説明

ハニカム構造体

【課題】外圧に対する強度の向上が図られたハニカム構造体を提供する。
【解決手段】
ハニカム構造体1は、ガスを浄化するフィルタとして用いられるハニカム構造体であって、複数の内部セル4が形成されたコア部2と、コア部2を包囲する筒状のシェル部3と、を備えている。シェル部3は、間隙を介してコア部2を包囲する筒状の側壁6と、側壁6を内側から支持する複数のシェル隔壁7と、を有している。シェル隔壁7のそれぞれの外側端部7bは側壁6に接続されており、シェル隔壁7と側壁6とで形成される隅部には丸みが付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスを浄化するフィルタとして用いられるハニカム構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
DPF(Dieselparticulate filter)用等、内燃機関から排出されるガスを浄化するフィルタ用として、ハニカム構造体が広く知られている。ハニカム構造体は、一端部が封口材で封じられたセルに対し、他端部が封口材で封じられたセルが少なくとも一つ隣接するように、各セルが配列された構造を有している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−270755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したようなハニカム構造体では、例えば、構造体の外形が円柱状であり、セルの断面形状が矩形状であると、構造体の側面近傍におけるセルの断面形状が、ランダムに切欠かれた形状となる。そのため、ハニカム構造体の側面近傍に、外圧に対する強度が低下する部分が生じるおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、外圧に対する強度の向上が図られたハニカム構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のハニカム構造体は、ガスを浄化するフィルタとして用いられるハニカム構造体であって、複数の内部セルが形成されたコア部と、コア部を包囲する筒状のシェル部と、を備え、シェル部は、間隙を介してコア部を包囲する筒状の側壁と、側壁を内側から支持する複数のシェル隔壁と、を有し、シェル隔壁のそれぞれの外側端部は側壁に接続されており、シェル隔壁と側壁とで形成される隅部には丸みが付けられている。
【0007】
このハニカム構造体では、シェル隔壁と側壁とで形成される隅部に丸みが付けられているため、シェル隔壁と側壁とで形成される隅部に応力が集中し難くなる。従って、このハニカム構造体は、外圧に対する強度の向上が図られたものとなる。
【0008】
また、コア部は、内部セルのそれぞれを仕切るコア隔壁を有し、シェル隔壁のそれぞれの内側端部は、側壁に対向するコア隔壁に接続されており、シェル隔壁とコア隔壁とで形成される隅部には丸みが付けられていてもよい。この構造によれば、シェル隔壁とコア隔壁とで形成される隅部にも応力が集中し難くなる。従って、ハニカム構造体が、外圧に対する強度の向上がより一層図られたものとなる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、外圧に対する強度の向上が図られたハニカム構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態のハニカム構造体の斜視図である。
【図2】図1のII−II線に沿っての断面の一部拡大図である。
【図3】図1のハニカム構造体の一端面の一部拡大図である。
【図4】図1のハニカム構造体の他端面の一部拡大図である。
【図5】図1のハニカム構造体のシェル部の断面の一部拡大図である。
【図6】シェル部の変形例の断面の一部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態のハニカム構造体の斜視図である。図1に示されるように、ハニカム構造体1は、円柱状のコア部2(図1において二点鎖線の内側の部分)と、コア部2を包囲する円筒状のシェル部3(図1において二点鎖線の外側の部分)と、を備えている。コア部2及びシェル部3は、同一の線を中心線CLとして一体的に形成されている。コア部2及びシェル部3の材料は、多孔質(例えば、平均細孔直径20μm以下)のセラミクス材料等、内燃機関から排出されるガス中の微細粒子(すす等)を捕捉しつつガスを通過させるものである。コア部2には、ハニカム構造体1の一端面1aと他端面1bとの間に渡って延在する細長い孔である内部セル4が複数形成されている。ここでは、各内部セル4は、中心線CLに略平行となるように延在している。
【0013】
ここで、ハニカム構造体1の高さ(すなわち、一端面1aと他端面1bとの距離)は、例えば40〜350mmとすることができる。ハニカム構造体1の外径は、例えば100〜320mmとすることができる。各内部セル4の開口面積(断面積)は、例えば0.6〜7.0mm程度(より好ましくは、0.8〜6.0mm程度)とすることができる。隣り合う内部セル4,4の中心線間の距離(いわゆるセルピッチ)は、例えば1.1〜2.8mmとすることができる。
【0014】
また、コア部2及びシェル部3に用いられるセラミクス材料としては、例えば、アルミナ、シリカ、ムライト、コーディエライト、ガラス、チタン酸アルミニウム等の酸化物、シリコンカーバイド、窒化珪素、金属等が挙げられる。チタン酸アルミニウムは、更に、マグネシウム及び/又はケイ素を含むことができる。
【0015】
なお、コア部2及びシェル部3は、上述したセラミクス材料となるグリーン成形体(未焼成成形体)を焼成することにより得ることができる。グリーン成形体は、セラミクス原料である無機化合物源粉末、メチルセルロース等の有機バインダ、及び必要に応じて添加される添加剤を含む。
【0016】
例えば、チタン酸アルミニウムのグリーン成形体の場合、無機化合物源粉末は、αアルミナ粉等のアルミニウム源粉末、及びアナターゼ型やルチル型のチタニア粉末等のチタニウム源粉末を含み、必要に応じて、更に、マグネシア粉末やマグネシアスピネル粉末等のマグネシウム源粉末、及び/又は、酸化ケイ素粉末やガラスフリット等のケイ素源粉末を含むことができる。
【0017】
有機バインダとしては、メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、ヒドロキシアルキルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシルメチルセルロース等のセルロース類;ポリビニルアルコール等のアルコール類;リグニンスルホン酸塩が挙げられる。
【0018】
添加物としては、例えば、造孔剤、潤滑剤、可塑剤、分散剤及び溶媒が挙げられる。
【0019】
造孔剤としては、グラファイト等の炭素材;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチル等の樹脂類;でんぷん、ナッツ殻、クルミ殻、コーン等の植物材料;氷;及びドライアイス等が挙げられる。
【0020】
潤滑剤及び可塑剤としては、グリセリン等のアルコール類;カプリル酸、ラウリン酸、パルミチン酸、アラキジン酸、オレイン酸、ステアリン酸等の高級脂肪酸;ステアリン酸Al等のステアリン酸金属塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(POAAE)等が挙げられる。
【0021】
分散剤としては、例えば、硝酸、塩酸、硫酸等の無機酸;シュウ酸、クエン酸、酢酸、リンゴ酸、乳酸等の有機酸;メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類;ポリカルボン酸アンモニウム等の界面活性剤等が挙げられる。
【0022】
溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール、プロパノール等のアルコール類;プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール等のグリコール類;及び水等を用いることができる。
【0023】
図2は、図1のII−II線に沿っての断面の一部拡大図である。図2に示されるように、コア部2は、複数の内部セル4のそれぞれを仕切るコア隔壁5を有している。各内部セル4は、六角形状の断面形状(内部セル4が延在する方向に垂直な断面形状)を有している。内部セル4は、隣り合う内部セル4,4がコア隔壁5によって仕切られた状態で、六角形の最密配置となるように配列されている。
【0024】
ここでは、内部セル4は、正六角形状の断面形状を有する内部セル4aと、規則的六角形(例えば、内部セル4aの一辺と長さが同じ長辺、及び内部セル4aの一辺よりも長さが短い短辺からなる六角形)状の断面形状を有する内部セル4bと、を含んでいる。つまり、コア部2の構造は、互いに異なる断面形状を有する複数種類の内部セル4を含む非対称セル構造となっている。なお、コア部2では、1つの内部セル4aに対し、その断面形状の各辺に内部セル4bの断面形状の長辺が対向するように、6つの内部セル4bが隣接しているが、これに限定されない。内部セル4a,4bは、内部セル4a又は内部セル4bの一方に対し、他方が少なくとも1つ隣接するように配列されていればよい。
【0025】
図3は、ハニカム構造体1の一端面1aの一部拡大図であり、図4は、ハニカム構造体1の他端面1bの一部拡大図である。図3に示されるように、ハニカム構造体1の一端面1aにおいては、内部セル4aの一端部が封口材で封じられており、内部セル4bが開口している。一方、図4に示されるように、ハニカム構造体1の他端面1bにおいては、内部セル4bの他端部が封口材で封じられており、内部セル4aが開口している。
【0026】
なお、封口材の材料は、内燃機関から排出されるガス中の微細粒子(すす等)を捕捉しつつガスを通過させる材料であってもよいし、或いはガスを通過させない材料であってもよい。また、封口材の材料は、コア部2及びシェル部3と同じ材料であってもよいし、異なる材料であってもよい。
【0027】
図2〜図4に示されるように、シェル部3(図2〜図4において二点鎖線の外側の部分)は、ハニカム構造体1の一端面1aにおいて内部セル4bの開口を露出させると共に、ハニカム構造体1の他端面1bにおいて内部セル4aの開口を露出させるように、コア部2(図2〜図4において二点鎖線の内側の部分)を包囲している。シェル部3は、間隙を介してコア部2を包囲する円筒状の側壁6と、コア部2と側壁6との間に、コア部2を包囲するように配置された複数のシェル隔壁7と、を有している。
【0028】
図2に示されるように、各シェル隔壁7は、側壁6に対向しかつ側壁6に対して凸となるように接続された一対のコア隔壁5,5の角部5aと、側壁6との間に、掛け渡されている。ここでは、一つの角部5aと側壁6との間に、一つのシェル隔壁7のみが掛け渡されている。そして、シェル隔壁7は、そのシェル隔壁7が接続された角部5aに集合する一対のコア隔壁5,5のそれぞれと鈍角の角度(90度より大きく180度より小さい角度)を成している。つまり、シェル隔壁7の中心面(厚さの中心面)は、そのシェル隔壁7が接続された角部5aに集合する一対のコア隔壁5,5のそれぞれの中心面(厚さの中心面)と鈍角の角度を成している。また、シェル隔壁7は、側壁6と略90度の角度を成すように(すなわち、側壁6に略直交するように)、側壁6に接続されている。つまり、シェル隔壁7の中心面(厚さの中心面)は、そのシェル隔壁7と側壁6との接続箇所において側壁6の中心面(厚さの中心面)に接する面に対して略90度の角度を成している。
【0029】
更に、シェル隔壁7は、側壁6に接続される平板状の接続部7aを含んでおり、コア部2を包囲する方向(ここでは周方向)において隣り合う接続部7a,7aの間隔Dは、内部セル4aの断面形状である正六角形における最長の対角線(すなわち、正六角形の中心を通る三本の対角線)の長さL以下となっている。そして、コア隔壁5、側壁6及びシェル隔壁7によって仕切られることでシェル部3に形成された複数の外周セル8の断面積は、全ての外周セル8の平均断面積の40%以上となっている。ここでは、中心線CLに平行な方向から見た場合に、一部のシェル隔壁7(例えば、図2において破線で囲んだシェル隔壁7)が折り曲げられることで、全ての外周セル8において、隣り合う接続部7a,7aの間隔Dが最長の対角線の長さL以下とされ、かつ外周セル8の断面積が平均断面積の40%以上とされている。
【0030】
図3に示されるように、ハニカム構造体1の一端面1aにおいては、内部セル4aに隣接しない外周セル8aの一端部が封口材で封じられており、外周セル8のうち外周セル8a以外の外周セル8bが開口している。一方、図4に示されるように、ハニカム構造体1の他端面1bにおいては、外周セル8bの他端部が封口材で封じられており、外周セル8aが開口している。
【0031】
以上のように構成されたハニカム構造体1は、ガスを浄化するフィルタとして用いられる。すなわち、ハニカム構造体1は、断熱材等に包まれ、更に金属製のケースに収容された状態で、一端面1aが上流側となりかつ他端面1bが下流側となるように、内燃機関から排出されるガスの流路上に配置される。そして、内燃機関から排出されたガスは、一端面1a側からハニカム構造体1に供給され、内部セル4b及び外周セル8bの開口を介して各セル4b,8b内に流入する。各セル4b,8b内に流入したガスは、内部セル4b及び外周セル8bの他端部が封口されているため、コア隔壁5及びシェル隔壁7を介して各セル4a,8a内に流入する。ガスがコア隔壁5及びシェル隔壁7を通過する際にガス中の微細粒子(すす等)が捕捉され、各セル4a,8a内に流入したガスは、内部セル4a及び外周セル8aの開口を介してハニカム構造体1外に流出する。これにより、浄化されたガスがハニカム構造体1の他端面1b側から排出されることになる。
【0032】
ここで、図5に示されるように、シェル隔壁7の外側端部7bは側壁6に接続されている。シェル隔壁7の両壁面7c,7cと、側壁6の内面6aとで形成される隅部B1,B1には丸みが付けられている。これにより、シェル隔壁7の各壁面7cと側壁6の内面6aとが滑らかに繋がれ、隅部B1,B1に応力が集中し難くなっている。このようにして、ハニカム構造体1は、外圧に対する強度の向上が図られたものとなっている。
【0033】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記各実施形態に限定されるものではない。例えば、図6に示されるように、シェル隔壁7の内側端部7dが、側壁6に対向するコア隔壁5に接続されている場合(ここでは、コア隔壁5の角部5aに接続されている場合)に、隅部B1,B1に加え、シェル隔壁7の両壁面7c,7cと、コア隔壁5の外面5bとで形成される隅部B2,B2に丸みが付けられていてもよい。この構造によれば、隅部B1,B1に加え、隅部B2,B2にも応力が集中し難くなる。従って、この場合、外圧に対する強度の向上がより一層図られたものとなる。
【0034】
また、コア部及びシェル部の形状及び材料は、上述したものに限定されず、様々な形状及び材料を適用することができる。また、内部セルの断面形状は、多角形状であれば、六角形状に限定されない。また、内部セルの角部やコア隔壁の角部は、若干の丸みを帯びていてもよい。更に、コア部2の構造は、互いに異なる断面形状を有する複数種類の内部セルを含む非対称セル構造に限定されず、略同じ断面形状を有する一種類の内部セルを含む対称セル構造であってもよい。
【0035】
また、各外周セルの一端部及び他端部の少なくとも一方が封口されていれば、封口された外周セルの端部によっても側壁が支持されるため、その部分において外圧に対する強度の向上を図ることができる。また、全ての外周セルの一端部が封口されていれば、外周セルの一端部が上流側となるようにハニカム構造体をガスの流路上に配置することで、外周セル内へのガスの流入を抑制し、セル部を保温層として機能させることができる。これにより、捕捉された微細粒子(すす等)を燃焼させるコア部の再生処理において、シェル部に包囲されたコア部を効率良くかつ均一に加熱して、微細粒子の燃え残りを低減することができる。従って、コア部の再生処理の頻度を減少させ(すなわち、コア部の再生効率を高め)、燃料消費を抑制することが可能となる。更に、各外周セルの一端部及び他端部の両方が封口されていれば、両方の部分において外圧に対する強度をより一層向上させることができ、加えて、シェル部の保温層としての機能を向上させて、コア部の再生効率をより高め、燃料消費をより一層抑制することが可能となる。
【符号の説明】
【0036】
1…ハニカム構造体、2…コア部、3…シェル部、4…内部セル、5…コア隔壁、6…側壁、7…シェル隔壁、7b…外側端部、7d…内側端部、B1,B2…隅部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスを浄化するフィルタとして用いられるハニカム構造体であって、
複数の内部セルが形成されたコア部と、
前記コア部を包囲する筒状のシェル部と、を備え、
前記シェル部は、
間隙を介して前記コア部を包囲する筒状の側壁と、
前記側壁を内側から支持する複数のシェル隔壁と、を有し、
前記シェル隔壁のそれぞれの外側端部は前記側壁に接続されており、前記シェル隔壁と前記側壁とで形成される隅部には丸みが付けられている、ハニカム構造体。
【請求項2】
前記コア部は、前記内部セルのそれぞれを仕切るコア隔壁を有し、
前記シェル隔壁のそれぞれの内側端部は、前記側壁に対向する前記コア隔壁に接続されており、前記シェル隔壁と前記コア隔壁とで形成される隅部には丸みが付けられている、請求項1記載のハニカム構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−17968(P2013−17968A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−154064(P2011−154064)
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】