説明

ハンドルバー及びその製造方法

【課題】材料の消費を少なくしたハンドルバーを得る。また、成形精度が高く、かつ強度が安定するハンドルバーの製造方法を得る。
【解決手段】金属製の管体により形成され、長手方向中央部(1a)を両側部(1b,1c)よりも大径とし、両側部(1b,1c)を長手方向中央部(1a)に対して対称状に曲げ、かつ全長にわたって略均等の肉厚にしてなるハンドルバー。また、金属製の管素材(1−1)の両側部を対称状に曲げて一次製品(1−2)を形成し、該一次製品(1−2)を分割型により包囲して軸方向に圧縮しつつ、一次製品(1−2)内に液体を圧入してその長手方向中央部(1a)を大径に膨出させることにより、周壁の肉厚が全長に亘って略均等となるハンドルバーを得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二輪車、特に自動二輪車に使用されるハンドルバー及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の技術として、金属製管体により、長手方向中央部を両側部よりも大径に形成するとともに、両側部を長手方向中央部に対して対称状に曲げ、側壁の厚さを長手方向中央部で最小に、両側部で最大にしてなるハンドルバー、あるいは、前記側壁の厚さを長手方向中央部で最大に、両側部で最小にしてなるハンドルバーがあった。
また、前記ハンドルバーは、まっすぐな金属製の管体の両側部をスエージング加工により小径に絞り、該小径となった外端部をベンダー機を使用して長手方向中央部に対し、対称状に曲げて形成されるものであった。
【0003】
前記従来のハンドルバーは、側壁の厚さが長手方向に亘って不均一となっているため、厚肉部分の強度が過剰になることがあり、材料の消費が増大するとともに、両側部双方の強度及び質量を均等にすることが困難になるものであった。また、スエージング加工した後に両側部を曲げることは、スプリングバックの発生、あるいはベンダー機の作動誤差等により、曲げ精度が狂ったり、外端部双方の曲げ角度が不均一になったりするものであった。さらに、曲げ部が真円になり難く、この部の強度が不安定になるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5117708号公報
【特許文献2】米国特許第5257552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、材料の消費を少なくしたハンドルバーを得ること。また、成形精度が高く、かつ強度が安定するハンドルバーの製造方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記目的を達成するために以下の如く構成したものである。即ち、請求項1に係る発明は、金属製の管体により形成され、長手方向中央部が両側部よりも大径に形成されるとともに、前記両側部が長手方向中央部に対して対称状に曲げられ、かつ前記長手方向中央部から両側部に向かって略均等の肉厚に形成したものである。
請求項2に係る発明は、金属製の管素材を設け、該管素材の両側部を対称状に曲げて一次製品を形成し、相対する分割面に前記一次製品が嵌合する成型凹部を形成するとともに、該成型凹部の長手方向中央部を前記一次製品よりも大径にしてなる分割型を設け、該分割型により前記一次製品の外周を包囲した後、前記一次製品を軸方向に圧縮しつつ、該一次製品内に液体を圧入してその周壁を前記成型凹部の面に沿って塑性変形させるとともに、周壁の肉厚を全長に亘って略均等にしたものである。
【発明の効果】
【0007】
本願発明は、肉厚を略一定にし、管径を変化させることによって必要とする強度を確保することができるので、過剰な肉厚部が存在しなくなるとともに、両側部双方の強度及び質量を均等にすることができる。また、金属製管素材の両側部を曲げて一次製品を形成し、該一次製品を分割型により包囲し、この状態で前記一次製品を軸方向に圧縮しながら該一次製品内に液体を圧入してその周壁を分割型の成型凹部の面に沿って塑性変形させるようにしたので、長手方向中央部は外端部の材料が流動しながら膨出し、周壁の肉厚が全長に亘って略均等になるとともに、外端部の曲げ精度、及び曲がり部の真円度を高くすることができ、強度の安定した高精度のハンドルバーを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1実施例によるハンドルバーの正面図である。
【図2】図1のII-II線による拡大断面図である。
【図3】図1のIII-III線による拡大断面図である。
【図4】図1のIV-IV線による拡大断面図である。
【図5】第2実施例によるハンドルバーの平面図である。
【図6】図5のVI-VI線による拡大断面図である。
【図7】図5のVII-VII線による拡大断面図である。
【図8】管素材の側面図である。
【図9】図8のIX-IX線による拡大断面図である。
【図10】ベンダー機による管素材の曲げ状態を示す部分正面図である。
【図11】一次製品の側面図である。
【図12】図11のXII-XII線による拡大断面図である。
【図13】一次製品を分割型により包囲した状態の断面図である。
【図14】成型状態を示す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1〜図4において、1は本発明の第1実施例を示すハンドルバーであり、本例ではアルミ合金製の管材により形成されている。該ハンドルバー1は、全長に亘って略等しい肉厚(t1)になっているとともに、長手方向(左右方向)中央部1aが大径(d1)の断面円形に、両側部をなす左右の中間端部1b及び左右の外端部1cが小径(d2,d3)の断面円形に形成されている。
【0010】
前記左右の中間端部1bは左右の外端部1cに向かって小径となるテーパー管状に形成されるとともに、長手方向中央部1aに対し、上方に向けて対称に曲げられ、左右の外端部1cは小径の直管に形成されるとともに、長手方向中央部1aと略平行になる如く中間端部1bに対し、水平方向に向けて対称に曲げられている。
【0011】
図5〜図7において、2は本発明の第2実施例を示すハンドルバーであり、前述と同様のアルミ合金製の管材により形成されている。該ハンドルバー2は、全長に亘って略等しい肉厚(t1)になっており、長手方向中央部2aが前述と同様の大径(d1)の断面円形に形成されるとともに、両端部が小径に絞られて両側部をなす左右の外端部2bに滑らかに接続されている。前記外端部2bは前述した外端部1cと同様に小径(d3)に形成されるとともに、長手方向中央部2aに対し、後方に向けて対称に曲げられている。
【0012】
前記ハンドルバー1,2のうち、第1実施例のハンドルバー1を代表してこれの製造方法について説明する。まず、図8、図9に示すように、7000系アルミ合金材(例えば7N01)により管素材1−1を形成する。該管素材1−1は、全長にわたって、製品であるハンドルバー1の肉厚(t1)に略対応する肉厚(t)、及びハンドルバー1の外端部1cの径(d3)に略対応する径(d)の直管とし、その長さはハンドルバー1の成形に必要とする長さとなっている。
【0013】
次いで、前記管素材1−1の左右両側部1−1b,1−1cをベンダー機5により左右対称に曲げる。即ち、図10に示すように、管素材1−1の曲げ支点部の内側にベンダーロール5aを、該曲げ支点部の外側に加圧スライダ5bを配置し、管素材1−1の基部側を保持した状態で加圧スライダ5bをベンダーロール5aを中心として所定量移動させることにより、中間端部1−1bを長手方向中央部1−1aに対して上方に曲げ、また、外端部1−1cを中間端部1−1bに対して水平方向に曲げる。これにより、図11、図12に示すように、左右の中間端部1−2bが長手方向中央部1−2aに対して共に等角度で上方に傾斜し、左右の外端部1−2cが共に等角度で水平方向に延びるとともに、全長に亘って管素材1−1と略等しい径(d)、及び管素材1−1と略等しい肉厚(t)となる一次製品1−2を得る。
【0014】
次いで、図13に示すように、前記一次製品1−2を上下に二分割された分割型10により包囲する。該分割型10は、相対する上下の型11,12の合い面部に製品となるハンドルバー1の外形に対応する円弧溝状の成型凹部13が形成されている。該成型凹部13は、長手方向中央部13aがハンドルバー1(製品)の長手方向中央部1aの径(d1)に略対応する径、例えば約29mmに形成され、中間端部13bがハンドルバー1(製品)の中間端部1bに略対応するテーパー状に形成され、外端部13cがハンドルバー1(製品)の外端部1cと略等しくなる径、例えば約22mmに形成されている。14は後述の加圧ノズル15が嵌合するガイドであり、前記外端部13cの口部を段状に大径にしてなる。
【0015】
前記分割型10の下部の型12はベースに固定された固定型とし、上部の型11は油圧シリンダによって固定型12に対して上下に接離移動される可動型とする。そして、前記固定型12の成型凹部13に一次製品1−2を嵌合させた後、可動型11を固定型12に向けて移動(図13の仮想線状態から実線位置)させる。これにより、成型凹部13の外端部13cで前記一次製品1−2の外端部1−2cを接近して包囲し、該成型凹部13の長手方向中央部13a及び中間端部13bで前記一次製品1−2の長手方向中央部1−2a及び中間端部1−2aを所定の間隙を保持して包囲する。
【0016】
次いで、前記成型凹部13の外端部13cのガイド14に加圧ノズル15を嵌合させ、該加圧ノズル15により、一次製品1−2を軸方向に圧縮しつつ、該加圧ノズル15の軸心部から前記一次製品1−2内に液体(水又は油)を高圧で注入し、該一次製品1−2を図14に示すように、前記成型凹部13の面に沿って塑性変形(膨出)させる。
【0017】
これにより、図1に示すように、長手方向中央部1aが大径に形成され、中間端部1bが左右の外端部1cに向かって小径となるテーパー管状に形成されるとともに、上方に向けて対称に曲げられ、左右の外端部1cが小径に形成されるとともに、水平方向に向けて対称に曲げられたハンドルバー1(製品)を得ることができる。該ハンドルバー1は、一次製品1−2を軸方向に圧縮しつつ、内部に液体を注入して成型凹部13の面に沿って膨出させるようにしたので、長手方向中央部1aと中間端部1b、中間端部1bと外端部1cとの曲がり部が断面真円になるとともに、長手方向中央部1a及び中間端部1bは外端部1cの材料が流動しながら膨出し、該膨出部の肉厚が低下しなくなる。この場合、前記軸方向の圧縮量は、一次製品1−2の長さの15%〜20%にすることが好ましい。なお、本発明によるハンドルバーは鉄製あるいはマグネシウム合金製であってもよい。
【符号の説明】
【0018】
1(2) ハンドルバー(製品)
1a(2a) 長手方向中央部
1b 中間端部(側部)
1c(2b) 外端部 (側部)
1−1 管素材
1−1a 長手方向中央部
1−1b 中間端部
1−1c 外端部(端部)
1−2 一次製品
1−2a 長手方向中央部
1−2b 中間端部
1−2c 外端部
5 ベンダー機
5a ベンダーロール
5b スライダ
10 分割型
11,12 上下の型
13 成型凹部
13a 長手方向中央部
13b 中間端部
13c 外端部
14 ガイド
15 加圧ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の管体により形成され、長手方向中央部(1a)が両側部(1b,1c)よりも大径に形成されるとともに、前記両側部(1b,1c)が長手方向中央部(1a)に対して対称状に曲げられ、かつ前記長手方向中央部(1a)から両側部(1b,1c)に向かって略均等の肉厚に形成されてなることを特徴とするハンドルバー。
【請求項2】
金属製の管素材(1−1)を設け、該管素材(1−1)の両側部を対称状に曲げて一次製品(1−2)を形成し、相対する分割面に前記一次製品(1−2)が嵌合する成型凹部(13)を形成するとともに、該成型凹部(13)の長手方向中央部(13a)を前記一次製品(1−2)よりも大径にしてなる分割型(10)を設け、該分割型(10)により前記一次製品(1−2)の外周を包囲した後、前記一次製品(1−2)を軸方向に圧縮しつつ、該一次製品(1−2)内に液体を圧入してその周壁を前記成型凹部(13)の面に沿って塑性変形させるとともに、周壁の肉厚を全長に亘って略均等にしてなることを特徴とするハンドルバーの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−167924(P2010−167924A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−12804(P2009−12804)
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【出願人】(592124344)株式会社協栄製作所 (17)
【Fターム(参考)】