした。水平方向に対する傾斜経路の傾斜角度は、20゜とし、鉄球の傾斜経路に沿った移動距離は、20cmとした。
【0098】
チッピング試験後に、ハニカムユニットの衝突端面に異常が生じているかどうかを目視により確認した。
【0099】
各ハニカムユニットにおけるチッピング試験結果を前述の表1の右端の欄に示す。○は、目視の結果、破損が認められなかった場合であり、×は、破損が生じた場合である。これらの結果から、本発明によるハニカムユニット(実施例1〜4)においては、端面が、比較例1のハニカムユニットに比べて、良好な強度を示すことが明らかとなった。
【符号の説明】
【0100】
100 ハニカム構造体
110 第1の端面
112 端部
115 第2の端面
120 外周コート層
121、122 セル
123、124 セル壁
130 ハニカムユニット
150 接着層
190 端部被覆物
200 ハニカム構造体
500 排ガス浄化装置
512 金属容器
524 保持シール材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゼオライトおよび無機バインダを含み、長手方向に沿って、第1の端面から第2の端面に延伸するセル壁によって複数のセルが区画された柱状のハニカムユニットにより構成されるハニカム構造体であって、
前記第1の端面側のセル壁の厚さは、前記ハニカムユニットの長手方向の中央部のセル壁の厚さよりも厚く、および/または
前記第1の端面側のセル壁の気孔率は、前記ハニカムユニットの長手方向の中央部のセル壁の気孔率よりも小さいことを特徴とするハニカム構造体。
【請求項2】
前記第1の端面側のセル壁の厚さは、0.17〜0.37mmであり、
前記ハニカムユニットの長手方向の中央部のセル壁の厚さは、0.15〜0.35mmであることを特徴とする請求項1に記載のハニカム構造体。
【請求項3】
前記第1の端面側のセル壁の気孔率は、20〜35%であり、
前記ハニカムユニットの長手方向の中央部のセル壁の気孔率は、25〜40%であることを特徴とする請求項1に記載のハニカム構造体。
【請求項4】
前記セル壁の第1の端面側は、セラミックを含む端部被覆物が備えられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載のハニカム構造体。
【請求項5】
前記端部被覆物は、前記セル壁の第1の端面および/または第2の端面から、前記ハニカムユニットの長手方向に沿って10mm以下までの領域に備えられていることを特徴とする請求項4に記載のハニカム構造体。
【請求項6】
前記端部被覆物は、前記ハニカムユニットに含まれる少なくとも一つの材料を含むことを特徴とする請求項4または5に記載のハニカム構造体。
【請求項7】
前記端部被覆物は、少なくともゼオライトと、アルミナまたはジルコニアを含むことを特徴とする請求項4乃至6のいずれか一つに記載のハニカム構造体。
【請求項8】
前記ゼオライトは、β型ゼオライト、Y型ゼオライト、フェリエライト、ZSM−5型ゼオライト、モルデナイト、フォージサイト、ゼオライトA、またはゼオライトLであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一つに記載のハニカム構造体。
【請求項9】
前記ゼオライトは、Fe、Cu、Ni、Co、Zn、Mn、Ti、AgまたはVでイオン交換されていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一つに記載のハニカム構造体。
【請求項10】
前記無機バインダは、アルミナゾル、シリカゾル、チタニアゾル、水ガラス、セピオライト、およびアタパルジャイトの群から選定された少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一つに記載のハニカム構造体。
【請求項11】
前記ハニカムユニットは、さらに無機繊維を含むことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一つに記載のハニカム構造体。
【請求項12】
前記無機繊維は、アルミナ、シリカ、炭化珪素、シリカアルミナ、ガラス、チタン酸カリウムおよびホウ酸アルミニウムの群から選定された少なくとも一つであることを特徴とする請求項11に記載のハニカム構造体。
【請求項13】
当該ハニカム構造体は、複数の前記ハニカムユニットを接着層を介して接合することにより構成されることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか一つに記載のハニカム構造体。
【請求項14】
ハニカム構造体と、保持シール材と、金属容器とからなる排ガス浄化装置であって、
前記ハニカム構造体は、請求項1乃至13のいずれか一つのハニカム構造体であり、
前記ハニカム構造体は、前記セル壁の第1の端面が排ガス流入側となるように設置されていることを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項15】
前記ハニカムユニットの第2の端面側のセル壁の厚さおよび気孔率は、前記ハニカムユニットの長手方向の中央部のセル壁の厚さおよび気孔率と、実質的に同じであることを特徴とする請求項14に記載の排ガス浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−280513(P2010−280513A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−113807(P2009−113807)
【出願日】平成21年5月8日(2009.5.8)
【出願人】(000000158)イビデン株式会社 (856)
【Fターム(参考)】