説明

バイオコークス製造装置及び製造方法

【課題】バイオマスを原料とし、石炭コークスの代替燃料として利用可能であるバイオコークスの製造装置及び製造方法を提供する。
【解決手段】光合成を起因とするバイオマス原料を粉砕する粉砕手段と、該粉砕したバイオマス原料中のヘミセルロースが熱分解して接着効果を発現する温度範囲まで加熱する加熱手段と、該加熱した状態で前記バイオマス粉砕物中のリグニンが熱硬化反応を発現する圧力範囲まで加圧して保持する加圧手段と、該加圧状態を保持した後に冷却する冷却手段とを有し、前記加熱手段で加熱している区域の出口端に温度検出手段を備え、該温度検出結果に応じて反応終点を判断し加熱から冷却への移行するタイミングを調節する調節手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光合成を起因とするバイオマスを原料とし、石炭コークスの代替燃料としても利用可能であるバイオコークスの製造装置及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大気中の二酸化炭素濃度の上昇を一因とする地球温暖化現象や、将来的に予測されている化石燃料の枯渇などを考慮して、バイオマスという再生可能でクリーンなエネルギー源が注目されている。
【0003】
一般にバイオマスとは、再生可能な生物由来の有機性資源のうち化石資源を除いたものをいい、このバイオマスを炭化ガス化処理することで熱、電力、炭化物等の有価物の回収が可能となり、また廃棄物としてのバイオマスを処理できるので、環境の浄化にも役立つ。さらに、バイオマスは有機物であるため、燃焼すると二酸化炭素を発生するが、この二酸化炭素は、バイオマスが成長過程において光合成によって大気中から吸収した二酸化炭素に由来するので、大気中の二酸化炭素を増加させていないと考えられる。このことはカーボンニュートラルと呼ばれている。従って、近年大気中の二酸化炭素濃度上昇による地球温度化の進行が問題となっているため、バイオマスの活用が要望されている。
【0004】
一方、昨今の中国における急速な鉄鋼需要により、石炭コークスのコストが急上昇し、日本の鋳物又は鉄鋼メーカーの経営を圧迫している。従って、鋳物製造又は製鉄において、石炭コークスの一部を代替することができる高硬度固形燃料を開発し、燃料コストを削減するとともに、バイオマスのカーボンニュートラルな性質によって地球温暖化現象の一因となっている大気中の二酸化炭素濃度の増加を抑えることが切望されている。
【0005】
そこで、バイオマスを燃料化する方法として、例えば特許文献1にバイオマス水スラリーの製造方法が、また特許文献2には生ゴミ、下水道汚泥等を燃料化する方法が開示されている。
しかしながら、特許文献1及び2に記載の発明は何れもバイオマスを固形燃料化する技術ではなく、石炭コークス代替として利用することはできない。
【0006】
また、バイオマスを固形燃料化する技術として、特許文献3にペレット製造技術が開示されている。
しかしながら、特許文献3に開示された方法では、製造されたペレットを石炭コークス代替として使用するためには、材料の含水量が多いため製造されたペレットが充分な発熱量を有しておらず、また製造されたペレットには空隙が存在するため、ペレット内への空気(酸素)の拡散が生じ、燃焼時間が短く、粉体バイオマス間の結合が無いため、十分な硬度を有していない物である。
従って、石炭コークス代替として使用することは困難である。
【0007】
また、その他のバイオマスを固形燃料化する技術としては、原料を細片化して炭化させる製造技術(特許文献4)、高いエネルギー収率で木炭よりも容積エネルギー密度及び重量エネルギー密度の高い固形燃料を製造する技術(特許文献5)、木質バイオマスエネルギー輸送特性をより高めるための半炭化圧密燃料製造技術(特許文献6)が開示されているが、これら特許文献4〜6の何れの技術によって得られる固形燃料も、石炭コークスに比して充分な発熱量を有しているとはいい難く、更に硬度性能についても充分ではないため、石炭コークス代替として使用することは困難である。
【0008】
【特許文献1】特開2003−129069号公報
【特許文献2】特許第3613567号公報
【特許文献3】特開昭52−101202号公報
【特許文献4】特開2004−43517号公報
【特許文献5】特開2003−213273号公報
【特許文献6】特開2003−206490号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明はかかる従来技術の問題に鑑み、光合成を起因とするバイオマスを原料とし、石炭コークスの代替燃料として利用可能であるバイオコークスの製造装置及び製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため本発明においては、
光合成を起因とするバイオマス原料を粉砕する粉砕手段と、該粉砕したバイオマス原料中のヘミセルロースが熱分解して接着効果を発現する温度範囲まで加熱する加熱手段と、該加熱した状態で前記バイオマス粉砕物中のリグニンが熱硬化反応を発現する圧力範囲まで加圧して保持する加圧手段と、該加圧状態を保持した後に冷却する冷却手段とを有し、前記加熱手段で加熱している区域の出口端に温度検出手段を備え、該温度検出結果に応じて反応終点を判断し加熱から冷却への移行するタイミングを調節する調節手段を備えることを特徴とする。
温度検出手段は特に限定されるものではなく、温度が検知できれば何でもよく、例えば放射温度計、熱電対などが利用できる。
【0011】
このとき、過剰なプロセスエネルギーを必要とせず、バイオコークスを得るためには、加熱手段における温度条件を115〜230℃、加圧手段における圧力条件を8〜25MPaとすることが好ましく、加熱温度条件を180〜230℃、加圧圧力条件を12〜19MPaとすることがさらに好ましい。この加熱温度及び加圧圧力条件を一定時間保持することでバイオコークスを得ることができる。この加熱温度及び加圧圧力の保持は、前記温度検出手段の温度検出結果によって反応終点を判断し、反応終点に達する以降まで維持する。
【0012】
さらに、前記バイオマス粉砕物を投入するピストン型押出機を有し、前記加熱手段及び冷却手段をピストン押出機内の押出上流から順に設け、前記温度検出手段を加熱手段の最下流に設けるとともに、該温度検出結果に応じて反応終点を判断し、ピストン押出機の押出速度を調節する調節手段を備えることを特徴とする。
【0013】
また、容器を貫通する複数の充填部を有する充填容器と、該充填容器の充填部に前記粉砕手段で粉砕したバイオマス原料を充填する充填手段とを有し、該充填容器の複数の充填部に充填されたバイオマス原料を、押し出して、充填部に充填されたバイオマス原料が押し出される方向に設けた前記加熱部及び冷却部へ順に移動させるとともに、前記温度検出手段を加圧加熱手段のバイオマス原料押出方向最下流に設け、前記温度検出手段の検出結果に応じて反応終点を判断し、前記押し出し速度を調節する調節手段を備えることを特徴とする。
【0014】
また、前記加圧手段、加熱手段並びに冷却手段及び冷却後の内容物を排出する排出手段を有する反応容器を複数個設けて円状に配置するとともに、該円状に配置した複数の反応容器を円の外周に沿って回転させる回転手段を有し、前記回転手段によって前記複数個の円形に配置した反応容器を円の外周に沿って回転させながら、反応容器が1周する前に、前記充填、加熱、加圧、冷却及び排出を行うようにし、前記温度検出手段の検出結果に応じて反応終点を判断し、加熱から冷却への移行するタイミングを調節する調節手段を備えることを特徴とする。
【0015】
さらにまた、熱媒及び冷媒の何れも流通させることのできるジャケットを有する反応容器と、前記反応容器に前記粉砕手段によって粉砕したバイオマス原料を充填する充填手段と、該筒状容器内のバイオマス原料を加圧するピストンとを有し、前記ジャケットに熱媒を流通させて加熱し、前記ピストンで加圧した状態を保持する際に、前記ピストンから最も遠くなる筒状容器内端に設けた温度検出手段の温度検出結果より反応終点を判断し、前記ジャケットの流通媒体を熱媒から冷媒へ切り替えるタイミングを調節する調節手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明のバイオコークス製造装置を用いることによって、最高圧縮強度60〜200MPa、発熱量18〜23MJ/kg及びかさ比重1.4程度であり、石炭コークスの代替燃料として利用可能であるバイオコークスを製造することができる。
【0017】
また、前記加熱手段で加熱し、加圧手段で加圧した状態の保持時間が短いと、反応が完全に終了せずに製造されるバイオコークスの強度が不充分なものとなって製品品質に課題が残り、一方前記保持時間が長いと、反応は終了するため製品品質には課題は残らないもののバイオコークスを製造するための生産時間が必要以上に長くなるが、
前記加熱手段で加熱している区域の出口端に温度検出手段を備え、該温度検出結果に応じて反応終点を判断し加熱から冷却への移行するタイミングを調節することで、反応が完全に終了するまで前記加熱・加圧状態を保持できるため品質の安定したバイオコークスを製造することができ、また反応終点を判断して冷却へ移行することで加熱・加圧状態を保持する時間を最小限に押えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明に係るバイオコークス製造装置及び方法において用いる原料のバイオマスは、光合成に起因するバイオマス原料であればよく、例えば木質類、草本類、農作物類、厨芥類等のバイオマスを挙げることができる。
【0019】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【実施例1】
【0020】
図1は、実施例1に係るバイオコークス製造装置の該略図である。
原料のバイオマスを含水率5〜10%に調湿した後、バイオマスを粒子径が3mm以下、好ましくは0.1mm以下になるようにミキサー等の粉砕手段によって粉砕し、受入ホッパ23へ投入する。
バイオマスはそのままの状態では空隙が非常に大きいこと、受熱表面積が小さいため、加熱加工には適さず、均質な加工を行うために受入ホッパ23へ投入する前に粉砕しておくことは重要である。
【0021】
受入ホッパ23に投入されたバイオマス原料は、スクリュー押出機21及び22によって、ピストン20を備えたピストン式押出装置10内に送られる。ピストン式押出装置10内は加熱反応部11、冷却部12及び圧力調整部13の3つの部位から構成されている。
ピストン式押出装置10内ではピストン20によって原料バイオマスを押し出すとともに、圧力調整部13に設けた油圧シリンダ25の圧力をPIC24によって押出ピストン18のトルクをコントロールして8〜25MPa、より好ましくは12〜19MPaとなるように調節している。
【0022】
ピストン式押出装置10に送られたバイオマス原料は、まず加熱反応部11に入る。加熱反応部では115〜230℃、より好ましくは180〜230℃にバイオマス原料を加熱する。本実施例においては加熱反応部11における加熱は、電気ヒータ14を用いて加熱反応部11のシリンダ外表面が115〜230℃(より好ましくは180〜230℃)となるようにTIC16で熱源15を調節しているが、加熱反応部11の外表面を115〜230℃(より好ましくは180〜230℃)に加熱することができればどのような方法でもよく、例えば加熱反応部11のシリンダを115〜230℃(より好ましくは180〜230℃)に温度調整されたオイルバス内を通す、加熱反応部11のシリンダ外周にジャケットを設け、ジャケットに115〜230℃(より好ましくは180〜230℃)に温度調整された熱媒(例えばシリコンオイル、スチーム、高圧加熱水)を流通させる、といった方法でもよい。
つまり、加熱反応部11では、115〜230℃、8〜25MPa(より好ましくは180〜230℃、12〜19MPa)の条件でバイオマスの加熱及び加圧成型が行われている。
【0023】
前記条件で加熱・加圧成型を行うことにより、高硬度かつ高発熱量を有するバイオコークスを得ることができる。これは、115〜230℃(より好ましくは180〜230℃)の温度条件で加熱を行うことにより、バイオマス原料の主成分の1つであるヘミセルロースが熱分解し、ピストン式押出装置10内に発生する過剰水蒸気によりリグニンがその骨格を保持したまま低温で反応し、圧密効果と相乗的に作用することによって、より硬度が増すことに起因している。
【0024】
さらに本発明に特徴的な構成として、加熱反応部11出口端に赤外放射温度計19を設け、加熱反応部11出口端であり且つシリンダ中心部の温度を測定できるようにし、この位置の温度結果に応じてピストン20の押し出し速度を調整することができるようにしている。このことで、加熱反応部11の滞留時間、すなわち加熱及び加圧された状態の保持時間の最適化が可能となり、生産性の向上に繋がるとともに、安定した品質の製品ができる。
【0025】
加熱反応部11で加熱・加圧成型を行った後、前記ピストン20により加熱反応部11で製造されたバイオコークスを押し出し、冷却部12に移動させる。冷却部12では40〜50℃以下にバイオマス原料を冷却する。冷却部12における冷却は、本実施例においては、送風機17を用いて風冷しているが、冷却部12の外表面を40〜50℃以下に冷却することができればどのような方法でもよく、例えば冷却部12のシリンダ外周にジャケットを設け、ジャケットに40〜50℃に温度調整された冷媒を流通させる、といった方法でもよい。冷却温度はこの温度よりも冷却温度が高いとヘミセルロースによる接着効果が低下し、硬度の低下の原因となる。
また、冷却時間は30〜60分程度かけることが好ましい。急速に冷却すると製造されたバイオコークス表面にひび割れ等が生じ、硬度の低下の原因となるからである。
【0026】
冷却部12で冷却を行った後、前記ピストン20により冷却部12で冷却されたバイオコークスは圧力調整部13を経て、ピストン式押出装置10の出口端に設けたカッター26で必要な大きさに切断されてバイオコークス製品となる。
【実施例2】
【0027】
図2は、実施例2に係るバイオコークス製造装置の該略図である。
バイオマスを含水率5〜10%に調湿した後、バイオマスを粒子径が3mm以下、好ましくは0.1mm以下になるようにミキサー等の粉砕手段によって粉砕し、受入ホッパ33へ投入する。
バイオマスはそのままの状態では空隙が非常に大きいこと、受熱表面積が小さいため、加熱加工には適さず、均質な加工を行うために受入ホッパ33へ投入する前に粉砕しておくことは重要である。
【0028】
受入ホッパ33に投入されたバイオマス原料は、スクリュー押出機33aによって、原料充填カートリッジ31の2つの充填部31a及び31bに充填される。本実施例においては原料充填カートリッジ31は2つの充填部を有しているが、1つの原料充填カートリッジが有する充填部の個数は特に限定されない。原料を充填された原料充填カートリッジ31は2つのマルチピストン32及び34を有するマルチ油圧システムへセットされる。
マルチ油圧システム内は2つのマルチピストン32及び34のうちマルチピストン34を固定し、マルチピストン32を移動させることによって、マルチピストン32に設けたシリンダ32a、32bでそれぞれ前記原料充填カートリッジ31の2つの充填部31a、31bに充填された原料バイオマスを押し出すことができるように構成されている。そして、入口側のマルチピストン32の圧力を8〜25MPa、より好ましくは12〜19MPaとなるようにPIC43で調整し、さらにマルチ油圧システム中のバイオマス原料を押し出す際には出口側のマルチピストン34と入口側のマルチピストンの差圧が0.1〜1.0MPaであり、入口側のマルチピストン32の圧力よりも出口側のマルチピストンの圧力が低くなるように出口側のマルチピストンの圧力をPIC42及びΔPIC44で調節し、マルチ油圧システム中のバイオマス原料を押し出さずに滞留させるときには出口側のマルチピストン34と入口側のマルチピストン32の差圧が0となるように出口側のマルチピストンの圧力をPIC42及びΔPIC44で調節する。
【0029】
原料カートリッジ31の充填部31a及び31bに充填されたバイオマス原料は、それぞれ前記シリンダ32a及び32bで押し出され、まずオイルバス35内の通路に入る。オイルバス35では115〜230℃、より好ましくは180〜230℃にバイオマス原料を加熱する。オイルバス35内のオイルの温度の調整は、オイルバス35のオイルを連続的にオイル加温槽36へ抜き出し、オイル加温槽内の温度が115〜230℃(より好ましくは180〜230℃)となるようにTIC37によってオイル加温槽36内を加温するヒータ39の熱源38を調整して行っている。本実施例においてはオイルバスを用いて115〜230℃(より好ましくは180〜230℃)となるように調節しているが、115〜230℃(より好ましくは180〜230℃)に加熱することができればどのような方法でもよい。
つまり、オイルバス35内の通路では、115〜230℃、8〜25MPa(より好ましくは180〜230℃、12〜19MPa)の条件でバイオマスの加熱及び加圧成型が行われている。
【0030】
前記条件で加熱・加圧成型を行うことにより、高硬度かつ高発熱量を有するバイオコークスを得ることができる。これは、115〜230℃(より好ましくは180〜230℃)の温度条件で加熱を行うことにより、バイオマス原料の主成分の1つであるヘミセルロースが熱分解し、通路内に発生する過剰水蒸気によりリグニンがその骨格を保持したまま低温で反応し、圧密効果と相乗的に作用することによって、より硬度が増すことに起因している。
【0031】
さらに本発明に特徴的な構成として、オイルバス35部分の出口端に温度検出端を設け、オイルバス35部出口端であり且つバイオマス通路中心部の温度を測定できるようにし、この位置の温度結果に応じて出口側のマルチピストン34と入口側のマルチピストン32の差圧を調整して押し出し速度を調整することで、オイルバス35部分の滞留時間を最適化することが可能となり、生産性の向上に繋がるとともに、安定した品質の製品ができる。
【0032】
オイルバス35内の通路で加熱・加圧成型を行った後、前記ピストン32及び34により製造されたバイオコークスを押し出し、送風機41により冷却される部分に移動させる。送風機41で40〜50℃以下にバイオマス原料を冷却する。本実施例においては、送風機41を用いて風冷しているが、40〜50℃以下に冷却することができればどのような方法でもよい。冷却温度はこの温度よりも冷却温度が高いとヘミセルロースによる接着効果が低下し、硬度の低下の原因となる。
また、冷却時間は30〜60分程度かけることが好ましい。急速に冷却すると製造されたバイオコークス表面にひび割れ等が生じ、硬度の低下の原因となるからである。
【0033】
送風機41で冷却された後、前記ピストン32及び34により押し出されてバイオコークス製品となる。
【実施例3】
【0034】
図3は、実施例3に係るバイオコークス製造装置の該略図である。
バイオマスを含水率5〜10%に調湿した後、バイオマスを粒子径が3mm以下、好ましくは0.1mm以下になるようにミキサー等の粉砕手段によって粉砕し、受入ホッパ53へ投入する。また、バイオマスの種類によっては乾燥・粉砕後に調湿する物もある。
バイオマスはそのままの状態では空隙が非常に大きいこと、受熱表面積が小さいため、加熱加工には適さず、均質な加工を行うために受入ホッパ53へ投入する前に粉砕しておくことは重要である。
【0035】
受入ホッパ53に投入されたバイオマスは、圧縮成型機52によってかさ密度0.9〜1.0の円柱状のペレットに成型される。
【0036】
前記円柱状ペレットに成型されたバイオマス原料は、マジックハンド54によって圧縮反応機51に円形状に配置された50個の反応容器70のうちの1つに投入される。
図5は前記反応容器70周辺の側面図である。前記円柱状ペレットに成型されたバイオマスは、反応容器70内に投入され、上部油圧シリンダ71によって8〜25MPa、よりこのましくは12〜19MPaに加圧・圧縮される。反応容器70及び上部油圧シリンダ71は、前記8〜25MPa(より好ましくは12〜19MPa)の加圧状態を保ったまま回転し、加熱反応工程56に移動する。加熱反応工程56における加熱は、反応容器70の外部に設けたジャケット79に媒体供給管81aより熱媒を連続的に供給し、媒体排出管82aより熱媒を連続的に排出することによって115℃〜230℃、より好ましくは180〜230℃に加熱する。ここで、ジャケット79からの熱を反応容器内部へ伝達しやすくするため、上部シリンダ71の下部及び反応容器70下部に例えば銀、銅等の熱伝導率の高い金属板77、78を設けることが好ましい。
つまり、加熱反応工程56では、115〜230℃、8〜25MPa(より好ましくは180〜230℃、12〜19MPa)の条件でバイオマスの加熱及び加圧成型が行われている。
【0037】
前記条件で加熱・加圧成型を行うことにより、高硬度かつ高発熱量を有するバイオコークスを得ることができる。これは、115〜230℃(より好ましくは180〜230℃)の温度条件で加熱を行うことにより、バイオマス原料の主成分の1つであるヘミセルロースが熱分解し、反応容器70内に発生する過剰水蒸気によりリグニンがその骨格を保持したまま低温で反応し、圧密効果と相乗的に作用することによって、より硬度が増すことに起因している。
【0038】
さらに本発明に特徴的な構成として、反応容器下端に温度検出端83を設け、反応容器下端であり且つシリンダ中心部の温度を測定できるようにし、この位置の温度結果に応じて反応容器の回転速度を最適化することにより、加熱反応部56に反応容器70が位置している時間の最適化が可能となり、生産性の向上に繋がる。
【0039】
加熱反応工程56で加熱・加圧成型を行った後、反応容器は前記8〜25MPa(より好ましくは12〜19MPa)の加圧状態を保ったままさらに回転し、冷却工程57に移動する。なお、加熱反応工程56と冷却工程57の間に加熱又は冷却の何れも行わない断熱部を設けてもよい。冷却工程57における冷却は、前記加熱反応工程56と同様に、反応容器70の外部に設けたジャケット79に媒体供給管81aより冷媒を連続的に供給し、媒体排出管82aより冷媒を連続的に排出することによって40℃〜50℃以下に冷却する。この温度よりも冷却温度が高いとヘミセルロースによる接着効果が低下し、硬度の低下の原因となる。
また、冷却時間は30〜60分程度かけることが好ましい。急速に冷却すると製造されたバイオコークス表面にひび割れ等が生じ、硬度の低下の原因となるからである。
【0040】
冷却工程57で冷却を行った後、反応容器70はさらに回転し、製品排出コンベア55の位置へ移動し、反応容器70の下部を開け、上部油圧シリンダ71によって反応容器70の下部に位置する製品排出コンベア55へ製造された円柱ペレット状のバイオコークスを押し出して排出し、製品排出コンベア55によって荷造り・出荷等の後工程へ排出される。
【実施例4】
【0041】
図4は、実施例4に係るバイオコークス製造装置の該略図である。
バイオマスを含水率5〜10%に調湿した後、バイオマスを粒子径が3mm以下、好ましくは0.1mm以下になるようにミキサー等の粉砕手段によって粉砕し、受入ホッパ61へ投入する。
バイオマスはそのままの状態では空隙が非常に大きいこと、受熱表面積が小さいため、加熱加工には適さず、均質な加工を行うために受入ホッパ61へ投入する前に粉砕しておくことは重要である。
【0042】
受入ホッパ61に投入されたバイオマス原料は、搬送路64上を移動し、原料投入口62より反応容器70へ投入される。搬送路64はバイオマス原料が外部に露出しないように密閉系のパイプ状コンベアとすることが好ましい。
反応容器については前記実施例3と同じものを用いるので、図5を用いて説明する。
反応容器70へバイオマス原料を投入する場合、まず上部ゲート76bを開放する。まず上部ゲート76bを開け、搬送路64から原料投入口62を通してバイオマス粉砕物を原料投入容器73に、バイオマス粉砕物の位置を検出する位置検出センサ74の位置まで投入する。その後上部ゲート76bを閉じ、下部ゲート76を開放することで一定量のバイオマス粉砕物を反応容器に充填することができる。
【0043】
反応容器70内に投入されたバイオマス原料は、上部油圧シリンダ71によって8〜25MPa(より好ましくは12〜19MPa)に加圧・圧縮される。反応容器70及び上部油圧シリンダ71は、前記8〜25MPa(より好ましくは12〜19MPa)の加圧状態を保ったまま、反応容器70の外部に設けたジャケット79に媒体供給管81aより熱媒を連続的に供給し、媒体排出管82aより熱媒を連続的に排出することによって115℃〜230℃(より好ましくは180〜230℃)に加熱する。ここで、ジャケット79からの熱を反応容器内部へ伝達しやすくするため、上部シリンダ71の下部及び反応容器70下部に例えば銀、銅等の熱伝導率の高い金属板77、78を設けることが好ましい。
つまり、加熱反応工程56では、115〜230℃、8〜25MPa(より好ましくは180〜230℃、12〜19MPa)の条件でバイオマスの加熱及び加圧成型が行われている。
【0044】
前記条件で加熱・加圧成型を行うことにより、高硬度かつ高発熱量を有するバイオコークスを得ることができる。これは、115〜230℃(より好ましくは180〜230℃)の温度条件で加熱を行うことにより、バイオマス原料の主成分の1つであるヘミセルロースが熱分解し、反応容器70内に発生する過剰水蒸気によりリグニンがその骨格を保持したまま低温で反応し、圧密効果と相乗的に作用することによって、より硬度が増すことに起因している。
【0045】
さらに本発明に特徴的な構成として、反応容器下端に温度検出端83を設け、反応容器下端であり且つシリンダ中心部の温度を測定できるようにし、この位置の温度結果に応じて反応容器の回転速度を最適化することにより、加熱時間の最適化が可能となり、生産性の向上に繋がる。
【0046】
加熱・加圧成型を行った後、反応容器は前記8〜25MPa(より好ましくは12〜19MPa)の加圧状態を保ったまま前記ジャケット内の熱媒を全て冷媒に入れ替えて40℃〜50℃以下に冷却する。この温度よりも冷却温度が高いとヘミセルロースによる接着効果が低下し、硬度の低下の原因となる。
また、冷却時間は30〜60分程度かけることが好ましい。急速に冷却すると製造されたバイオコークス表面にひび割れ等が生じ、硬度の低下の原因となるからである。
【0047】
冷却を行った後、反応容器70の下部を開け、上部油圧シリンダ71によって反応容器70の下部に円柱ペレット状のバイオコークスを押し出して排出し、製品となる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明により、石炭コークス代替燃料となる安定した品質のバイオコークスを短時間で製造する装置及びその方法として好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】実施例1に係るバイオコークス製造装置の該略図である。
【図2】実施例2に係るバイオコークス製造装置の該略図である。
【図3】実施例3に係るバイオコークス製造装置の該略図である。
【図4】実施例4に係るバイオコークス製造装置の該略図である。
【図5】実施例3及び4に係る反応容器70周辺の側面図である
【符号の説明】
【0050】
10 ピストン式押出装置
11 加熱反応部
12 冷却部
13 圧力調整部
19 赤外放射温度計
31 原料充填カートリッジ
31a 充填部
33a スクリュー押出機
32、34 マルチピストン
35 オイルバス
41 送風機
56 加熱反応部
57 冷却部
70 反応容器
71 上部油圧シリンダ
79 ジャケット
83 温度検出端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光合成を起因とするバイオマス原料を粉砕する粉砕手段と、
該粉砕したバイオマス原料中のヘミセルロースが熱分解して接着効果を発現する温度範囲まで加熱する加熱手段と、
該加熱した状態で前記バイオマス粉砕物中のリグニンが熱硬化反応を発現する圧力範囲まで加圧して保持する加圧手段と、
該加圧状態を保持した後に冷却する冷却手段とを有し、
前記加熱手段で加熱している区域の出口端に温度検出手段を備え、該温度検出結果に応じて反応終点を判断し加熱から冷却への移行するタイミングを調節する調節手段を備えることを特徴とするバイオコークス製造装置。
【請求項2】
前記バイオマス粉砕物を投入するピストン型押出機を有し、前記加熱手段及び冷却手段をピストン押出機内の押出上流から順に設け、前記温度検出手段を加熱手段の最下流に設けるとともに、該温度検出結果に応じて反応終点を判断し、ピストン押出機の押出速度を調節する調節手段を備えることを特徴とする請求項1記載のバイオコークス製造装置。
【請求項3】
容器を貫通する複数の充填部を有する充填容器と、該充填容器の充填部に前記粉砕手段で粉砕したバイオマス原料を充填する充填手段とを有し、
該充填容器の複数の充填部に充填されたバイオマス原料を、押し出して、充填部に充填されたバイオマス原料が押し出される方向に設けた前記加熱部及び冷却部へ順に移動させるとともに、前記温度検出手段を加圧加熱手段のバイオマス原料押出方向最下流に設け、前記温度検出手段の検出結果に応じて反応終点を判断し、前記押し出し速度を調節する調節手段を備えることを特徴とする請求項1記載のバイオコークス製造装置。
【請求項4】
前記加圧手段、加熱手段並びに冷却手段及び冷却後の内容物を排出する排出手段を有する反応容器を複数個設けて円状に配置するとともに、該円状に配置した複数の反応容器を円の外周に沿って回転させる回転手段を有し、
前記回転手段によって前記複数個の円形に配置した反応容器を円の外周に沿って回転させながら、反応容器が1周する前に、前記充填、加熱、加圧、冷却及び排出を行うようにし、前記温度検出手段の検出結果に応じて反応終点を判断し、加熱から冷却への移行するタイミングを調節する調節手段を備えることを特徴とする請求項1記載のバイオコークス製造装置。
【請求項5】
熱媒及び冷媒の何れも流通させることのできるジャケットを有する反応容器と、前記反応容器に前記粉砕手段によって粉砕したバイオマス原料を充填する充填手段と、該筒状容器内のバイオマス原料を加圧するピストンとを有し、
前記ジャケットに熱媒を流通させて加熱し、前記ピストンで加圧した状態を保持する際に、前記ピストンから最も遠くなる筒状容器内端に設けた温度検出手段の温度検出結果より反応終点を判断し、前記ジャケットの流通媒体を熱媒から冷媒へ切り替えるタイミングを調節する調節手段を備えることを特徴とする請求項1記載のバイオコークス製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−274107(P2008−274107A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−119267(P2007−119267)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(501370370)三菱重工環境エンジニアリング株式会社 (175)
【出願人】(000125347)学校法人近畿大学 (389)
【Fターム(参考)】