説明

バインダー樹脂にカーボン粒子が分散しているコーティング層を有する燃料電池用金属分離板及びその製造方法

【課題】
自動車のような振動が激しい動作環境で、初期だけでなく長時間用いても特に副作用なく優れた電気伝導性と耐食性を維持でき、連続生産工程が可能で高い生産効率を有することができる燃料電池用金属分離板の製造方法を提供する。
【解決手段】
本発明の燃料電池用金属分離板の製造方法は、(a)金属板からなる母材を用意する段階と、(b)金属板の表面を酸洗処理する段階と、(c)酸洗処理された金属板の表面にバインダー樹脂、カーボン粒子及び溶剤を含む組成物をコーティングする段階と、(d)表面に組成物がコーティングされた金属板を前記バインダー樹脂の熱分解温度未満、前記溶剤の沸点以上の温度で乾燥させ、金属板の表面にバインダー樹脂基材にカーボン粒子が分散しているコーティング層を形成する段階とを備え、前記工程は連続工程で行われることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池用金属分離板及びその製造方法に関し、より詳細には、高分子電解質燃料電池(PEMFC)の分離板に用いられ、腐食電流と接触抵抗が米国エネルギー省(DOE)の基準(腐食電流は1μA/cm2以下、接触抵抗は20mΩ・cm2以下の値)を満たすことができ、連続的な工程で生産効率を向上させることができる燃料電池用金属分離板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池とは、一般に水素と酸素の酸化、還元反応を用いて化学エネルギーを電気エネルギーに変換する発電装置である。
【0003】
前記燃料電池の単位セルは、出力電圧が低くて実用性が低いため、一般に数個から数百個の単位セルを積層して用いる。このように単位セルの積層時に単位セル間の電気的接続がなされるようにし、反応ガスを分離させて冷却水が流れる流路の役割をするのが分離板である。
【0004】
前記分離板(seperator又はbipolar plate)は、膜−電極集合体(MEA)とともに燃料電池の核心部品で、膜−電極集合体と気体拡散層(GDL)の構造的支持、発生した電流の収集及び伝達、反応ガスの輸送及び除去、反応熱除去のための冷却水輸送など、多様な役割をする。
【0005】
これにより、分離板が備えるべき素材特性としては、優れた電気伝導性、熱伝導性、ガス密閉性及び耐食性のような化学的安定性などがある。
【0006】
前記分離板の素材として金属系を適用する場合、分離板厚の削減を通じた燃料電池スタックの体積削減及び軽量化が可能であり、スタンピングなどを用いた製造が可能で、量産性を確保することができるという長所を有している。
【0007】
前記燃料電池分離板用金属素材として、ステンレス鋼、アルミニウム合金及び炭素鋼鋼板などが用いられる。
【0008】
しかし、このような金属素材を燃料電池の分離板材料として用いると、表面に形成された不動態被膜によって電気伝導性に影響を及ぼすことがあり、また燃料電池の動作環境が高温−多湿な条件であることを勘案すると、長期間使用時に酸化膜の膜厚が増加して電気伝導性が次第に減少することがあり、また腐食により分離板の機能を行えなくなる等の問題が発生することがある。
【0009】
このような問題を解決するために、ステンレス鋼板の場合にはクロム成分、ニッケル成分などの含量を増加させ、不動態被膜のエッチングを通じて表面の酸化被膜を除去し、耐食性及び電気伝導性を向上させようと試みている。
【0010】
しかし、前記クロム成分及びニッケル成分のステンレス鋼への添加量を増加させると、ステンレス鋼の製造コストが増加するだけでなく、燃料電池の動作環境下で酸化被膜が成長して長期性能に悪影響を与えることがある。また、過度なクロム及びニッケル成分の増加は、金属分離板の成形性を低下させて複雑で精巧な流路設計を具現するのに困難がある。
【0011】
金属素材を用いた燃料電池分離板の電気伝導性及び耐食性を向上させるための他の試みとしては特許文献1があるが、これは金属材質の鋼板表面にカーボンコーティング層を形成して金属鋼板の表面酸化を防止し、同時に電気伝導性に優れたカーボンコーティング層を介して分離板の電気伝導性を高めようとする試みである。
【0012】
しかし、特許文献1の場合には、燃料電池が自動車のように振動が激しい環境で用いられるとき、カーボン層を構成するカーボン粒子のパウダリング現象、即ちカーボン粒子がコーティング層から分離される現象が発生するようになって、燃料電池セルの内部を汚染させることにより、全体的な燃料電池の動作効率を落とす要因として作用する可能性を内包している。
【0013】
金属素材の燃料電池分離板の電気伝導度及び耐食性を高めるための他の方案としては、電気伝導性及び耐食性に優れた物質を金属材質の鋼板表面にプラズマコーティング又はPVD(physical vapor deposition)する方法があるが、この方法はチャンバという別途の空間を必要とするので、分離板を連続工程で生産するのは難しく、生産効率が落ちるという問題があった。
【0014】
従って、自動車のような振動が激しい燃料電池の使用環境下でも、初期だけでなく一定時間、安定的にDOE基準を満たす電気伝導度と耐食性を有するとともに、廉価の製造コストで連続工程が可能な燃料電池用金属分離板の製造方法に関するより多様な角度からのさらなる研究が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国登録特許US6,440,598B1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明が解決しようとする課題は、自動車のような振動が激しい動作環境で、初期だけでなく長時間用いても特に副作用なく優れた電気伝導性と耐食性を維持でき、連続生産工程が可能で高い生産効率を有することができる燃料電池用金属分離板の製造方法を提供することにある。
【0017】
本発明が解決しようとする他の課題は、本発明で提示する製造方法により製造される燃料電池用金属分離板を提供することにある。
【0018】
本発明が解決しようとする課題は以上で言及した技術的課題に制限されず、言及していない他の技術的課題は下記の記載から当業者が明確に理解できるものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記課題を解決するための本発明に係る燃料電池用金属分離板の製造方法は、(a)金属板からなる母材を用意する段階と、(b)金属板の表面を酸洗処理する段階と、(c)酸洗処理された金属板の表面にバインダー樹脂、カーボン粒子、及び溶剤を含む組成物をコーティングする段階と、(d)表面に組成物がコーティングされた金属板を前記バインダー樹脂の熱分解温度未満、前記溶剤の沸点以上の温度で乾燥させ、金属板の表面にバインダー樹脂基材にカーボン粒子が分散しているコーティング層を形成する段階とを備え、前記工程は連続工程で行われることを特徴とする。
【0020】
前記他の課題を解決するための本発明に係る燃料電池用金属分離板は、金属板と、金属板の表面に形成されてバインダー樹脂からなる基材の体積全体に渡ってカーボン粒子が分散しているコーティング層とを備える。
【発明の効果】
【0021】
本発明で提示する燃料電池用金属分離板の製造方法によると、自動車のような振動が激しい動作環境で、製作初期だけでなく長時間用いてもパウダリング現象のような他の副作用なくDOE基準(腐食電流1μA/cm2以下、接触抵抗20mΩ・cm2以下)を満たす優れた電気伝導性と耐食性を維持でき、また連続生産工程が可能で高い生産効率を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る燃料電池用金属分離板を示した断面図である。
【図2】高分子樹脂の内部にカーボン粒子としてカーボンブラックとグラファイトを単独で又はこれらを混合して用いてコーティング層を形成した後、コーティング層の表面をAFM(atomic force morphology、SEIKO社SPA400)測定装備を用いて測定した結果に関する写真である。
【図3】本発明の実施例に係る燃料電池用金属分離板の製造工程を示した工程フローチャートである。
【図4】本発明の実施例に係る燃料電池用ステンレス分離板の製造方法を説明するための工程断面図である。
【図5】本発明の実施例に係る燃料電池用ステンレス分離板の製造方法を説明するための工程断面図である。
【図6】本発明の実施例に係る燃料電池用ステンレス分離板の製造方法を説明するための工程断面図である。
【図7】本発明の実施例に係る燃料電池用ステンレス分離板の製造方法を説明するための工程断面図である。
【図8】本発明に係る燃料電池用ステンレス分離板の接触抵抗を測定する接触抵抗測定装置を示した図面である。
【図9】ステンレス316L分離板、グラファイト分離板、実施例1及び比較例1により製造された分離板に対する耐食性の測定結果を示したグラフである。
【図10】ステンレス316L分離板、グラファイト分離板、実施例1により製造された分離板に対する燃料電池の性能評価を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施例に係る燃料電池用金属分離板及びその製造方法について具体的な図面を用いて説明する。
【0024】
ここに記載されていない内容は、この技術分野の熟練した者であれば十分技術的に類推できるので、その説明は省略する。
【0025】
図1は本発明に係る燃料電池用金属分離板を示した断面図である。
【0026】
図1を参照すると、本発明に係る燃料電池用金属分離板10は、金属鋼板母材100と金属鋼板母材100の表面に形成されるコーティング層105とを備える。
【0027】
金属鋼板母材100は、ステンレス鋼板、アルミニウム板、炭素鋼鋼板の中から選択されるが、望ましくはステンレス鋼板が用いられる。
【0028】
金属鋼板母材100としてステンレス鋼板を用いる場合、用いられるステンレス鋼板は、0.08wt%以下の炭素(C)、16〜28wt%のクロム(Cr)、0.1〜20wt%のニッケル(Ni)、0.1〜6wt%のモリブデン(Mo)、0.1〜5wt%のタングステン(W)、0.1〜2wt%のスズ(Sn)、銅0.1〜2wt%及び残量として鉄(Fe)を含むことができる。
【0029】
金属鋼板母材100の厚さは、1t以下、望ましくは0.2t以下のものが用いられる。
【0030】
前記コーティング層105は、バインダー樹脂からなる基材部110とカーボン粒子120からなる導電性フィラーとを含み、金属鋼板母材100の表面を腐食から保護し、燃料電池セルで発生する電気エネルギーを伝達する役割をする。
【0031】
基材部110は、カーボン粒子120が金属鋼板母材100の表面から離脱してパウダの形態で飛散する現象、即ちパウダリング現象を防止するための一種のバインダーとしての役割をするもので、高分子樹脂からなっている。
【0032】
基材部110に用いられる高分子樹脂としては、アクリル系樹脂、フェノール系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂の中から選択される1つ又は2つ以上の混合物が用いられ、前記高分子樹脂の中には、基材部110の硬化を促進するための硬化剤としての役割をするものも含まれることができる。
【0033】
カーボン粒子120は電気伝導度に非常に優れた物質であって、前記バインダー高分子樹脂からなる基材部110の内部体積全体に渡って均一又は不均一に広く分散している。
【0034】
具体的には、カーボン粒子120は基材部110の内部で粒子同士互いに連結され、金属鋼板母材100からコーティング層105の表面まで電気的に連結されるように分散している。
【0035】
より具体的には、カーボン粒子120の一部は金属鋼板母材100の表面と接触しており(図1の図面符号121で表されるカーボン粒子)、カーボン粒子120の一部はコーティング層105の表面に露出したり突出するように分布しており(図1の図面符号123で表されるカーボン粒子)、カーボン粒子120の一部は前記金属鋼板母材100の表面と接触するカーボン粒子121とコーティング層105の表面に存在するカーボン粒子123とを互いに連結しながら(図1の図面符号122で表されるカーボン粒子)、基材部110の内部に分散している。
【0036】
カーボン粒子120としては、カーボンブラック、グラファイト、炭素ナノチューブの中から1つ以上選択されるものが用いられる。
【0037】
ただし、カーボン粒子120としてカーボンブラックを用いる場合には最大粒度が1μm以下であるものを用いることが望ましく、グラファイトを用いる場合には最大粒度が3μm以下であるものを用いることが望ましい。
【0038】
ただし、カーボン粒子120間のより稠密で緻密な連結のためには、前記で提示した粒度の範囲内で多様な大きさの分布を有するものを複合的に用いることが望ましく、このためにはカーボンブラック、グラファイト及び炭素ナノチューブを適切な大きさの分布を有するように混合して用いることが望ましい。
【0039】
コーティング層105のカーボン粒子120:基材層110を構成する高分子バインダー樹脂の含量比は、重量を基準に1:1〜6:1、望ましくは2:1〜4:1であるが、その理由は、1:1未満の場合には高分子樹脂の含量があまりにも高くてコーティング層105の電気伝導性の確保が難しくなり、6:1を超える場合には耐食性が悪くなり、バインダーの含量があまりにも少なくてパウダリング現象が発生しやすくなるためである。
【0040】
前記コーティング層105の内部に充填されているカーボン粒子の充填率は、全体的な分離板10の接触抵抗に直接的な影響を与えるようになるが、以下でその理由について具体的に説明する。
【0041】
図2の(a)〜(c)は、高分子樹脂(エポキシ樹脂)の内部にカーボン粒子としてカーボンブラックとグラファイトを単独で又はこれらを混合して用いてコーティング層を形成した後、コーティング層の表面をAFM(SEIKO社のSPA400)測定装備を用いて測定した結果に関する写真である。
【0042】
まず、図2の(a)は0.05μm程度の粒径を有するカーボンブラックを単独で用いてコーティング層を形成したものであって、AFM測定の結果、表面の最大粗さ(Rmax)は約0.5μmであり、平均粗さ(Ra)は0.2μmであることが確認された。
【0043】
図2の(b)は1.0μm程度の粒径を有するグラファイトを単独で用いてコーティング層を形成したものであって、AFM測定の結果、表面の最大粗さは約3.0μmであり、平均粗さ(Ra)は1.1μm程度であることが確認された。
【0044】
図2の(c)は0.05μm程度の粒径を有するカーボンブラックと1.0μm程度の粒径を有するグラファイトを1:2.5の比率で混合したものを用いてコーティング層を形成したものであって、AFM測定の結果、表面の最大粗さは約0.26μmであり、平均粗さ(Ra)は0.14μm程度であることが確認された。
【0045】
前記のように製造される試片の表面にガス拡散層を形成した後、分離板の全体的な接触抵抗を測定した結果、図2の(a)試片の場合には19.1mΩ・cm2の値が測定され、図2の(b)試片の場合には25.6mΩ・cm2の値が測定され、図2の(c)試片の場合には17.3mΩ・cm2の値が測定された。
【0046】
前記で説明した図2の(a)〜(c)の結果を総合してみると、カーボンブラックやグラファイトを単独で用いる場合より、これらを混合して用いるとき、表面粗さが小さくなることが確認されたが、これは微細なカーボンブラック粒子のみを用いた図2の(a)の場合には、微細カーボンブラック粒子間に完璧な分散がなされ難く、互いに凝集した状態で存在するためで、グラファイトのみを用いた図2の(b)の場合には、グラファイト自体の粒子の粗大性と局部的な粒子凝集現象のため、表面粗さが相対的に大きくなると判断される。
【0047】
これに比べ、カーボンブラックとグラファイトを混合して用いた図2の(c)の場合には、図2の(a)と(b)に比べて表面粗さが相対的に非常に低い数値を示したが、その理由は、粗大粒子であるグラファイト間の空間に微細粒子であるカーボンブラックが位置する形態でコーティング層の内部に充填されるので、これによりコーティング層の内部でカーボン粒子の充填率が増加し、粗大粒子と微細粒子が互いに混ざっており局部的な凝集が防止されるため、コーティング層の内部伝導性が改善されるからである。
【0048】
また、本発明により製造されるコーティング層が形成された分離板の場合、コーティング層の表面の粗さが低いほどガス拡散層(GDL)との界面接触抵抗を下げることができるため、分離板の全体的な接触抵抗を減らす効果が顕著であると確認された。
【0049】
前記内容を総合すると、コーティング層105の内部に用いられるカーボン粒子は、カーボンブラックやグラファイト単独からなったものを用いるより、これらを互いに適切な比率で混合して用いる方がコーティング層105の内部でカーボン粒子の充填率を高め、コーティング層の表面粗さを小さくでき、これにより結果的に燃料電池用分離板の全体的な接触抵抗を減らせることが分かる。
【0050】
このために本発明では、0.03〜0.1μmの平均粒径を有するカーボンブラック:0.5〜1.0μmの平均粒径を有するグラファイトを同時に用い、また、これらの混合比率を1:1〜1:3になるように混合して用いる場合、最も最適化された充填率、表面粗さ及び接触抵抗値が得られるということを提案する。
【0051】
再び図1を参照すると、コーティング層105の厚さは0.1〜10μm、望ましくは1.5〜3.5μmであるが、その理由は0.1μm未満の場合は耐食性が低下し、10μmを超える場合には金属鋼板母材100への結合力が落ち、これによって電気伝導性が下がることがあり、パウダリング現象が発生することがあるためである。
【0052】
以下、他の図面を参照し、前記で説明した本発明に係る燃料電池用金属分離板の製造方法を説明する。
【0053】
図3は本発明に係る燃料電池用金属分離板の製造方法を説明するための工程順序図であり、図4〜図7は前記工程順序図の各工程段階による工程断面図である。
【0054】
本発明に係る燃料電池用金属分離板を製造するためには、まず図4に示した通り、金属鋼板母材100を用意する(S210)。
【0055】
金属鋼板母材100はステンレス鋼板、アルミニウム板、炭素鋼鋼板の中から選択されるが、望ましくはステンレス鋼板が用いられる。
【0056】
金属鋼板母材100としてステンレス鋼板を用いる場合、用いられるステンレス鋼板は、0.08wt%以下の炭素、16〜28wt%のクロム、0.1〜20wt%のニッケル、0.1〜6wt%のモリブデン、0.1〜5wt%のタングステン、0.1〜2wt%のスズ、銅0.1〜2wt%及び残量として鉄を含むステンレス鋼板であることを特徴とし、より具体的には、オーステナイト系ステンレスであるSUS316L、0.2tのようなものが用いられる。
【0057】
金属鋼板母材100の厚さは1t以下、望ましくは0.2t以下のものが用いられる。
【0058】
金属鋼板母材100の表面には、薄い厚さに酸化物からなる不動態被膜102が形成されているが、これは金属鋼板母材100を空気中に保管するとき、空気中の酸素との反応により生じる酸化膜である。
【0059】
前記のように用意された金属鋼板母材100は、後で行われる組成物のコーティング密着性を向上させるためにアルカリ又は酸性脱脂剤を用いて金属鋼板母材100の表面の不純物を除去する脱脂工程が行われることもできる。
【0060】
以後、前記のように表面が脱脂処理された金属鋼板母材100は、表面に付いている湿気が十分に乾くまで乾燥する。
【0061】
前記のようなステンレス鋼板40の脱脂処理をすれば、ステンレス鋼板の表面の不純物を除去してコーティング処理性及びコーティング密着性を増大させることができる。
【0062】
次に、図5に示した通り、金属鋼板母材100の表面を酸洗処理する(S220)。
【0063】
酸洗処理工程は、5〜25wt%のHNO3+2.5〜20wt%のH2SO4+残量としてH2O組成の酸洗処理溶液を用いてなされ、望ましくは10wt%のHNO3+5wt%のH2SO4+残量としてH2O組成が適当である。
【0064】
前記酸洗処理温度は40℃〜80℃、処理時間は40秒〜80秒でディップ処理方式、スプレイ処理方式などを用いて実施できる。
【0065】
酸洗処理以後は、表面に存在する酸成分を除去するために水洗処理し、その後、表面の液体が全て除去されるまで金属鋼板母材100を乾燥する。
【0066】
このような酸洗処理工程により金属鋼板の表面の酸化膜102を除去するが、具体的には、金属鋼板母材100としてステンレス鋼板を用いる場合には、表面に酸化鉄成分が除去されてクロム成分が相対的に増加し、ステンレス鋼板の表面はクロムリッチの性質を有するようになる。
【0067】
クロムリッチ層は、耐食性を増加させるとともに母材の表面に粗さを付与し、後で行われるコーティング時にコーティングの湿潤性を向上させる。
【0068】
ただし、前記では前処理工程として脱脂工程−酸洗工程−水洗工程−乾燥工程が全て行われる場合を想定したが、前記工程中の一部は省略することもできる。
【0069】
次に、図6に示した通り、前処理工程を経た金属鋼板母材100の表面に組成物をコーティングする(S230)。
【0070】
このとき、用いられる組成物は、カーボン粒子、バインダーの役割をする高分子樹脂及び溶剤を含む。
【0071】
バインダーとして用いられる高分子樹脂としては、アクリル系樹脂、フェノール系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂の中から選択される1つ又は2つ以上の混合物が用いられ、前記高分子樹脂の中では硬化を促進するための硬化剤としての役割をするものも含まれることができる。
【0072】
ただし、より均一のコーティング膜を得るためには、バインダー高分子樹脂を2つ以上混合して用いることが望ましいが、その理由は、その後実施される乾燥工程でバインダー樹脂の乾燥温度の範囲を多様に分布させることにより、高分子樹脂が一定温度で急激に乾燥することにより生じる内部応力を最小化するためである。
【0073】
組成物全体でバインダー高分子樹脂が占める含量は、5〜10wt%であることが望ましいが、その理由は、5wt%未満の場合には相対的にカーボン粒子の含量が多くなり、バインダーとしての役割を十分に行えないことによるパウダリング現象が発生することがあり、10wt%以上の場合には相対的にカーボン粒子の含量が少なくなり、所望の水準の電気伝導性が得られないためである。
【0074】
カーボン粒子としては、カーボンブラック、グラファイト、炭素ナノチューブの中から選択される1つ以上のものが用いられる。
【0075】
ただし、カーボン粒子120としてカーボンブラックを用いる場合には、最大粒度は1μm以下であり、平均粒度は0.05〜0.1μmのものを用いることが望ましく、グラファイトを用いる場合には、最大粒度は3μm以下であり、平均粒度は0.5〜1.0μmのものを用いることが望ましい。
【0076】
また、前記で説明した通り、前記で提示したカーボン粒子の種類を単独で用いるより、微細粒子であるカーボンブラックと粗大粒子であるグラファイトを混合して用いる方が、コーティング層内部の粒子充填率、表面粗さ及び表面抵抗の側面で望ましい。
【0077】
これらの混合比率と粒径は、図1に関する説明で上述した通りである。
【0078】
組成物全体でカーボン粒子が占める含量は、10〜60wt%であることが望ましいが、その理由は、10wt%未満の場合には相対的にバインダー高分子樹脂の含量が多くなり、所望の水準の電気伝導度を得るのが難しく、60wt%以上の場合には相対的にバインダー高分子樹脂の含量が少なくなり、パウダリング現象が発生することがあるためである。
【0079】
前記で説明した通り、最終的に形成されるコーティング層の電気伝導性とパウダリング現象などを考慮すると、組成物でカーボン粒子:バインダー高分子樹脂の混合比は、重量を基準に1:1〜6:1、望ましくは2:1〜4:1とする。
【0080】
また、前記組成物内でカーボン粒子とバインダー高分子樹脂が占める含量は、5〜55wt%とすることが望ましいが、その理由は、5wt%未満の場合にはコーティング層を形成する効果が微少なためであり、55wt%を超えれば組成物の粘度があまりにも高くなり、均一のコーティング膜を得るのが難しくなるためである。
【0081】
コーティング溶液である前記組成物に用いられる溶剤は、ヘキサン類、ケトン類、アルコール類のような有機溶剤を単独で又は混合して用いたり、水を用いたりすることもできる。ただし、前記で提示した溶剤の種類は例示的なものに過ぎず、他の種類の溶剤も用いられる。
【0082】
ただし、前記溶剤は後で実施される乾燥(硬化)工程で全て除去されるが、このとき、一定の乾燥温度で一度に多量の溶剤の除去がなされる場合には、硬化したコーティング膜の内部に気孔が形成されたり、緻密でない硬化コーティング層が得られるため、多様な沸点を有する溶剤を混合して用いることにより、温度分布別に徐々に溶剤の除去を誘導してこのような問題を解決できる。
【0083】
前記組成物コーティング工程は、スプレイコーティング、ディップコーティング、ロールコーティングなどにより行われるが、このとき、いかなるコーティング方式を選ぶかは、燃料電池用金属分離板にガス流路と冷却水流路形成のためのスタンピング工程をいつ実施するかにより決定される。
【0084】
即ち、組成物コーティング工程以前に金属鋼板母材100のスタンピング工程が行われる場合には、凹凸のある面に適したスプレイコーティング又はディップコーティングによりコーティング工程が実施され、組成物をコーティングした後にスタンピング工程が行われる場合には、ロールコーティングによりコーティング工程が行われる。
【0085】
ただし、組成物をコーティングした後にスタンピング工程が行われる場合でも、スプレイコーティングとディップコーティング方式を用いることができるのはもちろんである。
【0086】
図6を参照して組成物コーティング膜の性質をより詳細に説明すると、溶剤成分まで全て含んでいる組成物コーティング膜の状態では、カーボン粒子120が互いに完全に連結されていない状態であって、バインダー高分子樹脂と溶剤成分により稠密でない状態で組成物コーティング膜の内部で分散している形態となっている。
【0087】
本発明の燃料電池用金属分離板の製造工程の最後の段階として、図7に示した通り、組成物がコーティングされた金属鋼板母材100を乾燥させて組成物コーティング膜を硬化させる(S240)。
【0088】
本工程により前記組成物コーティング膜の内部の溶剤成分は大部分除去され(一部のバインダー高分子樹脂も蒸発する)、バインダー高分子樹脂110とカーボン粒子120のみがコーティング層の内部に残存する。
【0089】
乾燥温度は用いられる溶剤とバインダー高分子樹脂の種類に応じて決定され、即ちバインダー高分子樹脂の熱分解温度よりは低く、溶剤の沸点よりは高い温度に決定されるが、望ましくは160〜340℃の温度で乾燥する。
【0090】
乾燥時間は用いられる溶剤が全部又は少なくとも99%以上揮発してバインダー樹脂が完全に凝固するまで行われるが、望ましくは13秒〜30分間、乾燥工程が行われる。
【0091】
乾燥温度が高いほど乾燥時間は短くなるが、高温で急激に乾燥する場合、溶剤が十分に除去される前にコーティング層内のバインダー樹脂が凝固して気孔が発生しやすく、カーボン粒子が適宜分散しないことがあるため、最適な伝導性及び耐食性を示せない。
【0092】
乾燥工程は空気雰囲気で行われることができ、溶剤の除去を容易にするために乾燥圧力を下げることができ、また、乾燥工程中の不要な酸化を防止するために、水素還元雰囲気で行われることもできる。
【0093】
前記のような乾燥工程を経ると、組成物コーティング膜は硬化して一定の硬度を有する伝導性コーティング膜105として金属鋼板母材100の表面に存在するようになる。
【0094】
乾燥工程中に前記溶剤成分は大部分揮発し、図6の組成物コーティング膜が収縮しながらその内部に存在するカーボン粒子が圧縮される過程を経るが、この圧縮過程を通じてカーボン粒子は互いに連結され、前記図1で説明したように最終的に形成される硬化したコーティング層105の内部に互いに連結された状態で存在するようになる。
【0095】
このとき、硬化したコーティング層105に関する性質及び形態は、前記図1に説明したコーティング層に関する性質及び形態と同一なので、その部分を参照することにし、ここではその具体的な説明は省略する。
【0096】
ただし、前記図6の組成物コーティング膜を形成した後、図7の乾燥工程を実施する前に、組成物コーティング膜に対する予備乾燥工程をおくことにより、図7の本乾燥工程以前に組成物コーティング膜内部の溶剤の一部を除去する工程をおくことが望ましい。
【0097】
その理由は、図7の本乾燥工程が用いられる溶剤の沸点以上の温度で行われるので、この温度で溶剤は急激に組成物コーティング膜の内部から除去されるが、これによってコーティング膜の内部に応力が発生し、金属鋼板母材100との接触性ないしは結合力を下げることがあるためである。
【0098】
予備乾燥は用いられる溶剤の沸点以下の温度で行われることが望ましく、具体的には、50〜150℃の温度で5〜30分程度の範囲内で行われることが望ましい。
【0099】
前記で説明した工程(S210〜S220)は連続工程で行われるため、非常に高い生産効率を有する。
【実施例】
【0100】
以下、本発明で提示する燃料電池用金属分離板の製造方法により金属分離板を製造する場合、最終的に製造される金属分離板の腐食電流と接触抵抗の性質が非常に優れるということを具体的な実施例及び比較例を挙げて説明する。
【0101】
ここに記載していない内容は、この技術分野の熟練した者であれば十分に技術的に類推できるので、その説明は省略する。
【0102】
1.実施例及び比較例
<実施例1〜実施例16>
金属鋼板母材として1.0mm以下の厚さを有するステンレス鋼板316Lを用い、カーボン粒子としてはカーボンブラック(PrintexL,denka black,ketjen black,acetylene black,vulcanXC−72)とグラファイト(CPB30,HN905)を用いた。
【0103】
また、バインダー高分子樹脂としてはエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂を用い、溶剤としてはケトン、アルコール及びアセテートが混合されたものを、分散装備としてはbasket millを用いた。
【0104】
本発明で提示する範囲のカーボン粒子とバインダー樹脂の配合比(P:B)、コーティング組成物全体から溶剤を除いたカーボン粒子とバインダー樹脂が占める含量(NV含量)、並びに乾燥温度及び乾燥時間に応じて実施例1〜実施例16の試片を製造し、具体的に各実施例で用いられたカーボン粒子、バインダー樹脂及び溶剤の種類並びに乾燥温度は、表1と表2に記載した。
【0105】
<比較例1〜比較例6>
カーボン粒子とバインダー樹脂の配合比(P:B)、コーティング組成物全体でカーボン粒子とバインダー樹脂が占める含量(NV含量)、並びに乾燥温度及び乾燥時間を本発明で提示した範囲外のものにして比較例1〜比較例6の試片を製造し、具体的に各比較例で用いられた条件については、表2に詳細に記載した。
【0106】
2.接触抵抗の測定
図8は本発明に係る燃料電池用ステンレス分離板の接触抵抗を測定する接触抵抗測定装置を示した図面である。
【0107】
図8を参照すると、前記実施例及び比較例で製造された燃料電池用ステンレス分離板の接触抵抗測定のために、セル締結のための最適化された定数を得るために修正されたデービスメソッド(Davies method)をステンレススチール(SS)とカーボンペーパーとの間の接触抵抗を測定するために用いた。
【0108】
接触抵抗は4点法(four−wire current−voltage)測定原理を用いてZahner社のIM6装備で測定した。ここで、前記接触抵抗を4点法で形成される電極の面積としては25cm2に形成した。
【0109】
測定方法は定電流モードで測定領域DC5A及びAC0.5Aとし、10kHZから10mHzまでの範囲で接触抵抗を測定した。
【0110】
カーボンペーパーはSGL社の10BBを用いた。
【0111】
前記接触抵抗測定装置80は、カーボンペーパー810、金がメッキされた銅プレート0が試片800を介してそれぞれ上下に設けられ、前記銅プレート820は電流供給装置830と電圧測定装置840とに連結されている。
【0112】
前記試片800に電流を供給できる電流供給装置830(Zahner社のIM6)でDC5A/AC0.5Aの電流を印加して電圧を測定した。
【0113】
また、前記接触抵抗測定装置80の銅プレート820の上下で前記試片800とカーボンペーパー810、銅プレート820が積層構造を有するように圧力を提供できる圧力機(Instron社モデル5566、圧縮維持試験)を設ける。前記圧力機は、前記接触抵抗測定装置80に50〜150N/cm2の圧力を提供する。
【0114】
このように設けられた接触抵抗測定装置80で表1に示した実施例と比較例の試片800、即ち燃料電池用ステンレス分離板の接触抵抗を測定した。
【0115】
3.腐食電流の測定
本発明のステンレス分離板の腐食電流を測定する測定装備としては、EG&G273Aを用いた。腐食耐久性実験は、PEFC(Polymer Electrolyte Fuel Cell)の模写環境下でなした。
【0116】
本発明に係るステンレス鋼板の腐食させる実験溶液としては、0.1N H2SO4+5ppmHFを80℃で用い、1時間N2bubbling後にOCP(Open Circuit Potential)−0.25V〜1.2V vs SCEの範囲で測定した。
【0117】
また、PEFC anode環境に対して−0.24V vs SCE、cathode環境(SCE:Saturated Calomel Electrode)に対して0.6V vs SCE(0.842 vs NHE)で物性測定をした。
【0118】
ここで、前記物性測定の比較は、燃料電池環境と類似のcathode環境の0.6V vs SCE(0.842 vs NHE)の腐食電流データを通じて比較評価した。
【0119】
前記anode環境は水素が膜−電極接合体(Membrane Electrode Assembly、MEA)を通過しながら水素イオンと電子に分離される反応が起こる環境であり、前記cathode環境は酸素が通過して水素電子と水を生成する反応が起こる環境である。
【0120】
ここで、前記条件のようにcathode環境の電位が高く、これが苛酷な腐食条件であるため、cathode環境を基準に耐食性を試験するのがより望ましい。
【0121】
また、前記米国エネルギー省(Department of Energy、DOE)の基準に従い、〜0.6V vs SCE(0.842 vs NHE)でステンレス鋼板の腐食電流密度が1μA/cm2以下の値になることが望ましい。
【0122】
4.腐食電流及び接触抵抗の測定結果の分析
本発明の実施例及び比較例に係る接触抵抗及び腐食電流に対する測定値を表1と表2に整理した。
【0123】
前記燃料電池用ステンレス分離板は、米国エネルギー省の基準で腐食電流1μA/cm2以下、接触抵抗20mΩ・cm2以下の値を有することが望ましい。
【0124】
5.燃料電池の性能評価
反応ガスの供給のためにサーペンタイン流路を有する分離板を用い、分離板の間に膜−電極接合体(Gore社のモデル名5710)とガス拡散層(SGL社のモデル10BA)とを置いた後、一定圧力で締結して燃料電池セルを製作した。
【0125】
燃料電池の性能評価は単位セルを用いて評価したが、燃料電池運転装置はNSC Test Station 700W classを用い、燃料電池の性能評価のための電子負荷装置としてKIKUSUI PLZ 664 Electronic Loaderを用いた。
【0126】
反応ガスとしては水素と空気を用い、流量は電流によって水素1.5、空気2.0の化学量論比を一定に維持し、相対湿度100%加湿後に供給した。加湿器とセルの温度は70℃で一定に維持させ、大気圧条件下で性能を評価した。このとき、動作面積(active area)は25cm2、動作圧力は1atmであった。
【0127】
【表1】

【0128】
【表2】

【0129】
前記表1と表2を参照すると、本発明の実施例により製造される燃料電池用分離板の場合には、腐食電流は1μA/cm2以下、接触抵抗は20mΩ・cm2以下の値を示していることが分かり、これは米国エネルギー省で提示する基準を満たす非常に優れた値である。
【0130】
これに比べ、比較例1,5の場合にはパウダリング現象が発生することが分かるが、その理由は、比較例1の場合にはカーボン粒子の含量があまりにも高いためであり、比較例5の場合には本乾燥温度があまりにも高く、高分子バインダーの多くの量が除去されたためであると見られる。
【0131】
また、比較例2,3,4,6の場合には接触抵抗がDOEの基準以上の値で、本発明の実施例より高い値を示していることが分かるが、その理由は、比較例2の場合にはカーボン粒子の含量が低いためであり、比較例3と比較例4の場合にはそれぞれ低い乾燥温度と短い乾燥時間により、コーティング層の内部にバインダー樹脂が完全に形成されず、カーボン粒子の緻密な連結がなされなかったためであり、比較例6の場合にはコーティングされていないステンレス素材の表面の不動態被膜のためである。
【0132】
図9はステンレス316L分離板、グラファイト分離板、前記実施例1及び比較例1により製造された分離板に対する耐食性の測定結果を示したグラフである。
【0133】
コーティング層の耐食性を測定するために分極実験をし、カソードの燃料電池環境と類似の0.6V(vs.SCE)の電位で腐食電流密度値により比較実験をした。
【0134】
図9を参照すると、本発明の実施例1により製造される分離板が、SUS316L及びグラファイト分離板に比べて低い腐食電流密度を示していることが分かり、具体的には、実施例1の場合には0.5μA/cm2以下、SUS316Lの場合には約8.1μA/cm2、比較例1の場合には約21.7μA/cm2の値を示していることが分かる。
【0135】
図10はSUS316L分離板、グラファイト分離板、前記実施例1により製造された分離板に対する燃料電池の性能評価を示すグラフである。
【0136】
コーティング分離板の母材として用いられたSUS316Lの場合には、高い接触抵抗により低い性能を示し、本発明の実施例1のコーティング分離板の場合、最も良い性能特性を示す。特に、発明例1の場合、黒鉛より優れた性能を示す。
【0137】
従って、短期燃料電池の性能評価の結果、本発明のようなコーティングが適用された金属分離板の場合、黒鉛に取って代わって実際の燃料電池への適用の可能性が高いということが分かる。
【符号の説明】
【0138】
10:金属分離板、40:鋼板、80:接触抵抗測定装置、100:金属鋼板母材、102:酸化膜、105:コーティング層、110:基材部、120〜123:カーボン粒子、800:試片、810:カーボンペーパー、820:銅プレート、830:電流供給装置、840:電圧測定装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)金属板からなる母材を用意する段階と、
(b)前記金属板の表面を脱脂及び酸洗により前処理する段階と、
(c)酸洗処理された前記金属板の表面にバインダー樹脂、カーボン粒子及び溶剤を含み、前記カーボン粒子:バインダー樹脂の混合比は重量を基準に1:1〜6:1の組成物をコーティングする段階と、
(d)表面に組成物がコーティングされた前記金属板を前記バインダー樹脂の熱分解温度未満、前記溶剤の沸点以上の温度で乾燥させ、前記金属板の表面に前記バインダー樹脂基材に前記カーボン粒子が分散しているコーティング層を形成する段階と、
を備える燃料電池用金属分離板の製造方法。
【請求項2】
前記金属板は、ステンレス鋼板、アルミニウム板、炭素鋼鋼板の中から選択されることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用金属分離板の製造方法。
【請求項3】
前記(c)段階で用いられる組成物は、カーボン粒子10〜60wt%、バインダー樹脂5〜10wt%及び残量として溶剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用金属分離板の製造方法。
【請求項4】
前記バインダー樹脂は、アクリル系樹脂、フェノール系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂の中から1つ以上選択されることを特徴とする請求項1又は3に記載の燃料電池用金属分離板の製造方法。
【請求項5】
前記カーボン粒子は、カーボンブラック、グラファイト、炭素ナノチューブ(CNT)の中から選択されることを特徴とする請求項1又は3に記載の燃料電池用金属分離板の製造方法。
【請求項6】
前記カーボンブラックは1μm以下の粒径を有し、前記グラファイトは3μm以下の粒径を有することを特徴とする請求項5に記載の燃料電池用金属分離板の製造方法。
【請求項7】
前記カーボン粒子は、0.03〜0.1μmの平均粒径を有するカーボンブラック:0.5〜1.0μmの平均粒径を有するグラファイトの含量比率が1:1〜1:3になるように混合されたものを用いることにより、前記コーティング層の内部で前記カーボン粒子の充填密度を高めることを特徴とする請求項1又は3に記載の燃料電池用金属分離板の製造方法。
【請求項8】
前記組成物内でバインダー樹脂とカーボン粒子との含量は、55wt%以下であることを特徴とする請求項1又は3に記載の燃料電池用金属分離板の製造方法。
【請求項9】
前記溶剤は、ヘキサン類、ケトン類、アルコール類、アセテート類のような有機溶剤を単独で又は混合して用いたり、水を用いることを特徴とする請求項1又は3に記載の燃料電池用金属分離板の製造方法。
【請求項10】
前記(d)段階の乾燥温度は、160〜340℃であることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用金属分離板の製造方法。
【請求項11】
前記(c)段階と(d)段階との間に前記溶剤の沸点より低い温度で表面に組成物がコーティングされた金属板を予備乾燥する段階をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用金属分離板の製造方法。
【請求項12】
前記予備乾燥は、50〜150℃の温度で5〜30分間行われることを特徴とする請求項11に記載の燃料電池用金属分離板の製造方法。
【請求項13】
前記コーティング層の厚さは、0.1〜10μmであることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用金属分離板の製造方法。
【請求項14】
前記(d)段階の乾燥工程は、13秒〜30分間行われることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用金属分離板の製造方法。
【請求項15】
前記(d)工程以後に製造される燃料電池用金属分離板の腐食電流は1μA/cm2以下、接触抵抗は20mΩ・cm2以下の値を有することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用金属分離板の製造方法。
【請求項16】
金属板と、前記金属板の表面に形成されてバインダー樹脂からなる基材の体積全体に渡ってカーボン粒子が分散しているコーティング層とを備え、腐食電流は1μA/cm2以下、接触抵抗は20mΩ・cm2以下の値を有することを特徴とする燃料電池用金属分離板。
【請求項17】
前記金属板は、ステンレス鋼板、アルミニウム板、炭素鋼鋼板の中から選択されることを特徴とする請求項16に記載の燃料電池用金属分離板。
【請求項18】
前記バインダー樹脂は、アクリル系樹脂、フェノール系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂の中から1つ以上選択されることを特徴とする請求項16に記載の燃料電池用金属分離板。
【請求項19】
前記カーボン粒子は、カーボンブラック、グラファイト、炭素ナノチューブの中から選択されることを特徴とする請求項16に記載の燃料電池用金属分離板。
【請求項20】
前記カーボンブラックの粒度は1μm以下であり、グラファイトの粒度は3μm以下であることを特徴とする請求項16に記載の燃料電池用金属分離板。
【請求項21】
前記カーボン粒子は、0.03〜0.1μmの平均粒径を有するカーボンブラック:0.5〜1.0μmの平均粒径を有するグラファイトの含量比率が1:1〜1:3になるように混合されていることを特徴とする請求項16に記載の燃料電池用金属分離板。
【請求項22】
前記コーティング層でカーボン粒子:バインダー樹脂の含量比は、重量を基準に1:1〜6:1であることを特徴とする請求項16に記載の燃料電池用金属分離板。
【請求項23】
前記コーティング層の厚さは、0.1〜10μmであることを特徴とする請求項16に記載の燃料電池用金属分離板。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−508376(P2011−508376A)
【公表日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−539316(P2010−539316)
【出願日】平成21年1月21日(2009.1.21)
【国際出願番号】PCT/KR2009/000314
【国際公開番号】WO2009/093843
【国際公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(509107932)ヒュンダイ ハイスコ (20)
【Fターム(参考)】