バイコニカル・アンテナ
【課題】 本発明の目的は、コンピュータなどの無線インターフェースとして利用可能なように小型化されたバイコニカル・アンテナを提供することにある。
【解決手段】 本発明のバイコニカル・アンテナ10aは、給電部12aとグランド部14aを有する。給電部12aとグランド部14aは、頂部A,A’に平面を有する円錐台形状である。頂部A,A’同士がギャップ16aを有して対向している。給電部12aとグランド部14aは銅などの導体で形成される。給電部12aとグランド部14aの間を誘電体18で満たしている。
【解決手段】 本発明のバイコニカル・アンテナ10aは、給電部12aとグランド部14aを有する。給電部12aとグランド部14aは、頂部A,A’に平面を有する円錐台形状である。頂部A,A’同士がギャップ16aを有して対向している。給電部12aとグランド部14aは銅などの導体で形成される。給電部12aとグランド部14aの間を誘電体18で満たしている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信をおこなうためのバイコニカル・アンテナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、超広帯域を利用する通信技術であるUWB(Ultra Wideband)が注目されている(非特許文献1、非特許文献2参照)。UWBは、3.1GHz〜10.6GHzの帯域において、幅がわずか1ns程度のパルスを使用する。周波数上で見ると、数GHz幅という非常に広い帯域を占有する格好になる。したがって、高速通信をおこなうことが可能となる。
【0003】
UWBでは通信可能距離が短いため、コンピュータと周辺機器とのデータ伝送をおこなうための無線インターフェースへの利用が考えられている(非特許文献3、非特許文献4参照)。
【0004】
UWBで使用されるアンテナには、バイコニカル・アンテナがある。バイコニカル・アンテナに関しては、特許文献1や特許文献2に、その構造などが開示されている。
【0005】
図22に示すように、一般的なバイコニカル・アンテナ40は、円錐台形状の金属がギャップ46を介して対向している。その内の一方が給電部42であり、他方がグランド部44である。給電部42は、同軸ケーブル24の中心線20に接続されている。グランド部44は、同軸ケーブル24のシールド導体22に接続されている。給電部42の側面で電磁波の放射または受信をおこなう。
【0006】
上述したように、コンピュータでUWBを使用することが考えられている。したがって、アンテナ40をコンピュータに取り付けたりする必要があり、小型化することが望ましい。特にノート型パソコンに取り付ける場合は、アンテナ40の小型化が望まれる。例えば、特許文献2では、ギャップ46の長さが数cm、その他の部分も数十cmくらいの大きさがあり、非常に大型である。なお、特許文献1には大きさは記載されていない。特許文献1や特許文献2には、アンテナ40を小型化し、コンピュータの無線インターフェースとして使用するようなことは記載されていない。従来技術のままでは、バイコニカル・アンテナ40を用いたコンピュータの無線インターフェースは断念しなくてはならない。
【0007】
【特許文献1】特開2001−185942号公報
【特許文献2】特開平9−8550号公報
【非特許文献1】日経エレクトロニクス 2003 2−17 no.841 日経BP社
【非特許文献2】NIKKEIMICRODEVICES 2003.8 No.218 日経BP社
【非特許文献3】日経エレクトロニクス 2004 2−16 no.867 日経BP社
【非特許文献4】日経エレクトロニクス 2004 3−15 no.869 日経BP社
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、コンピュータなどの無線インターフェースとして利用可能なように小型化されたバイコニカル・アンテナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のバイコニカル・アンテナの要旨は、導体で形成され、頂部に平面を有する円錐台形状である給電部と、導体で形成され、頂部に平面を有する円錐台形状であり、前記給電部とは平面同士がギャップを有して対向しているグランド部と、前記給電部とグランド部との間を満たす誘電体と、を有する。
【0010】
前記給電部とグランド部とは、円錐台形状の高さが同じであってもよい。
【0011】
前記給電部とグランド部とは、円錐台形状の高さが異なっていてもよい。
【0012】
前記給電部とグランド部において、円錐台形状の高さが異なる場合、給電部の方が円錐台形状の高さが高くなっている。
【0013】
円錐台形の高さが異なる場合、円柱形状の導体で形成され、前記グランド部の底部に接続されたグランド補強部を有する。
【0014】
前記給電部の頂部に円盤形状のリフレクターを設けてもよい。
【0015】
カットする周波数にあわせて前記円盤形状の直径が異なるようにする。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、給電部とグランド部との間を誘電体で満たすことによって、小型化が可能である。これは誘電体の比誘電率が空気よりも高く、アンテナ内での電磁波(信号)の波長を短くすることができるためである。小型化されることにより、コンピュータなどに取り付けが容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、本発明のバイコニカル・アンテナの実施形態について図面を用いて説明する。
【0018】
図1の本発明のバイコニカル・アンテナ10aは、給電部12aとグランド部14aを有する。給電部12aとグランド部14aは、頂部A,A’に平面を有する円錐台形状である。頂部A,A’同士がギャップ16aを有して対向している。給電部12aとグランド部14aの頂部A,A’同士および底部B,B’同士は平行になっている。給電部12aとグランド部14aは銅などの導体で形成される。また、給電部12aとグランド部14aの内部を樹脂などで形成し、その表面を導体で覆う構成であっても良い。これは、いわゆる表皮厚さまでしか、電磁波が導体内を伝搬できないからである。なお、後の実施例2などで示すリフレクターやグランド補強部についても同様である。
【0019】
給電部12aとグランド部14aの間を誘電体18で満たしている。すなわち、給電部12aとグランド部14aの頂部A,A’同士および側面同士は、誘電体18を介して対向している。給電部12a、グランド部14aおよび誘電体18で円柱形状になる。
【0020】
給電部12aとグランド部14aの間を誘電体18で満たすことによって、バイコニカル・アンテナ10aの小型化が可能となる。これは、空気と比べて誘電体18の方が比誘電率が高く、アンテナ10a内での電磁波(信号)の波長が短くなるためである。誘電体18としては、例えばエポキシ樹脂やアルミナなどである。なお、給電部12aとグランド部14aの間は、図1に示すように、円錐台形状の傾斜面同士の間を含む。
【0021】
バイコニカル・アンテナ10aは、信号が伝搬する中心導体20と、中心導体20を被覆する絶縁体と、絶縁体を被覆するシールド導体22とを有する同軸ケーブル24を有する。中心導体20と絶縁体とは、グランド部14aの中心を貫き、中心導体20は給電部12aの頂部Aに接続される。シールド導体22は、グランド部14aに接続されている。
【0022】
同軸ケーブル24は、コネクタ26が設けられており、種々の回路にアンテナ10aが接続できるようになっている。
【0023】
以上が本発明のバイコニカル・アンテナの基本的な形状であり、以下、図1の形状をはじめとして、種々の形状について説明する。
【実施例1】
【0024】
給電部12aとグランド部14aとが同一形状の場合について説明する。給電部12aとグランド部14aは同じ形状である。ギャップ16aの中心において、給電部12aとグランド部14aとが対象になっている。
【0025】
バイコニカル・アンテナ10aの形状の一例としては、円錐台形状の底部B,B’は直径15mm、頂部A,A’は直径2.4mm、高さは13mmである。給電部12aとグランド部14aの頂部A,A’同士が平行になっている。ギャップ6aは1.5mmである。誘電体18の比誘電率は3.6である。
【0026】
図1の場合のシミュレーション結果を図2に示す。このシミュレーションにおいては、同軸ケーブル24はグランド部14aの底部B’で終了するように設定している。シミュレーションはAnsoft社のHFSSを使用している。UWB使用帯域である3.1GHz〜10.6GHzにおいてVSWR(Voltage Standing Wave Ratio)が2以下となっている。VSWRは1に近いほうがアンテナ特性としてよく、2以下であれば十分にアンテナとして使用できる。
【0027】
実際に作成したバイコニカル・アンテナのVSWRを図3に示す。同軸ケーブル24の長さは、グランド部14aの底面B’から30〜40mmである。シミュレーション結果と同様に、UWB使用帯域においてVSWRが2以下になっている。シミュレーションと同様に、本発明はアンテナ特性が良いことがわかる。
【0028】
上記の形状から、一部の形状を変更して、種々のシミュレーションをおこない、上記の形状が最適であることを求めたので、以下に示す。
【0029】
誘電体18の比誘電率を4.0にし、ギャップ16aを変化させた場合、図4に示すように、1.5mmの場合に最も良い結果が得られた。また、ギャップ16aが1.2mmや1.8mmであっても結果は良好であった。ギャップ16aは1.2〜1.7mm程度が良く、1mmより短くなったり、2mmより長くなったりするとアンテナ特性が悪くなる。
【0030】
バイコニカル・アンテナ10aの給電部12aおよびグランド部14aの高さを変化させた場合のVSWRを図5に示す。高さが、12mmまたは13mmの場合に良好なアンテナ特性が得られている。この高さの変化は1mmの変化で、VSWRの値が大きく変化することがわかる。
【0031】
バイコニカル・アンテナ10aのアンテナ幅、すなわち給電部12aとグランド部14aの底面B,B’の直径を変化させた場合のVSWRの値を図6に示す。15mmから17mmでアンテナ特性が良いのが確認できる。13mmとなるとアンテナ特性が悪化する帯域が現れる。アンテナの小型化を考慮すると、15mmが最も良い。
【0032】
小型形状にすることを目的とすると誘電体18の比誘電率を高くすることが考えられる。このことについて、比誘電率を種々変化させたシミュレーション結果を図7に示す。比誘電率が3.6のときに最もよい結果がでており、4.0の場合でもほぼ良好な結果である。単に比誘電率を高くしても、アンテナとして所望の働きをしないことがわかる。
【0033】
以上、種々のシミュレーションおよび実験において、給電部12aとグランド部14aとの間に誘電体18を有するバイコニカル・アンテナ10aは、アンテナとして所望の働きをすることがわかった。必要な帯域でVSWRが2以下となり、アンテナとして実用的である。誘電体18を設けたことによって、従来と比べて小型化されている。小型になったことによって、コンピュータなどに取り付けたときに場所をとらないなどメリットが大きい。
【0034】
バイコニカル・アンテナ10aの製造は、(1)導体を円錐台形の形状に削りだすか、または銅板を金型で打ち抜いた電極で給電部12aとグランド部14aを形成する。また、樹脂などで円錐台形を形成し、その表面に無電解メッキなどをおこない、導体で覆ってもよい。
【0035】
(2)グランド部14aの導体の中心を貫通する穴を形成し、同軸ケーブル24をその穴に通す。
【0036】
(3)同軸ケーブル24の中心導体20を給電部12aに接続し、シールド導体22は穴の中でグランド部14aに接続する。このとき、給電部12aとグランド部14aは頂部が対向するようにする。また、給電部12aとグランド部14aとは所定のギャップ16aを有して配置される。
【0037】
(4)給電部12aとグランド部14aとの間を誘電体18で満たす。誘電体18を満たす方法は、(A)円筒形の容器に上記(3)までで形成された中間製品を入れる。(B)円筒形の容器の中に溶融された誘電体18を流し込み、誘電体18を固化させる。このとき、誘電体18に空気が入り込まないように、真空引きによって脱泡することが望ましい。すなわち、脱泡成形をおこなう。(C)容器から誘電体18が固化された中間製品を取り出し、誘電体18の不要な部分を削り、円柱形状にする。
【0038】
(5)同軸ケーブル24にコネクタ26を接続することによって、バイコニカル・アンテナ10aが完成する。なお、(5)の工程は(4)の工程の前におこなっていてもよい。
【0039】
従来と比較して、誘電体18を形成する上記(4)の工程が追加されている。(4)の工程を追加することによって、アンテナ10aの形状が小型化されるメリットがある。
【実施例2】
【0040】
給電部12bとグランド部14bとの形状が異なる場合について説明する。図8に示すように、給電部12bとグランド部14bとは、円錐台形状の高さが異なる。給電部12bとグランド部14bにおいて、給電部12bの方が円錐台形状の高さが高くなっている。
【0041】
給電部12bの頂部Aにはリフレクター30bを設ける。リフレクター30bは円盤形状である。リフレクター30bは、高域周波数を緩やかにカットする働きがある。なお、リフレクター30bの無い構成であっても良い。
【0042】
円柱形状の導体で形成され、グランド部14bの底部B’に接続されたグランド補強部28bを有する。例えば、グランド部14bの底部B’の直径とグランド補強部28bの直径は、同じである。グランド補強部28bは、グランド部14bの高さが、給電部12bより低くなっているため、グランドとしての容量が小さくなっているのを補うものである。
【0043】
バイコニカル・アンテナ10bの形状の一例を以下に示す。給電部12bおよびグランド部14bの底部B,B’と頂部A,A’の直径は、それぞれ11.0mmと2.8mmである。給電部12bの高さは8.0mm、グランド部14bの高さは5.0mmである。リフレクター30bの直径は2.8mmであり、高さは1.0mmである。グランド部14bの頂部A’からリフレクター30bまでのギャップ16bは2.8mmである。グランド補強部28bの高さは13.0mmである。誘電体18の比誘電率は3.6である。実施例1と比較して全体の高さは高くなっているが、直径が小さくなっている。
【0044】
上記の形状のバイコニカル・アンテナ10bのVSWRのシミュレーション結果を図9に示す。同軸ケーブル24が、グランド補強部28bの底面Dからはみ出さない状態でシミュレーションをおこなっている。UWBの使用帯域においてVSWRは2以下となっている。また、使用帯域外ではVSWRが高くなっている。特に3.1GHz付近で、急激にVSWRが高くなっており、アンテナとして必要な周波数のみを使用できることがわかる。すなわち、必要な帯域だけ使用することができ、アンテナ特性として良好である。また、小型になっており、場所をとらない。
【0045】
図9のシミュレーション結果に基づいて、上記の形状のバイコニカル・アンテナ10bを実際に制作し、そのVSWRの値を図10に示す。同軸ケーブル24の長さは、グランド補強部28bの底部Dから30〜40mmである。シミュレーション結果と同様の結果となっている。アンテナとして良好な結果となっている。
【0046】
上記の形状から、一部の形状を変更して、種々のシミュレーションをおこない、上記の形状が最適であることを求めたので、以下に示す。
【0047】
バイコニカル・アンテナ10bのギャップ16bを変化させた場合のVSWRのシミュレーション結果を図11に示す。ギャップ16bが2.8mmの場合に最も良いアンテナ特性となる。2.2mmや3.4mmとなると低域または高域の周波数でVSWRが2以上となり、アンテナ特性が悪化するのがわかる。
【0048】
図12に、バイコニカル・アンテナ10bの給電部12bの高さを変化させた場合のVSWRのシミュレーション結果を示す。給電部12bは、8mmのときが最もアンテナ特性がよい。また、6mmや10mmとなると低域または高域の周波数でVSWRが2以上となり、アンテナ特性が悪化するのがわかる。数ミリの高さの違いによってアンテナ特性が大きく変化するのがわかる。
【0049】
バイコニカル・アンテナ10bのグランド部14bの高さを変化させた場合のVSWRのシミュレーション結果を図13に示す。また、上記の形状の中でグランド部14bの高さを変化させてシミュレーションをおこなった場合、5.0mmが最適である。グランド部14bの高さが、4.0mm以下または6.0mm以上になると、VSWRの値が3.1GHz付近で高くなり、アンテナ特性が悪化する。
【0050】
バイコニカル・アンテナ10bのグランド補強部28bの高さを変化させた場合のVSWRのシミュレーション結果を図14に示す。グランド補強部28bの高さが13mmから15mmの場合にアンテナ特性が良いのがわかる。11mmとなると、低域周波数でVSWRが2以上となり、アンテナ特性が悪化する。これは、ある一定以上の高さとなると、グランドとしての十分な機能を確保できるからである。アンテナの小型化を考慮すると、13mmが最も良い。
【0051】
図15に、バイコニカル・アンテナ10bの幅、すなわち給電部12bとグランド部14bの底部B,B’の直径を変化させた場合のVSWRのシミュレーション結果を示す。直径が11mmまたは12mmの場合にVSWRが2以下となり、アンテナ特性がよい。アンテナの小型化を考慮すると、11mmが好ましい。
【0052】
バイコニカル・アンテナ10bのリフレクター30bの高さを変化させた場合のVSWRのシミュレーション結果を図16に示す。リフレクター30bによって、高域の周波数をカットできるのがわかる。UWB使用帯域からはずれたところでVSWRが2以上となっており、必要な周波数以外をカットできるのがわかる。リフレクター30bの高さが1.0mmまたは1.5mmでアンテナ特性が良くなっている。小型化を考慮すると、高さが1.0mmが好ましい。
【0053】
誘電体18の比誘電率を変化させた場合のシミュレーション結果を図17に示す。比誘電率3.6の場合が最も良く、その他3.0や4.0の場合もアンテナ特性はよい。したがって、単に比誘電率を高くするだけでは、アンテナの特性としては良くならないことがわかる。
【0054】
以上、給電部12bとグランド部14bの高さを異なるようにすることによって、アンテナ10bの形状を小型にできることが確認できた。コンピュータやその周辺機器に取り付ける場合に有利である。
【実施例3】
【0055】
実施例1のバイコニカル・アンテナ10aを基にして、図18に示すようにリフレクター30cを設けた場合の実施例を説明する。リフレクター30cは、給電部12cの頂部に設ける。リフレクター30cは、円盤形状である。リフレクター30cの高さは1mmである。
【0056】
リフレクター30cの直径Cを変化させた場合のVSWRのシミュレーション結果を図19に示す。直径10mmのリフレクター30cを用いると5GHz帯域をカットできることがわかる。すなわち、リフレクター30cによって、バンド・ストップ・フィルターを構成できることが確認できる。リフレクター30cによって所望の周波数をカットできる場合、アンテナ10cに接続するバンド・ストップ・フィルターを設ける必要が無くなる。
【実施例4】
【0057】
実施例2のバイコニカル・アンテナ10bを基にして、リフレクター30dの直径Cを図20に示すように変化させた場合のシミュレーション結果を図21に示す。5GHz以上の高域周波数をカットできることがわかる。小型でかつ高域の周波数をカットできることができる。高域の周波数をカットしたい場合、図20のバイコニカル・アンテナ10dを使用することによって、アンテナ10dに接続されるバンド・ストップ・フィルターなどを削除することができる。
【0058】
実施例3および実施例4において、リフレクター30c,30dによって特定の周波数をカットできることがわかった。バイコニカル・アンテナ10c,10dに接続されるバンド・ストップ・フィルターなどを削除することも可能となる。アンテナ10c,10dで特定の周波数カットをおこなっても良いし、アンテナ10c,10dに接続される回路で特定の周波数カットをおこなっても良く、アンテナ10c,10dや回路の設計の柔軟性が高まる。
【0059】
以上、実施例1から実施例4において種々の実験およびシミュレーションをおこなった。本発明は誘電体18を設けることによって、空気と比較して比誘電率が高くなるため、アンテナの小型化が可能となった。アンテナをコンピュータなどに取り付けるのも容易になり、ケーブルなしてデータの送受信をおこなうことが可能となる。また、種々の実験およびシミュレーションにより、小型でかつ最適なアンテナ特性を示すアンテナを設計することができた。
【0060】
その他、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づき種々の改良、修正、変更を加えた態様で実施できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明のバイコニカル・アンテナの構成を示す図である。
【図2】図1のバイコニカル・アンテナのVSWRのシミュレーション結果を示す図である。
【図3】図1のバイコニカル・アンテナの実際のVSWRの測定値を示す図である。
【図4】図1のバイコニカル・アンテナのギャップを変化させた場合のVSWRのシミュレーション結果を示す図である。
【図5】図1のバイコニカル・アンテナの給電部およびグランド部の高さを変化させた場合のVSWRのシミュレーション結果を示す図である。
【図6】図1のバイコニカル・アンテナの給電部とグランド部の底面の直径を変化させた場合のVSWRのシミュレーション結果を示す図である。
【図7】図1のバイコニカル・アンテナの比誘電率を変化させた場合のVSWRのシミュレーション結果を示す図である。
【図8】給電部とグランド部とが非対称になっているバイコニカル・アンテナの構成を示す図である。
【図9】図8のバイコニカル・アンテナのVSWRのシミュレーション結果を示す図である。
【図10】図8のバイコニカル・アンテナの実際のVSWRの測定値を示す図である。
【図11】図8のバイコニカル・アンテナのギャップを変化させた場合のVSWRのシミュレーション結果を示す図である。
【図12】図8のバイコニカル・アンテナの給電部の高さを変化させた場合のVSWRのシミュレーション結果を示す図である。
【図13】図8のバイコニカル・アンテナのグランド部の高さを変化させた場合のVSWRのシミュレーション結果を示す図である。
【図14】図8のバイコニカル・アンテナのグランド補強部の高さを変化させた場合のVSWRのシミュレーション結果を示す図である。
【図15】図8に示すバイコニカル・アンテナの給電部とグランド部の底部の直径を変化させた場合のVSWRのシミュレーション結果を示す図である。
【図16】図8のバイコニカル・アンテナのリフレクターの高さを変化させた場合のVSWRのシミュレーション結果を示す図である。
【図17】図8のバイコニカル・アンテナのリフレクターの比誘電率を変化させた場合のVSWRのシミュレーション結果を示す図である。
【図18】リフレクターを取り付けたバイコニカル・アンテナの構成を示す図である。
【図19】図18のバイコニカル・アンテナのVSWRのシミュレーション結果を示す図である。
【図20】リフレクターを取り付けたバイコニカル・アンテナの構成を示す図である。
【図21】図20のバイコニカル・アンテナのVSWRのシミュレーション結果を示す図である。
【図22】従来のバイコニカル・アンテナの構成を示す図である。
【符号の説明】
【0062】
10a,10b,10c,10d,40:バイコニカル・アンテナ
12a,12b,12c,12d,42:給電部
14a,14b,14c,14d,44:グランド部
16a,16b,16c,16d,46:ギャップ
18:誘電体
20:中心導体
22:シールド導体
24:同軸ケーブル
26:コネクタ
28b,28d:グランド補強部
30b,30c,20d:リフレクター
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信をおこなうためのバイコニカル・アンテナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、超広帯域を利用する通信技術であるUWB(Ultra Wideband)が注目されている(非特許文献1、非特許文献2参照)。UWBは、3.1GHz〜10.6GHzの帯域において、幅がわずか1ns程度のパルスを使用する。周波数上で見ると、数GHz幅という非常に広い帯域を占有する格好になる。したがって、高速通信をおこなうことが可能となる。
【0003】
UWBでは通信可能距離が短いため、コンピュータと周辺機器とのデータ伝送をおこなうための無線インターフェースへの利用が考えられている(非特許文献3、非特許文献4参照)。
【0004】
UWBで使用されるアンテナには、バイコニカル・アンテナがある。バイコニカル・アンテナに関しては、特許文献1や特許文献2に、その構造などが開示されている。
【0005】
図22に示すように、一般的なバイコニカル・アンテナ40は、円錐台形状の金属がギャップ46を介して対向している。その内の一方が給電部42であり、他方がグランド部44である。給電部42は、同軸ケーブル24の中心線20に接続されている。グランド部44は、同軸ケーブル24のシールド導体22に接続されている。給電部42の側面で電磁波の放射または受信をおこなう。
【0006】
上述したように、コンピュータでUWBを使用することが考えられている。したがって、アンテナ40をコンピュータに取り付けたりする必要があり、小型化することが望ましい。特にノート型パソコンに取り付ける場合は、アンテナ40の小型化が望まれる。例えば、特許文献2では、ギャップ46の長さが数cm、その他の部分も数十cmくらいの大きさがあり、非常に大型である。なお、特許文献1には大きさは記載されていない。特許文献1や特許文献2には、アンテナ40を小型化し、コンピュータの無線インターフェースとして使用するようなことは記載されていない。従来技術のままでは、バイコニカル・アンテナ40を用いたコンピュータの無線インターフェースは断念しなくてはならない。
【0007】
【特許文献1】特開2001−185942号公報
【特許文献2】特開平9−8550号公報
【非特許文献1】日経エレクトロニクス 2003 2−17 no.841 日経BP社
【非特許文献2】NIKKEIMICRODEVICES 2003.8 No.218 日経BP社
【非特許文献3】日経エレクトロニクス 2004 2−16 no.867 日経BP社
【非特許文献4】日経エレクトロニクス 2004 3−15 no.869 日経BP社
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、コンピュータなどの無線インターフェースとして利用可能なように小型化されたバイコニカル・アンテナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のバイコニカル・アンテナの要旨は、導体で形成され、頂部に平面を有する円錐台形状である給電部と、導体で形成され、頂部に平面を有する円錐台形状であり、前記給電部とは平面同士がギャップを有して対向しているグランド部と、前記給電部とグランド部との間を満たす誘電体と、を有する。
【0010】
前記給電部とグランド部とは、円錐台形状の高さが同じであってもよい。
【0011】
前記給電部とグランド部とは、円錐台形状の高さが異なっていてもよい。
【0012】
前記給電部とグランド部において、円錐台形状の高さが異なる場合、給電部の方が円錐台形状の高さが高くなっている。
【0013】
円錐台形の高さが異なる場合、円柱形状の導体で形成され、前記グランド部の底部に接続されたグランド補強部を有する。
【0014】
前記給電部の頂部に円盤形状のリフレクターを設けてもよい。
【0015】
カットする周波数にあわせて前記円盤形状の直径が異なるようにする。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、給電部とグランド部との間を誘電体で満たすことによって、小型化が可能である。これは誘電体の比誘電率が空気よりも高く、アンテナ内での電磁波(信号)の波長を短くすることができるためである。小型化されることにより、コンピュータなどに取り付けが容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、本発明のバイコニカル・アンテナの実施形態について図面を用いて説明する。
【0018】
図1の本発明のバイコニカル・アンテナ10aは、給電部12aとグランド部14aを有する。給電部12aとグランド部14aは、頂部A,A’に平面を有する円錐台形状である。頂部A,A’同士がギャップ16aを有して対向している。給電部12aとグランド部14aの頂部A,A’同士および底部B,B’同士は平行になっている。給電部12aとグランド部14aは銅などの導体で形成される。また、給電部12aとグランド部14aの内部を樹脂などで形成し、その表面を導体で覆う構成であっても良い。これは、いわゆる表皮厚さまでしか、電磁波が導体内を伝搬できないからである。なお、後の実施例2などで示すリフレクターやグランド補強部についても同様である。
【0019】
給電部12aとグランド部14aの間を誘電体18で満たしている。すなわち、給電部12aとグランド部14aの頂部A,A’同士および側面同士は、誘電体18を介して対向している。給電部12a、グランド部14aおよび誘電体18で円柱形状になる。
【0020】
給電部12aとグランド部14aの間を誘電体18で満たすことによって、バイコニカル・アンテナ10aの小型化が可能となる。これは、空気と比べて誘電体18の方が比誘電率が高く、アンテナ10a内での電磁波(信号)の波長が短くなるためである。誘電体18としては、例えばエポキシ樹脂やアルミナなどである。なお、給電部12aとグランド部14aの間は、図1に示すように、円錐台形状の傾斜面同士の間を含む。
【0021】
バイコニカル・アンテナ10aは、信号が伝搬する中心導体20と、中心導体20を被覆する絶縁体と、絶縁体を被覆するシールド導体22とを有する同軸ケーブル24を有する。中心導体20と絶縁体とは、グランド部14aの中心を貫き、中心導体20は給電部12aの頂部Aに接続される。シールド導体22は、グランド部14aに接続されている。
【0022】
同軸ケーブル24は、コネクタ26が設けられており、種々の回路にアンテナ10aが接続できるようになっている。
【0023】
以上が本発明のバイコニカル・アンテナの基本的な形状であり、以下、図1の形状をはじめとして、種々の形状について説明する。
【実施例1】
【0024】
給電部12aとグランド部14aとが同一形状の場合について説明する。給電部12aとグランド部14aは同じ形状である。ギャップ16aの中心において、給電部12aとグランド部14aとが対象になっている。
【0025】
バイコニカル・アンテナ10aの形状の一例としては、円錐台形状の底部B,B’は直径15mm、頂部A,A’は直径2.4mm、高さは13mmである。給電部12aとグランド部14aの頂部A,A’同士が平行になっている。ギャップ6aは1.5mmである。誘電体18の比誘電率は3.6である。
【0026】
図1の場合のシミュレーション結果を図2に示す。このシミュレーションにおいては、同軸ケーブル24はグランド部14aの底部B’で終了するように設定している。シミュレーションはAnsoft社のHFSSを使用している。UWB使用帯域である3.1GHz〜10.6GHzにおいてVSWR(Voltage Standing Wave Ratio)が2以下となっている。VSWRは1に近いほうがアンテナ特性としてよく、2以下であれば十分にアンテナとして使用できる。
【0027】
実際に作成したバイコニカル・アンテナのVSWRを図3に示す。同軸ケーブル24の長さは、グランド部14aの底面B’から30〜40mmである。シミュレーション結果と同様に、UWB使用帯域においてVSWRが2以下になっている。シミュレーションと同様に、本発明はアンテナ特性が良いことがわかる。
【0028】
上記の形状から、一部の形状を変更して、種々のシミュレーションをおこない、上記の形状が最適であることを求めたので、以下に示す。
【0029】
誘電体18の比誘電率を4.0にし、ギャップ16aを変化させた場合、図4に示すように、1.5mmの場合に最も良い結果が得られた。また、ギャップ16aが1.2mmや1.8mmであっても結果は良好であった。ギャップ16aは1.2〜1.7mm程度が良く、1mmより短くなったり、2mmより長くなったりするとアンテナ特性が悪くなる。
【0030】
バイコニカル・アンテナ10aの給電部12aおよびグランド部14aの高さを変化させた場合のVSWRを図5に示す。高さが、12mmまたは13mmの場合に良好なアンテナ特性が得られている。この高さの変化は1mmの変化で、VSWRの値が大きく変化することがわかる。
【0031】
バイコニカル・アンテナ10aのアンテナ幅、すなわち給電部12aとグランド部14aの底面B,B’の直径を変化させた場合のVSWRの値を図6に示す。15mmから17mmでアンテナ特性が良いのが確認できる。13mmとなるとアンテナ特性が悪化する帯域が現れる。アンテナの小型化を考慮すると、15mmが最も良い。
【0032】
小型形状にすることを目的とすると誘電体18の比誘電率を高くすることが考えられる。このことについて、比誘電率を種々変化させたシミュレーション結果を図7に示す。比誘電率が3.6のときに最もよい結果がでており、4.0の場合でもほぼ良好な結果である。単に比誘電率を高くしても、アンテナとして所望の働きをしないことがわかる。
【0033】
以上、種々のシミュレーションおよび実験において、給電部12aとグランド部14aとの間に誘電体18を有するバイコニカル・アンテナ10aは、アンテナとして所望の働きをすることがわかった。必要な帯域でVSWRが2以下となり、アンテナとして実用的である。誘電体18を設けたことによって、従来と比べて小型化されている。小型になったことによって、コンピュータなどに取り付けたときに場所をとらないなどメリットが大きい。
【0034】
バイコニカル・アンテナ10aの製造は、(1)導体を円錐台形の形状に削りだすか、または銅板を金型で打ち抜いた電極で給電部12aとグランド部14aを形成する。また、樹脂などで円錐台形を形成し、その表面に無電解メッキなどをおこない、導体で覆ってもよい。
【0035】
(2)グランド部14aの導体の中心を貫通する穴を形成し、同軸ケーブル24をその穴に通す。
【0036】
(3)同軸ケーブル24の中心導体20を給電部12aに接続し、シールド導体22は穴の中でグランド部14aに接続する。このとき、給電部12aとグランド部14aは頂部が対向するようにする。また、給電部12aとグランド部14aとは所定のギャップ16aを有して配置される。
【0037】
(4)給電部12aとグランド部14aとの間を誘電体18で満たす。誘電体18を満たす方法は、(A)円筒形の容器に上記(3)までで形成された中間製品を入れる。(B)円筒形の容器の中に溶融された誘電体18を流し込み、誘電体18を固化させる。このとき、誘電体18に空気が入り込まないように、真空引きによって脱泡することが望ましい。すなわち、脱泡成形をおこなう。(C)容器から誘電体18が固化された中間製品を取り出し、誘電体18の不要な部分を削り、円柱形状にする。
【0038】
(5)同軸ケーブル24にコネクタ26を接続することによって、バイコニカル・アンテナ10aが完成する。なお、(5)の工程は(4)の工程の前におこなっていてもよい。
【0039】
従来と比較して、誘電体18を形成する上記(4)の工程が追加されている。(4)の工程を追加することによって、アンテナ10aの形状が小型化されるメリットがある。
【実施例2】
【0040】
給電部12bとグランド部14bとの形状が異なる場合について説明する。図8に示すように、給電部12bとグランド部14bとは、円錐台形状の高さが異なる。給電部12bとグランド部14bにおいて、給電部12bの方が円錐台形状の高さが高くなっている。
【0041】
給電部12bの頂部Aにはリフレクター30bを設ける。リフレクター30bは円盤形状である。リフレクター30bは、高域周波数を緩やかにカットする働きがある。なお、リフレクター30bの無い構成であっても良い。
【0042】
円柱形状の導体で形成され、グランド部14bの底部B’に接続されたグランド補強部28bを有する。例えば、グランド部14bの底部B’の直径とグランド補強部28bの直径は、同じである。グランド補強部28bは、グランド部14bの高さが、給電部12bより低くなっているため、グランドとしての容量が小さくなっているのを補うものである。
【0043】
バイコニカル・アンテナ10bの形状の一例を以下に示す。給電部12bおよびグランド部14bの底部B,B’と頂部A,A’の直径は、それぞれ11.0mmと2.8mmである。給電部12bの高さは8.0mm、グランド部14bの高さは5.0mmである。リフレクター30bの直径は2.8mmであり、高さは1.0mmである。グランド部14bの頂部A’からリフレクター30bまでのギャップ16bは2.8mmである。グランド補強部28bの高さは13.0mmである。誘電体18の比誘電率は3.6である。実施例1と比較して全体の高さは高くなっているが、直径が小さくなっている。
【0044】
上記の形状のバイコニカル・アンテナ10bのVSWRのシミュレーション結果を図9に示す。同軸ケーブル24が、グランド補強部28bの底面Dからはみ出さない状態でシミュレーションをおこなっている。UWBの使用帯域においてVSWRは2以下となっている。また、使用帯域外ではVSWRが高くなっている。特に3.1GHz付近で、急激にVSWRが高くなっており、アンテナとして必要な周波数のみを使用できることがわかる。すなわち、必要な帯域だけ使用することができ、アンテナ特性として良好である。また、小型になっており、場所をとらない。
【0045】
図9のシミュレーション結果に基づいて、上記の形状のバイコニカル・アンテナ10bを実際に制作し、そのVSWRの値を図10に示す。同軸ケーブル24の長さは、グランド補強部28bの底部Dから30〜40mmである。シミュレーション結果と同様の結果となっている。アンテナとして良好な結果となっている。
【0046】
上記の形状から、一部の形状を変更して、種々のシミュレーションをおこない、上記の形状が最適であることを求めたので、以下に示す。
【0047】
バイコニカル・アンテナ10bのギャップ16bを変化させた場合のVSWRのシミュレーション結果を図11に示す。ギャップ16bが2.8mmの場合に最も良いアンテナ特性となる。2.2mmや3.4mmとなると低域または高域の周波数でVSWRが2以上となり、アンテナ特性が悪化するのがわかる。
【0048】
図12に、バイコニカル・アンテナ10bの給電部12bの高さを変化させた場合のVSWRのシミュレーション結果を示す。給電部12bは、8mmのときが最もアンテナ特性がよい。また、6mmや10mmとなると低域または高域の周波数でVSWRが2以上となり、アンテナ特性が悪化するのがわかる。数ミリの高さの違いによってアンテナ特性が大きく変化するのがわかる。
【0049】
バイコニカル・アンテナ10bのグランド部14bの高さを変化させた場合のVSWRのシミュレーション結果を図13に示す。また、上記の形状の中でグランド部14bの高さを変化させてシミュレーションをおこなった場合、5.0mmが最適である。グランド部14bの高さが、4.0mm以下または6.0mm以上になると、VSWRの値が3.1GHz付近で高くなり、アンテナ特性が悪化する。
【0050】
バイコニカル・アンテナ10bのグランド補強部28bの高さを変化させた場合のVSWRのシミュレーション結果を図14に示す。グランド補強部28bの高さが13mmから15mmの場合にアンテナ特性が良いのがわかる。11mmとなると、低域周波数でVSWRが2以上となり、アンテナ特性が悪化する。これは、ある一定以上の高さとなると、グランドとしての十分な機能を確保できるからである。アンテナの小型化を考慮すると、13mmが最も良い。
【0051】
図15に、バイコニカル・アンテナ10bの幅、すなわち給電部12bとグランド部14bの底部B,B’の直径を変化させた場合のVSWRのシミュレーション結果を示す。直径が11mmまたは12mmの場合にVSWRが2以下となり、アンテナ特性がよい。アンテナの小型化を考慮すると、11mmが好ましい。
【0052】
バイコニカル・アンテナ10bのリフレクター30bの高さを変化させた場合のVSWRのシミュレーション結果を図16に示す。リフレクター30bによって、高域の周波数をカットできるのがわかる。UWB使用帯域からはずれたところでVSWRが2以上となっており、必要な周波数以外をカットできるのがわかる。リフレクター30bの高さが1.0mmまたは1.5mmでアンテナ特性が良くなっている。小型化を考慮すると、高さが1.0mmが好ましい。
【0053】
誘電体18の比誘電率を変化させた場合のシミュレーション結果を図17に示す。比誘電率3.6の場合が最も良く、その他3.0や4.0の場合もアンテナ特性はよい。したがって、単に比誘電率を高くするだけでは、アンテナの特性としては良くならないことがわかる。
【0054】
以上、給電部12bとグランド部14bの高さを異なるようにすることによって、アンテナ10bの形状を小型にできることが確認できた。コンピュータやその周辺機器に取り付ける場合に有利である。
【実施例3】
【0055】
実施例1のバイコニカル・アンテナ10aを基にして、図18に示すようにリフレクター30cを設けた場合の実施例を説明する。リフレクター30cは、給電部12cの頂部に設ける。リフレクター30cは、円盤形状である。リフレクター30cの高さは1mmである。
【0056】
リフレクター30cの直径Cを変化させた場合のVSWRのシミュレーション結果を図19に示す。直径10mmのリフレクター30cを用いると5GHz帯域をカットできることがわかる。すなわち、リフレクター30cによって、バンド・ストップ・フィルターを構成できることが確認できる。リフレクター30cによって所望の周波数をカットできる場合、アンテナ10cに接続するバンド・ストップ・フィルターを設ける必要が無くなる。
【実施例4】
【0057】
実施例2のバイコニカル・アンテナ10bを基にして、リフレクター30dの直径Cを図20に示すように変化させた場合のシミュレーション結果を図21に示す。5GHz以上の高域周波数をカットできることがわかる。小型でかつ高域の周波数をカットできることができる。高域の周波数をカットしたい場合、図20のバイコニカル・アンテナ10dを使用することによって、アンテナ10dに接続されるバンド・ストップ・フィルターなどを削除することができる。
【0058】
実施例3および実施例4において、リフレクター30c,30dによって特定の周波数をカットできることがわかった。バイコニカル・アンテナ10c,10dに接続されるバンド・ストップ・フィルターなどを削除することも可能となる。アンテナ10c,10dで特定の周波数カットをおこなっても良いし、アンテナ10c,10dに接続される回路で特定の周波数カットをおこなっても良く、アンテナ10c,10dや回路の設計の柔軟性が高まる。
【0059】
以上、実施例1から実施例4において種々の実験およびシミュレーションをおこなった。本発明は誘電体18を設けることによって、空気と比較して比誘電率が高くなるため、アンテナの小型化が可能となった。アンテナをコンピュータなどに取り付けるのも容易になり、ケーブルなしてデータの送受信をおこなうことが可能となる。また、種々の実験およびシミュレーションにより、小型でかつ最適なアンテナ特性を示すアンテナを設計することができた。
【0060】
その他、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づき種々の改良、修正、変更を加えた態様で実施できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明のバイコニカル・アンテナの構成を示す図である。
【図2】図1のバイコニカル・アンテナのVSWRのシミュレーション結果を示す図である。
【図3】図1のバイコニカル・アンテナの実際のVSWRの測定値を示す図である。
【図4】図1のバイコニカル・アンテナのギャップを変化させた場合のVSWRのシミュレーション結果を示す図である。
【図5】図1のバイコニカル・アンテナの給電部およびグランド部の高さを変化させた場合のVSWRのシミュレーション結果を示す図である。
【図6】図1のバイコニカル・アンテナの給電部とグランド部の底面の直径を変化させた場合のVSWRのシミュレーション結果を示す図である。
【図7】図1のバイコニカル・アンテナの比誘電率を変化させた場合のVSWRのシミュレーション結果を示す図である。
【図8】給電部とグランド部とが非対称になっているバイコニカル・アンテナの構成を示す図である。
【図9】図8のバイコニカル・アンテナのVSWRのシミュレーション結果を示す図である。
【図10】図8のバイコニカル・アンテナの実際のVSWRの測定値を示す図である。
【図11】図8のバイコニカル・アンテナのギャップを変化させた場合のVSWRのシミュレーション結果を示す図である。
【図12】図8のバイコニカル・アンテナの給電部の高さを変化させた場合のVSWRのシミュレーション結果を示す図である。
【図13】図8のバイコニカル・アンテナのグランド部の高さを変化させた場合のVSWRのシミュレーション結果を示す図である。
【図14】図8のバイコニカル・アンテナのグランド補強部の高さを変化させた場合のVSWRのシミュレーション結果を示す図である。
【図15】図8に示すバイコニカル・アンテナの給電部とグランド部の底部の直径を変化させた場合のVSWRのシミュレーション結果を示す図である。
【図16】図8のバイコニカル・アンテナのリフレクターの高さを変化させた場合のVSWRのシミュレーション結果を示す図である。
【図17】図8のバイコニカル・アンテナのリフレクターの比誘電率を変化させた場合のVSWRのシミュレーション結果を示す図である。
【図18】リフレクターを取り付けたバイコニカル・アンテナの構成を示す図である。
【図19】図18のバイコニカル・アンテナのVSWRのシミュレーション結果を示す図である。
【図20】リフレクターを取り付けたバイコニカル・アンテナの構成を示す図である。
【図21】図20のバイコニカル・アンテナのVSWRのシミュレーション結果を示す図である。
【図22】従来のバイコニカル・アンテナの構成を示す図である。
【符号の説明】
【0062】
10a,10b,10c,10d,40:バイコニカル・アンテナ
12a,12b,12c,12d,42:給電部
14a,14b,14c,14d,44:グランド部
16a,16b,16c,16d,46:ギャップ
18:誘電体
20:中心導体
22:シールド導体
24:同軸ケーブル
26:コネクタ
28b,28d:グランド補強部
30b,30c,20d:リフレクター
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも表面が導体で形成され、頂部に平面を有する円錐台形状である給電部と、
少なくとも表面が導体で形成され、頂部に平面を有する円錐台形状であり、前記給電部とは頂部の平面同士がギャップを有し、対向して配置されているグランド部と、
前記給電部とグランド部との間を満たす誘電体と、
を有するバイコニカル・アンテナ。
【請求項2】
前記給電部とグランド部とは、円錐台形状の高さが同じである請求項1に記載のバイコニカル・アンテナ。
【請求項3】
前記給電部とグランド部とは、円錐台形状の高さが異なる請求項1に記載のバイコニカル・アンテナ。
【請求項4】
前記給電部とグランド部において、給電部の方が円錐台形状の高さが高くなっている請求項3に記載のバイコニカル・アンテナ。
【請求項5】
円柱形状の導体で形成され、前記グランド部の底部に接続されたグランド補強部を有する請求項4に記載のバイコニカル・アンテナ。
【請求項6】
前記給電部の頂部に円盤形状のリフレクターを設けた請求項1乃至5に記載のバイコニカル・アンテナ。
【請求項7】
カットする周波数にあわせて前記円盤形状の直径が異なる請求項6に記載のバイコニカル・アンテナ。
【請求項1】
少なくとも表面が導体で形成され、頂部に平面を有する円錐台形状である給電部と、
少なくとも表面が導体で形成され、頂部に平面を有する円錐台形状であり、前記給電部とは頂部の平面同士がギャップを有し、対向して配置されているグランド部と、
前記給電部とグランド部との間を満たす誘電体と、
を有するバイコニカル・アンテナ。
【請求項2】
前記給電部とグランド部とは、円錐台形状の高さが同じである請求項1に記載のバイコニカル・アンテナ。
【請求項3】
前記給電部とグランド部とは、円錐台形状の高さが異なる請求項1に記載のバイコニカル・アンテナ。
【請求項4】
前記給電部とグランド部において、給電部の方が円錐台形状の高さが高くなっている請求項3に記載のバイコニカル・アンテナ。
【請求項5】
円柱形状の導体で形成され、前記グランド部の底部に接続されたグランド補強部を有する請求項4に記載のバイコニカル・アンテナ。
【請求項6】
前記給電部の頂部に円盤形状のリフレクターを設けた請求項1乃至5に記載のバイコニカル・アンテナ。
【請求項7】
カットする周波数にあわせて前記円盤形状の直径が異なる請求項6に記載のバイコニカル・アンテナ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2006−41863(P2006−41863A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−218229(P2004−218229)
【出願日】平成16年7月27日(2004.7.27)
【出願人】(504030495)株式会社日本ジー・アイ・ティー (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月27日(2004.7.27)
【出願人】(504030495)株式会社日本ジー・アイ・ティー (3)
【Fターム(参考)】
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