説明

ハンドサニタイザー

【構成】
(a)第1発泡促進剤が溶解し、かつ第1泡ディスペンサー(4)に収められたアルコール系媒体中の亜塩素酸塩からなり、第1泡として吐き出される第1部分、および
(b)第2発泡促進剤が溶解し、かつ第2泡ディスペンサー(6)に収められたアルコール系媒体中の酸からなり、第2泡として吐き出される第2部分からなり、
第1泡と第2泡とが混合されたときに上記亜塩素酸塩および上記酸が反応して、二酸化塩素を発生し、そして
第1部分および第2部分の等量混合物(18)が少なくとも50重量%のアルコールを含有するハンドサニタイザー(2)である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンドサニタイザー(手指用消毒剤)に関する。
【背景技術】
【0002】
MRSAやクロストリジウム・ディフィシルなどの院内感染症が増加しているため、院内を清潔に保つ必要性が増している。特に、手指の消毒を有効に実施することが、臨床環境で働く人々にとって必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2006/079822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の態様については、独立請求項に具体的に記載してあり、また好ましい特徴については、従属請求項に具体的に記載してある。
【0005】
本発明は、二酸化塩素(ClO)の殺胞子性を示す殺菌性アルコールハンドウオッシュ剤/サニタイザーの作用効果を実現するものである。
【0006】
本明細書で使用する術語“アルコール系媒体”(alcoholic medium)は、アルコール含有流体、代表的にはアルコールの水溶液を指す術語である。このアルコールとしては、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノールやこれらアルコールの混合物を例示することができる。本発明の一つの実施態様では、アルコールは、今回エタノールより乾燥時間が速く、かつ皮膚感覚が優れていることが判明した3−メトキシ−3−メチルブタン−1−オール(MMB)であるか、あるいはこれを含むものである。
【0007】
また、本発明によれば驚くべきことに、アルコールが実質的な量で存在する状態でClOを産生すると、エタノールからのアセトアルデヒドや酢酸などのアルコールの望ましくない酸化生成物の顕著な生成が見られないことが分かった。理論的ではないが、泡の混合時ClOがアルコールと接触している時間が短いため、アルコールの酸化レベルが、酸化生成物が強く臭うレベルにないことが考えられる。さらに驚くべきことに、亜塩素酸ナトリウムが酸化剤であるにも拘わらず、アルコール系媒体中で長時間安定であることも判明した。
【0008】
泡ディスペンサーは通常のハウジング内に収められ、そして例えばWO2006/079822号公報に記載されている通常のアクチュエーターを使用して吐き出しを行うことができる。なお、この公報の内容は本開示に援用するものである。
【0009】
以下例示のみを目的として添付図面を参考にして、本発明を詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施態様に従って構成したハンドサニタイザーを示す図である。
【図2】使用状態にある図1のハンドサニタイザーを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の説明において特に断らない限り、部(all parts)はいずれも重量部である。
【0012】
本実施例のハンドサニタイザー2の場合、Airspray International BV製のDual Foamer泡ディスペンサーを使用する。ハンドサニタイザー2は、第1ディスペンサー室4がクリップで第2ディスペンサー室6に留めらている。これらディスペンサー室4、6は、それぞれのピストン部材14、16が押し下げられた時に泡などの内容物を吐き出す2つの小さな泡ポンプシステムの要部を構成する。独立した一つのアクチュエーター8を作動すると、2つのピストン部材14、16が下がり、所定容量(本実施例では0.8ml)の液体がそれぞれのディスペンサー室4、6から同時に吐き出され、空気と結合して泡を形成する。ディスペンサー室4からの液体が第1の泡になり、そしてディスペンサー室6からの液体が第2の泡になる。これら第1および第2の泡がアクチュエーター8のそれぞれ個別のノズルオリフィス10、12から吐き出される。
【0013】
第1ディスペンサー室4は、第1発泡促進剤が溶解し、そして第1の泡ディスペンサーに収められている水性媒体中の亜塩素酸塩からなる第1部分を有し、これが第1の泡として吐き出される。第1部分の組成については、表1Aおよび表2Aに例示する。
【0014】
第2ディスペンサー室6は、第2発泡促進剤が溶解し、そして第2の泡ディスペンサーに収められているアルコール系媒体中の酸からなる第2部分を有し、これが第2の泡として吐き出される。第2部分の組成については、表1Bおよび表2Bに例示する。
【0015】
表1A


表1B

【0016】
第1部分および第2部分の両部分において、ジメチコンコポリオール界面(表面)活性剤(surfactant)を発泡促進剤として使用する。他の実施態様では、等重量部のジメチコンコポリオール、ポリジメチルシロキサンジクワット、アルキルアミノカルボキシレートおよびアルキルベタインの混合物からなる表面活性剤が水性媒体やアルコール系媒体を問わずすぐれた泡安定性を与えることが確認された。
【0017】
表2A


表2B

【0018】
次に、図2について説明する。使用者の指22のアクチュエーター8への作用によって、各ノズルからの泡が使用者の手20に噴霧される。これら泡が混合し、エタノールおよびClOを含有する殺菌泡組成物18になる。使用者が両手をこすり合わせると、泡が完全に混合し、両手が殺菌泡組成物18で覆われる。
【0019】
場合に応じて、第1部分および/または第2部分に抗生物質、抗菌剤または抗微生物剤を配合することができる。当業者ならば、これら製剤については熟知しているはずである。カチオン系、両性系やフェノール系が例示できる。
【0020】
泡混合物18で覆い、両手をこすり合わせることによって使用者の手を完全に消毒したならば、使用者は混合物18を洗い落とせばよいが、アルコール分により泡混合物が揮発性になっているため、蒸発させることによって両手を単に乾燥するだけでもよい。
【0021】
表1の実施態様では、80%のアルコールを含有し、そして併用された場合には二酸化塩素を含有する泡が生成する。この泡は、ハンドサニタイザーとして使用した場合にすぐれた殺菌作用を示し、従来のアルコールハンドサニタイザーや二酸化塩素ハンドサニタイザー単独よりも有効性が高いことが確認された。
【0022】
表2Aおよび表2Bの実施態様は、第1部分のアルコール分が30%で、第2部分のアルコール分が70%である。泡として吐き出され、等重量部で混合されると、合成泡のアルコール分は50%になり、有効な殺菌作用を手に与える。
【0023】
それ自体公知なように、場合に応じて、湿潤剤、加湿剤や香料を第1部分または(好ましくは)第2部分に配合することができる。
【0024】
また、ディスペンサーの包装および保護を改善するために、腐食抑制剤を第1部分および/または第2部分に配合してもよい。
【0025】
安定性がよく、かつすぐに破裂する特性をもつアルコール系泡を実現するためには、増粘剤または被膜形成剤(表1および表2の実施例におけるヒドロキシエチルセルロース)を配合することが望ましい。被膜形成剤の最適な範囲は0.01〜1%、好ましくは0.1〜0.25%である。被膜形成剤の濃度を約0.25%に制限すると、洗い落としを行わないでハンドサニタイザーを使用する場合に発生する望ましくない残渣を減らすのに役立つ。
【0026】
表3A
第1部分


表3B
第2部分

*:以下の表面活性剤からなる複合表面活性剤
ジメチコンコポリオール
ポリジメチルシロキサンジクワット
アルキルアミノカルボキシレート+アルキルベタイン
**:被膜形成剤(以下のリストを参照)
***:エタノール、イソプロパノール、n-プロパノール

表4A
第1部分

表4B
第2部分

【0027】
好適な被膜形成剤を例示すれば、アルギン酸塩、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カラギーナン、グアーゴム、寒天ゴム、アラビアゴム、ghattiゴム、カラヤゴム、トラガカントゴム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、イナゴマメゴム、ペクチン、ポリアクリルアミド、ポリ(アクリル酸)およびその同族体、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(酸化エチレン)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)澱粉およびその変性物、タマリンドゴムやキサンタンゴムである。
【0028】
なお、アルコール系媒体に可溶である限り、それ自体当業者にとって公知な他の被膜形成剤も利用可能である。さらに、上記以外の表面活性剤、特に泡の安定化に役立つ表面活性剤も利用可能である。限定するわけではないが、例示すると、カルボン酸塩、スルホン酸塩(例えば、線状または非線状アルキルスルホン酸塩、メチルエステル‐α‐スルホン酸塩、α‐オレフィンスルホン酸塩)、硫酸エステル塩、アルキル硫酸塩、アルキルエトキシレート硫酸塩、硫酸アルキルトリエタノールアミン、ジエタノールアミド、アルキルエトキシレート、アルキルフェニルエトキシレート、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩化物、アルキルピリジニウム塩化物、アルキルカルボキシベタイン、リン酸エステル塩、ポリリン酸エステル塩、フッ素化アニオン体、長鎖アミンおよびこれらの塩、アクリル化ジアミンおよびアクリル化ポリミン並びにこれらの塩、四級アンモニウム塩、ポリオキシエチレン化(POE)長鎖アミン、アミン酸化物、POEアルキルフェノール、アルキルフェノール“エトキシレート”、POE直鎖アルコール、アルコール“エトキシレート”、 POEポリオキシプロピレングリコール、POEメルカプタン、長鎖カルボン酸エステル、アルカノールアミン“縮合体”、アルカノールアミド、t-アセチレングリコールおよびこれらの“エトキシレート”、POEシリコーン、N-アルキルピロリドン、アルキルポリグリコシド、pH感受性両性イオン体、pH不感受性両性イオン体、α‐スルホ脂肪酸メチルエステル(SME)、アシル化アミノ酸、N-アシルL-グルタメート、N-アシルグリシネート、N-アシルDL-アラナニネート、他のアシル化アミノ酸、ノポールアルコキシレートがある。
【0029】
本発明の別な実施態様では、アルコール成分の一部として、あるいは全部としてMMBを使用すると、エタノールよりも乾燥速度が速く、かつ皮膚の感触がよくなる作用効果があることが確認された。また、MMBにはエタノールと比較した場合に、実質的に引火性がない作用効果もある。純粋なMMBの発火点は、Tag Closed Cupで測定した場合68℃であり、MMBと10%またはそれ以上の水との混合物には発火点は認められない。MMBは安全性がきわめて高く、RフレーズおよびSフレーズに定義された危険もなく、また職業暴露制限もない。
【0030】
以下の表5に、MMB/水混合物およびエタノール/水混合物の乾燥速度について比較した結果をまとめて示す。いずれの場合も乾燥速度について0.1mlサンプルを目視評価した。蒸発速度については、サンプルを標準濾紙に載せ、蒸発が終了する時間を測定することによって測定した。ジエチルエーテルの蒸発時間を1とし、各サンプルの数字はジエチルエーテルに対する数字である。
【0031】
表5

【0032】
以上から、比較エタノール水溶液および比較MMB水溶液の蒸発速度が同じであることが確認され、また定性試験からは、エタノールよりもMMBの方が、皮膚感触がよいことが確認された。
【符号の説明】
【0033】
2:ハンドサニタイザー
4:第1ディスペンサー室
6:第2ディスペンサー室
8:アクチュエーター
10、12:ノズルオリフィス
14、16:ピストン部材
18:殺菌泡組成物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)第1発泡促進剤が溶解し、かつ第1泡ディスペンサーに収められたアルコール系媒体中の亜塩素酸塩からなり、第1泡として吐き出される第1部分、および
(b)第2発泡促進剤が溶解し、かつ第2泡ディスペンサーに収められたアルコール系媒体中の酸からなり、第2泡として吐き出される第2部分からなり、
前記亜塩素酸塩および前記酸が反応して、前記第1泡と前記第2泡とが混合されたときに二酸化塩素を発生し、そして
前記第1部分および前記第2部分の等量混合物が少なくとも50重量%のアルコールを含有することを特徴とするハンドサニタイザー。
【請求項2】
前記第1部分および前記第2部分を等量混合したときに50〜80重量%の濃度でアルコールが存在する請求項1に記載のハンドサニタイザー。
【請求項3】
前記第1部分および前記第2部分それぞれがさらに、0.01〜1重量%の増粘剤または被膜形成剤を含む請求項1または2に記載のハンドサニタイザー。
【請求項4】
前記増粘剤または被膜形成剤が0.1〜0.25重量%の濃度で存在する請求項3に記載のハンドサニタイザー。
【請求項5】
前記アルコールがエタノール、イソプロパノール、n-プロパノール、またはこれらアルコールの混合物からなる請求項1〜4のいずれか1項に記載のハンドサニタイザー。
【請求項6】
前記アルコールの少なくとも一部が3-メトキシ-3-メチルブタン-1-オール(MMB)からなる請求項1〜4のいずれか1項に記載のハンドサニタイザー。
【請求項7】
前記アルコールの実質的にすべてがMMBである請求項6に記載のハンドサニタイザー。
【請求項8】
前記発泡促進剤がジメチコンコポリオール、ポリジメチルシロキサンジクワット、アルキルアミノカルボキシレートおよびアルキルベタインまたはこれら成分の任意の成分または全部の混合物である請求項1〜7のいずれか1項に記載のハンドサニタイザー。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項のハンドサニタイザーを手に取り、第1泡および第2泡を使用者の手に吐き出し、使用者が両手をこすり合わせて、これら泡を混合し、混合された泡で使用者の両手を覆うことからなることを特徴とする手の消毒方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−527441(P2012−527441A)
【公表日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−511345(P2012−511345)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【国際出願番号】PCT/GB2010/050525
【国際公開番号】WO2010/133855
【国際公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(511282531)トリステル ピーエルシー (1)
【氏名又は名称原語表記】TRISTEL PLC
【住所又は居所原語表記】Unit 4c,Lynx Business Park,Fordham Road,Snailwell,Newmarket CB8 7NY Great Britain
【Fターム(参考)】