説明

ハロゲン含有ガス供給装置

【課題】ハロゲン含有ガスを外部装置へと導く導入弁の弁室内の温度上昇を抑制し、導入弁の弁室内の表面腐食や導入弁に用いられるシール材の劣化を抑制すること。
【解決手段】ハロゲン含有ガスを、そのハロゲン含有ガスが高圧充填された容器から外部装置101へと供給するハロゲン含有ガス供給装置であって、容器1と外部装置101とを接続する供給管4と、供給管4に設けられ、容器1からハロゲン含有ガスを供給するための供給弁3とを備え、供給管4の供給弁3の下流の少なくとも一部に、ガス流通路の曲率半径が10cm以下である曲管部52が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハロゲン含有ガス供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハロゲンガスは、半導体デバイス、МEМSデバイス、液晶用TFTパネル及び太陽電池等の半導体製造工程における基板のエッチングプロセス用ガスや、CVD装置等の薄膜形成装置のクリーニングプロセス用ガスとして、重要な役割を担っている。
【0003】
ハロゲンガスの供給装置として、ハロゲンガスが高圧充填されたボンベを備えた供給装置がある。ボンベのハロゲンガスは、導入するための弁を介して半導体製造装置に供給される。
【0004】
ハロゲンガスの充填圧力を向上させ、ボンベの交換頻度を減らすことによって、ボンベの輸送費や、作業負担の低減を図ることができる。また、高濃度のハロゲンガスを用いることによって、クリーニングプロセスを効率的に行うことができる。そのため、ハロゲンガスをボンベに高圧かつ高濃度で充填し、安全かつ安定的にプロセス側へ供給することが望まれている。
【0005】
ハロゲンガスは反応性が高いガスであり、半導体製造装置への取り扱いが容易ではない。特に、反応性の高いフッ素ガスに適した容器弁や、高圧のフッ素ガスを安全かつ安定的にプロセス側へ供給する技術の開発が望まれている。
【0006】
特許文献1には、半導体製造システムに高濃度フッ素ガスを高圧力で供給する容器弁について開示されている。
【0007】
また、特許文献2には、半導体産業において使用される半導体材料ガスやパージガス、標準ガス、キャリアガス等の高純度ガスを供給するための容器弁(バルブ)として、真空排気性能やパージ性能などのガス置換特性を向上させることを目的として、ガス流路から障害物を除き、ガスの滞留するデッドスペースを最小にしたダイレクト型ダイヤフラム弁が開示されている。
【0008】
また、特許文献3には、バルブのシール部について、ゴムシーリングの焼損およびシール機能の低下に対応するため、火炎流路から窪んだ箇所にゴムシーリングが配置されるバルブが開示されている。
【0009】
さらに、特許文献4には、弁座の開閉動作を行うコイルやボビンを、空気冷却する構成とすることにより、コイルの焼損や絶縁劣化のないリニアサーボバルブが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005−207480号公報
【特許文献2】特開2005−188672号公報
【特許文献3】特開2000−291500号公報
【特許文献4】実開平5−62704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1に記載の容器弁は、シートディスクでガスの流路を開閉し、外部との気密をダイヤフラムでシールするバルブであるため、弁室内のガスが滞留しやすいデッドスペースが大きくなる。
【0012】
特許文献2には、バルブの内部を研磨することによって、水分等のガス分子やパーティクルが接ガス部表面に吸着する影響を少なくすることについて開示されている。しかし、詳細な研磨部分や形状について具体的に記載されていない。また、フッ素およびフッ素化合物ガスに適用できることについての記載もされていない。
【0013】
従来のバルブでは、高圧、高濃度のフッ素ガスを取り扱う場合には、弁室内の温度が上昇し、弁室内の表面腐食やシール材の劣化の問題があり、また、シール材に樹脂材質を用いるとフッ素ガスによって樹脂材質が焼損するという問題点があった。この問題点は、OやNO等の支燃性ガスを取り扱う場合も同様である。
【0014】
特許文献3に記載のバルブは、バックファイヤに対して対策されたものであり、高圧、高濃度のフッ素ガスに応用することはできない。また、特許文献4に記載のリニアサーボバルブは、コイルやボビンが空気冷却されるものであり、高圧、高濃度のフッ素ガスに応用することはできない。
【0015】
フッ素ガスなど腐食性の高いハロゲンガスが高圧充填された容器から供給弁を介してハロゲンガスを導入する場合、ハロゲンガスよって導入側の導入弁の内部温度の上昇を引き起こし易く、また、導入弁の弁室内の表面腐食やシール材の劣化が生じ易いという問題点があった。
【0016】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、ハロゲン含有ガスを外部装置へと導く導入弁の弁室内の温度上昇を抑制し、導入弁の弁室内の表面腐食や導入弁に用いられるシール材の劣化を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、ハロゲン含有ガスを、そのハロゲン含有ガスが高圧充填された容器から外部装置へと供給するハロゲン含有ガス供給装置であって、前記容器と前記外部装置とを接続する供給管と、前記供給管に設けられ、前記容器からハロゲン含有ガスを供給するための供給弁と、を備え、前記供給管の前記供給弁の下流少なくとも一部に、曲率半径が10cm以下である曲管部が設けられることを特徴とする。
【0018】
また、本発明は、前記曲管部がコイル状であることを特徴とする。
【0019】
また、本発明は、ハロゲン含有ガスのハロゲンは、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素であることを特徴とする。
【0020】
また、本発明は、前記ハロゲン含有ガスの充填圧力は、5MPa以上20MPa以下であることを特徴とする。
【0021】
また、本発明は、前記曲管部がコイル状であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、供給管の下流少なくとも一部に曲管部が設けられるため、導入弁の弁室内の温度上昇、及び導入弁の表面腐食や導入弁に用いられるシール材の劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明のハロゲン含有ガス供給装置の一実施例の概略図を示す。
【図2】実施例1〜13及び比較例2に用いた装置の概略図を示す。
【図3】実施例1、3〜13及び比較例2に用いた直線性抑制機構の概略図を示す。
【図4】実施例2に用いた直線性抑制機構の概略図を示す。
【図5】比較例1に用いた装置の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施の形態に係るハロゲン含有ガス供給装置は、ハロゲン含有ガスを、そのハロゲン含有ガスが高圧充填された容器から外部装置へと供給するものであって、容器と外部装置とを接続する供給管と、供給管に設けられ、容器からハロゲン含有ガスを供給するための供給弁と、を備える。供給管の少なくとも一部には、曲率半径が10cm以下である曲管部が設けられる。供給弁の下流にはハロゲン含有ガスを外部装置へと導入するための導入弁が設けられる。導入弁は、外部装置内に設けるようにしてもよく、また、ハロゲン含有ガス供給装置内に設けるようにしてもよい。
【0025】
外部装置は、半導体デバイス、МEМSデバイス、液晶用TFTパネル、及び太陽電池等に用いられる半導体を製造する半導体製造装置である。また、ハロゲン含有ガスは、半導体製造工程にてクリーニングプロセス用ガスやエッチングプロセス用ガスとして用いられる。
【0026】
以下、本発明の実施の形態に係るハロゲン含有ガス供給装置について詳細に説明する。
【0027】
ハロゲン含有ガスが高圧充填された容器は、開閉弁を具備する。容器は、少なくとも5MPaG以上の高圧を保つことができる密閉性を有し、かつ、開閉弁にてハロゲン含有ガスを放出できる構造であればよい。望ましくは、20MPaG以上の高圧を保てる密閉性を有するのが好ましい。
【0028】
容器の材質は、充填されるハロゲンガスに対して耐蝕性を有するものが好ましく、例えば、マンガン鋼、ステンレス鋼、ニッケルを含む合金(ハステロイ、インコネル、モネルなど)が挙げられる。
【0029】
ハロゲン含有ガスのハロゲンは、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素であり、これらのうちいずれか2種類以上が混合されたものであってもよい。
【0030】
ハロゲン含有ガスは、ハロゲンが含有されているものであればよく、フッ素ガス、塩素ガス、臭素ガス、ヨウ素ガスのハロゲンガス、又はNF、BF、ClF、ClF、IF等のハロゲン化合物のガスに、N、Ar、He等の不活性ガスを混合したものであってもよい。また、ハロゲンガスとハロゲン化合物のガスとの混合ガスに不活性ガスを混合したものであってもよい。
【0031】
ハロゲン含有ガス中のハロゲンガス、ハロゲン化合物のガスの濃度は、特に限定されないが、例えば、フッ素ガス、塩素ガス、臭素ガス、ヨウ素ガス、NFガス、BFガス、ClFガス、ClFガス、及びIFガスのうち少なくともいずれか1種類が0.1vol%以上100%以下の範囲である。
ハロゲン含有ガスの充填圧力は、5MPaG以上20MPaG以下であることが望ましい。5MPaG未満では、導入側の導入弁内部の温度上昇を引き起こし難く、また、導入弁の弁室内の表面腐食や導入弁に用いられるシール材の劣化が生じ難い。一方、20MPaG超では、本発明の供給装置を具備することにより導入弁内部の温度上昇は引き起こさないものの、ハロゲンガスによる接ガス部表面の腐食が生じ易くなるため、好ましくない。
【0032】
供給管の曲管部の構造は特に限定されることは無く、コイル状などガス流通の直進性を失わせるものであればよい。曲管部の曲率半径は0.5cm以上10cm以下であることが好ましい。曲管部の最大曲率半径が0.5cm未満では、曲管内部の空間をガスが主に略直線的に流通する虞がある。曲管部の最小曲率半径が10cm超では、曲部が直線に近づくためガス流通の直線性を失わせる効果が小さくなる虞がある。
【0033】
また、供給管は、曲管部を複数有していてもよい。例えば、複数の曲管部を直列又は並列に配置するようにしてもよい。
【0034】
容器の開閉弁、供給管、供給弁、導入弁におけるハロゲンガスが接触する部分には、メタル材質を用いることが望ましい。メタル材質としては、ステンレス鋼、インコネル、又はハステロイ等が挙げられる。
【0035】
開閉弁、供給弁のバルブ構造については特に限定されることはない。
【0036】
本発明のハロゲン含有ガス供給装置を、例えば、外部装置としての半導体製造装置に接続し、半導体製造装置へハロゲン含有ガスを供給する場合について、図1を参照して説明する。
【0037】
図1に示す実施例では、ハロゲン含有ガスが高圧充填された容器1の開閉弁2には、導管6を介して供給弁3が接続される。供給弁3には供給管4が接続され、供給管4の下流端には半導体製造装置101が接続される。供給管4には、供給弁3を通じて供給されたハロゲン含有ガスを半導体製造装置101へと導くための導入弁100が設けられる。供給管4には、供給弁3と導入弁100との間に、曲管部(例えば、ガス流通路の曲率半径が5cmのコイル)を有する直線性抑制機構5が設けられる。開閉弁2と供給弁3は、接ガス部がオールメタル製のダイヤフラムバルブである。
【0038】
図1において、供給弁3を開放、及び開閉弁2と導入弁100を閉止した状態で、開閉弁2から導入弁100までの導管6及び供給管4内を真空ライン(図示省略)により真空状態とする。その後、供給弁3を閉止し、開閉弁2を開放して容器1から供給弁3までの導管6内にハロゲン含有ガスを封入する。その後、供給弁3を開放することにより、供給弁3から導入弁100までの供給管4内の圧力が上昇し内圧が一定となる。これにより、半導体製造装置101にハロゲン含有ガスを供給可能な状態となる。
【0039】
供給弁を開放して高圧のハロゲン含有ガスを供給する場合、外部装置へハロゲン含有ガスを導入するための導入弁の内部温度の上昇を引き起こし易く、また、導入弁の弁室内の表面腐食や導入弁に用いられるシール材の劣化が生じ易い。これは、供給弁の開放により、ハロゲン含有ガスが流通する供給管内で衝撃波が発生し、発生した衝撃波が伝播する過程で成長し導入弁に達するため、導入弁内部の温度上昇を引き起こすものと推測される。そこで、本発明では、供給管4の供給弁3と導入弁100との間に曲管部を設けることによって、衝撃波の発生または成長を抑制する。これにより、導入弁内部の温度上昇、及び導入弁の弁室内の表面腐食やシール材の劣化を抑制することができる。
【0040】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。
【実施例1】
【0041】
図2に本実施例の概略図を示す。マンガン鋼製の容器1には、N希釈による20vol%Fガスが5MPaGの圧力で充填されている。容器1には開閉弁2が装着されている。開閉弁2と供給弁3は、外径1/2インチ、肉厚1mm、長さ200mmの直線状のステンレス製の導管6で接続されている。供給弁3の下流側には、導管6と同一形状のステンレス管の供給管4が接続される。供給管4の途中には、直線性抑制機構5が設けられている。さらに、直線性抑制機構5の下流側には内容量50ccのステンレス製のシリンダ26が接続されている。シリンダ26の下流側には、手動弁28を介して真空ライン29が接続されている。
【0042】
直線性抑制機構5は、図3に示すように、曲率半径5cm、巻数10のコイル状の曲管部を備えた、外径3/8インチ、肉厚1mmのステンレス製の配管51であり、供給管4の途中に接続されている。
【0043】
シリンダ26内の下流端底部には、各辺3mmのPCTFE(三フッ化塩化エチレン)チップ27が封入されている。
【0044】
開閉弁2及び供給弁3はオールメタル製のダイヤフラム自動弁である。手動弁28及び真空ライン29は導管6及び供給管4内のガス置換を行うためのものである。
【0045】
次に、操作について説明する。開閉弁2を閉、それ以外の弁を開にした状態で導管6及び供給管4内を真空ライン29を通じて真空状態とする。その後、すべての弁を閉止した後、開閉弁2を開放して容器1から供給弁3までの導管6内の圧力を5MPaGとした。
【0046】
さらに、供給弁3を開放して容器1からシリンダ26までの供給管4内の圧力を5MPaGとした。その後、開閉弁2を閉止して真空ライン29を通じて導管6及び供給管4内のガス置換を行った。
【0047】
以上のような操作を10回繰り返した後に、シリンダ26内のPCTFEチップ27を取出し、目視観察及び重量減少率の測定を行った結果、目視変化は無く、重量減少率も0.5質量%以下であった。目視変化及び重量減少が発生していなかったことから、PCTFEの焼損は発生していなかったものと判断できる。
【実施例2】
【0048】
直線性抑制機構5は、図4に示すように、4つの曲率半径1cmの曲管部52が、長さ5cmの直管部53により直列に連結されており、ガス流通路が曲率半径を有する部位と直線状の部位が交互に連続した構造をとる。直線性抑制機構5以外の構成は実施例1と同様である。
【0049】
次に、操作について説明する。開閉弁2を閉、それ以外の弁を開にした状態で導管6及び供給管4内を真空ライン29により真空状態とする。その後、すべての弁を閉止した後、開閉弁2を開放して容器1から供給弁3までの導管6内の圧力を5MPaGとした。
【0050】
さらに、供給弁3を開放して容器1からシリンダ26までの供給管4内の圧力を5MPaGとした。その後、開閉弁2を閉止し、真空ライン29を通じて導管6及び供給管4内のガス置換を行った。
【0051】
以上のような操作を10回繰り返した後に、シリンダ26内のPCTFEチップ27を取出し、目視観察及び重量減少率の測定を行った結果、目視変化は無く、重量減少率も0.5質量%以下であった。目視変化及び重量減少が発生していなかったことから、PCTFEの焼損は発生していなかったものと判断できる。
【実施例3】
【0052】
本実施例では、容器1に、N希釈による20vol%Fガスが14.7MPaGの圧力で充填されている。それ以外の構成は実施例1の構成と同様である。
【0053】
次に、操作について説明する。開閉弁2を閉、それ以外の弁を開にした状態で導管6及び供給管4内を真空ライン29により真空状態とする。その後、すべての弁を閉止した後、開閉弁2を開放して容器1から供給弁3までの導管6内の圧力を14.7MPaGとした。
【0054】
さらに、供給弁3を開放して容器1からシリンダ26までの導管内の圧力を14.7MPaGとした。その後、開閉弁2を閉止し、真空ライン29を通じて導管6及び供給管4内のガス置換を行った。
【0055】
以上のような操作を10回繰り返した後に、シリンダ26内のPCTFEチップ27を取出し、目視観察及び重量減少率の測定を行った結果、目視変化は無く、重量減少率も0.5質量%以下であった。目視変化及び重量減少が発生していなかったことから、PCTFEの焼損は発生していなかったものと判断できる。
【実施例4】
【0056】
本実施例では、供給管4に、外径1/8インチ、肉厚0.72mmのステンレス製配管を用い、配管51に、曲率半径0.5cm、巻数10のコイル状の曲管部を備えた、外径1/8インチ、肉厚0.72mmのステンレス製配管を用いる。それ以外の構成は実施例1と同様である。また、操作も実施例1と同様に行った。
【0057】
該操作を10回繰り返した後に、シリンダ26内のPCTFEチップ27を取出し、目視観察及び重量減少率の測定を行った結果、目視変化は無く、重量減少率も0.5質量%以下であった。目視変化及び重量減少が発生していなかったことから、PCTFEの焼損は発生していなかったものと判断できる。
【実施例5】
【0058】
本実施例では、配管51の曲率半径が9cmである以外の構成は実施例1と同様である。また、操作も実施例1と同様に行った。
【0059】
該操作を10回繰り返した後に、シリンダ26内のPCTFEチップ27を取出し、目視観察及び重量減少率の測定を行った結果、目視変化は無く、重量減少率も0.5質量%以下であった。目視変化及び重量減少が発生していなかったことから、PCTFEの焼損は発生していなかったものと判断できる。
【実施例6】
【0060】
本実施例では、配管51の曲率半径が10cmである以外の構成は実施例1と同様である。また、操作も実施例1と同様に行った。
【0061】
該操作を10回繰り返した後に、シリンダ26内のPCTFEチップ27を取出し、目視観察及び重量減少率の測定を行った結果、チップ表面に若干の変色が認められたものの、重量減少率は0.5質量%以下であった。重量変化は発生しておらず、目視変化も僅かであったことから、PCTFEの焼損としては問題の無い範囲であった。
【実施例7】
【0062】
本実施例では、容器1に、N希釈による10vol%Clガスが5MPaGの圧力で充填されている。それ以外の構成は実施例1の構成と同様である。また、操作も実施例1と同様に行った。
【0063】
該操作を10回繰り返した後に、シリンダ26内のPCTFEチップ27を取出し、目視観察及び重量減少率の測定を行った結果、目視変化は無く、重量減少率も0.5質量%以下であった。目視変化及び重量減少が発生していなかったことから、PCTFEの焼損は発生していなかったものと判断できる。
【実施例8】
【0064】
本実施例では、容器1に、N希釈による0.5vol%Brガスが5MPaGの圧力で充填されている。それ以外の構成は実施例1の構成と同様である。また、操作も実施例1と同様に行った。
【0065】
該操作を10回繰り返した後に、シリンダ26内のPCTFEチップ27を取出し、目視観察及び重量減少率の測定を行った結果、目視変化は無く、重量減少率も0.5質量%以下であった。目視変化及び重量減少が発生していなかったことから、PCTFEの焼損は発生していなかったものと判断できる。
【実施例9】
【0066】
本実施例では、容器1に、N希釈による0.1vol%ヨウ素ガスが5MPaGの圧力で充填されている。それ以外の構成は実施例1の構成と同様である。また、操作も実施例1と同様に行った。
【0067】
該操作を10回繰り返した後に、シリンダ26内のPCTFEチップ27を取出し、目視観察及び重量減少率の測定を行った結果、目視変化は無く、重量減少率も0.5質量%以下であった。目視変化及び重量減少が発生していなかったことから、PCTFEの焼損は発生していなかったものと判断できる。
【実施例10】
【0068】
本実施例では、容器1に、N希釈による10vol%のF+Cl混合ガス(FとClの体積分率はそれぞれ50vol%)が5MPaGの圧力で充填されている。それ以外の構成は実施例1の構成と同様である。また、操作も実施例1と同様に行った。
【0069】
該操作を10回繰り返した後に、シリンダ26内のPCTFEチップ27を取出し、目視観察及び重量減少率の測定を行った結果、目視変化は無く、重量減少率も0.5質量%以下であった。目視変化及び重量減少が発生していなかったことから、PCTFEの焼損は発生していなかったものと判断できる。
【実施例11】
【0070】
本実施例では、容器1に、N希釈による20vol%Fガスが3.6MPaGの圧力で充填されている。それ以外の構成は実施例1の構成と同様である。また、操作も実施例1と同様に行った。
【0071】
該操作を10回繰り返した後に、シリンダ26内のPCTFEチップ27を取出し、目視観察及び重量減少率の測定を行った結果、目視変化は無く、重量減少率も0.5質量%以下であった。目視変化及び重量減少が発生していなかったことから、PCTFEの焼損は発生していなかったものと判断できる。
【実施例12】
【0072】
本実施例では、容器1に、N希釈による10vol%Fガスが19MPaGの圧力で充填されている。それ以外の構成は実施例1の構成と同様である。また、操作も実施例1と同様に行った。
【0073】
該操作を10回繰り返した後に、シリンダ26内のPCTFEチップ27を取出し、目視観察及び重量減少率の測定を行った結果、目視変化は無く、重量減少率も0.5質量%以下であった。目視変化及び重量減少が発生していなかったことから、PCTFEの焼損は発生していなかったものと判断できる。
【実施例13】
【0074】
本実施例では、容器1に、N希釈による10vol%Fガスが21MPaGの圧力で充填されている。それ以外の構成は実施例1の構成と同様である。また、操作も実施例1と同様に行った。
【0075】
該操作を10回繰り返した後に、シリンダ26内のPCTFEチップ27を取出し、目視観察及び重量減少率の測定を行った結果、チップ表面に若干の変色が認められたものの、重量減少率は0.5質量%以下であった。重量変化は発生しておらず、目視変化も僅かであったことから、PCTFEの焼損としては問題の無い範囲であった。
【実施例14】
【0076】
本実施例では、容器1に、N希釈による50vol%Fガスが5MPaGの圧力で充填されている。それ以外の構成は実施例1の構成と同様である。また、操作も実施例1と同様に行った。
【0077】
該操作を10回繰り返した後に、シリンダ26内のPCTFEチップ27を取出し、目視観察及び重量減少率の測定を行った結果、目視変化は無く、重量減少率も0.5質量%以下であった。目視変化及び重量減少が発生していなかったことから、PCTFEの焼損は発生していなかったものと判断できる。
【実施例15】
【0078】
本実施例では、容器1に、100vol%NFガスが14.7MPaGの圧力で充填されている。それ以外の構成は実施例1の構成と同様である。また、操作も実施例1と同様に行った。
【0079】
該操作を10回繰り返した後に、シリンダ26内のPCTFEチップ27を取出し、目視観察及び重量減少率の測定を行った結果、目視変化は無く、重量減少率も0.5質量%以下であった。目視変化及び重量減少が発生していなかったことから、PCTFEの焼損は発生していなかったものと判断できる。
【実施例16】
【0080】
本実施例では、容器1に、100vol%Oガスが14.7MPaGの圧力で充填されている。それ以外の構成は実施例1の構成と同様である。また、操作も実施例1と同様に行った。
【0081】
該操作を10回繰り返した後に、シリンダ26内のPCTFEチップ27を取出し、目視観察及び重量減少率の測定を行った結果、目視変化は無く、重量減少率も0.5質量%以下であった。目視変化及び重量減少が発生していなかったことから、PCTFEの焼損は発生していなかったものと判断できる。
【実施例17】
【0082】
本実施例では、容器1に、N希釈による20vol%BFガスが14.7MPaGの圧力で充填されている。それ以外の構成は実施例1の構成と同様である。また、操作も実施例1と同様に行った。
【0083】
該操作を10回繰り返した後に、シリンダ26内のPCTFEチップ27を取出し、目視観察及び重量減少率の測定を行った結果、目視変化は無く、重量減少率も0.5質量%以下であった。目視変化及び重量減少が発生していなかったことから、PCTFEの焼損は発生していなかったものと判断できる。
【実施例18】
【0084】
本実施例では、容器1に、N希釈による20vol%ClFガスが14.7MPaGの圧力で充填されている。それ以外の構成は実施例1の構成と同様である。また、操作も実施例1と同様に行った。
【0085】
該操作を10回繰り返した後に、シリンダ26内のPCTFEチップ27を取出し、目視観察及び重量減少率の測定を行った結果、目視変化は無く、重量減少率も0.5質量%以下であった。目視変化及び重量減少が発生していなかったことから、PCTFEの焼損は発生していなかったものと判断できる。
【実施例19】
【0086】
本実施例では、容器1に、N希釈による0.1vol%ClFガスが5MPaGの圧力で充填されている。それ以外の構成は実施例1の構成と同様である。また、操作も実施例1と同様に行った。
【0087】
該操作を10回繰り返した後に、シリンダ26内のPCTFEチップ27を取出し、目視観察及び重量減少率の測定を行った結果、目視変化は無く、重量減少率も0.5質量%以下であった。目視変化及び重量減少が発生していなかったことから、PCTFEの焼損は発生していなかったものと判断できる。
【実施例20】
【0088】
本実施例では、容器1に、N希釈による0.1vol%IFガスが5MPaGの圧力で充填されている。それ以外の構成は実施例1の構成と同様である。また、操作も実施例1と同様に行った。
【0089】
該操作を10回繰り返した後に、シリンダ26内のPCTFEチップ27を取出し、目視観察及び重量減少率の測定を行った結果、目視変化は無く、重量減少率も0.5質量%以下であった。目視変化及び重量減少が発生していなかったことから、PCTFEの焼損は発生していなかったものと判断できる。
[比較例1]
図5に本比較例の概略図を示す。本比較例では、マンガン鋼製の容器1にN希釈による20vol%Fガスが5MPaGの圧力で充填されている。容器1には開閉弁2が装着されている。開閉弁2と供給弁3は、外径1/2インチ、肉厚1mm、長さ200mmの直線状のステンレス製の導管6で接続されている。供給弁3の下流側には、導管6と同一形状のステンレス製の供給管4を介して、内容量50ccのステンレス製のシリンダ26が接続されている。
【0090】
シリンダ26の下流側には、手動弁28を介して真空ライン29が接続されている。シリンダ26内の下流端底部には、各辺3mmのPCTFEチップ27が封入されている。
【0091】
開閉弁2及び供給弁3はオールメタル製のダイヤフラム自動弁である。手動弁28及び真空ライン29は導管6及び供給管4内のガス置換を行うためのものである。
【0092】
次に、操作について説明する。開閉弁2を閉、それ以外の弁を開にした状態で導管6及び供給管4内を真空ライン29を通じて真空状態とする。その後、すべての弁を閉止した後、開閉弁2を開放して容器1から供給弁3までの導管6内の圧力を5MPaGとした。
【0093】
さらに、供給弁3を開放して容器1からシリンダ26までの供給管4内の圧力を5MPaGとした。その後、5分間経過した後に開閉弁2を閉止し、真空ライン29を通じて導管6及び供給管4内のガス置換を行った。
【0094】
以上のような操作を10回繰り返した後に、シリンダ26内のPCTFEチップ27を取出し、目視観察及び重量減少率の測定を行った結果、目視変化ではPCTFE表面の約50%が焼損の為変色しており、重量減少率も12質量%であった。目視変化及び重量減少が発生していたことから、PCTFEの焼損が発生したものと判断できる。
[比較例2]
本比較例では、配管51の曲率半径が12cmである以外の構成は実施例1と同様である。また、操作も実施例1と同様に行った。
【0095】
該操作を10回繰り返した後に、シリンダ26内のPCTFEチップ27を取出し、目視観察及び重量減少率の測定を行った結果、目視変化ではPCTFE表面の約10%が焼損の為変色しており、重量減少率も4質量%であった。目視変化及び重量減少が発生していたことから、PCTFEの焼損が発生したものと判断できる。
[比較例3]
本比較例では、配管51の曲率半径が15cmである以外の構成は実施例1と同様である。また、操作も実施例1と同様に行った。
【0096】
該操作を10回繰り返した後に、シリンダ26内のPCTFEチップ27を取出し、目視観察及び重量減少率の測定を行った結果、目視変化ではPCTFE表面の約30%が焼損の為変色しており、重量減少率も7質量%であった。目視変化及び重量減少が発生していたことから、PCTFEの焼損が発生したものと判断できる。
[比較例4]
本比較例では、容器1に、100vol%NFガスが14.7MPaGの圧力で充填されている。それ以外の構成は比較例1の構成と同様である。また、操作も比較例1と同様に行った。
【0097】
該操作を10回繰り返した後に、シリンダ26内のPCTFEチップ27を取出し、目視観察及び重量減少率の測定を行った。その結果、重量変化率は0.5質量%以下であったものの、目視観察では、わずかではあるが、表面に燃損の為の変色が認められた。
[比較例5]
本比較例では、容器1に、100vol%Oガスが14.7MPaGの圧力で充填されている。それ以外の構成は比較例1の構成と同様である。また、操作も比較例1と同様に行った。
【0098】
該操作を10回繰り返した後に、シリンダ26内のPCTFEチップ27を取出し、目視観察及び重量減少率の測定を行った。その結果、重量変化率は0.5質量%以下であったものの、目視観察では、わずかではあるが、表面に焼損の為の変色が認められた。
[比較例6]
本比較例では、容器1に、N希釈による20vol%BFガスが14.7MPaGの圧力で充填されている。それ以外の構成は比較例1の構成と同様である。また、操作も比較例1と同様に行った。
【0099】
該操作を10回繰り返した後に、シリンダ26内のPCTFEチップ27を取出し、目視観察及び重量減少率の測定を行った。その結果、重量変化率は0.5質量%以下であったものの、目視観察では、わずかではあるが、表面に焼損の為の変色が認められた。
[比較例7]
本比較例では、容器1に、N希釈による20vol%ClFガスが14.7MPaGの圧力で充填されている。それ以外の構成は比較例1の構成と同様である。また、操作も比較例1と同様に行った。
【0100】
該操作を10回繰り返した後に、シリンダ26内のPCTFEチップ27を取出し、目視観察及び重量減少率の測定を行った。その結果、重量変化率は0.5質量%以下であったものの、目視観察では、わずかではあるが、表面に焼損の為の変色が認められた。
[比較例8]
本比較例では、容器1に、N希釈による0.1vol%ClFガスが5MPaGの圧力で充填されている。それ以外の構成は比較例1の構成と同様である。また、操作も比較例1と同様に行った。
【0101】
該操作を10回繰り返した後に、シリンダ26内のPCTFEチップ27を取出し、目視観察及び重量減少率の測定を行った。その結果、重量変化率は0.5質量%以下であったものの、目視観察では、わずかではあるが、表面に焼損の為の変色が認められた。
[比較例9]
本比較例では、容器1に、N希釈による0.1vol%IFガスが5MPaGの圧力で充填されている。それ以外の構成は比較例1の構成と同様である。また、操作も比較例1と同様に行った。
【0102】
該操作を10回繰り返した後に、シリンダ26内のPCTFEチップ27を取出し、目視観察及び重量減少率の測定を行った。その結果、重量変化率は0.5質量%以下であったものの、目視観察では、わずかではあるが、表面に焼損の為の変色が認められた。
【0103】
なお、上記実施の形態では、高圧充填されたハロゲン含有ガスを容器から外部装置へと供給する装置について説明した。しかし、実施例16及び比較例5に示したように、ハロゲン含有ガスに代わりOやNO等の支燃性ガスを用いた場合も同様の作用効果を奏する。つまり、適用するガスをハロゲン含有ガスから支燃性ガスに代え、それ以外の構成は同一であっても、発明として成立する。
【0104】
具体的には、支燃性ガスを、その支燃性ガスが高圧充填された容器から外部装置へと供給する支燃性ガス供給装置であって、前記容器と前記外部装置とを接続する供給管と、前記供給管に設けられ前記容器から支燃性ガスを供給するための供給弁とを備え、前記供給管の前記供給弁の下流の少なくとも一部に曲率半径が10cm以下である曲管部が設けられる、と構成しても発明が成立する。
【0105】
また、支燃性ガスの充填圧力は、5MPa以上20MPa以下であることが好ましい。
【0106】
また、前記曲管部がコイル状である。
【0107】
支燃性ガスが用いられる本構成においても、供給管の下流少なくとも一部に曲管部が設けられるため、導入弁の弁室内の温度上昇、及び導入弁の表面腐食や導入弁に用いられるシール材の劣化を抑制することができる。
【0108】
本発明は上記の実施の形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明のハロゲン含有ガス供給装置は、半導体製造装置へ安全にクリーニングガスを供給するためのクリーニングガスの供給装置として用いることができる。
【符号の説明】
【0110】
1:容器
2:開閉弁
3:供給弁
4:供給管
5:直線性抑制機構
6:導管
26:シリンダ(50cc)
27:PCTFEチップ(3×3×3mm
28:手動弁
29:真空ライン
51:配管
52:曲管部
53:直管部
100:導入弁
101:半導体製造装置(外部装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハロゲン含有ガスを、そのハロゲン含有ガスが高圧充填された容器から外部装置へと供給するハロゲン含有ガス供給装置であって、
前記容器と前記外部装置とを接続する供給管と、
前記供給管に設けられ、前記容器からハロゲン含有ガスを供給するための供給弁と、を備え、
前記供給管の前記供給弁の下流の少なくとも一部に、曲率半径が10cm以下である曲管部が設けられることを特徴とするハロゲン含有ガス供給装置。
【請求項2】
ハロゲン含有ガスのハロゲンは、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素であることを特徴とする請求項1に記載のハロゲン含有ガス供給装置。
【請求項3】
前記ハロゲン含有ガスの充填圧力は、5MPa以上20MPa以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のハロゲン含有ガス供給装置。
【請求項4】
前記曲管部がコイル状であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のハロゲン含有ガス供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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