説明

ハーフブリッジ回路

【課題】低出力におけるターンオフ時のスイッチング速度を速められるようにしたハーフブリッジ回路を提供する。
【解決手段】モード1〜3において誘導性負荷Lの通電方向が第1方向(図示左方向)であるとき、MOSトランジスタS1にオフ制御信号を印加するときには、MOSトランジスタS2にオン制御信号を印加するまでの間に、第1方向と同一方向に通電するようにMOSトランジスタS3、S4に制御信号(S3=オン制御信号:S4=オフ制御信号)を一方向通電制御信号として印加する。モード4〜6において誘導性負荷Lの通電方向が第2方向(図示右方向)であるとき、MOSトランジスタS2にオフ制御信号を印加するときには、MOSトランジスタS1にオン制御信号を印加するまでの間に、第2方向と同一方向に通電するようにMOSトランジスタS3、S4に制御信号(S3=オフ制御信号:S4=オン制御信号)を一方向通電制御信号として印加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に油圧ポンプや空調機ファンなどに好適なハーフブリッジ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、MOSトランジスタ(主スイッチに相当)の損失を低減して効率を高めるため、ターンオン時間、ターンオフ時間を短縮することが求められている。ここで、MOSトランジスタのターンオン時間は、ゲート入力容量を高速充電することで短縮できる(例えば、非特許文献1参照)。しかし、ターンオフ時間は、MOSFETのドレイン−ソース間容量を充電する時間に応じて決定され、この特性はMOSトランジスタの素子特性に依存するため、制御回路側で制御することは困難である。
【0003】
図7は、従来のハーフブリッジ回路例を示している。この図7に示す回路では、ターンオフ時間は、主に、MOSトランジスタのドレイン−ソース間容量と、MOSトランジスタを流れるドレイン電流と、駆動回路からMOSトランジスタのゲートまでの間にあるゲート抵抗に応じて決定される。したがって、制御回路CONの制御動作を改良しても、より高速にスイッチング動作させることが困難と考えられる。このため、スイッチング損失の低減効果に限界を生じている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献1】矢島、野口、「インダクタインパルス重畳方式による超高速スイッチング素子の駆動回路」、電気学会全国大会No.4、2008年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特に、低出力においてはドレイン電流が少なく、ターンオフ時のスイッチング速度を向上できていないという課題を生じていた。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、低出力におけるターンオフ時のスイッチング速度を速められるようにしたハーフブリッジ回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1、2に係る発明は、第1および第2電源線間に第1電源および第2電源が直列接続されると共に第1および第2主スイッチが直列接続されており、第1電源および第2電源の共通接続線になる第3電源線と第1および第2主スイッチの共通接続点との間に接続された誘導性負荷を駆動するハーフブリッジ回路を対象としている。この請求項1に係る発明によれば、補助スイッチが第3電源線と第1および第2主スイッチの共通接続点との間に直列接続されると共に誘導性負荷に並列接続され、一方向通電制御信号が与えられると第3電源線および共通接続点間を何れか一方向に通電する。
【0007】
制御手段が、第1ないし第2主スイッチの制御端子にそれぞれ制御信号を印加することで誘導性負荷を駆動するときには、誘導性負荷に通電する方向が第1方向であるとき第1主スイッチにオフ制御信号を印加するときには、第2主スイッチにオン制御信号を印加するまでの間に、第1方向と同一方向に通電するように補助スイッチに一方向通電制御信号を印加する。すると、誘導性負荷の電流値に関わらず、第1主スイッチを第1電源と短絡することができ、第1主スイッチのドレイン−ソース間容量を高速に充電することができる。
【0008】
そして、制御手段は、誘導性負荷に通電する方向が第1方向とは逆方向である第2方向であるときに、第2主スイッチにオフ制御信号を印加するときには、第1主スイッチにオン制御信号を印加するまでの間に、第2方向と同一方向に通電するように補助スイッチに一方向通電制御信号を印加する。すると、第1主スイッチのときと同様に、第2主スイッチのドレイン−ソース間容量を高速に充電することができる。これにより、特に低出力におけるターンオフ時のスイッチング速度を速められる。
【0009】
例えば2つのMOSトランジスタを用いて補助スイッチを構成した場合、双方の補助スイッチをオンしても良いが、この場合、第1ないし第2主スイッチをオンする前に、補助スイッチをオフすると、第1電源もしくは第2電源を短絡させる虞をなくすことができ信頼性を向上できる。
【0010】
そこで請求項2記載の発明によれば、制御手段が、補助スイッチに一方向通電制御信号を印加するときには、一方のMOSトランジスタにオン制御信号を印加することで、一方のMOSトランジスタのチャネルおよび他方向にMOSトランジスタに逆並列接続されたダイオードを通じて一方向に通電するため、誘導性負荷に逆方向通電したときにはダイオードの逆流防止作用により逆流阻止される。このため、補助スイッチを構成するMOSトランジスタのオンオフ制御信号について正確なタイミング制御が要求されなくなり、MOSトランジスタのオンオフ制御の時間的自由度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態において各モードにおける通電経路を示す電流経路図
【図2】電気的構成図
【図3】各スイッチのオンオフタイミングを示すタイミングチャート
【図4】シミュレーション条件
【図5】シミュレーション結果
【図6】出力効率−負荷電力特性図
【図7】従来例を示す図1相当図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について図1ないし図6を参照しながら説明する。図2は本実施形態におけるハーフブリッジ回路の電気的構成を示している。このようなハーフブリッジ回路1は、油圧ポンプや空調機ファンなどに用いる単層モータに適用できるものである。
【0013】
図2に示すように、ハーフブリッジ回路1は、Nチャネル型のMOSトランジスタS1(第1主スイッチ)およびS2(第2主スイッチ)、補助スイッチとなるNチャネル型のMOSトランジスタS3およびS4に、制御回路(制御手段)CONを接続して構成されており、直流電圧源E1、E2の直流電源電圧を得て、制御回路CONから各MOSトランジスタS1〜S4に制御信号を印加することで誘導性負荷Lを駆動制御する。制御回路CONは、例えばマイクロコンピュータなどの電子回路を具備して構成される。
【0014】
第1電源となる直流電圧源E1は例えば商用交流電源を整流、平滑して直流電圧を取得するものであり、例えば約140V直流電圧を出力する。同様に、第2電源となる直流電圧源E2も商用交流電源を整流、平滑して直流電圧を取得するものであり、例えば約140Vの直流電圧を出力する。
【0015】
直流電圧源E1の低電位側ノードは直流電圧源E2の高電位側ノードとノードN3(第3電源線に相当)で共通接続されている。ノードN3の電位を基準として直流電圧源E1の正の直流電圧が第1電源線N1に与えられている。ノードN3の電位を基準として直流電圧源E2の負の直流電圧が第2電源線N2に与えられている。
【0016】
第1電源線N1と第2電源線N2との間には、MOSトランジスタS1(第1主スイッチ)のドレイン−ソース間と、MOSトランジスタS2(第2主スイッチ)のドレイン−ソース間とが直列接続されている。
【0017】
これらのMOSトランジスタS1、S2は、それぞれ、寄生ダイオード(ボディダイオード)D1、D2が逆並列接続されたNチャネル型のMOSFETにより構成されている。
【0018】
MOSトランジスタS1のソースとMOSトランジスタS2のドレインの共通接続ノードN4と、ノードN3との間には誘導性負荷Lが接続されている。また、ノードN3およびN4間には、補助スイッチとなるMOSトランジスタS3およびS4が直列接続されている。これらのMOSトランジスタS3およびS4は誘導性負荷Lに並列接続されている。これらのMOSトランジスタS3,S4は、ソースを共通接続すると共に対称的に接続した形態で用いられている。これらのMOSトランジスタS3、S4は、それぞれ、ボディダイオード(寄生ダイオード)D3,D4が逆並列接続されたNチャネル型のMOSFETにより構成され、何れか一方のみがオンしているときには、これに応じた一方向(図示右方向または図示左方向)にのみ通電可能になる。
【0019】
例えば、MOSトランジスタS3がオン、MOSトランジスタS4がオフしているときには、電流はMOSトランジスタS3およびダイオードD4の順方向を通じて図示左方向のみに通電可能となり、その逆方向の図示右方向には電流は遮断される。
【0020】
また逆に、MOSトランジスタS4がオン、MOSトランジスタS3がオフしているときには、電流はMOSトランジスタS4およびダイオードD3の順方向を通じて図示右方向のみに通電可能となり、その逆方向の図示左方向には電流は遮断される。
【0021】
したがって、これらのMOSトランジスタS3、S4は、2素子合わせて一方向通電制御可能な双方向スイッチとして機能し、当該MOSトランジスタS3、S4に一方向制御信号が与えられるとこれに応じた方向に通電可能となる。
【0022】
なお、本実施形態では、ターンオフ時におけるMOSトランジスタS1のドレインソース間寄生容量Cdsの充電速度を速めることを特徴としているため、図2には本実施形態に係る特徴を理解し易くするため、各MOSトランジスタS1、S2のドレインソース間寄生容量C1、C2をそれぞれ図示している。
【0023】
上記構成の作用、動作について図1乃至図6を参照しながら説明する。図3は、各MOSトランジスタS1〜S4に与えられるオン制御信号、オフ制御信号のタイミングの一例を示している。この図3では、6つのモード(Mode)に分けて各動作期間を定めている。
【0024】
以下、本実施形態の各モードにおける各MOSトランジスタのオンオフ状態を示す。
モード1:S1=オン、S2=オフ、S3=オフ、S4=オン→オフ
モード2:S1=オフ、S2=オフ、S3=オフ→オン、S4=オフ
モード3:S1=オフ、S2=オン、S3=オン、S4=オフ
モード4:S1=オフ、S2=オン、S3=オン→オフ、S4=オフ
モード5:S1=オフ、S2=オフ、S3=オフ、S4=オフ→オン
モード6:S1=オン、S2=オフ、S3=オフ、S4=オン
MOSトランジスタS1のオン期間(モード6、モード1)と、MOSトランジスタS2のオン期間(モード3、モード4)との間には、所定のデッドタイムが設けられている(モード2、モード5参照)。
【0025】
MOSトランジスタS3のオンタイミング(オン制御信号の印加タイミング)は、MOSトランジスタS1のオフタイミング(オフ制御信号の印加タイミング)からMOSトランジスタS2のオンタイミングまでの間であり、所謂デッドタイム期間(モード2)内に行われる。
【0026】
この場合、MOSトランジスタS1のオフタイミング直後にMOSトランジスタS3をオンすることが望ましくMOSトランジスタS1のオフタイミングおよびMOSトランジスタS3のオンタイミングは極力一致させることが望ましい。
【0027】
MOSトランジスタS4のオンタイミングも同様に、MOSトランジスタS2のオフタイミングからMOSトランジスタS1のオンタイミングまでの間であり、所謂デッドタイム期間(モード5)内に行われる。この場合、MOSトランジスタS2のオフタイミング直後にMOSトランジスタS4をオンすることが望ましく、MOSトランジスタS2のオフタイミングおよびMOSトランジスタS4のオンタイミングは極力一致させることが望ましい。また、MOSトランジスタS3のオフ制御は、モード3もしくはモード4の期間中に任意のタイミングで行えば良い。同様に、MOSトランジスタS4のオフ制御は、モード6もしくはモード1の期間中に任意のタイミングで行えば良い。
【0028】
図1は、各モードにおける動作状態を示している。図1に示すように、モード1では、MOSトランジスタS1がオンしているため、直流電流源E1からMOSトランジスタS1を通じて誘導性負荷Lに図示左方向に向けて電流が流れる。ノードN4の電位は、おおよそノードN3の電位に直流電流源E1の直流電圧を加算した電位となる。電流は、図示左方向に向けて誘導性負荷Lに流れるため、MOSトランジスタS3がオフしていればMOSトランジスタS4がオンしてもオフしてもMOSトランジスタS3、S4(およびダイオードD3、D4)を通じた経路には電流が流れない。
【0029】
モード2では、MOSトランジスタS1をオフ制御した直後にMOSトランジスタS3をオン制御するため、直流電流源E1からMOSトランジスタS1の寄生容量C1、MOSトランジスタS3およびダイオードD4を通じて図示左方向に向けて電流が流れる(図1の実線参照)。するとMOSトランジスタS1の寄生容量C1を高速充電できる。
【0030】
図3に示すように、モード5,6,1の間、MOSトランジスタS2はオフするためMOSトランジスタS2のドレインソース間の寄生容量C2はモード5,6,1中に充電されている。モード2では、モード5,6,1中に蓄積された寄生容量C2の電荷がMOSトランジスタS3およびダイオードD4を通じて回収(回生)される。
【0031】
また、モード1で誘導性負荷Lに蓄積されたエネルギーは、モード2において誘導性負荷L−直流電流源E1−寄生容量C1の経路、誘導性負荷L−直流電流源E2−寄生容量C2の経路の両経路で還流する。モード2においてノードN4の電位はおおよそノードN3の電位と同等の電位に急峻に低下する。
【0032】
モード3では、MOSトランジスタS2をオン制御することで、誘導性負荷L−直流電流源E2−MOSトランジスタS2(寄生ダイオードD2)の経路で還流電流が流れ還流モードが維持される。このモード3では寄生ダイオードD2に還流電流が流れる。
【0033】
モード4では、還流モードが終了し、電流が直流電流源E2−誘導性負荷L−MOSトランジスタS2の経路で流れ、誘導性負荷Lには図示右方向に流れる。ノードN4の電位は、おおよそ第2電源線N2の電位と同等の電位となる。電流は、図示右方向に向けて誘導性負荷Lに流れるため、MOSトランジスタS4がオフしていればMOSトランジスタS3がオンしてもオフしてもMOSトランジスタS3、S4(およびダイオードD3、D4)を通じた経路には電流が流れない。
【0034】
モード5では、MOSトランジスタS2をオフ制御した直後にMOSトランジスタS4をオン制御するため、直流電流源E1からダイオードD3−MOSトランジスタS4−MOSトランジスタS2の寄生容量C2の経路で電流が流れることで寄生容量C2を高速充電できる。
【0035】
図3に示すように、モード2,3,4の間、MOSトランジスタS1はオフするためMOSトランジスタS1のドレインソース間の寄生容量C1はこれらのモード2,3,4の間に充電されている。モード5では、モード2,3,4の間に蓄積された寄生容量C1の電荷がMOSトランジスタS4およびダイオードD3を通じて回収(回生)される。したがって、寄生容量C1の蓄積エネルギーは寄生容量C1−直流電流源E1−MOSトランジスタS4の経路で直流電流源E1に回収される。
【0036】
また、モード4で誘導性負荷Lに蓄積されたエネルギーは、モード5において誘導性負荷L−寄生容量C1−直流電流源E1の経路、誘導性負荷L−寄生容量C2−直流電流源E2の経路の2経路で還流する。モード5においてノードN4の電位はおおよそノードN3の電位と同等の電位に急峻に上昇する。
【0037】
モード6では、MOSトランジスタS1をオン制御することで、誘導性負荷L−MOSトランジスタS1(寄生ダイオードD1)−直流電流源E1の経路で還流電流が流れ、還流モードが維持される。このモード6においては寄生ダイオードD1に還流電流が流れる。モード6の還流モードが終了すると、モード1に戻り、モード1〜モード6の6つの動作が繰り返される。
【0038】
すなわち、従来回路(例えば図7)では、前述のモード2の動作がないため、MOSトランジスタS1をオフ制御するタイミングからMOSトランジスタS2をオン制御するタイミングまでの間のデッドタイム期間において、MOSトランジスタS1の寄生容量C1がチャージされにくくターンオフ動作の高速化に限界を生じ、さらに、MOSトランジスタS2の寄生容量C2から電力を回収しにくくなっている。
【0039】
同様に、従来回路ではモード5の動作がないため、MOSトランジスタS2をオフ制御するタイミングからMOSトランジスタS1をオン制御するタイミングまでの間のデッドタイム期間において、MOSトランジスタS2の寄生容量C2がチャージされにくくターンオフ動作の高速化に限界を生じ、さらに、MOSトランジスタS1の寄生容量C1から電力を回収しにくくなっている。
【0040】
本実施形態によれば、モード2の動作によって、MOSトランジスタS1の寄生容量C1をチャージし易くなりターンオフ動作を高速化できる。しかも、MOSトランジスタS2の寄生容量C2から直流電流源E2に電力を回収しているため電力使用効率を高くできる。
【0041】
また、モード5の動作によって、MOSトランジスタS2の寄生容量C2をチャージし易くなるため、ターンオフ時のスイッチング動作を高速化できる。しかも、MOSトランジスタS1の寄生容量C1から直流電流源E1に電力を回収しているため電力使用効率を高くできる。
【0042】
<シミュレーションによる実証>
発明者らはこれらの効果を実証するためシミュレーションを行っている。図4は、シミュレーション条件を示している。図5(a)は、従来回路を適用した場合の比較例となるシミュレーション結果を示し、図5(b)は、本実施形態の構成に図4のシミュレーション条件を適用したときのシミュレーション結果(時間経過波形)を示している。
【0043】
図4に示すように、直流電源源E1、E2の出力直流電圧をそれぞれ140[V]、スイッチング周波数を1[MHz]、デューティを50[%]、誘導性負荷Lの負荷力率を0.8、MOSトランジスタS1およびS2のそれぞれのオン抵抗を88[mΩ]、MOSトランジスタS3およびS4のそれぞれのオン抵抗を110[mΩ]、MOSトランジスタS1、S2のそれぞれのドレインソース間寄生容量C1、C2を何れも810[pF]、MOSトランジスタS3、S4のそれぞれのドレインソース間寄生容量C3,C4を何れも280[pF]、MOSトランジスタS1〜S4の閾値電圧Vfを何れも1[V]、MOSトランジスタS1およびS2間のオンオフタイミングのデッドタイムを50[ns]としている。
【0044】
図5(a)に示す従来回路(図7)のシミュレーション結果では、寄生インダクタンスおよび寄生容量に応じた振動成分が重畳され、さらに負荷電流iLが損失の影響を受けており理想から離れた波形を示している。図5(b)に示す本実施形態のシミュレーション結果では、入力電力を効率的に誘導性負荷Lに伝達する理想に近い波形を示している。図6は、効率(Efficiency)−出力特性を示している。なお、効率は、有効電力/入力電力で定義している。この図6に示すように、特に出力が500[W]未満のときに、ターンオフ時のスイッチング損失の低減作用と電流の回生効果に応じて図1に示す回路の効率を向上できることが確認できた。
【0045】
本実施形態によれば、モード1〜モード3において、誘導性負荷Lの通電方向が第1方向(図示左方向)であるとき、モード2においてMOSトランジスタS1にオフ制御信号を印加するときには、モード3でMOSトランジスタS2にオン制御信号を印加するまでの間に、第1方向と同一方向に通電するようにMOSトランジスタS3、S4に制御信号(S3=オン制御信号:S4=オフ制御信号)を一方向通電制御信号として印加する。すると、誘導性負荷Lに関わらずMOSトランジスタS1のオフ時のドレインソース間寄生容量C1を素早く充電できる。これにより、ターンオフ時のスイッチング速度を高速化できる。
【0046】
モード4〜モード6において、誘導性負荷Lの通電方向が第2方向(図示右方向)であるとき、モード5においてMOSトランジスタS2にオフ制御信号を印加するときには、モード6においてMOSトランジスタS1にオン制御信号を印加するまでの間に、第2方向と同一方向に通電するようにMOSトランジスタS3、S4に制御信号(S3=オフ制御信号:S4=オン制御信号)を一方向通電制御信号として印加する。すると、MOSトランジスタS2のオフ時のドレインソース間寄生容量C2を素早く充電できる。これにより、特にターンオフ時のスイッチング速度を高速化できる。また、スイッチング速度を向上できるためスイッチング損を低減でき、しかも、寄生容量C1、C2の蓄積電力を回生できるため、主に500[W]未満の低出力条件において効率を向上できることがシミュレーション上でも確認できる。
【0047】
本実施形態では、モード2ではS3=オンおよびS4=オフとし、モード5ではS4=オンおよびS3=オフとしているが、これらのモード2、モード5では何れもS3=S4=オンとしても良い。これは、各寄生容量C1、C2を素早く充電できれば良いためであり、何れのMOSトランジスタS3、S4をオン制御したとしても動作にほぼ影響ないことが確認されているためである。しかし、MOSトランジスタS1およびS2をオンする前に、MOSトランジスタS3およびS4をオフすると、第1電源E1もしくは第2電源E2を短絡させる虞をなくすことができ信頼性を向上できる。
【0048】
本実施形態では、モード2では、S3=オン、S4=オフとしているため、電流はMOSトランジスタS3およびダイオードD4を通じて第1方向(図示左方向)に通電され、モード4で誘導性負荷Lに逆方向通電したときにはダイオードD4の逆流防止作用により逆流阻止される。このため、モード3またはモード4内の何れのタイミングでMOSトランジスタS3をオフ制御しても良くなる。したがって、MOSトランジスタS3のオフタイミングを厳密に制御する必要がなくなる。
【0049】
同様に、モード5では、S3=オフ、S4=オンとしているため、電流はMOSトランジスタS4およびダイオードD3を通じて一方向に通電され、モード6で誘導性負荷Lに逆方向通電したときにはダイオードD3の逆流防止作用により逆流阻止される。このため、モード6またはモード1内の何れのタイミングでMOSトランジスタS4をオフ制御しても良い。したがって、MOSトランジスタS4のオフタイミングを厳密に制御する必要がなくなる。これによりタイミング制御の時間的自由度が向上する。
【0050】
このようにして、低出力におけるターンオフ時のスイッチング速度を高くできると共に、ターンオン時にはMOSトランジスタS1,S2のドレインソース間寄生容量C1,C2の蓄積電力を電源側に回生できる。
【0051】
主スイッチ、補助スイッチとしてMOSトランジスタS1〜S4を適用したが、発明ではその他の各種スイッチ(スイッチング素子(IGBTなど))を適用しても良い。
【符号の説明】
【0052】
図面中、1はハーフブリッジ回路、S1、S2はMOSトランジスタ(主スイッチ)、S3、S4はMOSトランジスタ(補助スイッチ)、D1〜D4はダイオード、Lは誘導性負荷、E1、E2は直流電流源、CONは制御回路(制御手段)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電源および第2電源が直列接続される第1および第2電源線間に対し直列接続された第1および第2主スイッチを備え、前記第1電源および前記第2電源の共通接続線になる第3電源線と前記第1および第2主スイッチの共通接続点との間に接続された誘導性負荷を駆動するハーフブリッジ回路であって、
前記第3電源線と前記第1および第2主スイッチの共通接続点との間に直列接続されると共に前記誘導性負荷に並列接続され、一方向通電制御信号が与えられると前記第3電源線および前記共通接続点間を何れか一方向に通電する補助スイッチと、
制御回路と、を備え、
前記制御手段が前記第1ないし第2主スイッチの制御端子にそれぞれ制御信号を印加することで前記誘導性負荷を駆動するときには、
前記誘導性負荷に通電する方向が第1方向であるとき前記第1主スイッチにオフ制御信号を印加するときには、前記第2主スイッチにオン制御信号を印加するまでの間に、前記第1方向と同一方向に通電するように前記補助スイッチに一方向通電制御信号を印加し、
前記誘導性負荷に通電する方向が第1方向とは逆方向である第2方向であるときに前記第2主スイッチにオフ制御信号を印加するときには、前記第1主スイッチにオン制御信号を印加するまでの間に、前記第2方向と同一方向に通電するように前記補助スイッチに一方向通電制御信号を印加することを特徴とするハーフブリッジ回路。
【請求項2】
前記補助スイッチは、ダイオードが逆並列接続されたMOSトランジスタのソースを共通接続すると共に対称接続した2つのMOSトランジスタを備え、
前記制御手段が、前記補助スイッチに一方向通電制御信号を印加するときには、
一方の前記MOSトランジスタにオン制御信号を印加すると共に他方の前記MOSトランジスタにオフ制御信号を印加することで、前記一方のMOSトランジスタおよび前記他方のMOSに逆並列接続されたダイオードを通じて一方向に通電することを特徴とする請求項1記載のハーフブリッジ回路。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−51843(P2013−51843A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188970(P2011−188970)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】