説明

バイオマスガス化ガス精製システム及び方法、メタノール製造システム及び方法

【課題】バイオマスをガス化した生成ガス中のタール成分を効率良く改質すると共に、熱暴走が発生しないバイオマスガス化ガス精製システム及び方法、メタノール製造システム及び方法を提供する。
【解決手段】バイオマスをバイオマスガス化炉によりガス化して得られたバイオマスガス化ガス(含むタール成分)13中の煤塵を除塵する除塵装置14と、除塵されたバイオマスガス化ガス13中の硫黄酸化物成分を除去する脱硫装置15と、脱硫後のバイオマスガス化ガス13中のタール成分を改質するプレリフォーミング反応器16と、プレリフォーミング反応器16の前流側に水蒸気17を供給する水蒸気供給手段18と、前記脱硫装置15の前流側で天然ガス19を供給する天然ガス供給手段20とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマスガス化ガス精製システム及び方法、メタノール製造システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、バイオマスを原料に有効利用し、燃料用、もしくはアルコール等の液体燃料製造用として使用可能なクリーンなガス原料を得ることのできるバイオマスガス化ガス精製システム及び方法、メタノール製造システムに関するものである。
【0003】
一般にバイオマスとは、エネルギー源または工業原料として利用することのできる生物体(例えば、農業生産物または副産物、木材、植物等)をいい、太陽エネルギー、空気、水、土壌等の作用により生成されるので、無限に再生可能である。
【0004】
上記バイオマスを利用することで燃料用のガス及びメタノール等のクリーンなエネルギー源の製造が可能となる。また、廃棄物としてのバイオマスを処理できるので、環境の浄化にも役立つとともに、新規に生産されるバイオマスも光合成によりCO2の固定により生育される。大気のCO2を増加させないので、CO2の抑制につながることとなり、好ましい技術である。
【0005】
ここで、供給するバイオマスとしては、生産または廃棄されたバイオマスを粉砕・乾燥したものを供給するのが好ましい。本発明でバイオマスとは、エネルギー源または工業原料として利用することのできる生物資源(例えば、農業生産物または副産物、木材、植物等)をいい、例えば、スイートソルガム,ネピアグラス,スピルリナ等の植物、杉、広葉樹、バーク等の木材が用いられている(特許文献1及び特許文献2、非特許文献1)。
【0006】
ところで、前記バイオマスを原料として生成したガスには、微粒子、タール成分、硫化水素、塩素などが含まれるため、そのままでは、合成触媒を利用した液体燃料や、燃料電池へのエネルギー源を合成するためのガスには適さない。そのため、分離装置を始め、ガス精製装置によって、前記微粒子、タール成分、硫化水素、塩素などの微量成分を除去すべく工夫している。前述の液体燃料や燃料電池へのエネルギー源を得るための原料ガスとしては、実際の運用に当たっては、前記微量成分は、その許容含有量をおよそタール1mg/Nm3未満、S分0.1ppm未満までに低減する必要がある。しかしながら、現状のバイオマスガス化システムでは、前記微量成分の充分なる低減には至っていない。
【0007】
また、前記バイオマスガス化システムによる処理規模は、数100トン/日であり、従来の化石燃料を用いたガス化システムに比べると、小規模ないし中規模プラントに相当する。このような小中規模のガス処理システムでは、いわゆる分散化プラントでの必須条件である、シンプルかつ安価なガス精製ラインを具備することが望ましい。この点に関しても、現状のバイオマスガス化システムでは、シンプルかつ安価な精製ラインを実現するに至っていない。
【0008】
そこで、従来においては、バイオマスガス化炉でガス化した生成ガス中の粉塵を除去するサイクロンなどの分離手段と、除塵されたガスを冷却する冷却器と、該冷却したガスを精製するガス精製装置を備えたバイオマスガス化システムを提案した(特許文献3)。
従来のバイオマスガス化ガスのガス精製装置は、バイオマスを一時的に貯留しており、該ガス精製装置内に、冷却器を通過した冷却生成ガスを通過させ、ここで冷却生成ガス中に含まれるタール成分を吸着させ、精製ガスとし、タールを吸着したタール吸着バイオマスを搬送手段により、バイオマス供給手段に搬送するようにしている。
【0009】
さらに、タール成分を除去する除去剤層が固定された固定層式除去装置の提案がある(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2001−240877号公報
【特許文献2】特開2001−240878号公報
【特許文献3】特開2004−346285号公報
【特許文献4】特開2006−16470号公報
【非特許文献1】坂井正康著、「バイオマスが拓く21世紀エネルギー」、森北出版株式会社、1998年10月28日発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献3にかかる提案では、ガス精製装置によるタール成分除去では、合成触媒に許容されるレベルまで、タール分を除去低減することができない、という問題がある。
【0012】
また、特許文献4にかかる提案では、タール成分を吸着した除去剤である活性炭の処理が別途必要となる、という問題がある。
【0013】
タール(高沸点の炭化水素成分)を除去(分解)する手法として、プレリフォーミング触媒(例えばNi系触媒または、Ru系触媒)を用いて下記式(1)の改質反応で分解する方法が考えられるが、バイオマスガス化ガスはCO成分濃度が極めて高く、約1MPaG以下の圧力で、触媒の最適反応温度である400℃〜550℃で反応させる場合、副反応として、下記式(3)、(4)のようなメタネーション反応が起きる、という問題がある。
(2)式はシフト反応と呼ばれる、(3)式と(4)式を合成したものである。
【0014】
n2n+2+nH2O→nCO+(3n+2)H2…(1)
CO+H2O→CO2+H2…(2)
CO+3H2→CH4+H2O…(3)
CO2+4H2→CH4+2H2O…(4)
【0015】
上述のプレリフォーミング触媒としては、例えばズードケミー社の 「ReforMax100」(商品名)、 「ReforMax100RS、N.E.」(商品名)、ケムキャット社の、「E触媒」(商品名)、「Ni−3266E」(商品名)、Topsoe社の 「RKNGR、AR−401」(商品名)等が市販されている。
【0016】
この式(3)、(4)のメタネーション反応は、発熱反応であることから、断熱型のプレリフォーミング触媒を備えたプレリフォーミング反応器の場合、プレリフォーミング触媒の適正温度より高い550℃以上となり、シンタリングや、コーキングが発生すると共に、熱暴走の恐れがあるので、良好なガス精製が安定してできないという問題がある。
【0017】
本発明は、前記問題に鑑み、バイオマスをガス化した生成ガス中のタール成分を効率良く改質すると共に、熱暴走が発生しないバイオマスガス化ガス精製システム及び方法、メタノール製造システム及び方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上述した課題を解決するための本発明の第1の発明は、バイオマスをバイオマスガス化炉によりガス化して得られたバイオマスガス化ガス中の煤塵を除塵する除塵装置と、除塵されたバイオマスガス化ガス中の硫黄酸化物成分を除去する脱硫装置と、脱硫後のバイオマスガス化ガス中のタール成分を改質するプレリフォーミング反応器と、前記脱硫装置又は前記プレリフォーミング反応器の前流側で天然ガスを供給する天然ガス供給手段とを有することを特徴とするバイオマスガス化ガス精製システムにある。
【0019】
第2の発明は、バイオマスをバイオマスガス化炉によりガス化して得られたバイオマスガス化ガス中の煤塵を除塵する除塵装置と、除塵されたバイオマスガス化ガス中の硫黄酸化物成分を除去する脱硫装置と、脱硫後のバイオマスガス化ガス中のタール成分を改質するプレリフォーミング反応器と、プレリフォーミング反応器の前流側に水蒸気を供給する水蒸気供給手段とを有することを特徴とするバイオマスガス化ガス精製システムにある。
【0020】
第3の発明は、バイオマスをバイオマスガス化炉によりガス化して得られたバイオマスガス化ガス中の煤塵を除塵する除塵装置と、除塵されたバイオマスガス化ガス中の硫黄酸化物成分を除去する脱硫装置と、脱硫後のバイオマスガス化ガス中のタール成分を改質するプレリフォーミング反応器と、プレリフォーミング反応器の前流側に水蒸気を供給する水蒸気供給手段と、前記脱硫装置又は前記プレリフォーミング反応器の前流側で天然ガスを供給する天然ガス供給手段とを有することを特徴とするバイオマスガス化ガス精製システムにある。
【0021】
第4の発明は、第1乃至3のいずれか一つのバイオマスガス化ガス精製システムと、プレリフォーミング後のバイオマスガス化ガスを昇圧する昇圧装置と、昇圧後の昇圧ガスを用いて、メタノールを合成するメタノール合成装置とを有することを特徴とするメタノール製造システムにある。
【0022】
第5の発明は、第4の発明において、前記昇圧後の昇圧ガスを改質する改質反応器を有することを特徴とするメタノール製造システムにある。
【0023】
第6の発明は、バイオマスをバイオマスガス化炉によりガス化して得られたバイオマスガス化ガス中の煤塵を除塵し、除塵されたバイオマスガス化ガス中の硫黄酸化物成分を脱硫し、脱硫後のバイオマスガス化ガス中のタール成分をプレリフォーミング反応器により改質する際、天然ガスを供給することを特徴とするバイオマスガス化ガス精製方法にある。
【0024】
第7の発明は、バイオマスをバイオマスガス化炉によりガス化して得られたバイオマスガス化ガス中の煤塵を除塵し、除塵されたバイオマスガス化ガス中の硫黄酸化物成分を脱硫し、脱硫後のバイオマスガス化ガス中のタール成分を改質する水蒸気を供給しつつプレリフォーミング反応器により改質することを特徴とするバイオマスガス化ガス精製方法にある。
【0025】
第8の発明は、バイオマスをバイオマスガス化炉によりガス化して得られたバイオマスガス化ガス中の煤塵し、除塵されたバイオマスガス化ガス中の硫黄酸化物成分を脱硫し、脱硫後のバイオマスガス化ガス中のタール成分を、水蒸気を供給しつつプレリフォーミング反応器により改質する際、天然ガスを供給することを特徴とするバイオマスガス化ガス精製方法にある。
【0026】
第9の発明は、第6乃至8のいずれか一つのバイオマスガス化ガス精製方法によりバイオマスガス化ガスを精製し、プレリフォーミング後のバイオマスガス化ガスを昇圧し、昇圧後の昇圧ガスを用いて、メタノールを合成することを特徴とするメタノール製造方法にある。
【0027】
第10の発明は、第9の発明において、前記昇圧後の合成ガスを改質することを特徴とするメタノール製造方法にある。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、CO成分濃度が高いバイオマスガス化ガス中のタール成分を改質する際に、天然ガス及び/又は水蒸気を導入することにより、副反応であるメタネーション反応を抑制し、改質反応器の熱暴走を抑制することで、安定したバイオマスガス化ガスのガス精製を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、バイオマスガス化ガス精製システムの概略図である。
【図2】図2は、COのメタネーション発生領域と改質発生領域とにおける反応温度と平衡定数との関係図である。
【図3】図3は、実施例2のメタノール製造システムの概略図である。
【図4】図4は、実施例2に係る他のメタノール製造システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例1】
【0031】
本発明による実施例に係るバイオマスガス化ガス精製システムについて、図面を参照して説明する。図1は、バイオマスガス化ガス精製システムの概略図である。
図1に示すように、バイオマスガス化ガス精製システム10は、バイオマスをバイオマスガス化炉によりガス化して得られたバイオマスガス化ガス(含むタール成分)13中の煤塵を除塵する除塵装置(サイクロン、スクラバ等)14と、除塵されたバイオマスガス化ガス13中の硫黄酸化物成分を除去する脱硫装置15と、脱硫後のバイオマスガス化ガス13中のタール成分を改質するプレリフォーミング反応器16と、プレリフォーミング反応器16の前流側に水蒸気17を供給する水蒸気供給手段18と、前記脱硫装置15の前流側で天然ガス(主成分:メタン)19を供給する天然ガス供給手段20とを有するものである。なお、図中、符号21は合成ガス、22は制御装置(CPU)、23は天然ガスの導入量を調整する調整弁、TINは、プレリフォーミング反応器16の入口側温度を計測する入口温度計、TOUTは、プレリフォーミング反応器16の出口側温度を計測する出口温度計、T1は、触媒層温度を計測する触媒層温度計、A〜Eは計測点を図示する。
【0032】
メタネーション反応の進行は、バイオマスガス化ガス13中のCO成分が多量にあることに起因するので、下記式(3)の各温度域での平衡組成を計算することで、メタネーションの抑制を図るようにすることができる。このため、水蒸気か天然ガス(主成分:メタン)のいずれかを導入することでメタネーションの抑制を図るようにしている。
CO+3H2→CH4+H2O …(3)
【0033】
ここで、天然ガス(主成分:メタン)の導入量は、プレリフォーミング反応器16の触媒の耐熱温度である550℃以下に維持できるように、平衡定数から天然ガス(主成分:メタン)導入量を求めることができる。
【0034】
ここで、本発明のように、天然ガス19を脱硫装置15の前流側において導入した場合における、各計測点(A〜E)における成分の濃度を計測した結果を表1に示す。
表1に示すように、原料ガス中の水蒸気(H2O)と原料ガス中の炭化水素の炭素量の比であるS/C=3の条件においては、各成分から水蒸気量の供給量(44.5kgmol/h)と天然ガス(主成分:メタン)の供給量(11.3kgmol/h)を求め、水蒸気17を水蒸気供給手段18により、天然ガス19を天然ガス供給手段20により供給する。
なお、表中、C2+は天然ガス中に含まれる例えばエタン、プロパン、ブタン等の炭化水素成分の合計を示している。
【0035】
ここで、表中の各計測位置は、A点は、除塵装置14出口で、天然ガス19の供給前である。B点は、除塵装置14出口で、天然ガス19の供給後である。C点は、脱硫装置15出口で、水蒸気17の供給前である。D点は、脱硫装置15出口で、水蒸気17の供給後である。E点は、プレリフォーミング反応器16出口である。
【0036】
【表1】

【0037】
これに対して、表2に示すように、S/C=3の条件において、天然ガス(メタン)を供給しない場合には、メタネーションの抑制ができずに、プレリフォーミング反応器16の触媒耐熱温度(例えば550℃)をはるかに超える640℃まで上昇し、触媒許容温度以上となった。
【0038】
【表2】

【0039】
なお、表3に示すように、水蒸気のみを供給する場合には、水蒸気量の供給量を過剰(74.9kgmol/h)に投入して、S/Cを「27」とすることで、メタネーションによる熱暴走を抑制できる。
しかしながら、この場合には、従来よりもガス改質は進行するものの、水蒸気投入量が大きくなるので、システム効率が悪いものとなり好ましくない。
【0040】
【表3】

【0041】
図2は、COのメタネーション発生領域と改質発生領域とにおける反応温度と平衡定数との関係図である。ここで、図2中、平衡定数曲線の下側の領域はメタネーション発生領域であり、平衡定数曲線の上側の領域は改質発生領域である。
また、それぞれの表1〜3に対応するのが図2中の黒三角のプロット(表1)、黒丸のプロット(表2)、黒四角のプロット(表3)である。
【0042】
図2の関係式に対応する平衡定数(Kp)を下記式(5)に示す。
平衡定数(Kp)=([CH4]×[H2O])/([CO]×[H23)…(5)
なお、[]は、ガス成分の分圧を示す。
【0043】
触媒許容温度(例えば550℃)に対応する平衡定数値(Kp=12)を図2から求め、反応器出口において、その平衡定数値とするために必要な、反応器入口の原料組成について、式(5)と(1)〜(4)の反応計算、発熱・吸熱量計算から求めることができる。その原料組成となるように、天然ガス(主成分:メタン)、スチームの導入量を決定する。
【0044】
なお、天然ガス(メタン)を予め供給した場合においても、反応条件によっては、メタネーションの発生が変動するので、プレリフォーミング反応器16の許容温度(Tmax:550℃)を出口温度計TOUTと、触媒層温度T1とを監視し、許容温度(Tmax:550℃)に近づいたら、制御装置(CPU)22から天然ガス(主成分:メタン)を増加するように開閉弁23を調整する制御を行い、さらに天然ガス19の導入量を増加するようにしている。
【0045】
このように、天然ガス(主成分:メタン)をプレリフォーミング反応器16の前流で供給することで、ガス中の天然ガス(主成分:メタン)濃度が多くなるので、メタネーション反応を抑制し、温度上昇が抑制され、プレリフォーミング反応器16の触媒の耐熱温度以上とならず、触媒の劣化(シンタリング等)が発生せず、良好なタール改質を行うことができる。
【0046】
なお、本実施例では、脱硫装置15の前流側において、天然ガス19を導入するようにしているが、天然ガス19にS(硫黄)成分が少ない場合には、触媒の被毒がないので、プレリフォーミング反応器16の前流側において、水蒸気17と同様の投入位置とすることもできる。
【0047】
さらに、バイオマスガス化プラントによっては、水蒸気が余っている場合があり、このような場合には、水蒸気のみの導入でもよく、或いは、天然ガスが安価に手に入る場合には、水蒸気導入をせずに天然ガスのみの導入のみとしてもよい。
【0048】
得られた合成ガス21は、ガスタービン用の燃料ガスとして直接利用することが可能である。また、ガス中のH2 とCOガスの組成を調整することで、アンモニア、メタノール(又はジメチルエーテル)等の化成品の製造用のガスとして利用することも可能である。以下、得られたガスをメタノール合成に利用するシステムについて説明する。
【実施例2】
【0049】
本発明による実施例に係るメタノール製造システムについて、図面を参照して説明する。図3は、実施例2に係るメタノール製造システムの概略図である。図4は、実施例2に係る他のメタノール製造システムの概略図である。
図3に示すように、メタノール製造システム30Aは、バイオマス11をガス化するバイオマスガス化炉12と、ガス化して得られたバイオマスガス化ガス(含むタール成分)13中の煤塵を除塵する除塵装置14と、除塵されたバイオマスガス化ガス13中の硫黄酸化物成分を除去する脱硫装置15と、脱硫後のバイオマスガス化ガス13中のタール成分を改質するプレリフォーミング反応器16と、プレリフォーミング反応器16の前流側に水蒸気17を供給する水蒸気供給手段18と、前記脱硫装置15の前流側で天然ガス19を供給する天然ガス供給手段20と、プレリフォーミング後のバイオマスガス化ガスの合成ガス21を昇圧する昇圧装置31と、昇圧後の昇圧ガス32を用いて、メタノール33を合成するメタノール合成装置34とを有するものである。
なお、図1に示す実施例1のバイオマスガス化ガス精製システム10は、除塵装置14からプレリフォーミング反応器16までの構成である。
本実施例によれば、バイオマスガス化ガス精製システム10でのバイオマスガス化ガス13中のタール成分を改質する際に、天然ガス19を導入して安定して改質することができるので、タール成分が除去されたガスは、メタノール合成触媒を劣化させることなくなく、安定したメタノール合成を行うことができる。
【0050】
ここで、本発明では、バイオマスガス化炉12内に供給するバイオマス11としては、生産又は廃棄されたバイオマスを粉砕・乾燥したものを供給するのが好ましい。本発明でバイオマスとは、エネルギー源又は工業原料として利用することのできる生物資源(例えば農業生産物又は副産物、木材、植物等)をいい、例えばスイートソルガム,ネピアグラス,スピルリナ等の植物、杉、広葉樹、バーク等の木材等を例示することができる。本発明では、上記バイオマス11の粉砕物の平均粒径(D)は、0.05≦D≦5mmとするのが好ましい。これは、平均粒径が0.05mm以下であるとバイオマスの粉砕効率が悪くなり、好ましくないからである。一方、平均粒径が5mmを超えた場合には、バイオマスの内部まで良好に燃焼がなされずに反応が促進せず、高効率のガス化が困難となるからである。また、本発明では、バイオマスガス化炉に供給する燃焼酸化剤は、空気と水蒸気又は酸素と水蒸気の混合物であることが好ましい。
【0051】
また、バイオマスガス化ガス精製システム10において、天然ガス(主成分:メタン)19を導入しているので、図4に示すように、実施例2の変形例のメタノール製造システム30Bでは、前記昇圧後の昇圧ガス32を改質する改質反応器36を設け、ガス改質をしてメタノール合成に寄与しないメタン濃度を低減させ、これによりメタノール合成収率を向上させている。
【産業上の利用可能性】
【0052】
以上のように、本発明に係るバイオマスガス化ガス精製システムによれば、CO成分濃度が高いバイオマスガス化ガス中のタール成分を改質する際に、天然ガス及び/又は水蒸気を導入することにより、副反応であるメタネーション反応を抑制することで安定したガス精製が可能となり、例えばメタノール製造システム用の合成ガスを安定して製造することができる。
【符号の説明】
【0053】
10 バイオマスガス化ガス精製システム
11 バイオマス
12 バイオマスガス化炉
13 バイオマスガス化ガス(含むタール成分)
14 除塵装置
15 脱硫装置
16 プレリフォーミング反応器
17 水蒸気
19 天然ガス


【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマスをバイオマスガス化炉によりガス化して得られたバイオマスガス化ガス中の煤塵を除塵する除塵装置と、
除塵されたバイオマスガス化ガス中の硫黄酸化物成分を除去する脱硫装置と、
脱硫後のバイオマスガス化ガス中のタール成分を改質するプレリフォーミング反応器と、
前記脱硫装置又は前記プレリフォーミング反応器の前流側で天然ガスを供給する天然ガス供給手段とを有することを特徴とするバイオマスガス化ガス精製システム。
【請求項2】
バイオマスをバイオマスガス化炉によりガス化して得られたバイオマスガス化ガス中の煤塵を除塵する除塵装置と、
除塵されたバイオマスガス化ガス中の硫黄酸化物成分を除去する脱硫装置と、
脱硫後のバイオマスガス化ガス中のタール成分を改質するプレリフォーミング反応器と、プレリフォーミング反応器の前流側に水蒸気を供給する水蒸気供給手段とを有することを特徴とするバイオマスガス化ガス精製システム。
【請求項3】
バイオマスをバイオマスガス化炉によりガス化して得られたバイオマスガス化ガス中の煤塵を除塵する除塵装置と、
除塵されたバイオマスガス化ガス中の硫黄酸化物成分を除去する脱硫装置と、
脱硫後のバイオマスガス化ガス中のタール成分を改質するプレリフォーミング反応器と、プレリフォーミング反応器の前流側に水蒸気を供給する水蒸気供給手段と、
前記脱硫装置又は前記プレリフォーミング反応器の前流側で天然ガスを供給する天然ガス供給手段とを有することを特徴とするバイオマスガス化ガス精製システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一つのバイオマスガス化ガス精製システムと、
プレリフォーミング後のバイオマスガス化ガスを昇圧する昇圧装置と、
昇圧後の昇圧ガスを用いて、メタノールを合成するメタノール合成装置とを有することを特徴とするメタノール製造システム。
【請求項5】
請求項4において、
前記昇圧後の昇圧ガスを改質する改質反応器を有することを特徴とするメタノール製造システム。
【請求項6】
バイオマスをバイオマスガス化炉によりガス化して得られたバイオマスガス化ガス中の煤塵を除塵し、
除塵されたバイオマスガス化ガス中の硫黄酸化物成分を脱硫し、
脱硫後のバイオマスガス化ガス中のタール成分をプレリフォーミング反応器により改質する際、プレリフォーミング反応器に天然ガスを供給することを特徴とするバイオマスガス化ガス精製方法。
【請求項7】
バイオマスをバイオマスガス化炉によりガス化して得られたバイオマスガス化ガス中の煤塵を除塵し、
除塵されたバイオマスガス化ガス中の硫黄酸化物成分を脱硫し、
脱硫後のバイオマスガス化ガス中のタール成分を水蒸気を供給しつつプレリフォーミング反応器により改質することを特徴とするバイオマスガス化ガス精製方法。
【請求項8】
バイオマスをバイオマスガス化炉によりガス化して得られたバイオマスガス化ガス中の煤塵し、
除塵されたバイオマスガス化ガス中の硫黄酸化物成分を脱硫し、
脱硫後のバイオマスガス化ガス中のタール成分を、水蒸気を供給しつつプレリフォーミング反応器により改質する際、プレリフォーミング反応器に天然ガスを供給することを特徴とするバイオマスガス化ガス精製方法。
【請求項9】
請求項6乃至8のいずれか一つのバイオマスガス化ガス精製方法によりバイオマスガス化ガスを精製し、
プレリフォーミング後のバイオマスガス化ガスを昇圧し、
昇圧後の昇圧ガスを用いて、メタノールを合成することを特徴とするメタノール製造方法。
【請求項10】
請求項9において、
前記昇圧後の合成ガスを改質することを特徴とするメタノール製造方法。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−36316(P2012−36316A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−179080(P2010−179080)
【出願日】平成22年8月9日(2010.8.9)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の共同研究の成果に係る特許出願(平成21年度〜22年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構『新エネルギー技術研究開発/バイオマスエネルギー等高効率転換技術開発(転換要素技術開発)/バイオマス熱的ガス化液体燃料触媒合成における精密ガス精製に関する研究開発』、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】