説明

バイオマスの糖化促進剤、糖化処理剤およびそれを用いた糖化処理方法

【課題】 セルラーゼによるバイオマスの糖化処理を促進する、新たな糖化促進剤、糖化処理剤ならびにそれを用いたバイオマスの糖化処理方法の提供を目的とする。
【解決手段】 xynR遺伝子およびfae遺伝子の少なくとも一方を発現する菌体の培養上清を、セルラーゼによるバイオマスの糖化処理を促進する糖化促進剤として使用する。前記培養上清を含む糖化促進剤の共存下で、セルラーゼを用いて前記バイオマスを処理すれば、セルラーゼ単独での糖化処理よりも、前記バイオマスに含まれるセルロースおよびヘミセルロース含有量を低減し、糖化を促進することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマスの糖化促進剤、糖化処理剤およびそれを用いた糖化処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石油資源の減少に伴い、近年、バイオマスを糖化処理して、エタノール等を製造し、新たなエネルギー源を供給することが盛んに試みられている。しかしながら、デンプンを含む、トウモロコシ等の植物の実等は、食料としての利用が重要であることから、非食用である、トウモロコシの皮等の廃棄物や木材等を、セルロース系バイオマスとして有効利用することが重要視されている。
【0003】
木材等のバイオマスは、セルロース、ヘミセルロースおよびリグニンを含むため、通常は、酸、アルカリまたはセルラーゼ等の糖化酵素を用いて加水分解を行い、ポリマーからオリゴ糖へ、さらには単糖へ変換した後、微生物等を用いた発酵等により、前記糖からエタノール等の燃料アルコールまたは有機酸等の化成品原料への変換が行われる。近年、前述のような、酸およびアルカリによる糖化は、環境汚染を伴うことから、酵素を用いた糖化が、世界的に要求されている。しかしながら、主力酵素となるセルラーゼ剤による単一処理のみでは、セルロース・ヘミセルロースの糖化効率を上げるには、多量の酵素が必要となる。例えば、糖化効率を90%から99%に上げる場合、一般に、糖化効率90%時に必要な酵素量を1とすると、糖化効率99%時には10の酵素量が必要と言われている。特に、セルロース系バイオマスは、セルロース分子同士の結合によって粘性が高くなるが、僅か10%程度の糖化効率の向上によって劇的に粘性が下がり、その結果、発酵工程等の負担を大幅に減少できると言われている。そこで、セルラーゼと他の酵素との併用による、糖化効率の向上およびセルラーゼ量の低減が試みられているが、未だ十分な効率が得られていない(特許文献1、非特許文献1)。このことは、糖化処理コストを上昇させ、セルロース系バイオマスから、エタノール等の燃料アルコールおよび有機酸等の化成品原料の生産を実用化するにあったての障害となっている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Kumagaiら、Characteristic of Hydrothermal Decomposition and Saccharification of Various Lignocellulosic Biomass and Enzymatic Saccarification of the Obtained Hydrothermal-Residue. Journal of the Japan Institute of Energy, 86, 712-717(2007)
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表平11−500465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、セルラーゼによるバイオマスの糖化処理を促進する、新たな糖化促進剤、糖化処理剤ならびにそれを用いたバイオマスの糖化処理方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の第1の糖化促進剤は、セルラーゼによるバイオマスの糖化処理を促進する糖化促進剤であって、xynR遺伝子およびfae遺伝子の少なくとも一方を発現する菌体の培養上清を含むことを特徴とする。
【0008】
本発明の第1の糖化処理剤は、バイオマスの糖化処理に使用するための糖化処理剤であって、セルラーゼと、本発明の第1の糖化促進剤とを含むことを特徴とする。
【0009】
本発明の第1の糖化処理方法は、バイオマスの糖化処理方法であって、本発明の第1の糖化促進剤の共存下、前記バイオマスをセルラーゼで処理することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の第2の糖化促進剤は、セルラーゼによるバイオマスの糖化処理を促進する糖化促進剤であって、配列番号8〜14の少なくともいずれかで表わされるアミノ酸配列を含むタンパク質を含むことを特徴とする。
【0011】
本発明の第2の糖化処理剤は、バイオマスの糖化処理に使用するための糖化処理剤であって、セルラーゼと、本発明の第2の糖化促進剤とを含むことを特徴とする。
【0012】
本発明の第2の糖化処理方法は、バイオマスの糖化処理方法であって、本発明の第2の糖化促進剤の共存下、前記バイオマスをセルラーゼで処理することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、セルラーゼ単独での糖化処理よりも、優れた効率でバイオマスの糖化を行うことができる。このため、木材やその廃棄物等をバイオマスとして有効利用し、エネルギー資源および化成品等を提供できることから、極めて有用といえる。また、本発明によれば、例えば、糖化処理に用いるセルラーゼ量を低減できるため、発酵等の後工程で重要となる、バイオマスの糖化処理のコストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の実施例において使用した発現ベクターの構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1の形態>
本発明の第1の糖化促進剤は、前述のように、セルラーゼによるバイオマスの糖化処理を促進する糖化促進剤であって、xynR遺伝子およびfae遺伝子の少なくとも一方を発現する菌体の培養上清を含むことを特徴とする。
【0016】
前記菌体は、Aspergillus属であることが好ましく、より好ましくは、Aspergillus oryzaeである。
【0017】
前記xynR遺伝子は、キシラナーゼ遺伝子の発現を正に制御する転写制御因子の遺伝子であり、xlnRともいう。前記xynR遺伝子の由来は、特に制限されないが、例えば、Aspergillus属由来が好ましく、中でも、Aspergillus oryzae由来が好ましい。
【0018】
前記fae遺伝子は、フェルラ酸エステラーゼ遺伝子である。前記fae遺伝子は、例えば、faeA遺伝子、faeB遺伝子およびfaeC遺伝子等のサブファミリーを有している。前記fae遺伝子としては、例えば、faeA遺伝子、faeB遺伝子およびfaeC遺伝子のいずれでもよく、中でも、faeA遺伝子が好ましい。前記fae遺伝子の由来は、特に制限されないが、例えば、Aspergillus属由来が好ましく、中でも、Aspergillus oryzae由来が好ましい。
【0019】
本発明において、前記菌体は、例えば、xynR遺伝子およびfae遺伝子のいずれか一方を発現してもよいし、両方を発現してもよい。
【0020】
前記菌体は、例えば、xynR遺伝子およびfae遺伝子の少なくとも一方を有する発現ベクターが導入された形質転換体であることが好ましい。このように、前記発現ベクターを宿主に導入した形質転換体によれば、例えば、xynR遺伝子およびfae遺伝子の少なくとも一方を過剰発現することが可能である。本発明において、以下、xynR遺伝子およびfae遺伝子を挿入するベクターを、発現ベクターといい、前記発現ベクターに、xynR遺伝子およびfae遺伝子の少なくとも一方を挿入したものを、組換え発現ベクターという。
【0021】
前記発現ベクターに挿入する遺伝子は、例えば、クローニングした天然の核酸でもよいし、遺伝子増幅法により増幅させた核酸でもよいし、合成した核酸であってもよい。また、前記核酸は、例えば、DNA、RNAがあげられ、この他に、例えば、PNA等の人工核酸であってもよい。
【0022】
前記宿主は、特に限定されず、例えば、形質転換が可能な生細胞があげられる。前記生細胞としては、例えば、菌類、昆虫、高等動物等の真核生物、真正細菌や古細菌等の原核生物があげられる。前記菌類としては、例えば、糸状菌や酵母等の真菌類があげられる。前記糸状菌としては、特に限定されないが、例えば、Aspergillus属、Rhizopus属、Trichoderma属、Penicillium属、Mucor属、Phanerochaetae属Acremonium属、Humicola属、Fusarium属、Neurospora属等があげられる。中でも、例えば、糸状菌が好ましく、特にAspergillus属が好ましい。Aspergillus属としては、特に制限されないが、例えば、Aspergillus oryzaeAspergillus nigerAspergillus awamoriAspergillus kawachiiAspergillus usamiiAspergillus sojaeAspergillus nidulansAspergillus glaucusAspergillus aculeatusAspergillus terreus等があげられ、より好ましくはAspergillus oryzaeである。前記生細胞としては、この他に、例えば、酵母細胞があげられ、具体例としては、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、カンジダ(Candida)属酵母を含むメタノール資化性酵母等があげられる。前記真正細菌としては、例えば、大腸菌、Bacillus属、Brevibacillus属、Lactobacillus属等があげられる。前記昆虫としては、例えば、Sf9細胞等の昆虫培養細胞等、カイコ等の虫体等があげられる。前記高等動物としては、例えば、ヒトを含む脊椎動物等由来の培養細胞等、脊椎動物等の個体等があげられる。
【0023】
前記発現ベクターは、前記xynR遺伝子およびfae遺伝子の少なくとも一方を挿入できればよく、その他の構成等は何ら制限されない。前記組換え発現ベクターは、例えば、従来公知のベクターを発現ベクターとして、これに、前述のxynR遺伝子およびfae遺伝子の少なくとも一方を挿入することにより製造できる。前記発現ベクターは、特に限定されず、例えば、前記組換え発現ベクターを導入する宿主の種類、導入方法等に応じて適宜決定できる。前記発現ベクターとしては、例えば、プラスミドベクター等の非ウイルスベクター、ウイルスベクター等があげられる。前記非ウイルスベクターとしては、例えば、pISI(Appl. Microbiol. Biotechnol. 81, 711−719, (2008).)、YIp5、YEp24、pBR322、pUC12、pUC18/19、pUC118/119、pcDNA3.1(Invitrogen社)、pZeoSV(Invitrogen社)、pBK−CMV(Stratagene社)、pCAGGS(Gene 108, 193−200, (1991).)、pBluescriptプラスミドベクター(Stratagene社)、pHSG298/299、pHSG396/8等の市販のプラスミドベクター等があげられる。中でも、宿主が糸状菌の場合は、例えば、pISI(Appl. Microbiol. Biotechnol. 81, 711−719, (2008).)、pUC系プラスミドベクター(例えば、pUC18/19等)等の宿主当りのプラスミドのコピー数が高いものが好ましい。また、前記宿主が酵母の場合は、例えば、YIp5、YEp24等が好ましい。また、前記宿主が大腸菌の場合は、例えば、pBR322、pUC12、pUC18/19、pUC118/119等が好ましい。また、前記宿主が高等動物の場合は、例えば、pcDNA3.1(Invitrogen社)、pZeoSV(Invitrogen社)、pBK−CMV(Stratagene社)、pCAGGS(Gene 108, 193−200, (1991).)等が好ましい。前記ウイルスベクターとしては、例えば、バキュロウイルスベクター、レトロウイルスベクター、ヒト免疫不全症ウイルス(HIV)等のレンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター(AAVベクター;adeno associated virus)、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス、ポリオウイルス、シンビスウイルス、センダイウイルス、シミアンウイルス−40(SV−40)等のDNAウイルスやRNAウイルス等があげられる。中でも、前記宿主が昆虫の場合は、例えば、バキュロウイルスの一種であるAcNPV(Autographa californica nuclear polyhedrosis virus)ベクター等が好ましい。これらのベクターには、例えば、従来公知の方法に基づいて、挿入遺伝子を発現可能なように挿入できる。
【0024】
前記発現ベクターは、さらに、前記挿入した遺伝子の発現を調節する調節配列を含んでもよい。前記調節配列としては、例えば、プロモーター、ターミネーター、エンハンサー配列、ポリアデニル化シグナル、複製起点配列(ori)等があげられる。これらの調節配列は、例えば、ベクター、宿主、目的タンパク質等の種類に応じて、適宜設定できる。また、前記調節配列には、例えば、所望の宿主で調節配列として機能しうる配列が含まれ、改変を加えた改良型の調節配列等も含まれる。前記プロモーターとしては、特に制限されないが、例えば、宿主が糸状菌の場合、sodM、amyA、amyB、amyC、glaA、agdA、glaB、TEF1、xynF1 tannase、No.8AN、gpdA、pgkA、enoA、melO、catA、catB、Histone H2A、small v−ATPase、cruciform binding protein、peptidyl prolyl cis−trans isomerase、actin遺伝子を制御するプロモーターおよびこれらの改変プロモーター等があげられる。前記宿主が酵母の場合は、例えば、PHO5、PGK、GAP、ADH1、GAL、SED1等があげられ、前記宿主が高等動物の場合は、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、SV−40、単純ヘルペスウイルス(HSV)等由来のプロモーター、筋βアクチンプロモーター等の構成プロモーター、チミジンキナーゼプロモーター等の組織特異的プロモーター、成長ホルモン調節性プロモーター、亜鉛誘導性メタロチオネインプロモーター等の誘導性プロモーターや調節性プロモーターがあげられる。前記ターミネーターとしては、特に制限されないが、例えば、glaBターミネーター(Gene 207, 127−134, (1998).)、amyAターミネーター(Gene 84, 319−327, (1989).)等があげられる。前記調節配列は、例えば、従来公知の方法に基づいて、前記遺伝子の発現を機能的に調節できる部位に配置または結合させればよい。
【0025】
また、前記発現ベクターは、例えば、栄養要求性マーカー、薬剤耐性マーカー、蛍光タンパク質マーカー、酵素マーカー、細胞表面レセプターマーカー等の選択マーカーをコードする配列(選択マーカー遺伝子)を有してもよい。これらの選択マーカーは、例えば、ベクター、宿主等の種類に応じて、適宜設定できる。前記選択マーカー遺伝子としては、例えば、niaD、argB、sC、leuA、ptrA、pyrG、amdS、オーレオバシジン耐性遺伝子、ベノミル耐性遺伝子、フレオマイシン耐性遺伝子、シクロヘキシミド耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、G418耐性遺伝子、クロラムフェニコール耐性遺伝子、ブラストサイジン耐性遺伝子、ブレオマイシン耐性遺伝子、ピューロマイシン耐性遺伝子およびハイグロマイシンB耐性遺伝子、GFP(Green Fluorescent Protein)、EGFP(Enhanced GFP)、ECFP、EYFP等の変異型GFP、RFP(Red Fluorescent Protein)、ルシフェラーゼ遺伝子、β−ガラクトシダーゼ遺伝子、β−グルクロニダーゼ等があげられる。宿主が糸状菌の場合、前記選択マーカー遺伝子は、例えば、niaD、argB、sC、leuA、ptrA、pyrG、amdS、オーレオバシジン耐性遺伝子、ベノミル耐性遺伝子、ハイグロマイシンB耐性遺伝子およびカルボキシン耐性遺伝子等が好ましく、より好ましくは、niaDである。また、前記宿主が酵母の場合、前記選択マーカー遺伝子は、例えば、シクロヘキシミド耐性遺伝子、G418耐性遺伝子、ハイグロマイシンB耐性遺伝子、クロラムフェニコール耐性遺伝子、ブラストサイジン耐性遺伝子、フレオマイシン耐性遺伝子等が好ましい。前記宿主が大腸菌の場合、前記選択マーカー遺伝子は、例えば、アンピシリン耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、クロラムフェニコール耐性遺伝子等が好ましい。前記宿主が高等動物の場合、前記選択マーカー遺伝子は、例えば、G418耐性遺伝子、ハイグロマイシンB耐性遺伝子、ブラストサイジン耐性遺伝子、ピューロマイシン耐性遺伝子、ブレオマイシン耐性遺伝子等が好ましい。
【0026】
前記組換え発現ベクターの宿主細胞への導入方法は、特に制限されず、例えば、発現ベクター、宿主等の種類に応じて、適宜設定できる。前記導入方法の具体例としては、例えば、プロトプラスト法、酢酸リチウム法、Hanahan法、エレクトロポレーション法、ウイルスベクター等を用いた感染導入法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法、エレクトロポレーション法、超音波核酸導入法、遺伝子銃による導入法、DEAE−デキストラン法等があげられる。中でも、宿主が糸状菌の場合は、例えば、プロトプラスト法、エレクトロポレーション法、ウイルスベクターを用いた感染導入法等があげられるが、プロトプラスト法等が好ましい。また、前記宿主が酵母である場合は、例えば、酢酸リチウム法、プロトプラスト法、エレクトロポレーション法等が好ましい。前記宿主が大腸菌である場合、例えば、Hanahan法、エレクトロポレーション法等が好ましい。前記宿主が昆虫である場合、例えば、前述のAcNPVベクター等を用いた感染導入法等が好ましい。前記宿主が高等動物細胞である場合、例えば、リン酸カルシウム法、リポフェクション法、エレクトロポレーション法、超音波核酸導入法、遺伝子銃による導入法、DEAE−デキストラン法、前述のようなウイルスベクター等を用いた感染導入法等が好ましい。
【0027】
本発明の第1の糖化促進剤において、前記培養上清の製造方法は、特に制限されず、例えば、xynR遺伝子およびfae遺伝子のいずれか一方を発現する菌体の培養により得られる。前記培養上清は、例えば、菌体の培養液そのものでもよいし、前記培養液から培養菌体および不溶物を除去した液体画分であってもよい。前記液体画分は、例えば、前記培養液を遠心処理して得られる上清でもよいし、前記培養液をろ過して得られるろ液であってもよい。また、前記液体画分は、例えば、前記不溶物等を除去した前記ろ液または上清等の精製画分であってもよい。前記精製方法は、例えば、限外ろ過膜による濃縮、硫安沈殿等の塩析、透析、各種クロマトグラフィー等を適宜組み合わせて実施できる。
【0028】
前記菌体の培養条件は、特に制限されず、前記菌体の種類に応じて適宜決定できる。また、前記菌体が、前記組換え発現ベクターを導入した形質転換体の場合は、例えば、宿主および発現ベクターの種類に応じて適宜決定できる。具体例として、前記菌体がAspergillus属の場合、培地は、例えば、GPY培地、DPY培地、Czapek−Dox培地、コーンスティープリカー(CSL)を含む培地およびこれらの濃縮培地が好ましい。前記培地の成分としては、例えば、グルコース、シュクロース、ゲンチオビオース、可溶性デンプン、グリセリン、デキストリン、糖蜜、有機酸等の炭素源、更に硫酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、あるいは、ペプトン、酵母エキス、コーンスティープリカー、カゼイン加水分解物、ふすま、肉エキス等の窒素源、更にカリウム塩、マグネシウム塩、ナトリウム塩、リン酸塩、マンガン塩、鉄塩、亜鉛塩等の無機塩等があげられる。前記培地は、例えば、使用する形質転換体の生育を促進するために、ビタミン、アミノ酸等を含んでもよい。前記培地のpHは、例えば、約3〜8であり、約5〜7が好ましい。培養温度は、例えば、約10〜50℃であり、好ましくは、約25〜40℃であり、培養期間は、例えば、1〜15日間であり、好ましくは、3〜7日間である。前記培養は、例えば、好気的条件下で行うことが好ましい。培養法としては、例えば、振盪培養法、ジャー・ファーメンターによる好気的深部培養法が利用できる。
【0029】
なお、本発明の第1の糖化促進剤は、前記培養上清を含んでいればよく、その他の構成は、特に制限されず、例えば、さらに、他の成分を含んでもよい。前記他の成分としては、特に制限されない。また、前記培養上清の形態は、制限されず、例えば、液体であっても、固体であってもよい。固体の場合、例えば、培養上清を乾燥させた、前記培養上清成分を含む乾燥物があげられる。本発明の第1の糖化促進剤の形態も、特に制限されず、例えば、液体であっても、粉末または錠剤等の固体であってもよい。
【0030】
つぎに、本発明の第1の糖化処理剤は、前述のように、バイオマスの糖化処理に使用するための糖化処理剤であって、セルラーゼと、前記本発明の第1の糖化促進剤とを含むことを特徴とする。本発明の第1の糖化処理剤は、前記セルラーゼと、前記第1の糖化促進剤とを含んでいればよく、その他の構成は、何ら制限されない。本発明の第1の糖化処理剤は、例えば、さらに、他の成分を含んでもよい。前記他の成分としては、例えば、糖類、糖アルコール類、有機酸、界面活性剤等の酵素安定剤等があげられる。前記糖類としては、例えば、D−グルコース、D−ガラクトース、D−マンノース、D−ソルボース、D−タロース、D−フルクトース、D−リボース、D−キシロース等の単糖類、ラクトース、サッカロース、マルトース、トレハロース、イソマルトース、セロビオース等の二糖類、マルトトリオース、マルトテトラオース、マルトペンタオース、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン等の三糖以上のオリゴ糖、イヌリン、アミロース、アミロペクチン、デキストリン、プルラン等の水溶性の中性多糖等があげられる。前記糖アルコール類としては、例えば、グルシトール、マンニトール、イノシトール、キシリトール等があげられる。前記有機酸としては、例えば、グルコン酸、クエン酸、マレイン酸、コハク酸、リンゴ酸、乳酸、酢酸およびこれらのナトリウム塩またはカリウム塩等があげられる。前記界面活性剤としては、例えば、オクチルグリコシド、オクチルチオグリコシド等のアルキルグリコシド、コール酸、デオキシコール酸、リトコール酸等のコール酸類、コール酸類のナトリウム塩またはカリウム塩、ポリエチレングリコールエーテル類、ポリオキシエチレングリコールエーテル類、ラウロイルザルコシン、ラウロイルザルコシン塩類、ラウリル硫酸、ラウリル硫酸塩等があげられる。
【0031】
つぎに、本発明の第1の糖化処理方法は、バイオマスの糖化処理方法であって、前記本発明の第1の糖化促進剤の共存下、前記バイオマスをセルラーゼで処理することを特徴とする。本発明は、前記第1の糖化促進剤の共存下で、セルラーゼ処理することが特徴であり、その他の構成や条件は、何ら制限されない。
【0032】
前記セルラーゼとしては、特に制限されず、市販の各種セルラーゼが使用できる。中でも、トリコデルマ(Trichoderma)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、アクレモニウム(Acremonium)属、バチルス(Bacillus)属由来のセルラーゼが好ましく、より好ましくは、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)由来のセルラーゼである。
【0033】
前記バイオマスとは、一般に、化石燃料を除く、生物由来の有機資源を意味する。前記バイオマスとしては、例えば、リグニン、セルロースおよびヘミセルロースを含むリグノセルロース系バイオマスが使用でき、具体例としては、例えば、木材、稲わら、スイッチグラス、トウモロコシ、さとうきび、竹およびパルプ、ならびに、これらの廃棄物(例えば、コーンストーバー、バガス等)等の草本系および木質系のバイオマス原料があげられる。
【0034】
また、前記バイオマスは、例えば、前記バイオマス原料を前処理して得られた前処理済みバイオマスであってもよい。前記前処理の方法としては、例えば、前記バイオマス原料を加圧熱水で処理する熱水処理があげられる。前記熱水処理の条件は、特に制限されないが、例えば、Kumagaiらの文献(Characteristic of Hydrothermal Decomposition and Saccharification of Various Lignocellulosic Biomass and Enzymatic Saccarification of the Obtained Hydrothermal-Residue. Journal of the Japan Institute of Energy, 86, 712-717(2007))、特開2009−183806号公報、特開2009−124973号公報、特開2006−136263号公報等の方法により行うことができる。
【0035】
前記前処理済みバイオマスは、例えば、リグニン含有量5〜25w/v%、ホロセルロース含有量75〜95w/v%である。また、前記ホロセルロースにおけるセルロースとヘミセルロースの含有量は、例えば、ホロセルロースを100w/v%として、セルロース含有量60〜90w/v%、ヘミセルロース含有量10〜40w/v%である。
【0036】
つぎに、本発明の第1の糖化処理方法について、一例をあげて説明する。
【0037】
まず、前記バイオマス原料を加圧熱水で処理した前記前処理済みバイオマスと、前記第1の糖化促進剤と、セルラーゼとを含む反応液を準備する。前記反応液は、例えば、溶媒に、前記前処理済みバイオマスと、前記第1の糖化促進剤と、前記セルラーゼとを添加して調製することが好ましい。前記溶媒としては、例えば、水および緩衝液等があげられ、塩、酸、アルカリおよびイオン性物質等を添加してもよい。前記反応液において、各成分の添加量は、特に制限されない。具体例として、前記前処理済みバイオマス(乾燥重量)は、例えば、1〜50w/v%であり、好ましくは10〜30w/v%である。前記反応液において、前記第1の糖化促進剤の含有量は、例えば、前記培養上清が0.01〜50v/v%であり、好ましくは0.1〜10v/v%である。前記反応液において、前記セルラーゼの含有量は、例えば、0.01〜50FPU/mLであり、好ましくは0.1〜10FPU/mLである。
【0038】
そして、前記反応液において、セルラーゼによる触媒反応を行う。前記反応条件は、特に制限されず、例えば、セルラーゼの種類に応じて適宜決定できる。具体例として、反応温度は、例えば、15〜90℃であり、好ましくは25〜60℃であり、反応時間は、例えば、0.5〜120時間であり、好ましくは8〜72時間である。
【0039】
このような糖化処理によって、例えば、第1の糖化促進剤を併用せずにセルラーゼのみで処理を行った場合の非可溶化ホロセルロース率を、例えば、さらに、その30〜70%減の値にまで低下できる。
【0040】
<第2の形態>
本発明の第2の糖化促進剤は、前述のように、セルラーゼによるバイオマスの糖化処理を促進する糖化促進剤であって、配列番号8〜14の少なくともいずれかで表わされるアミノ酸配列を含むタンパク質を含むことを特徴とする。なお、本発明の第2の糖化促進剤は、特に示さない限り、前記本発明の第1の糖化促進剤と同様である。
【0041】
本発明の第2の糖化促進剤は、例えば、前記配列番号8〜14で表わされるアミノ酸配列を含むタンパク質のうち、いずれか一種類を含んでもよいし、二種類以上を含んでもよい。配列番号8および9で表わされるアミノ酸配列を含むタンパク質は、それぞれペクチナーゼであり、配列番号10〜14で表わされるアミノ酸配列を含むタンパク質は、それぞれヘミセルラーゼであり、キシラナーゼ活性を有する。
【0042】
二種類以上の前記タンパク質を併用する場合、その組み合わせは、特に制限されないが、例えば、配列番号8で表わされるアミノ酸配列を含むタンパク質と、配列番号9で表わされるアミノ酸配列を含むタンパク質とを併用することが好ましい。また、前記配列番号10〜14で表わされるアミノ酸配列を含むタンパク質のうち、いずれか二種類以上を併用してもよく、好ましくは、全てを併用することが好ましい。前記配列番号8および配列番号9で表わされるアミノ酸配列を含むタンパク質の少なくとも一種類と、前記配列番号10〜14で表わされるアミノ酸配列を含むタンパク質の少なくとも一種類とを併用してもよい。
【0043】
前記各配列番号で表わされるアミノ酸配列を含むタンパク質は、例えば、前記アミノ酸配列をコドンにおきかえた塩基配列からなるDNAを準備し、in vivoまたはin vitroにおける転写および翻訳によって、生成することもできる。また、以下に示すように、例えば、各種菌体から、単離することもできる。具体的には、配列番号9で表わされるアミノ酸配列からなるタンパク質は、例えば、Aspergillus niger strain DMS1957から、配列番号9で表わされるアミノ酸配列からなるタンパク質は、Aspergillus niger strain SCTCC 400264から、配列番号10〜14で表わされる各アミノ酸配列からなるタンパク質は、Aspergillus niger CBS 513.88から、それぞれ単離できる。
【0044】
また、市販品を使用することもでき、前記配列番号8および配列番号9の少なくとも一方で表わされるアミノ酸配列を含むタンパク質としては、例えば、商品名ペクチナーゼGアマノ(天野エンザイム社)が使用でき、前記配列番号10〜14の少なくともいずれかで表わされるアミノ酸配列を含むタンパク質としては、例えば、商品名ヘミセルラーゼ「アマノ」90(天野エンザイム社)を使用できる。
【0045】
つぎに、本発明の第2の糖化処理剤は、前述のように、バイオマスの糖化処理に使用するための糖化処理剤であって、セルラーゼと、前記本発明の第2の糖化促進剤とを含むことを特徴とする。なお、本発明の第2の糖化処理剤は、特に示さない限り、前記本発明の第1の糖化処理剤と同様である。
【0046】
本発明の第2の糖化処理剤は、前記セルラーゼと、前記第2の糖化促進剤とを含んでいればよく、その他の構成は、何ら制限されない。本発明の第2の糖化処理剤は、例えば、さらに、他の成分を含んでもよく、糖類、糖アルコール類、有機酸、界面活性剤等の酵素安定剤があげられる。前記糖類としては、例えば、D−グルコース、D−ガラクトース、D−マンノース、D−ソルボース、D−タロース、D−フルクトース、D−リボース、D−キシロース等の単糖類、ラクトース、サッカロース、マルトース、トレハロース、イソマルトース、セロビオース等の二糖類、マルトトリオース、マルトテトラオース、マルトペンタオース、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン等の三糖以上のオリゴ糖、イヌリン、アミロース、アミロペクチン、デキストリン、プルラン等の水溶性の中性多糖等があげられる。前記糖アルコール類としては、例えば、グルシトール、マンニトール、イノシトール、キシリトール等があげられる。前記有機酸としては、例えば、グルコン酸、クエン酸、マレイン酸、コハク酸、リンゴ酸、乳酸、酢酸、これらのナトリウム塩またはカリウム塩等があげられる。前記界面活性剤としては、例えば、オクチルグリコシド、オクチルチオグリコシド等のアルキルグリコシド、コール酸、デオキシコール酸、リトコール酸等のコール酸類、コール酸類のナトリウム塩またはカリウム塩、ポリエチレングリコールエーテル類、ポリオキシエチレングリコールエーテル類、ラウロイルザルコシン、ラウロイルザルコシン塩類、ラウリル硫酸、ラウリル硫酸塩等があげられる。
【0047】
つぎに、本発明の第2の糖化処理方法は、バイオマスの糖化処理方法であって、前記本発明の第2の糖化促進剤の共存下、前記バイオマスをセルラーゼで処理することを特徴とする。なお、本発明の第2の糖化処理方法は、特に示さない限り、前記本発明の第1の糖化処理方法と同様である。本発明は、前記第2の糖化促進剤の共存下で、セルラーゼ処理することが特徴であり、その他の構成や条件は、何ら制限されない。
【0048】
つぎに、本発明の第2の糖化処理方法について、一例をあげて説明する。
【0049】
まず、前記バイオマス原料を加圧熱水で処理した前記前処理済みバイオマスと、前記第2の糖化促進剤と、セルラーゼとを含む反応液を準備する。前記反応液は、例えば、溶媒に、前記バイオマスと、前記第2の糖化促進剤と、前記セルラーゼとを添加して調製することが好ましい、前記溶媒としては、例えば、水および緩衝液等があげられ、塩、酸、アルカリおよびイオン性物質等を添加してもよい。前記反応液において、各成分の添加量は、特に制限されないが、前記前処理済みバイオマス(乾燥重量)は、例えば、1〜50w/v%であり、好ましくは、10〜30w/v%である。前記第2の糖化促進剤がヘミセルラーゼを含む場合、前記反応液における前記ヘミセルラーゼの含有量は、例えば、キシラナーゼ分解活性(天野法)として、1〜10,000U/mLであり、好ましくは、10〜3,000U/mLである。また、前記第2の糖化促進剤がペクチナーゼを含む場合、前記反応液における前記ペクチナーゼの含有量は、例えば、Endo-PG活性(天野法)として、0.01〜1000U/mLであり、好ましくは、0.1〜30U/mLである。また、前記反応液における前記セルラーゼの含有量は、例えば、0.01〜50FPU/mLであり、好ましくは0.1〜20FPU/mLである。
【0050】
そして、前記反応液において、セルラーゼによる触媒反応を行う。前記反応条件は、特に制限されず、例えば、セルラーゼ、ヘミセルラーゼまたはペクチナーゼの種類に応じて適宜決定できる。具体例として、反応温度は、例えば、15〜90℃であり、好ましくは25〜60℃であり、反応時間は、例えば、0.5〜180時間であり、好ましくは8〜72時間である。
【0051】
このような糖化処理によって、例えば、前記第2の糖化促進剤を併用せずにセルラーゼのみで処理を行った場合よりも、非可溶化ホロセルロース率を、例えば、その40〜80%減の値にまで低下できる。
【実施例】
【0052】
つぎに、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は、下記実施例により制限されない。市販の試薬は、特に示さない限り、それらのプロトコールに基づいて使用した。
【0053】
組換え発現ベクターの構築
pUC118プラスミドを基本骨格として、目的遺伝子を過剰発現する発現ベクター(pLHG)を作製した。この発現ベクターの構造の概略を図1に示す。前記図1に示すように、前記発現ベクターは、プロモーターとして、Aspergillus oryzae由来のヘモリシンプロモーター(hly promoter、配列番号1)、ターミネーターとして、Aspergillus oryzae由来のglaBターミネーター(glaB terminator、配列番号2)、選択マーカーとして、leuA遺伝子配列(leuA、配列番号3)を有する構造とした。そして、前記発現ベクターにおける、前記プロモーターとターミネーターとの間に、後述する目的遺伝子を、リガーゼ処理により平滑末端で挿入し、組み換え発現ベクターを作製した。
【0054】
宿主株の形質転換および培養
宿主株は、ロイシン要求性変異株であるβ−イソプロピルリンゴ酸デヒドロゲナーゼ遺伝子欠損のAspergillus oryzae leu−5(FERM P−20079)を使用した。
【0055】
プロトプラスト法により、前記ロイシン要求性変異株に前記組換え発現ベクターを導入し、1.5w/v%の寒天を含む下記組成の培地Aで形質転換株を選択した。選択した形質転換株の胞子を0.01%Tween(登録商標)80水溶液に懸濁した。そして、下記組成の培地B、培地Cまたは培地D100mLを入れた坂口フラスコ(500ml)に、前記懸濁液を1.0×10spores/mLとなるように無菌的に植菌した。前記坂口フラスコを、150回/分、振幅50mm、30℃の条件で24〜240時間インキュベートして、培養を行った。この培養液を遠心して、上清を回収し、これを、実施例のサンプルとして使用した。また、前記目的遺伝子を挿入していない前記発現ベクターを使用して、同様に、上清を回収した。これを比較例のサンプルとして使用した。
【0056】
(培地A)
1.5w/v% 精製寒天(ナカライテスク)
2w/v% グルコース
0.3w/v% NaNO
0.1w/v% KHPO
0.05w/v% MgSO・7H
0.2w/v% KCl
0.001w/v% FeCl
0.8mol/L NaCl
(培地B)
2w/v% グルコース
1w/v% ポリペプトン
0.5w/v% イーストエキス
(培地C)
2w/v% Birch由来キシラン
(商品名 Xylan from Birchwood、シグマ社)
1w/v% ポリペプトン
(培地D)
2w/v% Oat由来キシラン
(商品名 Xylan from oat spelts、シグマ社)
1w/v% ポリペプトン
0.5w/v% イーストエキス
【0057】
前処理済みバイオマス
バイオマス原料1(兵庫県産の稲ワラ)、バイオマス原料2(沖縄産のバガス)、バイオマス原料3(北海道産のコーンストーバーおよびアメリカ産等のスイッチグラス等のソフトバイオマス)に、それぞれ加圧熱水処理を施した、リグノセルロースを主成分とする前処理済みバイオマス1、前処理済みバイオマス2および前処理済みバイオマス3を使用した。前記前処理済みバイオマス1は、ホロセルロース含有量15.4w/v%、リグニン含有量5.1w/v%であり、前記ホロセルロースは、セルロース含有量82.9w/v%、ヘミセルロース含有量17.1w/v%であった。前記前処理済みバイオマス2は、ホロセルロース含有量19.1w/v%、リグニン含有量8.2w/v%であり、前記ホロセルロースは、セルロース含有量73.1w/v%、ヘミセルロース含有量26.9w/v%であった。前記前処理済みバイオマス3は、ホロセルロース含有量17.3w/v%、リグニン含有量6.8w/v%であり、前記ホロセルロースは、セルロース含有量78.3w/v%、ヘミセルロース含有量21.7w/v%であった。
【0058】
[実施例1]
前記目的遺伝子として配列番号4に示すAspergillus oryzaeのxynR遺伝子を挿入した発現ベクターを使用して、前述のように、実施例のサンプルを調製した。また、前記xynR遺伝子を挿入していない前記発現ベクターを用いて、前述のように、比較例のサンプルを調製した。前記各サンプルを用いて、下記組成の反応液(約1000μL)を調製した。下記組成において、セルラーゼは、市販のセルラーゼ(商品名セルラーゼGC220、ジェネンコア社、160FPU/mL)、xynR(+)(Birch)は、Birch由来キシランを含む前記培地Cを使用して得られたxyR遺伝子を発現させた実施例サンプル、xynR(+)(Oat)は、Oat由来キシランを含む前記培地Dを使用して得られた、xynR遺伝子を発現させた実施例サンプル、xynR(−)(Birch)は、Birch由来キシランを含む前記培地Cを使用して得られた、xyR遺伝子を発現させていない比較例サンプル、xynR(−)(Oat)は、Oat由来キシランを含む前記培地Dを使用して得られたxynR遺伝子を発現させていない比較例サンプル、AcONaは、酢酸ナトリウム水溶液である(以下、同様)。そして、前記反応液について、37℃、72時間、500回転/minの条件で攪拌を行った後、前記各反応液について、ワイズ法によりホロセルロース(ホモセルロースおよびヘミセルロースの合計)量を測定した。セルラーゼ無添加およびサンプル無添加の比較例1−1のホロセルロース量を100%として、各反応液について、ホロセルロースの残存率を算出した。これらの結果を、下記表1にあわせて示す。
【0059】
【表1】

【0060】
前記表1に示すように、セルラーゼ単独の比較例1−2(残存率34.8%)と比べ、セルラーゼと、xynR遺伝子を過剰発現させた実施例サンプルxynR(+)(Birch)またはxynR(+)(Oat)とを併用した実施例1−1および1−2では、それぞれ、残存率を、32.5%および25.3%にまで減少できた。このように、xynR遺伝子を発現させた培養液上清のサンプルによって、糖化が促進されたことから、これらのサンプルは、糖化促進剤として有用であることがわかった。また、バイオマスの可溶化においては、エタノール発酵および蒸留工程を考慮し、ホロセルロース残存率を30%以下とすることが重要視されている。このため、特に、実施例1−2で使用したサンプルxynR(+)(Oat)、すなわち、Oat由来キシラン存在下でxynR遺伝子を過剰反応させた糖化促進剤は、セルラーゼとの併用によって、ホロセルロース残存率を30%以下に実現できることから、セルラーゼとの併用効果に極めて優れると言える。また、前記糖化促進剤xynR(+)(Oat)を用いた実施例1−2は、10倍量のセルラーゼを使用した比較例1−3と同等の残存率を示した。最終製品がバイオエタノールの場合、一般に、セルラーゼは、バイオマス可溶化におけるコストの約50%を占めると言われる。このため、前記糖化促進剤xynR(+)(Oat)を用いれば、セルラーゼの使用量を10分の1に低減できることから、計算上、生産コストを55%まで低減可能である。さらに、セルラーゼ単独でありxynR未発現の比較例1−4(残存率38.1%)および比較例1−5(39.5%)と比べても、前記実施例1−1および1−2は、それぞれ、残存率を低減できた。このことから、xynR遺伝子を過剰発現させた培養上清によって、糖化が促進されていることが明らかとなった。
【0061】
[実施例2]
本例では、前処理済みバイオマスとして、前記前処理済みバイオマス2を用いた以外は、実施例1と同様にして、ホロセルロース残存率を算出した。この結果を、下記表2にあわせて示す。
【0062】
【表2】

【0063】
前記表2に示すように、セルラーゼ単独の比較例2−2(残存率34.2%)と比べて、セルラーゼと、xynR遺伝子を過剰発現させた実施例サンプルxynR(+)(Birch)またはxynR(+)(Oat)とを併用した実施例2−1および2−2では、それぞれ、残存率を、30%以下、すなわち、26.1%および29.4%にまで減少できた。また、実施例2−2で使用したサンプルxynR(+)(Birch)、すなわち、Birch由来キシラン存在下でxynR遺伝子を過剰反応させた糖化促進剤は、セルラーゼとの併用によって、10倍量のセルラーゼを使用した比較例2−3と同等の残存率を示した。さらに、セルラーゼ単独でありxynR未発現の比較例2−4(残存率33.1%)および比較例2−5(32.5%)と比べても、前記実施例2−1および2−2は、それぞれ、残存率を低減できた。このことから、xynR遺伝子を過剰発現させた培養上清によって、糖化が促進されていることが明らかとなった。
【0064】
[実施例3]
本例では、前処理済みバイオマスとして、前記前処理済みバイオマス2を用いた以外は、実施例1と同様にして、ホロセルロース残存率を算出した。この結果を、下記表3にあわせて示す。
【0065】
【表3】

【0066】
前記表3に示すように、セルラーゼ単独の比較例3−2(残存率32.1%)と比べて、セルラーゼと、xynR遺伝子を過剰発現させた実施例サンプルxynR(+)(Birch)またはxynR(+)(Oat)とを併用した実施例3−1および3−2では、それぞれ、残存率を、30%以下、すなわち、29.1%および25.4%にまで減少できた。また、特に、実施例3−2で使用したサンプルxynR(+)(Oat)は、セルラーゼとの併用によって、10倍量のセルラーゼを使用した比較例3−3と同等の残存率を示した。さらに、セルラーゼ単独でありxynR未発現の比較例3−4(残存率32.5%)および比較例3−5(33.1%)と比べても、前記実施例3−1および3−2は、それぞれ、残存率を低減できた。このことから、xynR遺伝子を過剰発現させた培養上清によって、糖化が促進されていることが明らかとなった。
【0067】
[実施例4]
本例では、下記表4の反応液(約150μL)を用い、前記反応液の攪拌速度を2500回転/minとした以外は、実施例1と同様にして、ホロセルロース残存率を算出した。この結果を、下記表4にあわせて示す。
【0068】
【表4】

【0069】
前記表4に示すように、セルラーゼ単独の比較例4−2(残存率34.1%)と比べて、セルラーゼと、xynR遺伝子を過剰発現させた実施例サンプルxynR(+)(Birch)またはxynR(+)(Oat)とを併用した実施例4−1および4−2では、それぞれ、残存率を、30%以下、すなわち、29.3%および28.4%にまで減少できた。また、特に、実施例4−2のサンプルxynR(+)(Oat)は、セルラーゼとの併用によって、10倍量のセルラーゼを使用した比較例4−3と同等の残存率を示した。さらに、セルラーゼ単独でありxynR未発現の比較例4−4(残存率34.5%)および比較例4−5(35.1%)と比べても、前記実施例4−1および4−2は、それぞれ、残存率を低減できた。このことから、xynR遺伝子を過剰発現させた培養上清によって、糖化が促進されていることが明らかとなった。
【0070】
[実施例5]
前記目的遺伝子として、Aspergillus oryzaeのフェルラ酸エステラーゼ遺伝子(fae遺伝子)を挿入した発現ベクターを準備した。前記fae遺伝子は、配列番号5に示すfaeA遺伝子、配列番号6に示すfaeB遺伝子および配列番号7に示すfaeC遺伝子の完全長配列を挿入した。そして、これらの発現ベクターを使用し、培地として前記培地Bを使用して、前述のようにして、実施例のサンプルを調製した。また、前記fae遺伝子を挿入していない前記発現ベクターを用いて、前述のように、比較例のサンプルを調製した。前記各サンプルを用いて、下記組成の反応液(約1000μL)を調製した。下記組成において、セルラーゼは、市販のセルラーゼ(商品名セルラーゼGC220、ジェネンコア社、160FPU/mL)、faeA(+)、faeB(+)およびfaeC(+)は、それぞれ、faeA遺伝子、faeB遺伝子およびfaeCを発現させた実施例サンプル、fae(−)は、いずれのfae遺伝子も発現させていない比較例サンプル、AcONaは、酢酸ナトリウム水溶液である(以下、同様)。そして、前記反応液について、前記実施例1と同様にして、ホロセルロース量を測定した。セルラーゼおよびサンプル無添加の比較例5−1のホロセルロース量を100%として、各反応液について、ホロセルロースの残存率を算出した。この結果を、下記表5にあわせて示す。
【0071】
【表5】

【0072】
前記表5に示すように、セルラーゼ単独の比較例5−2(残存率34.2%)と比べて、セルラーゼと、各種fae遺伝子を過剰発現させた実施例サンプルfaeA(+)またはfaeC(+)とを併用した実施例5−1および5−2では、それぞれ、残存率を、29.2%、34.4%および31.6%にまで減少できた。このように、fae遺伝子を発現させた培養液上清のサンプルによって、糖化が促進されたことから、これらのサンプルは、糖化促進剤として有用であることがわかった。また、前述のように、バイオマスの可溶化においては、ホロセルロース残存率を30%以下とすることが重要視されている。このため、特に、実施例5−1で使用したサンプルfaeA(+)、すなわち、faeA遺伝子を過剰反応させた糖化促進剤は、セルラーゼとの併用によって、ホロセルロース残存率を30%以下に実現できることから、セルラーゼとの併用効果に極めて優れると言える。また、前記糖化促進剤faeA(+)を用いた実施例5−1は、3倍量のセルラーゼを使用した比較例5−3と同等の残存率を示した。最終製品がバイオエタノールの場合、前述のように、セルラーゼは、バイオマス可溶化におけるコストの約50%を占めると言われる。このため、前記糖化促進剤faeA(+)を用いれば、セルラーゼの使用量を3分の1に低減できることから、計算上、生産コストを66.7%まで低減可能である。さらに、セルラーゼ単独でありfae未発現の比較例5−4(残存率34.5%)と比べても、前記実施例5−1および5−2は、それぞれ、残存率を低減できた。このことから、fae遺伝子を過剰発現させた培養上清によって、糖化が促進されていることが明らかとなった。
【0073】
[実施例6]
本例では、前処理済みバイオマスとして、前記前処理済みバイオマス2を用いた以外は、実施例5と同様にして、ホロセルロース残存率を算出した。この結果を、下記表6にあわせて示す。
【0074】
【表6】

【0075】
前記表6に示すように、セルラーゼ単独の比較例6−2(残存率34.8%)と比べて、セルラーゼと、各種fae遺伝子を過剰発現させた実施例サンプルfaeA(+)、faeB(+)またはfaeC(+)とを併用した実施例6−1、6−2および6−3では、それぞれ、残存率を、29.8%、32.3%および29.3%にまで減少できた。前記糖化促進剤faeC(+)を用いた実施例6−3は、3倍量のセルラーゼを使用した比較例6−3と同等の残存率を示した。さらに、セルラーゼ単独でありfae未発現の比較例6−4(残存率34.5%)と比べても、前記実施例6−1、6−2および6−3は、それぞれ、残存率を低減できた。このことから、fae遺伝子を過剰発現させた培養上清によって、糖化が促進されていることが明らかとなった。
【0076】
[実施例7]
本例では、前処理済みバイオマスとして、前記前処理済みバイオマス3を用いた以外は、実施例5と同様にして、ホロセルロース残存率を算出した。この結果を、下記表7にあわせて示す。
【0077】
【表7】

【0078】
前記表7に示すように、セルラーゼ単独の比較例7−2(残存率32.3%)と比べて、セルラーゼと、各種fae遺伝子を過剰発現させた実施例サンプルfaeA(+)、faeB(+)またはfaeC(+)とを併用した実施例7−1、7−2および7−3では、それぞれ、残存率を、30.8%、29.3%および29.8%にまで減少できた。前記糖化促進剤faeB(+)を用いた実施例7−2は、1.5倍量のセルラーゼを使用した比較例7−3と同等の残存率を示した。さらに、セルラーゼ単独でありfae未発現の比較例7−4(残存率32.9%)と比べても、前記実施例7−1、7−2および7−3は、それぞれ、残存率を低減できた。このことから、fae遺伝子を過剰発現させた培養上清によって、糖化が促進されていることが明らかとなった。
【0079】
[実施例8]
本例では、下記表8の反応液(約150μL)を用い、前記反応液の攪拌速度を2500回転/minとした以外は、実施例5と同様にして、ホロセルロース残存率を算出した。この結果を、下記表8にあわせて示す。
【0080】
【表8】

【0081】
前記表8に示すように、セルラーゼ単独の比較例8−2(残存率33.9%)と比べて、セルラーゼと、各種fae遺伝子を過剰発現させた実施例サンプルfaeA(+)、faeB(+)またはfaeC(+)とを併用した実施例8−1、8−2および8−3では、それぞれ、残存率を、29.3%、33.4%および29.8%にまで減少できた。前記糖化促進剤faeA(+)を用いた実施例8−1は、3倍量のセルラーゼを使用した比較例8−3と同等の残存率を示した。さらに、セルラーゼ単独でありfae未発現の比較例8−4(残存率34.5%)と比べても、前記実施例8−1、8−2および8−3は、それぞれ、残存率を低減できた。このことから、fae遺伝子を過剰発現させた培養上清によって、糖化が促進されていることが明らかとなった。
【0082】
[実施例9]
下記表9および表10に示す組成の反応液(約1000μL)を使用した以外は、前記実施例1と同様にして、ホロセルロース量を測定し、セルラーゼ無添加の比較例9−1のホロセルロース量を100%として、各反応液について、ホロセルロースの残存率を算出した。この結果を、下記表10にあわせて示す。
【0083】
下記表9および表10において、ペクチナーゼは、Aspergillus由来のペクチナーゼ(商品名:ペクチナーゼGアマノ、天野エンザイム社)を、0.1mol/L酢酸ナトリウム水溶液(pH5)で希釈した10w/v%ペクチナーゼ(10倍希釈)、1w/v%ペクチナーゼ(100倍希釈)、0.1w/v%ペクチナーゼ(1000倍希釈)を使用した。前記ペクチナーゼGアマノは、天野法によるEndo-PGase値が、1200U/g以上であった。また、下記表9および表10において、ヘミセルラーゼは、Aspergillus由来のヘミセルラーゼ(商品名:ヘミセルラーゼ「アマノ」90、天野エンザイム社)を、0.1mol/L酢酸ナトリウム水溶液(pH5)で希釈した10w/v%ヘミセルラーゼ(10倍希釈)、1w/v%ヘミセルラーゼ(100倍希釈)、0.1w/v%ヘミセルラーゼ(1000倍希釈)を使用した。前記ヘミセルラーゼGアマノは、天野法によるキシラーゼ力が、90000U/g以上であった。下記表9において、セルラーゼは、セルラーゼGC220(商品名、ジェネンコア社、160FPU/mL)である。なお、表10におけるペクチナーゼおよびヘミセルラーゼの濃度は、反応液中の最終濃度である。
【0084】
【表9】

【0085】
【表10】

【0086】
前記表10に示すように、実施例9−1、9−2および9−3では、ペクチナーゼとセルラーゼとを併用することによって、セルラーゼ単独の比較例9−2における残存率34.1%を、さらに、24.8%、26.5%および33.5%にまで減少できた。また、実施例9−1は、10倍量のセルラーゼを用いた比較例9−3の残存率25.2%と同等であった。また、前記表10に示すように、実施例9−4、9−5および9−6では、ヘミセルラーゼとセルラーゼとを併用することによって、セルラーゼ単独の比較例9−2における残存率34.1%を、さらに、23.9%、25.9%および31.9%にまで減少できた。また、10倍量のセルラーゼを用いた比較例9−3の残存率25.2%に比べて、実施例9−4は、残存率が低くなり、実施例9−5は、同等の残存率を示した。
【0087】
また、前記Aspergillus由来ヘミセルラーゼアマノ90および前記Aspergillus由来のペクチナーゼGアマノおよびに含まれる酵素タンパク質について、、LC−MSMS解析に供し、得られたイオンピークのパターンをMASCOT解析ならびにNCBIデータベース解析することにより、同定を行った。
【0088】
その結果、前記ヘミセルラーゼアマノ90は、主要な2種類のタンパク質として、配列番号8で表わされるアミノ酸配列からなるタンパク質と、配列番号9で表わされるアミノ酸配列からなるタンパク質とを含むことがわかった。配列番号8で表わされるアミノ酸配列は、GenBankアクセッションNo.EU_848304に登録されている、Aspergillus niger strain DMS1957 endo−1,4−beta−xylanase Aのアミノ酸配列と相同であった。また、配列番号9で表わされるアミノ酸配列は、GenBankアクセッションNo.FJ772090に登録されている、Aspergillus niger strain SCTCC 400264 xylanase Bのアミノ酸配列と相同であった。
【0089】
また、前記ペクチナーゼGアマノは、配列番号10で表わされるアミノ酸配列からなるタンパク質、配列番号11で表わされるアミノ酸配列からなるタンパク質、配列番号12で表わされるアミノ酸配列からなるタンパク質、配列番号13で表わされるアミノ酸配列からなるタンパク質、配列番号14で表わされるアミノ酸配列からなるタンパク質を含むことがわかった。配列番号10で表わされるアミノ酸配列は、GenBankアクセッションNo.XM_001402441に登録されている、Aspergillus niger CBS 513.88 pectate lyase plyAのアミノ酸配列と相同であり、配列番号11に示すアミノ酸配列は、GenBankアクセッションNo.XM_001389889に登録されている、Aspergillus niger CBS 513.88 pectin lyase pelBのアミノ酸配列と相同であり、配列番号12に示すアミノ酸配列は、GenBankアクセッションNo.XM_001397963に登録されている、Aspergillus niger CBS 513.88 endo−polygalacturonase pgaAのアミノ酸配列と相同であり、配列番号13に示すアミノ酸配列は、GenBankアクセッションNo.XM_001399591に登録されている、Aspergillus niger CBS 513.88 endopolygalacturonases pgaBのアミノ酸配列と相同であり、配列番号14に示すアミノ酸配列は、GenBankアクセッションNo.XM_001390469に登録されている、Aspergillus niger CBS 513.88 pectinesterase pmeAのアミノ酸配列と相同であった。
【産業上の利用可能性】
【0090】
以上のように、本発明によれば、セルラーゼ単独での糖化処理よりも、優れた効率でバイオマスの糖化を行うことができる。このため、木材やその廃棄物等をバイオマスとして有効利用し、エネルギー資源および化成品等を提供できることから、極めて有用といえる。また、本発明によれば、例えば、糖化処理に用いるセルラーゼ量を低減できるため、発酵等の後工程で重要となる、バイオマスの糖化処理のコストを下げることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルラーゼによるバイオマスの糖化処理を促進する糖化促進剤であって、
xynR遺伝子およびfae遺伝子の少なくとも一方を発現する菌体の培養上清を含むことを特徴とする糖化促進剤。
【請求項2】
前記fae遺伝子が、faeA遺伝子、faeB遺伝子およびfaeC遺伝子からなる群から選択された少なくとも一つである、請求項1記載の糖化促進剤。
【請求項3】
前記xynR遺伝子およびfae遺伝子が、Aspergillus属由来である、請求項1または2記載の糖化促進剤。
【請求項4】
前記xynR遺伝子およびfae遺伝子が、Aspergillus oryzae由来である、請求項3記載の糖化促進剤。
【請求項5】
前記菌体が、前記xynR遺伝子およびfae遺伝子の少なくとも一方を有する発現ベクターが導入された形質転換体である、請求項1から4のいずれか一項に記載の糖化促進剤。
【請求項6】
前記菌体が、Aspergillus属である、請求項1から5のいずれか一項に記載の糖化促進剤。
【請求項7】
前記菌体が、Aspergillus oryzaeである、請求項6記載の糖化促進剤。
【請求項8】
バイオマスの糖化処理に使用するための糖化処理剤であって、
セルラーゼと、請求項1から7のいずれか一項に記載の糖化促進剤とを含むことを特徴とする糖化処理剤。
【請求項9】
バイオマスの糖化処理方法であって、
請求項1から7のいずれか一項に記載の糖化促進剤の共存下、前記バイオマスをセルラーゼで処理することを特徴とする糖化処理方法。
【請求項10】
前記バイオマスが、リグノセルロース系バイオマスである、請求項9記載の糖化処理方法。
【請求項11】
前記バイオマスが、バイオマス原料を加圧熱水で前処理することにより得られた前処理済みバイオマスである、請求項9または10記載の糖化処理方法。
【請求項12】
セルラーゼによるバイオマスの糖化処理を促進する糖化促進剤であって、
配列番号8〜14の少なくともいずれかで表わされるアミノ酸配列を含むタンパク質を含むことを特徴とする糖化促進剤。
【請求項13】
バイオマスの糖化処理に使用するための糖化処理剤であって、
セルラーゼと、請求項12記載の糖化促進剤とを含むことを特徴とする糖化処理剤。
【請求項14】
バイオマスの糖化処理方法であって、
請求項12記載の糖化促進剤の共存下、前記バイオマスをセルラーゼで処理することを特徴とする糖化処理方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−155933(P2011−155933A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−21621(P2010−21621)
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究成果に係る特許出願(平成19年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「バイオマスエネルギー高効率転換技術開発/バイオマスエネルギー等先導技術研究開発/セルロースエタノール高効率製造のための環境調和型統合プロセス開発」に係る委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000165251)月桂冠株式会社 (88)
【Fターム(参考)】