説明

バクテリア抗原特異核酸分子およびその用途

【課題】細菌性の血清型がO157である大腸菌が、試料中に存在するかを試験するための方法の提供。
【解決手段】当該方法は以下の工程を含む、(a)試験すべき試料を提供する工程、(b)少なくとも一つのオリゴヌクレオチド分子を提供する工程、(c)前記少なくとも一つのオリゴヌクレオチド分子と前記試料中に存在する前記核酸配列とが、前記の特異的な条件の下でハイブリッド形成できるように、当該試料を当該オリゴヌクレオチド分子と接触させる工程、(d)ハイブリッド形成したオリゴヌクレオチド分子を検出する工程。ここで、当該ハイブリッド形成したオリゴヌクレオチド分子の検出は前記試料中の前記大腸菌の存在を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバクテリア多糖抗原、特にO抗原の合成を制御する遺伝子クラスターに位置する新規ヌクレオチド配列、ならびに特定多糖抗原(特にO抗原)を発現するバクテリアの検出およびこれらバクテリアの多糖抗原(特にO抗原)を同定するためのこれらヌクレオチド配列の用途に関する。
背景技術
腸内病原性大腸菌株がヒトの下痢および出血性大腸炎の原因であることは周知であり、溶血性尿毒症症候群および血栓性血小板減少性紫斑病を含む潜在的に生命の脅威である続発症へと導く。これら菌株のあるものは共通して家畜に見出されるものであり、ヒトへの感染は通常不適切に加工処理され汚染された食肉または乳製品の消費の結果である。リポ多糖類の O特異多糖成分(「O抗原」)は腸内病原性大腸菌株の主要毒性因子であることが知られている。
【0002】
大腸菌O抗原は高度に多形性であり、この抗原については166 種の異なる形状が明らかにされている;エウイング(Ewing, W. H.) [エドワードおよびエウイング(Edwards and Ewings)「腸内細菌の同定」エルスビアー、アムステルダム(1986)] は128 種の異なるO抗原を検討しているが、ライアー(Lior H. )(1994)はその数を166 に拡大している[「大腸菌の分類」、家畜動物およびヒトにおける大腸菌、31〜72頁、ガイルス(C. L. Gyles )編集、CAB インターナショナル]。Salmonella enterica 属は46種の既知O抗原型をもつ[ポポフ(Popoff, M. Y. )ら(1992)「Salmonella enterica 血液型亜型(serovars)の抗原形状」第6版、Salmonella enterica に関する参照および研究のためのWHO協力センター、パスツール研究所、パリ フランス]。
【0003】
O抗原の生合成を決め、従って多形性のメカニズムを決める重要な一歩は、O抗原生合成を制御する遺伝子クラスターを特性化することである。O抗原の合成に特異的な遺伝子は一般にE.coli K-12 の染色体上地図位置45分の遺伝子クラスターに[バックマン(Backmann, B. J. )1990「Escherichia coli K-12 の連鎖地図」、Microbiol. Rev. 54: 130〜197 ]、またSalmonella enterica LT2では対応する位置に位置している[サンダーソン(Sanderson)ら(1995)、「Salmonella enterica typhimuriumの遺伝子地図」、VIII版、Microbiol. Rev. 59:241〜303 ]。両例ともにO抗原遺伝子クラスターは他のE.coliおよびS.enterica株の場合と同じ様にgnd 遺伝子に近接している[リーブス(Reeves P. R.)(1994)「リポ多糖類の生合成と組み立て」281〜314 、ノイバーガーおよびバンディーネン(A. Neuberger and L. L. M. van Deenen)編纂「細菌細胞膜、新総合生化学」27巻、エルスビアー・サイエンス出版]。これらの遺伝子はヌクレオチドジリン酸エステル糖の合成用および該糖類をオリゴ糖単位に組み上げるための酵素、また、一般にはO抗原へ重合するための酵素をコードする。
【0004】
E.coli O遺伝子クラスターは広範なE.coliO抗原についてクローン化されているが、O7、O9、O16 およびO111のO抗原はより詳細に研究されており、O9およびO16はこれまでにヌクレオチド配列に関して完全に特性化されている[キド、トルコフ、スギヤマ、ウチヤ、スギハラ、コマツ、カトウおよびヤン(Kido N, Torgov V. I., Sugiyama T., Uchiya K., Sugihara H., Komatsu T., Kato N. & Jann K.)(1995)「Escherichia coliにおけるO9多糖類の発現:E.coli O9rfb遺伝子クラスターの配列決定、マンノシルトランスフェラーゼの特性化、およびATP−結合カセット輸送システムの証明」、J. of Bacteriol.177 、2178〜2187;スティーブンソン、ニール、リウ、ホッブス、パッカー、バットレイ、レドモンド、リンドガイスツ、およびリーブス(Stevenson G., Neal B., Liu D., Hobbs M., Packer N.H., Batley M., Redmond J. W., Lindguist L. & Reeves PR)(1994)「E.coli K-12 O抗原の造とそのrfb 遺伝子クラスターの配列」、J. of Bacteriol.、176 、4144〜4156;ヤヤラトネ(Jayaratne, P.)ら(1991)「Escherichia coli O9 :K30 におけるGDP-マンノース形成に関与する重複rfbMおよびrfbK遺伝子のクローニングと分析およびグループ1K 30莢膜多糖合成におけるrfb遺伝子の関与」、J. Bacteriol. 176 :3126〜3139;バルバノおよびクロッサ(Valvano, M. A. and Crosa, J. H.)(1989)「ヒト浸襲E.coli O:K1株のO7リポ多糖抗原を決定する染色体遺伝子のE.coli K-12 における分子クローニングと発現」、Inf and Immun.57:937〜943 ;マロルダおよびバルバノ(Marolda, C. L. and Valvano, M. A.)(1993);「VW187株(E.coli O7:K1)のO7rfb 遺伝子クラスターによりコードされるGDP−マンノース生合成遺伝子の同定、発現およびDNA配列」、J. Bacteriol. 175 :148〜158 ]。
【0005】
バスティン(Bastin, D. A.)ら(1991)[「E.coli O11株のO抗原を決定するrfb 遺伝子クラスターのE.coli K-12 における分子クローニングと発現」、Mol Microbiol. 5:9 、2223〜22231 ]およびバスティンおよびリーブス(Bastin, D. A. and Reeves, P. R.)(1995)[「E.coliO111のO抗原遺伝子(rfb)クラスターの配列と分析」、Gene164 :17〜233 ]はE.coli O111rfb領域をエンコードする染色体DNAを離し、E.coli O 111rfb の6962bpフラグメントを特性化した6種のオープン読み枠(orfs)が6962bpの部分フラグメントに同定され、これらorfsの直線配列はGDP−マンノース経路の遺伝子、rfbKとrfbM、および他のrfb とcps 遺伝子と相同であることを明らかにした。
【0006】
Salmonella enterica B、A、D1、D2、D3、C1、C2およびEのO抗原発現を制御する遺伝子座のヌクレオチド配列が特性化されている[Brown, P. K., L. K. Romana and P. R. Reeves ((1991)「グループC2 S.enterica のrfb 遺伝子クラスターのクローニング:グループBおよびDのrfb 領域との比較」、Mol. Microbiol. 5:1873〜1881;Jiang, X. M., B. Neal, F. Santiago, S. J. Lee, L. K. Romana, and P. R. Reeves)(1991)「Salmonella enterica 血液型亜型typhimurium(LT2)のrfb (O抗原)遺伝子クラスターの構造と配列」、Mol. Microbiol. 5 :692〜713 ;リー、ロマーナおよびリーブス(S. J. Lee, L. K. Romana, and P. R. Reeves)(1992)「グループC1 S.enterica 株からのrfb (O抗原)遺伝子クラスターの配列および構造分析」、J. Gen. Microbiol.138 :1843〜1855;ルイ、ベルマ、ロマーナ、およびリーブス(Lui, D., N. K. Verma, L. K. Romana, and P. R. Reeves)(1991)「Salmonella enterica 血液型亜型A、BおよびDのrfb 領域間の関係」、J. Bacteriol. 173 :4814〜4819;ベルマおよびリーブス(Verma, N. K. and P. Reeves)(1989)「グループAおよびグループD Salmonella enterica の抗原特異性を決定するrfbSおよびrfbEの同定と配列」、J. Bacteriol. 171 :5694〜5701;ワン、ロマーナおよびリーブス(Wang, L., L. K. Romana, and P. R. Reeves)(1992)「Salmonella enterica entericae グループE1rfb 遺伝子クラスターの分子分析:O抗原および主要多形性の遺伝的基礎」、Genetics130 :429〜443 ;ワイクおよびリーブス(Wyk, P. and P. Reeves)(1989)「グループB Salmonella entericaeに抗原特異性を付与するアベクオース合成酵素に対する遺伝子の同定と配列:ガラクトース・エピメラーゼとの相同性」、J. Bacteriol. 171 :5687〜5693;ツイアン、ホッブス、およびリーブス(Xiang, S. H., M. Hobbs, and P. R. Reeves)1994、「グループD2 S.enterica 株のrfb 遺伝子クラスターの分子分析:グループEおよびD1株間の挿入配列介在組換え事象からのその起源の証明」、J. Bacteriol. 176 :4357〜4365; カード、リウおよびリーブス(Curd,H.,D. Liu and P. R. Reeves) 「Salmonella enterica グループB 、D1、D2およびD3O抗原間の関係」、J. Bacteriol. 180 :1002〜1007]。
【0007】
密接に関係するShigella(実際にはE.coliの一部と考えることができる)の内、S. dysenteriae および S.flexneri のO抗原は配列が完全に決定され、gnd の隣接位にある[クレナおよびシュナイトマン(Klena JD & Schnaitman CA)(1993)「rfb 遺伝子クラスターの機能および Shigella dysenteriae 1 によるO抗原の合成におけるrfe 遺伝子」、Mol. Microbiol. 9 :393〜402 :モロナ、マブリス、ファラリノおよびマニング(Morona, R., Mavris, M., Fallarino, A. & Manning, P.)(1994)「Shigella flexneri のrfc 領域の特性化」、J. Bacteriol. 176 :733〜747 ]。
【0008】
腸内病原性大腸菌株のO抗原および S.enterica 株のO抗原が主要な毒性因子であり、高度に多形性である限り、E.coliを検出し、S.entericaを検出するための高度に特異的な、高感度、迅速、安価な診断アッセイ法を開発することが実際に必要である。また、E.coli株のO抗原を同定し、S.enterica株のO抗原を同定するための診断アッセイ法を開発することが実際に必要である。E.coliの検出に関してこれらの必要性はEHEC(腸内病原性出血性E.coli)株にまで及ぶが、これはもっとも必要性の高い領域である。E.coliではETEC(腸内毒性E.coli)などの診断に興味がある。
【0009】
この領域で採用された最初の診断システムでは、E.coliO抗原発現株またはS. enterica O抗原発現株に対し作製した大量の抗血清を使用した。この技術では、その試薬類の調製、保存および使用、ならびに意味のある診断結果を得るのに必要な時間などと関連して本来的に困難性がある。
【0010】
S.enterica株のO抗原遺伝子クラスターから誘導されるヌクレオチド配列は、PCRアッセイにおいてS.entericaO抗原を決定するために用いられている[ルーク(Luk, J.M.C.)ら(1993)「S.enterica主要血清群(A、B、C2、およびD)同定のためのポリメラーゼ連鎖反応によるアベクオースおよびパラトース合成酵素遺伝子(rfb)の選択的増幅」、J. Clin. Microbiol. 31:2118〜2123]。グループB、A、D1、C2およびE1をそれぞれ代表する血液型亜型ティフィムリウム(Typhimurium)、パラティフィA (Paratyphi A)、ティフィ (Typhi)、ミュエンヒェン (Muenchen) およびアナタム (Anatum) の全rfb遺伝子座の先の完全ヌクレオチド配列特性化は、ルークらがこれらの血清群に特異的なオリゴヌクレオチド・プライマーを選択するのを可能とした。かくして、ルークらの方法は、S.enterica血清群E1、D1、A、BおよびC2のO抗原領域内にCDP−アデクオースおよびCDP−パラトース合成遺伝子に対応する既知のヌクレオチド配列をならべ、血清型特異オリゴヌクレオチドを同定するために観察されたヌクレオチド配列の差異を利用することに基づいている。
【0011】
志賀毒素様毒素産生大腸菌株のO抗原血清型を決定する試みにおいて、パトン(Paton, A. W.)ら(1996)[「志賀毒素様毒素産生大腸菌で汚染された乾燥醗酵ソーセージが原因の溶血性尿毒症症候群発症の分子微生物学的研究」、J. Clin. Microbiol.34:1622〜1627]はwbdI(orf6)領域から誘導したオリゴヌクレオチドを用いたが、このものはE.coli O111に特異的であると信じられ、PCR診断アッセイにおいてE.coli O111配列から誘導された。未発表論文によると、パトンらの方法は、wbdIから誘導されたヌクレオチド配列はO111抗原を特異的に同定しないかも知れず、実際にも検出は擬陽性の結果となるという点で欠陥があるとしている。パトンらはPCRにより5種のO111抗原単離体を検出し、それら単離体の3種のみから実際にO111特異抗血清と反応するバクテリアを検出したことを明らかにしている。

【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】

特定の仮説に拘束されることを望まないながらも、本発明者らが現在信じるのは、パトンらの方法で見られた呈示擬陽性は、パトンらの採用した核酸分子が糖経路遺伝子として推定される機能を有する遺伝子[バスチンおよびリーブス(Bastin D. A. and Reeves, P. R.)(1995)、E.coliO111のO抗原遺伝子(rfb)クラスターの配列と分析、Gene、164:17〜23]から誘導したものであという事実のためであるが、現在それらはE.coliO抗原を同定するために必要なヌクレオチド配列特異性を欠いていると彼らも信じていることである。本発明者らが現在信じるのは、S.entericaまたは他の腸内細菌内で発現される糖経路遺伝子から誘導される核酸分子の多くもまた、特異O抗原または特異血清型を同定するのに必要なヌクレオチド配列特異性を欠いているらしいということである。
【0013】
この点に関連して、多糖抗原合成のための遺伝子が、抗原に存在する糖の合成(糖経路遺伝子)に関係するもの、および多糖類を形成するこれら糖類の取り扱いに関するものを含むということに留意するのは重要である。本発明は後者のグループの遺伝子、特に、トランスフェラーゼ、ポリメラーゼおよびフリッパーゼ遺伝子などの組立および輸送の遺伝子と主に関連する。
【0014】
本発明者らは、驚くべきことに、O抗原遺伝子クラスター内の特定の組立および輸送遺伝子、特にトランスフェラーゼ、wzx およびwzy 遺伝子から誘導される核酸分子を使用すると、O抗原の検出および同定の特異性を改善し得ることを見出した。本発明者らは、本発明が本明細書に例示された核酸分子によりコードされる特定のO抗原の検出に必ずしも限定されず、O抗原を発現するバクテリアの検出および一般O抗原の同定に広く適用し得るものであると信じる。さらに、O抗原の合成に関わる遺伝子クラスターとバクテリア莢膜抗原など他の多形性多糖抗原のものとの間に類似性があるために、本発明の方法および分子はこれら他の多糖抗原にも適用し得ると本発明者らは信じる。
【0015】
従って、一側面において、本発明は特異バクテリア多糖抗原の検出および同定に有用な核酸分子の同定に関する。
【0016】
本発明は以下の遺伝子から誘導される核酸分子を提供する:トランスフェラーゼをコードする遺伝子;または多糖またはオリゴ糖単位の輸送または処理工程に関わる酵素をコードする遺伝子、例えば、wzx 遺伝子、wzy 遺伝子、または同様の機能を有する遺伝子;該遺伝子は特定のバクテリア多糖抗原の合成に関わり、その場合核酸分子の配列は特定のバクテリア多糖抗原に特異的である。
【0017】
多糖抗原類、例えば、E.coliの莢膜抗原(I型およびII型)、サルモエラsvティフィの毒性莢膜およびストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)およびスタフィロコッカス・アルブス(Staphylococcus albus)などの種の莢膜抗原は、ヌクレオチド糖経路遺伝子、糖トランスフェラーゼ遺伝子および多糖またはオリゴ糖単位の輸送および処理工程のための遺伝子を包含する遺伝子によりコードされ、提供される。これらはある場合にはwzx またはwzy であるが、他の場合には異なる処理工程経路が用いられるために全く異なっている。他の遺伝子クラスターの例は、ストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)の細胞外多糖、リゾビウム・メリロッティ(Rhizobium melilotti)のエキソ多糖、およびクレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)のK2莢膜などに対する遺伝子クラスターである。これらはすべて、実験分析、ヌクレオチド配列または予測されるタンパク質構造の比較により、ヌクレオチド糖経路遺伝子、糖トランスフェラーゼ遺伝子およびオリゴ糖または多糖処理工程のための遺伝子を含むと見ることのできる遺伝子をもっている。
【0018】
E.coli K-12 コラン酸(colanic acid)莢膜遺伝子クラスターの場合には[スティーブンソン(Stevenson)ら(1996)「細胞外多糖コラン酸の産生に関わるE.coliK−12遺伝子の構築」J. Bacteriol. 178:4885〜4893]、3分類からの遺伝子が仮にあるいは確定的に同定された。コラン酸莢膜はE.coliのI 型莢膜に分類される。
【0019】
本発明者らは、一般に、トランスフェラーゼ遺伝子およびオリゴ糖処理工程用遺伝子が、かかる莢膜に存在する殆どの糖が異なる血清型の莢膜に起こるようなヌクレオチド糖合成経路をコードする遺伝子よりも、特定の莢膜に対してより特異的であると信じる。このように、ヌクレオチド糖合成経路遺伝子は莢膜型のものよりもより一般的であると現在は予測できる。
【0020】
下に述べるように、本発明者らは、トランスフェラーゼ遺伝子および/ またはオリゴ糖もしくは多糖用遺伝子を共有する多糖抗原遺伝子クラスターが存在し、そのためこれらの遺伝子内からヌクレオチド配列を完全に無作為に選択することで交差反応がもたらされるのであろうと認識している;莢膜抗原に関する一例は、E.coli II 型莢膜であって、このものに対してはトランスフェラーゼ遺伝子のみが十分に特異的である。しかし、それにもかかわらず本発明者らは、かれらのこれれまでの結果に照らして、トランスフェラーゼ遺伝子またはオリゴ糖もしくは多糖処理工程を制御する遺伝子が、多糖抗原型の特異的検出および特性化のためにヌクレオチド配列を選択する勝れた標的であると考える。かくして、特定の遺伝子間に類似性がある場合には、関連する遺伝子クラスター内の他のトランスフェラーゼ遺伝子またはオリゴ糖もしくは多糖処理工程遺伝子内からヌクレオチド配列を選択することがなお特異性を与えることとなろうし、あるいはヌクレオチド配列を組合わせて用いることが所望の特異性を与えることになろう。ヌクレオチド配列の組合わせは、経路遺伝子から誘導されるヌクレオチド配列とトランスフェラーゼ、wzx またはwzy 遺伝子から誘導されるヌクレオチド配列とをともに包含してもよい。
【0021】
このように、本発明は一群の核酸分子をも提供するが、該核酸分子はトランスフェラーゼおよび/ または多糖もしくはオリゴ糖単位の輸送または処理工程の酵素をコードする遺伝子、例えばwzx またはwzy の組合わせから誘導される;この場合、遺伝子の組合わせは特定のバクテリア多糖抗原の合成に特異的であり、この場合一群の核酸分子はバクテリア多糖抗原に特異的である。他の好適な形態において、核酸分子はトランスフェラーゼおよび/ または多糖もしくはオリゴ糖単位の輸送または処理工程の酵素をコードする遺伝子、例えばwzx またはwzy の組合わせから、経路遺伝子から誘導される核酸分子とともに誘導される。
【0022】
第二の側面において、本発明は診断アッセイ法におけるO抗原を発現するバクテリアの検出およびこれらバクテリアのO抗原同定に有用な核酸分子の同定に関する。
【0023】
本発明は以下の遺伝子から誘導される核酸分子を提供する:トランスフェラーゼをエンコードする遺伝子;または多糖類またはオリゴ糖単位の輸送または処理工程に関わる酵素をコードする遺伝子、例えば、wzx またはwzy 遺伝子;この遺伝子は特定のバクテリアO抗原の合成に関わり、この場合核酸分子の配列は特定のバクテリアO抗原に特異的である。
【0024】
本発明の核酸の長さは多様であってもよい。一態様において、核酸の長さは約10ないし約20個のヌクレオチドからなる。
【0025】
好適な一態様において、本発明は以下の遺伝子から誘導される核酸分子を提供する:トランスフェラーゼをエンコードする遺伝子;または多糖類またはオリゴ糖単位の輸送または処理工程に関わる酵素をエンコードする遺伝子、例えば、wzx またはwzy 遺伝子であって、大腸菌により発現されるO抗原の合成に関わる遺伝子であり、その核酸分子配列はO抗原に特異的である。
【0026】
さらに好適な一態様において、核酸分子の配列はO111抗原をコードするヌクレオチド配列(配列番号1)に特異的である。より好ましくは、該配列はwbdH(配列番号1のヌクレオチド位置739〜1932)、wzx (配列番号1のヌクレオチド位置8646〜9911)、wzy (配列番号1のヌクレオチド位置9901〜10953)、wbdM(配列番号1のヌクレオチド位置11821〜12945)、および少なくとも10〜12ヌクレオチドの長さのこれら分子のフラグメントからなる群から選択される遺伝子より誘導される。特に好適な核酸分子は上記遺伝子に関し表5および5Aに掲げたものである。
【0027】
他のさらに好適な一態様において、核酸分子の配列はO157抗原をコードするヌクレオチド配列(配列番号2)に特異的である。より好ましくは、該配列はwbdN(配列番号2のヌクレオチド位置79〜861)、wbdO(配列番号2のヌクレオチド位置2011〜2757)、wbdP(配列番号2のヌクレオチド位置5257〜6471)、wbdR(配列番号2のヌクレオチド位置13156〜13821)、wzx (配列番号2のヌクレオチド位置2744〜4135)、およびwzy(配列番号2のヌクレオチド位置858〜2042)からなる群から選択される遺伝子より誘導される。特に好適な核酸分子は表6および6Aに掲げたものである。
【0028】
本発明は、さらに好適な態様において、以下の遺伝子から誘導される核酸分子を提供する:トランスフェラーゼをコードする遺伝子;または多糖またはオリゴ糖単位の輸送または処理工程に関わる酵素をコードする遺伝子、例えば、wzx またはwzy 遺伝子;該遺伝子はS.entericaにより発現されるO抗原の合成に関わる遺伝子あって、この場合核酸分子の配列はO抗原に特異的である。
【0029】
この態様のより好適な一形態において、核酸分子の配列はS.enterica C2 抗原をコードするヌクレオチド配列(配列番号3)に特異的である。より好ましくは、該核酸分子の配列は以下の遺伝子からなる群から選択される遺伝子から誘導される:wbaR(配列番号3のヌクレオチド位置2352〜3314)、wbaL(配列番号3のヌクレオチド位置3361〜3875)、wbaQ(配列番号3のヌクレオチド位置3977〜5020)、wbaW(配列番号3のヌクレオチド位置6313〜7323)、wbaZ(配列番号3のヌクレオチド位置7310〜8467)、wzx(配列番号3のヌクレオチド位置1019〜2359)、およびwzy (配列番号3のヌクレオチド位置5114〜6313)。特に好適な核酸分子は表7に掲げたものである。
【0030】
この態様のより好適なさらなる形態において、核酸分子の配列はS.enterica B抗原をコードするヌクレオチド配列(配列番号4)に特異的である。より好ましくは、該配列はwzx (配列番号4のヌクレオチド位置12762〜14054)またはwbaV(配列番号4のヌクレオチド位置14059〜15060)から誘導される。特に好適な核酸分子は、wzx およびwbaV遺伝子から誘導される表8に掲げたものである。
【0031】
この態様のさらにより好適な形態において、核酸分子の配列はS.entericaD3O抗原に特異的であり、wzy 遺伝子から誘導される。
【0032】
この態様のさらになおより好適な形態において、核酸分子の配列はS.entericaE1O抗原に特異的であり、wzx 遺伝子から誘導される。
【0033】
トランスフェラーゼ遺伝子または多糖もしくはオリゴ糖単位の輸送または処理工程をコードする遺伝子、例えば、wzx またはwzy 遺伝子が個々のO抗原型の特異的検出に対する勝れた標的である一方、交差反応が起こるような異なるO抗原型間で同一であるか密接した関係にあることを証明することのできる個々の遺伝子またはそれらの部分がこのグループ内にある。交差反応はこのグループ内で異なる標的を選択するか、このグループ内の複数の標的を用いることにより回避すべきである。
【0034】
さらに、O抗原遺伝子クラスターは、ユニークO抗原型が少なくとも2種の他のO抗原型と共有する遺伝子産物の組合わせにより提供されるような少なくとも2種の株の組換えから生じる場合のあることが認識される。この現象の認められた例はS.entericaO抗原血清型 D2 であり、このものは D1 およびE1 からの遺伝子を有するが、D2にユニークなものはない。これらの状況において、O抗原型の検出は本発明に従いなお達成し得るが、この特定のO抗原遺伝子クラスターにのみ存在する遺伝子の特有の組合わせを検出するには、核酸分子を組合わせて使用する必要がある。
【0035】
このように、本発明は一群の核酸分子をも提供するが、この場合、核酸分子はトランスフェラーゼおよび/ または多糖もしくはオリゴ糖単位の輸送または処理工程のための酵素をコードする遺伝子、例えば、wzx またはwzy 遺伝子から誘導され、その場合一群の核酸分子はバクテリアO抗原に特異的である。好ましくは、特定のバクテリアO抗原はS.entericaにより発現される。より好ましくは、一群の核酸分子は D2O抗原に特異的であり、 E1 wzy 遺伝子および D1 wzx 遺伝子から誘導される。
【0036】
ヌクレオチド配列の組合わせは経路遺伝子から誘導されるヌクレオチド配列を、トランスフェラーゼから誘導されるヌクレオチド配列、wzx またはwzy 遺伝子とともに含んでいてもよい。
【0037】
このように、本発明は一群の核酸分子をも提供するが、この場合、核酸分子はトランスフェラーゼおよび/ または多糖もしくはオリゴ糖単位の輸送または処理工程のための酵素をコードする遺伝子、例えば、wzx またはwzy 遺伝子、および糖経路遺伝子から誘導され、その場合一群の核酸分子はバクテリアO抗原に特異的である。好ましくは、該O抗原はS.entericaにより発現される。
【0038】
さらに認められることは、疑似ハイブリッド形成は多くの異なる遺伝子に見出される配列の最初の選択を経て生じる場合があるが、これは典型的には、例えば、PCRゲルの対照に対するバンドの大きさを比較することにより認識し得ることであり、その場合は他の替わり得る配列を選択することができる。
【0039】
本発明者らは、本発明の知見および多糖抗原遺伝子クラスター(O抗原遺伝子クラスターを含む)に関し入手し得る情報に基づき、また、実験的分析の使用、核酸配列または予測されるタンパク質構造の比較を通して、本発明による核酸分子は対象となる特定の多糖抗原に向けて容易に誘導することができる。適切なバクテリア株は一般に寄託機関から有償で入手することができる。
【0040】
上述のように、現在、166種の確定したE.coliO抗原が有る一方、S.entericaは46種の既知O抗原型をもつ[ポポフ(Popoff M. Y.)ら(1992)「サルモネラ血液型亜型の抗原形状」第6版、S.entericaに関する参照および研究のためのWHO協力センター、パスツール研究所、パリ フランス]。多くの他のバクテリア属はO抗原を持つことが知られており、これらはシトロバクター (Citrobacter)、シゲラ (Shigella) 、イエルシニア (Yersinia) 、プレシオモナス (Plesiomonas)、ビブリオ (Vibrio) およびプロテウス (Proteus)である。
【0041】
166種の異なるE.coli O抗原血清型のサンプルは国立血清研究所、コペンハーゲン、デンマークから入手可能である。
【0042】
46種のS.enterica血清型は医学・獣医学研究所、アデライーデ、オーストラリアから入手可能である。
【0043】
他の側面において、本発明は1以上のバクテリア多糖抗原の存在についてサンプルを試験する方法に関し、該方法は該サンプルを以下の遺伝子に特異的にハイブリッドし得る少なくとも1種のオリゴヌクレオチド分子と接触させることからなる:(i)トランスフェラーゼをコードする遺伝子、または(ii)オリゴ糖もしくは多糖単位の輸送または処理工程のための酵素をコードする遺伝子、例えば、wzx またはwzy 遺伝子;この場合、当該遺伝子はバクテリア多糖抗原の合成に関わる;適切な条件は、少なくとも1種のオリゴヌクレオチド分子が、サンプル中に存在する特定のバクテリア多糖抗原を発現するバクテリアの少なくとも1種のかかる遺伝子に特異的にハイブリッド形成し、特異的にハイブリッド形成したオリゴヌクレオチド分子を検出することを可能とする条件である。
【0044】
単一の特異オリゴヌクレオチド分子が入手し得ない場合、標的領域に特異的にハイブリッド形成する分子を組合わせて使用してもよい。このように、本発明は本発明の試験方法に使用する一群の核酸分子を提供するが、この場合、核酸分子はトランスフェラーゼおよび/ または多糖もしくはオリゴ糖単位の輸送または処理工程の酵素をエンコードする遺伝子、例えばwzx またはwzy から誘導され、この場合、一群の核酸分子は特定のバクテリア多糖類に特異的である。一群の核酸分子は必要により糖経路遺伝子から誘導される核酸分子を含むことができる。
【0045】
他の側面において、本発明は1以上のバクテリア多糖抗原の存在についてサンプルを試験する方法に関し、該方法は少なくとも1対のオリゴヌクレオチド分子を有する該サンプルを以下の遺伝子に特異的にハイブリッド形成することのできる該対の少なくとも一方のオリゴヌクレオチド分子と接触させることからなる:(i)トランスフェラーゼをコードする遺伝子、または(ii)オリゴ糖もしくは多糖単位の輸送または処理工程のための酵素をコードする遺伝子、例えば、wzxまたはwzy 遺伝子;この場合、当該遺伝子はバクテリア多糖抗原の合成に関わる;適切な条件は、該対分子の少なくとも一方のオリゴヌクレオチド分子が、サンプル中に存在する特定のバクテリア多糖抗原を発現するバクテリアの少なくとも1種のかかる遺伝子に特異的にハイブリッド形成し、特異的にハイブリッド形成したオリゴヌクレオチド分子を検出することを可能とする条件である。
【0046】
対のオリゴヌクレオチド分子は双方同一の遺伝子または異なる遺伝子にハイブリッド形成してもよい。対の一方のオリゴヌクレオチド分子のみが特定の抗原型に特異的な配列に特異的にハイブリッド形成する必要がある。他の分子は非特異的領域にハイブリッド形成することができる。
【0047】
特定の多糖抗原遺伝子クラスターが組換えを経て生じる場合には、オリゴヌクレオチド分子の少なくとも1対はその多糖抗原に特異的なクラスター中遺伝子の特定の組合わせにハイブリッド形成することが可能であるように選択するか、あるいは複数の対が遺伝子の特定の組合わせにハイブリッド形成するように選択してもよい。特定クラスター中の遺伝子がすべてユニークである場合でも、クラスター内で遺伝子の組合わせを認識するヌクレオチド分子を使用し、本方法を実施することができる。
【0048】
このように、本発明は本発明の試験方法に使用する核酸分子の対を含む1群を提供するが、この場合、核酸分子の対はトランスフェラーゼおよび/ または多糖もしくはオリゴ糖単位の輸送または処理工程のための酵素をコードする遺伝子、例えば、wzx またはwzy 遺伝子から誘導され、ここで一群の核酸分子は特定のバクテリア多糖抗原に特異的である。一群の核酸分子は必要により糖経路遺伝子から誘導される核酸分子の対を含むことができる。
【0049】
他の側面において、本発明は1以上の特定バクテリアのO抗原の存在についてサンプルを試験する方法に関し、該方法は該サンプルを以下の遺伝子に特異的にハイブリッド形成することのできる少なくとも1種のオリゴヌクレオチド分子と接触させることからなる:(i)O抗原トランスフェラーゼをコードする遺伝子、または(ii)オリゴ糖もしくは多糖単位の輸送または処理工程のための酵素をコードする遺伝子、例えば、wzx またはwzy 遺伝子;この場合、当該遺伝子は特定O抗原の合成に関わる;適切な条件は、少なくとも1種のオリゴヌクレオチド分子が、サンプル中に存在する特定のバクテリアO抗原を発現するバクテリアの少なくとも1種のかかる遺伝子に特異的にハイブリッド形成し、特異的にハイブリッド形成したオリゴヌクレオチド分子を検出することを可能とする条件である。好ましくは、バクテリアはE.coliまたはS.entericaである。より好ましくは、E.coliはO157血清型またはO111血清型を発現する。より好ましくは、S.entericaは C2 またはB 血清型を発現する。好ましくは、この方法はサザンブロット法である。より好ましくは、核酸分子は標識し、核酸分子のハイブリッド形成をオートラジオグラフィーまたは蛍光検出により検出する。
【0050】
本発明者らは単一の特異的オリゴヌクレオチド分子が入手し得ない場合を想定する。そのような場合、標的領域に特異的にハイブリッド形成する分子の組合わせを用いてもよい。このように、本発明は本発明の試験方法に使用する1群の核酸分子を提供するが、この場合、核酸分子はトランスフェラーゼおよび/ または多糖もしくはオリゴ糖単位の輸送または処理工程のための酵素をエンコードする遺伝子、例えば、wzx またはwzy 遺伝子から誘導され、ここで一群の核酸分子は特定のバクテリアO抗原に特異的である。好ましくは、特定のバクテリアO抗原はS.entericaにより発現される。一群の核酸分子は必要により糖経路遺伝子から誘導される核酸分子を含むことができる。
【0051】
他の側面において、本発明は1以上の特定バクテリアO抗原の存在についてサンプルを試験する方法に関し、該方法は少なくとも1対のオリゴヌクレオチド分子を有する該サンプルを以下の遺伝子に特異的にハイブリッド形成することのできる該対の少なくとも一方のオリゴヌクレオチド分子と接触させることからなる:(i)O抗原トランスフェラーゼをエンコードする遺伝子、または(ii)オリゴ糖もしくは多糖単位の輸送または処理工程のための酵素をエンコードする遺伝子、例えば、wzx またはwzy 遺伝子;この場合、当該遺伝子は特定O抗原の合成に関わる;適切な条件は、少なくとも一方のオリゴヌクレオチド分子が、サンプル中に存在する特定のバクテリアO抗原を発現するバクテリアの少なくとも1種のかかる遺伝子に特異的にハイブリッド形成し、特異的にハイブリッド形成したオリゴヌクレオチド分子を検出することを可能とする条件である。
【0052】
好ましくは、バクテリアはE.coliまたはS.entericaである。より好ましくは、E.coliはO111またはO157血清型のものである。より好ましくは、S.entericaは C2 またはB 血清型を発現する。好ましくは、この方法はポリメラーゼ連鎖反応法である。より好ましくは、本発明方法に使用するオリゴヌクレオチド分子は標識したものである。さらにより好ましくは、ハイブリッド形成したオリゴヌクレオチド分子は電気泳動法により検出する。O111に使用する好ましいオリゴヌクレオチドはO111の特異検出法用となるものであるが、これらを遺伝子wbdH、wzx 、wzy およびwbdMとの関わりで表5および5A に記載する。O157に使用する好ましいオリゴヌクレオチドはO157の特異検出法用となるものであるが、これらを表6および6A に記載する。
【0053】
血清型C2およびBに関しては、好適なオリゴヌクレオチド分子を表7および8の第3欄に記載した適切な領域から選択することができる。
【0054】
本発明者らは、稀ではあるが、血清学的に異なるO抗原をコードする2つの遺伝的に類似する遺伝子クラスターが遺伝子の組換えまたは突然変異を介して生じ、多形変異体を生成する場合のあることを想定する。そのような場合には、複数対のオリゴヌクレオチドを選択し、特異的に組合わせた遺伝子にハイブリッド形成するようにする。このように、本発明は本発明の試験方法に使用する核酸分子の対を含む1群を提供するが、この場合、核酸分子の対はトランスフェラーゼおよび/ または多糖もしくはオリゴ糖単位の輸送または処理工程のための酵素をエンコードする遺伝子、例えば、wzx またはwzy 遺伝子から誘導され、ここで一群の核酸分子は特定のバクテリアO抗原に特異的である。好ましくは、特定のバクテリアO抗原はS.entericaにより発現される。一群の核酸分子は必要により糖経路遺伝子から誘導される核酸分子の対を含むことができる。
【0055】
他の側面において、本発明は1以上の特定のバクテリアO抗原の存在について食物由来サンプルを試験する方法に関し、該方法は少なくとも1対のオリゴヌクレオチド分子を有する該サンプルを以下の遺伝子に特異的にハイブリッド形成することのできる該対の少なくとも一方のオリゴヌクレオチド分子と接触させることからなる:(i)O抗原トランスフェラーゼをコードする遺伝子、または(ii)オリゴ糖もしくは多糖単位の輸送または処理工程のための酵素をコードする遺伝子、例えば、wzx またはwzy 遺伝子;この場合、当該遺伝子は特定のO抗原の合成に関わる;適切な条件は、少なくとも一方のオリゴヌクレオチド分子が、サンプル中に存在する特定のバクテリア多糖抗原を発現するバクテリアの少なくとも1種のかかる遺伝子に特異的にハイブリッド形成し、特異的にハイブリッド形成したオリゴヌクレオチド分子を検出することを可能とする条件である。好ましくは、バクテリアはE.coliまたはS.entericaである。より好ましくは、E.coliはO111またはO157血清型のものである。より好ましくは、S.entericaはC2またはB血清型のものである。好ましくは、この方法はポリメラーゼ連鎖反応法である。より好ましくは、本発明方法に使用するオリゴヌクレオチド分子は標識したものである。さらにより好ましくは、ハイブリッド形成したオリゴヌクレオチド分子は電気泳動法により検出する。
【0056】
他の側面において、本発明は1以上の特定バクテリアO抗原の存在について糞便由来サンプルを試験する方法に関し、該方法は少なくとも1対のオリゴヌクレオチド分子を有する該サンプルを以下の遺伝子に特異的にハイブリッド形成することのできる該対の少なくとも一方のオリゴヌクレオチド分子と接触させることからなる:(i)O抗原トランスフェラーゼをコードする遺伝子、または(ii)オリゴ糖もしくは多糖単位の輸送または処理工程のための酵素をコードする遺伝子、例えば、wzx またはwzy 遺伝子;この場合、当該遺伝子は特定O抗原の合成に関わる;適切な条件は、少なくとも一方のオリゴヌクレオチド分子が、サンプル中に存在する特定のバクテリアO抗原を発現するバクテリアの少なくとも1種の当該遺伝子に特異的にハイブリッド形成し、特異的にハイブリッド形成したオリゴヌクレオチド分子を検出することを可能とする条件である。好ましくは、バクテリアはE.coliまたはS.entericaである。より好ましくは、E.coliはO111またはO157血清型のものである。より好ましくは、S.entericaはC2またはB血清型のものである。好ましくは、この方法はポリメラーゼ連鎖反応法である。
より好ましくは、本発明方法に使用するオリゴヌクレオチド分子は標識したものである。さらにより好ましくは、ハイブリッド形成したオリゴヌクレオチド分子は電気泳動法により検出する。
【0057】
他の側面において、本発明は1以上の特定バクテリアO抗原の存在について患者由来サンプルを試験する方法に関し、該方法は少なくとも1対のオリゴヌクレオチド分子を有する該サンプルを以下の遺伝子に特異的にハイブリッド形成することのできる該対の少なくとも一方のオリゴヌクレオチド分子と接触させることからなる:(i)O抗原トランスフェラーゼをコードする遺伝子、または(ii)オリゴ糖もしくは多糖単位の輸送または処理工程のための酵素をコードする遺伝子、例えば、wzx またはwzy 遺伝子;この場合、当該遺伝子は特定O抗原の合成に関わる;適切な条件は、少なくとも一方のオリゴヌクレオチド分子が、サンプル中に存在する特定のバクテリアO抗原を発現するバクテリアの少なくとも1種のかかる遺伝子に特異的にハイブリッド形成し、特異的にハイブリッド形成したオリゴヌクレオチド分子を検出することを可能とする条件である。好ましくは、バクテリアはE.coliまたはS.entericaである。より好ましくは、E.coliはO111またはO157血清型のものである。より好ましくは、S.entericaはC2またはB血清型のものである。好ましくは、この方法はポリメラーゼ連鎖反応法である。より好ましくは、本発明方法に使用するオリゴヌクレオチド分子は標識したものである。さらにより好ましくは、ハイブリッド形成したオリゴヌクレオチド分子は電気泳動法により検出する。
【0058】
上記方法において理解されることは、オリゴヌクレオチドの対を用いる場合には、オリゴヌクレオチド配列の一方はトランスフェラーゼ、wzx またはwzy 遺伝子からのものではない配列にハイブリッド形成するということである。さらに、双方がこれら遺伝子産物の一つにハイブリッド形成する場合、それらはこれら遺伝子の同一または異なるものにハイブリッド形成することができる。
【0059】
さらに理解されることは、交差反応が問題となる場合、オリゴヌクレオチドの組合わせを選択し、遺伝子の組合わせを検出して特異性を与えてもよいということである。
【0060】
さらに本発明はバクテリア多糖抗原を発現するバクテリアの検出とこれらバクテリアのバクテリア多糖型の同定に使用することのできる診断キットに関する。
【0061】
このように、さらなる側面において、本発明は以下の遺伝子に特異的にハイブリッド形成することのできる第一核酸分子を収容する第一バイアルからなるキットに関する:(i)トランスフェラーゼをコードする遺伝子、または(ii)オリゴ糖もしくは多糖の輸送または処理工程のための酵素をコードする遺伝子、例えば、wzx またはwzy 遺伝子;この場合、当該遺伝子はバクテリア多糖類の合成に関わる。また、キットは同一または別個のバイアル中に以下の遺伝子に特異的にハイブリッド形成することのできる第二特異核酸を提供する:(i)トランスフェラーゼをコードする遺伝子、または(ii)オリゴ糖もしくは多糖の輸送または処理工程のための酵素をコードする遺伝子、例えば、wzx またはwzy 遺伝子;この場合、当該遺伝子はバクテリア多糖類の合成に関わり、この場合、第二核酸分子の配列は第一核酸分子の配列とは異なるものである。
【0062】
さらなる側面において、本発明は以下の遺伝子に特異的にハイブリッド形成することのできる第一核酸分子を収容する第一バイアルからなるキットに関する:(i)トランスフェラーゼをコードする遺伝子、または(ii)オリゴ糖もしくは多糖の輸送または処理工程のための酵素をコードする遺伝子、例えば、wzx またはwzy 遺伝子;この場合、当該遺伝子はバクテリアO抗原の合成に関わる。また、キットは同一または別個のバイアル中に以下の遺伝子に特異的にハイブリッド形成することのできる第二特異核酸を提供する:(i)トランスフェラーゼをコードする遺伝子、または(ii)オリゴ糖もしくは多糖の輸送または処理工程のための酵素をコードする遺伝子、例えば、wzx またはwzy 遺伝子;この場合、当該遺伝子はO抗原の合成に関わり、この場合、第二核酸分子の配列は第一核酸分子の配列とは異なるものである。好ましくは第一および第二核酸配列はE.coliから誘導されたものであるか、あるいは第一および第二核酸配列はS.entericaから誘導されたものである。
【0063】
本発明者らはO157遺伝子クラスターの全長配列を初めて提供し、これまでクローン化されていなかった全遺伝子クラスターのこの配列から組換え分子を生成せしめ、発現のために挿入して、ワクチンなどの応用に有用な発現O157を提供することが可能であるとを認識する。
【0064】

定 義
「遺伝子から誘導される核酸分子」という語句は、該核酸分子が同定された遺伝子のすべてまたは一部と同一であるか実質的に類似するヌクレオチド配列を有することを意味する。このように、遺伝子から誘導される核酸分子は、同定された遺伝子から物理的分離法により単離される分子、または人工的に合成され、同定された遺伝子のすべてまたは一部と同一であるか実質的に類似するヌクレオチド配列を有する分子であってもよい。一部の研究者は遺伝子から転写されたmRNAと同一の配列をもつDNA鎖のみを考えるが、ここでは両鎖を意図している。
【0065】
トランスフェラーゼ遺伝子は、モノマー糖単位輸送用遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列保有核酸の領域である。
【0066】
フリッパーゼまたはwzx 遺伝子は、一般に3ないし6個のモノマー糖単位からなるオリゴ糖繰返し単位を膜の外表面に移動させる遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列保持核酸の領域である。
【0067】
ポリメラーゼまたはwzy 遺伝子は、一般に3ないし6個のモノマー糖単位からなる繰返しオリゴ糖単位を重合する遺伝子産物をエンコードするヌクレオチド配列保持核酸の領域である。
【0068】
本明細書において提供されるヌクレオチド配列は、アンチセンス配列として一覧した配列に記載する。この用語は生化学用語集および分子生物学、改訂版、ダビッド・エム・グリック(David M. Glick) 、1997、ポートランドプレス(株)、ロンドン、11頁に用いられているものと同じ様式で用いる;当該文献ではこの用語が二重鎖DNAの二本鎖の一方を言及するものとして記載しているが、通常これはmRNAと同じ配列をもつ。我々はmRNAと同一の配列を有するこの鎖を記載するためにこれを用いる。
命名法
E.coli O111rfbの同義語
現行名 発明者命名 バスチンら1991
wbdH orf 1
gmd orf 2
wbdI orf 3 orf 3.4*
manC orf 4 rfbM*
manB orf 5 rfbK*
wbdJ orf 6 orf 6.7*
wbdK orf 7 orf 7.7*
wzx orf 8 orf 8.9 およびrfbX*
wzy orf 9
wbdL orf 10
wbdM orf 11
* 命名はバスチン(Bastin D. A.)ら、1991、「E.coli O111 株のO抗原決定rfb遺伝子クラスターのE.coli K-12 での分子クローニングおよび発現」、Mol. Microbiol. 5:9 、2223〜2231による。
他の同義語
wzy rfc
wzx rfbX
rmlA rfbA
rmlB rfbB
rmlC rfbC
rmlD rfbD
glf orf 6*
wbbI orf 3#, E.coli K-12 のorf 8*
wbbJ orf 2#, E.coli K-12 のorf 9*
wbbK orf 1#, E.coli K-12 のorf 10*
wbbL orf 5#, E.coli K-12 のorf 11*
# 命名はヤオおよびバルバノ(Yao, Z. and M. A. Valvano)1994による。
E.coli K-12 W3110 のO−特異リポ多糖生合成領域(rfb)の遺伝子分析:シゲラ・フレクスネリ血清型Yおよび4aに群特異性を付与する遺伝子の同定」。J. Bacteriol. 176:4133〜4143。
* 命名はスティブンソン(Stevenson)ら、1994、による。「E.coli K-12 のO抗原の構造およびそのrfb 遺伝子クラスターの配列」。J. Bacteriol.176: 4144〜4156。
S.entericaは1987年に採り入れられた名称であり、多くの他の名称、例えば、サルモネラ・ティフィおよびサルモネラ・ティフィミリウムに置き換わっている。従来の種名はS.enterica sv ティフィなどの血液型亜型(serovar)名となっている。しかし、伝統的な名称はなお広く用いられている。
・ 多くの種のO抗原遺伝子はrfb 名(rfbAなど)を付与され、O抗原遺伝子クラスターはしばしばrfb クラスターと言われてきた。rfb 遺伝子に対する新しい名称は表に示したとおりである。本明細書では情報源に従い両方の用語を使用している。

【発明を実施するための最良の形態】
【0069】
[実施例]
材料および方法−第1部
E.coli O111O抗原遺伝子クラスター(3,021〜9,981 位)の単離および特徴づけのための実験手順は、Bastin D.A. ら、1991「E.coli O111 株のO抗原を決定するrfb 遺伝子クラスターの分子クローニングおよびEscherichia coli K-12における発現」Mol. Microbiol. 5:9 2223-2231 、ならびにBastin D.A. およびReeves,P.R. 1995 「Escherichia coli O111 のO抗原遺伝子(rfb)群の配列および分析」Gene 164:17-23に従う。
【0070】

A.バクテリア株および増殖培地
バクテリアを、必要とされるように補充したLuriaブロス中で増殖した。
【0071】

B.コスミドおよびファージ
宿主株x2819 中のコスミドを、インビボで再パッケージングした。細胞を、中程度に振とうしながら、30°Cにて、30mLの培養液を含有する250mL フラスコ中で、580nm で0.3 の最適密度に増殖した。欠陥λプロファージを、45°Cで15分間、水浴中で加熱し、続いて37°Cで、勢いよく振とうしながら、2時間、インキュベーションすることによって誘導した。次いで、細胞を0.3mL クロロホルムを添加し、そしてさらに10分間振とうして溶解した。細胞残渣を、マイクロ遠心分離機中、5分間のスピンによって1mLの溶解物から除去し、そして上清を、新しいマイクロ遠心チューブに回収した。1滴のクロロホルムを添加し、次いで、チューブ内容物の全体を勢いよく攪拌した。
【0072】

C.DNA 調製
染色体DNA を、30mLの容量のLuria ブロス中で37°Cにて一晩増殖したバクテリアから調製した。遠心分離によって細胞を採集した後、洗浄し、そして10mLの50mM Tris-HCl pH8.0 中に再懸濁した。EDTAを添加し、そして混合物を20分間インキュベートした。次いで、リゾチームを添加し、インキュベーションをさらに10分間継続した。次いで、プロテイナーゼK、SDS 、およびリボヌクレアーゼを添加し、その混合物を溶解が生じる2時間インキュベートした。全てのインキュベーションは37°Cであった。次いで、混合物を65°Cに加熱し、そして8mLのフェノールで、同じ温度にて、1回抽出した。混合物を、5mLのフェノール/クロロホルム/イソアミルアルコールで、4°Cにて、1回抽出した。残存するフェノールを、2回のエーテル抽出によって除去した。DNA を、2容量のエタノールで、4°Cにて沈殿させ、スプールし、そして70% エタノール中で洗浄し、1〜2mLのTE中に再懸濁し、そして透析した。プラスミドおよびコスミドDNA を、BironboimおよびDoly法[Birnboim, H.C. およびDoly, J.(1979)組換えプラスミドDNA をスクリーニングするための迅速なアルカリ抽出処理 Nucl. Acid Res. 7:1513-1523] の修飾によって調製した。培養物の容量は10mLであり、溶解物をフェノール/クロロホルム/イソ- アミルアルコールで抽出した後、イソプロパノールで沈殿した。ベクターとして使用されるプラスミドDNA を、1L の培養液中で増殖した細胞のアルカリ溶解後、連続的な塩化セシウム勾配において単離した。
【0073】

D.酵素および緩衝液
制限エンドヌクレアーゼおよびDNA T4リガーゼをBoehringer Mannheim (Castle Hill, NSW, Australia)またはPharmacia LKB (Melbourne, VIC Australia)から購入した。制限酵素を、推奨される市販の緩衝液中で使用した。
【0074】

E.遺伝子バンクの構築
M92 染色体DNA (Stoke W 株、Statens Serum Institut, 5 Artillerivej, 2300 Copenhagen S, Denmark )を、0.2U Sau3A1 で1〜15分間部分消化した。最も大きなが部分が約40〜50kbのサイズ範囲のフラグメントのアリコートを選択し、予めBamHI およびPvuII で消化したベクターpPR691にライゲートした。ライゲーション混合物を、パッケージング抽出物を用いて、インビトロでパッケージングした。形質導入のための宿主株はx2819 であり、組換え体をカナマイシンで選択した。
【0075】

F.血清学的な手順
コロニーを、イムノブロッティングによってO111抗原の存在についてスクリーニングした。コロニーを一晩、プレート当たり100 個まで増殖し、次いでニトロセルロースディスクに移し、0.5N HClで溶解した。Tween20 を、ブロッキング工程、インキュベーション工程、および洗浄工程のために、0.05% の最終濃度で、TBS に添加した。一次抗体は、1:800に希釈したE.coli O群111 抗血清であった。
二次抗体は、1:5000 に希釈した、西洋ワサビペルオキシダーゼで標識されたヤギ抗ウサギIgG であった。染色基質は、4-クロロ-1- ナフトール(napthol)であった。スライド凝集を、標準的な手順に従って行った。
【0076】

G.組換えDNA 法
制限マッピングは、1本鎖および2本鎖消化ならびにサブクローニングを含む標準的な方法の組み合わせに基づいた。完全なコスミドの欠失誘導体を、以下のように生成した:1.8 μg のコスミドDNA のアリコートを、20μl の容量において、0.25U の制限酵素で、5〜80分間消化した。各アリコートの2分の1を使用して、アガロースゲルにおいて、消化の程度をチェックした。フラグメントの代表的な範囲を与えるようであるサンプルを、4°Cで一晩ライゲーションし、CaCl2法によってJM109 に形質転換した。選択されたプラスミドを、同じ方法によってs φ174 に形質転換した。P4657 を、エレクトロポレーションによって、pPR1244 で形質転換した。
【0077】

H.DNA ハイブリダイゼーション
プローブDNA を、エレクトロエリューションによってアガロースゲルから抽出し、そして[α-32P]-dCTPを使用してニック翻訳した。染色体DNA またはプラスミドDNA を、0.8%アガロースゲルにおいて電気泳動し、ニトロセルロースメンブレンに移した。ハイブリダイゼーション緩衝液およびプレハイブリダイゼーション緩衝液は、低いまたは高いストリンジェンシーのプローブ化について、それぞれ、30% または50% のホルムアミドを含んだ。インキュベーション温度は、プレハイブリダイゼーションおよびハイブリダイゼーションについて、それぞれ、42°Cおよび37°Cであった。フィルターの低いストリンジェンシーの洗浄は、2×SSC および0.1% SDS中の3×20分間の洗浄からなった。高いストリンジェンシーの洗浄は、室温での2×SSC および0.1% SDS中の3×5分間の洗浄、58°Cでの1×SSC および0.1% SDS中の1時間の洗浄、ならびに58°Cでの0.1xSSC および0.1% SDS中の15分間の洗浄からなった。
【0078】

I.E.coli O111O抗原遺伝子クラスター(3,021〜9,981 位)のヌクレオチド配列決定
ヌクレオチド配列決定を、ABI 373 自動化シーケンサー(CA, USA )を使用して行った。3.30と7.90とのマップの位置の間の領域を、クローンpPR1270 およびpPR1272 由来の、PT7T3190において作製された欠失ファミリーの一方向性のエキソヌクレアーゼIII 消化を使用して、配列決定した。ギャップを、M13mp18 またはM13mp19 に選択されたフラグメントをクローニングすることによって、主に満たした。7.90〜10.2のマップの位置由来の領域を、M13mp18 またはM13mp19 における制限フラグメントから配列決定した。両方の領域における残りのギャップを、M13 またはファージミドにおける1本鎖DNA 鋳型を使用して、配列に沿って決定された位置に相補的な合成オリゴヌクレオチドから開始することによって満たした。近接する配列を分析した後に、オリゴヌクレオチドを設計した。全ての配列決定を、チェーンターミネイション法(chain termination method) によって行った。配列は、SAP[Staden,R.、1982「DNA 配列決定のショットガン法によって生成されるゲル読み取りデータのコンピューター操作の自動化」Nuc. Acid Res. 10:4731-4751 ;Staden,R.、1986「私たちの配列操作ソフトウェアの現在の状態および移植可能性(portability) 」Nuc. Acid Res. 14:217-231]を使用してアラインした。プログラムNIP[Staden,R. 1982 「核酸およびアミノ酸配列を比較およびアラインメントするための相互作用的なグラフプログラム」Nuc. Acid Res. 10:2951-2961]を使用して、オープンリーディングフレームを見出し、そしてこれらをタンパク質に翻訳した。
【0079】

J.E.coli O111O抗原遺伝子クラスターを保有するクローンの単離
E.coliO抗原遺伝子クラスターを、Bastin D.A. らの方法[1991 「E.coli O111 株のO抗原を決定するrfb 遺伝子クラスターの分子クローニングおよびEscherichia coli K-12 における発現」Mol. Microbiol. 5(9) 2223-2231] に従って、単離した。M92 染色体DNA のコスミド遺伝子バンクを、インビボパッケージング株x2819 において樹立した。遺伝子バンクから、3.3 ×103 個のコロニーを、イムノブロッティング手順を使用してE.coli O111 抗血清でスクリーニングし:5個のコロニー(pPR1054 、pPR1055 、pPR1056 、pPR1058 、およびpPR1287 )がポジティブであった。これらの株からのコスミドを、インビボで、λ粒子中にパッケージングし、そして全てのO抗原遺伝子を欠損するE.coli欠失変異体S φ174 に形質導入した。この宿主系統において、全てのプラスミドは、O111抗血清とのポジティブな凝集を与えた。5個の独立したコスミドのEco R1制限マップは、それらが共通して、約11.5kbの領域を有することを示した(図1)。コスミドpPR1058 は、O抗原遺伝子クラスターに連結されるいくつかの染色体マーカーを同定するために十分な隣接DNA を含んでいたのでO抗原遺伝子クラスター領域の分析のために選択した。
【0080】

K.コスミドpPR1058 の制限マッピング
コスミドpPR1058 を、2つの段階においてマップした。最初に予備的なマップを作製し、次いで0.00から23.10 のマップ位置間の領域を詳細にマップした。なぜなら、これがO111抗原発現について十分であることが示されたからである。両方の段階についての制限部位を、図2に示す。5個のコスミドクローンに共通の領域は、pPR1058 の1.35から12.95 のマップ位置間であった。
【0081】
pPR1058 内のO抗原遺伝子クラスターを位置づけるために、pPR1058 コスミドを、S.enterica LT2およびE.coli K-12 からのO抗原遺伝子クラスター隣接領域を覆うDNA プローブでプローブした。被膜多糖(cps)遺伝子は、O抗原遺伝子クラスターの上流にあり、一方、グルコン酸デヒドロゲナーゼ(gnd)遺伝子およびヒスチジン(his)オペロンは下流にあり、後者は、O抗原遺伝子クラスターからさらに遠くにあった。使用したプローブは、LT2 のgnd 遺伝子を保有するpPR472(3.35kb)、LT2 のcps 群の、cpsBおよびcpsGの2つの遺伝子を保有するpPR685(5.3kb)、ならびにK-12のhis オペロンの全てを保有するK350(16.5kb)であった。プローブは、以下のようにハイブリダイズした:pPR472は、12.95〜15.1のマップ位置に位置し得る、 pPR1246(pPR1058 に由来するHindIII/EcoRI サブクローン、図2)のPstIおよびHindIII 二重消化の1.55kbおよび 3.5kb(2.7kb のベクターを含む)フラグメントにハイブリダイズし;pPR685は、0.00〜3.05のマップ位置に位置する、pPR1058 の4.4kb EcoRI フラグメント(1.3kb のベクターを含む)にハイブリダイズし; K350 は、17.3〜45.90 のマップ位置に位置する、pPR1058 の32kb EcoRIフラグメント(4.0kb のベクターを含む)とハイブリダイズした。推定されるgnd 領域を含むサブクローンは、 gnd-edd- 株GB23152 を補完した。グルコン酸ブロモチモールブループレートにおいて、この宿主株におけるpPR1244 およびpPR1292 は、gnd+edd-遺伝子型が予測される緑色コロニーを与えた。his+表現型は、最小培地プレートにおけるhis 欠失株 Sφ174 おいてプラスミドpPR1058 によって回復され、プラスミドが完全なhis オペロンを保有することを示した。
【0082】
O抗原遺伝子クラスター領域は、E.coliおよびS.enterica株におけるように、gnd とcps との間に、従っておよそ3.05から12.95 のマップ位置間にあるようである。このことを確認するために、pPR1058 の欠失誘導体を、以下のように作製した:第1に、pPR1058 をHindIII で部分消化し、そしてセルフライゲーションした。形質転換体を、カナマイシン耐性について選択し、そしてO111抗原の発現についてスクリーニングした。2つのコロニーがポジティブな反応を与えた。EcoRI 消化は、2つのコロニーは、同一のプラスミドを集結することを示し、そのうちの1つを、pPR1230 と称し、これは0.00から23.10 のマップの位置まで伸長するインサートを伴った。第2に、pPR1058 を、SalIで消化し、そしてXhoIで部分消化し、そして適合する末端を再連結した。形質転換体を、カナマイシンで選択し、そしてO111抗原発現についてスクリーニングした。8個のポジティブに反応するクローンのプラスミドDNA を、EcoRI およびXhoI消化を使用して確認し、同一であるようであった。1つのコスミドを、pPR1231 と称した。pPR1231 のインサートは、0.00から15.10 のマップ位置間のDNA 領域を含んでいた。第3に、pPR1231 をXhoIで部分消化し、セルフライゲーションし、そして形質転換体を、ストレプトマイシン/ストレプトマイシンプレートにおいて選択した。クローンを、カナマイシン感受性についてスクリーニングし、そして10個を選択し、全ては、ベクター中のXhoI部位から4.00位でのXhoI部位までのDNA 領域が欠失された。
これらのクローンは、O111抗原を発現せず、4.00位でのXhoI部位は、O抗原遺伝子クラスター内にある。1つのクローンを選択し、pPR1288 と命名した。プラスミドpPR1230 、pPR1231 、およびpPR1288 を図2に示す。
【0083】

L. E.coli O111O抗原遺伝子クラスター(3,021〜9,981 位)ヌクレオチド配列データの分析
BastinおよびReeves[1995 「Escherichia coli O111 のO抗原遺伝子(rfb)群の配列および分析」Gene 164:17-23] は、3,021〜9,981 のマップ位置からのフラグメントを配列決定することによって、部分的に、E.coli O111O抗原遺伝子クラスターを特徴付けした。図3は、E.coli O111O抗原遺伝子クラスターの3,021〜9,981 位の遺伝子組織を示す。orf3およびorf6は、wcaHおよびwcaGとの非常に高いレベルのアミノ酸同一性を有し(それぞれ、46.3% および37.2%)、かつ機能においてE.coli K-12 colanic 遺伝子クラスターにおける糖生合成経路遺伝子に類似するようである。orf4およびorf 5は、manCおよびmanB遺伝子に、それぞれ、高レベルのアミノ酸相同性を示す。orf7は、abequose経路遺伝子であるrfbHと高いレベルの相同性を示す。orf8は、12個の膜貫通セグメントを有するタンパク質をコードし、他のwzx 遺伝子に二次構造における類似性を有し、それゆえ、O抗原flippase遺伝子であるようである。
【0084】

材料および方法−第2部
A.E.coli O111O抗原遺伝子クラスターの1〜3,020 および9,982〜14,516のヌクレオチド配列決定
新規なヌクレオチド配列を含んだサブクローンの、pPR1231 (0および1,510のマップの位置)、pPR1237 (-300〜2,744 のマップの位置)、pPR1239 (2,744〜4,168 のマップの位置)、pPR1245 (9,736〜12,007のマップの位置)、ならびにpPR1246 (12,007〜15,300のマップの位置)(図2)を、以下のように特徴付けた:pPR1237 、pPR1239 、およびpPR1245 のインサートの遠位末端を、ベクター中に位置するM13 正方向および逆方向プライマーを使用して、配列決定した。PCR ウォーキングを、配列データに基づくプライマーを使用して、各インサート内に、さらに配列決定するために行い、そしてプライマーを、配列決定のためにM13 正方向または逆方向プライマー配列でタギングした。このPCR ウォーキング手順を、全体のインサートが配列決定されるまで反復した。pPR1246 は、12,007〜14,516位を特徴付けた。これらのサブクローンのDNA を、両方の方向において配列決定した。配列決定反応を、ジデオキシターミネーション法および熱サイクルを使用して行い、そして反応産物を、蛍光染料およびABI 自動化配列決定器(CA, USA )を使用して分析した。
【0085】

B. E.coli O111O抗原遺伝子クラスター(配列番号1の1〜3,020 および9,982〜14,516位)ヌクレオチド配列データの分析
BastinおよびReeves[1995 「Escherichia coli O111 のO抗原遺伝子(rfb)群の配列および分析」Gene 164:17-23] によって特徴付けされなかったE.coli O111O抗原遺伝子クラスターの領域(1〜3,020 および9,982〜14,516位)の遺伝子組成を、図3に示す。領域1において、2つのオープンリーディングフレームが存在する。領域2において、4つのオープンリーディングフレームが予測される。各遺伝子の位置は、表5に列挙する。
【0086】
orf1(wbdH)の推定のアミノ酸配列は、Shigelladysenteriae のrfp 遺伝子のアミノ酸配列と、約64% の類似性を共有する。Rfp およびWbdHは、非常に類似の疎水性プロットを有し、両方とも、対応する位置において非常に確証的な予測される膜貫通セグメントを有する。rfp は、LPS コアの合成に関与するガラクトシルトランスフェラーゼであり、従って、wbdHは、ガラクトシルトランスフェラーゼ遺伝子であるようである。orf2は、E.coli K-12 colanic 酸遺伝子クラスターにおいて同定されたgmd 遺伝子に、アミノ酸レベルで85.7% の同一性を有し、gmd 遺伝子であるようである。orf9は、10個の予測される膜貫通セグメントおよび大きな細胞質ループを有するタンパク質をコードする。この内部膜の位相幾何学は、全ての公知のO抗原ポリメラーゼの特徴的な特徴であり、従って、orf9は、O抗原ポリメラーゼ遺伝子のwzy をコードするようである。orf10 (wbdL)は、Neisseria gonorrhoeae のLsi2との低い相同性を有する、推定のアミノ酸配列を有する。Lsi2は、リポオリゴ糖の合成においてGlcNAcをガラクトースに付加することを担う。従って、wbdLは、コリトース(colitose)またはグルコーストランスフェラーゼ遺伝子のいずれかであるようである。orf11 (wbdM)は、Yersiniaenterocholitica のTrsEと、高レベルのヌクレオチドおよびアミノ酸の類似性を共有する。TrsEは、推定の糖トランスフェラーゼであり、従って、wbdMは、コリトースまたはグルコーストランスフェラーゼをコードするようである。
【0087】
要約すると、3つの推定のトランスフェラーゼ遺伝子および1つのO抗原ポリメラーゼ遺伝子は、E.coli O111O抗原遺伝子クラスターの1〜3,020 および9,982〜14,516のマップの位置で同定された。GenBank のサーチは、3つの推定のトランスフェラーゼ遺伝子うちの2つおよびポリメラーゼ遺伝子について、ヌクレオチド配列レベルで有意な類似性を有する遺伝子は存在しないことを示した。配列番号1および図7は、O111抗原遺伝子クラスターのヌクレオチド配列を提供する。
【0088】

材料および方法−第3部
A. E.coli O157 :H7株(Statens Serum Institut, 5 Artillerivej, 2300, Copenhagen S, Denmarkの株C664〜1992)由来のO157抗原遺伝子クラスターのPCR 増幅
E.coli O157O抗原遺伝子クラスターを、O抗原遺伝子クラスターのプロモーター領域において通常見出されるJumpStart 配列[Hobbsら、1994「JunpStart 配列:群化されるいくつかの多糖遺伝子に共通の39bpエレメント」Mol. Microbiol. 12:855-856] に基づく、一方のプライマー(プライマー番号412 :att ggt agt tgt aag cca agg gcg gta gcg t)、およびO抗原遺伝子クラスターの下流に通常見出されるgnd 遺伝子に基づく、他方のプライマー番号482 (cac tgc cat acc gac gac gcc gat ctg ttg ctt gg) とともに、long PCR[Chengら、1994、「クローン化されたインサートおよびヒトおよびゲノムDNA からの長い標的の効率的な増幅」、P.N.A.S. USA 91:5695-569] を使用することによって、増幅した。Long PCRを、Boehringer Mannheim (Castle Hill NSW Australia)からのExpand Long Template PCR System を使用して行い、そしていくつかの反応からの14kbの長さの生成物を、合わせ、そしてPromega Wizard PCRプレップDNA 精製系(Madison WI USA)を使用して精製した。次いで、PCR 産物をフェノールで、そしてエーテルで2回、抽出し、70% エタノールで沈殿し、そして40μL の水中に再懸濁した。
【0089】

B. ランダムなDNアーゼI バンクの構築:
約150ng のDNA を含有する2つのアリコートを、それぞれ、記載されるように改変したプロトコルを用いて、Novagen DNアーゼI Shotgun Cleavage(Madison WI USA)を使用するDNアーゼ消化に供した。各アリコートを、45μl の0.05M Tris-HCl(pH7.5)、0.05mg/mL BSA 、および 10mM MnCl2 中に希釈した。同じ緩衝液中の5μL の1:3000または1:4500希釈のDNアーゼI (Novagen)(Madison WI USA)を、各チューブにそれぞれ添加し、そして10μlの停止緩衝液(100mM EDTA)、30%グリセロール、0.5% Orange G、0.075%キシレンおよびシアノール(Novagen)(Madison WI USA)を、15°Cで5分間のインキュベーション後に添加した。次いで、2つのDNアーゼI反応チューブからのDNA を合わせ、そして0.8% LMTアガロースゲルにおいて分画し、そして約1kbの大きさのDNA を有するゲルセグメント(約1.5mL アガロース)を切り出した。DNA を、Promega Wizard PCR Preps DNA Purification (Madison WI USA)を使用して抽出し、そして200 μL の水中に再懸濁し、その後、フェノールで、およびエーテルで2回、抽出し、そして沈殿させた。次いで、DNA を、17.25 μL の水中に再懸濁し、そしてT4DNA ポリメラーゼ修復、およびNovagen Single dA Tailing Kit (Madison WI USA)を使用する単一のdAテイル化に供した。次いで、反応混合物(約8ng DNA を含有する85μl)を、クロロホルム:イソアミルアルコール(24:1)で、1回抽出し、そして100 μL の全容量中で、3×10-3pmol pGEM-T (Promega)(Madison WI USA)にライゲーションした。ライゲーションを、一晩、4°Cで行い、そしてライゲーションされたDNA を沈殿させ、そして20μL の水中に再懸濁した後、E.coli株 JM109にエレクトロポレートし、そしてBCIG-IPTG プレート上に播き、そしてバンクを得た。
【0090】

C. 配列決定
バンクのクローンからのDNA 鋳型を、Advanced Genetic Technologies Corpからの96ウェル形式のプラスミドDNA ミニプレップキットを使用して、配列決定のために使用した。これらのクローンのインサートを、pGEM-Tベクター中に位置する標準的なM13 配列決定プライマー部位を使用して、一方または両方の末端から配列決定した。ABI Catalyst(CA USA)において配列決定反応を行った後、配列決定を、上記のように、ABI377自動化シーケンサー(CA USA)において行った。不十分な適用範囲の配列ギャップおよび領域を、既に得られた配列データに基づくプライマーを使用してO157染色体DNA から直接的にPCR 増幅し、そしてPCR プライマーに付着された標準的なM13 配列決定プライマー部位を使用して、配列決定した。
【0091】

D.E.coli O157O抗原遺伝子クラスターヌクレオチド配列データの分析
配列データを、Stadenのプログラム[Staden ,R.、1982「DNA 配列決定のショットガン法によって生成されるゲル読み取りデータのコンピューター操作の自動化」Nuc. Acid Res. 10:4731-4751 ;Staden,R.、1986「私たちの配列操作ソフトウェアの現在の状態および移植可能性」Nuc. Acid Res. 14:217-231 ;Staden, R. 1982 「核酸およびアミノ酸の配列を比較およびアラインメントするための相互作用的なグラフプログラム」Nuc. Acid Res. 10:2951-2961]を使用して、プロセスおよび分析した。図4は、E.coli O157O抗原遺伝子クラスターの構造を示す。12個のオープンリーディングフレームが、配列データから予測され、次いで、全てのこれらの遺伝子のヌクレオチドおよびアミノ酸の配列を、これらの遺伝子の潜在的な機能および特異性の同定のために、GenBank データベースをサーチするために使用した。各遺伝子の位置を、表6に列挙する。ヌクレオチド配列を、配列番号2および図8に示す。
【0092】
orf10 および11は、manCおよびmanBに高レベルの同一性を示し、それぞれ、manCおよびmanBと命名した。orf7は、E.coli colanic酸被膜遺伝子クラスターのgmd 遺伝子(Stevenson G.、K.ら、1996「細胞外多糖colanic 酸の生成を担う、Escherichia coli K-12 遺伝子クラスターの組成」J. Bacteriol. 178:4885-4893) に89% の同一性(アミノ酸レベルで)を示し、gmd と命名した。orf8は、E.coli colanic酸被膜遺伝子クラスターのwcaGに、ならびにYersiniaenterocolitica O8O抗原遺伝子クラスター(Zhang ,L.ら、1997「リポ多糖O抗原の分子的および化学的特徴付けおよびY.enterocolitica血清型08の病原性におけるその役割」Mol. Microbiol. 23:63-76)] の wbcJ (orf14.8)遺伝子に、それぞれ、79%および69% の同一性(アミノ酸レベルで)を示した。colanic 酸およびYersinia O8O抗原の両方は、O157O抗原のように、フコースを含んでいる。gmd 遺伝子産物の産物であるGDP-4-ケト-6- デオキシ-D- マンノースからのGDP-L-フコース合成に必要とされる、2つの酵素学的工程が存在する。しかし、近年、ヒトFXタンパク質が、wcaG遺伝子(その論文においてyefbとして言及される)と「有意な相同性」を有すること、およびFXタンパク質が、GDP-4-ケト-6- デオキシ-D- マンノースからGDP-L-フコースへの転換の両方の反応を行うことが、示された(Tonetti ,M ら、1996「ヒトFXタンパク質によるGDP-L-フコースの合成」、J. Biol. Chem. 271:27274-27279)。
【0093】
本発明者らは、このことは、これらの2工程を行うorf8について非常に強力な例を作製すると考え、および遺伝子をfc1 と命名することを提唱する。フコース含有配列について、3つのバクテリア遺伝子クラスター間で類似性の類似のレベルを有する遺伝子は、manB、manC、gmd 、およびfc1 以外は存在しないという観察は、両方の機能を保持する1つ酵素を支援するものである。
【0094】
orf5は、Vibro cholerae 01 のwbeE(rfbE)に非常に類似し、これは、GDP-4-ケト-6- デオキシ-D- マンノースをGDP-ペロサミン(perosamine)に転換する、ペロサミン合成酵素であると考えられる(Stroeher,U.H.ら 1995 「ペロサミン生合成についての推定の経路は、Vibro cholerae O1 のrfb 領域内にコードされる最初の機能である」Gene 166:33-42)。V.cholerae O1 およびE.coli O157O抗原は、それぞれ、ペロサミンおよびN-アセチル- ペロサミンを含む。V.cholerae O1 のmanA、manB、gmd 、およびwbeE遺伝子は、E.coli O157 遺伝子クラスターの遺伝子に有意な類似性を示す、V.cholerae O1 遺伝子クラスターの唯一の遺伝子であり、本発明者らは、V.choleraeのwbe の機能についてなされる予測を確認し、かつO157遺伝子クラスターのorf5が、GDP-ペロサミン合成酵素をコードすることを示すと考える。それゆえ、orf5は、per と命名される。orf5+約100bpの上流領域(4022〜5308位)は、Bilge, S.S. ら[1996 「粘着におけるEscherichia.coli O157-H7 O側鎖の役割およびrfb 遺伝子座の分析」Infect. Immun. 64:4795-4801]によって既に配列決定されている。
【0095】
orf12 は、アセチルトランスフェラーゼファミリー(Lin, W. ら、1994「StaphylococcusaureusにおけるI 型カプセル多糖の生合成に必要な遺伝子の配列分析および分子特徴付け」J.Bacteriol. 176:7005-7016)の種々のメンバーの約50アミノ酸の保存領域に非常に高いレベルの類似性を示し、本発明者らは、これは、GDP-ペロサミンをGDP-perNAcに転換するN-アセチルトランスフェラーゼであると考える。orf12 は、wbdRと命名された。遺伝子manB、manC、gmd 、fcl 、per 、およびwbdRは、全てのO157遺伝子クラスターの予測される生合成経路遺伝子を説明する。
【0096】
必要とされる残りの生合成工程は、UDP-Glc からのUDP-GalNAcの合成についてである。Yersiniaenterocoliticaにおいて、UDP-GalNAcは、ガラクトースエピメラーゼ(GalE)の相同体によってUDP-GlcNAcから合成され、そのため、galE様遺伝子が、Yersiniaenterocolitica O8 遺伝子クラスターにおいて存在することが、提唱されている(Zhang ,L.ら1997「リポ多糖O抗原の分子的および化学的特徴付け、ならびにYersiniaenterocolitica血清型O8の病原性におけるその役割」Mol. Microbiol. 23:63-76)。O157の場合において、遺伝子クラスター中にgalE相同体は存在せず、どのようにUDP-GalNacが合成されるのかは明らかでない。galオペロン中のgalE遺伝子によってコードされるガラクトースエピメラーゼは、UDP-Glc からUDP-Gal への転換に加えて、UDP-GlcNacからUDP-GalNAcの転換を行い得ることが考えられる。O157遺伝子クラスターにおいてUDP-GalNAc合成を担う任意の遺伝子は存在しないようである。
【0097】
orf4は、多くのwzx 遺伝子に類似性を示し、wzxと命名され、orf2は、他のwzy 遺伝子の予測されるタンパク質における二次構造の類似性を示し、そのため、wzy と命名される。
【0098】
orf1、orf3、およびorf 6遺伝子産物は、全て、トランスフェラーゼの特徴を有し、wbdN、wbdO、wbdPと、それぞれ命名された。O157O抗原は、4個の糖を有し、4つのトランスフェラーゼが予測される。作用する第1のトランスフェラーゼは、ウンデカプレノールリン酸上に糖リン酸を置くと思われる。この機能を行うことが知られる2つのトランスフェラーゼ、WbaP(RfbP)およびWecA(Rfe)はウンデカプレノールリン酸に、それぞれ、ガラクトースリン酸、N-アセチル- グルコサミンリン酸を転移する。これらの糖のいずれも、O157構造において存在しない。
【0099】
さらに、O157遺伝子クラスターの推定のトランスフェラーゼのいずれも、糖リン酸をウンデカプレノールリン酸に転移するWecAおよびWbaPにおいて見出され、かつ糖を、膜内に包埋されるウンデカプレノールリン酸に転移した任意のタンパク質に予測される膜貫通セグメントを有しない。
【0100】
GlucNac-P をウンデカプレノールリン酸に転移するWecA遺伝子は、腸内細菌共通抗原(ECA )遺伝子クラスターにおいて位置し、そしてこれは、大部分のおよびおそらく全てのE.coli株中で、ECA 合成について、ならびにOユニット中の第1糖としてGlcNAcを有する株における、O抗原合成について機能する。
【0101】
WecAは、Yersiniaenterocholitica O8O抗原について、ウンデカプレノールリン酸へのGalNAc-1-Pの付加のためのトランスフェラーゼとして作用するようであり(Zhang ,L.ら1997「リポ多糖O抗原の分子的および化学的特徴付けおよびYersiniaenterocolitica血清型08の病原性におけるその役割」Mol. Microbiol. 23:63-76)、そしてO157構造はGalNacを含むので、ここでもおそらくそうである。WecAはまた、E.coli 08 および09株においてグルコース-1-Pリン酸をウンデカプレノールリン酸に付加することが報告されており、そしてウンデカプレノールリン酸への第1の糖の転移についての代替の可能性は、O157O抗原中にグルコース残基が存在するので、グルコースのWecA媒介性の転移である。いずれの場合においても、トランスフェラーゼ遺伝子の必要な数が、GalNAcまたはGlc が、WecAによって転移される場合、および側鎖のGlc がO抗原遺伝子クラスターの外側のトランスフェラーゼによって転移される場合、存在する。
【0102】
orf9は、E.coli colanic酸被膜遺伝子クラスターのwcaH遺伝子と高レベルの類似性(アミノ酸レベルで44% 同一性、同じ長さ)を示す。この遺伝子の機能は知られておらず、本発明者らは、orf9に、wbdQの名称を与えた。
【0103】
manBとwdbRとの間のDNA は、E.coli K12のH反復単位の1つと強力な配列類似性を有する。この領域に隣接する反転される反復配列は共に、なお認識可能であり、それぞれ、11塩基のうちの2塩基が変化されている。H反復関連タンパク質をコードする、この領域内に位置する遺伝子は、267 塩基の欠失および種々の位置における変異を有する。H反復単位は、遺伝子クラスターに転座され、おそらく、他の場合において提唱されているように、遺伝子クラスターのアセンブリにおいて役割を果たすことから、長期間、この遺伝子クラスターと関連づけられてきたようである。
【0104】

材料および方法−第4部
トランスフェラーゼのO抗原遺伝子、およびwzx 、wzy 遺伝子が、診断的なPCR について、経路遺伝子よりも特異的であるという、本発明者らの仮説を試験するために、本発明者らは先ず、全てのE.coli O16O抗原遺伝子についてのプライマーを使用して、PCR を行った(表4)。次いで、PCR を、E.coli O111 トランスフェラーゼ、wzx 、およびwzy の遺伝子のPCR プライマーを使用して行った(表5、5A)。PCR をまた、E.coli O157 トランスフェラーゼ、wzx 、およびwzyの遺伝子のPCR プライマーも使用して行った(表6、6A)。
【0105】
Statens Serum Institut, 5 Artillerivej, 2300 Copenhagen, Denmark から入手可能なE.coliの166 個の血清型からの染色体DNA を、Promega Genomic (Madison WI USA)単離キットを使用して単離した。164 個の血清群が、Ewing W.H.:Edards およびEwing 「腸内バクテリアの同定」Elsevier、Amsterdam 1986によって記載されること、およびそれらが1〜171 の番号を付され、番号31、47、67、72、93、94、および122 はもはや有効ではないことに注意されたい。2つの血清群19株のうち、本発明者らは19ab株F8188-41を使用したLior H. 1994[ 「家畜およびヒトにおけるEschericia. Coli」、31〜72頁、Eschericia. coliの分類、C.L. Gyles CAB internationalによる編集] は、さらに2つの番号付けされた172 および173 アミノ酸を付加し、使用される166 個の血清群を与えた。プール当たり、DNA の5〜8個のサンプルを含有するプールを作製した。プール番号1〜19(表1)を、E.coli O111 およびO157アッセイにおいて使用した。プール番号20〜28をまた、O111アッセイにおいて使用し、プール番号22〜24は、E.coli O111 DNA を含み、そしてポジティブコントロールとして使用した(表2)。プール番号29〜42をまた、O157アッセイにおいて使用し、またプール番号31〜36は、E.coli O157 DNA を含有し、ポジティブコントロールとして使用した(表3)。プール番号2〜20、30、43、および44を、E.coli 016アッセイに使用した(表1〜3)。プール番号44は、E.coli K-12 株C600およびWG1 のDNA を含み、そしてそれらの間で、それらが全てのE.coli K-12 016 O抗原遺伝子を有するので、ポジティブコントロールとして使用した。
【0106】
PCR 反応を、以下の条件下で行った:変性、94°C/30 秒間;アニーリング、種々の温度(表4〜8に言及)/30 秒間;伸長、72°C/ 1分間;30サイクル。PCR反応を、各プールについて、25μL の容量において行った。PCR 反応後、各プールからの10μL のPCR 産物を、アガロースゲルにおいて泳動して、増幅されたDNA について確認した。
【0107】
E.coliおよびS.enterica染色体DNA サンプルを、染色体DNA の存在についてゲル電気泳動によって、および各E.coli K12またはSalmonella enterica LT2 に基づくオリゴヌクレオチドを使用する、E.coliまたはS.enterica mdh遺伝子のPCR 増幅によって[Boyd ら(1994)「Escherichia coliおよびSalmonella enterica の天然の集団におけるマレイン酸デヒドロゲナーゼ(mdh )における、対立遺伝子多型の分子遺伝学的な基礎」Proc. Nat. Acad. Sci. USA 91:1280-1284] 、確認した。他のバクテリアからの染色体DNA サンプルは、染色体DNA のゲル電気泳動によって確認したのみであった。
【0108】

A. E.coli O16O抗原遺伝子クラスター配列に基づくプライマー
E.coli O16のO抗原遺伝子クラスターは、O111の配列決定の前に十分に配列決定されていた、唯一の典型的なE.coliO抗原遺伝子クラスターであり、本発明者らはそれを仮説の試験のために選んだ。各遺伝子についての1対のプライマーを、E.coli染色体DNA のプール2〜20、30、および43に対して試験した。各遺伝子についてのプライマー、アニーリング温度、および機能的な情報を、表4に列挙する。
【0109】
5つの経路遺伝子について、rmlB、rmlD、rmlA、rmlC、およびglf について、それぞれ、17/21 、13/21 、0/21、0/21、0/21のポジティブプールが存在した(表4)。wzx 、wzy 、および3つのトランスフェラーゼ遺伝子について、試験したE.coli染色体DNA の21個のプールの間にポジティブは存在しなかった(表4)。各場合において、番号44プールが、ポジティブな結果を与えた。
【0110】

B.E.coli O111 O抗原遺伝子クラスター配列に基づくプライマー
O111のトランスフェラーゼ、wzx およびwzy 遺伝子のそれぞれの、1〜4個のプライマー対をE.coli染色体DNA のプール1〜21に対して試験した(表5)。wbdHについて、この遺伝子の様々な領域に結合する4個のプライマーの対を試験したところ、試験したE.coli染色体DNA の任意のそれらの21個のプールにおいて、正確な大きさの増幅DNA は存在しなかったので、O111に特異的であることが見出された。wbdMについて3対のプライマーを試験し、それらはすべて、特異的であるが、プライマー番号985/番号986 は、1つのプールから間違った大きさのバンドを生成した。wzx についての3つのプライマーの対を試験したところ、それらはすべて特異的であった。wzy について2つのプライマーの対を試験し、両方とも特異的であるが、番号980/番号983 は、全てのプールにおいて間違った大きさのバンドを与えた。wbdLについて1つのプライマーの対を試験し、そして非特異的であることが見出され、それゆえさらなる試験を行わなかった。従って、wzx、wzy 、および3つのトランスフェラーゼのうちの2つの遺伝子は、O111に非常に特異的である。増幅されたDNA において見出された間違った大きさのバンドは、E.coliにおいて広範に存在する遺伝子の偶然のハイブリダイゼーションに起因すると推定される。各遺伝子についてのプライマー、アニーリング温度、および位置は、(表5)にある。
【0111】
O111アッセイを、O抗原を発現するYersiniapseudotuberculosisShigellaboydii、およびSalmonellaenterica株からのDNA を含むプールを使用しても行った(表5A )。wbdH、wzx 、wzy 、またはwbdM由来のいずれのオリゴヌクレオチドも、これらのプールと正確な大きさに増幅されたDNA を与えなかった。特に、プール番号25は、E.coli O111 と同じO抗原を有するS.enterica Adelaide を含み:このプールは、試験した任意のプライマーについてポジティブなPCR の結果を与えず、このことは、これらの遺伝子がE.coli O111 に非常に特異的であることを示す。
【0112】
wbdH、wzx 、wzy 、およびwbdMに結合する12対のそれぞれは、O111 DNAを含有するプール(プール番号22〜24)と、予測されるバンドを生成する。プール22〜24は、プール21に存在する全ての株からのDNA +O111株DNA を含んだので(表2)、本発明者らは、12対のプライマーは全て、3つの未関連のO111株のそれぞれとポジティブなPCR 試験を与えるが、試験した任意の他の株とはポジティブなPCR 試験を与えないと結論した。従って、これらの遺伝子は、E.coli O111 に非常に特異的である。
【0113】

C. E.coli O157 O抗原遺伝子クラスター配列に基づくプライマー
O157のトランスフェラーゼ、wzx およびwzy 各遺伝子の2または3つのプライマー対を、プール1〜19、29、および30のE.coli染色体DNA に対して試験した(表6)。wbdNについて、この遺伝子の種々の領域に結合する3つのプライマーの対を試験し、そして試験したE.coli染色体のこれらの21個のプールのいずれにおいてもDNA は増幅されなかったので、O157について特異的であることが見出された。wbdOについての3つのプライマー対を試験し、そしてこれらは全て特異的であったが、番号1211/ 番号1212は、全てのプールから間違った大きさの2つまたは3つのバンドを生成した。3つのプライマーの対を、wbdPについて試験し、これらは全て特異的であった。2つのプライマーの対をwbdRについて試験し、そしてこれらは全て特異的であった。wzy について、3つのプライマーの対を試験し、そして全て特異的であったが、プライマー対番号1203/ 番号1204は、各プールにおいて間違った大きさの1つまたは3つのバンドを生成した。wzx について、2つのプライマーの対を試験し、両方とも特異的であったが、プライマー対番号1217/ 番号1218は、2つのプールにおいて間違った大きさの2つのバンド、および7つのプールにおいて間違った大きさの1つのバンドをを生成した。増幅されたDNA において見出される間違った大きさのバンドは、E.coliに広範に存在する遺伝子の偶然のハイブリダイゼーションに起因すると推定される。各遺伝子についてのプライマー、アニーリング温度、および機能情報は、表6にある。
【0114】
O157アッセイを、O抗原を発現するYersiniapseudotuberculosisShigellaboydiiYersiniaenterocolitica 09 、Brucellaabortus およびSalmonellaenterica株からのDNA を含む、プール37〜42を使用して行った。プライマー対番号1203/ 番号1204が、Y.enterocolitica 09 と2つのバンドを生成し、バンドの一方が、ポジティブコントロール由来のDNA と同じサイズであったことを除いては、wbdN、wzy 、wbdO、wzx 、wbdP、またはwbdR由来のオリゴヌクレオチドのいずれも、これらのプールと特異的に反応しなかった。プライマー対番号1203/ 番号1204は、wzy に結合する。Wzy のタンパク質の予測される二次構造は、全体に類似するが、配列決定されたwzy 遺伝子間のアミノ酸またはDNA レベルでの類似性は非常に低い。従って、Y.enterocolitica O9 は、E.coli O157 のwzy 遺伝子に密接に関連するwzy 遺伝子を有することが考えられる。このバンドは、他の2つのwzy プライマー対(番号1205/ 番号1206および番号1207/ 番号1208)が、Y.enterocolitica 09 とバンドを全く生成しなかったので、別の遺伝子の偶然のハイブリダイゼーションに起因することも考えられる。特に、プール番号37は、E.coli O157 と同じO抗原を有するS.enterica Landau を含み、プール38および39は、E.coli O157 と血清学的に交差反応するB.abortus およびY.enterocolitica 09 を含む。この結果は、これらの遺伝子は、1つのプライマー対は、Y.enterocolitica 09 と交差反応した可能性があるものの、O157に非常に特異的であることを示す。
【0115】
wbdN、wzx 、wzy 、wbdO、wbdP、およびwbdRに結合する16対のそれぞれは、O157 DNAを含有するプール(プール番号31〜36)と予測される大きさのバンドを生成する。プール29はO157株DNA 以外にプール31〜36に存在する全ての株由来のDNA を含んでいたので(表3)、本発明者らは、16個のプライマーの対の全てが、5つの未関連のO157株のそれぞれとポジティブなPCR 試験を与えると結論した。
【0116】
従って、遺伝子wbdN、wzy 、wbdO、wzx 、wbdP、およびwbdRに基づくプライマーを使用するPCR は、E.coli O157 に非常に特異的であり、6つの未関連のO157株のそれぞれとポジティブな結果を与えるが、1つのプライマー対のみが、E.coli O157 と血清学的に交差反応することが知られるO抗原を有する3つの株のうちの1つと予測される大きさのバンドを与えた。
【0117】

D.Salmonella enterica 血清型C2およびB O抗原遺伝子クラスター配列に基づくプライマー
本発明者らはまた、S.enterica C2 およびB 血清群のトランスフェラーゼ、wzx 、およびwzy の遺伝子についてのプライマーを使用してPCR を行った(表7〜9)。C2およびB O抗原遺伝子クラスターのヌクレオチド配列を、配列番号3(図9)および配列番号4(図10)として、それぞれ列挙する。Salmonella enterica の全ての46個の血清型由来の染色体DNA (表9)を、Promega 遺伝子単離キットを使用して単離し、プール当たり4〜8サンプルの7プールを作製した。Salmonella enterica 血清型B またはC2 DNAは、46個のそれぞれの血清型のプライマーを試験するためのプールから省略したが、ポジティブコントロールとしての使用のために6つの他のサンプルを含有するプールに添加し、プール番号8を与えた。
【0118】
PCR 反応を、以下の条件下で行った:変性、94°C/30 秒間;アニーリング、種々の温度(以下を参照)/30 秒間;伸長、72°C/ 1分間;30サイクル。PCR 反応を、各プールについて25μL の容量において行った。PCR 反応後、各プールからの10μL のPCR 産物を、アガロースゲルにおいて泳動して、増幅されたDNA について確認した。正確な大きさのバンドを与えるプールについて、そのプールの個々の染色体サンプルを使用して、PCR を反復し、アガロースゲルにおいて泳動して、各サンプルから増幅されたDNA について確認した。
【0119】
Salmonella enterica 血清型B O抗原遺伝子クラスター(LT2 株の)は、完全に配列決定された最初のO抗原遺伝子であり、各遺伝子の機能は実験的に同定されている[Jiang,X.M.、Neal, B.、Santiago,F.、Lee, S.J. 、Romana, L.K.、およびReeves,P.R.(1991)、「Salmonella serovar typhimurium(LT2 株)のrfb (O抗原)遺伝子クラスターの構造および配列」Mol. Microbiol. 5(3)、695-713 ;Liu, D. 、Cole,R.、およびReeves、P.R.(1996)「Wzx (Rfbx)についてのO抗原プロセシング機能:O-単位フリッパーゼについての有望な候補」、178(7)、2102-2107 ;Liu 、D.、Haase, A.M. 、Lindqvist ,L.、Lindberg, A.A.、およびReeves, P.R.(1993)、「S. enterica におけるO抗原生合成のグリコシルトランスフェラーゼ:群B 、C2、およびE1のトランスフェラーゼ遺伝子の同定および特徴づけ」J. Bacteriol. 、175 、3408-3413 ;Liu 、D.、Lindquist, L. 、およびReeves P.R. (1995)、「Salmonella enterica におけるO-抗原生合成のトランスフェラーゼ:群B およびC2のジデオキシヘキソシルトランスフェラーゼ、ならびに群C2のアセチルトランスフェラーゼ」J. Bacteriol. 、177、4084-4088 ;Romana, L.K.、Santiago, F.S.、およびReeves, P.R.(1991)「Salmonella serovar typhimurium LT2からのd チミジン- ジホスホ-D- グルコース4 ,6 デヒドラーゼ(rfbB)の高レベルの発現および精製」BBRC、174 、846-852]。経路遺伝子およびwbaPのそれぞれについての1つのプライマーの対を、Salmonella enterica DNA のプールに対して試験し、他のトランスフェラーゼおよびwzx の遺伝子のそれぞれについての2〜3つのプライマーの対をも試験した。各遺伝子のプライマーおよび機能的な情報、ならびに各プライマーの対についてのPCR 反応のアニーリング温度のリストについて、表8を参照のこと。
【0120】
群B LT2 株の経路遺伝子について、rm1B、rm1D、rm1A、rm1C、ddhD、ddhA、ddhB、ddhC、abe 、manC、およびmanBについて、それぞれ、19/45 、14/45 、15/45 、12/45 、6/45 、6/45 、6/45 、6/45 、1/45 、9/45 、8/45 がポジティブであった(表9)。
【0121】
LT2 wzx 遺伝子について、本発明者らは、3つのプライマー対を使用し、それぞれ、1/45のポジティブを与えた。4つのトランスフェラーゼ遺伝子について、本発明者らは、合計9つのプライマー対を使用した。wbaVについての2つのプライマー対は、2/90のポジティブを与えた。wbaNの3つのプライマー対について、11/135が、ポジティブな結果を与えた。wbaPプライマー対について、10/45 が、ポジティブな結果を与えた(表9)。
【0122】
実験データは、wzx およびwbaV群BO抗原遺伝子に由来するオリゴヌクレオチドが、O群67以外の45個全てのSalmonella entericaO抗原群の間で、群BO抗原に特異的であることを示す。Salmonella enterica B 群のwbaNおよびwbaU遺伝子由来のオリゴヌクレオチドは、B 群O抗原を検出し、そしてまた、群A 、D1、およびD3とポジティブな結果を生成した。WbaUは、マンノースα(1-4 )マンノース結合についてのトランスフェラーゼをコードし、群A 、B 、D1において発現されるが、wbaNは、ラムノースα(1-3 )ガラクトース結合についてのトランスフェラーゼをコードし、群A 、B 、D1、D2、D3、およびE1に存在する。このことは、群B wbaUおよびwbaN遺伝子とのポジティブな結果を説明する。群E およびD2のwbaN遺伝子は、群A 、B 、D1、およびD3のwbaN遺伝子の配列とかなりの配列の差異を有し、このことは、群B 、D1、およびD3のみとのポジティブな結果を説明する。
【0123】
wzx およびトランスフェラーゼ遺伝子に由来するSalmonella enterica B プライマーは、Salmonella enterica 067 とポジティブな結果を生成した。本発明者らは、Salmonella enterica 067 は、群BO抗原群の遺伝子を全て有することを見出した。この知見についてはいくつかの可能性のある説明があり、遺伝子クラスターが、変異に起因して機能せず、および群067 の抗原性は、別の抗原に起因するか、または合成後に改変され、それによってその抗原性が変化されるという可能性を含む。それゆえ、Salmonella enterica 067 は、PCR 診断アッセイにおいてSalmonella enterica 群B として評価される。しかし、Salmonella enterica 067 は、まれなO抗原であり、2324個の公知の血液型亜型体のわずか1つ(血液型亜型交差体(serovar Crossness ))が、067 血清型を有するだけであり[Popoff M.Y. ら(1992)「Salmonella enterica 血液型亜型の抗原処方」第6改定版、Salmonella enterica に対する参照および研究のためのWHO共同研究センター、パスツールパリフランス研究所] 、かつ血液型亜型交差体は、一度単離されたのみである[M. Propoff の私信] ので、これはほとんど重要でない。
【0124】
wbaP由来のSalmonella enterica B プライマーは、群A 、C2、D1、D2、D3、E1、54、55、67、およびE4O抗原群と反応した。WbaPは、脂質キャリア、ウンデカプレノールリン酸へのガラクトースリン酸の転移によってO 単位合成を開始するガラクトシルトランスフェラーゼをコードする。この反応は、いくつかのO抗原の合成に共通である。wbaPは、O抗原内に結合を作製しないので、それ自体で本発明の他のトランスフェラーゼから区別される。
【0125】
本発明者らはまた、血清型C2のwzx 、wzy 、および5つのトランスフェラーゼの遺伝子についての20個のプライマー対を試験し、そして7つのプールの全てにおいてポジティブは見出されなかった(表7)。
【0126】
群A 、B 、D1、D2、D3、C2、およびE1は、一般に多くの遺伝子を共有する。これらの遺伝子のいくつかは、1つよりも多い配列とともに生じ、この場合において、各特異的な配列は、それが生じる血清群の1つに因んで名付けられる。これらの配列特異性の分布を、表10に示す。本発明者らは、Salmonella enterica のwzy 、wzx 遺伝子、およびトランスフェラーゼの遺伝子のヌクレオチド配列をアラインし、それによってSalmonellaenterica群A 、B 、D1、D2、D3、C2、およびE1を特異的に検出および同定するために使用され得る核酸分子の特定の組み合わせを決定した(表10)。結果は、多くのO抗原群が、単一の特異的な核酸分子を使用して検出および同定され得るが、他の群、特にD2およびE1、ならびにA およびD1は、遺伝子の組み合わせに由来する核酸分子のパネルを必要とすることを示す。
【0127】
食品、患者、および糞便由来のサンプルを含む特定のサンプル型の試験に関して、本発明の方法を行う際に、サンプルは、DNA ベースの試験についてこのようなサンプルを調製するにおいて日常的に使用される、日常的な技術によって調製されることを理解されたい。

【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】はE.coli O111 O抗原遺伝子クラスターのサブクローンであるコスミドクローンpPR1054 、pPR1055 、pPR1056 、pPR1058 、pPR1287 のE.coli R1 制限地図を示す。太線は全クローンに共通の領域である。破線は染色体上の非連続な部分を示す。E.coli株M92の推定制限地図を上方に示す。
【図2】はコスミドクローン pPR1058内のE.coli O111 O抗原遺伝子クラスターの制限地図化分析を示す。制限酵素は以下のとおり:B:Bam1;Bg: Bg1II ;E:E.coR1;H: HindIII;K: KpnI ;P: PstI ;S: Sa1I ;およびX: Xho1 。プラスミドpPR1230 、pPR1231 、およびpPR1288 はpPR1058 の欠失誘導体である。プラスミドpPR1237 、pPR1238 、pPR1239 およびpPR1240 はpUC19 内にある。プラスミドpPR1243 、pPR1244 、pPR1245 、pPR1246 およびpPR1248 はpUC18 内にあり、pPR1292 はpUC19 にある。プラスミドpPR1270 はpT7T319Uにある。プローブ1、2および3はそれぞれ pPR1246、pPR1243 およびpPR1237の内部フラグメントとして単離した。点線はサブクローンDNAが地図の左に伸長してベクターに結合していることを示す。
【図3】はE.coli O111 O抗原遺伝子クラスターの構造を示す。
【図4】はE.coli O157 O抗原遺伝子クラスターの構造を示す。
【図5】は血清群C20 O抗原遺伝子クラスターをエンコードするS.enterica遺伝子座の構造を示す。
【図6】は血清群BO抗原遺伝子クラスターをエンコードするS.enterica遺伝子座の構造を示す。
【図7】はE.coli O111 O抗原遺伝子クラスターのヌクレオチド配列を示す。注:(1)遺伝子の先端および末尾の3塩基はそれぞれ下線とイタリック体で示す;(2)バスチンおよびリーブス(Bastin and Reeves)(1995)、「E.coliO111のO抗原遺伝子(rfb)クラスターの配列と分析」、Gene164:17〜23)が以前に配列決定した領域に印を付ける。
【図8】はE.coli O157 O抗原遺伝子クラスターのヌクレオチド配列を示す。注:(1)遺伝子の先端および末尾の3塩基はそれぞれ下線とイタリック体で示す;(2)ビルジ(Bilge)ら[1996、「粘着におけるE.coliO157−H7側鎖の役割とrfb遺伝子座の分析」Inf. and Immun. 64: 4795〜4801]が以前に配列決定した領域に印を付ける。
【図9】はS.enterica血清群C2O抗原遺伝子クラスターのヌクレオチド配列を示す。注:(1)付与番号はブラウン(Brown)ら(1992)による。「サルモネラ血液型亜型ミュエンヒェン(株M67)のrfb遺伝子クラスターの分子分析:グループC2およびB間の多形性の遺伝的基礎」、Mol. Microbiol. 6:1385〜1394。(2)遺伝子の先端および末尾の3塩基はそれぞれ下線とイタリック体で示す。(3)グループBと異なるグループC2遺伝子クラスターの部分のみを配列決定し、ここに提示する。
【図10】はS.enterica血清群BO抗原遺伝子クラスターのヌクレオチド配列を示す。(1)付与番号はジアン(Jiang)ら(1991)による。「S.enterica血液型亜型 typhimurium(株LT2)のrfb (O抗原)遺伝子クラスターの構造と配列」、Mol. Microbiol. 5: 695〜713 。O抗原遺伝子クラスターの最初の遺伝子は塩基4099から始まるrm1Bである。(2)遺伝子の先端および末尾の3塩基はそれぞれ下線とイタリック体で示す。
【0129】
【表1−1】

【0130】
【表1−2】

【0131】
【表2】

【0132】
【表3−1】

【0133】
【表3−2】

【0134】
【表4】

【0135】
【表5】

【0136】
【表5A】

【0137】
【表6】

【0138】
【表6A】

【0139】
【表7】

【0140】
【表8】

【0141】
【表9】

【0142】
【表10】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスフェラーゼをコードする遺伝子;または多糖もしくはオリゴ糖単位の輸送もしくはプロセシングのための酵素をコードする遺伝子であって、wzx遺伝子もしくはwzy遺伝子を含む遺伝子;または類似の機能を有する遺伝子に由来する核酸分子であって、該遺伝子は、特定のバクテリアの多糖抗原の合成に関与し、ここで該核酸分子の配列は、特定のバクテリア多糖抗原に特異的である核酸分子。
【請求項2】
トランスフェラーゼをコードする遺伝子;またはwzx遺伝子もしくはwzy遺伝子のような、多糖もしくはオリゴ糖単位の輸送もしくはプロセシングのための酵素をコードする遺伝子に由来する核酸分子であって、該遺伝子は、特定のバクテリアのO抗原の合成に関与し、該核酸分子の配列は、特定のバクテリアO抗原に特異的である核酸分子。
【請求項3】
トランスフェラーゼをコードする遺伝子;またはwzx 遺伝子もしくはwzy 遺伝子のような、多糖もしくはオリゴ糖単位の輸送もしくはプロセシングのための酵素をコードする遺伝子、に由来する核酸分子であって、該遺伝子は、E.coliによって発現されるO抗原の合成に関与し、該核酸分子の配列は、該O抗原に特異的である核酸分子。
【請求項4】
トランスフェラーゼをコードする遺伝子;またはwzx 遺伝子もしくはwzy 遺伝子のような、多糖もしくはオリゴ糖単位の輸送もしくはプロセシングのための酵素をコードする遺伝子、に由来する核酸分子であって、該遺伝子は、S.entericaによって発現されるO抗原の合成に関与し、該核酸分子の配列は、該O抗原に特異的である核酸分子。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の核酸分子であって、該核酸分子は、約10〜20ヌクレオチド長である核酸分子。
【請求項6】
遺伝子に由来する核酸分子であって、該遺伝子は、以下の配列:
配列番号1のヌクレオチド739〜1932位;
配列番号1のヌクレオチド8646〜9911位;
配列番号1のヌクレオチド9901〜10953位;
配列番号1のヌクレオチド11821〜12945位;
配列番号2のヌクレオチド79〜861位;
配列番号2のヌクレオチド858〜2042位;
配列番号2のヌクレオチド2011〜2757位;
配列番号2のヌクレオチド2744〜4135位;
配列番号2のヌクレオチド5257〜6471位;および
配列番号2のヌクレオチド13156〜13821位;
からなる群より選択され、該遺伝子からの相補的な配列にハイブリダイズし得る核酸分子。
【請求項7】
遺伝子wbdH、wzx 、wzy 、およびwbdMに関して、表5または5Aにおけるオリゴヌクレオチドのいずれか1つである核酸分子。
【請求項8】
表6または6A におけるオリゴヌクレオチドのいずれか1つである核酸分子。
【請求項9】
遺伝子に由来する核酸であって、該遺伝子は、以下の配列:
配列番号3のヌクレオチド1019〜2359位;
配列番号3のヌクレオチド2352〜3314位;
配列番号3のヌクレオチド3361〜3875位;
配列番号3のヌクレオチド3977〜5020位;
配列番号3のヌクレオチド5114〜6313位;
配列番号3のヌクレオチド6313〜7323位;
配列番号3のヌクレオチド7310〜8467位;
配列番号4のヌクレオチド12762〜14054位;および
配列番号4のヌクレオチド14059〜15060位;
からなる群より選択され、該遺伝子からの相補的な配列にハイブリダイズし得る核酸分子。
【請求項10】
表7におけるオリゴヌクレオチドのいずれか1つである核酸分子。
【請求項11】
遺伝子wzx およびwbaVに関して、表8におけるオリゴヌクレオチドのいずれか1つである核酸分子。
【請求項12】
1つ以上のバクテリア多糖抗原の存在についてサンプルを試験する方法であって、
(a)該サンプルを、(i)トランスフェラーゼをコードする遺伝子、または(ii)多糖もしくはオリゴ糖単位の輸送もしくはプロセシングのための酵素をコードする遺伝子であって、wzx遺伝子もしくはwzy遺伝子を含む遺伝子、に特異的にハイブリダイズし得る、少なくとも1つのオリゴヌクレオチド分子と、該サンプルに存在するバクテリア多糖抗原を発現するいずれかのバクテリアの少なくとも1つの遺伝子に、該少なくとも1つのオリゴヌクレオチド分子を特異的にハイブリダイズさせるのに適切な条件下で接触する工程であって、ここで該遺伝子がバクテリアの多糖抗原の合成に関与する工程;ならびに
(b)いずれかの特異的にハイブリダイズしたオリゴヌクレオチド分子を検出する工程、を包含する方法。
【請求項13】
前記サンプルと、少なくとも1つの糖経路遺伝子に特異的にハイブリダイズし得る少なくとも1つのオリゴヌクレオチド分子とを、該サンプルに存在するバクテリア多糖抗原を発現する任意のバクテリアの少なくとも1つの糖経路遺伝子に、さらなる少なくとも1つのオリゴヌクレオチド分子を特異的にハイブリダイズさせるのに適切な条件下で、接触させる工程、ならびに任意の特異的にハイブリダイズされたオリゴヌクレオチド分子を検出する工程、をさらに包含する請求項12に記載の方法。
【請求項14】
1つ以上のバクテリア多糖抗原の存在について、サンプルを試験する方法であって、
(a)少なくとも1つのオリゴヌクレオチド分子対を有するサンプルを、(i)トランスフェラーゼをコードする遺伝子、または(ii)多糖もしくはオリゴ糖単位の輸送もしくはプロセシングのための酵素をコードする遺伝子であって、wzx
遺伝子もしくはwzy 遺伝子を含む遺伝子に特異的にハイブリダイズし得る、該対の少なくとも1つのオリゴヌクレオチド分子とを、該サンプルに存在するバクテ
リア多糖抗原を発現するいずれかのバクテリアの少なくともこのような遺伝子に、
分子の該対の少なくとも1つのオリゴヌクレオチド分子を特異的にハイブリダイズさせるのに適切な条件下で接触させる工程であって、ここで該遺伝子がバクテリアの多糖抗原の合成に関与する工程、ならびに
(b)特異的にハイブリダイズされたオリゴヌクレオチド分子を検出する工程、を包含する方法。
【請求項15】
さらに少なくとも1対のオリゴヌクレオチド分子を有するサンプルを、少なくとも1つの糖経路遺伝子に特異的にハイブリダイズし得る、該対の少なくとも1つのオリゴヌクレオチド分子とを、該サンプルに存在するバクテリア多糖抗原を発現する任意のバクテリアの少なくとも1つのこのような糖経路遺伝子に、該対のさらなる少なくとも1つのオリゴヌクレオチド分子を特異的にハイブリダイズさせるのに適切な条件下で、接触させる工程、および特異的にハイブリダイズされたオリゴヌクレオチド分子を検出する工程、をさらに包含する請求項14に記載の方法。
【請求項16】
1つ以上のバクテリアO抗原の存在についてサンプルを試験する方法であって、
(a)サンプルを、(i)O抗原トランスフェラーゼをコードする遺伝子、または(ii)多糖もしくはオリゴ糖単位の輸送もしくはプロセシングのための酵素をコードする遺伝子であって、wzx 遺伝子もしくはwzy遺伝子を含む、遺伝子に特異的にハイブリダイズし得る、少なくとも1つのオリゴヌクレオチド分子とを、該サンプルに存在するバクテリアO抗原を発現するいずれかのバクテリアの少なくとも1つのこのような遺伝子に、該少なくとも1つのオリゴヌクレオチド分子
を特異的にハイブリダイズさせるのに適切な条件下で、接触させる工程であって、ここで該遺伝子がバクテリアのO抗原の合成に関与する工程;ならびに
(b)特異的にハイブリダイズされたオリゴヌクレオチド分子を検出する工程、を包含する方法。
【請求項17】
前記サンプルを、少なくとも1つの糖経路遺伝子に特異的にハイブリダイズし得るさらなる少なくとも1つのオリゴヌクレオチド分子とを、該サンプルに存在するバクテリアO抗原を発現するいずれかのバクテリアの少なくとも1つのこのような糖経路遺伝子に、該さらなる少なくとも1つのオリゴヌクレオチド分子を特異的にハイブリダイズさせるのに適切な条件下で接触させる工程、ならびに特異的にハイブリダイズされたオリゴヌクレオチド分子を検出する工程、をさらに包含する請求項16に記載の方法。
【請求項18】
O抗原が、E.coliまたはS.entericaによって発現される、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
E.coliが、O157 O抗原血清型またはO111 O抗原血清型を発現する方請求項18に記載の方法。
【請求項20】
S.entericaが、C2またはB O抗原血清型を発現する、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
特異的にハイブリダイズされたオリゴヌクレオチド分子を、サザンブロット分析によって検出する、請求項16から20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
1つ以上のバクテリアO抗原の存在についてサンプルを試験する方法であって、
(a)少なくとも1つのオリゴヌクレオチド分子の対を有するサンプルと、(i)
O抗原トランスフェラーゼをコードする遺伝子、または(ii)多糖もしくはオリ
ゴ糖単位の輸送もしくはプロセシングのための酵素をコードする遺伝子であって、
wzx 遺伝子もしくはwzy 遺伝子を含む、遺伝子に、特異的にハイブリダイズし得る、該対の少なくとも1つのオリゴヌクレオチド分子とを、該サンプルに存在するバクテリアO抗原を発現するいずれかのバクテリアの少なくとも1つのこのような遺伝子に、分子の該対の少なくと1つのオリゴヌクレオチド分子を特異的にハイブリダイズさせるのに適切な条件下で、接触させる工程であって、ここで該遺伝子がバクテリアのO抗原の合成に関与する工程;ならびに
(b)特異的にハイブリダイズされたオリゴヌクレオチド分子を検出する工程、を包含する方法。
【請求項23】
さらに少なくとも1対のオリゴヌクレオチド分子を有する前記サンプルと、
少なくとも1つの糖経路遺伝子に特異的にハイブリダイズし得る該対の少なくとも1つのオリゴヌクレオチド分子とを、該サンプルに存在するバクテリアO抗原
を発現するいずれかのバクテリアの少なくとも1つのこのような糖経路遺伝子に、
該対のさらなる少なくとも1つのオリゴヌクレオチド分子を特異的にハイブリダイズさせるのに適切な条件下で接触させる工程、ならびに特異的にハイブリダイズされたオリゴヌクレオチド分子を検出する工程、をさらに包含する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
O抗原が、E.coliまたはS.entericaによって発現される、請求項22または23に記載の方法。
【請求項25】
E.coliが、O111 O抗原血清型またはO157 O抗原血清型である、請求項24に記載の方法であって、方法。
【請求項26】
S.entericaが、C2またはB O抗原血清型を発現する、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
該方法がポリメラーゼ連鎖反応法に従って行われる、請求項22から26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
該オリゴヌクレオチド分子が、請求項5から11のいずれかに記載の核酸分子の群から選択される、請求項22から26のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
1つ以上の特定のバクテリアO抗原の存在について、食品由来のサンプルを試験するための方法であって、請求項16から28のいずれかに記載される方法。
【請求項30】
1つ以上の特定のバクテリアO抗原の存在について、糞便由来のサンプルを試験するための方法であって、請求項16から28のいずれかに記載される方法。
【請求項31】
1つ以上の特定のバクテリアO抗原の存在について、患者由来のサンプルを試験するための方法であって、請求項16から28のいずれかに記載される方法。
【請求項32】
第1のバイアルが、(i)トランスフェラーゼをコードする遺伝子、または(ii)多糖もしくはオリゴ糖単位の輸送もしくはプロセシングのための酵素をコードする遺伝子であって、wzx遺伝子もしくはwzy遺伝子を含む遺伝子に特異的にハイブリダイズし得る、第1の核酸分子を含み、該遺伝子がバクテリア多糖の合成に関与する、第1のバイアルを含むキット。
【請求項33】
前記第1のバイアルにおいて、または第2のバイアルにおいて、(i)トランスフェラーゼをコードする遺伝子、または(ii)多糖もしくはオリゴ糖単位の輸送もしくはプロセシングのための酵素をコードする遺伝子であって、wzx 遺伝子もしくはwzy 遺伝子を含む遺伝子に特異的にハイブリダイズし得る、第2の核酸分子をさらに含有し、該遺伝子は、バクテリア多糖の合成に関与し、該第2の核酸分子の配列は、該第1の核酸分子の配列とは異なる、請求項32に記載のキット。
【請求項34】
糖経路遺伝子に由来する核酸分子をさらに含む、請求項33に記載のキット。
【請求項35】
前記第1のバイアルにおいて、または第2のバイアルにおいて、糖経路遺伝子に特異的にハイブリダイズし得る第2の核酸分子をさらに含む、請求項32に記載のキット。
【請求項36】
前記核酸分子が、約10〜20ヌクレオチド長である、請求項32から35のいずれかに記載のキット。
【請求項37】
第1のバイアルを含むキットであって、該第1のバイアルは、(i)トランスフェラーゼをコードする遺伝子、または(ii)多糖もしくはオリゴ糖単位の輸送もしくはプロセシングのための酵素をコードする遺伝子であって、wzx遺伝子もしくはwzy遺伝子を含む遺伝子に特異的にハイブリダイズし得る、第1の核酸分子を含有し、ここで該遺伝子はバクテリアO抗原の合成に関与するキット。
【請求項38】
前記第1のバイアル、または第2のバイアルに、(i)トランスフェラーゼをコードする遺伝子、または(ii)多糖もしくはオリゴ糖単位の輸送もしくはプロセシングのための酵素をコードする遺伝子であって、wzx遺伝子もしくはwzy遺伝子を含む遺伝子に特異的にハイブリダイズし得る、第2の核酸分子をさらに含有し、ここで該遺伝子は、バクテリアO抗原の合成に関与し、かつ、該第2の核酸分子の配列は、該第1の核酸分子の配列とは異なる、請求項37に記載のキット。
【請求項39】
前記第1のバイアル、または第2のバイアルに、糖経路遺伝子に特異的にハイブリダイズし得る第2の核酸分子をさらに含む、請求項37に記載のキット。
【請求項40】
糖経路遺伝子に由来する核酸分子をさらに含む、請求項38に記載のキット。
【請求項41】
前記核酸分子が、約10〜20ヌクレオチド長である、請求項37から40のいずれかに記載のキット。
【請求項42】
第1および第2の核酸分子が、請求項5から11のいずれかに記載されるものである、請求項31から34のいずれかに記載のキット。



【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図9−2】
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【図9−3】
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【図9−4】
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【図9−5】
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【図9−6】
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【図9−7】
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【図9−8】
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【図9−9】
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【図9−10】
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【図9−11】
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【図2】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図7−3】
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【図7−4】
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【図7−5】
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【図7−6】
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【図7−7】
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【図7−8】
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【図7−9】
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【図7−10】
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【図7−11】
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【図7−12】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【図8−3】
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【図8−4】
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【図8−5】
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【図8−6】
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【図8−7】
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【図8−8】
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【図8−9】
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【図8−10】
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【図8−11】
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【図8−12】
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【図9−1】
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【図10−1】
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【図10−2】
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【図10−3】
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【図10−4】
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【図10−5】
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【図10−6】
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【図10−7】
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【図10−8】
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【図10−9】
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【図10−10】
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【図10−11】
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【図10−12】
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【図10−13】
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【図10−14】
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【図10−15】
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【図10−16】
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【図10−17】
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【公開番号】特開2008−271972(P2008−271972A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−115685(P2008−115685)
【出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【分割の表示】特願平10−547537の分割
【原出願日】平成10年5月1日(1998.5.1)
【出願人】(500026418)ザ・ユニバーシティ・オブ・シドニー (13)
【Fターム(参考)】