説明

バイブレータ付きシートシステム

【課題】シートに着座するシート利用者の快適性を向上させるためにその利用者の操作入力に応じてそのシート上で振動を発生させるバイブレータの故障を早期に発見できるようにするバイブレータ付きシートシステムを提供すること。
【解決手段】シートSに着座する乗員の快適性を向上させるためにその乗員の操作入力に応じてシートS上で振動を発生させるバイブレータVを備えたバイブレータ付きシートシステムSYS1は、所定のタイミングで自動的にバイブレータVの診断を実行する診断手段E10を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートに着座するシート利用者の快適性を向上させるためにその利用者の操作入力に応じてそのシート上で振動を発生させるバイブレータを備えたバイブレータ付きシートシステムに関し、特に、その利用者の操作入力に応じて初めて振動を開始させるというそのバイブレータの受動的な特性から故障が発見され難くなるのを防止する診断機能を備えたバイブレータ付きシートシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シートに着座するシート利用者の快適性を向上させるためにそのシート上で振動を発生させるバイブレータを備えた車両用シートが知られている(例えば、特許文献1参照。)。この車両用シートは、シートバックの傾きに連動してバイブレータを前方又は下方に移動可能とし、且つ、バイブレータ押し付け力を調整可能とする機能を有することにより、バイブレータの効果を維持又は向上させ、快適性を向上させるようにする。
【0003】
また、運転席シートの4箇所に振動体を設置した警報装置が知られている(例えば、特許文献2又は特許文献3参照。)。この警報装置における4つの振動体はそれぞれ、異常や危険が存在する4つの方向(車両の右前方、左前方、右後方、及び左後方である。)に対応し、異常や危険の状態に応じて振動の大きさや周波数を変化させる。
【0004】
また、シートベルトの締め忘れや運転者の居眠りを検出した場合に運転席に設置したバイブレータを振動させる警報装置も知られている(例えば、特許文献4又は特許文献5参照。)。
【0005】
また、バイブレータの電源状態のチェックを行う技術として、携帯電話の着信を知らせるその携帯電話とは別体のセパレート式バイブレータにおける電池チェック方式が知られている(例えば、特許文献6参照。)。
【0006】
この電池チェック方式は、セパレート式バイブレータと携帯電話との間を通信により対応付けた場合に、或いは、そのバイブレータに対応する携帯電話が電源オンとなった場合に、そのバイブレータを振動させることによって電池の容量が十分であることを使用者に知らせるようにする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−272033号公報
【特許文献2】特開2005−138685号公報
【特許文献3】特開2006−44294号公報
【特許文献4】実開平7−30790号公報
【特許文献5】特開2007−55321号公報
【特許文献6】特開平10−42025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1は、バイブレータの故障を発見するための方法については何ら開示しておらず、また、特許文献2〜6に記載の技術は何れも、シートに着座するシート利用者の快適性を向上させるためにその利用者の操作入力に応じてそのシート上で振動を発生させるバイブレータに関するものではない。
【0009】
本発明は、シートに着座するシート利用者の快適性を向上させるためにその利用者の操作入力に応じてそのシート上で振動を発生させるバイブレータの故障を早期に発見できるようにするバイブレータ付きシートシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の目的を達成するために、第一の発明に係るバイブレータ付きシートシステムは、シートに着座する乗員の快適性を向上させるために該乗員の操作入力に応じて該シート上で振動を発生させるバイブレータを備えたバイブレータ付きシートシステムであって、所定のタイミングで前記バイブレータの診断を実行する診断手段を備えることを特徴とする。
【0011】
また、第二の発明は、第一の発明に係るバイブレータ付きシートシステムであって、前記診断手段による診断結果を乗員に通知する診断結果通知手段を更に備えることを特徴とする。
【0012】
また、第三の発明は、第二の発明に係るバイブレータ付きシートシステムであって、前記診断結果通知手段は、運転席の前方に設置されたディスプレイに診断結果を表示することを特徴とする。
【0013】
また、第四の発明は、第一乃至第三の何れかの発明に係るバイブレータ付きシートシステムであって、前記シートは、後部座席シート又は助手席シートであり、前記所定のタイミングは、イグニッションオン時であることを特徴とする。
【0014】
また、第五の発明は、第四の発明に係るバイブレータ付きシートシステムであって、前記診断結果通知手段は、診断結果に応じた所定の振動パターンで運転席シートのバイブレータを振動させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
上述の手段により、本発明は、シートに着座するシート利用者の快適性を向上させるためにその利用者の操作入力に応じてそのシート上で振動を発生させるバイブレータの故障を早期に発見できるようにするバイブレータ付きシートシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係るバイブレータ付きシートシステムの構成例を示すブロック図(その1)である。
【図2】本発明に係るバイブレータ付きシートシステムを内蔵する座席の側部断面図である。
【図3】本発明に係るバイブレータ付きシートシステムを搭載した車両における車室の上面図(その1)である。
【図4】診断処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】本発明に係るバイブレータ付きシートシステムの構成例を示すブロック図(その2)である。
【図6】本発明に係るバイブレータ付きシートシステムを搭載した車両における車室の上面図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。
【実施例】
【0018】
図1は、本発明に係るバイブレータ付きシートシステムの構成例を示すブロック図であり、バイブレータ付きシートシステムSYS1は、制御部E、イグニッションスイッチIG、操作スイッチSW、振動センサVS、回転センサRS、バイブレータV、モータM、及びディスプレイDSPを有し、各構成要素は、CAN(Controller Area Network)等の車載LANプロトコルを用いながら多重通信線で接続されている。
【0019】
制御部Eは、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を備えたコンピュータであって、例えば、運転席に隣接するセンターコンソール付近に設置され、複数の座席(例えば、左右の後部座席である。)に内蔵されるバイブレータV及びモータMを集中制御できるよう、診断手段E10及び診断結果通知手段E11のそれぞれに対応するプログラムをROMに記憶しながら、各手段に対応する処理をCPUに実行させる。
【0020】
なお、制御部Eは、各座席の背もたれ部に内蔵され、各座席に内蔵されるバイブレータV及びモータMを個別に制御するようにしてもよい。
【0021】
イグニッションスイッチIGは、イグニッションのオン・オフを切り替えるためのスイッチであり、例えば、ステアリングコラムに設置され、電子キー又はメカニカルキーによってイグニッションスイッチがオン状態となったことを表す信号を制御部Eに対して出力する。
【0022】
操作スイッチSWは、シートシステムSYS1を操作するためのスイッチであり、例えば、後部座席のアームレストに設置され、後部座席に着座する乗員のスイッチ操作に応じてバイブレータVのオン・オフ、後部座席の背もたれ部で発生させる振動の周波数又は強度等に関する制御信号を制御部Eに対して出力する。
【0023】
ディスプレイDSPは、各種情報を表示するための装置であり、例えば、インストルメントパネル内に設置されるマルチインフォメーションディスプレイやメータに含まれる液晶ディスプレイやLED等であり、制御部Eの出力に応じてシートシステムSYS1の診断結果を表示する。
【0024】
バイブレータVは、振動を発生させるための装置であり、例えば、各座席の背もたれ部に内蔵され、制御部Eが出力する制御信号に応じた強度で振動を発生させる偏心ロータ式バイブレータである。
【0025】
モータMは、バイブレータVを移動させるための装置であり、例えば、各座席の背もたれ部内でバイブレータVと機械的に連係するように設置され、制御部Eが出力する制御信号に応じた周波数で乗員に振動を伝えられるよう、バイブレータVを車両前後方向又は上下方向に移動させる。
【0026】
振動センサVSは、バイブレータVが発生させる振動を検出するためのセンサであり、例えば、各座席の背もたれ部内でバイブレータVに併設され、3軸方向の加速度を読み取り、これを振動に比例した信号として取り出すことでバイブレータVによる振動の大きさを検出し、検出した値を制御部Eに出力する。
【0027】
回転センサRSは、モータMの回転を検出するためのセンサであり、例えば、各座席の背もたれ部内でモータMに併設され、モータMの回転軸と共に回転する磁石による磁界の変化を固定的に設置されたMR(Magnetic Resistance)素子が磁気抵抗として読み取り、これを回転速度に比例したパルス信号として取り出すことでモータMの回転速度を検出し、検出した値を制御部Eに出力する。
【0028】
図2は、座席Sの背もたれ部内におけるバイブレータV、モータM、振動センサVS、及び回転センサRSの配置例を示す座席Sの側部断面図である。
【0029】
図2で示されるように、制御部EとバイブレータV、モータM、振動センサVS、及び回転センサRSとは配線を介して接続され、バイブレータVは、制御部Eからの制御信号に応じて振動の発生・停止を切り替え、モータMは、制御部Eからの制御信号に応じて回転の開始・停止を切り替える。
【0030】
モータMの回転運動は、例えば、ラック・アンド・ピニオン機構を利用して直線運動に変換され、バイブレータVが結合されたラックを、図の双方向矢印で示す方向に移動させる。
【0031】
図3は、車室内におけるシートシステムSYS1の各構成要素の配置例を示す車室の上面図であり、ステアリングコラムに設置されたイグニッションスイッチIGと、運転席前方のインストルメントパネル内に設置されたディスプレイDSPと、右後部座席S(RR)の背もたれ部内に内蔵されたバイブレータV(RR)及びモータM(RR)と、左後部座席S(RL)の背もたれ部内に内蔵されたバイブレータV(RL)及びモータM(RL)と、後部座席の中央アームレストに設置された操作スイッチSWとが多重通信線CWを介して相互に接続されている状態を示す。
【0032】
なお、図の明確化のために振動センサ及び回転センサの図示が省略されているが、振動センサ及び回転センサは、図2に示すように各座席に内蔵され、それぞれ多重通信線CWに接続されているものとする。
【0033】
次に、制御部Eが有する各種手段について説明する。
【0034】
診断手段E10は、シートシステムSYS1を診断するための手段であり、例えば、イグニッションスイッチIGがオン状態となった場合に、バイブレータV及びモータMを同時又は所定の順番で短時間だけ動作させ(バイブレータVによる振動及びモータMによるこの回転は、好適には、乗員が操作スイッチSWを操作したか否かにかかわらず実行される動作であるため乗員が認識できない程度のものであるが、乗員が認識できるものであってもよい。)、振動センサVS及び回転センサRSの出力に基づいてバイブレータV及びモータMが正常に動作しているか否かを判定することをその診断内容に含む。
【0035】
また、診断手段E10は、乗員が操作スイッチSWを操作した場合に操作スイッチSWが発し得る制御信号(例えば、バイブレータVの振動を開始させるための制御信号やその振動の周波数を変更するための制御信号である。)を擬似的に操作スイッチSWから制御部Eに対して出力させ、操作スイッチSWからの制御信号に応じて制御部Eが正常に動作するか否かを判定するようにしてもよい。
【0036】
このようにして、診断手段E10は、シートシステムSYS1を構成する各構成要素の診断を実行し、その診断結果を診断結果通知手段E11に対して出力する。
【0037】
診断結果通知手段E11は、診断手段E10が出力する診断結果を乗員に通知するための手段であり、例えば、後部座席のバイブレーション機能を提供するシートシステムSYS1に対する診断の結果を運転席に着座する乗員(バイブレーション機能による快適性を直接的には享受しない乗員である。)が認識できるように、運転席前方に設置されたディスプレイDSPに診断結果を表示させる。
【0038】
なお、診断結果通知手段E11は、その診断結果の内容に異常を含む場合に限りその診断結果の内容(例えば、バイブレータVが動作しないことを通知する内容である。)をディスプレイDSPに表示させ、その診断結果の内容が全て正常である場合にはその診断結果内容の表示を省略するようにしてもよい。
【0039】
また、診断結果通知手段E11は、後部座席のバイブレーション機能を提供するシートシステムSYS1に対する診断の結果を後部座席に着座する乗員(バイブレーション機能による快適性を直接的に享受する乗員である。)が認識できるように、後部座席の背もたれ部に内蔵されたバイブレータVをその診断結果の内容に応じた所定の振動パターンで(操作スイッチSWにおける操作とは関係なく)振動させるようにしてもよい。
【0040】
この場合、診断結果通知手段E11は、例えば、バイブレータVが正常であれば(操作スイッチSWにおける操作とは関係なく)バイブレータVを一回だけ所定時間に亘って振動させ、バイブレータVが異常であれば(操作スイッチSWにおける操作とは関係なく)モータMによって振動を発生させないバイブレータVを乗員の背中に押し付け、或いは、モータMが異常であれば(操作スイッチSWにおける操作とは関係なく)バイブレータVを二回だけ所定時間に亘って振動させるようにし、バイブレータVの振動状態や振動回数を利用してその診断結果の内容を乗員に伝えるようにしてもよい。
【0041】
また、診断結果通知手段11は、後部座席のバイブレーション機能を提供するシートシステムSYS1に対する診断の結果を運転席に着座する乗員(バイブレーション機能による快適性を直接的には享受しない乗員である。)が認識できるように、運転席の背もたれ部に内蔵されたバイブレータ(診断結果を通知するための専用のバイブレータであってもよい。)をその診断結果の内容に応じた所定の振動パターンで振動させるようにしてもよい。
【0042】
また、診断結果通知手段11は、ディスプレイDSPやバイブレータVを用いた診断結果内容の通知に加えてスピーカ、アラーム、又はブザー等を用いた音声による通知を併用してもよい。
【0043】
次に、図4を参照しながら、シートシステムSYS1が自己診断を実行し、その診断結果の内容を乗員に通知する処理(以下、「診断処理」とする。)について説明する。なお、図4は、診断処理の流れを示すフローチャートであり、制御部Eは、イグニッションスイッチIGからエンジンを始動させた旨を通知する信号を受信した場合に、この診断処理を実行するものとする。
【0044】
最初に、制御部Eは、自己診断を実行する(ステップS1)。自己診断には、制御部E、操作スイッチSW、バイブレータV、モータM、振動センサVS、及び回転センサRS等の診断が含まれる。
【0045】
制御部Eは、自身(CPU、RAM、ROM等である。)が正常に動作することを確認した後、バイブレータV及びモータMを診断するために、バイブレータV及びモータMに対して短時間だけ電力を供給し、バイブレータV及びモータMのそれぞれで所定の振動及び回転を実行させる。
【0046】
制御部Eは、バイブレータVが発生させた振動を振動センサVSで検出し、また、モータMが発生させた回転を回転センサRSで検出することにより、バイブレータV及びモータMのそれぞれが正常に動作するか否かを判定する。
【0047】
このようにして、制御部Eは、シートシステムSYS1の各構成要素を診断し、シートシステムSYS1が正常であるか否かを判定する(ステップS2)。
【0048】
シートシステムSYS1が正常であると判定した場合(ステップS2のYES)、制御部Eは、シートシステムSYS1が正常に動作する旨を通知するテキストメッセージ(例えば、“シートシステムは正常に動作します”である。)をディスプレイDSPに表示させ、或いは、シートシステムSYS1が正常に動作する旨を意味する振動パターンをバイブレータVで発生させて、シートシステムSYS1が正常に動作することを乗員に伝えた上で(ステップS3)、この診断処理を終了させる。
【0049】
なお、制御部Eは、この場合、シートシステムSYS1が正常に動作する旨を通知するテキストメッセージをディスプレイDSPに表示させることなく、また、シートシステムSYS1が正常に動作する旨を意味する振動パターンをバイブレータVで発生させることもなく、この診断処理を終了させるようにしてもよい。何らの通知も行わないことによって、シートシステムSYS1が正常に動作することを実質的に乗員に伝えられるからである。
【0050】
一方、シートシステムSYS1が異常であると判定した場合(ステップS2のNO)、制御部Eは、異常箇所を伝えるテキストメッセージ(例えば、“バイブレータが動作しません”である。)をディスプレイDSPに表示させ、或いは、異常箇所を伝える振動パターンをバイブレータVで発生させて異常箇所を乗員に伝え(ステップS4)、バイブレータV又はモータMの駆動が可能であったとしてもバイブレータV及びモータMの駆動を禁止した上で(ステップS5)、この診断処理を終了させる。シートシステムSYS1が異常である状態のままバイブレータV又はモータMを駆動させ、制御できない振動を乗員に伝えてしまうのを防止するためである。
【0051】
以上の構成により、シートシステムSYS1は、乗員が積極的にバイブレーション機能を利用しようとする前に、配線不具合(断線)ばかりでなく、バイブレータVやモータMの故障を含めた詳細な診断を実行し、その診断結果の内容を詳細に乗員に伝えることができる。
【0052】
また、シートシステムSYS1は、シートシステムSYS1(バイブレータV)による快適性を享受する乗員(例えば、後部座席に着座する乗客である。)と診断結果の内容を認識すべき乗員(車両管理責任者である運転者である。)とが異なる場合であっても、その診断結果の内容を認識すべき乗員に対して確実に診断結果の内容を伝えることができる。
【0053】
次に、図5及び図6を参照しながら、バイブレータ付きシートシステムの別の実施例について説明する。
【0054】
シートシステムSYS2は、左右の後部座席S(RR)、S(RL)に加えて運転席S(FR)及び助手席S(FL)にもバイブレータV(FR)、V(FL)及びモータM(FR)、M(FL)を備え、また、操作スイッチSW(R)に加えて操作スイッチSW(F)を備え、更に、通信モジュールTCMを備える点で、シートシステムSYS1と相違するが、他の点において共通する。
【0055】
操作スイッチSW(F)は、運転席S(FR)並びに助手席S(FL)におけるバイブレータV(FR)、V(FL)及びモータM(FR)、M(FL)を振動或いは回転させるための操作スイッチであり、左右の後部座席S(RR)、S(RL)におけるバイブレータV(RR)、V(RL)及びモータM(RR)、M(RL)を振動或いは回転させるための操作スイッチ(R)に対応するものである。
【0056】
通信モジュールTCMは、車両と外部との間の通信を制御するための装置であり、例えば、携帯電話周波数や特定小電力無線周波数を用いて診断手段10による診断結果の内容を外部の通信センタに送信できるようにする。
【0057】
シートシステムSYS2において、制御部Eは、イグニッションスイッチIGからエンジンを始動させた旨を通知する信号を受信した場合に、自身(CPU、RAM、ROM等である。)が正常に動作することを確認した後、各座席における四つのバイブレータV(FR)、V(FL)、V(RR)、V(RL)及び四つのモータM(FR)、M(FL)、M(RR)、M(RL)を診断するために、それぞれに対して短時間だけ電力を供給し、それぞれで所定の振動及び回転を実行させる。
【0058】
制御部Eは、各バイブレータが発生させた振動を各バイブレータに対応する振動センサで検出し、また、各モータが発生させた回転を各モータに対応する回転センサで検出することにより、四つのバイブレータ及び四つのモータのそれぞれが正常に動作するか否かを判定する。
【0059】
このようにして、制御部Eは、シートシステムSYS2の各構成要素を診断し、シートシステムSYS2が異常であると判定した場合、異常箇所を伝えるテキストメッセージ(例えば、“助手席のモータが動作しません”である。)をディスプレイDSPに表示させ、或いは、異常箇所を伝える振動パターンを運転席S(FR)のバイブレータV(FR)で発生させて異常箇所を運転者に伝え、異常箇所を含む座席におけるバイブレータ及びモータの駆動を禁止する。
【0060】
更に、制御部Eは、通信モジュールTCMを介して異常箇所を伝える信号を通信センタに送信し、修理センタやカーディーラーがシートシステムSYS2の構成要素で故障が発生したことを迅速に認識できるようにする。
【0061】
以上の構成により、シートシステムSYS2は、シートシステムSYS1が実現する有利な効果に加え、診断結果の内容を乗員以外の者にも詳細に伝えることができる。
【0062】
また、シートシステムSYS2は、イグニッションスイッチIGからエンジンを始動させた旨を通知する信号を受信した場合に診断処理を実行させるが、乗員不在時に診断処理を実行させ、通信モジュールTCMを通じてその診断結果の内容を外部に発信することにより、遠隔地にいる車両の所有者や修理担当者等に診断結果の内容を詳細に伝えることができる。
【0063】
この場合、シートシステムSYS2は、故障した構成部品の取り換えに要する時間(例えば、部品調達時間及び取り換え作業時間を含む。)、次にその車両(シートシステムSYS2)を利用する日時(スケジュール)等に基づいて診断処理を実行する時期を予め設定しておき、設定しておいた日時となった場合に乗員の在不在にかかわらず自動的に診断処理を実行させるようにする。
【0064】
これにより、シートシステムSYS2は、次にその車両(シートシステムSYS2)を利用するときに、シートシステムSYS2を確実に動作させることができる状態にしておくことが可能となる。
【0065】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなしに上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0066】
例えば、上述の実施例において、座席は、シートポジションの調整を電動で行うパワーシートであってもよく、複数のシートポジションを記憶するメモリ機能を備えたパワーシートであってもよい。
【符号の説明】
【0067】
CW 多重通信線
DSP ディスプレイ
E 制御部
IG イグニッションスイッチ
M、M(FR)、M(FL)、M(RR)、M(RL) モータ
RS 回転センサ
S、S(FR)、S(FL)、S(RR)、S(RL) 座席
SW、SW(F)、SW(R) 操作スイッチ
SYS1、SYS2 シートシステム
TCM 通信モジュール
V、V(FR)、V(FL)、V(RR)、V(RL) バイブレータ
VS 振動センサ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートに着座する乗員の快適性を向上させるために該乗員の操作入力に応じて該シート上で振動を発生させるバイブレータを備えたバイブレータ付きシートシステムであって、
所定のタイミングで前記バイブレータの診断を実行する診断手段を備える、
ことを特徴とするバイブレータ付きシートシステム。
【請求項2】
前記診断手段による診断結果を乗員に通知する診断結果通知手段を更に備える、
ことを特徴とする請求項1に記載のバイブレータ付きシートシステム。
【請求項3】
前記診断結果通知手段は、運転席の前方に設置されたディスプレイに診断結果を表示する、
ことを特徴とする請求項2に記載のバイブレータ付きシートシステム。
【請求項4】
前記シートは、後部座席シート又は助手席シートであり、
前記所定のタイミングは、イグニッションオン時である、
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載のバイブレータ付きシートシステム。
【請求項5】
前記診断結果通知手段は、診断結果に応じた所定の振動パターンで運転席シートのバイブレータを振動させる、
ことを特徴とする請求項4に記載のバイブレータ付きシートシステム。


【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図3】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−221931(P2010−221931A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−73576(P2009−73576)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】