バイタル計測器
【課題】被検者の容態悪化の早期発見に資することができるバイタル計測器の提供を目的とする。
【解決手段】バイタル計測器10は、被検者の呼吸運動を検知して呼吸運動に基づく第1の呼吸波形を取得する第1の検知部21と、第1の検知部よりも被検者の下肢側において被検者の呼吸運動を検知して呼吸運動に基づく第2の呼吸波形を取得する第2の検知部22と、を有しており、第1の呼吸波形の位相と第2の呼吸波形の位相が逆位相である場合、第1の呼吸波形の位相が反転された反転位相波形と第2の呼吸波形とが加算平均された波形を評価用呼吸波形として出力し、第1の呼吸波形の位相と第2の呼吸波形の位相が逆位相であることを検出しなかった場合、第1の呼吸波形と第2の呼吸波形とが加算平均された波形を評価用呼吸波形として出力する。
【解決手段】バイタル計測器10は、被検者の呼吸運動を検知して呼吸運動に基づく第1の呼吸波形を取得する第1の検知部21と、第1の検知部よりも被検者の下肢側において被検者の呼吸運動を検知して呼吸運動に基づく第2の呼吸波形を取得する第2の検知部22と、を有しており、第1の呼吸波形の位相と第2の呼吸波形の位相が逆位相である場合、第1の呼吸波形の位相が反転された反転位相波形と第2の呼吸波形とが加算平均された波形を評価用呼吸波形として出力し、第1の呼吸波形の位相と第2の呼吸波形の位相が逆位相であることを検出しなかった場合、第1の呼吸波形と第2の呼吸波形とが加算平均された波形を評価用呼吸波形として出力する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検者の呼吸機能に関するバイタルを計測するバイタル計測器に関する。
【背景技術】
【0002】
肺炎や尿路感染症等の感染症は、現在、高齢者の死亡原因の上位を占めている。一般に、高齢者における感染症は発熱などの症状に乏しいケースも多く、対処の遅れによる重症化・死亡例も少なくなく問題となっている。このため、早期発見による治療の開始が重要とされている。肺炎に関しては、通常、医師が聴診器で胸部の音を聞くことにより鑑別が可能であり、胸部X線検査を行うことで、より確実に診断を行うことができる。尿路感染症については、血液検査や尿の培養、腹部CT検査、腹部エコー検査等を行うことで、診断することが可能である。つまり、感染症は、適切な検査設備のもとで医師等による診断を受ければ、重症化を回避することが可能な疾患であるといえる。しかしながら、上記のような検査設備を備え、医師が常駐している病院や特定の介護施設等の場合には、早期診断が可能であるが、在宅介護を受けている高齢者や、一般の介護施設、あるいは、医療過疎地域にいる高齢者等の場合には、そもそもこのような診断を早期に受けることは困難である。
【0003】
検査設備がなく、判断する医師もいない状況下では、介護者等が肺炎や尿路感染症の兆候を日常のバイタル変動から鑑別しなければならないが、介護者等がそのような判断まで行うことは容易ではない。実際には、感染症の疑いがあると判断した場合であっても、重症度に関する十分な判断をすることが困難であり、しばらく様子を見てから対応することも少なくない。このようなことから、上述のような介護現場や医療過疎地域では、介護者等でも簡単に測定を行うことができ、かつ、容態悪化を早期に判断することが可能な医療機器が求められている。
【0004】
近年、肺炎や尿路感染症等の感染症の早期の発見にあたり、呼吸機能評価に着目した診断方法が試みられている。呼吸機能の中において呼吸数は、体温、血圧、脈拍とともに基礎バイタルに数えられ、患者(被検者)の容態を判断する上で非常に重要な項目とされている。健常者の呼吸数は20回/分程度とされ、25回/分を超えると頻呼吸として扱われ、特に感染症診断において重要とされ、被検者の重篤度を判断する上で有用な指標とされている。具体的には、肺炎の重症度診断基準であるPort Score(非特許文献1を参照)及びCURB−65(非特許文献2を参照)では、呼吸数≧30回/分が重症度判断基準の項目として取り上げられている。
【0005】
なお、呼吸を計測する機器としては、感染症を頻発する高齢者の多くが寝たきりであることを理由に、特許文献1および特許文献2に記載されているように、センサが埋設された空気袋に患者を載置させ、患者の呼吸運動に伴う体振動を検知し、この検知結果に基づいて呼吸数の計測が行われるマットレスタイプの呼吸数計測器が提案されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「The New ENGLAND JOURNAL OF MEDICINE」、1997、Vol.336、p.243−250
【非特許文献2】「Thorax」、2001、Vol.56、p.296−301
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−145605号公報
【特許文献2】特開2001−276019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、呼吸機能に基づいて患者の健康状態の評価を適正に行うためには、呼吸数のみに着目するのではなく、経時的に変化する呼吸波形中に現れる吸気と呼気の呼吸バランスを評価指標として用いることが重要になる。
【0009】
しかし、呼吸波形は、センシングの方法と人体が行う呼吸方式によっては、胸部側、腹部側においてそれぞれ異なる位相の波形として検出される場合がある。特に、仰臥位状態にある被検者のベッドと背中の間に生じる呼吸由来の体圧変動を検出する場合において、胸式呼吸では、胸部側および腹部側で同位相の呼吸波形(体圧振動)が検出されるが、腹式呼吸では、胸部側および腹部側で逆位相の呼吸波形が検出されることが知られている。具体的には、腹式呼吸の際に腹部側で検出される呼吸由来の体圧変動は、吸気の際に圧力上昇、呼気の際に圧力降下として検出される。通常、医療従事者は吸気の際に上昇、呼気の際に下降するグラフを呼吸曲線として利用し、吸気・呼気どちらに異常があるかの診断を行っており、呼吸波形が誤って逆位相で出力されてしまうと、容体悪化の早期発見に支障が生じ得る。
【0010】
これまで、臥位状態にある被検者の体の下にセンサを設置し、呼吸振動を検出する機器において、吸気の際に上昇、呼気の際に下降する波形を出力する先行技術はなく、これを解決する技術が求められてきた。
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、被検者の容態悪化の早期発見に資することができるバイタル計測器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の上記目的は、下記のいずれかの手段によって達成される。
【0013】
(1)被検者の呼吸機能に関するバイタルを計測するためのバイタル計測器であって、
被検者の呼吸運動を検知して前記呼吸運動に基づく第1の呼吸波形を取得する第1の検知部と、
前記第1の検知部よりも前記被検者の下肢側において前記被検者の呼吸運動を検知して前記呼吸運動に基づく第2の呼吸波形を取得する第2の検知部と、
前記第1の呼吸波形と前記第2の呼吸波形の位相差を検出する位相検出部と、
前記第1の呼吸波形および前記第2の呼吸波形から前記被検者の呼吸運動を代表的に示す評価用呼吸波形を生成して出力する出力部と、を有し、
前記出力部は、前記位相検出部が前記第1の呼吸波形の位相と前記第2の呼吸波形の位相が逆位相であることを検出した場合、前記第1の呼吸波形の位相が反転された反転位相波形と前記第2の呼吸波形とが加算平均された波形を前記評価用呼吸波形として出力し、前記位相検出部が前記第1の呼吸波形の位相と前記第2の呼吸波形の位相が逆位相であることを検出しなかった場合、前記第1の呼吸波形と前記第2の呼吸波形とが加算平均された波形を前記評価用呼吸波形として出力する、ことを特徴とするバイタル計測器。
【0014】
(2)前記第1の検知部が呼吸運動を検知したか否か、および前記第2の検知部が呼吸運動を検知したか否かを判定する判定部をさらに有し、
前記出力部は、前記判定部が前記第1の検知部のみが呼吸運動を検知したと判定したとき、前記第1の呼吸波形の位相が反転された反転位相波形を前記評価用呼吸波形として出力し、前記判定部が前記第2の検知部のみが呼吸運動を検知したと判定したとき、前記第2の呼吸波形を前記評価用呼吸波形として出力する、ことを特徴とする上記(1)に記載のバイタル計測器。
【0015】
(3)前記判定部が前記第1の検知部および前記第2の検知部が呼吸運動を検知しなかったと判定したときに呼吸運動が検知されなかったことを報知する報知部をさらに有することを特徴とする上記(2)に記載のバイタル計測器。
【0016】
(4)前記第1の検知部および前記第2の検知部の少なくとも一方の検知部は、
内部に流体を封入し、前記被検者の背部または腰部が載置される流体袋と、
前記被検者の呼吸運動に基づく体振動による前記流体袋内の圧力の変動から呼吸波形を取得するセンサと、を有することを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれか1つに記載のバイタル計測器。
【0017】
(5)前記第1の検知部および前記第2の検知部の少なくとも一方の検知部は、
圧電フィルム、圧電シート、静電容量式圧力センサ、および感圧センサのいずれか1つによって構成されることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれか1つに記載のバイタル計測器。
【発明の効果】
【0018】
本発明のバイタル計測器は、被検者の異なる部位においてそれぞれ呼吸運動を検知する第1、第2の検知部が互いに逆位相の呼吸波形を取得した場合、第1の検知部よりも下肢側に配置される第2の検知部が取得する呼吸波形の位相に合わせて被検者の呼吸運動を代表的に示す評価用呼吸波形が出力される。このため、被検者の呼吸方式に関わらず、腹式呼吸の腹部側において取得される呼吸波形および胸式呼吸において取得される呼吸波形と同位相の波形を評価用呼吸波形として出力することができる。これにより、被検者の健康状態の判断を評価用呼吸波形に基づいて適正に行うことが可能になるため、被検者の容態悪化の早期発見に資することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、実施形態に係るバイタル計測器の使用状態を模式的に示す図であり、図1(A)は、斜視図、図1(B)は、側面図である。
【図2】図2は、バイタル計測器の全体構成を示す図であり、図2(A)は、バイタル計測器の平面図、図2(B)は、バイタル計測器の側面図である。
【図3】図3は、バイタル計測器の要部を示す図であり、図3(A)は、検知部が備える流体袋の断面図、図3(B)は、表示部の拡大図である。
【図4】バイタル計測器の制御システムを簡略化して示すブロック図である。
【図5】図5は、呼吸方式ごとの呼吸波形の位相を説明するための図であり、図5(A)は、検知部の配置を例示した図、図5(B)は、正位相の呼吸波形を示す図、図5(C)は、逆位相の呼吸波形を示す図である。
【図6】検知部の配置と各呼吸方式において取得される呼吸波形との関係を示す図である。
【図7】バイタル計測器による計測手順全体を示すフローチャートである。
【図8】図7のステップ12に示す処理内容を示すフローチャートである。
【図9】バイタル計測器が行う計測処理の内容を簡略的に示す図である。
【図10】図10(A)〜(C)はそれぞれ、検知部の改変例(1)を示す図である。
【図11】図11(A)〜(C)はそれぞれ、検知部の改変例(1)を示す図である。
【図12】検知部の改変例(2)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ、本発明を実施形態に基づいて説明する。図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0021】
図1は、本発明の実施形態に係るバイタル計測器10の使用例を示す。バイタル計測器10は、例えば、ベッドやマットレスなどに横たえさせられた状態の被検者90に使用されるものであり、被検者90の基礎バイタルとしての呼吸数を計測することを可能にするものである。使用対象となる被検者90は、例えば、在宅介護を受けている高齢者、肺炎や尿路感染症等の感染症を患った臥位患者などが挙げられる。
【0022】
まず、バイタル計測器の全体構成について説明する。
【0023】
図1、図2を参照して、実施形態に係るバイタル計測器10は、被検者90の呼吸運動を検知して呼吸運動に基づく呼吸波形を取得する第1の検知部21および第2の検知部22と、第1の検知部21および第2の検知部22の検知結果に基づいて生成される被検者90の代表的な呼吸運動を示す評価用呼吸波形を表示する本体部30と、を有している。
【0024】
図1に示されるように、第2の検知部22は、第1の検知部21よりも被検者90の下肢側に配置される。例えば、第1の検知部21は、被検者90の胸部付近に配置され、第2の検知部22は、被検者90の腹部付近に配置される。なお、図1の破線部は、第1の検知部21および第2の検知部22によって呼吸波形が検知される対象範囲を例示するものである。
【0025】
第1の検知部21と第2の検知部22は、所定の間隔を空けて配置されることが望ましい。後述するように、被検者90が腹式呼吸を行う場合、被検者90のみぞおち付近では呼吸運動が検知されないことがある。第1の検知部21および第2の検知部22が近接して配置され、さらに両検知部21、22がみぞおち付近に配置されるような場合には呼吸運動が検知されない虞がある。このため、本実施形態においては、呼吸運動が検知されないという計測結果とならないように、第1の検知部21と第2の検知部22との間に所定の間隔を設けている。間隔の寸法は特に限定されるものではないが、少なくとも10cm以上の間隔を設けることが好ましい。
【0026】
本体部30は、筺体31と、筺体31内に配置されバイタル計測器10の計測システムを統括的に制御する制御部63と(図4を参照)、呼吸数や呼吸波形が表示される表示部32としてのディスプレイと、表示内容の切替え等を操作するための各種の操作スイッチ35、37と、を備える。筺体31の材料には、例えば、電子機器類のハードカバーに一般的に用いられる硬質のプラスチック材料などが使用される。
【0027】
第1の検知部21および第2の検知部22のそれぞれは、内部に流体を封入し、被検者90の背部または腰部が載置される流体袋51、52と、被検者90の呼吸運動に基づく体振動による流体袋51、52内の圧力の変動から呼吸波形を取得するセンサ41、42と、を有している。
【0028】
各センサ41、42は、被検者90の呼吸運動に起因する体振動を計測するために用いられている。センサ41、42には、空気圧の検出に用いられる公知の無指向性マイクロフォンを使用しているが、これに限定されるものではなく、コンデンサマイクロフォン、圧力センサ、PVDF(Poly Vinylidene Di Fluoride)センサやEMFiTセンサに代表される各種圧電フィルム及び圧電シート、静電容量式圧力センサ(静電容量型面圧センサ)、感圧センサ(Force Resister Sensor:FSR)、歪ゲージなどを流体の特性に合わせて適宜使用することが可能である。なお、後述するように、圧電フィルム、圧電シート、静電容量式圧力センサ、感圧センサを利用する場合は、流体袋を使用することなく、検知部を構成することが可能である。
【0029】
各センサ41、42は、取得した呼吸波形を本体部30内に内蔵された制御部63へ送信する(図4を参照)。呼吸波形の送信は、第1の検知部21が備えるセンサ41と制御部63とを電気的に接続する第1のリード線61、および第2の検知部22が備えるセンサ42と制御部63とを電気的に接続する第2のリード線62を介して行われる。なお、各センサ41、42と制御部63との間で行われる呼吸波形の送受信は、リード線を用いた形態に限定されるものではなく、一般的な電気ケーブルを使用した送受信方法や、無線方式による送受信方法を採用することも可能である。また、図示例にあっては、各センサ41、42を流体袋51、52内にそれぞれ配置しているが、配置箇所は流体袋内のみに限定されるものではない。例えば、流体袋内と本体部内とを連通する流体通路を設け、その流体通路にセンサを設置する形態を採用することができる。また、本体部30が備える筺体31内にセンサを設置することも可能である。
【0030】
図3(A)を参照して、各流体袋51、52は、内部に流体を封入し得るシート状の部材から構成されている。流体袋51、52の材質は特に限定されるものではないが、例えば、気密性を有する柔軟なゴム、プラスチック、布材等を使用することができる。流体袋51、52は、比較的小型に形成されており、外周部分の一辺がそれぞれ3cm、15cm程度であり、最大膨張時の厚みが1cm程度である。流体としては、例えば、空気・水・オイル・高分子ゲルなどを使用することができる。
【0031】
各流体袋51、52には、流体袋51、52を弾性的に支持する支持部材71と、流体袋51、52に伝達される体振動の拡散を防止する裏打ち材73とを取り付けている。
【0032】
支持部材71には、例えば、ラテックス製のバルーン、スポンジ、ゲルなどのように弾性的に流体袋51、52を支持し得る材質のものを使用することができる。なお、バルーンを使用する場合には、流体注入口(図中省略する)を介してバルーン内部に空気や水等の流体を注入させて膨張させる。また、使用後は、バルーン内部に注入した流体を排出させ、しぼませた状態の流体袋51、52とともにバルーンをケース内などに収納して持ち運ぶこと可能である。
【0033】
支持部材71は、流体袋51、52をベッド80側から押し上げるように支持して、流体袋51、52と被検者90との接触を安定させる機能を発揮する。被検者90に対して流体袋51、52が安定的に保持されるため、被検者90が寝返りするような場合においても流体袋51、52に位置ずれが生じることを防止することができる。
【0034】
裏打ち材73には、例えば、非伸縮性のプラスチックフィルム、金属性の薄状プレート、フィルムなどを使用することができる。また、プラスチックフィルムとしては、例えば、PET樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ナイロン樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂などからなる樹脂製プレート、フィルムを使用することができる。また、エチレン酢酸ビニルコポリマーなど各種ビニルモノマーの共重合体を使用することもできる。
【0035】
裏打ち材73の厚みは、特に制限されるものではないが、バイタル計測器10の小型化・薄型化を図る観点から、1mm程度の厚みのものを使用するのが好ましい。なお、バイタル計測器10は、支持部材71及び裏打ち材73のどちらか一方のみを備える構成とすることも可能である。また、支持部材71及び裏打ち材73の両方を備える構成の場合には、例えば、図3(A)に示す設置位置の上下関係を逆にすることも可能である。
【0036】
図4を参照して、本体部30に内蔵された制御部63は、各流体袋51、52内の圧力が変動した際にセンサ41、42から送信される波形信号に基づいて各種演算処理を行う演算処理部と、表示部32に表示される内容を制御する表示制御回路と、センサ41、42、演算処理部、および表示制御部63のそれぞれを制御する制御回路と、を有している。
【0037】
演算処理部は、センサ41、42によって得られた波形信号に対して種々の演算および処理を実行するものである。また、演算処理部は、計測された呼吸数を表示部32に表示したり、音声出力部から警告アラームを発したりするといった動作の制御も行う。
【0038】
演算処理部は、位相検出部、出力部、および判定部として機能する。ここで、位相検出部は、第1の検知部21が取得した第1の呼吸波形と第2の検知部22が取得した第2の呼吸波形の位相差を検出するものである。出力部は、第1の呼吸波形および第2の呼吸波形から被検者の呼吸運動を代表的に示す評価用呼吸波形を生成して出力するものである。判定部は、第1の検知部21が呼吸運動を検知したか否か、および第2の検知部22が呼吸運動を検知したか否かを判定するものである。
【0039】
演算処理部は、位相検出部、出力部、および判定部に対応するプログラムとセンサ41、42から送信された波形信号を処理して呼吸数を予測演算するプログラムとを格納したROMと、算出された呼吸波形データを時系列で記憶するためのRAMと、所定の音声データ等を格納したEEPROMと、を有している。なお、位相検出部、出力部、および判定部の機能は、それぞれに対応するプログラムを演算処理部が実行することにより発揮される。
【0040】
図3(B)を参照して、本体部30に設けられた電源スイッチ33は、バイタル計測器10の電源のオン/オフを操作するためのものである。モード切替スイッチ35は、リアルタイム計測モードと、メモリデータ閲覧モードとを切り替えるために使用される。リアルタイム計測モードを使用する場合には、例えば、警告アラーム機能が併用される。設定を超えた呼吸数が計測されたときには、警告音を発して、ユーザーにバイタル異常の発生を早期に知らせることが可能になっている。警告アラームは、例えば、呼吸数が30回/min以上に達したときや、8回/min以下に達したときに警告音が発せられるように設定することが好ましい。健常者の呼吸数は15〜20回/min程度とされており、30回/minを越える場合には重篤と判断されるためである。
【0041】
波形確認スイッチ37は、RAMに記憶された呼吸運動の波形データを確認するためのものである。メモリデータ閲覧モードにおいて、左右それぞれの波形確認スイッチ37を押すことで、計測開始時の波形から計測終了時における波形を時系列に沿ってディスプレイ31に表示することが可能になっている。
【0042】
ディスプレイ31の右端には、呼吸波形とともに呼吸数を表示することが可能になっている。図示されるように、例えば、1分間における呼吸数(RR:Respiratory Rate)が表示される。呼吸数は、波形計測の開始側の所定の時間(図中の編み掛け部分。例えば、15秒程度。)でサンプリングしたデータに基づいて算出され、表示部32の右端にリアルタイムで表示させることが可能になっている。
【0043】
実施形態に係るバイタル計測器10においては、呼吸数のみならず、呼吸波形中に現れる吸気と呼気のバランス、および呼吸波形の時間変化が表示部32において表示される。健康な人の呼吸では、呼気と吸気の間に若干の休止期間があり、吸気の方が呼気より若干早く、比率はおおよそ1:1.5とされる。しかし、頻呼吸や多呼吸では休止期がほとんどなくなるといった変化が観察され、気管支喘息発作など呼息性呼吸困難の場合には、呼気の延長が観察されることがある。一方、肺水腫などで吸息性の呼吸困難の場合には、吸気と呼気の比率が1:1程度になり、呼吸が早くなることが知られている。このように、吸気と呼気の周期性についての情報は被検者90の容態を判断する上で有用であるため、単純な視診に頼らずに、定量性をもって評価できることが望ましい。
【0044】
図5は、検知部の設置位置と検知される呼吸波形との関係を示す。例えば、被検者90が腹式呼吸を行う場合において、下腹部付近のA点、B点に検知部を配置すると、図5(B)に示す呼吸波形が取得される。吸気の際に呼吸波形がプラス方向(図中の上側)に振れ、呼気の際に呼吸波形がマイナス方向(図中の下側)に振れる呼吸波形である。一方、胸部付近のD点、E点に検知部を設置すると、図5(C)に示す呼吸波形が取得される。呼気の際に呼吸波形がプラス方向(図中の上側)に振れ、吸気の際に呼吸波形がマイナス方向(図中の下側)に振れる呼吸波形である。また、みぞおち付近のC点に検知部が配置された場合には、呼吸波形が取得されない。これは、呼吸に伴う横隔膜の運動により、呼吸波形が打ち消されるためである。被検者90が胸式呼吸を行う場合は、検知部を下腹部付近、胸部付近、みぞおち付近のいずれの箇所に配置した場合においても、呼気の際にプラス方向に波形が振れ、吸気の際にマイナス方向に波形が振れる。
【0045】
このように、被検者90が腹式呼吸行う場合において、胸部付近において取得される呼吸波形は、下腹部付近で取得される呼吸波形や、胸式呼吸を行う被検者90から取得される呼吸波形とは逆位相の波形(−πの位相差が存在する波形)となる。
【0046】
図6は、検知部が取得する呼吸波形と各呼吸方式との関係を示す。この図に示されるように、被検者90の呼吸方式や検知部の配置によっては、呼吸波形が取得されなかったり、呼吸波形が異なる位相で出力されたりすることがある。
【0047】
なお、被検者90が腹式呼吸と胸式呼吸とが組み合わされた胸腹式呼吸をしている場合において、下腹部付近に検知部が配置されると、吸気の際にプラス方向に、呼気の際にマイナス方向に波形が振れるが、胸部付近に検知部を配置すると、吸気と呼気に対応した正弦波が得られないことがある。これは、胸式呼吸由来の呼吸振動と、腹式呼吸由来の呼吸振動とが混合し、両振動が打ち消されあうためである。また、腹式で呼吸を行った後、胸式で呼吸をするなどして一回の呼吸の中で腹式、胸式のタイミングがずれると、それぞれの呼吸振動が足し合わされ、結果として、本来の呼吸の2倍の周波数で出力されてしまうためである。
【0048】
医療の現場においては、呼吸波形の出力結果に基づいた健康状態の診察や診断は、経験的に、腹式呼吸の下腹部付近において取得される波形および胸式呼吸において取得される波形(正位相の呼吸波形)を視認することにより行われている。このため、逆位相で出力された呼吸波形に基づいて患者の健康状態の判断が行われることは、被検者の容態悪化の早期発見の観点から好ましくない。そこで、バイタル計測器10にあっては、以下に説明する計測処理にしたがって評価指標として適切な呼吸波形を出力することを可能にしている。
【0049】
図7を参照して、バイタル計測器10を使用するにあたり、第1の検知部21、第2の検知部22を被検者90にセットする。この際、第1の検知部21および第2の検知部22は、被検者90の体軸上にそれぞれ配置させることが望ましい。被検者90の体圧が第1の検知部21および第2の検知部22に均等に付与されるため、第1の検知部21と第2の検知部22においてより均一な信号強度の呼吸波形を取得することが可能になるためである。
【0050】
ステップ11では、第1の検知部21が備えるセンサ41(以下、「センサH」とする)、および第2の検知部22が備えるセンサ42(以下、「センサL」とする)が体圧を検知するか否かを判断する。
【0051】
ステップ11において、センサH、センサLの両方が体圧を検知した場合は、計測処理を行うステップ12に進む。ステップ12については後述する。
【0052】
センサH、センサLのいずれかが体圧を検知していない場合は、ステップ13に進む。ステップ13では、第1の検知部21および第2の検知部22の設置個所の変更指示が行われる。センサH、センサLのいずれかが体圧を検知していないということは、第1の検知部21および第2の検知部22が被検者90の身体下に配置されていなかったり、身体から大きく外れた位置に配置されていたりすることが考えられる。このような場合、第1の検知部21および第2の検知部22によって呼吸波形を取得することはできないため、設置箇所の変更の指示を行う。変更指示は、例えば、音声出力部から警告音を発して行われたり、表示部32上に変更を行うべき旨の警告画像を表示して行われたりする。
【0053】
ステップ12では、取得された呼吸波形に基づく各種の計測処理が行われる。この計測処理は、制御部63のROM内に予め格納された所定のプログラムによって実行される。
【0054】
図8を参照して、ステップ21に進む。ステップ21では、センサH、センサLの両方が、呼吸運動を検知したか否かを判定する。センサH、センサLの両方が呼吸運動を検知した場合は、ステップ22に進む。センサH、Lのいずれかが呼吸運動を検知していない場合は、ステップ31に進む。ステップ31については後述する。
【0055】
ステップ22では、センサHが取得した呼吸波形(以下、「第1の呼吸波形」とする)、センサLが検知した呼吸波形(以下、「第2の呼吸波形」とする)の位相差の検出および評価を行う。次にステップ23に進む。
【0056】
ステップ23では、第1の呼吸波形の位相と第2の呼吸波形の位相とが逆位相である否か(−πの位相差が存在するか否か)を判定する。ステップ23において、逆位相の波形であると判定された場合、ステップ24に進む。ステップ23において、逆位相の波形ではないと判定された場合、ステップ25に進む。
【0057】
ステップ24では、第1の呼吸波形の位相が反転された反転位相波形と第2の呼吸波形とを加算平均する。次にステップ26において、加算平均された波形を評価用呼吸波形として出力する。出力は、例えば、評価用呼吸波形をバイタル計測器10の表示部32に表示させる形態で行われる。
【0058】
ステップ25では、第1の呼吸波形と第2の呼吸波形とを加算平均する。次にステップ26において、加算平均された波形を評価用呼吸波形として出力する。
【0059】
次に、ステップ31に進んだ場合において、センサHのみが呼吸運動を検知していると判定された場合、ステップ32に進む。その他の判定結果が得られたときは、ステップ33に進む。
【0060】
ステップ32では、第1の呼吸波形の位相が反転された反転位相波形を評価用呼吸波形として出力する。
【0061】
ステップ33に進んだ場合において、センサLのみが呼吸運動を検知していると判定された場合、ステップ34へ進み、その他の判定結果が得られたときは、ステップ35に進む。
【0062】
ステップ34では、第2の呼吸波形を評価用呼吸波形として出力する。
【0063】
ステップ35では、第1の検知部21および第2の検知部22の設置個所の変更指示が行われる。第1の検知部21および第2の検知部22の両検知部が呼吸運動を検知していないということは、被検者90の呼吸方式が胸腹式呼吸であり、かつ第1の検知部21および第2の検知部22が胸部付近に配置されていると考えられる(図6を参照)。この場合、適正な評価用呼吸波形を出力することができない虞があるため、設置箇所の変更の指示を行う。変更指示は、バイタル計測器10に設けられた報知部によって行う。報知部には、音声出力部が用いられる。すなわち、音声出力部から警告音を発することにより、変更指示の報知が行われる。なお、表示部32上に変更を行うべき旨の警告画像を表示させることにより、表示部32を報知部として機能させることも可能である。
【0064】
計測処理(ステップ12)のサブルーチンは、被検者90に設置された第1の検知部21および第2の検知部22が被検者90から取り外されるか、またはバイタル計測器10の電源が切られるまで実行させられる。これにより、表示部32には、評価用呼吸波形が経時的に表示される。なお、図9の図表において、図8のフローチャートで説明したセンサH、Lの検知結果と計測処理との関係を簡略的に示す。
【0065】
本実施形態に係るバイタル計測器10によれば、被検者90の異なる部位においてそれぞれ呼吸運動を検知する第1、第2の検知部21、22が互いに逆位相の呼吸波形を取得した場合、第1の検知部21よりも下肢側に配置される第2の検知部22が取得する呼吸波形の位相に合わせて被検者90の呼吸運動を代表的に示す評価用呼吸波形を出力する。このため、被検者90の呼吸方式に関わらず、腹式呼吸の腹部側において取得される呼吸波形および胸式呼吸において取得される呼吸波形と同位相の波形を評価用呼吸波形として出力することができる。これにより、被検者90の健康状態の判断を評価用呼吸波形に基づいて適正に行うことが可能になるため、被検者90の容態悪化の早期発見に資することができる。
【0066】
また、第1の検知部21のみが呼吸運動を検知した場合には、第1の呼吸波形を反転させた反転呼吸波形を評価用呼吸波形として出力し、第2の検知部22のみが呼吸運動を検知した場合には、第2の呼吸波形をそのまま評価用呼吸波形として出力する。したがって、第1の呼吸波形または第2の呼吸波形のいずれかの呼吸波形が取得される場合には、正位相の呼吸波形が評価用呼吸波形として出力されるため、正位相の呼吸波形に基づいた被検者90の健康状態の判断を行うことが可能になる。
【0067】
また、第1の検知部21および第2の検知部22によって呼吸運動が検知されなかったときには、呼吸運動が検知されなかったことを報知部が被検者90やバイタル計測器を観測するユーザーに報知する。報知部による報知が行われることによって、評価用呼吸波形が出力されないことを被検者90やユーザーに知らせることができる。
【0068】
また、第1の検知部21および第2の検知部22のそれぞれは、被検者90の背部または腰部が載置される流体袋51、52内の圧力の変動から呼吸波形を取得する。検知部として流体袋51、52を利用することによって呼吸運動に基づく体振動を精度良く検知することができるため、検知部の小型化、ひいてはバイタル計測器10の小型化を図ることができる。これにより、携帯性が向上されたバイタル計測器10の提供を行うことが可能になる。
【0069】
(改変例1)
次に、第1の検知部21および第2の検知部22の改変例を説明する。上述した実施形態においては、略矩形形状の支持部材71上に第1の検知部21および第2の検知部22を配置させた構成を示したが、本発明に係る検知部の構成は、このような形態に限定されるものではない。以下、図10および図11を参照して、検知部の改変例を説明する。なお、上述した実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0070】
図10(A)に示す改変例では、第1の検知部21および第2の検知部22の形状に合わせて、略丸型の支持部材71を取り付けている。支持部材71がより小さく構成されるため、臥位患者の背部や腰部への配置を円滑に行うことができる。
【0071】
図10(B)に示す改変例では、体軸方向に沿って3つの検知部21、22、23を設けている。このような構成によれば、被検者90の呼吸運動を3箇所で検知することができる。そして、3つの検知部21、22、23が取得した呼吸波形を加算平均することによって、信頼性のより高い評価用呼吸波形の出力を行うことが可能である。
【0072】
図10(C)に示す改変例では、体軸方向に沿って3つの検知部21、22、23を設け、さらに体軸方向と交差する方向に3つの検知部23、24、25を設けている。体軸方向と交差する方向に設けられた3つの検知部23、24、25が取得する呼吸波形を加算平均し、さらに体軸方向に沿って一列に配置された3つの検知部21、22、23が取得する呼吸波形を加算平均することにより、図10(B)に示す改変例よりもさらに信頼性の高い評価用呼吸波形の出力を行うことが可能である。
【0073】
図11(A)に示す改変例では、流体袋51、52を丸型の外形形状ではなく、略矩形の外形形状に形成している。このような形状の流体袋51、52を利用する場合においても、呼吸波形の取得を良好に行うことが可能である。
【0074】
図11(B)に示す改変例では、分割された流体袋51の間、および分割された流体袋52の間をそれぞれ連通する連通路(バイパス)81を設けている。このような構成を採用することによって、被検者90が流体袋51、52上に載置された際に、流体袋51、52につぶれやキンクが発生することを防止することができる。したがって、流体袋51、52のつぶれやキンクに伴う計測精度の低下が招かれることを未然に防止することができる。
【0075】
図11(C)に示す改変例では、支持部材71に切り欠き83が設けられている。上述した実施形態において説明したように、被検者90のみぞおち付近においては、呼吸運動が検知されず、呼吸波形を取得することができない場合が起こり得る。例えば、本改変例のように、みぞおち付近に配置する目安となる切り欠き83が設けられていれば、使用時に第1の検知部21および第2の検知部22がみぞおち付近に配置されることを避けることができる。これにより、利便性の向上が図られたバイタル計測器10を提供することが可能になる。
【0076】
(改変例2)
上述した実施形態においては、流体袋およびセンサを備えた検知部21、22をバイタル計測器10に適用したが、検知部は、このような構成のみに限定されるものではない。図12に示す形態では、体振動を検知するセンサ41、42として、圧電フィルム、圧電シート、静電容量式圧力センサ、感圧センサなどを使用し、各センサ41、42を第1の検知部21、第2の検知部22としてそれぞれ機能させている。なお、上記各センサの中から同種のセンサを第1の検知部21および第2の検知部22に使用することも可能であるし、一方のセンサと他方のセンサにそれぞれ異なる種類のセンサを使用することも可能である。さらに、流体袋およびセンサによって一方の検知部を構成させ、上記センサのいずれかのセンサによって他方の検知部を構成させることも可能である。
【0077】
実施形態の説明においては、臥位状態にある被検者90に対してバイタル計測器10を使用した例を示したが、例えば、バイタル計測器10を座位患者や椅子等に腰をかけた状態の被検者90に対して使用することも可能である。このような使用形態においては、例えば、バイタル計測器の検知部をズボンのベルトに挟むか、椅子の背や壁と被検者の背中との間に設置することで計測を行うことができる。
【符号の説明】
【0078】
10 バイタル計測器、
21 第1の検知部、
22 第2の検知部、
41 センサ、
42 センサ、
51 流体袋、
52 流体袋、
90 被検者。
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検者の呼吸機能に関するバイタルを計測するバイタル計測器に関する。
【背景技術】
【0002】
肺炎や尿路感染症等の感染症は、現在、高齢者の死亡原因の上位を占めている。一般に、高齢者における感染症は発熱などの症状に乏しいケースも多く、対処の遅れによる重症化・死亡例も少なくなく問題となっている。このため、早期発見による治療の開始が重要とされている。肺炎に関しては、通常、医師が聴診器で胸部の音を聞くことにより鑑別が可能であり、胸部X線検査を行うことで、より確実に診断を行うことができる。尿路感染症については、血液検査や尿の培養、腹部CT検査、腹部エコー検査等を行うことで、診断することが可能である。つまり、感染症は、適切な検査設備のもとで医師等による診断を受ければ、重症化を回避することが可能な疾患であるといえる。しかしながら、上記のような検査設備を備え、医師が常駐している病院や特定の介護施設等の場合には、早期診断が可能であるが、在宅介護を受けている高齢者や、一般の介護施設、あるいは、医療過疎地域にいる高齢者等の場合には、そもそもこのような診断を早期に受けることは困難である。
【0003】
検査設備がなく、判断する医師もいない状況下では、介護者等が肺炎や尿路感染症の兆候を日常のバイタル変動から鑑別しなければならないが、介護者等がそのような判断まで行うことは容易ではない。実際には、感染症の疑いがあると判断した場合であっても、重症度に関する十分な判断をすることが困難であり、しばらく様子を見てから対応することも少なくない。このようなことから、上述のような介護現場や医療過疎地域では、介護者等でも簡単に測定を行うことができ、かつ、容態悪化を早期に判断することが可能な医療機器が求められている。
【0004】
近年、肺炎や尿路感染症等の感染症の早期の発見にあたり、呼吸機能評価に着目した診断方法が試みられている。呼吸機能の中において呼吸数は、体温、血圧、脈拍とともに基礎バイタルに数えられ、患者(被検者)の容態を判断する上で非常に重要な項目とされている。健常者の呼吸数は20回/分程度とされ、25回/分を超えると頻呼吸として扱われ、特に感染症診断において重要とされ、被検者の重篤度を判断する上で有用な指標とされている。具体的には、肺炎の重症度診断基準であるPort Score(非特許文献1を参照)及びCURB−65(非特許文献2を参照)では、呼吸数≧30回/分が重症度判断基準の項目として取り上げられている。
【0005】
なお、呼吸を計測する機器としては、感染症を頻発する高齢者の多くが寝たきりであることを理由に、特許文献1および特許文献2に記載されているように、センサが埋設された空気袋に患者を載置させ、患者の呼吸運動に伴う体振動を検知し、この検知結果に基づいて呼吸数の計測が行われるマットレスタイプの呼吸数計測器が提案されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「The New ENGLAND JOURNAL OF MEDICINE」、1997、Vol.336、p.243−250
【非特許文献2】「Thorax」、2001、Vol.56、p.296−301
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−145605号公報
【特許文献2】特開2001−276019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、呼吸機能に基づいて患者の健康状態の評価を適正に行うためには、呼吸数のみに着目するのではなく、経時的に変化する呼吸波形中に現れる吸気と呼気の呼吸バランスを評価指標として用いることが重要になる。
【0009】
しかし、呼吸波形は、センシングの方法と人体が行う呼吸方式によっては、胸部側、腹部側においてそれぞれ異なる位相の波形として検出される場合がある。特に、仰臥位状態にある被検者のベッドと背中の間に生じる呼吸由来の体圧変動を検出する場合において、胸式呼吸では、胸部側および腹部側で同位相の呼吸波形(体圧振動)が検出されるが、腹式呼吸では、胸部側および腹部側で逆位相の呼吸波形が検出されることが知られている。具体的には、腹式呼吸の際に腹部側で検出される呼吸由来の体圧変動は、吸気の際に圧力上昇、呼気の際に圧力降下として検出される。通常、医療従事者は吸気の際に上昇、呼気の際に下降するグラフを呼吸曲線として利用し、吸気・呼気どちらに異常があるかの診断を行っており、呼吸波形が誤って逆位相で出力されてしまうと、容体悪化の早期発見に支障が生じ得る。
【0010】
これまで、臥位状態にある被検者の体の下にセンサを設置し、呼吸振動を検出する機器において、吸気の際に上昇、呼気の際に下降する波形を出力する先行技術はなく、これを解決する技術が求められてきた。
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、被検者の容態悪化の早期発見に資することができるバイタル計測器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の上記目的は、下記のいずれかの手段によって達成される。
【0013】
(1)被検者の呼吸機能に関するバイタルを計測するためのバイタル計測器であって、
被検者の呼吸運動を検知して前記呼吸運動に基づく第1の呼吸波形を取得する第1の検知部と、
前記第1の検知部よりも前記被検者の下肢側において前記被検者の呼吸運動を検知して前記呼吸運動に基づく第2の呼吸波形を取得する第2の検知部と、
前記第1の呼吸波形と前記第2の呼吸波形の位相差を検出する位相検出部と、
前記第1の呼吸波形および前記第2の呼吸波形から前記被検者の呼吸運動を代表的に示す評価用呼吸波形を生成して出力する出力部と、を有し、
前記出力部は、前記位相検出部が前記第1の呼吸波形の位相と前記第2の呼吸波形の位相が逆位相であることを検出した場合、前記第1の呼吸波形の位相が反転された反転位相波形と前記第2の呼吸波形とが加算平均された波形を前記評価用呼吸波形として出力し、前記位相検出部が前記第1の呼吸波形の位相と前記第2の呼吸波形の位相が逆位相であることを検出しなかった場合、前記第1の呼吸波形と前記第2の呼吸波形とが加算平均された波形を前記評価用呼吸波形として出力する、ことを特徴とするバイタル計測器。
【0014】
(2)前記第1の検知部が呼吸運動を検知したか否か、および前記第2の検知部が呼吸運動を検知したか否かを判定する判定部をさらに有し、
前記出力部は、前記判定部が前記第1の検知部のみが呼吸運動を検知したと判定したとき、前記第1の呼吸波形の位相が反転された反転位相波形を前記評価用呼吸波形として出力し、前記判定部が前記第2の検知部のみが呼吸運動を検知したと判定したとき、前記第2の呼吸波形を前記評価用呼吸波形として出力する、ことを特徴とする上記(1)に記載のバイタル計測器。
【0015】
(3)前記判定部が前記第1の検知部および前記第2の検知部が呼吸運動を検知しなかったと判定したときに呼吸運動が検知されなかったことを報知する報知部をさらに有することを特徴とする上記(2)に記載のバイタル計測器。
【0016】
(4)前記第1の検知部および前記第2の検知部の少なくとも一方の検知部は、
内部に流体を封入し、前記被検者の背部または腰部が載置される流体袋と、
前記被検者の呼吸運動に基づく体振動による前記流体袋内の圧力の変動から呼吸波形を取得するセンサと、を有することを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれか1つに記載のバイタル計測器。
【0017】
(5)前記第1の検知部および前記第2の検知部の少なくとも一方の検知部は、
圧電フィルム、圧電シート、静電容量式圧力センサ、および感圧センサのいずれか1つによって構成されることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれか1つに記載のバイタル計測器。
【発明の効果】
【0018】
本発明のバイタル計測器は、被検者の異なる部位においてそれぞれ呼吸運動を検知する第1、第2の検知部が互いに逆位相の呼吸波形を取得した場合、第1の検知部よりも下肢側に配置される第2の検知部が取得する呼吸波形の位相に合わせて被検者の呼吸運動を代表的に示す評価用呼吸波形が出力される。このため、被検者の呼吸方式に関わらず、腹式呼吸の腹部側において取得される呼吸波形および胸式呼吸において取得される呼吸波形と同位相の波形を評価用呼吸波形として出力することができる。これにより、被検者の健康状態の判断を評価用呼吸波形に基づいて適正に行うことが可能になるため、被検者の容態悪化の早期発見に資することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、実施形態に係るバイタル計測器の使用状態を模式的に示す図であり、図1(A)は、斜視図、図1(B)は、側面図である。
【図2】図2は、バイタル計測器の全体構成を示す図であり、図2(A)は、バイタル計測器の平面図、図2(B)は、バイタル計測器の側面図である。
【図3】図3は、バイタル計測器の要部を示す図であり、図3(A)は、検知部が備える流体袋の断面図、図3(B)は、表示部の拡大図である。
【図4】バイタル計測器の制御システムを簡略化して示すブロック図である。
【図5】図5は、呼吸方式ごとの呼吸波形の位相を説明するための図であり、図5(A)は、検知部の配置を例示した図、図5(B)は、正位相の呼吸波形を示す図、図5(C)は、逆位相の呼吸波形を示す図である。
【図6】検知部の配置と各呼吸方式において取得される呼吸波形との関係を示す図である。
【図7】バイタル計測器による計測手順全体を示すフローチャートである。
【図8】図7のステップ12に示す処理内容を示すフローチャートである。
【図9】バイタル計測器が行う計測処理の内容を簡略的に示す図である。
【図10】図10(A)〜(C)はそれぞれ、検知部の改変例(1)を示す図である。
【図11】図11(A)〜(C)はそれぞれ、検知部の改変例(1)を示す図である。
【図12】検知部の改変例(2)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ、本発明を実施形態に基づいて説明する。図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0021】
図1は、本発明の実施形態に係るバイタル計測器10の使用例を示す。バイタル計測器10は、例えば、ベッドやマットレスなどに横たえさせられた状態の被検者90に使用されるものであり、被検者90の基礎バイタルとしての呼吸数を計測することを可能にするものである。使用対象となる被検者90は、例えば、在宅介護を受けている高齢者、肺炎や尿路感染症等の感染症を患った臥位患者などが挙げられる。
【0022】
まず、バイタル計測器の全体構成について説明する。
【0023】
図1、図2を参照して、実施形態に係るバイタル計測器10は、被検者90の呼吸運動を検知して呼吸運動に基づく呼吸波形を取得する第1の検知部21および第2の検知部22と、第1の検知部21および第2の検知部22の検知結果に基づいて生成される被検者90の代表的な呼吸運動を示す評価用呼吸波形を表示する本体部30と、を有している。
【0024】
図1に示されるように、第2の検知部22は、第1の検知部21よりも被検者90の下肢側に配置される。例えば、第1の検知部21は、被検者90の胸部付近に配置され、第2の検知部22は、被検者90の腹部付近に配置される。なお、図1の破線部は、第1の検知部21および第2の検知部22によって呼吸波形が検知される対象範囲を例示するものである。
【0025】
第1の検知部21と第2の検知部22は、所定の間隔を空けて配置されることが望ましい。後述するように、被検者90が腹式呼吸を行う場合、被検者90のみぞおち付近では呼吸運動が検知されないことがある。第1の検知部21および第2の検知部22が近接して配置され、さらに両検知部21、22がみぞおち付近に配置されるような場合には呼吸運動が検知されない虞がある。このため、本実施形態においては、呼吸運動が検知されないという計測結果とならないように、第1の検知部21と第2の検知部22との間に所定の間隔を設けている。間隔の寸法は特に限定されるものではないが、少なくとも10cm以上の間隔を設けることが好ましい。
【0026】
本体部30は、筺体31と、筺体31内に配置されバイタル計測器10の計測システムを統括的に制御する制御部63と(図4を参照)、呼吸数や呼吸波形が表示される表示部32としてのディスプレイと、表示内容の切替え等を操作するための各種の操作スイッチ35、37と、を備える。筺体31の材料には、例えば、電子機器類のハードカバーに一般的に用いられる硬質のプラスチック材料などが使用される。
【0027】
第1の検知部21および第2の検知部22のそれぞれは、内部に流体を封入し、被検者90の背部または腰部が載置される流体袋51、52と、被検者90の呼吸運動に基づく体振動による流体袋51、52内の圧力の変動から呼吸波形を取得するセンサ41、42と、を有している。
【0028】
各センサ41、42は、被検者90の呼吸運動に起因する体振動を計測するために用いられている。センサ41、42には、空気圧の検出に用いられる公知の無指向性マイクロフォンを使用しているが、これに限定されるものではなく、コンデンサマイクロフォン、圧力センサ、PVDF(Poly Vinylidene Di Fluoride)センサやEMFiTセンサに代表される各種圧電フィルム及び圧電シート、静電容量式圧力センサ(静電容量型面圧センサ)、感圧センサ(Force Resister Sensor:FSR)、歪ゲージなどを流体の特性に合わせて適宜使用することが可能である。なお、後述するように、圧電フィルム、圧電シート、静電容量式圧力センサ、感圧センサを利用する場合は、流体袋を使用することなく、検知部を構成することが可能である。
【0029】
各センサ41、42は、取得した呼吸波形を本体部30内に内蔵された制御部63へ送信する(図4を参照)。呼吸波形の送信は、第1の検知部21が備えるセンサ41と制御部63とを電気的に接続する第1のリード線61、および第2の検知部22が備えるセンサ42と制御部63とを電気的に接続する第2のリード線62を介して行われる。なお、各センサ41、42と制御部63との間で行われる呼吸波形の送受信は、リード線を用いた形態に限定されるものではなく、一般的な電気ケーブルを使用した送受信方法や、無線方式による送受信方法を採用することも可能である。また、図示例にあっては、各センサ41、42を流体袋51、52内にそれぞれ配置しているが、配置箇所は流体袋内のみに限定されるものではない。例えば、流体袋内と本体部内とを連通する流体通路を設け、その流体通路にセンサを設置する形態を採用することができる。また、本体部30が備える筺体31内にセンサを設置することも可能である。
【0030】
図3(A)を参照して、各流体袋51、52は、内部に流体を封入し得るシート状の部材から構成されている。流体袋51、52の材質は特に限定されるものではないが、例えば、気密性を有する柔軟なゴム、プラスチック、布材等を使用することができる。流体袋51、52は、比較的小型に形成されており、外周部分の一辺がそれぞれ3cm、15cm程度であり、最大膨張時の厚みが1cm程度である。流体としては、例えば、空気・水・オイル・高分子ゲルなどを使用することができる。
【0031】
各流体袋51、52には、流体袋51、52を弾性的に支持する支持部材71と、流体袋51、52に伝達される体振動の拡散を防止する裏打ち材73とを取り付けている。
【0032】
支持部材71には、例えば、ラテックス製のバルーン、スポンジ、ゲルなどのように弾性的に流体袋51、52を支持し得る材質のものを使用することができる。なお、バルーンを使用する場合には、流体注入口(図中省略する)を介してバルーン内部に空気や水等の流体を注入させて膨張させる。また、使用後は、バルーン内部に注入した流体を排出させ、しぼませた状態の流体袋51、52とともにバルーンをケース内などに収納して持ち運ぶこと可能である。
【0033】
支持部材71は、流体袋51、52をベッド80側から押し上げるように支持して、流体袋51、52と被検者90との接触を安定させる機能を発揮する。被検者90に対して流体袋51、52が安定的に保持されるため、被検者90が寝返りするような場合においても流体袋51、52に位置ずれが生じることを防止することができる。
【0034】
裏打ち材73には、例えば、非伸縮性のプラスチックフィルム、金属性の薄状プレート、フィルムなどを使用することができる。また、プラスチックフィルムとしては、例えば、PET樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ナイロン樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂などからなる樹脂製プレート、フィルムを使用することができる。また、エチレン酢酸ビニルコポリマーなど各種ビニルモノマーの共重合体を使用することもできる。
【0035】
裏打ち材73の厚みは、特に制限されるものではないが、バイタル計測器10の小型化・薄型化を図る観点から、1mm程度の厚みのものを使用するのが好ましい。なお、バイタル計測器10は、支持部材71及び裏打ち材73のどちらか一方のみを備える構成とすることも可能である。また、支持部材71及び裏打ち材73の両方を備える構成の場合には、例えば、図3(A)に示す設置位置の上下関係を逆にすることも可能である。
【0036】
図4を参照して、本体部30に内蔵された制御部63は、各流体袋51、52内の圧力が変動した際にセンサ41、42から送信される波形信号に基づいて各種演算処理を行う演算処理部と、表示部32に表示される内容を制御する表示制御回路と、センサ41、42、演算処理部、および表示制御部63のそれぞれを制御する制御回路と、を有している。
【0037】
演算処理部は、センサ41、42によって得られた波形信号に対して種々の演算および処理を実行するものである。また、演算処理部は、計測された呼吸数を表示部32に表示したり、音声出力部から警告アラームを発したりするといった動作の制御も行う。
【0038】
演算処理部は、位相検出部、出力部、および判定部として機能する。ここで、位相検出部は、第1の検知部21が取得した第1の呼吸波形と第2の検知部22が取得した第2の呼吸波形の位相差を検出するものである。出力部は、第1の呼吸波形および第2の呼吸波形から被検者の呼吸運動を代表的に示す評価用呼吸波形を生成して出力するものである。判定部は、第1の検知部21が呼吸運動を検知したか否か、および第2の検知部22が呼吸運動を検知したか否かを判定するものである。
【0039】
演算処理部は、位相検出部、出力部、および判定部に対応するプログラムとセンサ41、42から送信された波形信号を処理して呼吸数を予測演算するプログラムとを格納したROMと、算出された呼吸波形データを時系列で記憶するためのRAMと、所定の音声データ等を格納したEEPROMと、を有している。なお、位相検出部、出力部、および判定部の機能は、それぞれに対応するプログラムを演算処理部が実行することにより発揮される。
【0040】
図3(B)を参照して、本体部30に設けられた電源スイッチ33は、バイタル計測器10の電源のオン/オフを操作するためのものである。モード切替スイッチ35は、リアルタイム計測モードと、メモリデータ閲覧モードとを切り替えるために使用される。リアルタイム計測モードを使用する場合には、例えば、警告アラーム機能が併用される。設定を超えた呼吸数が計測されたときには、警告音を発して、ユーザーにバイタル異常の発生を早期に知らせることが可能になっている。警告アラームは、例えば、呼吸数が30回/min以上に達したときや、8回/min以下に達したときに警告音が発せられるように設定することが好ましい。健常者の呼吸数は15〜20回/min程度とされており、30回/minを越える場合には重篤と判断されるためである。
【0041】
波形確認スイッチ37は、RAMに記憶された呼吸運動の波形データを確認するためのものである。メモリデータ閲覧モードにおいて、左右それぞれの波形確認スイッチ37を押すことで、計測開始時の波形から計測終了時における波形を時系列に沿ってディスプレイ31に表示することが可能になっている。
【0042】
ディスプレイ31の右端には、呼吸波形とともに呼吸数を表示することが可能になっている。図示されるように、例えば、1分間における呼吸数(RR:Respiratory Rate)が表示される。呼吸数は、波形計測の開始側の所定の時間(図中の編み掛け部分。例えば、15秒程度。)でサンプリングしたデータに基づいて算出され、表示部32の右端にリアルタイムで表示させることが可能になっている。
【0043】
実施形態に係るバイタル計測器10においては、呼吸数のみならず、呼吸波形中に現れる吸気と呼気のバランス、および呼吸波形の時間変化が表示部32において表示される。健康な人の呼吸では、呼気と吸気の間に若干の休止期間があり、吸気の方が呼気より若干早く、比率はおおよそ1:1.5とされる。しかし、頻呼吸や多呼吸では休止期がほとんどなくなるといった変化が観察され、気管支喘息発作など呼息性呼吸困難の場合には、呼気の延長が観察されることがある。一方、肺水腫などで吸息性の呼吸困難の場合には、吸気と呼気の比率が1:1程度になり、呼吸が早くなることが知られている。このように、吸気と呼気の周期性についての情報は被検者90の容態を判断する上で有用であるため、単純な視診に頼らずに、定量性をもって評価できることが望ましい。
【0044】
図5は、検知部の設置位置と検知される呼吸波形との関係を示す。例えば、被検者90が腹式呼吸を行う場合において、下腹部付近のA点、B点に検知部を配置すると、図5(B)に示す呼吸波形が取得される。吸気の際に呼吸波形がプラス方向(図中の上側)に振れ、呼気の際に呼吸波形がマイナス方向(図中の下側)に振れる呼吸波形である。一方、胸部付近のD点、E点に検知部を設置すると、図5(C)に示す呼吸波形が取得される。呼気の際に呼吸波形がプラス方向(図中の上側)に振れ、吸気の際に呼吸波形がマイナス方向(図中の下側)に振れる呼吸波形である。また、みぞおち付近のC点に検知部が配置された場合には、呼吸波形が取得されない。これは、呼吸に伴う横隔膜の運動により、呼吸波形が打ち消されるためである。被検者90が胸式呼吸を行う場合は、検知部を下腹部付近、胸部付近、みぞおち付近のいずれの箇所に配置した場合においても、呼気の際にプラス方向に波形が振れ、吸気の際にマイナス方向に波形が振れる。
【0045】
このように、被検者90が腹式呼吸行う場合において、胸部付近において取得される呼吸波形は、下腹部付近で取得される呼吸波形や、胸式呼吸を行う被検者90から取得される呼吸波形とは逆位相の波形(−πの位相差が存在する波形)となる。
【0046】
図6は、検知部が取得する呼吸波形と各呼吸方式との関係を示す。この図に示されるように、被検者90の呼吸方式や検知部の配置によっては、呼吸波形が取得されなかったり、呼吸波形が異なる位相で出力されたりすることがある。
【0047】
なお、被検者90が腹式呼吸と胸式呼吸とが組み合わされた胸腹式呼吸をしている場合において、下腹部付近に検知部が配置されると、吸気の際にプラス方向に、呼気の際にマイナス方向に波形が振れるが、胸部付近に検知部を配置すると、吸気と呼気に対応した正弦波が得られないことがある。これは、胸式呼吸由来の呼吸振動と、腹式呼吸由来の呼吸振動とが混合し、両振動が打ち消されあうためである。また、腹式で呼吸を行った後、胸式で呼吸をするなどして一回の呼吸の中で腹式、胸式のタイミングがずれると、それぞれの呼吸振動が足し合わされ、結果として、本来の呼吸の2倍の周波数で出力されてしまうためである。
【0048】
医療の現場においては、呼吸波形の出力結果に基づいた健康状態の診察や診断は、経験的に、腹式呼吸の下腹部付近において取得される波形および胸式呼吸において取得される波形(正位相の呼吸波形)を視認することにより行われている。このため、逆位相で出力された呼吸波形に基づいて患者の健康状態の判断が行われることは、被検者の容態悪化の早期発見の観点から好ましくない。そこで、バイタル計測器10にあっては、以下に説明する計測処理にしたがって評価指標として適切な呼吸波形を出力することを可能にしている。
【0049】
図7を参照して、バイタル計測器10を使用するにあたり、第1の検知部21、第2の検知部22を被検者90にセットする。この際、第1の検知部21および第2の検知部22は、被検者90の体軸上にそれぞれ配置させることが望ましい。被検者90の体圧が第1の検知部21および第2の検知部22に均等に付与されるため、第1の検知部21と第2の検知部22においてより均一な信号強度の呼吸波形を取得することが可能になるためである。
【0050】
ステップ11では、第1の検知部21が備えるセンサ41(以下、「センサH」とする)、および第2の検知部22が備えるセンサ42(以下、「センサL」とする)が体圧を検知するか否かを判断する。
【0051】
ステップ11において、センサH、センサLの両方が体圧を検知した場合は、計測処理を行うステップ12に進む。ステップ12については後述する。
【0052】
センサH、センサLのいずれかが体圧を検知していない場合は、ステップ13に進む。ステップ13では、第1の検知部21および第2の検知部22の設置個所の変更指示が行われる。センサH、センサLのいずれかが体圧を検知していないということは、第1の検知部21および第2の検知部22が被検者90の身体下に配置されていなかったり、身体から大きく外れた位置に配置されていたりすることが考えられる。このような場合、第1の検知部21および第2の検知部22によって呼吸波形を取得することはできないため、設置箇所の変更の指示を行う。変更指示は、例えば、音声出力部から警告音を発して行われたり、表示部32上に変更を行うべき旨の警告画像を表示して行われたりする。
【0053】
ステップ12では、取得された呼吸波形に基づく各種の計測処理が行われる。この計測処理は、制御部63のROM内に予め格納された所定のプログラムによって実行される。
【0054】
図8を参照して、ステップ21に進む。ステップ21では、センサH、センサLの両方が、呼吸運動を検知したか否かを判定する。センサH、センサLの両方が呼吸運動を検知した場合は、ステップ22に進む。センサH、Lのいずれかが呼吸運動を検知していない場合は、ステップ31に進む。ステップ31については後述する。
【0055】
ステップ22では、センサHが取得した呼吸波形(以下、「第1の呼吸波形」とする)、センサLが検知した呼吸波形(以下、「第2の呼吸波形」とする)の位相差の検出および評価を行う。次にステップ23に進む。
【0056】
ステップ23では、第1の呼吸波形の位相と第2の呼吸波形の位相とが逆位相である否か(−πの位相差が存在するか否か)を判定する。ステップ23において、逆位相の波形であると判定された場合、ステップ24に進む。ステップ23において、逆位相の波形ではないと判定された場合、ステップ25に進む。
【0057】
ステップ24では、第1の呼吸波形の位相が反転された反転位相波形と第2の呼吸波形とを加算平均する。次にステップ26において、加算平均された波形を評価用呼吸波形として出力する。出力は、例えば、評価用呼吸波形をバイタル計測器10の表示部32に表示させる形態で行われる。
【0058】
ステップ25では、第1の呼吸波形と第2の呼吸波形とを加算平均する。次にステップ26において、加算平均された波形を評価用呼吸波形として出力する。
【0059】
次に、ステップ31に進んだ場合において、センサHのみが呼吸運動を検知していると判定された場合、ステップ32に進む。その他の判定結果が得られたときは、ステップ33に進む。
【0060】
ステップ32では、第1の呼吸波形の位相が反転された反転位相波形を評価用呼吸波形として出力する。
【0061】
ステップ33に進んだ場合において、センサLのみが呼吸運動を検知していると判定された場合、ステップ34へ進み、その他の判定結果が得られたときは、ステップ35に進む。
【0062】
ステップ34では、第2の呼吸波形を評価用呼吸波形として出力する。
【0063】
ステップ35では、第1の検知部21および第2の検知部22の設置個所の変更指示が行われる。第1の検知部21および第2の検知部22の両検知部が呼吸運動を検知していないということは、被検者90の呼吸方式が胸腹式呼吸であり、かつ第1の検知部21および第2の検知部22が胸部付近に配置されていると考えられる(図6を参照)。この場合、適正な評価用呼吸波形を出力することができない虞があるため、設置箇所の変更の指示を行う。変更指示は、バイタル計測器10に設けられた報知部によって行う。報知部には、音声出力部が用いられる。すなわち、音声出力部から警告音を発することにより、変更指示の報知が行われる。なお、表示部32上に変更を行うべき旨の警告画像を表示させることにより、表示部32を報知部として機能させることも可能である。
【0064】
計測処理(ステップ12)のサブルーチンは、被検者90に設置された第1の検知部21および第2の検知部22が被検者90から取り外されるか、またはバイタル計測器10の電源が切られるまで実行させられる。これにより、表示部32には、評価用呼吸波形が経時的に表示される。なお、図9の図表において、図8のフローチャートで説明したセンサH、Lの検知結果と計測処理との関係を簡略的に示す。
【0065】
本実施形態に係るバイタル計測器10によれば、被検者90の異なる部位においてそれぞれ呼吸運動を検知する第1、第2の検知部21、22が互いに逆位相の呼吸波形を取得した場合、第1の検知部21よりも下肢側に配置される第2の検知部22が取得する呼吸波形の位相に合わせて被検者90の呼吸運動を代表的に示す評価用呼吸波形を出力する。このため、被検者90の呼吸方式に関わらず、腹式呼吸の腹部側において取得される呼吸波形および胸式呼吸において取得される呼吸波形と同位相の波形を評価用呼吸波形として出力することができる。これにより、被検者90の健康状態の判断を評価用呼吸波形に基づいて適正に行うことが可能になるため、被検者90の容態悪化の早期発見に資することができる。
【0066】
また、第1の検知部21のみが呼吸運動を検知した場合には、第1の呼吸波形を反転させた反転呼吸波形を評価用呼吸波形として出力し、第2の検知部22のみが呼吸運動を検知した場合には、第2の呼吸波形をそのまま評価用呼吸波形として出力する。したがって、第1の呼吸波形または第2の呼吸波形のいずれかの呼吸波形が取得される場合には、正位相の呼吸波形が評価用呼吸波形として出力されるため、正位相の呼吸波形に基づいた被検者90の健康状態の判断を行うことが可能になる。
【0067】
また、第1の検知部21および第2の検知部22によって呼吸運動が検知されなかったときには、呼吸運動が検知されなかったことを報知部が被検者90やバイタル計測器を観測するユーザーに報知する。報知部による報知が行われることによって、評価用呼吸波形が出力されないことを被検者90やユーザーに知らせることができる。
【0068】
また、第1の検知部21および第2の検知部22のそれぞれは、被検者90の背部または腰部が載置される流体袋51、52内の圧力の変動から呼吸波形を取得する。検知部として流体袋51、52を利用することによって呼吸運動に基づく体振動を精度良く検知することができるため、検知部の小型化、ひいてはバイタル計測器10の小型化を図ることができる。これにより、携帯性が向上されたバイタル計測器10の提供を行うことが可能になる。
【0069】
(改変例1)
次に、第1の検知部21および第2の検知部22の改変例を説明する。上述した実施形態においては、略矩形形状の支持部材71上に第1の検知部21および第2の検知部22を配置させた構成を示したが、本発明に係る検知部の構成は、このような形態に限定されるものではない。以下、図10および図11を参照して、検知部の改変例を説明する。なお、上述した実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0070】
図10(A)に示す改変例では、第1の検知部21および第2の検知部22の形状に合わせて、略丸型の支持部材71を取り付けている。支持部材71がより小さく構成されるため、臥位患者の背部や腰部への配置を円滑に行うことができる。
【0071】
図10(B)に示す改変例では、体軸方向に沿って3つの検知部21、22、23を設けている。このような構成によれば、被検者90の呼吸運動を3箇所で検知することができる。そして、3つの検知部21、22、23が取得した呼吸波形を加算平均することによって、信頼性のより高い評価用呼吸波形の出力を行うことが可能である。
【0072】
図10(C)に示す改変例では、体軸方向に沿って3つの検知部21、22、23を設け、さらに体軸方向と交差する方向に3つの検知部23、24、25を設けている。体軸方向と交差する方向に設けられた3つの検知部23、24、25が取得する呼吸波形を加算平均し、さらに体軸方向に沿って一列に配置された3つの検知部21、22、23が取得する呼吸波形を加算平均することにより、図10(B)に示す改変例よりもさらに信頼性の高い評価用呼吸波形の出力を行うことが可能である。
【0073】
図11(A)に示す改変例では、流体袋51、52を丸型の外形形状ではなく、略矩形の外形形状に形成している。このような形状の流体袋51、52を利用する場合においても、呼吸波形の取得を良好に行うことが可能である。
【0074】
図11(B)に示す改変例では、分割された流体袋51の間、および分割された流体袋52の間をそれぞれ連通する連通路(バイパス)81を設けている。このような構成を採用することによって、被検者90が流体袋51、52上に載置された際に、流体袋51、52につぶれやキンクが発生することを防止することができる。したがって、流体袋51、52のつぶれやキンクに伴う計測精度の低下が招かれることを未然に防止することができる。
【0075】
図11(C)に示す改変例では、支持部材71に切り欠き83が設けられている。上述した実施形態において説明したように、被検者90のみぞおち付近においては、呼吸運動が検知されず、呼吸波形を取得することができない場合が起こり得る。例えば、本改変例のように、みぞおち付近に配置する目安となる切り欠き83が設けられていれば、使用時に第1の検知部21および第2の検知部22がみぞおち付近に配置されることを避けることができる。これにより、利便性の向上が図られたバイタル計測器10を提供することが可能になる。
【0076】
(改変例2)
上述した実施形態においては、流体袋およびセンサを備えた検知部21、22をバイタル計測器10に適用したが、検知部は、このような構成のみに限定されるものではない。図12に示す形態では、体振動を検知するセンサ41、42として、圧電フィルム、圧電シート、静電容量式圧力センサ、感圧センサなどを使用し、各センサ41、42を第1の検知部21、第2の検知部22としてそれぞれ機能させている。なお、上記各センサの中から同種のセンサを第1の検知部21および第2の検知部22に使用することも可能であるし、一方のセンサと他方のセンサにそれぞれ異なる種類のセンサを使用することも可能である。さらに、流体袋およびセンサによって一方の検知部を構成させ、上記センサのいずれかのセンサによって他方の検知部を構成させることも可能である。
【0077】
実施形態の説明においては、臥位状態にある被検者90に対してバイタル計測器10を使用した例を示したが、例えば、バイタル計測器10を座位患者や椅子等に腰をかけた状態の被検者90に対して使用することも可能である。このような使用形態においては、例えば、バイタル計測器の検知部をズボンのベルトに挟むか、椅子の背や壁と被検者の背中との間に設置することで計測を行うことができる。
【符号の説明】
【0078】
10 バイタル計測器、
21 第1の検知部、
22 第2の検知部、
41 センサ、
42 センサ、
51 流体袋、
52 流体袋、
90 被検者。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者の呼吸機能に関するバイタルを計測するためのバイタル計測器であって、
被検者の呼吸運動を検知して前記呼吸運動に基づく第1の呼吸波形を取得する第1の検知部と、
前記第1の検知部よりも前記被検者の下肢側において前記被検者の呼吸運動を検知して前記呼吸運動に基づく第2の呼吸波形を取得する第2の検知部と、
前記第1の呼吸波形と前記第2の呼吸波形の位相差を検出する位相検出部と、
前記第1の呼吸波形および前記第2の呼吸波形から前記被検者の呼吸運動を代表的に示す評価用呼吸波形を生成して出力する出力部と、を有し、
前記出力部は、前記位相検出部が前記第1の呼吸波形の位相と前記第2の呼吸波形の位相が逆位相であることを検出した場合、前記第1の呼吸波形の位相が反転された反転位相波形と前記第2の呼吸波形とが加算平均された波形を前記評価用呼吸波形として出力し、前記位相検出部が前記第1の呼吸波形の位相と前記第2の呼吸波形の位相が逆位相であることを検出しなかった場合、前記第1の呼吸波形と前記第2の呼吸波形とが加算平均された波形を前記評価用呼吸波形として出力する、ことを特徴とするバイタル計測器。
【請求項2】
前記第1の検知部が呼吸運動を検知したか否か、および前記第2の検知部が呼吸運動を検知したか否かを判定する判定部をさらに有し、
前記出力部は、前記判定部が前記第1の検知部のみが呼吸運動を検知したと判定したとき、前記第1の呼吸波形の位相が反転された反転位相波形を前記評価用呼吸波形として出力し、前記判定部が前記第2の検知部のみが呼吸運動を検知したと判定したとき、前記第2の呼吸波形を前記評価用呼吸波形として出力する、ことを特徴とする請求項1に記載のバイタル計測器。
【請求項3】
前記判定部が前記第1の検知部および前記第2の検知部が呼吸運動を検知しなかったと判定したときに呼吸運動が検知されなかったことを報知する報知部をさらに有することを特徴とする請求項2に記載のバイタル計測器。
【請求項4】
前記第1の検知部および前記第2の検知部の少なくとも一方の検知部は、
内部に流体を封入し、前記被検者の背部または腰部が載置される流体袋と、
前記被検者の呼吸運動に基づく体振動による前記流体袋内の圧力の変動から呼吸波形を取得するセンサと、を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のバイタル計測器。
【請求項5】
前記第1の検知部および前記第2の検知部の少なくとも一方の検知部は、
圧電フィルム、圧電シート、静電容量式圧力センサ、および感圧センサのいずれか1つによって構成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のバイタル計測器。
【請求項1】
被検者の呼吸機能に関するバイタルを計測するためのバイタル計測器であって、
被検者の呼吸運動を検知して前記呼吸運動に基づく第1の呼吸波形を取得する第1の検知部と、
前記第1の検知部よりも前記被検者の下肢側において前記被検者の呼吸運動を検知して前記呼吸運動に基づく第2の呼吸波形を取得する第2の検知部と、
前記第1の呼吸波形と前記第2の呼吸波形の位相差を検出する位相検出部と、
前記第1の呼吸波形および前記第2の呼吸波形から前記被検者の呼吸運動を代表的に示す評価用呼吸波形を生成して出力する出力部と、を有し、
前記出力部は、前記位相検出部が前記第1の呼吸波形の位相と前記第2の呼吸波形の位相が逆位相であることを検出した場合、前記第1の呼吸波形の位相が反転された反転位相波形と前記第2の呼吸波形とが加算平均された波形を前記評価用呼吸波形として出力し、前記位相検出部が前記第1の呼吸波形の位相と前記第2の呼吸波形の位相が逆位相であることを検出しなかった場合、前記第1の呼吸波形と前記第2の呼吸波形とが加算平均された波形を前記評価用呼吸波形として出力する、ことを特徴とするバイタル計測器。
【請求項2】
前記第1の検知部が呼吸運動を検知したか否か、および前記第2の検知部が呼吸運動を検知したか否かを判定する判定部をさらに有し、
前記出力部は、前記判定部が前記第1の検知部のみが呼吸運動を検知したと判定したとき、前記第1の呼吸波形の位相が反転された反転位相波形を前記評価用呼吸波形として出力し、前記判定部が前記第2の検知部のみが呼吸運動を検知したと判定したとき、前記第2の呼吸波形を前記評価用呼吸波形として出力する、ことを特徴とする請求項1に記載のバイタル計測器。
【請求項3】
前記判定部が前記第1の検知部および前記第2の検知部が呼吸運動を検知しなかったと判定したときに呼吸運動が検知されなかったことを報知する報知部をさらに有することを特徴とする請求項2に記載のバイタル計測器。
【請求項4】
前記第1の検知部および前記第2の検知部の少なくとも一方の検知部は、
内部に流体を封入し、前記被検者の背部または腰部が載置される流体袋と、
前記被検者の呼吸運動に基づく体振動による前記流体袋内の圧力の変動から呼吸波形を取得するセンサと、を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のバイタル計測器。
【請求項5】
前記第1の検知部および前記第2の検知部の少なくとも一方の検知部は、
圧電フィルム、圧電シート、静電容量式圧力センサ、および感圧センサのいずれか1つによって構成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のバイタル計測器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−66570(P2013−66570A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206619(P2011−206619)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】
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