説明

バウムクーヘンおよびその製造方法

【課題】 視覚的、香味的に付加価値を高めることができるバウムクーヘンおよびその製造方法を提供すること。
【解決手段】 イカ墨1、生クリーム2ならびに糖類3を少なくとも用いてイカ墨ペースト10を調製するイカ墨ペースト調製過程P1と、油脂4、糖類5、卵6、ならびに小麦粉7を少なくとも用いて生地20を調製する生地調製過程P2と、両過程P1、P2で得られたイカ墨ペースト10と生地20を混合してイカ墨入り生地30を調製する混合過程P3と、および該イカ墨入り生地30を煤焼する煤焼過程P4とを経て、バウムクーヘン40を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバウムクーヘンおよびその製造方法に係り、特に、イカ墨等を混入することにより、視覚的、香味的に付加価値を高めることができるバウムクーヘンおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
代表的なドイツ菓子であるバウムクーヘンは、その独特な形状や湿潤感などによって、我が国においても広く消費されている。近年は、スティック状のもの、パイナップル等の異種材料を包含したり、バナナ味等の異なる香味を付加したもの(特許文献1、2)、語義通り木の幹のような視覚的興趣を狙って外周にチョコレートを被覆したもの(特許文献3)など、種々の開発がなされている。
【0003】
【特許文献1】特開2000−354453「バウムクーヘン」。要約、特許請求の範囲、図1。
【特許文献2】特公平07−028648「パイナップル入りバウムクーヘン」。要約、特許請求の範囲、図1。
【特許文献3】特許3010552「チョコレート被覆菓子の製造方法」。要約、特許請求の範囲。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
さて、上記特許文献3に開示された技術に示されるように、視覚的興趣を喚起する付加価値は菓子において重要である。しかしながら、チョコレートの被覆や、果実の包含など局所的な視覚要素を付加した提案は従来なされているものの、生地全体に通常のものとは異なる色彩を施したバウムクーヘンは、従来存在しない。特に生地全体を黒色系としたものは存在しない。
【0005】
また、外周面をチョコレートで被覆したものはあっても、それ以外に通常のものとは異なる色彩を施したバウムクーヘンは、従来存在しない。特に白色系の材料により被覆したものは存在しない。
【0006】
さらに、かかる視覚的な価値の付加とともに、香味面でも新規なる香味を付加できれば、製品の価値を一層高めることができる。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、上記従来技術を踏まえて、視覚的、香味的に付加価値を高めることができるバウムクーヘンおよびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者は上記課題について検討した結果、イカ墨を用いることによって上記課題の解決が可能であることを見出し、本発明に至った。すなわち、上記課題を解決するための手段として本願で特許請求される、もしくは少なくとも開示される発明は、以下のとおりである。
【0009】
(1) 生地にイカ墨が混入されていることを特徴とする、バウムクーヘン。
(2) 生地にイカ墨およびゴマが混入されていることを特徴とする、バウムクーヘン。
(3) 少なくとも糖類および水を用いて調製されたグラスが外周面に掛けられていることを特徴とする、(1)または(2)に記載のバウムクーヘン。
【0010】
(4) イカ墨・生クリームならびに糖類を少なくとも用いてイカ墨ペーストを調製するイカ墨ペースト調製過程と、油脂・糖類・卵ならびに小麦粉を少なくとも用いて生地を調製する生地調製過程と、両過程で得られたイカ墨ペーストと生地を混合してイカ墨入り生地を調製する混合過程と、および該イカ墨入り生地を煤焼する煤焼過程とを経ることによりイカ墨入りバウムクーヘンを得る、バウムクーヘン製造方法。
(5) 前記イカ墨ペースト調整過程は、イカ墨を生クリームに混合してなる準備的イカ墨ペースト調製過程と、粉末アーモンド・水ならびに糖類からなるマジパンに、該準備的イカ墨ペーストを混合して最終的なイカ墨ペーストを得るマジパン混合過程とからなることを特徴とする、(4)に記載のバウムクーヘン製造方法。
(6) 前記準備的イカ墨ペースト調製過程では、さらにゴマが混合されることを特徴とする、(5)に記載のバウムクーヘン製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明のバウムクーヘンおよびその製造方法は上述のように構成されるため、これによれば、生地全体が、重厚な強い印象を喚起する色彩である黒色系を呈することにより、視覚的な興趣を喚起し、製品の視覚的な付加価値を高めることができる。また、外周面にグラスが掛けられる本発明の場合は、グラスが呈する白色系と生地の黒色系とによって明快なコントラストが呈され、視覚的な興趣をさらに喚起し、製品の視覚的な付加価値を高めることができる。
【0012】
また、イカ墨やゴマを用いることにより、特有の風味をふんだんに加えることができ、バウムクーヘンに新たな香味的付加価値を加えることができる。もとより、イカ墨の健康面における幾多の長所が製品イメージに貢献できることはいうまでもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を図面も用いつつ詳細に説明する。
図1は、本発明のバウムクーヘンの実施例を示す写真図である。ここに示されるように本バウムクーヘンは、生地にイカ墨が混入されていることにより、全体が黒色系を呈することを特徴とする(上記(1)の発明)。全体が黒色系であるバウムクーヘンは従来例がなく、生地全体が重厚な強い印象を喚起する色彩である黒色系を呈することにより、視覚的な興趣が喚起され、製品の視覚的な付加価値が高められる。また、イカ墨特有の香味が付加され、新たな香味的付加価値が加えられる。
【0014】
本発明のバウムクーヘンでは、生地は、イカ墨に加えてゴマが混入されたものとすることができる(上記(2)の発明)。イカ墨による色彩・香味の付加に加え、ゴマ特有の香味が付加され、新たな香味的付加価値が加えられる。
【0015】
また、図に示される通り本バウムクーヘンは、少なくとも糖類および水を用いて調製されたグラスが外周面に掛けられたものとすることもできる(上記(3)の発明)。グラスが呈する白色系と生地の黒色系とによって明快なコントラストが呈され、高級感を高め、視覚的な興趣をさらに喚起し、製品の視覚的な付加価値を高めることができる。
【0016】
図2は、本発明のバウムクーヘン製造方法の構成を示すフロー図である。図示するように本方法は、イカ墨1、生クリーム2ならびに糖類3を少なくとも用いてイカ墨ペースト10を調製するイカ墨ペースト調製過程P1と、油脂4、糖類5、卵6、ならびに小麦粉7を少なくとも用いて生地20を調製する生地調製過程P2と、両過程P1、P2で得られたイカ墨ペースト10と生地20を混合してイカ墨入り生地30を調製する混合過程P3と、および該イカ墨入り生地30を煤焼する煤焼過程P4とを有してなる(上記(4)の発明)。図中、91、92は、任意に添加される他の原材料を示す。
【0017】
図示するフローにより、イカ墨ペースト調製過程P1では、イカ墨1、生クリーム2ならびに糖類3が少なくとも用いられてイカ墨ペースト10が調製され、生地調製過程P2では、油脂4、糖類5、卵6、ならびに小麦粉7が少なくとも用いられて生地20が調製され、混合過程P3では、両過程P1、P2で得られたイカ墨ペースト10と生地20が混合されてイカ墨入り生地30が調製され、煤焼過程P4では、該イカ墨入り生地30が煤焼され、これらの過程を経ることにより、最終的にイカ墨入りバウムクーヘン40が得られる。
【0018】
図3は、本発明のバウムクーヘン製造方法の一部の構成例を示すフロー図である。図示するように本方法では、前記イカ墨ペースト調整過程P1を、イカ墨1を生クリーム2に混合してなる準備的イカ墨ペースト10Aを得る準備的イカ墨ペースト調製過程P1Aと、粉末アーモンド・水ならびに糖類からなるマジパン13に、該準備的イカ墨ペースト10Aを混合して最終的なイカ墨ペースト10を得るマジパン混合過程P1Bとから構成することができる(上記(5)の発明)。図中、93は、任意に添加される他の原材料を示す。
【0019】
かかる構成により、準備的イカ墨ペースト調製過程P1Aにおいて、イカ墨1が生クリーム2に混合されて準備的イカ墨ペースト10Aが得られ、マジパン混合過程P1Bにおいて、粉末アーモンド・水ならびに糖類からなるマジパン13に、該準備的イカ墨ペースト10Aが混合されて最終的なイカ墨ペースト10が得られる。
【0020】
図2の本バウムクーヘン製造方法では、煤焼過程P4において同時に、またはその後に、図示しない成型過程を経て、最終的にバウムクーヘン40が製造される。成型は、後述実施例のように焼き上げた生地を棒状体に巻く方法の他にも、棒状体に巻きながら煤焼する方法、薄く焼いた生地を重ねる方法などがあるが、特に限定されずその他公知の方法を適宜用いることができる。
【0021】
図2において本製造方法では、前記準備的イカ墨ペースト調製過程P1Aにおいて、さらにゴマ8を混合することができる(上記(6)の発明)。
【0022】
また図2において本製造方法では、前記煤焼過程P4の後、最終的な製品を得る前段階で、グラス15を上掛けするグラス過程P5を経て、グラスの掛かったバウムクーヘン50を得るものとすることができる。
【実施例】
【0023】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明がかかる実施例に限定されないことはいうまでもない。
<実施例1>
〈1〉原材料:バター・卵・砂糖・生クリーム・小麦粉・米粉・でん粉・アーモンド粉末(アーモンドプードル)・ゴマ・イカ墨・ショートニング・洋酒
〈2〉配合(1本分)
マジパン :アーモンドプードル 300g
水 115g
上白糖 300g
グラス :粉糖 300g
水 47g
ラム酒 40g
甘味料(還元糖類) 18g(林原商事製アマミール使用)
準備的イカ墨ペースト:ゴマ 143g
イカ墨加工液 12g(日本葉緑素(株)製セピア使用)
色素 50g(ヤエガキ醗酵技研製ブラックカラー使用 クチナシ青色素、カキ色素)
生クリーム(乳脂肪6%)125g
【0024】
生地 :卵 2850g
生クリーム(乳脂肪6%)550g
マジパン 600g
無塩バター 350g
加塩バター 350g
ラム酒 50g
ショートニング 750g(日本油脂製サンショート使用)
加工油脂 80g(日本油脂製アルエット使用)
上白糖 1600g
トレハロース 150g(林原商事製使用)
薄力粉 450g
ライススターチ 500g
でん粉加工品 100g(松谷化学工業製パインベーク使用)
ベーキングパウダー 35g
〈3〉使用ミキサー (株)愛工舎製作所製マイティ
【0025】
〈4〉マジパン調製
1.ボールに上白糖と水85gを入れ、ホイッパーで混合し、これを火にかけて108℃まで加熱した。
2.アーモンドプードルをミキサーボールに入れ、低速で回転させながら、1.のものの7割を、少しずつ混合した。
3.1.の残量と、水30gをボールで合わせて、2.のものに混合し、マジパンとした。
4.マジパンはラップで包み、一晩寝かせた。
【0026】
〈5〉準備的イカ墨ペースト調製
1.生クリームをミキサーで8分立てにした。
2.ゴマ、イカ墨加工液、色素をボールでよく混合した。
3.1.と2.のものを、ミキサーで低速で混合し、330gのペーストを得た。
【0027】
〈6〉最終的なイカ墨ペースト調製
1.生クリームを8分立てにした。
2.マジパンにバターとラム酒を混合した。
3.2.のものを湯煎し、分離させた。分離したものはホイッパーでペースト状にし、それに1.のものを混合した。
4.3.のものに〈5〉の準備的イカ墨ペーストを330g混合し、湯煎で60℃とした。
【0028】
〈7〉生地調製
1.粉類は全4種類のものを合わせて3回ふるった。卵は湯煎で30℃にした。バターは湯煎で60℃にした。
2.ミキサーボールにショートニング、加工油脂、上白糖、トレハロースを入れ、中速で混合し、ついで最高速に変えて、攪拌時間を7分に設定し、30秒経過後卵1200gを入れ、1分経過後約600g入れ、2分経過後約300g入れ、その後高速に変えて残量を入れた。その後低速に変えて1.の粉類を入れ、粉類が生地に混ざった後、中速に変えて混合した。
3.2.の生地に、〈6〉のイカ墨ペーストを入れ、手で混合した。
【0029】
〈8〉煤焼、成型
1.オーブンの皿に〈7〉の生地を流し入れ、生地を40℃まで温め、煤焼を行った(オーブンは348℃でスタートさせた)。
2.麺棒に、賠償した生地を20〜23回巻いて、バウムクーヘンとした。
【0030】
〈グラス調製と上掛け〉
1.粉糖、水、ラム酒をボールに入れ、練った。
2.1.のものを火にかけ、60℃に加熱した。
3.2.のものに甘味料(還元糖類)を入れて混合し、グラスとした。
4.〈8〉で得たバームクーヘンに、3.のグラスを薄く掛けて、本実施例のバウムクーヘンを完成した。
【0031】
完成したバウムクーヘンは、生地全体が黒色系を呈するとともに外周面は透明感のある白色が部分部分によって濃淡を見せつつ呈され、重厚かつ高級感のある色彩構成となって、視覚的な付加価値が高まった。また、イカ墨とゴマを用いたことにより、これらに由来する特徴のある風味が存分に活かされ、従来にない香味的な付加価値が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は上述のように構成されているため、視覚的・香味的に新規なるバウムクーヘンを提供することができ、菓子産業において利用価値が高い。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明のバウムクーヘンの実施例を示す写真図である。
【図2】本発明のバウムクーヘン製造方法の構成を示すフロー図である。
【図3】本発明のバウムクーヘン製造方法の一部の構成例を示すフロー図である。
【符号の説明】
【0034】
1…イカ墨1
2…生クリーム
3…糖類
4…油脂
5…糖類
6…卵
7…小麦粉
8…ゴマ
10…イカ墨ペースト
10A…準備的イカ墨ペースト
13…マジパン
15…グラス
20…生地
30…イカ墨入り生地
40、50…バウムクーヘン
91、92、93…任意に添加される他の原材料
P1…イカ墨ペースト調製過程
P2…生地調製過程
P3…混合過程
P4…煤焼過程
P1A…準備的イカ墨ペースト調製過程
P1B…マジパン混合過程
P5…グラス過程


【特許請求の範囲】
【請求項1】
生地にイカ墨が混入されていることを特徴とする、バウムクーヘン。
【請求項2】
生地にイカ墨およびゴマが混入されていることを特徴とする、バウムクーヘン。
【請求項3】
少なくとも糖類および水を用いて調製されたグラスが外周面に掛けられていることを特徴とする、請求項1または2に記載のバウムクーヘン。
【請求項4】
イカ墨・生クリームならびに糖類を少なくとも用いてイカ墨ペーストを調製するイカ墨ペースト調製過程と、油脂・糖類・卵ならびに小麦粉を少なくとも用いて生地を調製する生地調製過程と、両過程で得られたイカ墨ペーストと生地を混合してイカ墨入り生地を調製する混合過程と、および該イカ墨入り生地を煤焼する煤焼過程とを経ることによりイカ墨入りバウムクーヘンを得る、バウムクーヘン製造方法。
【請求項5】
前記イカ墨ペースト調整過程は、イカ墨を生クリームに混合してなる準備的イカ墨ペースト調製過程と、粉末アーモンド・水ならびに糖類からなるマジパンに、該準備的イカ墨ペーストを混合して最終的なイカ墨ペーストを得るマジパン混合過程とからなることを特徴とする、請求項4に記載のバウムクーヘン製造方法。
【請求項6】
前記準備的イカ墨ペースト調製過程では、さらにゴマが混合されることを特徴とする、請求項5に記載のバウムクーヘン製造方法。


【図2】
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【図3】
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【図1】
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