説明

ハンド消毒器

【課題】微粒化されていない状態の消毒液が噴射されることを抑制する。
【解決手段】ハンド消毒器は、加圧された気体が流れる気体流路33と、消毒液を溜める容器51に接続される消毒液流路34と、気体流路33及び消毒液流路34に接続される二流体ノズル1と、手を感知するセンサと、気体流路33に設けられたコンプレッサ52と、気体流路のうちコンプレッサ52と二流体ノズル1の間の部分に設けられたソレノイドバルブ53と、センサによって手が感知されたことに応じてソレノイドバルブ53を開けるとともにコンプレッサ52を始動する制御装置とを備え、この制御装置は、センサにより手が感知されていない場合に、ソレノイドバルブ53が閉じた状態でコンプレッサ52を作動させ、気体流路33内の気圧を所定値以上とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はハンド消毒器に関し、特に噴射口に二流体ノズルを用い、噴射する消毒液を微粒化したハンド消毒器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の衛生意識の高まりに伴い、手指の消毒を行うためのハンド消毒器が注目されている。ハンド消毒器は、差し出された手指に自動的に消毒液を噴きかける装置であり、簡易かつ高速に手指の消毒ができるため、家庭、職場、公共機関、医療機関など幅広い分野での利用が期待されている。
【0003】
特許文献1には、ハンド消毒器の一例が開示されている。同文献に開示される手消毒装置は、消毒液噴射ノズルと空気噴射ノズルとからなる二流体ノズルを用いることで消毒液の微粒化を実現するもので、消毒液噴射ノズルの噴射口の周囲に空気噴射ノズルの噴射口が環状に配置された構造を有している。空気噴射ノズルはブロアに接続され、消毒液噴射ノズルは電磁弁を介して消毒液タンクにつながっている。赤外線センサーによって手が検知されると、ブロアが作動を開始するとともに、電磁弁が開かれる。ブロアの作動によって空気噴射ノズルには空気が供給され、その空気の流れによって消毒液噴射ノズルの噴射口に負圧が発生する。この負圧によって消毒液タンクから消毒液が吸い出され、噴射口から空気とともに噴射される。空気とともに噴射されることで、消毒液は微粒化されて噴射されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−52352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の手消毒装置には、手を差し出した直後、短時間ではあるが、微粒化されていない状態の消毒液が噴射されるという問題がある。
【0006】
すなわち、特許文献1に記載の技術によれば、空気の供給にブロアを用い、手の検知を契機としてブロアを作動させているが、ブロアがフル回転を始めるまでにはある程度の時間を要することから、手が検知された後、空気噴射ノズルの噴射口から噴射される空気の流速が最高速に達するまでに、ある程度の時間を要する。この間、空気による消毒液の微粒化効果が十分には得られないので、微粒化されていない状態の消毒液が噴射されることになる。
【0007】
電磁弁を開くタイミングを遅らせたり、ブロアを予め作動させたままにしておけば、上記問題は解決されるようにも思われるが、前者によれば、手の検知後しばらくの間、消毒液を含まない空気が噴射されることになるため、利用者に違和感を感じさせてしまう。後者によれば、使用していないときでもブロアを作動させたままということになるので、電力消費や騒音の面で環境によくない影響を与えてしまう。
【0008】
したがって、本発明の目的の一つは、微粒化されていない状態の消毒液が噴射されることを抑制できるハンド消毒器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明によるハンド消毒器は、加圧された気体が流れる気体流路と、消毒液を溜める容器に接続される消毒液流路と、前記気体流路及び前記消毒液流路に接続される二流体ノズルと、手を感知するセンサと、前記気体流路に設けられたコンプレッサと、前記気体流路のうち前記コンプレッサと前記二流体ノズルの間の部分に設けられた第1のバルブと、前記センサによって手が感知されたことに応じて前記第1のバルブを開けるとともに前記コンプレッサを始動する制御装置とを備え、前記制御装置は、前記センサにより手が感知されていない場合に、前記第1のバルブが閉じた状態で前記コンプレッサを作動させ、前記気体流路内の気圧を所定値以上とすることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、気体流路内の気圧が所定値に保たれるので、第1のバルブを開けた直後から最高速で気体を噴射することが可能になる。したがって、微粒化されていない状態の消毒液が噴射されることを抑制できる。
【0011】
上記ハンド消毒器において、前記気体流路のうち前記コンプレッサと前記第1のバルブとの間の部分に接続された蓄圧タンクをさらに備えることとしてもよい。これによれば、始動に比較的時間のかかるコンプレッサを用いたとしても、コンプレッサが立ち上がるまでの間、最高速での気体の噴射を維持することが可能になる。
【0012】
上記各ハンド消毒器においてさらに、前記気体流路内の気圧が前記所定値に達していることを利用者に通知する通知手段をさらに備えることとしてもよい。これによれば、利用者に当該ハンド消毒器の使用可否を伝えることが可能になる。
【0013】
上記各ハンド消毒器においてさらに、前記消毒液流路のうち前記容器と前記二流体ノズルの間の部分に設けられた第2のバルブをさらに備え、前記制御装置は、前記第1のバルブを開けてから所定時間後に前記第2のバルブを開け、前記第2のバルブを閉じてから所定時間後に前記第1のバルブを閉じることとしてもよい。これによれば、液ダレ状態の発生を防止できる。
【0014】
このハンド消毒器においてさらに、前記消毒液流路のうち前記容器と前記第2のバルブの間の部分に設けられた液送ポンプをさらに備え、前記制御装置は、前記第2のバルブを開けるとともに前記液送ポンプを始動し、前記第2のバルブを閉めるとともに前記液送ポンプを停止することとしてもよい。これによれば、液送ポンプによって二流体ノズルに消毒液を供給することが可能になる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、コンプレッサと第1のバルブの間の気体流路内の気圧が所定値に保たれるので、第1のバルブを開けた直後から最高速で気体を噴射することが可能になる。したがって、微粒化されていない状態の消毒液が噴射されることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(a)は、本発明の好ましい実施の形態によるハンド消毒器の外観斜視図である。(b)は、本発明の好ましい実施の形態によるノズル固定部を拡大して示す拡大図である。
【図2】本発明の好ましい実施の形態によるハンド消毒器の液体及び気体の流路の構成を示す図である。
【図3】本発明の好ましい実施の形態によるハンド消毒器の機能ブロックを示す概略ブロック図である。
【図4】本発明の好ましい実施の形態による制御装置が行う処理のフローチャートを示す図である。
【図5】(a)は、本発明の好ましい実施の形態による二流体ノズルの中心軸を含む断面での断面図である。(b)は、(a)に示す液体供給器の外形図である。(c)は、(b)のA−A'線断面での液体供給器の断面図である。(d)は、螺旋状流路内に設けられる液体供給孔の概略の位置を示す図である。
【図6】本発明の好ましい実施の形態による二流体ノズルの変形例を示す図である。
【図7】本発明の好ましい実施の形態による二流体ノズルの変形例を示す図である。
【図8】本発明の好ましい実施の形態による二流体ノズルの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0018】
図1(a)は、本実施の形態によるハンド消毒器30の外観斜視図である。同図に示すように、ハンド消毒器30は本体31とノズル部32とを備え、これらが気体流路33、消毒液流路34、及び信号ケーブル35によって接続された構成を有している。本体31は、ジュラルミンケースとその内部に配置された制御装置60(後述)などから構成される。ノズル部32は、支持台40と、一端が支持台40に固定された略L字型の支持柱41と、支持柱41の他端に固定されたノズル固定部42とを有している。これらの構成により、ノズル部32の外観は電気スタンド様となっている。
【0019】
図1(b)は、ノズル固定部42を拡大して示す拡大図である。同図に示すように、ノズル固定部42には二流体ノズル1と、手感知センサ61と、発光装置62とが設けられる。二流体ノズル1及び手感知センサ61は下向きに設けられる。発光装置62は、使用者から見て目立つ位置に設けられる。ハンド消毒器30は、ノズル固定部42と支持台40の間に手が挿入されると手感知センサ61によってこれを感知し、二流体ノズル1から消毒液を噴射する。
【0020】
図2は、ハンド消毒器30の液体及び気体の流路の構成を示す図である。同図に示すように、二流体ノズル1は気体流路33の一端及び消毒液流路34の一端に接続される。気体流路33の他端は空気取り入れ口50に接続され、この空気取り入れ口50から空気が供給される。一方、消毒液流路34の他端は消毒液を溜める容器51に接続され、この容器51から消毒液が供給される。
【0021】
気体流路33にはコンプレッサ52が設けられる。コンプレッサ52は、空気取り入れ口50から空気を吸い込んで加圧し、二流体ノズル1へと供給する。コンプレッサ52として具体的には、比較的低音でコンパクトな電磁ポンプを用いることが好適である。
【0022】
気体流路33のうちコンプレッサ52と二流体ノズル1の間の部分には、ソレノイドバルブ53(第1のバルブ)が設けられる。ソレノイドバルブ53として具体的には、図2に示すように、スプリングリターン付きの2ポート単動常時閉電磁弁を用いることが好適である。これを用いることで、電源を投入していないときにソレノイドバルブ53を閉状態に維持することが可能になる。
【0023】
気体流路33のうちコンプレッサ52とソレノイドバルブ53との間の部分には、蓄圧タンク54が接続される。蓄圧タンク54は気体流路33内の気圧を所定時間にわたって一定に保つための役割を有しており、蓄圧タンク54内の気圧が一旦所定気圧まで加圧されると、その後コンプレッサ52が作動していない状態でソレノイドバルブ53が開となっても、一定時間にわたって気体流路33内の気圧はほぼ上記所定気圧に維持される。蓄圧タンク54として具体的には、30kPa程度まで耐えられる容器(ペットボトルなど)を用いることが好適である。
【0024】
容器51は密閉されていない容器であり、その内部には消毒液が溜められる。簡易には、容器51としてペットボトルを用いることができる。消毒液としては、特に限られるものではないが、エタノールや次亜塩素酸などの殺菌作用を有する液体、若しくはこれらと水の混合液を用いることが好適である。
【0025】
消毒液流路34のうち容器51と二流体ノズル1の間の部分には、ソレノイドバルブ55(第2のバルブ)が設けられる。ソレノイドバルブ55としても、図2に示すように、スプリングリターン付きの2ポート単動常時閉電磁弁を用いることが好適である。これを用いることで、電源を投入していないときにソレノイドバルブ55を閉状態に維持することが可能になる。
【0026】
消毒液流路34のうち容器51とソレノイドバルブ55の間の部分には、液送ポンプ56が設けられる。液送ポンプ56は、容器51内の消毒液を吸引し、消毒液流路34に供給する機能を有しており、消毒液を数kpaの圧力で消毒液流路34に供給する。液送ポンプ56を用いることで、二流体ノズル1と容器51との間の距離が長い場合や、容器51内の液面が二流体ノズル1に比べて低い位置にある場合にも、二流体ノズル1に好適に消毒液を供給することが可能になる。液送ポンプ56として具体的には、動作が単純で小型化可能なユニモルフポンプを用いることが好適である。
【0027】
消毒液流路34のうち液送ポンプ56とソレノイドバルブ55の間の部分には、ニードルバルブ57が設けられる。ニードルバルブ57は、消毒液の流量が最適値となるよう、予め調整のうえ固定される。
【0028】
図3は、ハンド消毒器30の機能ブロックを示す概略ブロック図である。同図に示すように、ハンド消毒器30は機能的に、制御装置60、手感知センサ61、発光装置62、気圧検出装置63、液量検出装置64、バルブ開閉装置65、コンプレッサ制御装置66、液送ポンプ制御装置67、電源装置68を備えている。このうち手感知センサ61と発光装置62は、上述したようにノズル部32に設けられる。一方、その他の構成は本体31に設けられる。これらは、上述した信号ケーブル35によって互いに接続される。
【0029】
制御装置60はマイクロプロセッサ及びメモリによって構成され、メモリ内に記憶されたプログラムを実行する。プログラムには、後述する各部の機能を実現するためのコードが含まれる。制御装置60が行う処理の詳細については、後にフローチャートを参照しながら詳細に説明する。
【0030】
手感知センサ61は、ノズル固定部42と支持台40の間に挿入された手を感知するセンサである。手感知センサ61として具体的には、超音波を用いるモーションセンサを用いることが好適である。赤外線センサを用いてもよいが、周囲温度と手の温度が同程度であると感度が悪くなるので、モーションセンサを用いることが好ましい。
【0031】
気圧検出装置63は、気体流路33のうちソレノイドバルブ53とコンプレッサ52の間の部分の気圧を検出可能に構成され、検出した気圧を電気信号化して制御装置60に出力する。気圧検出装置63として具体的には、コスト的に有利であることから、ピエゾ素子を用いるプレッシャーセンサを用いることが好適である。また、液量検出装置64は、容器51内の消毒液の液量を検出可能に構成され、検出した液量を電気信号化して制御装置60に出力する。液量検出装置64として具体的には、静電容量センサを用いることが好適である。本体31が透明であったり、容器51を本体31の外部に設置する場合も考えられるが、静電容量センサは外光に影響されないので、そのような場合であっても正しく液量を検出することが可能になる。
【0032】
バルブ開閉装置65は、制御装置60からの指示に従ってソレノイドバルブ53,55の開閉処理を行う。具体的には、ソレノイドバルブ53,55が、上述したようにいずれもスプリングリターン付きの2ポート単動常時閉電磁弁であることから、開とするときに通電し、閉とするときに通電しないことによって、開閉処理を行う。
【0033】
コンプレッサ制御装置66は、制御装置60からの指示に従ってコンプレッサ52の始動、停止を行う装置である。また、液送ポンプ制御装置67は、制御装置60からの指示に従って液送ポンプ56の始動、停止を行う装置である。
【0034】
発光装置62は、制御装置60からの指示に従ってそれぞれ個別に点灯、消灯する第1及び第2の発光素子62a,62bにより構成される。第1及び第2の発光素子62a,62bとして具体的には、3色LED(Light Emitting Diode)を用いることが好適である。第1の発光素子62aは、点灯色により容器51内の液量の残量を示す残量計として機能する。第2の発光素子62bは、気体流路33のうちコンプレッサ52とソレノイドバルブ53の間の部分の気圧に応じた色で点灯するように構成されており、該気圧が所定値に達していることを利用者に通知する通知手段として機能する。第1及び第2の発光素子62a,62bの発光タイミングについては、後ほど制御装置60の処理を説明する際に併せて説明する。
【0035】
電源装置68は、制御装置60他の電源を供給するための電源を生成する装置である。具体的には、バッテリーであってもよいし、商用の交流電力を直流電力に変換して出力するAC−DCコンバータであってもよい。
【0036】
制御装置60は、以上の各部を制御することにより、手が感知されたときには消毒液を噴射するための処理を行うとともに、手が感知されていない場合には、気体流路33内の気圧を所定値以上に保つための処理を行う。以下、フローチャートを参照しながら具体的に説明する。
【0037】
図4は、制御装置60が行う処理のフローチャートを示す図である。このフローチャートに示す処理は、ハンド消毒器30の電源を投入したときに開始される。初期状態では、ソレノイドバルブ53,55はいずれも閉状態であり、コンプレッサ52と液送ポンプ56はいずれも止まっている。また、第1及び第2の発光素子62a,62bはいずれも消灯状態である。
【0038】
制御装置60は、図4に示すように、電源が投入されるとまず液量確認処理を行う(ステップS1)。この処理において制御装置60は、液量検出装置64を介して容器51内の消毒液の液量を取得する。そして、液量が所定の基準量(例えば、1回あたりの平均噴射量の30回分)以上であった場合には第1の発光素子62aを消灯する。一方、基準量未満であった場合には、さらに液量が残り1回あたりの平均噴射量を下回っているか否かを判定し、下回っている場合には第1の発光素子62aを赤色点灯させ、下回っていない場合には第1の発光素子62aを黄色点灯させる。第1の発光素子62aを以上のように消灯又は点灯させることで、使用者に消毒液の残量を知らせることが可能になる。なお、第1の発光素子62aを赤色点灯させた場合、制御装置60はステップS2以降の処理を行わないこととしてよい。
【0039】
次に、制御装置60は、気体流路33内の気圧を所定値以上に保つための圧力維持処理を行う(ステップS2)。具体的には、まず気圧検出装置63を介して、気体流路33のうちソレノイドバルブ53とコンプレッサ52の間の部分の気圧を取得する。そして、取得した気圧が所定値未満であるか否かを判定する。ここでいう「所定値」は、ソレノイドバルブ53が開いた直後からほぼ最高速で気体が噴射されるために必要な気圧の値である。例えば25kPa程度とすればよい。取得した気圧が所定値未満であった場合、制御装置60は、コンプレッサ制御装置66を介してコンプレッサ52を始動し、所定値まで加圧する。気体流路33内の気圧が所定値以上となったら、制御装置60は、コンプレッサ52を停止させるとともに、発光装置62内の第2の発光素子62bを緑色点灯させる(ステップS3)。この緑色点灯により、使用者は、ハンド消毒器30が利用可能となったこと(気体流路33内の気圧が所定値に達していること)を知ることができる。
【0040】
次に、制御装置60は、手感知センサ61によって手が感知されているか否かを判定し(ステップS4)、手が感知されていない場合には、ステップS1に戻る。一方、手が感知されている場合には、ステップS5以降の噴射開始処理を開始する。
【0041】
噴射開始処理では、制御装置60は、発光装置62内の第2の発光素子62bを青色点灯させ(ステップS5)、まず気体を噴射させる(ステップS6)。具体的には、バルブ開閉装置65を介してソレノイドバルブ53を開けるとともに、コンプレッサ制御装置66を介してコンプレッサ52を始動する。上述した圧力維持処理によって気体流路33内の気圧が上記所定気圧まで加圧されているため、二流体ノズル1からは、ソレノイドバルブ53を開けた直後から最高速で気体が噴射される。なお、この時点ではソレノイドバルブ55が閉じられているため、消毒液が噴射されることはない。
【0042】
次に、制御装置60は、気体の噴射開始に少し遅れて、消毒液の噴射を開始する(ステップS7)。具体的には、ソレノイドバルブ53を開けてから所定時間(>0秒)後に、バルブ開閉装置65を介してソレノイドバルブ55を開ける。こうすることで、二流体ノズル1から噴射される気体の圧力が不十分である間(ソレノイドバルブ53の開放後、所定値の気体が二流体ノズル1の噴射口に達するまでの間)に消毒液が噴射され、結果として液ダレ状態となることを防止できる。この所定時間は、実際には極めて短く0.3秒程度であり、利用者が気付かない程度の時間である。このような短い時間での液体噴射が可能となったのは、上述した圧力維持処理を行っているためである。二流体ノズル1から噴射される消毒液は微粒化されており、その粒径は約20μmとなる。
【0043】
なお、ステップS7において、制御装置60は、ソレノイドバルブ55を開けると同時に、液送ポンプ制御装置67を介して液送ポンプ56を始動する。こうすることで、上述したように、二流体ノズル1に好適に消毒液を供給することが可能になる。
【0044】
消毒液の噴射を開始したら、制御装置60は、手感知センサ61による手の感知が停止したか否かを判定する(ステップS9)。制御装置60は、この判定処理を、手の感知が停止されるまで繰り返す。その間、制御装置60は、ステップS1で行ったのと同じ液量確認処理を行う(ステップS8)。手の感知が停止されたら、ステップS10以降の噴射停止処理を開始する。なお、ステップS7の実行後、所定時間が経過したら、手感知センサ61による手の感知の有無によらず、噴射停止処理を開始することとしてもよい。
【0045】
噴射停止処理では、制御装置60は、まず消毒液の噴射を停止する(ステップS10)。具体的には、バルブ開閉装置65を介してソレノイドバルブ55を閉じる。同時に、液送ポンプ制御装置67を介して液送ポンプ56を停止する。その後、制御装置60は、気体の噴射を停止する(ステップS11)。具体的には、ソレノイドバルブ55を閉じてから所定時間(>0秒)後に、バルブ開閉装置65を介してソレノイドバルブ53を閉じる。このように、ソレノイドバルブ55とソレノイドバルブ53の閉塞タイミングに時間差を設けることで、液ダレ状態の発生を防止できる。すなわち、仮にソレノイドバルブ53を先に閉じたとすると、ソレノイドバルブ53と二流体ノズル1の間に残る気体が低圧で噴射され、噴射されている間、液ダレ状態となる。これに対し、ソレノイドバルブ55を先に閉めると、閉めた瞬間から消毒液が噴射されなくなるので、液ダレ状態の発生を防止できる。なお、コンプレッサ52については、ステップS11で停止させる必要はなく、後に行うステップS2の処理で停止させることとすればよい。
【0046】
ステップS12で気体の噴射を停止した後には、制御装置60は、発光装置62内の第2の発光素子62bを消灯する(ステップS12)。そして、ステップS1に処理を戻し、液量確認処理(ステップS1)及び圧力維持処理(ステップS2)を行う。
【0047】
以上説明したように、ハンド消毒器30によれば、コンプレッサ52とソレノイドバルブ53の間の気体流路33内の気圧が所定値に保たれるので、ソレノイドバルブ53を開けた直後から最高速で気体を噴射することが可能になる。したがって、微粒化されていない状態の消毒液が噴射されることを抑制できる。
【0048】
また、蓄圧タンク54を備えたことで、始動に比較的時間のかかるコンプレッサ52を用いたとしても、コンプレッサ52が立ち上がるまでの間、最高速での気体の噴射を維持することが可能になる。
【0049】
また、コンプレッサ52とソレノイドバルブ53の間の気体流路33内の気圧が所定値になった場合に発光装置62内の第2の発光素子62bを緑色点灯させるので、利用者に当該ハンド消毒器30の使用可否を伝えることが可能になる。
【0050】
また、ソレノイドバルブ53とソレノイドバルブ55の開閉タイミングに時間差を設けたことで、液ダレ状態の発生を防止できる。
【0051】
次に、ハンド消毒器30で用いる二流体ノズル1の構造について、詳細に説明する。
【0052】
図5(a)は二流体ノズル1の中心軸を含む断面での断面図、図5(b)は図5(a)に示す液体供給器14の外形図、図5(c)はA−A'線断面(液体分配流路14cを含む断面)での液体供給器14の断面図、図5(d)は螺旋状流路14b内に設けられる液体供給孔14d(液体分配流路14cの出口)の概略の位置を示す図である。
【0053】
図5(a)に示すように、二流体ノズル1は、気体ノズル12、液膜形成ノズル13、液体供給器14と基部15で構成されている。基部15には気体流入路15a、液体流入路15bが配設され、それぞれの入り口には配管継ぎ手をねじ込むネジが配設されている。気体流入路15a、液体流入路15bはそれぞれ、気体流路33、消毒液流路34に接続される。気体流入路15aには気体流路33から加圧された空気が供給され、液体流入路15bには消毒液流路34から消毒液が供給される。
【0054】
気体ノズル12は基部15に繋がる。液膜形成ノズル13は、気体ノズル12と同軸に配設される。液膜形成ノズル13の内周面は、回転対象形の液膜形成面13bを構成する。液体供給器14の内部には、液体流入路15bに連通する液体流路14aが配設される。液体供給器14の外周部には、中心軸と捩れの位置にある複数の螺旋状流路14bが配設される。液体流路14aには、放射状に延びて螺旋状流路14bに開口する液体分配流路14cが連通して配設される。
【0055】
液体流入路15bから流入した液体は、液体流路14a、液体分配流路14cを通って螺旋状流路14bに流出する。気体流入路15aから流入した気体は、一部は気体ノズル12の内壁面12bと液膜形成ノズル13の液膜形成ノズル13の外壁面13cとで形成される気体流路17を通り、旋回を与える手段として配設した軸流方式の気流旋回羽根18により旋回を与えられた上、気体ノズル12の出口12aと液膜形成ノズル13の出口13aとの間に形成される環状開口16から噴出する。気体流入路15aから流入した気体の他の部分は、螺旋状流路14bに流入する。
【0056】
液体分配流路14cの出口(液体供給孔14d)から流出した液体は、螺旋状流路14bに流入している気体を突き破って液膜形成面13bに衝突する。そして、液膜形成面13b上を流れ、液膜形成ノズルの出口13aから環状の液膜となって流出する。この環状液膜の内周側は、螺旋状流路14bから流出し、液膜形成ノズル13の液膜形成面13bに沿って旋回流となって液膜形成ノズル13の出口13aから噴出する気体の流れによって挟まれる。一方、外周側は、環状開口16から噴出する気体の流れにより挟まれる。液膜形成ノズルの出口13aから流出する液体は、このように両側から挟まれることによって、微粒化される。
【0057】
図5に示すように、液膜形成ノズル13の液膜形成面13bは、その直径が出口に向けて増大している。これにより、液膜形成ノズル13の出口の周長が大きくなるので、噴霧量が多い場合でも液膜の厚さが増大するのを抑えることができ、微粒化性能を維持できる。また、液膜形成ノズル13のセンターボディー14eの直径も、液膜形成面13bの拡大に適合して増大しているので、液膜形成ノズル13内の気流の流速が低下することもなく、また、旋回の安定化も図られ、液膜の周方向の一様性が向上し、微粒化が促進される。
【0058】
液膜形成ノズル13の先端は、微粒化の点からは図5に示すように薄肉になっていることが好ましい。また、液体供給器14の先端が中心軸に沿って液膜形成ノズル13の出口近傍までセンターボディー14eとして延びている形状は、液膜形成ノズル13の液膜形成面13bに沿って形成される環状空間内における気流の旋回流れを安定化させるのに有効である。旋回流れによって心軸近傍には負圧の領域ができ、その負圧によって気体が液膜形成ノズル13の出口13aから環状空間内に逆流するのを抑止する効果もある。
【0059】
図6は、本実施の形態による二流体ノズル1の変形例を示す図である。この変形例では、液膜形成ノズル13は先細形状で、センターボディー14eの先端も、それに適した先細形状になっている。この形態は、液膜形成ノズル13の開口を小さくできるので使用空気量を削減できる利点がある。一方、内部の気体の圧力が高くなり、液体が戻されやすくなるという短所がある。その問題は、図7に示す変形例のようにセンターボディー14eを短くし、開口面積を大きくすることで緩和できる。
【0060】
図8は、本実施の形態による二流体ノズル1の他の変形例を示す図である。この変形例では、気体ノズル12の内周壁と液膜形成ノズル13の外周壁面とで形成される気体流路17に半径流方式の気流旋回羽根18を配設し、ここを通って気体ノズル12の出口と液膜形成ノズル13の出口13aとの間に形成される環状開口16から噴出する気体の流れに強い旋回を与えるようにしている。気流旋回羽根は、軸流方式、半径流方式に限らず斜流方式でもよい。環状開口16からの気流に旋回を与えることによって、環状液膜の微粒化を促進することができだけでなく、その旋回の強さを変えることによって噴霧の広がりを変化させることができるという利点がある。
【0061】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、本発明が、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施され得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0062】
1 二流体ノズル
12 気体ノズル
12a 気体ノズル出口
12b 気体ノズル内壁面
13 液膜形成ノズル
13a 液膜形成ノズル出口
13b 液膜形成面
13c 液膜形成ノズル外壁面
14 液体供給器
14a 液体流路
14b 螺旋状流路
14c 液体分配流路
14d 液体供給孔
14e センターボディー
15 基部
15a 気体流入路
15b 液体流入路
16 環状開口
17 気体流路
18 気流旋回羽根
30 ハンド消毒器
31 本体
32 ノズル部
33 気体流路
34 消毒液流路
35 信号ケーブル
40 支持台
41 支持柱
42 ノズル固定部
50 空気取り入れ口
51 容器
52 コンプレッサ
53 ソレノイドバルブ(第1のバルブ)
54 蓄圧タンク
55 ソレノイドバルブ(第2のバルブ)
56 液送ポンプ
57 ニードルバルブ
60 制御装置
61 手感知センサ
62 発光装置
62a 第1の発光素子
62b 第2の発光素子
63 気圧検出装置
64 液量検出装置
65 バルブ開閉装置
66 コンプレッサ制御装置
67 液送ポンプ制御装置
68 電源装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧された気体が流れる気体流路と、
消毒液を溜める容器に接続される消毒液流路と、
前記気体流路及び前記消毒液流路に接続される二流体ノズルと、
手を感知するセンサと、
前記気体流路に設けられたコンプレッサと、
前記気体流路のうち前記コンプレッサと前記二流体ノズルの間の部分に設けられた第1のバルブと、
前記センサによって手が感知されたことに応じて前記第1のバルブを開けるとともに前記コンプレッサを始動する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記センサにより手が感知されていない場合に、前記第1のバルブが閉じた状態で前記コンプレッサを作動させ、前記気体流路内の気圧を所定値以上とする
ことを特徴とするハンド消毒器。
【請求項2】
前記気体流路のうち前記コンプレッサと前記第1のバルブとの間の部分に接続された蓄圧タンクをさらに備える
ことを特徴とする請求項1に記載のハンド消毒器。
【請求項3】
前記気体流路内の気圧が前記所定値に達していることを利用者に通知する通知手段をさらに備える
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のハンド消毒器。
【請求項4】
前記消毒液流路のうち前記容器と前記二流体ノズルの間の部分に設けられた第2のバルブをさらに備え、
前記制御装置は、前記第1のバルブを開けてから所定時間後に前記第2のバルブを開け、前記第2のバルブを閉じてから所定時間後に前記第1のバルブを閉じる
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のハンド消毒器。
【請求項5】
前記消毒液流路のうち前記容器と前記第2のバルブの間の部分に設けられた液送ポンプをさらに備え、
前記制御装置は、前記第2のバルブを開けるとともに前記液送ポンプを始動し、前記第2のバルブを閉めるとともに前記液送ポンプを停止する
ことを特徴とする請求項4に記載のハンド消毒器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−274(P2012−274A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−138089(P2010−138089)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第3項適用申請有り 彩の国ビジネスアリーナ2010 財団法人埼玉県中小企業振興公社 平成22年1月27日から1月28日
【出願人】(393011005)株式会社大村製作所 (3)
【Fターム(参考)】