説明

ハンドローラおよびそれを用いた目地模様の形成方法

【課題】基材上に形成された塗膜に対して目地模様を容易に形成することができ、かつ目地模様の形成によって生ずる廃棄物を低減できるハンドローラおよびそれを用いた目地模様の形成方法を目的とする。
【解決手段】(1)ロール表面に、その円周に沿った第1の凸条が設けられ、該第1の凸条が該ロール表面の片側の縁部以外に設けられていることを特徴とするハンドローラ。(2)前記ロール表面に、その幅方向に沿った第2の凸条が設けられ、該第2の凸条の少なくとも一端が前記第1の凸条につながるように設けられている(1)に記載のハンドローラ。(3)基材上に塗膜を塗布し、該塗膜上に(1)または(2)に記載のハンドローラを押圧しながら転動させる目地模様の形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンドローラおよびそれを用いた目地模様の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物の壁面やパネルなどの基材に対し、塗装によってレンガやタイルなどに似せた種々の目地模様を形成する方法が提案されている。例えば、特許文献1においては、樹脂発泡体などからなる目地材を貼り付けた基材上に、合成樹脂などの結合材を水に分散させたエマルション塗料を塗布して塗膜を形成した後、基材から目地材を除去する方法が提案されている。また、特許文献2においては、型紙を貼り付けた基材上に、エマルション塗料を塗布して塗膜を形成した後、型紙を除去する方法が提案されている。これらの提案によると、レンガ調やタイル調の目地模様を形成することができる。
【特許文献1】特開平10−266517号公報
【特許文献2】特許第2719651号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1では、塗装後に除去された目地材が廃棄物となる。また、特許文献2では、型紙の打ち抜き部分が大量に生じ、このうち抜き部分は再利用が難しいため、廃棄せざるを得ない。また、目地材または型紙の貼り付け工程および剥離工程には労力が掛かり、作業が煩雑になりやすかった。
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであって、基材に対して目地模様を容易に形成することができ、かつ目地模様の形成によって生ずる廃棄物を低減できるハンドローラおよびそれを用いた目地模様の形成方法を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記の課題を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
(1)ロール表面に、その円周に沿った第1の凸条が設けられ、該第1の凸条が該ロール表面の片側の縁部以外に設けられていることを特徴とするハンドローラ。
(2)前記ロール表面に、その幅方向に沿った第2の凸条が設けられ、該第2の凸条の少なくとも一端が前記第1の凸条につながるように設けられている(1)に記載のハンドローラ。
(3)基材上に塗膜を塗布し、該塗膜上に(1)または(2)に記載のハンドローラを押圧しながら転動させる目地模様の形成方法。
【発明の効果】
【0005】
本発明のハンドローラを用いると、基材に対して目地模様を容易に形成することができ、かつ目地模様の形成によって生ずる廃棄物を低減できる目地模様の形成方法を提供できる。
本発明のハンドローラを用いた目地模様の形成方法によると、基材に対して目地模様を容易に形成することができ、かつ目地模様の形成によって生ずる廃棄物を低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図1に、本発明のハンドローラの一実施形態例を示す。このハンドローラ10は、ロール4と、ロール4を転動可能に支持する支持部6と、支持部6に取り付けられた把手7とを備え、ロール表面5に、その円周に沿った第1の凸条8が設けられ、第1の凸条8がロール表面5の片側の縁部9以外に設けられていることを特徴とする。ここで、ロール4の中心軸であるロール軸2が延びている方向をロールの幅方向と定義する。
【0007】
ロール4の幅は、目地模様の作業が行える大きさであれば特に限定されないが、好ましくは5cm〜50cm、より好ましくは15〜35cmである。
ロール4の直径は、目地模様の作業が行える大きさであれば特に限定されないが、好ましくは2cm〜20cm、より好ましくは3cm〜10cmである。
【0008】
ロール表面5の材質としては、ポリウレタン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ゴムなどの合成樹脂、金属、木材などが挙げられる。
【0009】
第1の凸条8は、ロール円周方向に途切れなく設けられていてもよく、ロール円周方向に断続的に設けられていてもよい。第1の凸条8がロール円周方向に途切れなく設けられたハンドローラ10は、ストライプ状の目地模様を形成するときに用いられる。また、第1の凸条8がロール円周方向に断続的に設けられたハンドローラ10は、破線状の目地模様を形成するときに用いられる。
第1の凸条8の幅は特に限定されないが、好ましくは3mm〜30mmである。第1の凸条8の高さ(ロール表面5からの盛り上がりの高さ)は特に限定されないが、好ましくは1mm〜15mmである。
第1の凸条8をロール4の幅方向に切断したときの断面形状は、所定の目地模様によって適宜決定されるが、例えば、長方形、台形、三角形、半円形などが挙げられる。目地の抜けのよさを鑑みると、好ましくは、台形、三角形、半円形である。
第1の凸条8は、このハンドローラ10において、4つ形成されているが、第1の凸条8は1つ以上3つ以下であってもよく、5つ以上であってもよい。
第1の凸条8同士は、一定間隔をおいて形成されているが、その間隔は必要とする目地模様のパターンによって適宜決定されるが、好ましくは1cm〜15cmである。
第1の凸条8の材質としては、ポリウレタン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ゴムなどの合成樹脂、金属、木材などが挙げられる。製造時におけるコストや加工性、使用時における塗膜の離脱性を鑑みると、ポリウレタン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ゴムなどの合成樹脂が好ましい。
第1の凸条8は、ロール表面5と別の材質で構成されていてもよいが、製造コストの観点から、同じ材質で一体成形されていているのが好ましい。
【0010】
縁部9とは、ロール表面5の片側の末端からおおよそ1cm〜15cm幅のロール表面を表す。縁部9には、第1の凸条8が設けられていないため、基材上に塗布された塗膜に本発明のハンドローラ10を転動させても、縁部9と接する塗膜には、目地模様は形成されない。したがって、すでに転動済みの塗膜の境界部分に対して、次の転動による目地模様の境界部分が多少ずれても、優れた仕上がりの目地模様を得ることができる。
【0011】
ロール表面5には、必要に応じて、その幅方向に沿った第2の凸条20が設けられ、第2の凸条20の少なくとも一端が第1の凸条8につながるように設けられていてもよい。
第2の凸条20が設けられたハンドローラ10を用いれば、基材表面にレンガ調の目地模様を形成することができる。
第2の凸条20の幅は特に限定されないが、好ましくは3mm〜30mmである。第2の凸条20の高さ(ロール表面5からの盛り上がりの高さ)は特に限定されないが、好ましくは1mm〜15mmである。第2の凸条20の長さは特に限定されないが、好ましくは1cm〜15cmである。
第2の凸条20をロール4の幅方向に切断したときの断面形状は、所定の目地模様によって適宜決定されるが、例えば、長方形、台形、三角形、半円形などが挙げられる。目地の抜けのよさを鑑みると、好ましくは、台形、三角形、半円形である。
第2の凸条20は、希望するレンガ調の目地模様が得られるように、その数や第2の凸条20同士の間隔などが適宜選定される。
第2の凸条20の材質としては、ポリウレタン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ゴムなどの合成樹脂、金属、木材などが挙げられ、第1の凸条8および/またはロール表面5と同じ材質で一体成形されていてもよい。
【0012】
第1の凸条8のみを有したハンドローラは、ストライプ状や破線状の目地模様の形成に用いられる。第1の凸条8と第2の凸条20とを有したハンドローラは、レンガ調(タイル調ともいう)の目地模様の形成に用いられる。
第2の凸条20の数は特に限定されず、所定のレンガ調の図柄、ロール4の直径などにより、適宜決定される。
【0013】
支持部6は、ロール軸2の両端と連結して、ロール4を転動自在となるように支持している。支持部6の形状は、ロール4を転動自在なように支持できれば特に限定されない。支持部6の材質は特に限定されず、金属、樹脂、木材、あるいはそれらの組み合わせを例示できる。
把手7は、手などで把持できる形状を有していれば特に限定されない。把手7の材質としては、例えば、金属、樹脂、木材、あるいはそれらの組み合わせを例示できる。
【0014】
次に、本発明のハンドローラ10を用いた目地模様の形成方法について、図2、図3を参照して説明する。
目地模様は、基材200上に塗布された塗膜100に対し、ハンドローラ10を押圧しながら転動することで形成される。
基材200としては、建築物の内外壁、天井、床などを構成するコンクリート、モルタル、石膏ボード、セメント珪酸カルシウム板、人口大理石板、ALC板、合成樹脂板、FRP板、金属板、パルプ成形板、木質合板、木質集成材、木質無垢材などが挙げられる。
【0015】
塗膜100に用いられるエマルション塗料は特に限定されず、公知のものを用いることができる。例えば、アクリル樹脂、スチレン・アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル・シリコン樹脂などの結合材を水に分散してエマルションとした樹脂溶液を、エマルション塗料として用いることができる。
このエマルション塗料には、必要に応じて、顔料、着色粒子、骨剤、分散剤、消泡剤、発泡剤、増粘剤、レベリング剤、増膜助剤、防カビ剤などを混合してもよい。
顔料としては、塗料用に通常用いられているものを用いることができ、例えば、二酸化チタン、黒色酸化鉄、ベンガラ、クロムグリーン、カーボンブラック、銅フタロシアニン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、クレーなどが挙げられる。
着色顔料としては、エマルション塗料を親水コロイド形成物質のゲル化膜でカプセル化した液状着色粒子が挙げられる。
骨剤は、凹凸のある質感を有した塗膜100を形成するときに用いられる。骨剤としては、例えば、エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂、スチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ウレタン樹脂などを粒子状に成形した発泡樹脂骨剤が挙げられる。骨剤の粒子径やエマルション塗料中の含有量は、所定の仕上がり外観が得られるように適宜選択される。該粒子径は1mm〜5mm、エマルション塗料中における骨剤の含有量は、0.5質量%〜10質量%が好ましい。
【0016】
このようなエマルション塗料を基材200に塗布し、塗膜100を形成する。エマルション塗料は、通常用いられている刷毛塗り、スプレー塗装、ローラ塗装、ロールコータなどで塗布することができる。
基材200上に塗布される塗膜100の厚みは、レンガ調など所定の目地模様を形成できれば特に限定されないが、0.1mm〜20mmの厚みであることが好ましい。
【0017】
塗膜100の乾燥硬化が完了しないうちに、本発明のハンドローラ10を押圧しながら転動させて、ロール表面5の模様を塗膜100に転写し、目地模様を形成する。塗膜100に対し、ハンドローラ10を転動させるタイミングは、エマルション塗料の性質、気温、湿度などによって適宜変更されるが、通常は塗膜を形成してから0〜24時間に行うのが好ましい。
前記時間を超えると、塗膜100の硬化が進み過ぎて、ハンドローラ10の第1の凸条8および第2の凸条20が塗膜100に食い込むことができず、所定の深さを有した目地模様が得られなくなる恐れがある。
塗料を塗装してすぐ押圧する場合は、ロール4を溶剤やエマルション凝集剤水溶液や水に浸してから押圧するのが好ましい。このような処理を行うことによって、塗料の表面はロール4に付着しなくなる。
前記溶剤としては、特に限定されないが、灯油、ミネラルスプリットなどの石油系溶剤が挙げられる。エマルション凝集剤水溶液としては特に限定されないが、アクリルアミド系の高分子凝集剤や、ポリ塩化アルミニウムなどの無機塩の0.5〜5%水溶液が挙げられる。
塗料の表面だけ乾燥している場合は、このような処理は施さずにハンドローラ10を押圧するだけでよい。
【0018】
ハンドローラ10を塗膜100に押圧すると、図2(a)に示すように、第1の凸条8および第2の凸条20が塗膜100に食い込み、さらに、転動させることで図2(b)に示すように、溝103が形成される。
ハンドローラ10は、第1の凸条8が縁部9以外に設けられているため、縁部9と塗膜100との接触面には、溝103が形成されることはない。このため、2回目以降の転動の際に、第1の凸条8により形成された溝103の上を、再度、第1の凸条8を2重に転動させる必要が無いため、溝103の形状を崩すことがない。そのため、優れた仕上がりの目地模様を容易に得ることができる。
【0019】
一方、両方の縁部に第1の凸条8が設けられた、その他のハンドローラ30の場合、図3(a)に示す1回目の転動の際に、片側の縁部の第1の凸条8bによって溝105が形成される。2回目以降の転動においては、図3(b)に示すように、溝105に対して、もう一方の縁部に設けられた第1の凸条8aを正確に合わせて、溝105からずれることなく転動させる必要がある。しかしながら、ハンドローラは人間の手によって操作されるため、転動させる際には少なからず走行方向にずれが生じ、溝105が2重に形成される、もしくは溝形状が崩れるなどして、目地模様の仕上がりが劣る。なお、図3において、図2と同様の構成要素に関しては、同じ符号を付して説明を省略する。
【0020】
本発明のハンドローラ10を複数回転動させて目地模様を形成するときには、塗膜の幅101と塗膜の幅102との間に、転動されない面が生じないように、ハンドローラ10の転動時のずれをあらかじめ鑑みて、すでに転動済みの塗膜の幅101に対して、少し重ねる程度にハンドローラ10を押圧し、転動させるのがよい。
図2(c)および図4に、このようにして連続形成された目地模様を示す。塗膜の幅101と、塗膜の幅102とを重ねる幅は、第1の凸条8の幅より少なく抑えることが好ましい。なお、これらの図では、説明の便宜上、1回目と2回目の計2回の転動により形成された目地模様を表しているが、転動の回数はこれに限定されず、希望する塗膜100の面積全てに目地模様を形成し終えるまで、必要な回数行えばよい。
【0021】
以上の操作で形成された目地模様は、このまま乾燥させてもよいが、さらに塗装などを施して仕上げてもよい。
【0022】
本発明のハンドローラ10を用いた目地模様の形成方法によると、基材200に対して目地模様を容易に形成することができる。また、形状の整った目地(溝)を得ることができ、かつ、目地の間隔が揃った目地模様を得ることができる。本発明で得られる目地模様としては、ストライプ状、破線状、およびレンガ調(タイル調)などを挙げることができる。
本発明のハンドローラ10によると、ロール4を塗膜に押圧しながら転動し、表面に設けられた凸条を塗膜に食い込ませることによって目地模様を形成するため、目地模様の形成に目地材や型紙を必要とすることがない。このため、目地模様の形成によって生ずる廃棄物を大幅に低減できる。また、本発明のハンドローラ10は、目地材や型紙のように使い捨てではなく、何回でも使い回しができるため、コスト削減や省資源化にもつながる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明のハンドローラの一実施形態例を示す平面図。
【図2】本発明のハンドローラを塗膜に押圧し、目地模様が形成される過程を、ハンドローラの進行方向から表した図。
【図3】その他のハンドローラを塗膜に押圧し、目地模様が形成される過程を、ハンドローラの進行方向から表した図。
【図4】本発明のハンドローラによって形成された目地模様の平面図。
【符号の説明】
【0024】
4 ロール
5 ロール表面
6 支持部
7 把手
8 第1の凸条
9 縁部
10 ハンドローラ
20 第2の凸条
30 その他のハンドローラ
100 塗膜
103、105 溝
200 基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール表面に、その円周に沿った第1の凸条が設けられ、該第1の凸条が該ロール表面の片側の縁部以外に設けられていることを特徴とするハンドローラ。
【請求項2】
前記ロール表面に、その幅方向に沿った第2の凸条が設けられ、該第2の凸条の少なくとも一端が前記第1の凸条につながるように設けられている請求項1に記載のハンドローラ。
【請求項3】
基材上に塗膜を塗布し、該塗膜上に請求項1または2に記載のハンドローラを押圧しながら転動させる目地模様の形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−34602(P2009−34602A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−200746(P2007−200746)
【出願日】平成19年8月1日(2007.8.1)
【出願人】(000224123)藤倉化成株式会社 (124)
【Fターム(参考)】