説明

ハニカム構造体の製造方法

【課題】生産効率に優れたハニカム構造体の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】端部が封口された複数の貫通孔を有するハニカム構造体の製造方法であって、複数の貫通孔70aを有するハニカム構造体70の一端面に対して封口材を板20によって押圧することにより貫通孔70aの一端に封口材を充填する工程と、板20におけるハニカム構造体70の一端面と対向する部分の一部を、一端面に向かって突出させることにより、板20におけるハニカム構造体70の一端面と対向する部分の他部と一端面とを引き離す工程と、を備える方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端部が封口された複数の貫通孔を有するハニカム構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ハニカムフィルタ構造体が、DPF(Diesel particulate filter)用等として広く知られている。このハニカムフィルタ構造体は、多数の貫通孔を有するハニカム構造体の一部の貫通孔の一端側を封口材で封じると共に、残りの貫通孔の他端側を封口材で封じた構造を有する。そして、特許文献1には、このようなハニカムフィルタ構造体を製造する方法が開示されている。特許文献1では、シリンダ7内に配置したハニカム構造体1の一端に対して、ピストン8により封口材を押圧することにより、ハニカム構造体の貫通孔の端部に封口材を供給している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公昭63−24731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の方法では、ハニカム構造体の一端側を封口材で封じた後にピストンをハニカム構造体から引き離すことや、複数の貫通孔に均等に封口材を供給することが困難であり、生産効率が低下していた。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、生産効率に優れたハニカム構造体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかる、端部が封口された複数の貫通孔を有するハニカム構造体の第1の製造方法は、
複数の貫通孔を有するハニカム構造体の一端面に対して封口材を板によって押圧することにより貫通孔の一端に封口材を充填するA工程と、
板における一端面と対向する部分の一部を、一端面に向かって突出させることにより前記板における一端面と対向する部分の他部と前記一端面とを引き離すB工程と、を備える。
【0007】
本発明によれば、封口剤の充填によって板とハニカム構造体の一端面とが近接した状態となった後、板の一部が一端面に向かって突出して板の他部が一端面から離れるので、板からハニカム構造体を引き離すことが容易となる。
【0008】
ここで、板における一端面と対向する部分の一部は、板における一端面と対向する部分の中央部であることが好ましい。
【0009】
これにより、板からハニカム構造体を引き離しやすい。
【0010】
また、A工程では一端面と板との間にマスクを介在させ、マスクは、ハニカム構造体の複数の貫通孔の内の一部のみと連通する貫通孔を有することが好ましい。
【0011】
これによれば、一部の貫通孔の一端を封口することが容易である。そして、B工程によれば、ハニカム構造体の一端面に封口材を押圧した状態の板からハニカム構造体及びマスクを引き離すことが容易である。
【0012】
また、板は弾性体であり、前記突出を、板における前記一端面と対向する部分を一端面に向かって凸状に変形させることにより行うことが好ましい。これにより、B工程を容易に行うことができる。
【0013】
さらに、B工程後にハニカム構造体の他端面に対して封口材を板によって押圧することによりハニカム構造体の他の貫通孔の他端に封口材を充填するC工程と、C工程後に板における前記一端面と対向する部分の一部を、他端面に向かって突出させることにより、板における前記一端面と対向する部分の他部と他端面とを引き離すD工程と、をさらに備えることが好ましい。
【0014】
これにより、ハニカム構造体の端面から板を引き離しやすくなる。
【0015】
また、前記A工程を、凹部及び前記凹部の内面に開口する連通路を有する本体部及び、前記凹部を覆うように配置された弾性板を準備すること、
前記連通路を介して前記凹部内の流体を排出することにより前記弾性板の凹部を形成すること、
前記弾性板の凹部内に封口材を供給すること、
前記弾性板の凹部と対向する位置に、複数の貫通孔を有するハニカム構造体の一端面を配置すること、及び、
前記連通路を介して前記本体部と前記弾性板との間に流体を供給することにより前記弾性板の凹部を解消させることにより行い、
前記B工程を、前記連通路を介して前記本体部と前記弾性板との間にさらに流体を供給して、前記弾性板における前記ハニカム構造体の前記一端面と対向する部分を前記一端面に向かって凸状に変形させることにより行うことが好ましい。
【0016】
本発明にかかる端部が封口された複数の貫通孔を有するハニカム構造体の第2の製造方法は、
複数の貫通孔を有するハニカム構造体の一端面に対して封口材を弾性板によって押圧して、前記貫通孔の一端に前記封口材を充填するA工程と、
前記弾性板における前記一端面と対向する部分を、前記一端面に向かって凸状に変形させることにより、前記弾性板における前記一端面と対向する部分の周辺部と前記一端面とを引き離すB工程と、
を備える。
本発明によれば、封口剤の充填によって板とハニカム構造体の一端面とが近接した状態となった後、弾性板が一端面に向かって凸状に変形して弾性板の周辺部が一端面から離れるので、弾性板からハニカム構造体を引き離すことが容易となる。
【0017】
本発明に係る、端部が封口された複数の貫通孔を有するハニカム構造体の第3の製造方法は、
凹部及び前記凹部の内面に開口する連通路を有する本体部、及び、前記凹部を覆うように配置された弾性板を準備する工程と、
前記連通路を介して前記凹部内の流体を排出することにより前記弾性板の凹部を形成する工程と、
前記弾性板の凹部内に封口材を供給する工程と、
前記弾性板の凹部と対向する位置に、複数の貫通孔を有するハニカム構造体の一端面を配置する工程と、
前記連通路を介して前記本体部と前記弾性板との間に流体を供給することにより、前記弾性板の凹部を解消させる工程と、
を備える。
【0018】
本発明によれば、弾性板の凹部を解消させることにより封口材を供給するので、複数の貫通孔に対して比較的均等に封口材を充填することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、生産効率に優れたハニカム構造体の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明の第一実施形態に係る封口装置の概略断面図である。
【図2】図2は、図1の封口装置のII−II矢視図である。
【図3】図3の(a)は、図1の封口装置で用いるハニカム構造体の斜視図、図3の(b)は、図3の(a)の部分拡大図である。
【図4】図4の(a)は、図1のマスクの斜視図、図4の(b)は、図4の(a)の部分拡大図である。
【図5】図5の(a)は、図1の封口装置の動作を説明する部分断面図であり、図5の(b)は、図5の(a)に続く部分断面図である。
【図6】図6の(a)は、図5の(b)に続く部分断面図であり、図6の(b)は、図6の(a)に続く部分断面図である。
【図7】図7の(a)は、図6の(b)に続く部分断面図であり、図7の(b)は、図7の(a)に続く部分断面図である。
【図8】図8の(a)は、図7の(b)に続く部分断面図であり、図8の(b)は、図7の(a)に続く部分断面図である。
【図9】図9の(a)は、本発明の第二実施形態に係る封口装置の動作を説明する断面図であり、図9の(b)は、図9の(a)に続く部分断面図であり、図9の(c)は、図9の(b)に続く部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る封口装置の好適な実施形態について、図面を参照して説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0022】
(第一実施形態)
図1は、本実施形態の第一実施形態に係る封口装置100の概略断面図である。本実施形態に係る封口装置100は、主として、本体部10、弾性板20、ポンプ50、保持部80を備える。
【0023】
本体部10は、剛性材料から形成されている。剛性材料としては、ステンレス等の金属や、繊維強化プラスチック等のポリマー材料が挙げられる。本体部10の上面10aには、凹部10dが形成されている。本実施形態では、凹部10dの形状は、図1及び図2に示すように、円柱状とされている。そして、本体部10の上面10aに対して、凹部10dの側面10bが垂直、かつ、底面10cが平行とされている。凹部10dの直径は、例えば、100〜320mmとすることができる。凹部10dの深さは、例えば、0.2〜20mmとすることができる。
【0024】
弾性板20は、凹部10dの開口面を覆うように、本体部10の上面10a上に、配置されている。弾性板20は、弾性を有し、容易に変形しうる。弾性板20としては、ゴム板が好ましい。ゴムとしては、天然ゴムや、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、ふっ素ゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム等の合成ゴムが挙げられる。弾性板20の厚みは特に限定されないが、例えば、0.3〜3.0mmとすることができる。
【0025】
弾性板20は、リング部材25、及びボルト31により本体部10に固定されている。リング部材25は、本体部10の凹部10dに対応する位置に開口25aを有し、これにより環状形状をなしている。そして、リング部材25は、弾性板20における中央部(凹部10dとの対向部)が露出するように弾性板20上に配置されている。これにより、弾性板20の周辺部が、本体部10とリング部材25とにより挟まれている。リング部材25、及び弾性板20には貫通孔hがそれぞれ形成され、本体部10にはこれら貫通孔hに対応するネジ孔jが形成されており、ボルト31がこれらの貫通孔hを貫通して配置され、ネジ孔jにねじ込まれて固定されることにより、本体部10の上面10aにおける凹部10dのまわりの部分に、弾性板20の周辺部が密着して固定されている。
【0026】
図1及び図2に示すように、リング部材25の開口25aの内径は、本体部10の凹部10dの内径よりも大きくされていることが好ましい。
【0027】
本体部10は、さらに、凹部10dの底面10cに開口する連通路10eを有している。なお、本実施形態では、連通路10eは凹部10dの底面10cに開口しているが、凹部10dの内面に開口していれば良く、例えば、凹部10dの側面10bに開口していてもよい。また、連通路10eの開口の形状や数も特に限定されない。
【0028】
連通路10eには、接続パイプ14を介してポンプ50が接続されている。
【0029】
ポンプ50は、シリンダ51、シリンダ51内に配置されたピストン53、及び、ピストン53に接続されたピストンロッド54を備える。ピストンロッド54には、ピストンロッド54を軸方向に往復移動させるモータ55が接続されている。なお、ピストンロッド54を手動で動かしてもよい。
【0030】
本実施形態では、弾性板20と、ピストン53と、の間には、本体部10、接続パイプ14、及び、シリンダ51により形成される閉鎖空間Vが形成され、閉鎖空間V内には、流体FLが充填されている。流体FLは、特に限定されないが、液体が好ましく、特に、スピンドルオイル等が好ましい。そして、ピストン53を移動させることにより、本体部10の凹部10d内から流体FLを排出することができ、また、凹部10d内に流体FLを供給することが出来る。また、流体FLが、空気等のガスであることも好適である。
【0031】
本体部10の上には、保持部80が設けられている。保持部80は、ハニカム構造体70を保持する保持具81、及び保持具81が接続された空気圧シリンダ82を有する。
【0032】
保持具81は、ハニカム構造体70を、図1に示すように、貫通孔70aの一方側の開口面が弾性板20及び凹部10dと対向するように保持する。
【0033】
空気圧シリンダ82は、上下方向に延びるシリンダ82aと、シリンダ82a内に設けられたピストン82bとを有し、外部からの供給する圧力を調整することによりピストン82bの上下両側での圧力を調節可能となっている。そして、これにより空気圧シリンダ82は、保持具81を、ハニカム構造体70と弾性板20とが近づく方向及びこれらが互いに離れる方向にそれぞれ移動可能である。また、空気圧シリンダ82は、ピストン82bの前後のガスの供給圧力に応じて保持具81を下方に所定の力で押圧することにより、ハニカム構造体70を後述するマスク170に対して密着させることができる。さらに、空気圧シリンダ82は、ピストン82bの前後の圧力を開放することにより、保持具81が上下方向に自由に移動することを許可することもできる。すなわち、保持部80は、保持具81が保持したハニカム構造体70を上方向に自由に移動可能とする状態と、ハニカム構造体70を本体部10に対して固定する状態とを切替え可能である。
【0034】
本実施形態で用いる一例のハニカム構造体70は、図3の(a)に示すように、多数の貫通孔70aが略平行に配置された円柱体である。貫通孔70aの断面形状は、図3の(b)に示すように正方形である。これらの複数の貫通孔70aは、ハニカム構造体70において、端面から見て、正方形配置、すなわち、貫通孔70aの中心軸が、正方形の頂点にそれぞれ位置するように配置されている。貫通孔70aの断面の正方形のサイズは、例えば、一辺0.8〜2.5mmとすることができる。
【0035】
また、ハニカム構造体70の貫通孔70aが延びる方向の長さは特に限定されないが、例えば、40〜350mmとすることができる。また、ハニカム構造体70の外径も特に限定されないが、例えば、10〜320mmとすることできる。
【0036】
ハニカム構造体70の材料は特に限定されないが、高温耐性の観点から、セラミクス材料が好ましい。例えば、アルミナ、シリカ、ムライト、コーディエライト、ガラス、チタン酸アルミニウム等の酸化物、シリコンカーバイド、窒化珪素、金属等が挙げられる。なお、チタン酸アルミニウムは、さらに、マグネシウム及び/又はケイ素を含むことができる。このような、ハニカム構造体70は通常多孔質である。
【0037】
また、ハニカム構造体70は、後で焼成することにより上述のようなセラミック材料となるグリーン成形体(未焼成成形体)であってもよい。グリーン成形体は、セラミクス原料である無機化合物源粉末、及び、メチルセルロース等の有機バインダ、及び、必要に応じて添加される添加剤を含む。
【0038】
例えば、チタン酸アルミニウムのグリーン成形体の場合、無機化合物源粉末は、αアルミナ粉等のアルミニウム源粉末、及び、アナターゼ型やルチル型のチタニア粉末等のチタニウム源粉末を含み、必要に応じて、さらに、マグネシア粉末やマグネシアスピネル粉末等のマグネシウム源粉末及び/又は、酸化ケイ素粉末やガラスフリット等のケイ素源粉末を含むことができる。
【0039】
有機バインダとしては、メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、ヒドロキシアルキルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシルメチルセルロースなどのセルロース類;ポリビニルアルコールなどのアルコール類;リグニンスルホン酸塩を例示できる。
【0040】
添加物としては、例えば、造孔剤、潤滑剤および可塑剤、分散剤、溶媒が挙げられる。
【0041】
造孔剤としては、グラファイト等の炭素材;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチル等の樹脂類;でんぷん、ナッツ殻、クルミ殻、コーンなどの植物材料;氷;およびドライアイス等などが挙げられる。
【0042】
潤滑剤および可塑剤としては、グリセリンなどのアルコール類;カプリル酸、ラウリン酸、パルミチン酸、アラギジン酸、オレイン酸、ステアリン酸などの高級脂肪酸;ステアリン酸アルミニウムなどのステアリン酸金属塩;ポリオキシアルキレンアルキルエーテルなどが挙げられる。
【0043】
分散剤としては、たとえば、硝酸、塩酸、硫酸などの無機酸;シュウ酸、クエン酸、酢酸、リンゴ酸、乳酸などの有機酸;メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類;ポリカルボン酸アンモニウムなどの界面活性剤などが挙げられる。
【0044】
溶媒としては、たとえば、メタノール、エタノール、ブタノール、プロパノールなどの一価アルコール類;プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールなどのグリコール類;および水などを用いることができる。
【0045】
マスク170は、弾性板20上におけるリング部材25の開口25a内に配置されるものである。マスク170の材料は特に限定されず、例えば、金属や樹脂が挙げられる。
【0046】
図4の(a)に、本実施形態で用いるマスク170の一例を示す。マスク170は、円形の板状部材であり、厚み方向に伸びる多数の貫通孔170aを有する。貫通孔170aの断面形状は、図4の(b)に示すように、ハニカム構造体70の貫通孔70a(図3の(b)参照)に対応する正方形である。これらの複数の貫通孔170aは、図4の(b)に示すように、千鳥配置されており、各貫通孔170aは、図3の(b)の正方配置された複数の貫通孔70aのうち、互いに上下左右に隣接しない関係にある複数の貫通孔のみに対向して配置される。なお、マスク170の貫通孔170aの位置決めを容易にすべく、マスク170には、オリエンテーションフラット170bが形成され、これに対応してリング部材25にもオリエンテーションフラットに対応する突起25bを設けてもよい。図1に示すように、マスク170の外径は、本体部10の凹部10dの内径よりも大きくされていることが好ましい。
【0047】
なお、本体部10には、超音波振動器等の加振器140が設けられていることが好ましい。
【0048】
(製造方法)
つづいて、上述の封口装置100を用いたハニカム構造体の製造方法について説明する。まず、図1の状態から、予め、空気圧シリンダ82を駆動して、ハニカム構造体70を保持する保持具81上方に引き上げておくと共に、マスク170を弾性板20上から外しておく。次に、ポンプ50のピストン53を下方に引くことにより、本体部10の凹部10dから流体FLを下方に排出させる。これにより、図5の(a)に示すように、弾性板20が変形して凹部10dの側面10b及び底面10cに密着し、これによって、弾性板20の凹部20dが形成する。
【0049】
続いて、図5の(b)に示すように、弾性板20の凹部20d内に封口材130を供給する。必要に応じて、加振器140を駆動することにより、封口材130の表面の平坦化、脱泡を促す。
【0050】
(封口材)
封口材130は、ハニカム構造体70の貫通孔70aの端部を閉鎖できるものであれば特に限定されないが、液状であることが好ましい。例えば、封口材として、セラミクス材料又はセラミクス原料と、バインダと、溶媒とを含むスラリーが例示できる。
【0051】
セラミクス材料としては、上述のハニカム構造体の構成材料や、その原料が挙げられる。
【0052】
バインダとしては、メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、ヒドロキシアルキルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシルメチルセルロースなどのセルロース類;ポリビニルアルコールなどのアルコール類;リグニンスルホン酸塩等の有機バインダを例示できる。
【0053】
バインダの使用量は、例えば、3〜5000mLとすることができる。
【0054】
溶媒としては、たとえば、メタノール、エタノール、ブタノール、プロパノールなどの1価アルコール類;プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールなどのグリコール類;および水などを用いることができる。なかでも、水が好ましく、不純物が少ない点で、より好ましくはイオン交換水が用いられる。
【0055】
溶媒の使用量は、15〜40重量%とすることができる。
【0056】
続いて、図6の(a)に示すように、本体部10の凹部10dを覆うように弾性板20上にマスク170をセットし、次いで、空気圧シリンダ82により保持具81を下方に移動させてハニカム構造体70をマスク170に接触させることにより、ハニカム構造体70の一部の貫通孔70aと、マスク170の貫通孔170aとを連通させ、さらに、空気圧シリンダ82により保持具81を下方に押圧し、ハニカム構造体70の下端面(一端面)がマスク170を介して弾性板20の凹部20dと対向するように、ハニカム構造体70をマスク170及び本体部10に対して固定する。
【0057】
次いで、ポンプ50のピストンを上方に移動させることにより、凹部10d内に流体FLを供給し、これによって、図6の(b)に示すように、弾性板20がマスク170に向かって移動し、弾性板20がハニカム構造体70の一端面に対して封口材を押圧する。この工程は、図7の(a)に示すように、弾性板20がマスク170に接触し、弾性板20の変形が解消する、すなわち、弾性板20の凹部20dが解消するまで行なう。
【0058】
これにより、封口材130がマスク170の貫通孔170aを介して、ハニカム構造体70の一部の貫通孔70a内に供給され、封口部70pが形成する。
【0059】
続いて、空気圧シリンダ82によるハニカム構造体70の下方向への押圧を停止してハニカム構造体70が上方に自由に移動できるようした後、ピストン53をさらに上昇させ弾性板20と本体部10との間にさらに流体FLを供給する。これにより、図7の(b)に示すように、弾性板20におけるハニカム構造体の一端面と対向する部分は上方向に凸状に変形し、これにより、マスク170の中央部に荷重が印加されてマスク170及びハニカム構造体70が上方に移動する。このとき、凸状に変形する弾性板20の周辺部(他部)はマスク170から離れるので、これにより、マスク170及びハニカム構造体70を、本体部10から容易に引き離すことが出来る。
【0060】
続いて、ハニカム構造体70を保持具81から外した後、天地をひっくり返したうえで再びハニカム構造体70を保持具81に保持する。次いで、マスク170と貫通孔170aの配置が正反対の千鳥配置とされたマスク170’を用いて、ハニカム構造体の他端面に対して同様の操作を行なう。これにより、図8の(a)に示すように、残りの貫通孔70aの他端側が封口材で封口され、封口部70pが形成する。続いて、上述と同様にして弾性板20におけるハニカム構造体の一端面と対向する部分を上に凸状に変形させることにより、マスク170’及びハニカム構造体70を容易に本体部10及び弾性板20から引き離すことが出来る。
【0061】
そしてこのようにして、貫通孔70aの両端が封口されたハニカム構造体70を乾燥、焼成等することにより、ハニカムフィルタ構造体を製造することが出来る。
【0062】
本発明によれば、弾性板200におけるハニカム構造体の一端面と対向する部分を凸状に変形させることによって、弾性板(板)の一部である中央部がハニカム構造体70の一端面に向かって突出し、これにより封口材130を供給した後のハニカム構造体70に接しているマスク170を本体部10や弾性板20から容易に引き離すことが出来る。したがって、生産効率を高めることができ、封口されたハニカム構造体を低コスト化で製造することが出来る。
【0063】
また、弾性板20を用いることにより、封口時に封口材に圧力が均等にかかりやすく、封口材を複数の貫通孔に対して均等に供給しやすい傾向がある。
【0064】
(第二実施形態)
続いて、本発明の第二実施形態について図9を参照して説明する。ここでは第一実施形態と異なる点のみ説明し、重複する説明は省略する。
本実施形態の封口装置200は、ハニカム構造体70を収容する円筒202、円筒202の一端を閉じる閉板204、及び、円筒202内に挿入される主ピストン214及び副ピストン218を主として備える。ハニカム構造体70は、その貫通孔70aの軸方向が、円筒202の軸方向と平行になるように円筒202内に収容され、閉板204と接触している。
【0065】
主ピストン214は、主ピストン板212及び主ピストンロッド213を備える。また、副ピストン218は、副ピストン板216及び副ピストンロッド217を備える。
【0066】
主ピストン板212は、円筒202の内径に対応する外径の円板である。副ピストン板216は、円筒202の内径より小さい外形の円板である。主ピストン板212の中央部には、副ピストン板216を収容可能な凹部212aが形成されており、収容状態では、主ピストン板212の表面と、副ピストン板216の表面は同一面上に位置する。
【0067】
また、主ピストン板212及び主ピストンロッド213は、副ピストンロッド217を軸方向に貫通させるための貫通孔213aを有している。そして、図9の(a)に示すように、副ピストンロッド217は主ピストンロッド213の貫通孔213aに収容されている。
【0068】
製造の際には、まず、円筒202内のハニカム構造体の一端上にマスク170を配置し、続いて、マスク170上に封口材130を供給した後に、主ピストン214及び副ピストン218を円筒内に挿入する。続いて、主ピストン214をハニカム構造体70に対して押圧することにより、図9の(b)に示すように、主ピストン板212及び副ピストン板216によって封口材130を、マスク170の貫通孔170aを介して貫通孔170a内に供給し、これにより封口部70pを形成する。
【0069】
続いて、閉板204と円筒204との固定(ねじ、クランプ等:不図示)を解除した後、図9の(c)に示すように、主ピストン板212が円筒202の端部に達するまで主ピストン214を押圧してハニカム構造体70を外部に露出させる。その後、主ピストン214に対して副ピストン218の副ピストンロッド217をハニカム構造体70の方向に押圧する。これにより、主ピストン板212及び副ピストン板216により形成される全体ピストン板(板)219の一部である副ピストン板216がマスク170に向かって突出することとなるので、主ピストン板212からマスク170及びハニカム構造体70を容易に引き離すことが出来る。その後、ハニカム構造体70から、閉板204やマスク170を外す。
【0070】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものでなく、様々な変形態様が可能である。
【0071】
例えば、第一実施形態では、弾性板20が、リング部材25、及び、ボルト31により、本体部10に対して固定されているが、固定方法は特に限定されない。例えば、弾性板20が接着剤によって、本体部10の上面10aに固定されていてもよい。
【0072】
また、第一実施形態では、連通路10eが、本体部10及び接続パイプ14により形成されているが、接続パイプ14を有さずに本体部10に直接ポンプ50が接続されていてもよい。
【0073】
また、第一実施形態では、ポンプ50として、シリンダ51、ピストン53、及び、ピストンロッド54を備えたピストンポンプを採用しているが、流体を供給及び排出できるものであれば特に限定されない。
【0074】
また、第一実施形態において凹部10dの形状は特に限定されず、封口対象となるハニカム構造体70にあわせて適宜設定できる。
例えば、凹部10dを上から見た平面形状は、円形以外に楕円形、矩形、正方形等とすることもできる。この場合、矩形や正方形の場合の大きさは、例えば、一辺50〜300mmとすることができる。また、本体部10の上面10aに対して、側面10bが垂直、かつ、底面10cが平行である必要は無く、例えば、斜面であったり曲面であってもよい。
【0075】
また、第一実施形態では、保持部80は空気圧シリンダ82を備えるがこれに限られず、たとえば、歯車機構等の種々の機構に代替することが出来る。
【0076】
また、第一実施形態では、保持部80は必ずしも必須ではない。例えば、封口材を供給するときには錘をハニカム構造体70の上に載せることによりハニカム構造体を本体部10に対して固定し、ハニカム構造体70を本体部から離れさせる際には、錘を除去してハニカム構造体を移動可能としてもよい。また、ハニカム構造体がある程度の重量を有する場合には、自重によって固定されるので特段の固定手段を有さない態様も可能である。
【0077】
また、第二実施形態で用いる副ピストン板216におけるマスク170に接する面の形状は、特に限定されず、対象となるハニカム構造体70の形状に合わせて適宜定めることができる。例えば、ハニカム構造体70が、円筒形の場合には、副ピストン板216の直径を、ハニカム構造体70の外径の1/5〜1/2とすることができる。
【0078】
また、第一実施形態及び第二実施形態において、ハニカム構造体70の形状や構造も上述に限定されない。例えば、ハニカム構造体70の外形形状も円柱でなくてもよく、例えば、四角柱等の角柱でもよい。また、ハニカム構造体70の貫通孔70aの断面形状は、正方形でなくてもよく、例えば、長方形、三角形、多角形、円形等でも構わない。さらに、貫通孔70aの配置も、正方形配置でなくてもよく、例えば、3角配置、千鳥配置等でも構わない。また、この場合、マスクの貫通孔の形状や配置も、ハニカム構造体70の貫通孔70aの形状や配置に応じて適宜変更できる。
【0079】
また、上記2つの実施形態では、多数の貫通孔を有する板状のマスク170を採用しているが、マスクにより遮蔽する場所も任意である。さらに、このようなマスク170を用いなくても実施可能である。例えば、封口処理の前に、ハニカム構造体70の一部の貫通孔70a内に加熱すると分解する材料により栓をしておき、封口後に栓を熱分解等すればよい。本発明では、マスクを使用しない場合であっても、封口処理後に弾性板20や全体ピストン板219の一部を突出させることにより、ハニカム構造体70を本体部10の弾性板20や全体ピストン板219から容易に引き離すことが出来るという効果がある。
【0080】
さらに、また、上記実施形態では、弾性板20や全体ピストン板219におけるハニカム構造体の一端面と対向する部分の中央部を突出させているが、当該一端面と対向する部分全体の内の一部であればよく、部分的に複数箇所を突出させてもよい。さらに、封口材を押圧する板の一部をハニカム構造体に向かって突出させる方法も上述には限定されない。
【符号の説明】
【0081】
10…本体部、10e…連通部、20…弾性板(板)、30…凹部、50…ポンプ、70…ハニカム構造体、70a貫通孔、80…保持部、100,200…封口装置、170…マスク、219…全体ピストン板(板)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端部が封口された複数の貫通孔を有するハニカム構造体の製造方法であって、
複数の貫通孔を有するハニカム構造体の一端面に対して封口材を板によって押圧して、前記貫通孔の一端に前記封口材を充填するA工程と、
前記板における前記一端面と対向する部分の一部を、前記一端面に向かって突出させることにより、前記板における前記一端面と対向する部分の他部と前記一端面とを引き離すB工程と、
を備えるハニカム構造体の製造方法。
【請求項2】
前記板における前記一端面と対向する部分の一部は、前記板における前記一端面と対向する部分の中央部である請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記A工程では前記一端面と前記板との間にマスクを介在させ、前記マスクは、前記ハニカム構造体の複数の貫通孔の内の一部のみと連通する貫通孔を有する、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記板は弾性板であり、
前記突出を、前記板における前記一端面と対向する部分を前記一端面に向かって凸状に変形させることにより行う請求項1〜3のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
前記B工程後に前記ハニカム構造体の他端面に対して封口材を板によって押圧することにより前記ハニカム構造体の他の貫通孔の他端に前記封口材を充填するC工程と、
前記C工程後に、前記板における前記一端面と対向する部分の一部を、前記他端面に向かって突出させることにより、前記板における前記一端面と対向する部分の他部と前記他端面とを引き離すD工程と、をさらに備える請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記A工程を、
凹部及び前記凹部の内面に開口する連通路を有する本体部及び、前記凹部を覆うように配置された弾性板を準備すること、
前記連通路を介して前記凹部内の流体を排出することにより前記弾性板の凹部を形成すること、
前記弾性板の凹部内に封口材を供給すること、
前記弾性板の凹部と対向する位置に、複数の貫通孔を有するハニカム構造体の一端面を配置すること、及び、
前記連通路を介して前記本体部と前記弾性板との間に流体を供給することにより前記弾性板の凹部を解消させること、により行い、
前記B工程を、前記連通路を介して前記本体部と前記弾性板との間にさらに流体を供給して、前記弾性板における前記ハニカム構造体の前記一端面と対向する部分を前記一端面に向かって凸状に変形させることにより行う、請求項1又は3又は5に記載の方法。
【請求項7】
端部が封口された複数の貫通孔を有するハニカム構造体の製造方法であって、
複数の貫通孔を有するハニカム構造体の一端面に対して封口材を弾性板によって押圧して、前記貫通孔の一端に前記封口材を充填するA工程と、
前記弾性板における前記一端面と対向する部分を、前記一端面に向かって凸状に変形させることにより、前記弾性板における前記一端面と対向する部分の周辺部と前記一端面とを引き離すB工程と、
を備えるハニカム構造体の製造方法。
【請求項8】
凹部及び前記凹部の内面に開口する連通路を有する本体部、及び、前記凹部を覆うように配置された弾性板を準備する工程と、
前記連通路を介して前記凹部内の流体を排出することにより前記弾性板の凹部を形成する工程と、
前記弾性板の凹部内に封口材を供給する工程と、
前記弾性板の凹部と対向する位置に、複数の貫通孔を有するハニカム構造体の一端面を配置する工程と、
前記連通路を介して前記本体部と前記弾性板との間に流体を供給することにより前記弾性板の凹部を解消させる工程と、
を備える、端部が封口された複数の貫通孔を有するハニカム構造体の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−224983(P2011−224983A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71717(P2011−71717)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】