説明

ハンド機構

【課題】本発明は、被把持面が曲面状の物品を把持するハンド機構であって、様々な大きさの被把持面に対応しつつ安定して物品を把持可能なハンド機構を提供することを目的としている。
【解決手段】本発明は、物品を把持するハンド機構であって、直接的又は間接的に物品に接触する一面を有する弾性部材からなる変形部と、前記一面と相対する前記変形部の他面の中心線に接する状態で配置された剛性の高い支持部と、前記支持部が固定された固定部と、前記固定部を物品の方向へ移動させ所定の力で前記変形部を物品へ押圧し変形せしめることにより物品を把持するハンド機構である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットなどに組み込まれて物品を把持するハンド機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記技術分野に関連する技術が下記特許文献1に開示されている。特許文献1には、物品を把持するのに充分な弾性係数を有する弾性体で構成された把持部材を物品の寸法差に応じて変形させるために必要な操作力を低減させるために、物品を両側から狭持するように対向して設置された一対の把持部材の少なくとも一方を弾性体で形成し、その把持部材の物品との当接部の中央部後方に変形用のスペースを形成する空間部を設けるとともに、同空間部の側方に断面積が小さく変形が集中し易い変形部を形成し、物品を把持する際には、その変形部の弾性変形を介して、前記当接部が同変形部を中心に後方に変位し得るロボットのハンド機構が記載されている。
【特許文献1】特開平11−114868号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1に開示されたハンド機構は上記のように構成されているので、変形部の弾性係数を充分な把持力が得られる程度に設定した場合でも、後方への変位は同変形部を中心として回動する形で行われ、小さな操作力の増分で十分な変形量が得られ、物品の把持に必要な所定の把持力を維持しながら、変形のための操作力の増分は少なくて済むという利点がある。しかしながらこの特許文献1に記載されたハンド機構では、例えば重量の重い物品を高い把持力で把持する場合に変形が集中し易い変形部を中心に当接部が後方に大きく後退して傾き、その結果、把持が不十分となり物品を脱落させる可能性がある。さらに、特許文献1に開示されたハンド機構は、円筒状の物品のように被把持面が曲面や球面状の物品であって、物品の被把持面の大きさが種々変化しても安定して把持できるという要請を充分に満たすものではない。
【0004】
本発明は、上記従来技術の問題を鑑みてなされたものであり、被把持面が曲面状の物品を把持するハンド機構であって、様々な大きさの被把持面に対応しつつ安定して物品を把持可能なハンド機構を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明における第1発明は、物品を把持するハンド機構であって、直接的又は間接的に物品に接触する一面を有する弾性部材からなる変形部と、前記一面と相対する前記変形部の他面の中心線に接する状態で配置された剛性の高い支持部と、前記支持部が固定された固定部と、前記固定部を物品の方向へ移動させ所定の力で前記変形部を物品へ押圧し変形せしめることにより物品を把持するハンド機構である。かかる態様のハンド機構によれば、物品の方向へ移動した変形部の一面は物品の被把持面に当接し、変形部は所定の力で物品へ押圧され変形する。ここで、変形部の一面と相対する他面には、その中心線には接するよう剛性の高い支持部が配置されている。したがって、上記変形部を押圧する力によって変形部は単に物品の被把持面に倣って変形するのではなく、上記支持部の配置された中心線付近は相対的に変形しがたく確実に物品を把持固定する一方で、中心線から離れるにつれ支持部を中心として物品の被把持面の形状に倣い後方へ変形し、その結果、当該被把持面に対し変形部の一面は全体として密着する状態となる。これにより、種々の大きさの被把持面を有する物品に対応するため変形部を構成する弾性部材として比較的低弾性係数の材料を用いた場合でも、物品は、変形部の中心線付近で確実に把持固定されるとともに、密着した変形部により姿勢が変化することなく安定して把持されることとなる。
【0006】
本発明における第2発明は、物品を把持するロボットハンドであって、物品を介し相対して配置されるとともに、直接的又は間接的に物品に接触する一面を有する弾性部材からなる一対の変形部と、前記一面と相対する前記変形部の他面の中心線に接する状態で配置された剛性の高い一対の支持部と、前記支持部が固定された一対の固定部と、前記一対の固定部の各々を物品の方向へ移動させ所定の力で前記一対の変形部を物品へ押圧し変形せしめることにより物品を把持するハンド機構である。この態様のハンド機構の作用効果は基本的には上記第1態様のハンド機構と同様であるが、変形部、支持部及び固定部の組み合わせを2式有しているので、例えば円筒形状や円柱形状の外周面全体が曲面で構成された物品を把持する場合に有利である。
【0007】
上記第1・第2発明において、より小さな力で変形部を変形せしめるためには、前記変形部は略円筒形状をなしており、その一端面が前記変形部の一面であることが好ましく、さらに、装置構成を簡略化するためには、前記支持部は略円柱形状をなしているとともにその外周面が前記変形部に接するよう構成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、上記説明のように、本発明の課題である様々な大きさの被把持面に対応しつつ安定して物品を把持可能なハンド機構を提供するという目的を達成することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明について、上記第2発明に係わるハンド機構の実施態様に基づき図面1〜4を参照しつつ説明する。ここで、図1は本態様のハンド機構が物品を把持していない状態を示す平面図、図2は図1のA−A断面図、図3は図1のハンド機構が物品を把持している状態を示す平面図、図4は図3のB−B断面図である。なお、本態様のハンド機構は、変形部、支持部及び固定部を2式有する第2発明に係わる態様であるが、例えばこれらの一式と周知の把持部材とを適宜組み合わせることで第1発明に係わるハンド機構を構成することができる。
【0010】
図1及び2に本態様のハンド機構を示す。なお、本態様のハンド機構は、円筒状の物品であるパイプ10を搬送するために3軸駆動型ロボットに組み込まれたものである。本態様のハンド機構において、符号1はスライド部である。スライド部1は、その両側に配置され、図示水平方向に高圧エアーで移動する一対の移動部2A、2Bを有する。ここで、移動部2A、2Bの移動ストロークは、パイプ10の被把持面である外周面に対し後述する変形部6A、6Bの内側の端面が接離可能なように設定されており、また、移動部2A、2Bの推力は、変形部6A、6Bがパイプ10に当接し押圧されたときに適宜に変形し、その内側の端面がパイプ10の外周面に倣って密着可能な程度に設定されている。
【0011】
符号3A、3Bは対向する状態となるよう移動部2A、2Bに取付られた一対のアームである。そして、符号4A、4Bは、アーム3A,3Bの先端内面に固定された固定部としての円柱状のガイドブロックである。符号6A、6Bは変形部としての略円管状の1対のゴムリングである。ゴムリング6A、6Bは、ショア硬度がA20°程度で比較的低弾性係数の弾性部材であるゴムで構成されており、その内面にガイドブロック4A、4Bが中央部まで嵌入されている。このように、ゴムリング6A、6Bはガイドブロック4A、4Bに嵌入される構成であるので、使用によりゴムリング6A、6Bが消耗した場合には容易に交換可能である。
そして、ゴムリング6A、6Bの内側の端面はパイプ10の被把持面である外周面に向かい配置されるとともに、パイプ10を挟んで各々の端面が相向かうよう配置されている。なお、変形部を構成する弾性部材はゴムに限定されることなく、押圧力よりパイプ10の外周面に適宜倣う程度の弾性係数を持つ材料、例えばプラスチックなどの樹脂なども採用することができる。
【0012】
図1・2において、符号5A,5Bは、支持部としてのピンである。ピン5A,5Bは、ゴムリング6A、6Bの外側の端面の中心線に、その外周面が接する状態となるよう、ガイドブロック4A、4Bを水平方向に貫通するようその中央部に設けられた不図示の貫通孔に挿入固定されている。ここで、ピン5A,5Bは、例えば鋼などの金属で構成された剛性の高い部材であり、変形部を介して作用する押圧力に抗して当該押圧力を受け止める機能を有する。なお、ピン5A,5Bの形状は特に限定されることはないが、ハンド機構の構成を簡略化するためには円柱形状であることが好ましい。
【0013】
上記ハンド機構の動作を図1〜4に基づいて説明する。
まず、図1・2に示すように、パイプ10をゴムリング6A、6Bの間にセットする。次に、スライド部1を駆動して、移動部2A、2Bを内側に水平移動させて、アーム3A,3Bを閉じると、図3・4に示すように、ゴムリング6A、6Bの各々の内側の端面はパイプ10の被把持面である外周面に当接し、移動部2A、2Bの推力による押圧力がゴムリング6A、6Bに作用する。
【0014】
すると、上記押圧力によりゴムリング6A、6Bの内側の端面は、パイプ10の外周面の形状に倣い変形するが、上記のようにピン5A、5Bが配置されているため、図3において符号aで示す中央線付近ではゴムリング6A、6Bの変形量が相対的に少なく、ピン5A、5Bからの押圧力が直接パイプ10に作用する状態となり、パイプ10は把持固定される。一方で、中央線付近から離れるにつれピン5A、5Bによる支持がなくなるためゴムリング6A、6Bはピン5A、5Bを中心にパイプ10の外周面に倣い変形する。その結果、ゴムリング6A、6Bの内側の端面は全体としてワーク10の外周面に密着する状態となる。これにより、パイプ10は、ゴムリング6A、6Bの中心線付近で確実に把持固定されるとともに、密着したゴムリング6A、6Bにより移動中において姿勢が変化することなく安定して把持されることとなる。
【0015】
不図示のロボットによりハンド機構で把持したパイプ10を適宜搬送する。次いで、スライド部1を駆動して移動部2A,2Bを外側に水平移動させることにより、所定の位置へパイプ10をセットする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一態様のハンド機構が物品を把持していない状態を示す平面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】図1のハンド機構が物品を把持している状態を示す平面図である。
【図4】図3のB−B断面図である。
【符号の説明】
【0017】
1 スライド部
2A、2B 移動部
3A、3B アーム
4A、4B ガイドブロック(固定部)
5A、5B ピン(支持部)
6A、6B ゴムリング(変形部)
10 パイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を把持するハンド機構であって、直接的又は間接的に物品に接触する一面を有する弾性部材からなる変形部と、前記一面と相対する前記変形部の他面の中心線に接する状態で配置された剛性の高い支持部と、前記支持部が固定された固定部と、前記固定部を物品の方向へ移動させ所定の力で前記変形部を物品へ押圧し変形せしめることにより物品を把持するハンド機構。
【請求項2】
物品を把持するロボットハンドであって、物品を介し相対して配置されるとともに、直接的又は間接的に物品に接触する一面を有する弾性部材からなる一対の変形部と、前記一面と相対する前記変形部の他面の中心線に接する状態で配置された剛性の高い一対の支持部と、前記支持部が固定された一対の固定部と、前記一対の固定部の各々を物品の方向へ移動させ所定の力で前記一対の変形部を物品へ押圧し変形せしめることにより物品を把持するハンド機構。
【請求項3】
前記変形部は一略円筒形状をなしており、その一端面が前記変形部の一面である請求項1又は2のいずれかにハンド機構。
【請求項4】
前記支持部は略円柱形状をなしているとともにその外周面が前記変形部に接する請求項1乃至3のいずれかに記載のハンド機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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