説明

バイオ廃棄物処理

バイオ廃棄物を処理する方法であって、(1)嫌気性条件下での病原菌削減段階において、あらかじめ決められた期間にわたり、中温の範囲内の温度において、実質的に生のバイオ廃棄物を発酵させる工程、及び(2)続いて、固体相及び液体相を分離して、発酵ケーク及び発酵リカーを製造す工程を含んでなる方法。当該発酵ケークは、ドライベースで少なくとも15%の固形物を有し、500mg/Lを超えるアンモニア、1,000mg/Lを超える全揮発性脂肪酸(tVFA)、及び、乾燥固形物1gあたり100,000cfu未満の大腸菌を含有する。当該発酵リカーは、10,000mg/Lを超えるCOD、500mg/Lを超えるアンモニア、1,000mg/Lを超えるtVFA、及び、5,000mg/L未満の懸濁固形物を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水汚泥及び動物廃棄物といったバイオ廃棄物の処理に関連する製品及びプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
下水汚泥は、地方自治体における廃水処理中に沈澱する物質であり、典型的には家庭廃水及び工業起源の廃水を含んでなる。
【0003】
動物廃棄物は、典型的には、動物が限られた面積内に保護されかつ飼育されている、農場又は肥育場での動物飼育作業(AFO)から生じる。AFOは、動物、飼料、厩肥、及び尿、加えて生産作業を、狭い土地面積に密集させる。飼料は、牧草地、野原、又は放牧場に動物を放牧させるよりもむしろ、この動物に対して与えられている。一般的なタイプのAFOは、酪農、ウシ肥育、養鶏、及び養豚を含む。AFOに関連する混入は、水質を低下させ、飲料水水源を脅かし、大気の質を損なうことがある。しかしながら、もし適切に処理され使用されるなら、動物飼育作業からの厩肥は、価値ある資源となり得る。
【0004】
バイオ廃棄物は、肥料及び土壌改良剤の材料として、農産業において広く使用されている。廃棄物を、かかる使用に適するようにするためには、まず、その病原菌を減らすこと、及び、有機含有量を低減することにより材料を安定させること、の双方の処理をせねばならない。かかる処理のための最も一般的な方法は、しばしばMADと略される、中等温度嫌気性消化プロセスである。従来より、MADプロセスは、一般に2段階で行われていた。すなわち35℃で12〜24日間続く1次消化相、及び、それに続く14日間の貯蔵である。1次消化により、有機含有物の一部をメタンへ転換する。貯蔵は、病原菌レベルの低下をもたらす。消化されたバイオ廃棄物は、しばしば、備蓄及び輸送のコストを削減する目的で脱水され、ケークが製造する。
【0005】
従来のMADプロセスのデメリットは、非常にゆっくりであること、及び、病原菌削減能力が非常に限られているということである。先に本出願人らは、病原菌削減と目的とした、消化に先立つ汚泥のインキュベーション処理を開示したが(UK 012693.8 11/09/2001)、これは病原菌削減能を向上し、貯蔵相の必要をなくするものであった。しかしながら、この改良されたプロセスの全処理時間はなお、かなり長いものであった。さらに、いかなる消化法を用いても、全ての消化された汚泥製品は、大腸菌のような病原菌の再増殖に貢献する傾向を示し、かつ強い剪断場、たとえば遠心分離による脱水プロセスなどにさらされると、腐敗臭を発生する。
【0006】
さらに、廃水中のリン酸塩レベルによる問題も生じる。欧州では、都市廃水処理指令(UWWTD,91/271/EEC)が、廃水の放出に関する最低基準を決めている。この規制基準は、内陸地表水、地下水、河口及び沿岸水にかかわらず、全ての廃水に適用される。基準は一般に、供給される人口サイズ及び、受入れ水域が正常、感受性、又は低感受性として分類されるかどうかとによって決められるレベルをもつ、BOD、SS、N、及びPに基づいている。廃水からBOD、SS、及びNを除去する方法は、充分に確立されたものがあるが、P除去のための現在の解決法は許容されにくい。殆どの場合、この方法において作業者は、鉄塩の使用に依存している。鉄塩による多くの深刻な欠点の中には、鉄塩の供給不足、水生環境に対する残留鉄の有害作用、及び、廃棄を要することとなる、第二鉄の使用から結果として生じる汚泥産生の実質的な増加がある。プロセスからの結果として生じるリン酸第二鉄は、バイオアベイラブルではなく、それ故、農業上の価値は殆どない。より望ましい1つの代替法は、生物学的リン除去プロセス(BNR)であって、嫌気性条件下での、ポリリン酸塩(ポリ−P)蓄積微生物の活性に基づく公知の技術である。ポリP蓄積は、複合炭素供給源の、揮発性脂肪酸(VFA)への発酵に強く依存する。典型的には、付加的な可溶の有機材料は、下水の中間炭素供給源から、下水処理プラントの嫌気ゾーン、又は専用の前発酵槽における、いずれかの発酵によって発生されることとなる。
【0007】
VFA産生は、汚泥又は、廃水中の沈澱可能な固形物の、発酵の結果であるとすることが可能である。一般に、汚泥によってVFA濃度を有意に増加させることが可能であり、混合汚泥よりも一次汚泥から、より良好な結果が得られている。殆どのフルスケールの予備発酵槽には、一次汚泥が供給される。こうした予備発酵槽は、「サイドストリーム発酵槽」と呼ばれる。一次汚泥は、一次クラリファイアの濃縮されたアンダーフローであり、時に生汚泥とも呼ばれる。いわゆる「インライン予備発酵槽」には、一次汚泥よりもむしろ、原廃水が供給される。インライン予備発酵槽の例としては、活性一次タンク(APT)が挙げられる。APTは、一次クラリファイア内で汚泥ブランケットを形成させることによりVFAを産生する。次いで、この汚泥ブランケット中で発酵及びVFA産生が起こる。汚泥は元の入口へ再循環され、この再循環プロセスにより、入ってくる固形物に対して活発に発酵している微生物を接種し、汚泥ブランケット中に形成されたVFAを洗い分けすると考えられている。これらの、BNR用の既知のVFA産生系は、濃縮されていない汚泥を用いて、大気温度において稼働する。かかる系の欠点は、大きな体積及び、低いVFA産生速度を含む。その結果として生じる汚泥分画もまた、例えば消化又は堆肥化によるさらなる処理なしでは、農業での再利用には適さない。さらに、こうした供給源からのVFAは、発酵の間に汚泥から放出される高濃度のPにより、常に混入されている。VFA中のPの存在は、それを、BNR適用においてより不適切なものにしている。こうした要因の全ては、英国のような多くの欧州の国で見出されるような通常の薄い廃水と組み合わされて、充分なBNRを、特にP除去のために、達成し得ないことを意味している。VFAであってもよいが、またメタノール、エタノール、又は、例えば食品加工工場からの高可溶性COD濃度をもつ廃水であってもよい外来性の炭素供給源は、しばしば、一貫したプラント性能を達成する唯一の確実な方法である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の欠点をなくするか、又は緩和することが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、本発明の第1の態様は、バイオ廃棄物を処理する方法であって、(1)嫌気性条件下での病原菌削減段階において、あらかじめ決められた期間にわたり、中等温度の範囲内で、バイオ廃棄物を発酵させる工程及び(2)続いて、固体相及び液体相を分離して、発酵ケーク及び発酵リカーを製造する工程を含んでなる方法を提供する。
【0010】
本発明の第2の態様は、500mg/Lを超えるアンモニア、1,000mg/Lを超える全揮発性脂肪酸(tVFA)、及び、乾燥固形物1gあたり100,000cfu未満の大腸菌を含有する、ドライベースで少なくとも15%の固形物を有するバイオ廃棄物由来の発酵ケークを提供する。
【0011】
さらに好ましくは、ケークは、ドライベースで少なくとも20%の、特に20〜45%の範囲内の固形物を有する。好ましくは、ケークは、1,000mg/Lを超える、さらに好ましくは1500〜3500mg/Lのアンモニアを含有する。ケークのtVFA含有量は、好ましくは少なくとも3000mg/L、さらに好ましくは5000〜25000mg/Lであり、大腸菌は、乾燥固形物1gあたり10,000cfu未満、さらに好ましくは1000未満の量である。
【0012】
本発明の第3の態様は、10,000mg/Lを超えるCOD、500mg/Lを超えるアンモニア、1,000mg/Lを超えるtVFA、及び、乾燥固形物1gあたり5,000mg/L未満の懸濁固形物を含有する、バイオ廃棄物由来の発酵リカーを提供する。
【0013】
発酵リカーに関しては、少なくとも20,000mg/Lの、好ましくは20,000〜40,000の範囲内のCODを含有することが望ましい。該液は、好ましくは少なくとも1500mg/Lの、理想的には1500〜3500mg/Lの範囲内のアンモニアを含有し、少なくとも3000mg/L,好ましくは5000〜25000mg/Lの範囲内のtVFAを有する。該液内の懸濁固形物は、好ましくは3000mg/L未満である。
【0014】
本発明の第2及び第3の態様による発酵ケーク及びリカーは、好ましくは本発明の第1の態様による方法によって製造されることが理解されるべきである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
病原菌削減段階(工程(i))は、実質的に生のバイオ廃棄物の発酵を包含するものであり、すなわち、廃棄物へ播種するべく添加されたか、及び/又は混合された、部分的に消化された汚泥のような播種物をもたない。さらに、従来の中等温度嫌気性消化においては、廃棄物は中等温度範囲内に保持され、部分的に消化された汚泥により、12日間を超える期間にわたり播種される。対照的に、本発明によれば、発酵された廃棄物の固体及び液体分画は、機械的手段により速やかに分離され、発酵ケーク及び発酵リカーを製造する。
【0016】
「バイオ廃棄物」とは、通常は、有害な病原菌を含有することがある、生分解性の生材料を含む産業上の操作からの結果として生じる廃棄物ストリームを指すことが理解されよう。かかる廃棄物は、例えば、下水汚泥、農場スラリー、畜殺場廃棄物、及び他の産業上のプロセスからの廃棄物を包含する。さらに、「バイオ廃棄物」とは、比較的高い有機含有量を有する廃棄物を指すべく使用され、ある程度前処理されていた可能性を排除しない。したがって、「バイオ廃棄物」とは、高い有機含有量を有する廃棄物ストリームを指すものとして、幅広く解釈されるべきである。典型的には、これは、約10,000mg/lより大きい全化学的酸素要求量(COD)を有する廃棄物となるであろうが、実際の適用では、当該材料は、30,000から100,000mg/Lまでの範囲内のCODと、5,000〜50,000mg/Lの範囲内のBOD(5日)を有するようである(BODは、フィード材料の生分解能を示す)。元の廃棄物ストリームは、1〜40%の固形物を有してよく、残りは水である。固形物は、部分的に可溶性の形状であり、部分的には懸濁された形状であろう。好ましくは、固形物レベルは3〜15%の範囲内にあるべきである。廃棄物ストリームの固形物レベルは、任意の都合のよい手段により調整されてよい。例えば、廃棄物ストリームは、廃水を用いて、病原菌削減段階の前か、その間か、又はその後にでも希釈されてよい。希釈により、全揮発性脂肪酸の回収を改善することもできることが判明している。廃棄物ストリームは、好ましくは、有意な病原菌含有量を、殆ど又は全くもたないものであるべきである。
【0017】
中等温度範囲は、約25℃から約46℃までであると理解される。本発明においては、好ましい温度範囲は、32℃と42℃の間である。
【0018】
適当な発酵期間は、約1日間から約6日間までであることが判明している。本発明においては、好ましい発酵期間は、2日間と5日間の間である。したがって、価値ある資源としての使用に適したケーク及びリカーの調製に必要な期間は、本発明の方法の実施により大いに削減される。
【0019】
本発明に適した固体液体分離法は、遠心分離、ベルトプレス、及びプレートプレスのような、全ての既知の脱水法を包含する。これらのプロセスはしばしば、例えば、凝固剤及び/又はpH調整剤を用いたプレコンディショニングを必要とし、したがって本発明の方法は、プレコンディショニング段階を包含してもよい。本方法は、20%〜40%乾燥重量の固形物含有量を有するケークに加えて、一般に5,000mg/L未満の懸濁固形物含有量を有するリカーを製造する。
【0020】
本発明のプロセスは、バッチモードで、又は連続的に操作されてよい。好ましくは、本プロセスは、病原菌バイパスを避ける目的で、連続した複数のリアクタを用いた連続モードで操作される。
【0021】
さらに好ましくは、発酵された廃棄物の少量部分が、リアクタから引き抜かれ、空気又は酸素がこの発酵廃棄物中へ導入される。発酵廃棄物中に存在するVFAは、二酸化炭素へ酸化されて熱を発生し、それは病原菌削減相にあるバイオ廃棄物を加熱するべく使用されてよく、それにより本発明のプロセスの効率が高められる。
【0022】
さらに好ましくは、少なくとも3基のベッセル、特に6基が連続的に備えられ、これにおいて発酵廃棄物の少量部分が、1以上のベッセルから移動され、1以上の他のベッセルを加熱するべく使用される。発酵廃棄物により発生された熱は、熱交換器により除去されてもよく、1以上のベッセルへ再循環される。熱除去された、酸化された発酵廃棄物は、次に、1基のベッセル、好ましくは連続的に備えられた最後のベッセルからの廃棄物と合わされ、フィルタ―プレスへと供給される。
【0023】
別法として、酸素又は空気は間隔をあけて、1基のベッセル、好ましくは最初のベッセルへ添加され、熱を発生するようにしてもよい。
【0024】
発酵プロセスの間に、いくつかの細菌種は酵素を放出し、脂質、タンパク質、及び炭化水素のような高分子を低分子へ分解する。これにより、他の細菌がそれを利用することが可能であって、最終的にはアンモニア、酢酸、及び二酸化炭素を形成する結果となる。発酵条件は、大腸菌及びサルモネラ属菌のような危険な病原菌が生存できず、破壊されるようなものであることが判明している。さらに、発酵された中間体が希釈されなければ、発酵製品は何ら病原菌の再増殖に貢献する傾向も、また遠心分離の間のように高い剪断率を受けた場合でも、悪臭を発生する傾向も示さなかった。
【0025】
発酵製品は悪臭を発生する傾向をもたないが、発酵プロセスの間に生じるメルカプタン化合物のような、匂いのある残留化学物質を含有することに注目するべきである。かかる化合物は、通常、悪臭による迷惑を避ける目的で、産物が肥料として土地へ再利用される前に、発酵ケークから除去されるべきである。ケーク悪臭の処理に適した方法は、過酸化物又は亜塩素酸塩のような酸化剤による反応を包含する。別法として、悪臭は、単純に2日間を超える期間にわたり空気に対し暴露することによる、ケークの自然の堆肥化プロセスによって除去されることも可能である。
【0026】
本発明はまた、発酵された汚泥リカーからメタンガスを製造する方法も提供する。本発明の発酵リカーのために好適な嫌気性消化法は、懸濁培養又は固定フィルム系の双方における、中等温度嫌気性消化及び、高温嫌気性消化といった、全ての既知の嫌気性消化法を包含する。アップフロー・アナエロビック・スラッジ・ベッド(Up−flow Anerobic Sludge Bed(UASB))リアクタのような固定フィルム系は、その非常に短い必要水圧保持時間の故に、本発明のために好ましい選択肢である。
【0027】
本発明は、肥料又は土壌改良剤としての使用に適した発酵ケーク及び、メタン製造に適した発酵リカーを提供するが、かかる製品に関し、他の用途が可能であることが理解されよう。例えば、ケークは、虫培養中のワームに食べさせるか、或いは、肥料化又は乾燥によりさらに処理されて貯蔵及び取扱いを改善することが可能である。さらに、リカーは、生分解性プラスチックのような、他の有用な製品の発酵のための原料としても使用されてよい。いずれの場合においても、発酵リカー及び発酵ケークの双方に関し、各々1,500mg/L及び3,000mg/Lを超える、アンモニア及びtVFAレベルが好ましい。ケークは、好ましくは、ドライベースで少なくとも20%の固形物及び、乾燥固形物1gあたり10,000cfu未満の大腸菌を有する。発酵リカーは、好ましくは20,000mg/Lを超えるCOD及び、3,000mg/L未満の懸濁固形物を有する。
【0028】
本発明の1つの好ましい実施形態においては、本方法はさらに、固体相及び液体相の分離に先立ち、発酵されたバイオ廃棄物中に含有されるオルトリン酸塩を析出させる工程を含んでなる。これにより、リカーは高VFA濃度及び、低いリン酸塩濃度を有する。
【0029】
したがって、本発明の第4の態様は、揮発性脂肪酸が高く、リン酸塩混入が低いリカーを製造するための方法であって、(1)嫌気的条件下に、あらかじめ決められた期間にわたり、中等温度の範囲内においてバイオ廃棄物を発酵させる工程と、(2)バイオ廃棄物中に含有されるオルトリン酸塩を析出させる工程、及び、(3)続いて、固体相及び液体相を分離する工程を含んでなる方法を提供する。
【0030】
オルトリン酸塩は、可溶性のリン酸塩の形状にあるリンである。
オルトリン酸塩の析出をもたらすべく、塩又は金属酸化物を用いた任意の適当な析出法が使用されてよいが、好ましくは、塩化マグネシウム又は酸化マグネシウムといったマグネシウム塩が、ストルバイト形成を達成する目的で使用される。
【0031】
好ましくは、バイオ廃棄物は、4%を超える固形物、理想的には少なくとも5%の固形物をもつ、濃縮された下水汚泥である。
【0032】
本発明の第4の態様による方法は、全体で5000mg/Lを超え、そのリン酸塩混入が50mg/L未満、さらに好ましくは、全体で7500mg/Lを超え、そのP混入が15mg/L未満であるVFAを産生する。
【実施例】
【0033】
本発明の具体的な態様を、単なる実施例として述べる。
実 施 例 1
【0034】
1L容量のボトルを、生下水汚泥で満たした。ボトルに蓋を配置した後、35℃の温度において4日間にわたり、病原菌削減段階において発酵させた。発酵された汚泥の試料は、ベンチスケールの遠心分離により脱水され、発酵ケーク及び発酵リカーの試料を製造した。
【0035】
実験の結果を以下の表1に要約する。
【0036】
【表1】

【0037】
実 施 例 2
32℃の発酵温度において実施例1の実験を2回繰り返した。第1回目の繰り返しにおいては、試料は2日間発酵され、第2回目の繰り返しでは4日間であった。その実験結果を以下の表2に要約する。
【0038】
【表2】

【0039】
実 施 例 3
実施例1より得られた発酵リカー(合計0.75L)は、メタンを製造するべく、ベンチトップUASB嫌気性リアクタ内で処理された。実験の結果を以下の表3に要約する。
【0040】
【表3】

【0041】
実 施 例 4
連続した6基のタンクを具備したフルスケールの嫌気性発酵槽は、42℃の温度において連続モードで稼働された。発酵槽は、150m/日のスループットを有し、平均水圧保持時間を4日間とした。フルスケールの遠心分離により、発酵槽からのアウトプットを脱水した。実験の結果を以下の表4に要約する。
【0042】
【表4】

【0043】
実 施 例 5
フィードとしてブタの汚泥を使用して、実施例1の実験を繰り返した。実験結果を以下の表5に要約する。
【0044】
【表5】

【0045】
実 施 例 6
実施例1の実験を繰り返した。病原菌削減段階の後、発酵汚泥は、ベンチスケールの遠心分離において、試料が脱水されて発酵ケーク及び発酵リカーを製造するに先立ち、実施例3より得られた0.5Lの消化されたリカー(すなわち、メタン製造のための嫌気性消化後の、最低の生分解性含有量を有する)で希釈された。発酵リカー中に回収された、揮発性脂肪酸(tVFA)の合計は、実施例1からの結果として生じたものよりも22%高かった。
【0046】
実 施 例 7
発酵汚泥試料(2L)は、実施例4に記述されたように稼働された、フルスケールの嫌気性発酵槽から採取された。試料はサブ試料a及びbに分けられた。MgO粉末は、双方の試料が脱水される前に、サブ試料bへ添加された。以下の表6は、リカー試料の分析を示している。
【0047】
【表6】

【0048】
表からわかるように、試料の分離に先立つMgOを用いたPの析出は、リカー試料中のオルトリン酸塩のレベルを大いに低減し、それにより、BNR適用において、例えば廃水からのP除去のために使用されてもよいリカーを提供する。
【0049】
以下の実施例8〜10は、発酵廃棄物中に存在するVFAが、いかにして二酸化炭素へ酸化されて、病原菌削減相において使用されてもよい熱を発生するかを示している。
【0050】
実 施 例 8
添付の図面の図1を参照し、本発明によるバイオ廃棄物を処理するさらなる方法についてのプロセス工程系統図を示す。プロセスは、連続した3基の発酵ベッセル(EH1、EH2、及びEH3と表示された)からなる。各ベッセルは、容積400mであり、稼働温度は35℃である。稼働中、汚泥フィードストリーム(ストリーム1)は、第1のベッセル(EH1)へ導入された。フィードストリームは次に、ベッセルEH2及びEH3を通してカスケードされた。ベッセルEH3からの発酵汚泥は、フローの50%によって二手に分けられ、フィルタ―プレス(P)へと前方へ供給され、発酵ケークストリーム(ストリーム3)及び発酵リカーストリーム(ストリーム4)とした。発酵ベッセルEH3からの発酵汚泥の残りは、容積800mを有する好気性リアクタ(ATAD)へ供給され、それに酸素ストリーム(ストリーム2)がさらに供給された。ATADリアクタ内の生物活性により、発酵廃棄物中に存在するVFAが酸化され、二酸化炭素及び熱となった。ATADリアクタ内の熱は、汚泥の温度を55℃に上昇させた。酸化された汚泥ストリームは、第1のベッセル(EH1)へ再循環され、そこで汚泥フィードストリーム(ストリーム1)と混合された。
【0051】
以下の表7は、各ストリームについて、関連するパラメータの分析を示している。酸化汚泥ストリームの熱含有量により、3基の発酵ベッセルの稼働温度(35℃)を、何ら外部の熱の投入なしに維持可能であることが判明した。
【0052】
【表7】

【0053】
実 施 例 9
図2を参照し、実施例8の方法の変形についての、プロセス工程系統図を示す。今回においてもプロセスは、連続した3基の発酵ベッセル(EH1、EH2、及びEH3と表示された)からなる。各ベッセルは、容積200mであり、稼働温度は35℃である。稼働中、汚泥フィードストリーム(ストリーム1)は、第1のベッセル(EH1)へ導入された。フィードストリームは次に、ベッセルEH2及びEH3を通してカスケードされた。ベッセルEH3から少量の発酵汚泥が移動され、容積50mを有する好気性リアクタ(ATAD)へ供給され、さらに酸素ストリーム(ストリーム2)が供給された。ATADリアクタ内の生物活性により、発酵廃棄物中に存在するVFAが酸化され、二酸化炭素及び熱となった。ATADリアクタ中の熱は、熱交換器(HEX)により除去され、第1の発酵ベッセルEH1へ再循環された。余分の熱のない酸化汚泥ストリームは、発酵ベッセルEH3からの残留する汚泥と合わされ、フィルタ―プレス(P)に向けて前方へ供給され、発酵ケークストリーム(ストリーム3)及び発酵リカーストリーム(ストリーム4)とした。
【0054】
以下の表8は、各ストリームについて、関連するパラメータの分析を示している。酸化汚泥ストリームの熱含有量により、3基の発酵ベッセルの稼働温度(35℃)を、何ら外部の熱の投入なしに維持可能であることが判明した。
【0055】
【表8】

【0056】
実 施 例 10
図3を参照し、先の方法のもう1つの変形についてのプロセス工程系統図を示す。プロセスは、連続した3基の発酵ベッセル(EH1、EH2、及びEH3と表示された)からなる。各ベッセルは、容積200mであり、稼働温度は35℃である。稼働中、汚泥フィードストリーム(ストリーム1)は、第1のベッセル(EH1)へ導入された。フィードストリームは次に、ベッセルEH2及びEH3を通してカスケードされた。第1のベッセルEH1には、酸素ストリーム(ストリーム2)が、1日当たり12時間までの期間にわたり供給された。第1のベッセル(EH1)内の生物活性により、発酵廃棄物中に存在するVFAが酸化され、二酸化炭素及び熱となった。第1のベッセル(EH1)内で発生された熱により、その内容物は35℃に維持された。したがって、第1のベッセルEH1は、一部の時間は発酵槽として、一部の時間は好気性リアクタとして作用した。発酵ベッセルEH3からの発酵汚泥は、フィルタ―プレス(P)に向けて前方へ供給され、発酵ケークストリーム(ストリーム3)及び発酵リカーストリーム(ストリーム4)とした。
【0057】
以下の表9は、各ストリームについて、関連するパラメータの分析を示している。第1のベッセル(EH1)内におけるVFAの酸化によって発生する熱により、3基の発酵ベッセルの稼働温度(35℃)を、何ら外部の熱の投入なしに維持可能であることが判明した。
【0058】
【表9】

【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明によるバイオ廃棄物を処理するさらなる方法についてのプロセス工程系統図を示す。
【図2】図1による方法の変形についてのプロセス工程系統図を示す。
【図3】図1による方法のもう1つの変形についてのプロセス工程系統図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオ廃棄物を処理する方法であって、(i)嫌気性条件下での病原菌削減段階において、あらかじめ決められた期間にわたり、中等温度の範囲内でバイオ廃棄物を発酵させる工程及び(ii)続いて、固体相及び液体相を分離して、発酵ケーク及び発酵リカーを製造する工程を含んでなる方法。
【請求項2】
前記発酵工程が、実施的に生の、播種されていない廃棄物に対し行われる請求項1に記載のバイオ廃棄物を処理する方法。
【請求項3】
発酵前の廃棄物の固形物レベルが3〜15%の範囲内にある請求項1または2に記載のバイオ廃棄物を処理する方法。
【請求項4】
前記発酵段階の温度が、25℃〜46℃の範囲内にある請求項1、2、又は3に記載のバイオ廃棄物を処理する方法。
【請求項5】
前記発酵段階の温度が、32℃〜42℃の範囲内にある請求項4に記載のバイオ廃棄物を処理する方法。
【請求項6】
前記発酵期間が、約1日間から約6日間である請求項1ないし5のいずれかに記載のバイオ廃棄物を処理する方法。
【請求項7】
前記発酵期間が、2日間と約5日間の間である請求項6に記載のバイオ廃棄物を処理する方法。
【請求項8】
前記発酵工程が、複数の連続したリアクタを用いた連続モードで稼働される前記いずれかの請求項に記載のバイオ廃棄物を処理する方法。
【請求項9】
病原菌削減段階の間に、発酵廃棄物の少量部分を移動させること、移動された廃棄物に空気/酸素を添加すること、及び、それにより産生された熱を、発酵を受けている廃棄物へ向けること、をさらに含んでなる前記いずれかの請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記熱を発生させるための工程において、バイオ廃棄物に対し酸素又は空気を、間隔をあけて添加することを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
熱の除去された、酸化された発酵廃棄物を、次に続く分離に向けて、他の発酵廃棄物と混ぜ合わせることをさらに含んでなる請求項9に記載のバイオ廃棄物を処理する方法。
【請求項12】
固体相及び液体相を分離する方法が、遠心分離、ベルトプレス、及びプレートプレスからなる群より選ばれる前記いずれかの請求項に記載のバイオ廃棄物を処理する方法。
【請求項13】
固体/液体の分離に先立ち、発酵バイオ廃棄物をプレコンディショニングする工程をさらに含んでなる前記いずれかの請求項に記載のバイオ廃棄物を処理する方法。
【請求項14】
病原菌削減段階の前か、その間か、又はその後に、廃水によりバイオ廃棄物を希釈する工程をさらに含んでなる前記いずれかの請求項に記載のバイオ廃棄物を処理する方法。
【請求項15】
分離された発酵リカーを、嫌気性消化法により消化する工程をさらに含んでなる前記いずれかの請求項に記載のバイオ廃棄物を処理する方法。
【請求項16】
固体相及び液体相の分離に先立ち、発酵されたバイオ廃棄物中に含有されるオルトリン酸塩を析出させる工程をさらに含んでなる前記いずれかの請求項に記載のバイオ廃棄物を処理する方法。
【請求項17】
オルトリン酸塩を析出させるために、発酵廃棄物に対しマグネシウム塩が添加される請求項16に記載のバイオ廃棄物を処理する方法。
【請求項18】
オルトリン酸塩を析出させるために、発酵廃棄物に対し酸化マグネシウムが添加される請求項16に記載のバイオ廃棄物を処理する方法。
【請求項19】
前記リカーが、5000mg/Lを超えるVFAを有しており、全VFAのリン酸塩混入が50mg/L未満である請求項16ないし18のいずれかに記載のバイオ廃棄物を処理する方法。
【請求項20】
請求項1ないし14のいずれかに記載の方法によって製造された発酵ケーク。
【請求項21】
請求項20に記載の発酵ケークの、土壌肥料としての用途。
【請求項22】
請求項1ないし19のいずれかに記載の方法によって製造された発酵リカー。
【請求項23】
請求項22に記載の発酵リカーの、メタンガスの製造のための用途。
【請求項24】
500mg/Lを超えるアンモニア、1,000mg/Lを超える全揮発性脂肪酸(tVFA)、及び、乾燥固形物1gあたり100,000cfu未満の大腸菌を含有する、ドライベースで少なくとも15%の固形物を有するバイオ廃棄物由来の発酵ケーク。
【請求項25】
ドライベースで少なくとも20%の固形物を有しており、1,000mg/Lを超えるアンモニアを含み、少なくとも3000mg/LのtVFA含有量を有し、かつ、大腸菌が、乾燥固形物1gあたり10,000cfu未満の量で存在することを特徴とする請求項24に記載の発酵ケーク。
【請求項26】
10,000mg/Lを超えるCOD、500mg/Lを超えるアンモニア、1,000mg/Lを超えるtVFA、及び、5,000mg/L未満の懸濁固形物を含有するバイオ廃棄物由来の発酵リカー。
【請求項27】
前記発酵リカーが、少なくとも20,000mg/LのCOD、少なくとも1500mg/Lのアンモニアを含有しており、少なくとも3000mg/LのtVFA含有量を有し、かつ、3000mg/L未満の懸濁固形物含有量を有することを特徴とする請求項26に記載の発酵リカー。
【請求項28】
揮発性脂肪酸が高く、リン酸塩混入が低いリカーを製造する方法であって、(1)嫌気的条件下に、あらかじめ決められた期間にわたり、中等温度の範囲内においてバイオ廃棄物を発酵させる工程と、(2)前記バイオ廃棄物中に含有されるオルトリン酸塩を析出させる工程、及び、(3)続いて、固体相及び液体相を分離する工程を含んでなる方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−500152(P2009−500152A)
【公表日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−518978(P2008−518978)
【出願日】平成18年7月4日(2006.7.4)
【国際出願番号】PCT/GB2006/002479
【国際公開番号】WO2007/003940
【国際公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(508004487)ユナイテッド・ユーティリティーズ・パブリック・リミテッド・カンパニー (1)
【氏名又は名称原語表記】UNITED UTILITIES PLC
【Fターム(参考)】