説明

バイオマス変換プロセスにおける水素処理、並びに、不純物除去及び洗浄の方法

一実施形態において、本開示は、カルボン酸又はカルボン酸塩、及び、水素ガスを生成するためにバイオマスを発酵するステップ、前記水素ガスを回収するステップ、並びに、前記水素ガスを使用して前記カルボン酸又はカルボン酸塩をアルコールに変換するステップを含むバイオマス変換の方法を含む。一実施形態において、バイオマス変換により生成された前記水素は、酢酸に変換させることができる。別の実施形態は、バイオマス変換システムに関する。当該システムは:発酵ブロス内でカルボン酸又はカルボン酸塩へバイオマスを発酵させるため、並びに、二酸化炭素及び水素ガスの流れを生成するための発酵装置、前記発酵ブロスから前記カルボン酸又はカルボン酸塩を抽出するための抽出装置、前記水素ガスと前記二酸化炭素を分離するためのガス抽出装置、並びに、前記水素ガスを使用して前記カルボン酸又はカルボン酸塩からアルコールを生成するための生成装置を含むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、いくつかの実施形態において、バイオマス変換プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
バイオマスのMixAlco発酵は、最初にカルボン酸を生成し、次に、前記カルボン酸はエステル化される。これらのエステルは、続いて、費用のかかる水素化処理を経て、燃料として使用することができる混合アルコールを形成する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、発酵によって水素が遊離ガスとして生成される場合、全体の処理にかかる費用を非常に下げることになる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一実施形態において、本発明はバイオマス変換の方法に関する。当該方法は、カルボン酸又はカルボン酸塩、及び、水素ガスを生成するためにバイオマスを発酵するステップ、前記水素ガスを回収するステップ、並びに、前記水素ガスを使用して前記カルボン酸又はカルボン酸塩をアルコールに変換するステップを含むことができる。
【0005】
特定の実施形態において、前記水素ガスは、二酸化炭素及び水素ガスの流れから回収される。回収は:アミン吸収装置を使用した前記流れからの二酸化炭素の抽出、灰を使用した前記流れからの二酸化炭素の吸収、膜を使用した前記流れからの水素ガスの精製、圧力スウィング吸着法を使用した前記流れからの水素ガスの精製、液体炭酸も生成する、圧縮続いて冷却を使用した前記流れからの水素ガスの精製、及び、膜を使用した前記流れからの水素ガスの精製を含めたいくつかのプロセスのうちの1つ又は組合せを含むことができる。
【0006】
さらなる実施形態において、前記カルボン酸又はカルボン酸塩は、第一級アルコール又は第二級アルコールに変換することができ、そのプロセスにおいて、ケトンステージを経ることができる。
【0007】
他の実施形態において、NHHCO又はCaCOを含めた種々の緩衝剤を前記発酵に使用することができる。
【0008】
いくつかの実施形態において、前記カルボン酸又はカルボン酸塩は、高分子量のアミンを使用して抽出することができ、次に、固体又は液体を使用してその不純物をさらに除去することができ、続いて、前記抽出ステップに再循環させることができる。
【0009】
他の実施形態において、前記カルボン酸又はカルボン酸塩は、高分子量のアルキルエステルを使用してアルコールに変換させることができ、次に、固体又は液体を使用してその不純物をさらに除去することができ、続いて、前記抽出ステップに再循環させることができる。
【0010】
一実施形態において、バイオマス変換により生成された前記水素は、酢酸に変換させることができる。これを、例えば前記発酵ステップに加えることができる等、全プロセスに再循環させることができる。
【0011】
最後に、本発明の一実施形態は、バイオマス変換システムに関する。当該システムは:発酵ブロス内でカルボン酸又はカルボン酸塩へバイオマスを発酵させるため、並びに、二酸化炭素及び水素ガスの流れを生成するための発酵装置、前記発酵ブロスから前記カルボン酸又はカルボン酸塩を抽出するための抽出装置、前記水素ガスと前記二酸化炭素を分離するためのガス抽出装置、並びに、前記水素ガスを使用して前記カルボン酸又はカルボン酸塩からアルコールを生成するための生成装置を含むことができる。
【0012】
本発明に対して多くの利点が存在し、特定の実施形態が有することができるいくつかの利点は以下を含む:
・他の発酵生成物を用いた使用に対して、緩衝液で処理された条件の下、バイオマス
から混合培養の嫌気発酵において水素を生成する。
・二酸化炭素から水素を精製する方法。
・下流のプロセスとの、及び、下流のプロセス内への精製方法の統合により、嫌気発
酵由来の水素の効率的利用、及び、生物燃料(すなわち、第一級及び第二級アルコ
ール)の生成のためのガス化が可能になる。
・下流のプロセスにおける不純物除去及び洗浄の統合。
・水素は、バイオマスから混合アルコール燃料を生成するプロセスにおいて重要な反
応体であるが、いくらか高価であり、獲得するのが困難である。発酵において水素
を生成することができる、並びに、当該システムの下流のステップと、及び、当該
システムの下流のステップ内にその生成を統合するということは、前記プロセスの
便利さ及び経済性を改善する。
・発酵において水素を生成する、並びに、下流のステップと、及び、下流のステップ
内にその生成を統合することができるということは、作製することができる生成物
により融通性を与える。
・不純物除去及び洗浄のプロセスが、当該システムにおける不純物の蓄積を回避する
ことにおいて効率的である。一実施形態に示されている処理は、経済性に依存し得
る、材料の損失を回避することにおいてどのくらい効率的であるよう望むかにおい
て融通性を与える。
【0013】
以下の図は、本明細書の一部を成し、本発明の特定の態様をさらに実証するよう含まれる。本発明は、本明細書において提案された実施形態の説明と組み合わせてこれらの図面のうち1又は複数の図面を参考にしてより理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態による、NHHCO緩衝剤を使用してバイオマスをカルボン酸に変換するためのシステムAを例示している。
【図2】本発明の一実施形態による、NHHCO緩衝剤を使用してバイオマスをカルボン酸に変換するためのシステムBを例示している。
【図3】本発明の一実施形態による、CaCO緩衝剤を使用してバイオマスをカルボン酸に変換するためのシステムCを例示している。
【図4】本発明の一実施形態による、CaCO緩衝剤を使用してバイオマスをケトン及び第二級アルコールに変換するためのシステムDを例示している。
【図5】本発明の一実施形態による、NHHCO緩衝剤を使用してバイオマスを第一級アルコールに変換するためのシステムAの変形を例示している。
【図6】本発明の一実施形態による、CaCO緩衝剤を使用してバイオマスを第一級アルコールに変換するためのシステムCの変形を例示している。
【図7】本発明の一実施形態による、発酵において生成された水素を酢酸に変換する、酢酸を産生する発酵の使用を例示している。
【図8】本発明の一実施形態による、二酸化炭素/水素の流れから二酸化炭素を抽出するためのアミン吸収装置であるプロセスAを例示している。
【図9】本発明の一実施形態による、二酸化炭素/水素の流れから二酸化炭素を吸収するために灰が使用されるプロセスBを例示している。
【図10】本発明の一実施形態による、二酸化炭素/水素の流れから水素を精製するために膜が使用されるプロセスCを例示している。
【図11】本発明の一実施形態による、二酸化炭素/水素の流れから水素を精製するために圧力スウィング吸着法(PSA)が使用されるプロセスDを例示している。
【図12】本発明の一実施形態による、二酸化炭素/水素の流れから水素を精製するために圧縮続いて冷却が使用され、液体炭酸が生成されるプロセスEを例示している。
【図13】本発明の一実施形態による、第二級又は第一級アルコールへカルボン酸を変換するためのオプションA及びオプションBを例示している。
【図14】本発明の一実施形態による、高分子量のアミンの固体不純物除去及び洗浄の方法であるボックスAを例示している。
【図15】本発明の一実施形態による、高分子量のアミンの液体不純物除去及び洗浄の方法であるボックスBを例示している。
【図16】本発明の一実施形態による、高分子量のアルキルエステルの固体不純物除去及び洗浄の方法であるボックスCを例示している。
【図17】本発明の一実施形態による、高分子量のアルキルエステルの液体不純物除去及び洗浄の方法であるボックスDを例示している。
【図18】本発明の一実施形態による、発酵により生成される水素ガスの量を決定するのに使用される適定を例示している。
【図19】本発明の一実施形態による、MixAlcoプロセスの後のステップを例示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、嫌気発酵において生成された水素ガス、及び、前記発酵由来の未消化の固体のガス化から生成された水素ガスを処理するための方法(すなわち、アルコールの生成のための精製及び利用)を含む。嫌気発酵は、主に、微生物の混合培養を使用してバイオマスをカルボン酸に変換するが、二酸化炭素及び水素ガスを含有する発酵ガスも生成する。緩衝剤(例えば、炭酸カルシウム、重炭酸アンモニウム)を使用して、生成された酸が中和される。従って、発酵からの最終生成物は、カルボン酸塩である。これらのカルボン酸塩は、例えばエステル化して、続いて水素化することができる等、水が取り除かれ、アルコールに加工することができる。水素化は通常高価であるが、発酵により生じた水素ガスを使用してより低い価格で行うことができる。
【0016】
さらに、このバイオマス変換プロセスにおいて、特定の流れは、除去されなければならない不純物を含有している。従って、不純物が蓄積されそうな場合、不純物を除去する及びこれらの流れを洗浄する方法も本発明に含まれる。
【0017】
従って、水素ガスが存在する場合に、水混合溶媒において、紙の微粉(paper fines)及び乾燥したニワトリの肥料の嫌気発酵のガスにおいて生成された水素はどの位の濃度であるかを決定するよう、本実験を設計した。発酵を実行するために、接種材料を使用して微生物を増殖し、重炭酸アンモニウムが緩衝剤であった。発酵処理により生じる全有用エネルギーの増加は、水素が抽出され、発酵混合物において生じたカルボン酸から得られるエステルから混合アルコールを形成するためにMixAlcoプロセスにおいて後に使用することができるため可能である。
【0018】
図1から7に示されたプロセスの上流のステージは、バイオマスからカルボン酸塩を生成するための方法を示している。多数の発酵槽の幾何学的配置が前もって描写され、これらのプロセスの上流のステージに使用することができる。ここで、当該プロセスは、例として4つの向流発酵槽を使用する。これらの発酵槽内の固体は上部に加えられ、下部から除去される。新たなバイオマスが最も右側の発酵槽に加えられる。未消化の残留物が下部から除去され、隣接する発酵槽に送られる。この処理は、消化された残留物が最も左側の発酵槽から除去されるまで繰り返される。所望であれば、スクリュープレス又は他の適した脱水装置を使用して、1つの発酵槽から他の発酵槽へと移される前記固体内の液体含有量を減らすことができる。
【0019】
新たな水が最も左側の発酵槽に加えられる。発酵槽の液体の一部は、隣接する発酵槽に送られる。この処理は、発酵ブロスが最も右側の発酵槽から回収されるまで繰り返される。各発酵槽には、メタン阻害剤(例えば、ヨードホルム、ブロモホルム、ブロモエタンスルホン酸)及び緩衝剤(重炭酸アンモニウム又は炭酸カルシウム)の望ましい分布を可能にする循環ループが備わっている。緩衝剤は、消化しているバイオマスから生じたカルボン酸と反応し、従って、使用される緩衝剤に従いアンモニウム又はカルシウムのカルボン酸塩を形成する。酸形成性の嫌気性微生物の混合培養が発酵に使用される。微生物の供給源は、土壌又はウシのルーメン等、種々の生育地由来であり得る。一実施形態において、海洋環境由来の接種材料を使用して最良の結果を得ることができ、これらの生物は、高塩性の環境に適応した。
【0020】
発酵槽の温度は、循環する液体の温度を調節することにより制御される。発酵槽のpHは、緩衝剤の添加率により調節される。最適なpHは、約7である。
【0021】
最も右側の発酵槽を離れた未消化の残留物は、ボイラー用燃料として売却するか又は使用することができるリグニンが豊富な生成物であるが、合成ガス(水素及び一酸化炭素)を生成するために(図1から6に示されているように)ガス化することもできる。この合成ガスは、次に、蒸気を使用して、さらなる水素を形成し、一酸化炭素を二酸化炭素に変換するようシフトすることができる。この処理から、残りの装置にエネルギーを提供するために使用することができる熱が生じる。
【0022】
最も右側の発酵槽から回収された発酵ブロスは、下流の処理ステップにおいて望ましくない場合が多い浮きかすを存在させる場合がある。浮きかすは、種々の方法により除去することができる。例えば、発酵ブロスは、カルボン酸塩が通るのを可能にするが、浮きかすは保持される分子量カットオフを有した限外濾過膜又は微量濾過膜に通してポンピングすることができる。あるいは、凝固剤又は凝集剤(サトウキビから抽出された糖汁を浄化するのに使用されるもの等)を添加することができ、濾過によって浮きかすが除去されるのを可能にする。炭酸カルシウムが緩衝剤として使用される場合、ライムを添加し、続いて二酸化炭素を加えて、炭酸カルシウムを沈殿させることができる。炭酸カルシウムが沈殿するに従い、浮きかすを捕捉し、従ってその浮きかすを除去する。その炭酸カルシウム及び浮きかすは、次に、濾過によって単純に除去される。
【0023】
浮きかすが除去されたか、又は、浄化された発酵ブロスは、薄い濃度のカルボン酸塩(例えば、1から10%)を含有している。ほぼ飽和した溶液(35から50%)を形成するために、水が除去される。種々の脱水法を使用することができるけれども、ここでは蒸気圧縮システムが示されている。濃縮した塩溶液からの蒸気が圧縮され、熱交換器内で濃縮するのを可能にする。濃縮器内の濃縮の熱は、ボイラー内の蒸発の必要とされる熱を提供し、このように、熱は再循環される。前記処理は、この例において、圧縮器により供給される少量のシャフトワークにより駆動されるが、ジェットエジェクター等の他の圧縮装置も使用することができる。
【0024】
水素ガスも発酵において生成され、回収して利用することができると判った。研究室において、紙80%及びニワトリの肥料20%を発酵基質として使用し、重炭酸アンモニウム緩衝剤を用いてpHを制御して、ガス(二酸化炭素及び水素)において平均約6%の水素が測定された(2%及び12%が最低及び最高濃度である)。この量は重要であり、水素化処理に使用するために回収することができ、その結果、アルコール生成全体の費用を抑えることができる。
【0025】
図7は、二酸化炭素の一部及び水素全てを酢酸に変換する酢酸を産生する発酵を行う常に利用可能な実施形態を示している。緩衝剤(例えば、重炭酸アンモニウム、アンモニア、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム)が、pHを制御するために供給される。この発酵から、発酵槽に単純に再循環させることができる希酢酸溶液が得られる。より高い圧力で酢酸を産生する発酵槽を作動させることにより、より高い酢酸濃度を可能にすることができる。
【0026】
発酵ガス(大部分が二酸化炭素及び水素である)において、生成される二酸化炭素のほとんどが、形成される酸を中和する緩衝剤として放出される緩衝剤(炭酸カルシウム又は重炭酸アンモニウム)から生じる。この二酸化炭素は、バイオマス生物変換反応中に細菌の代謝経路から形成される生物的なCOに対立する、非生物的なCOとして既知である。図1から3、並びに、図5及び6において、非生物的なCOは、緩衝剤を回収又は再利用する試みの中で発酵ガスから除去される。従って、重炭酸アンモニウムが緩衝剤として使用される図1、2、及び、5において、下流で回収されたアンモニアは、気体浄化装置内の発酵ガスと接触され、重炭酸アンモニウムが生成されて、発酵まで再循環される。同様に、炭酸カルシウムが緩衝剤として使用される図3及び6において、発酵ガスの一部(すなわち、非生物的なCOを含有する量)が、蒸発装置由来のカルシウムカルボン酸塩溶液内のカルシウムイオンと低分子量(LMW)の第三級アミン(例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン)との交換を可能にするために反応装置に送られ、LMWアミンカルボキシレートを形成し、発酵まで再循環される炭酸カルシウム緩衝剤を沈殿させる。図4では、示されたプロセスは、COの下流での添加を必要としない。従って、非生物的なCOは一般的に除去することができない。非生物的なCOを一般的に除去することができない図4のガスの流れに対立するものとして、非生物的なCOの除去から結果として生じる残りのガスは、より少ない二酸化炭素(生物的なCOのみ)を含有し、水素がより豊富であるため、このガスの流れのさらなる水素精製における節約が期待される。
【0027】
図1から3、並びに、図5及び6における非生物的なCOの除去後の結果として生じる残りのガスの流れ、並びに、図4における全発酵ガスは、二酸化炭素からの水素の分離を可能にするために、プロセスA、B、C、D、若しくは、E(それぞれ図8から12に描写されている)、又は、それらのいかなる組合せも使用して処理することができる。ガス化装置/シフト反応由来の二酸化炭素及び水素の流れも、プロセスAからEに送ることができる。
【0028】
図1では、蒸発装置由来の濃縮されたアンモニウムカルボキシレート溶液が、十分に混合される反応装置に送られて高分子量(HMW)の第三級アミン(例えば、トリオクチルアミン、トリエタノールアミン)と接触される。トリオクチルアミン等のHMWアミンは水に非常に溶けやすいわけではないため、前記反応装置は十分に混合されなければならず、必要に応じて、界面活性剤を添加することができる。この十分に混合される反応装置において、残りの水は一掃され、アンモニウムカルボン酸塩を分割させ、HMWアミンカルボキシレートを形成し、気体浄化装置に送られて発酵ガスから非生物的なCOを除去し、重炭酸アンモニウム緩衝剤を回収するアンモニアを放出する。結果として生じるHMWアミンカルボキシレートは、温度が200℃を超えて上げられる反応型蒸留塔に送られる。この箇所で、HMWアミンカルボキシレートは、カルボン酸及びHMWアミンに熱的に分割される(1気圧で、典型的なクラッキング温度は、酸の分子量に応じて150から200℃である)。前記酸は塔の上部を離れ、リボイラー内のHMWアミンは反応装置まで再循環されて当該プロセスを繰り返す。
【0029】
図2におけるプロセスは、図1におけるプロセスに類似しており、相違点は、LMW第三級アミン(例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン)が第一に使用され、アンモニアを一掃することである。第一級及び第二級アミンも使用することができるけれども、アミド形成が回避されるため第三級アミンが好ましい。LMWアミンは、トリオクチルアミン等のHMWアミンよりも水に溶けやすく、当該プロセスをより能率的にすることができる。蒸発装置由来の濃縮されたアンモニウムカルボキシレート溶液は、蒸留塔に送られてLMWアミンに接触する。この塔では、アンモニア全て、及び、水の大部分(又は全て)が一掃される。この場合、トリメチルアミン及びトリエチルアミンは、水よりも揮発性であるため、水/アンモニアの流れからそれらを回収するいくつかの手段が実行されない限り勧められないことに注目されたい。あるいは、アンモニアのみを別の塔又は反応装置において第一に一掃することができ、LMWアミンが反応し、LMWアミンカルボキシレートを形成するのを可能にする。次に、別の蒸留塔において、水及びいかなる未反応のLMWアミンもLMWアミンカルボキシレートから分離される。前記水が発酵に送られる前に、未反応のLMWアミンは前記水から水蒸気ストリッピングすることができる。この代替の処理が選ばれる場合、従って、トリメチルアミン及びトリエチルアミンを使用することができる。これに続いて、LMWアミンカルボキシレートは、次に、別の塔においてHMWアミン(例えば、トリオクチルアミン)と接触し、アミンを切り換えさせる。LMWアミンは塔の上部を介して一掃されて、当該プロセスまで再循環され、HMWアミンカルボキシレートを離れる。次に、図1と同じ方法で、HMWアミンカルボキシレートは、さらに別の塔において、上部から離れるカルボン酸を生じるよう熱的に分割され、リボイラー内のHMWアミンは当該プロセスを繰り返すよう再循環される。
【0030】
図3において、当該プロセスはカルボン酸も生じるが、炭酸アンモニウム又は重炭酸アンモニウムではなく緩衝剤として炭酸カルシウムを使用することにより生成される、アンモニウムカルボン酸塩ではなくカルシウムカルボン酸塩を相手にする。蒸発装置由来の濃縮されたカルシウムカルボキシレート溶液は、反応装置において、LMWアミン(例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン)と接触され、発酵ガス由来の二酸化炭素が添加される。炭酸カルシウムがこの反応から沈殿して発酵に再循環され、LMWアミンカルボキシレートが形成される。依然としていくらか水を含有するLMWアミンカルボキシレート溶液は、前記水の大部分(又は全て)が分離される蒸留塔に送られ、塔の上部から離れる。前記水に依然として存在するいかなる未反応のLMWアミンも、前記水を発酵まで送り戻す前に水蒸気ストリッピングされる。LMWアミンがイオンの形をとらないことを確実にするよう、ライムがストリッパーに添加される。LMWアミンカルボキシレートは、次に、第二の塔に送られてHMWアミンと代わり、HMWアミンカルボキシレートを形成し、一方、LMWアミンは上部から離れ再循環される。図1及び2にあるように、第三の塔において、HMWアミンカルボキシレートは、カルボン酸及びHMWアミンに熱的に分割され、当該プロセスを繰り返すよう再循環される。
【0031】
図1から3では、カルボン酸が生成される。これらの酸は、図13に描写されているオプションA又はBを使用してアルコールへとさらに加工することができる。オプションAでは、カルボン酸は蒸発され、次に、酸をケトン、水、及び、二酸化炭素に変換するために触媒(例えば、酸化ジルコニウム)が使用される触媒ベッドに通して送られる。二酸化炭素と水を分離した後、次に、図1から3のプロセスAからE(図8から12)のうちの1つ又は組合せを使用して精製された発酵及び/又はガス化由来の水素でケトンを水素化することができる。触媒(例えば、ラネーニッケル、白金)をこの水素化に使用することができる。この水素化からの最終生成物は、第二級アルコールである。あるいは、オプションBにおいて、HMWアルコール(例えば、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール)を使用してカルボン酸をエステル化することができる。これは、上部から水を絶えず除去する間に、蒸留塔において行われる。結果として生じるHMWアルキルエステルを、次に、別の反応装置において、図1から3のプロセスAからE(図8から12)のうちの1つ又は組合せを使用して精製された発酵及び/又はガス化由来の水素を用いて触媒(例えば、ラネーニッケル)を使用して水素化分解する(すなわち、水素の添加により分割する)ことができる。この水素化分解から、HMWアルコール、及び、前記カルボン酸由来の対応する第一級アルコールが得られる。第二の蒸留塔は、上部から塔を離れる第一級アルコール生成物からHMWアルコールを分離するために使用され、下部のHMWアルコールはエステル化まで再循環される。
【0032】
図4は、緩衝剤として炭酸カルシウムを使用して発酵が行われる、従って、カルシウムカルボン酸塩が生成物であるプロセスを描写している。これらの塩は、溶液から沈殿又は結晶化されるまで蒸発装置を使用して濃縮される。結晶化されたカルシウムカルボン酸塩は母液から濾過されて乾燥機に送られ、濾液内の母液は濃縮器の濃縮の側まで再循環される。不純物の蓄積を回避するために、母液の一部は抜かれ、不純物が未消化の生成物において最終的に当該プロセスを離れる発酵まで送り返すことができる。乾燥した結晶化されたカルシウムカルボン酸塩は熱変換装置に送られ、約400℃まで加熱されてケトンに変換される。この反応からの副産物は、発酵まで再循環される炭酸カルシウムである。図4のプロセスAからE(図8から12)のうちの1つ又は組合せを使用して精製された発酵及び/又はガス化由来の水素を使用して、図13のオプションAと同じ方法で、ケトンは、次に、触媒(例えば、ラネーニッケル)を使用して反応装置内で水素化される。このプロセスからの最終生成物は、第二級アルコールである。
【0033】
図5は、図13のオプションBにあるように第一にカルボン酸を生成することのない、アンモニウムカルボン酸塩からの第一級アルコールの直接生産に対するプロセスを例示している。蒸発装置由来の濃縮されたアンモニウムカルボキシレート溶液がエステル化の塔に送られ、カルボン酸と類似の方法(図13、オプションB)でエステル化されることになるHMWアルコール(例えば、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール)と接触される。エステル化が発生するに従い、HMWアルキルエステルに向けての平衡を駆動するために、水及びアンモニアが塔の上部からとぎれなく除去される。結果として生じるHMWアルキルエステルは、次に、反応装置において、図5に示されているプロセスAからE(図8から12)のうちの1つ又は組合せを用いた精製後の発酵及び/又はガス化由来の水素を使用して水素化分解される。この水素化分解から、対応する第一級アルコールが生成され、HMWアルコールが回収される。上部から出ていく前記第一級アルコールの生成物と下部から出ていきエステル化まで再循環されるHMWアルコールを分離するために第二の蒸留塔が使用される。
【0034】
図6におけるプロセスは図5に類似しており、相違点は、カルシウムカルボン酸塩を処理しているために、エステル化を行う前にカルシウムイオンが第一にLMWアミンと切り替わらなければならないことである。この切り替えは、図3と同じ方法で行われる。蒸発装置由来の濃縮されたカルシウムカルボキシレート溶液は反応装置に入り、発酵ガス由来の二酸化炭素及びLMWアミン(例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン)と接触される。これは、発酵に再循環される炭酸カルシウムを沈殿させ、LMWアミンカルボキシレートを生成する。LMWアミンカルボキシレートは別の蒸留塔に送られ、水の大部分(又は全て)が上部を通して除去される。いかなる未反応のLMWアミンも、発酵に送られる前に、この水の流れから水蒸気ストリッピングされる。LMWアミンカルボキシレートは、次に、エステル化の塔に送られ、HMWアルコール(例えば、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール)と接触してHMWアルキルエステルを生成する。前記反応の水及びLMWアミンは塔の上部からとぎれなく除去され、HMWアルキルエステルは下部から離れる。前記エステルは、次に、反応装置に送られて、図6に示されている発酵ガス及び/又はガス化由来の精製された水素(図8から12のプロセスA、B、C、D、又は、E)で水素化分解される。この水素化分解から、対応する第一級アルコール及びHMWアルコールが得られる。第三の塔において、上部から離れる前記第一級アルコールの生成物が、下部から離れエステル化まで再循環されるHMWアルコールから分離される。
【0035】
図8は、二酸化炭素の除去のための典型的なアミンシステムであるプロセスAを示している。水素及び二酸化炭素がシステムに入り、アミンが接触される。アミンは二酸化炭素を吸収し、炭酸アミンを形成する。純水素が、次に、このアミン気体浄化装置を離れる。炭酸アミンは、次に、ストリッパーに送られて、加熱され、アミンから二酸化炭素を分割する。二酸化炭素はシステムを離れ、アミンは、次に、当該プロセスを繰り返すよう再循環される。
【0036】
図9はプロセスBを示している。このプロセスにおいて、水素/二酸化炭素の流れは、水において(ボイラーから又はガス化装置からの)灰と接触する。アルカリ性の灰は、二酸化炭素を吸収し、従って、水素を精製する。結果として生じる炭化灰は、次に、野外に戻され、肥料として使用することができる。
【0037】
図10はプロセスCを示している。このプロセスにおいて、水素/二酸化炭素の流れは加圧され、水素に対しては透過性であるが、二酸化炭素に対しては透過性ではない膜(例えば、パラジウム膜)に送られる。透過水内の水素は純である。拒絶されたもの、又は、濃縮水の流れは依然としていくらかの水素を有しているため、さらなる水素回収のためにプロセスA、B、D、又はEに送ることができる。オプションとして、依然として高圧にある二酸化炭素の流れをタービンに送り、そこから、放出の前にいくらかの成果を回収することができる。
【0038】
図11は、典型的な圧力スウィング吸着(PSA)システムであるプロセスDを例示している。PSAでは、2つ以上の吸着装置を使用して、精製のためにガスの流れ由来の不純物又は不必要な成分を吸着する。図11には、2つの吸着装置のみが例として示されているが、さらに加えることができる。図11において、水素/二酸化炭素の流れは加圧され、1つの吸着装置に通して送られるが、もう一方の吸着装置には送られない。三方弁により、いかなる時も1つの吸着装置のみが吸着を行っていることが確実にされる。二酸化炭素が吸着され、純水素がシステムを離れる。同時に、もう一方の吸着装置は、真空を適用することによって脱着されている。純二酸化炭素は、真空ポンプを通ってシステムを離れる。ここでも、三方弁が、いかなる時も、吸着している側を真空ポンプに吸引させないようにしている。吸着している側が二酸化炭素で満たされると、三方弁は切り換えられ、次に、脱着を始めるためこの吸着装置に真空が適用され、もう一方の吸着装置は、吸着モードを開始するために加圧された水素/二酸化炭素の流れを受け始める。1つの吸着装置からもう一方の吸着装置への切り換えは、ガスの流れの実質的にはとぎれのない処理を可能にする。
【0039】
図12は、水素/二酸化炭素の流れを加圧すること、及び、圧力に応じて冷却を適用することから成るプロセスEを示している。このプロセスからの生成物は、純水素に加えて、化学又は食品市場に売却することができる液体炭酸である。
【0040】
図1から3、及び、5から6では、HMWアミンの流れ及びHMWアルキルエステルの流れ等の流れにおいて不純物除去が必要であり得る。ボックスA若しくはB、又は、連続してA及びBの両方、並びに、ボックスC若しくはD、又は、連続してC及びDの両方を、それらの図に示されているように使用することができる。
【0041】
図14は、図1から3に示されているカルボン酸の生成における不純物除去及びHMWアミンの流れにおける洗浄のためのプロセスであるボックスAを示している。図14に描写されているこの特定のプロセスが開示されてきた。この方法は、固体又は沈殿した不純物を処理する。HMWアミンは、固体/液体分離器(例えば、フィルター、遠心分離機、沈殿槽+フィルター)を通り抜け、固体又は沈殿した不純物が液体の流れから除去される。固体の不純物はHMWアミンに浸透されるため、溶媒(例えば、ヘキサン、LMWアミン)を使用して、HMWアミンを洗い流すことができる。続いて、溶媒/HMWアミンの流れは、次に、蒸留作用によって分離される。HMWアミンは、次に、当該プロセスに再循環されるが、溶媒は洗浄を繰り返すよう再循環される。任意選択で、熱い、又は、温かな不活性ガス(例えば、N、Ar)を前記固体を通して吹きつけ、いかなる残りの溶媒もストリッピングし、蒸留濃縮器に送って回収することができる。この濃縮器/蓄圧器において、不活性ガスは溶媒から取り除かれ、再循環される。固体の不純物は、次に、燃焼のためガス化装置又はボイラーに送られる。
【0042】
図15は、図1から3に描写されているカルボン酸生成において、不純物も除去し、HMWアミンの流れ(例えば、トリオクチルアミン)も洗浄するボックスBを例示している。この方法は、水溶性でHMWアミンにはほとんど溶けない、液体の非沈降性不純物を処理する。HMWアミンは、HMWアミンの相と不純物の相を分離するのが可能とされるコアレッサーまで進む。不純物はデカントされ、従って、分離される。オプションとして、HMWアミンの相は、さらに精製するために、水で向流的に洗浄することができる。この洗浄からの水は単純に処分される。しかし、そのようなオプションは、HMWアミンの流れにおける一部の不純物が耐えることができ、且つ、洗浄がこの廃水の流れに対してHMWアミンのいくらかの損失を引き起こすようになるため、溶媒(例えば、ヘキサン)を用いた向流抽出がその回収のために使用されない限り勧められない。不純物の相は、所望であれば、この流れにおいて損失されたいかなるHMWアミン(又は、HMWアミンカルボキシレート)も回収するために、向流溶媒(例えば、ヘキサン、LMWアミン)抽出を受けることができる。次に、HMWアミン/溶媒の流れを蒸留により分離し、HMWアミン及び溶媒を当該プロセスのその対応する部分に再循環させることができる。向流溶媒抽出を出た後、不純物は溶媒で飽和され、所望であれば、熱い不活性ガス(例えば、N)でその不純物を水蒸気ストリッピングすることよって回収することができる。次に、ストリッパーからのこの流れは蒸留濃縮器に送られ、溶媒は濃縮及び回収され、不活性ガスは、再循環されることになる液体から移動する。溶媒を含まない不純物は、次に、燃焼のためボイラー又はガス化装置に送られる。
【0043】
図16は、不純物を除去し、水素化分解に送られる前にHMWアルキルエステルの流れを精製するボックスCを示している。一般に、水素化及び水素化分解の触媒は、毒の投与に対して感受性が高く、不純物の存在は、不必要な水素の消費を引き起こす場合がある。従って、このエステルの流れにおいて高い純度を得ることが必要な場合がある。ボックスCは、まさにボックスAのように、固体又は沈殿した不純物を処理する。エステル化の塔を離れたHMWアルキルエステルは固体/液体分離器(例えば、フィルター、遠心分離機、沈殿槽+フィルター)に送られ、固体が液体から分離される。分離器を離れた液体は、主にHMWアルキルエステル、いくらかのHMWアルコール、及び、<0.1%の不純物をおそらく含有するであろう。HMWアルキルエステルに浸透した固体の不純物は、溶媒(例えば、ヘキサン)を使用して洗浄することができる。溶媒及びHMWアルキルエステルは、次に、蒸留によって分離され、溶媒を抽出まで再循環し、HMWアルキルエステルを蒸留に送る。オプションとして、固体の不純物を通して熱い不活性ガス(例えば、N、CO)を吹きつけることによって固体の不純物を溶媒からストリッピングすることができる。この流れは、次に、蒸留濃縮器に送られ、溶媒は濃縮して回収され、不活性ガスは液体から取り除かれて再循環される。最後に、不純物の流れを、燃焼のためボイラー又はガス化装置に送ることができる。
【0044】
図17は、不純物を除去する、及び、水素化分解されるよう送る前にHMWアルキルエステルの流れを精製するボックスDを描写している。まさにボックスBのように、ボックスDは、水には溶けるがHMWアルキルエステルの相にはほとんど混和できない液体の非沈降性不純物を処理する。エステル化の塔を出たHMWアルキルエステルの流れは、前記相が分離するのを可能とされるコアレッサーに送られる。不純物の相はデカントされ、HMWアルキルエステルの相は向流洗浄に送られるが、これは、水素化分解に必要とされる場合がある高い純度のために最後の磨きを与えるため必要である。HMWアルキルエステルで飽和された、向流洗浄からの洗浄水はエステル化に送り返すことができるため、所望であれば、損失を回避することができる。HMWアルキルエステル(及びいくらかのHMWアルコール)で飽和された、コアレッサーからのデカントされた不純物は、エステル(及びアルコール)を回収する(さもなければ損失され得る)向流溶媒抽出を受けるというオプションを有する。溶媒(例えば、ヘキサン)及びHMWアルキルエステルは、次に、蒸留によって分離され、溶媒を再循環させ、エステルを水素化分解に送る。向流抽出由来の溶媒で飽和された不純物の流れから溶媒の回収が所望される場合、熱い不活性ガス(例えば、N、CO)を使用して、不純物から溶媒をストリッピングすることができる。不活性ガス/溶媒の流れは蒸留濃縮器に送られて、溶媒は濃縮及び回収され、不活性ガスは液体から取り除かれ再循環される。最後に、溶媒を含まない不純物は、ボイラー又はガス化装置に送られる。
【0045】
図14から17における任意のプロセスのうちどのプロセスの選択も、経費検討によって決定することができる。
【0046】
以下の実施例は、本発明の特定の実施形態を実証するよう含まれている。以下の実施例に開示されている技術は、本発明の実施において十分に機能するよう本発明者等によって発見された技術を説明しているということは当業者により正しく理解されるべきである。しかし、当業者は、本開示に照らして、開示された、本発明の真意及び範囲から逸脱することなく類似の結果を依然として得る特定の実施形態において多数の変更を行うことができるということを正しく理解するべきである。
【実施例1】
【0047】
発酵の組立て
発酵混合物は、紙80%及び肥料20%の比を含有し、最終的な構成は、16グラムの紙の微粉、4グラムの肥料、225mLの水混合物(HO、NaS、システイン、HCl)、及び、25mLの種接種材料、微生物の供給源、1−L反応フラスコ6つ、500mLフラスコ内にちょうど半分の量の構成要素全てを有した反応装置1つ、並びに、150mL反応ボトル内にちょうど3/20の量の最初の構成要素を有した反応装置2つであり、全てにセプタムトップを装着した。反応体を共に混合し、次に、5分間窒素をパージした後、密封して27℃近くの温度を有したインキュベーター内でとぎれなく撹拌した。窒素パージによって(例えば、壊れた針を直すために)反応器を開けた時はいつでも、最小限の空気暴露を許可した。発酵中異なる時間でガスの濃度を収集して分析できるよう、2日おきに17日間試料を設けた(Domke、2004)。目的は、発酵ガス内に生成されたCOに対するHの比を決定することであった。
【0048】
反応器を18日目に分析し、二酸化炭素に対する水素の比は0.01から0.13モルH/モルCOに及び、平均は0.07モルH/モルCOであることを明らかにした。これらの結果は、MixAlcoプロセスから形成されたエステルを水素化して、図19において見られるもの等の混合アルコールを生成するのに必要とされる水素の供給源として発酵ガス内の水素を使用することができるということを示している。
【0049】
実験の終結にて、二酸化炭素に対する水素の比を決定するために全9つの発酵を分析した。結果は表1及び表2に示されている。
【0050】
【表1】

【0051】
【表2】

結果は、0.07という平均値を有し、0.01から0.13までに及ぶ、二酸化炭素に対する水素の比を示した。観察した最も低い水素の割合は、3日目の1.93%であり、最も高い割合は、15日目の11.78%であった。検査した全ての日に対する平均の水素の割合は、5.93%であった。
【0052】
これらのデータは、発酵中、反応によって水素が副産物として生成されることを証明している。従って、発酵から回収することができる全エネルギーは、前もって考えられていたものよりも高い。これは、水素が他の供給源から生成される必要がない可能性があるため、MixAlcoプロセスにおけるコストを非常に削減するであろう。
【0053】
長時間6.5のpHを維持した反応器は、最大の二酸化炭素に対する水素の比を生じなかった。水素を生成するに従い、その一部が消えたか、又は、再度反応した。また、水素の含有量は、時間のパターンに従っているようには見えず、代わりに、無作為であるよう見えた。これは、反応器から漏れた水素から生じ、前記比を有意に下げ得る。漏れるガスの量を制御することは、高いH/CO比を得ることにおいて重要であり得る。
【0054】
及びCOよりも多い量で窒素が存在した。これは、窒素パージのため予測されることである。これは、なぜ反応器内の酸素の含有量が非常に低いのかということも説明する。窒素パージは、酸素を不活性な窒素ガスと代えるよう設計される。従って、窒素の数に基づき計算を行う必要はなく、H及びCOの比は、おそらくこの実験においてはるかにより重要である。
【0055】
種間の水素移動も、この実験において生じた可能性がある。これは、遊離ガスの相における水素を低分子量のカルボン酸と反応させ、高分子量のカルボン酸と二酸化炭素を形成するのを可能にする。この反応が生じた場合、前記ガスの水素の含有量は減少した。
【0056】
最後に、熱がH及びCOの比に影響を与える場合があり、いくつかのシステムにおいて制御することができる。
【0057】
概して、この実験により、水素がこの特定の発酵混合物により生成され、残りのガスから分離されることになった場合に使用することができるということが示されている。
【実施例2】
【0058】
pHの維持
バッチ嫌気発酵において直面している1つの主な問題は、微生物が生き残り、発酵を行うことができるよう、嫌気状態でpHを中立性近くに維持することである。この課題を果たすために、発酵の容器にはセプタムストッパーが設けられ、三方弁に取り付けられた22ゲージの針及び注射器を使用し、各試料を汲み出して検査した。0.5の増加量で5.0から10.0に及ぶpH紙を用いてpHを検査した。pHが低すぎる場合、所定の量の0.016M重炭酸アンモニウム溶液を発酵に添加し、pHを7まで戻した。添加した量は、希釈された氷酢酸、並びに、表3及び図18において見られるのと同じ重炭酸アンモニウム溶液を使用して行われた適定に基づき決定した。pHが7.0に戻るまで、特定の量の重炭酸アンモニウム溶液が添加されるに従いpHを検査した。図18は、発酵が第一に酢酸を生成したため、発酵を中立性まで戻すのに必要とされるおおよその量の重炭酸アンモニウム溶液を提供した。表による第一の添加後に各反応器に添加される量を変え、ほとんど変化は観察されなかった。pHが実質的に下がったようには見えなかった場合、pHが危険な酸レベルまで下がらず、微生物に影響を与えないことを確実にするために、より多くの重炭酸アンモニウム溶液を添加した。
【0059】
【表3】

実験の間、発酵試料は、最初の2日以内にpHを下げ始めたが、反応器の多くを8日目まで初期状態に戻さず、pHを7.0以下に下げた。大部分の反応器が、pH7.0から8.0の間で変動し、次に、ほぼ5日目にpH6.5まで非常に急速に下がる。これは、発酵がついに安定化し、酸が生成し始めていることを示しているよう思える。毎日添加した重炭酸アンモニウムにかかわらず、反応が非常に速いペースで生じ、pHを6.5に保つために十分な酸を生成しているように思える。
【実施例3】
【0060】
ベント
この実験中に取り組んだ別の問題は、水素が極度に小さい分子であり、発酵中に使用される容器が水素を通さないと証明されなかったことであった。従って、厚いセプタムストッパー及びクリンプシールを使用して容器の開口部を最もよく密封し、22ゲージの針を使用して容器をベント管路に取り付けた。25ゲージの針を最初に使用したが、短すぎて試料を取り出すのを可能にすることができずに終わり、22ゲージの針を使用した。針に関する別の問題は、セプタムを壊れやすくみせてしまう鋭い穴をセプタムに残し、このことが、おそらく水素ガスを漏らしてしまうといった考えに導くことであった。従って、圧力増大を可能にするために実験の2日目から最終日まで針が除去されると、最大量の水素を含むことができるようにセプタム全てを取り換えた。この手順の間、13日目の反応器にひびが入り、使用できなくなった。発酵を、従って、プラスチックの反応ボトルに移し、ガラスのセプタム管をその中に挿入して、大きなゴムストッパーを使用し密封した。この反応器は、低いpHをとぎれなく維持し、低い水素生成を依然として生じた。これは、他のガラスの容器ほど密封されないプラスチックの反応ボトルの使用、又は、16日目に過度の重炭酸アンモニウム溶液を容器にうっかり添加したという事実によって説明することができる。
【0061】
反応器がホース内に穴をあけることを可能にして煙出しを生じるため、反応器の圧力が増大せずガラスにひびを入れないようにするために、三方弁上のベント管路に反応器も取り付けた。この換気及び試料採取技術は、反応器が開いたままにされることがなかったため、発酵が実験中に最小限量の空気に曝露されるのを可能にした。発酵が始まると、セプタム内で針が折れて取り換えることが必要とされる場合に備えて、フラスコのみを開けた。セプタムを取り換えた際、窒素パージを使用していかなる酸素も不純物も反応器内に導入されるのを防ぎ、従って、最初の状態を維持した。最後の反応器を組み立てた日は、大きなガス試料を得ることができるようにガス圧を増大させるために、一晩反応器にベントを与えなかった。反応器全てのセプタムを取り換え、容器に対して可能な最良の密封を得るために最終日の密封に先立ちパージするのを可能にした(本明細書において参照により援用するAiello−Mazzarri et al.,Bioresource Technology,97:47−56 2006)。
【0062】
本発明の例証的な実施形態のみが明確に記述されてきたけれども、これらの実施例の修正及び変更が、本発明の真意及び意図された範囲から逸脱することなく可能であることを正しく理解されたい。
【0063】
本出願は、2006年12月1日に出願した米国仮特許出願第60/868,251号に基づく優先権を主張するものであり、全内容を本出願において援用する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボン酸又はカルボン酸塩、及び、水素ガスを生成するためにバイオマスを発酵するステップ;
前記水素ガスを回収するステップ;並びに、
前記水素ガスを使用して前記カルボン酸又はカルボン酸塩をアルコールに変換するステップ;
を含むバイオマス変換の方法。
【請求項2】
前記水素ガスが、二酸化炭素及び水素ガスの流れから回収され、回収が、アミン吸収装置を使用した前記流れからの二酸化炭素の抽出を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記水素ガスが、二酸化炭素及び水素ガスの流れから回収され、回収が、灰を使用した前記流れからの二酸化炭素の吸収を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記水素ガスが、二酸化炭素及び水素ガスの流れから回収され、回収が、膜を使用した前記流れからの水素ガスの精製を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記水素ガスが、二酸化炭素及び水素ガスの流れから回収され、回収が、圧力スウィング吸着法を使用した前記流れからの水素ガスの精製を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記水素ガスが、二酸化炭素及び水素ガスの流れから回収され、回収が、圧縮続いて冷却を使用した前記流れからの水素ガスの精製を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
圧縮続いて冷却を使用して、前記流れから液体炭酸を生成するステップをさらに含む請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記水素ガスが、二酸化炭素及び水素ガスの流れから回収され、回収が、膜を使用した前記流れからの水素ガスの精製を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記カルボン酸又はカルボン酸塩が、第一級アルコールに変換される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記カルボン酸又はカルボン酸塩が、第二級アルコールに変換される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
バイオマスを発酵するステップが、NHHCO緩衝剤を使用するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
バイオマスを発酵するステップが、CaCO緩衝剤を使用するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
高分子量のアミンを使用して前記カルボン酸又はカルボン酸塩を抽出するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
固体を使用して、前記抽出ステップ後の前記高分子量のアミンから不純物を除去するステップ;及び
前記抽出ステップに前記高分子量のアミンを再循環させるステップ;
をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
液体を使用して、前記抽出ステップ後の前記高分子量のアミンから不純物を除去するステップ;及び
前記抽出ステップに前記高分子量のアミンを再循環させるステップ;
をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
高分子量のアルキルエステルを使用して、前記カルボン酸又はカルボン酸塩をアルコールに変換するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
固体を使用して、前記変換ステップ後の前記アルキルエステルから不純物を除去するステップ;及び
前記変換ステップに前記高分子量のアルキルエステルを再循環させるステップ;
をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
液体を使用して、前記変換ステップ後の前記アルキルエステルから不純物を除去するステップ;及び
前記変換ステップに前記高分子量のアルキルエステルを再循環させるステップ;
をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
カルボン酸又はカルボン酸塩、及び、水素ガスを生成するためにバイオマスを発酵するステップ;
前記水素ガスを回収するステップ;並びに、
前記水素ガスを酢酸に変換するステップ;
を含む、バイオマス変換の方法。
【請求項20】
発酵ブロス内でカルボン酸又はカルボン酸塩へバイオマスを発酵させるため、並びに、二酸化炭素及び水素のガスの流れを生成するための発酵装置;
前記発酵ブロスから前記カルボン酸又はカルボン酸塩を抽出するための抽出装置;
前記水素ガスと前記二酸化炭素を分離するためのガス抽出装置;並びに、
前記水素ガスを使用して前記カルボン酸又はカルボン酸塩からアルコールを生成するための生成装置;
を含むバイオマス変換システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公表番号】特表2010−511387(P2010−511387A)
【公表日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−539516(P2009−539516)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【国際出願番号】PCT/US2007/086106
【国際公開番号】WO2008/070561
【国際公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(507191005)ザ テキサス エイ・アンド・エム ユニヴァーシティ システム (9)
【Fターム(参考)】