説明

ハードシェルカプセル剤のためのイブプロフェン溶液

【課題】液体充填ハードシェルカプセル剤のための薬学的に許容できかつ安定な好ましくは透明の組成物の提供。
【解決手段】液体充填ハードシェルカプセル剤のための薬学的許容性組成物であって、該組成物の総重量に基づいて、a)35〜75重量%のイブプロフェン、b)1〜10重量%の水酸化アルカリ、及びc)7〜35重量%のカプリル酸/カプリン酸トリグリセリドと混合された10〜40重量%の量のポリオキシエチレンひまし油誘導体である乳化剤を含んでなり、水酸化アルカリbとイブプロフェンaの間のモル比が0.1〜0.5である組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体充填ハードシェルカプセル剤のための薬学的に許容できかつ安定な好ましくは透明の組成物、これら組成物を含有するハードシェルカプセル剤、及びこれらハードシェルカプセル剤を製造する方法であって、それによって前記ハードカプセル剤の該シェルが好ましくは清澄な透明になる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イブプロフェン(2−(4−イソブチルフェニル)プロピオン酸)は、抗炎症及び鎮痛作用を有する薬剤である。それは、慢性関節リウマチ又は関節の他の炎症性疾患、軟質組織リウマチ及び通風の治療のために使用される。
【0003】
一般に、急性痛と闘うのに適する医薬品は、活性成分の急速な放出及び良好なバイオアベイラビリティによってはじめて達成されるその効果の迅速な発揮を要求される。
イブプロフェンは、幾つかの生理学的適合性の溶媒に溶けるが、少量の水を加えたり、例えば人工胃液のような水性媒質中に導入したりすると即座に析出する。そのような溶液が経口投与で胃の中に入ると、イブプロフェンは析出して急速な吸収が妨げられる。
【0004】
US4,690,823は、15〜30重量部のイブプロフェンの、70〜85重量部のポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンポリマー中の溶液又は30〜76重量部のポリアルキレングリコールと7〜40重量部の表面活性剤との混合液中の溶液を含有するソフトゼラチンカプセル剤を記載している。これらカプセル剤は、非常に急速で高い活性成分のバイオアベイラビリティを有すると記載されている。その活性成分は、人工胃液のような水性媒質によって析出しない。
【0005】
US4,690,823は、更に、イブプロフェンが、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンポリマー中に又はポリアルキレングリコールと表面活性剤との混合液中に45〜65℃で容易に溶解して室温まで冷却しても溶液のままであることを開示している。これら溶液が、水性媒質中に、より具体的には人工胃液中に導入されても析出しないので、イブプロフェンが急速かつ完全にこの溶液から吸収されることができる。イブプロフェンは、40%イブプロフェンまでの量で使用される。水酸化アルカリは加えられない。その実施例では、トリヒドロキシステアリン酸ポリオキシエチレン−(40)[及び(60)]グリセロールが表面活性剤として使用される。
【0006】
US6,096,338は、a)可食性油、b)薬学的に許容できる表面活性剤を含んでなる疎水性薬剤用の担体系であって、該表面活性剤が、前記可食性油の in vivo 脂質分
解を実質的に阻害する親水性表面活性剤成分、及び前記親水性表面活性剤成分の前記阻害作用を少なくとも実質的に低下させることができる親油性表面活性剤成分を含んでなる担体系を開示する。Miglyol(登録商標)812 が、好ましい中鎖脂肪酸トリグリセリド油で
あるとして開示されている。あらゆる薬学的に許容できる親水性表面活性剤が使用されることができる。多くの例の中で Cremophor(登録商標)EL 及び Cremophor(登録商標)RH40 が親水性表面活性剤の例として挙げられている。
【0007】
US5,141,961は、少なくとも1種の難溶性薬学的活性物質をポリエチレングリコールとポリビニルピロリドンの混合液に溶解させる方法に関する。
WO96/19202は、イブプロフェンの溶解性を増進するための溶媒系であって、イブプロフェン溶解増進剤として約1〜10重量%の酢酸アンモニウム含んでなる溶媒系を開示する。この溶媒系は、経口投与のためのソフトゲルを充填するのに適するイブプロ
フェンの薬学的に許容できる高濃度透明マイクロコロイド状溶液であって、その透明溶液の重量に基づいて、少なくとも約25重量%のイブプロフェン、約1〜10重量%の水、及び約50〜74重量%の少なくとも1種の薬学的に許容できる可溶化物質であって8〜25の範囲内の親水性−親油性バランスを有する非イオン性ポリエトキシル化表面活性剤の中から選択される可溶化物質を、単独で又は8.0〜15.0の範囲内の溶解性パラメーターを有する溶媒系と一緒に、含んでなる溶液である。
【0008】
WO92/20334は、炎症、痛み及び発熱の治療のための医薬組成物におけるS(−)ナトリウム・2−(4−イソブチルフェニルプロピオネート)(S(+)イブプロフェンのナトリウム塩)の使用を開示する。液体充填組成物は、a)10〜80%のS(−)ナトリウム・2−(4−イソブチルフェニルプロピオネート)、及びb)20〜90%の脂肪酸エステル賦形剤であって1又はそれを越えるポリオールエステルと天然植物油脂肪酸のトリグリセリドとを含んでなる賦形剤を含んでなる。
【0009】
WO00/30619は、自己乳化性イブプロフェン溶液及びそれを使用するためのソフトゼラチンカプセルを開示する。その溶液は、ポリオキシエチレンひまし油誘導体及びイブプロフェンを含む自己乳化性イブプロフェン製剤であって、難水溶性イブプロフェンの安定性、濃度、及びバイオアベイラビリティを向上する製剤を提供する。ポリオキシエチレンひまし油誘導体の量は、約30〜約35重量%の範囲である。
【0010】
WO00/30619のポリオキシエチレンひまし油誘導体の好ましい一態様では、その疎水性構成成分が全混合物の約83%を構成し、その主成分はポリエチレングリコールリシノール酸グリセロールである。親水性成分(約17%)は、ポリエチレングリコールとグリセロールエトキシル化物からなる。
【0011】
WO00/30619のポリオキシエチレンひまし油誘導体の好ましい別の態様では、その疎水性構成成分が全混合物の約75%を構成する。その疎水性成分は、主に、グリコールポリエチレングリコールの脂肪酸エステルとポリエチレングリコールの脂肪酸エステルから構成される。その親水性画分(約25%)は、ポリエチレングリコールとグリセロールエトキシル化物からなる。
【0012】
それら製剤におけるイブプロフェンの量は、約33〜38重量%の範囲である。冷えたときの溶液からのイブプロフェンの再結晶化を防止するために、WO00/30619は、可溶性ポリビニルピロリドン(PVP)のような複合化剤の添加により周囲温度での溶液濃度を増進させて安定化させることを提案している。
【0013】
WO00/30619の薬剤送逹ビヒクルは、2片の標準的ゼラチンカプセルであることができるが、より好ましくは、1片の外部遮断ゼラチンカプセルであるソフトゼラチンカプセルである。
【0014】
EP0413171B1は、重い痛みを治療するための薬剤であって、68.5〜46
重量部のポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン−ジオール中に、又は30〜76重量部のポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン−ジオール又はポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコールと7〜40重量部の生理学的適合性表面活性剤とを含んでなる混合液中に、部分的に溶解しかつ部分的に懸濁している30〜50重量部のイブプロフェンと1.5〜4重量部のコデイン及び/又は生理学的適合性のその塩を含有するソ
フトゼラチンカプセルからなる薬剤を開示する。
【0015】
US−A−5,360,615は、医薬品の溶解性を高めるカプセル封入のための溶媒系であって、イブプロフェンのような酸性医薬物質の溶解性を高めて、ソフトゲル充填物に
適する高濃度溶液をもたらすための、10〜80重量%のポリエチレングリコール、溶解性増進量の水酸イオン又は水素イオン、及び1〜20重量%の水を含んでなる溶媒系を開示する。好ましくは、酸性医薬物質中の酸の1モル当量当たり0.2〜1.0モル当量の水酸イオンが使用される。
【0016】
US5,360,615にソフトゲル若しくは2片カプセルを充填するのに又は錠剤形成に適するとして開示されたイブプロフェンの溶液は、40〜80重量%のイブプロフェン、イブプロフェンの1モル当たり0.1〜1.5モルの水酸イオン、1〜20重量%の水、及び4〜12重量%のグリセリン又はプロピレングリコールをポリエチレングリコール中に含んでなり、より好ましくは、前記水酸イオンがイブプロフェンの1モル当たり0.2
〜0.5モルの範囲である。
【発明の開示】
【0017】
本発明の1つの目的は、先行技術の上記欠点を克服するハードカプセルを充填するための薬学的に許容できる透明溶液を提供する。充填されたカプセル剤は、容易に吸収され、担体中に高濃度のイブプロフェンを含有でき、製造が簡単で、かつ高い活性を急速に発揮する医薬品として有用であるに違いない。ハードシェルカプセルを充填するための溶液は、イブプロフェンの高い安定性とバイオアベイラビリティを示すに違いない。
【0018】
ハードシェルカプセルは2片の医療用カプセルであって、そのシェルが概して既知のフィルム形成性の材料又は組成物からなる。適するフィルム形成性材料は親水性ポリマーであることができ、ゼラチンを選択するのが好ましい。他の適するカプセルシェル材料には、スターチ、ヒドロキシプロピル化ヒドロキシエチル化スターチのような変性スターチ、カゼイン、キトサン、大豆タンパク質、ひまわりタンパク質、アルギン酸塩、ゲランガム
(gellan gum)、カラジーナン、キサンタンガム、プルラン、フタル酸化ゼラチン、スク
シン酸化ゼラチン、フタル酸酢酸セルロース、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリ酢酸フタル酸ビニル、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルの重合物、又はそれらの混合物が含まれる。本カプセルシェル材料は、更に、その親水性ポリマーの重量に基づいて0〜40%の薬学的に許容できる可塑剤を含有することができる。用いられてもよい可塑剤は、ポリエチレングリコール、グリセロール、ソルビトール、スルホスクシン酸ジオクチル・ナトリウム、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、1,2−プロピレングリコール、グリセロールのモノ−、ジ−
若しくはトリ酢酸エステル、又はそれらの混合物から選択されることができる。
【0019】
加えて、カプセルシェル材料は、親水性ポリマーの重量に基づいて0〜10%の薬学的に許容できる滑剤を含有することができる。滑剤は、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸錫、タルク、ラウリル硫酸ナトリウム、レシチン、鉱油、ステアリン酸若しくはシリコーン、又はそれらの混合物から選択されることができる。
【0020】
更に、カプセルシェル材料は、親水性ポリマーの重量に基づいて0〜10%の薬学的に許容できる着色剤を含有することができる。着色剤は、アゾ−キノフタロン−、トリフェニルメタン−、キサンテン−染料、酸化鉄若しくは水酸化鉄、二酸化チタン、又は天然染料、又はそれらの混合物から選択されることができる。更なる適する着色剤は、サンセットイエロー、アルラレッド、アマラント、コキニアルレッド、アゾゲラニン、タルトラジン、ブリリアントブラック、カンタキサンチン、パテントブルー、ファーストグリーン、ブリリアントブルー、アシッドグリーン、エリスロシン、キノリンイエロー、インジゴチン、クルクミン、又はカーボンブラックである。
【0021】
更には、本カプセルシェル材料は、親水性ポリマーの重量に基づいて0〜95%の薬学
的に許容できる増量剤を含有する。増量剤は、ひまわりタンパク質、大豆タンパク質、綿実タンパク質、ピーナッツタンパク質、菜種タンパク質、ラクトース、アラビアガム、アクリレート若しくはメタクリレート、フタル酸アセチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、シェラック、ベントナイト、ポリ酢酸フタル酸ビニル、フタル酸化ゼラチン、スクシン酸化ゼラチン、寒天、ヒドロキシアルキルスターチ、又はそれらの混合物から選択されることができる。
【0022】
本発明による固体医薬剤形は、セラセフェート、ポリ酢酸フタル酸ビニル、メタクリル酸ポリマー、フタル酸ハイプロメロース、フタル酸ヒドロキシアルキルメチルセルロース、又はそれらの混合物から選択されるコーティングをも含んでなることができる。
【0023】
好ましくは、フィルム形成性組成物は、高速製造装置での慣用的な浸漬成形法による清澄な透明ハードカプセルの製造に適しているものである。
従って、本発明は、ハードシェルカプセルを充填するための、好ましくは清澄で透明な薬学的許容性溶液であって、該溶液の総重量に基づいて、
a)35〜75重量%のイブプロフェン、
b)1〜10重量%の水酸化アルカリ、及び
c)15〜55重量%の、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、中鎖トリグリセリド、プロピレングリコールエステル、グリセリルエステル、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレンひまし油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ステアリン酸ポリオキシエチレン、ひまし油、又はそれらの混合物から選択される乳化剤
を含んでなり、水酸化アルカリbとイブプロフェンaの間のモル比が0.1〜0.5である溶液を提供する。
【0024】
本発明は、更に、溶液を含有する、好ましくは清澄で透明なイブプロフェン含有ハードシェルカプセル剤であって、該溶液が、該溶液の総重量に基づいて、
a)35〜75重量%のイブプロフェン、
b)1〜10重量%の水酸化アルカリ、及び
c)15〜55重量%の、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、中鎖トリグリセリド、プロピレングリコールエステル、グリセリルエステル、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレンひまし油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ステアリン酸ポリオキシエチレン、ひまし油、又はそれらの混合物から選択される乳化剤
を含んでなり、水酸化アルカリbとイブプロフェンaの間のモル比が0.1〜0.5であるハードカプセル剤を提供する。
【0025】
成分a)としてのイブプロフェンは、本発明に従い、溶液の総重量に関して、35〜75重量%、好ましくは40〜55重量%、最も好ましくは45〜50重量%の量で使用される。
【0026】
本発明では、イブプロフェンは、一般にラセミ混合物として使用される。
成分b)としての水酸化アルカリは、溶液の総重量に関して、1〜10重量%、好ましくは1〜5重量%の量で使用される。
【0027】
本発明において成分b)として使用される水酸化アルカリは、好ましくは、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、又はそれらの混合物である。本発明による最も好ましい水酸化アルカリは、KOHである。
【0028】
本発明の好ましい態様では、KOHは、イブプロフェン1モル当たり0.2〜0.35モル、即ち、1モルの医薬物質イブプロフェン当たり0.2〜0.35モル当量の水酸化アル
カリの量で使用される。
【0029】
本発明により成分c)として、溶液の総重量に関して15〜55重量%の、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、中鎖トリグリセリド、プロピレングリコールエステル、グリセリルエステル、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレンひまし油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ステアリン酸ポリオキシエチレン、又はそれらの混合物から選択される乳化剤が使用される。
【0030】
本発明による好ましいポリオキシエチレンアルキルエーテルは、ポリオキシル2セチルエーテル、ポリオキシル10セチルエーテル、ポリオキシル20セチルエーテル、ポリオキシル4ラウリルエーテル、ポリオキシル23ラウリルエーテル、ポリオキシル2オレイルエーテル、ポリオキシル10オレイルエーテル、ポリオキシル20オレイルエーテル、ポリオキシル2ステアリルエーテル、ポリオキシル10ステアリルエーテル、ポリオキシル20ステアリルエーテル、ポリオキシル100ステアリルエーテル、又はポリオキシル20セトステアリルエーテルである。
【0031】
好ましい中鎖トリグリセリドは、MTC油、Miglyol(登録商標)810 又は Miglyol(
登録商標)812 のようなカプリル酸/カプリン酸トリグリセリドである。特に好ましいのは、Miglyol(登録商標)812 である。
【0032】
好ましいプロピレングリコールエステルは、プロピレングリコールプロピレングリコール・ジココエート、ジステアリン酸プロピレングリコール、ジオクタン酸プロピレングリコール、ジペラルゴン酸プロピレングリコール、ジウンデカン酸プロピレングリコール、モノステアリン酸プロピレングリコール、モノヒドロキシステアリン酸プロピレングリコール、モノラウリン酸プロピレングリコール、モノミリスチン酸プロピレングリコール、又はモノオレイン酸プロピレングリコールである。特に好ましいのは、モノラウリン酸プロピレングリコールである。
【0033】
好ましいグリセリルエステルは、モノオレイン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、又はパルミトステアリン酸グリセリルである。特に好ましいのは、モノオレイン酸グリセリルである。
【0034】
好ましいソルビタンエステルは、ジイソステアリン酸ソルビタン、ジオレイン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、モノイソステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、セスキイソステアリン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、セスキステアリン酸ソルビタン、トリイソステアリン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、又はトリステアリン酸ソルビタンである。特に好ましいのは、トリオレイン酸ソルビタンである。
【0035】
好ましいポリオキシエチレンひまし油誘導体は、ポリオキシル5ひまし油、ポリオキシル9ひまし油、ポリオキシル15ひまし油、ポリオキシル35ひまし油、ポリオキシル40ひまし油、ポリオキシル40水素化ひまし油、又はポリオキシル60水素化ひまし油である。特に好ましいのは、ポリオキシル35ひまし油(Cremophor(登録商標)EL)又は
ポリオキシル40水素化ひまし油(Cremophor(登録商標)RH40)である。
【0036】
好ましいポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルは、ポリソルベート20、ポリソルベート21、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート61、ポリソルベート65、ポリソルベート80、ポリソルベート81、ポリソルベート85、又はポリソルベート120である。特に好ましいのは、ポリソルベート60である。
【0037】
好ましいステアリン酸ポリオキシエチレンは、ポリオキシル6ステアレート、ポリオキシル8ステアレート、ポリオキシル12ステアレート、又はポリオキシル20ステアレートである。
【0038】
乳化剤cの密度は、広い範囲で変動してもよいが、一般に60℃で0.85〜1.1の範囲である。
好ましくは、乳化剤cは、ポリオキシエチレンひまし油誘導体であり、特に好ましいのは、全組成物の40〜55重量%、特に45〜50重量%の量のポリオキシル35ひまし油(Cremophor(登録商標)EL)又はポリオキシル40水素化ひまし油(Cremophor(登録商標)RH40)である。
【0039】
特に好ましい態様では、ポリオキシエチレンひまし油誘導体は、全組成物の10〜40重量%、より好ましくは15〜35重量%の量で、7〜35重量%、好ましくは10〜25重量%、最も好ましくは12〜18重量%の中鎖トリグリセリドと混合して使用され、よって、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリドである Miglyol(登録商標)812 が特に好ましい。
【0040】
成分a)、b)及びc)及び/又は水及び/又は他の成分を含んでなる本発明による溶液は、好ましくは清澄な透明であり、一般に、25℃で500〜5000cps、好ましくは1000〜4000cps、最も好ましくは1200〜2500cpsの範囲の粘度を有する。
【0041】
1つの側面では、本発明は、成分a)〜c)及び/又は水及び/又は他の成分を含んでなる前述の溶液を含有するイブプロフェン含有ハードシェルカプセル剤を提供する。
本ハードシェルカプセル剤は、イブプロフェン配合物及びそのイブプロフェン配合物をカプセル封入するのに使用されるカプセルシェルから構成される系である。そうであるから、充填されるイブプロフェン配合物が、望まれるバイオアベイラビリティ特性をもたらすために重要であるだけでなく、そのシェル組成も、そのイブプロフェン配合物と適合性でなければならないので重要である。潜在的な充填物−シェル相互作用は、物理的及び化学的両面でカプセルの不安定さをもたらし得る。従って、イブプロフェン剤形のためのカプセルを形成するために使用されるシェル組成も、本発明にとって重要である。
【0042】
従って、本発明は、前述のフィルム形成性材料からなるハードシェルカプセルを用いるのである。
好ましくは、本発明のカプセルは、清澄な透明である。
【0043】
液体充填用のハードシェルカプセルは、通常、0.3〜1.0mlの容量を有する。利用可能な容量は、一般に85〜95容量%である。ソフトカプセルと比較して、ハードシェルカプセルの水分吸収量は、通常、ソフトカプセルのものより低い。
【0044】
ハードカプセル封入プロセスでは、通常、カプセルが予備作成されてから空の状態が埋められるが、ソフトカプセルでは、カプセル形成と充填が同時に起こる。
種々の方法が、本発明によるハードシェルカプセルを密閉するのに使用されることができる。好ましい方法は、カプセルシェルについて前述したフィルム形成性材料からなるバンドを使用するバンド巻き、及び水性アルコール溶液を使用する密閉である。
【0045】
ハードシェルカプセルのバンド巻きは、当該技術分野で周知である。カプセルは、まず整えられてから、ゼラチン浴中で循環するホイールの上を1回又は2回通される。ある量のゼラチンがその鋸歯状のホイールによって摘み上げられてカプセルのキャップ部と本体の接合部に塗布される。カプセルは、乾燥の間、個別のキャリヤに維持される。
【0046】
本発明の好ましい態様では、方法が意図され、その方法では、カプセルが充填されてから、少量の水/エタノール混合液をキャップと本体との界面に噴霧することにより封をされた後、それら2つのカプセル部材が一緒に融合されるために温められる。
【0047】
上記方法に従ってカプセル封入を行うための機器は、商業的に入手可能である。
本発明のカプセルは、30〜50%の相対湿度で4週間保存したとき、Cade と Madit,
"Liquid Filling in Hard Gelatin Capsules-Preliminary Steps", Bulletin Technique
Gattefosse, 1996, に従って測定して、いかなるカプセル脆さも示さなかった。
【0048】
本発明の溶液を使用すると、2片のハードシェルカプセルに入ったイブプロフェンの単位剤形であって、その充填溶液がその中に溶解した治療的に有効量のイブプロフェンを含有する単位剤形を製造することが可能である。投与される用量は、用いられる酸性医薬物質、投与様式、望まれる治療、治療される患者の大きさ、年齢及び体重等に依存して変動するであろう。
【0049】
本発明は、次の非限定的実施例によって更に例示される。そこに与えられたパーセンテージは、溶液の総重量に関するものである。
【実施例】
【0050】
実施例1
【0051】
【表1】

【0052】
実施例1において、0.3モル当量のKOHと15%の Miglyol(登録商標)が使用さ
れた。25℃での粘度は1900cpsであり、35℃では836cpsであった。
実施例2
【0053】
【表2】

【0054】
実施例2において、0.3モル当量のKOHと15%の Miglyol(登録商標)が使用さ
れた。粘度は25℃で3140cpであった。
実施例3
実施例1及び2と同じようにして、次の組成に対応するものを製造した。
【0055】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体充填ハードシェルカプセル剤のための薬学的許容性組成物であって、該組成物の総重量に基づいて、
a)35〜75重量%のイブプロフェン、
b)1〜10重量%の水酸化アルカリ、及び
c)7〜35重量%のカプリル酸/カプリン酸トリグリセリドと混合された10〜40重量%の量のポリオキシエチレンひまし油誘導体である乳化剤
を含んでなり、水酸化アルカリbとイブプロフェンaの間のモル比が0.1〜0.5である組成物。
【請求項2】
請求項1の薬学的許容性組成物であって、該乳化剤cが、ポリオキシル35ひまし油又はポリオキシル40水素化ひまし油のカプリル酸/カプリン酸トリグリセリドとの混合物である組成物。
【請求項3】
請求項1の薬学的許容性組成物であって、該ポリオキシエチレンひまし油誘導体が15〜35重量%の量で含有され、そして該カプリル酸/カプリン酸トリグリセリドが12〜18重量%の量で含有される組成物。
【請求項4】
組成物を含有する液体充填薬学的ハードシェルカプセル剤であって、該組成物が、該組成物の総重量に基づいて、
a)35〜75重量%のイブプロフェン、
b)1〜10重量%の水酸化アルカリ、及び
c)7〜35重量%のカプリル酸/カプリン酸トリグリセリドと混合された10〜40重量%の量のポリオキシエチレンひまし油誘導体である乳化剤
を含んでなり、水酸化アルカリbとイブプロフェンaの間のモル比が0.1〜0.5であるハードカプセル剤。
【請求項5】
請求項2の組成物を含有する液体充填薬学的ハードカプセル剤。
【請求項6】
請求項3の組成物を含有する液体充填薬学的ハードカプセル剤。

【公開番号】特開2009−197015(P2009−197015A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−106408(P2009−106408)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【分割の表示】特願2003−574184(P2003−574184)の分割
【原出願日】平成15年2月28日(2003.2.28)
【出願人】(503181266)ワーナー−ランバート カンパニー リミテッド ライアビリティー カンパニー (167)
【Fターム(参考)】