説明

ハンドレールガイドの摩耗検出方法

【課題】着色塗料を封入できる空間を備え、且つ交換までの時間が段階的に判断できる摩耗検出装置を設けた、実用できるハンドレールガイドの摩耗検出方法を提供することにある。
【解決手段】無端状に連結されて走行するステップの両側方に立設され、前記ステップと同期して走行する無端状のハンドレール1と、このハンドレール1の走行を案内する低摩擦性の摺動材で形成されたガイド4が配置されたハンドレール案内装置において、前記ガイド4が摩耗限界に達する前に、前記ハンドレール1裏面に着色してガイド4の交換時期を段階的に知らせる数色の塗料と、この塗料を封入する各々の空間を備えた摩耗検出装置7を、前記ガイド4を支持するガイド支え3取付部に設けた構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エスカレーターあるいは動く歩道等の乗客コンベアに係わる、ハンドレールガイドの摩耗検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、乗客コンベアのハンドレール案内装置の構成は、無端状に連結されて走行するステップの両側方に立設された欄干全周に、ステップの動きと同期して走行する無端状のハンドレールと、このハンドレールの走行を案内するガイドが敷設され、特にハンドレールの接触面積が大きく、走行抵抗が大きい欄干ターミナル部には、低摩擦性の摺動材としてナイロン樹脂等で形成されたガイドが配置されている。
【0003】
このハンドレールガイドは、ハンドレールの走行に応じて経年摩耗するため、その摩耗限界を確認する方法としてガイド内に着色塗料を設け、ガイドが摩耗してくるとガイド内の塗料が噴出し、ハンドレール裏面に着色することで摩耗限界を確認し、ガイドの交換時期を判断するというものがあった(特許文献1参照。)
【特許文献1】特開2001−316068公報(第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし特許文献1に示す前記従来技術では、ハンドレールガイド内に着色塗料を入れる空間が設けられているが、一般的にハンドレールガイドは欄干ターミナル部の全周に一体物で配置される長尺物で製法としてはコスト面を考慮した押出し成形が使用されており、この押出し成形において、塗料が液状の場合はガイド内空間への密閉が必要で、この密閉を保つ空間の加工が困難であること、また塗料が固形状の場合は塗料をガイド内に封じ込める作業が困難であるという問題があり、ガイド内に着色塗料を設けるというのは事実上困難で、実用的でなかった。
【0005】
また、従来技術ではハンドレール裏面への着色が単発的に行われるため、発見が遅れたり、見落としたりすると、ハンドレールガイドの摩耗は進み、摩耗限界に近づいてしまうという問題があった。
【0006】
本発明は上記不具合に鑑みてなされたもので、着色塗料を封入できる空間を備え、且つ交換までの時間が段階的に判断できる摩耗検出装置を設けた、実用的なハンドレールガイドの摩耗検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は、無端状に連結されて走行するステップの両側方に立設され、前記ステップと同期して走行する無端状のハンドレールと、このハンドレールの走行を案内する低摩擦性の摺動材で形成されたガイドが配置されたハンドレール案内装置において、前記ガイドが摩耗限界に達する前に、前記ハンドレール裏面に着色してガイドの交換時期を段階的に知らせる数色の塗料と、この塗料を封入する各々の空間を備えた摩耗検出装置を、前記ガイドを支持するガイド支え取付部に設けたことにより達成される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、着色塗料を封入できる空間を備え、且つ交換までの時間が段階的に判断できる摩耗検出装置を設けた、ハンドレールガイドの摩耗検出方法の実用化ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の一実施の形態を図1〜5に基づいて説明する。
【0010】
図1は本発明の一実施形態となるハンドレールガイドの摩耗検出方法を示す全体概要図、図2は図1の断面A−A視図、図3は図1の断面B−B視図、図4は図1のハンドレール摩耗検出装置を示す詳細図、図5は図4のA部詳細図である。
【0011】
各図においてハンドレール1は、ハンドレールフレーム2の外周面に敷設されたハンドレールガイド支え3の両側面に嵌合されたハンドレールガイド4によって案内される。5、6はハンドレールフレーム2にハンドレールガイド支え3を固定するビスとナットである。7は摩耗検出装置で、この装置の鍔7aがビス5、ナット6にてハンドレールガイド支え3と共に固定される。摩耗検出装置7には、複数個の塗料封入部7bおよび塗料噴出口7cが形成され、塗料封入部7bはカバー8にて密閉された空間を保つ。9はカバー8を固定するビスである。10はハンドレール出入口部分でデッキ11とスカートガード12で構成される。
【0012】
摩耗検出装置7の材料はハンドレールガイド4と同様に低摩擦性のナイロン樹脂等を用いた射出成形品で、ハンドレールガイド4の摩耗が最も多い欄干R部のみに、分割して設置される。
【0013】
ハンドレール1の走行によりハンドレールガイド4および摩耗検出装置7の塗料噴出口7cが経年的に摩耗し、ハンドレールガイド4が摩耗限界に達する前に塗料噴出口7cが摺り破れ、塗料封入部7bに封入された塗料が噴出し、ハンドレール1の裏面に着色することによってハンドレールガイド4の摩耗限界を検出する。確認方法としては日常の保守点検時にスカートガード12を取り外すことにより、ハンドレール1に着色がないか目視にて点検し、着色がある場合にはハンドレールガイド4の交換を行なう。
【0014】
ここで摩耗検出装置7に複数個ある塗料噴出口7cの厚さおよび塗料封入口7bに封入する塗料の色を変えることで、交換時期まで段階的に色分けして着色していけるため、交換サイクルを長期的に計画することができる。これは製法を射出成形とし、摩耗検出装置7をハンドレールガイド4と別部材としたことにより達成できる。
【0015】
また、前記とはまた異なる別色の塗料を摩耗検出装置7に内蔵することで、ハンドレールガイド4を交換した後も、異なる色がハンドレール1に着色することで、再度同様の方法で摩耗限界を確認することができる。
【0016】
更に本検出方法では従来のハンドレールガイド4の構造を変更することなく、摩耗検出装置7を付加できるため、摩耗限界に達していないハンドレールガイド4は流用することができるという利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態となるハンドレールガイドの摩耗検出方法を示す全体概要図である。
【図2】図1の断面A−A視図である。
【図3】図1の断面B−B視図である。
【図4】図1のハンドレール摩耗検出装置を示す詳細図である。
【図5】図4のA部詳細図である。
【符号の説明】
【0018】
1 ハンドレール
2 ハンドレールフレーム
3 ハンドレールガイド支え
4 ハンドレールガイド
5 ビス
6 ナット
7 摩耗検出装置
7a 鍔
7b 塗料封入部
7c 塗料噴出口
8 カバー
9 ビス
10 ハンドレール出入り口部分
11 デッキ
12 スカートガード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端状に連結されて走行するステップの両側方に立設され、前記ステップと同期して走行する無端状のハンドレールと、このハンドレールの走行を案内する低摩擦性の摺動材で形成されたガイドが配置されたハンドレール案内装置において、前記ガイドが摩耗限界に達する前に、前記ハンドレール裏面に着色してガイドの交換時期を知らせる塗料と、この塗料を封入する空間を備えた摩耗検出装置を、前記ガイドを支持するガイド支え取付部に設けたことを特徴とするハンドレールガイドの摩耗検出方法。
【請求項2】
前記摩耗検出装置を射出成形法にて製作し、摩耗が最も多い欄干R部のみに分割設置したことを特徴とする請求項1記載のハンドレールガイドの摩耗検出方法。
【請求項3】
前記摩耗検出装置をハンドレールガイドと別部材にしたことを特徴とする請求項1記載のハンドレールガイドの摩耗検出方法。
【請求項4】
前記摩耗検出装置に塗料封入部を設け、カバーで密閉できるようにしたことを特徴とする請求項1記載のハンドレールガイドの摩耗検出方法。
【請求項5】
前記塗料封入部を複数個設け、塗料噴出口の厚さおよび封入する塗料の色を変えたことを特徴とする請求項1記載のハンドレールガイドの摩耗検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−8391(P2006−8391A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−191877(P2004−191877)
【出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【出願人】(000232955)株式会社日立ビルシステム (895)
【Fターム(参考)】