説明

ハニカム構造体の検査方法、ハニカム構造体の製造方法及びハニカム構造体の検査装置

【課題】検査の労力を低減することが可能なハニカム構造体の検査方法、製造方法及び検査装置を提供する。
【解決手段】端面に複数の貫通孔であるセル70aが開口したハニカム構造体70の検査方法において、S13の工程により端面の外周から一定範囲のセル70aが不完全セル70impとして検査対象から除外される。ハニカム構造体70の端面の外周から一定範囲のセル70aは、ハニカム構造体外周部付近であるために正規の形状から大きく歪んだ不完全な物が多く、詳細な検査対象から省くことが省力化につながると考えられる。そこで、S14〜S16の処理において、S13によって検査対象から除外された不完全セル70imp以外のセル70aについての検査を行なうことにより、ハニカム構造体70の検査の労力を低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体の検査方法、ハニカム構造体の製造方法及びハニカム構造体の検査装置に関し、特にハニカム構造体の端面に開口したセルを検査するハニカム構造体の検査方法、ハニカム構造体の製造方法及びハニカム構造体の検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF:Diesel particulate filter)として用いられるハニカムフィルタの欠陥検査方法が知られている。例えば、特許文献1には、粒子を含むガス流をハニカムフィルタの入口端面に提供し、このハニカムフィルタの出口端面から出るガス流に光を照射し、粒子を照らすことにより、ハニカムフィルタの欠陥を検出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2009−503508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ハニカムフィルタの端面に開口したセルそれぞれについて欠陥を検出しようとすると、検査に多大な労力を要するため、改善が望まれている。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、検査の労力を低減することが可能なハニカム構造体の検査方法、ハニカム構造体の製造方法及びハニカム構造体の検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、端面に複数の貫通孔であるセルが開口したハニカム構造体の検査方法であって、端面に任意に設定した一定範囲のセルを検査対象から除外する除外工程と、除外工程によって検査対象から除外されたセル以外のセルについての検査を行なう検査工程とを含むハニカム構造体の検査方法である。
【0007】
この構成によれば、端面に複数の貫通孔であるセルが開口したハニカム構造体の検査方法において、除外工程により、端面に任意に設定した一定範囲のセルが検査対象から除外される。ハニカム構造体の端面のある部位のセルは、正規の形状から大きく歪んだ不完全な物が多い場合があり、このような範囲のセルは詳細な検査対象から省くことが省力化につながると考えられる。そこで、検査工程において、除外工程によって検査対象から除外されたセル以外のセルについての検査を行なうことにより、ハニカム構造体の検査の労力を低減することができる。
【0008】
この場合、除外工程では、端面の外周から一定範囲のセルを検査対象から除外することが好適である。
【0009】
ハニカム構造体の端面の外周から一定範囲のセルは、ハニカム構造体外周部付近であるために正規の形状から大きく歪んだ不完全な物が多く、詳細な検査対象から省くことが省力化につながると考えられる。そこで、除外工程において、端面の外周から一定範囲のセルを検査対象から除外することにより、ハニカム構造体の検査の労力を低減することができる。
【0010】
この場合、除外工程では、セルの重心位置が端面の外周から一定距離以内のセルを検査対象から除外することが好適である。
【0011】
この構成によれば、除外工程では、セルの重心位置が端面の外周から一定距離以内のセルを検査対象から除外する。このため、簡単な方法により、検査対象外とすべきセルを検査対象から除外することができる。
【0012】
また、検査工程では、除外工程によって検査対象から除外されたセル以外のセルそれぞれについて変形の有無を検査するものとできる。
【0013】
この構成によれば、検査工程では、除外工程によって検査対象から除外されたセル以外のセルそれぞれについて変形の有無を検査する。セルそれぞれについて変形の有無を検査するにも関わらず、本発明では、除外工程においてハニカム構造体外周部付近の歪んだ不完全なセルを検査対象から除外するため、比較的に容易にハニカム構造体の検査を行なうことができる。
【0014】
また、本発明は、上記本発明のハニカム構造体の検査方法によってセルについての検査が行なわれたハニカム構造体について、所定の検査基準を満たすハニカム構造体を選別する選別工程を備えたハニカム構造体の製造方法である。
【0015】
また、本発明は、端面に複数の貫通孔であるセルが開口したハニカム構造体の検査装置であって、端面を撮像することが可能な撮像手段と、撮像手段により撮像された端面に任意に設定した一定範囲のセルを検査対象から除外しつつ、検査対象から除外されたセル以外のセルについての検査を行なう検査手段とを備えたハニカム構造体の検査装置である。
【0016】
この場合、検査手段は、撮像手段により撮像された端面の外周から一定範囲のセルを検査対象から除外しつつ、検査対象から除外されたセル以外のセルについての検査を行なうことが好適である。
【0017】
この場合、検査手段は、セルの重心位置が端面の外周から一定距離以内のセルを検査対象から除外することが好適である。
【0018】
また、検査手段は、検査対象から除外されたセル以外のセルそれぞれについて変形の有無を検査することが好適である。
【発明の効果】
【0019】
本発明のハニカム構造体の検査方法、ハニカム構造体の製造方法及びハニカム構造体の検査装置によれば、検査の労力を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係るハニカム構造体の検査方法を示すフローチャートである。
【図2】(a)はハニカム構造体の斜視図であり、(b)は(a)の部分拡大図である。
【図3】(a)は封口用マスクの斜視図であり、(b)は(a)の部分拡大図である。
【図4】図1における各セルの重心位置を求める工程を示す図である。
【図5】ハニカム構造体の外周部における検査領域を示す図である。
【図6】ハニカム構造体の外周部における不完全セルと変形セルとを示す図である。
【図7】図1における欠陥検出領域を設定する工程を示す図である。
【図8】図1における変形部分を検出する工程で用いるマスク画像を示す図である。
【図9】図1における変形部分の面積を測定する工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。本発明のハニカム構造体の検査方法は、DPF等に用いられるハニカム構造体のセルの欠陥を検出するためのものである。本実施形態では、ハニカム構造体のグリーン成形体の乾燥後であって、封口前に各セルの欠陥を検出する場合を想定する。本実施形態の検査方法は、図1に示す手順で行なわれる。
【0022】
ここで検査対象となるハニカム構造体について説明する。図2(a)に示すように、本実施形態に係るハニカム構造体70は、多数の貫通孔(セル)70aが略平行に配置された円柱体である。貫通孔70aの断面形状は、図2の(b)に示すように正方形である。これらの複数の貫通孔70aは、ハニカム構造体70において、端面から見て、正方形配置、すなわち、貫通孔70aの中心軸が、正方形の頂点にそれぞれ位置するように配置されている。貫通孔70aの断面の正方形のサイズは、例えば、一辺0.8〜2.5mmとすることができる。
【0023】
また、ハニカム構造体70の貫通孔70aが延びる方向の長さは特に限定されないが、例えば、40〜350mmとすることができる。また、ハニカム構造体70の外径も特に限定されないが、例えば、10〜320mmとすることできる。
【0024】
ハニカム構造体70の材料は特に限定されないが、高温耐性の観点から、セラミクス材料が好ましい。例えば、アルミナ、シリカ、ムライト、コーディエライト、ガラス、チタン酸アルミニウム等の酸化物、シリコンカーバイド、窒化珪素、金属等が挙げられる。なお、チタン酸アルミニウムは、さらに、マグネシウム及びケイ素の少なくともいずれかを含むことができる。このような、ハニカム構造体70は通常多孔質である。
【0025】
ハニカム構造体70は、後で焼成することにより上述のようなセラミック材料となるグリーン成形体(未焼成成形体)である。グリーン成形体は、セラミクス原料である無機化合物源粉末、メチルセルロース等の有機バインダ及び必要に応じて添加される添加剤を含む。
【0026】
例えば、チタン酸アルミニウムのグリーン成形体の場合、無機化合物源粉末は、αアルミナ粉等のアルミニウム源粉末、及びアナターゼ型やルチル型のチタニア粉末等のチタニウム源粉末を含み、必要に応じて、さらに、マグネシア粉末やマグネシアスピネル粉末等のマグネシウム源粉末及び酸化ケイ素粉末やガラスフリット等のケイ素源粉末の少なくともいずれかを含むことができる。
【0027】
有機バインダとしては、メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、ヒドロキシアルキルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシルメチルセルロースなどのセルロース類;ポリビニルアルコールなどのアルコール類;リグニンスルホン酸塩を例示できる。添加物としては、例えば、造孔剤、潤滑剤および可塑剤、分散剤、溶媒が挙げられる。
【0028】
なお、このようなハニカム構造体70は、例えば、図2(a)(b)に示したような正方形の貫通孔70aが正方形配置とされているハニカム構造体70であれば、図3(a)(b)に示すように、図2の(b)の正方配置された複数の貫通孔70aのうち、互いに上下左右に隣接しない関係にある複数の貫通孔70aのみが封口材により封口される。ハニカム構造体70のもう一方の端面では、一方の端面が封口されていない貫通孔70aのみが同様に封口材により封口される。
【0029】
図2(a)に示すように、本実施形態のハニカム構造体検査装置300は、カメラ301及び制御部302を備えている。カメラ301は、ハニカム構造体70の端面の全体を走査しつつスキャン画像を撮像する。制御部302は、後述するように、カメラ301により撮像されたハニカム構造体70の端面の外周から一定範囲のセル70aを検査対象から除外する除外しつつ、検査対象から除外されたセル70a以外のセル70aについての検査を行なう。
【0030】
図1及び図4に示すように、本実施形態では、ハニカム構造体70のグリーン成形体の乾燥後に、ハニカム構造体70の端面から各セル70aの重心位置gが検出される(S11)。図1及び図5に示すように、ハニカム構造体70の端面の外周(スキン部)の8箇所の検査領域ADがハニカム構造体検査装置300のカメラ301によるスキャン画像により測定される(S12)。
【0031】
図1及び図6(a)に示すように、ハニカム構造体検査装置300の制御部302により、ハニカム構造体70の端面において、ハニカム構造体70の外周からのセル70aの重心位置70gが一定距離以内のセル70aは不完全セル70impとして、検査対象から除外される(S13)。図6(a)に示すように、ハニカム構造体70のスキン部付近で潰れた形状を有しており、詳細な検査は不要と考えられるため、検査の省力化のために検査対象から除外される。以下の工程では、ハニカム構造体70の全体について、図6(b)に示すように、不完全セル70imp以外のセル70aについて、形状が変形した変形セル70dfが検出される。
【0032】
図1及び図7に示すように、制御部302により、不完全セル70imp以外のセル70aの重心位置を基準として、一定の幅及び高さの欠陥検出領域adが設定される(S14)。図8に示すように、制御部302により、基準のセル形状のマスク画像170aが予め用意される。図1及び図9に示すように、制御部302が欠陥検出領域ad内のセル70aの画像と、基準のセル形状のマスク画像170aとの差分画像を生成することにより、変形部分270が検出される(S15)。制御部302によるブロブ解析により、変形部分270の面積が測定され、変形部分270の面積に基づいてセル変形の有無が判定される(S16)。制御部302により、変形部分270の面積が大きいセル70aは、変形セル70dfと判定される。以上のS14〜S16の処理は、制御部302により、不完全セル70imp以外のセル70a全てについて行なわれる。
【0033】
本実施形態では、端面に複数の貫通孔であるセル70aが開口したハニカム構造体70の検査方法において、S13の工程により端面の任意に設定した一定範囲のセル70aが不完全セル70impとして検査対象から除外される。ハニカム構造体70の端面のある部位のセル70aは、正規の形状から大きく歪んだ不完全な物が多い場合があり、このような範囲のセル70aは詳細な検査対象から省くことが省力化につながると考えられる。そこで、S14〜S16の処理において、S13によって検査対象から除外された不完全セル70imp以外のセル70aについての検査を行なうことにより、ハニカム構造体70の検査の労力を低減することができる。
【0034】
特に、本実施形態では、端面に複数の貫通孔であるセル70aが開口したハニカム構造体70の検査方法において、S13の工程により端面の外周から一定範囲のセル70aが不完全セル70impとして検査対象から除外される。ハニカム構造体70の端面の外周から一定範囲のセル70aは、ハニカム構造体外周部付近であるために正規の形状から大きく歪んだ不完全な物が多く、詳細な検査対象から省くことが省力化につながると考えられる。そこで、S14〜S16の処理において、S13によって検査対象から除外された不完全セル70imp以外のセル70aについての検査を行なうことにより、ハニカム構造体70の検査の労力を低減することができる。
【0035】
また、本実施形態によれば、S13では、セル70aの重心位置70gが端面の外周から一定距離以内のセル70を不完全セル70impとして検査対象から除外する。このため、簡単な方法により、検査対象外とすべきセル70aを検査対象から除外することができる。
【0036】
また、本実施形態によれば、S14〜S16は、S13によって検査対象から除外された不完全セル70imp以外のセル70aそれぞれについて変形の有無を検査する。セル70aそれぞれについて変形の有無を検査するにも関わらず、本発明では、S13においてハニカム構造体外周部付近の歪んだ不完全セル70ipmを検査対象から除外するため、比較的に容易にハニカム構造体70の検査を行なうことができる。
【0037】
なお、本発明は上記実施形態に限定されず、様々な変形態様が可能である。例えば、上記実施形態では、一定の大きさの正方形のセル70aが正方形配置されているハニカム構造体70を検査する態様を中心に説明したが、正六角形のセル70aがハニカム状に配置されているハニカム構造体70にも本実施形態の検査方法は適用可能である。また、大きさや形状が二種類以上のセル70aが配置されているハニカム構造体70にも本実施形態の検査方法は適用可能である。
【0038】
また、上記実施形態では、ハニカム構造体外周部付近の歪んだ不完全セル70ipmを検査対象から除外したが、本発明はハニカム構造体外周部付近のセル70aを検査対象から除外する態様に限定されない。例えば、上記S13において、ハニカム構造体70の端面から任意に設定した一定範囲のセル70aを検査対象から除外することも可能である。例えば、ハニカム構造体70の中央部分に検査対象から除外するセル70aの一定範囲を設定することも可能である。また、検査対象から除外されるセル70aの範囲は、例えば、それまでに製造されたハニカム構造体70の傾向等に合せて設定することができる。
【0039】
さらに、上記S11〜S16の工程は、検出精度を向上させるため、繰り返し行なっても良い。また、上記S11〜S16の工程は、検査対象ごとに分けて行なっても良い。加えて、上記S11〜S16以外の工程が適宜追加されても良い。
【符号の説明】
【0040】
70…ハニカム構造体、70a…貫通孔、70g…重心位置、70imp…不完全セル、70df…変形セル、170…封口用マスク、170a…貫通孔、270…変形部分、300…ハニカム構造体検査装置、301…カメラ、302…制御装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端面に複数の貫通孔であるセルが開口したハニカム構造体の検査方法であって、
前記端面に任意に設定した一定範囲の前記セルを検査対象から除外する除外工程と、
前記除外工程によって検査対象から除外された前記セル以外の前記セルについての検査を行なう検査工程と、を含むハニカム構造体の検査方法。
【請求項2】
前記除外工程では、前記端面の外周から一定範囲の前記セルを検査対象から除外する、請求項1に記載のハニカム構造体の検査方法。
【請求項3】
前記除外工程では、前記セルの重心位置が前記端面の外周から一定距離以内の前記セルを検査対象から除外する、請求項2に記載のハニカム構造体の検査方法。
【請求項4】
前記検査工程では、前記除外工程によって検査対象から除外された前記セル以外の前記セルそれぞれについて変形の有無を検査する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のハニカム構造体の検査方法。
【請求項5】
前記請求項1〜4のいずれか1項に記載のハニカム構造体の検査方法によって前記セルについての検査が行なわれた前記ハニカム構造体について、所定の検査基準を満たす前記ハニカム構造体を選別する選別工程を備えたハニカム構造体の製造方法。
【請求項6】
端面に複数の貫通孔であるセルが開口したハニカム構造体の検査装置であって、
前記端面を撮像することが可能な撮像手段と、
前記撮像手段により撮像された前記端面に任意に設定した一定範囲の前記セルを検査対象から除外しつつ、検査対象から除外された前記セル以外の前記セルについての検査を行なう検査手段と、
を備えたハニカム構造体の検査装置。
【請求項7】
前記検査手段は、前記撮像手段により撮像された前記端面の外周から一定範囲の前記セルを検査対象から除外しつつ、検査対象から除外された前記セル以外の前記セルについての検査を行なう、請求項6に記載の検査装置。
【請求項8】
前記検査手段は、前記セルの重心位置が前記端面の外周から一定距離以内の前記セルを検査対象から除外する、請求項7に記載のハニカム構造体の検査装置。
【請求項9】
前記検査手段は、検査対象から除外された前記セル以外の前記セルそれぞれについて変形の有無を検査する、請求項6〜8のいずれか1項に記載のハニカム構造体の検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−24561(P2013−24561A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−156009(P2011−156009)
【出願日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】