説明

バケット式削孔装置

【課題】バケットの回転をケーシングの回転から独立したものとして、掘削と土砂取り込みの効率化を図った削孔装置を提供する。
【解決手段】支持フレーム8に支持されたバケット2をケーシング1内に収容し、その支持フレーム8に装着されているグリッパアーム18先端のパッド19を油圧にて押し付けて、支持フレーム8をケーシング1の内周面に固定する。ケーシング1の回転および圧入と並行して、バケット2を支持フレーム8に搭載されている油圧モータによりケーシング1の回転方向とは逆方向にケーシング1の回転速度よりも大きな回転速度で回転させて、孔底部の掘削と土砂の取り込みを行う。支持フレーム8側への油圧供給はケーシング1の上端面に搭載される補器受け台9を経由して行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アースドリル工法等の場所打ち杭工法による施工に際して、地中に圧入(貫入)したケーシング内の土砂をバケットにて掘削しつつ揚土(排土)する削孔方法とその削孔方法に好適なバケット式削孔装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アースドリル工法等の場所打ち杭施工では、例えば全旋回式オールケーシング掘削機による掘削として、ケーシング(ケーシングチューブ)を回転させながら地中に圧入するとともに、ケーシングの内部に収容配置したバケットにもケーシングの回転力を伝達して、そのケーシングとともに回転するバケットにて掘削した土砂を当該バケット内に取り込んだ上で排土(揚土)することが行われる。
【0003】
そして、このような掘削に適したバケットとして特許文献1および特許文献2に記載のものが提案されている。これらの特許文献1および特許文献2に記載の技術では、バケットの回転にケーシングの回転力を利用しつつ、そのケーシングの回転に同期してバケットをケーシングとは逆方向に回転させることとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平4−9436号公報
【特許文献2】実開平8−1470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これらの特許文献1および特許文献2に記載の技術では、バケットの回転にケーシングの回転力を利用しているため、必然的にバケットの回転はケーシングの回転に完全同期したものとなり、必ずしも効率的な掘削と土砂の取り込みが行えないことになる。
【0006】
本発明はこのような課題に着目してなされたものであり、とりわけバケットの回転をケーシングの回転から独立したものとすることにより、掘削と土砂取り込みの一層の効率化を図った削孔装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、地中に圧入したケーシング内にバケットを収容配置し、そのバケットを回転させることでケーシングの孔底部を掘削するようにした削孔方法において、上記ケーシングを回転させながら圧入するのと並行して、上記バケットを独立したバケット駆動手段によりケーシングの回転方向とは逆方向に且つケーシングの回転速度よりも大きな回転速度で回転させることを特徴とする。
【0008】
この場合において、バケット駆動手段はバケットとともにケーシング内に収容配置されることが望ましく、請求項2に記載のように、上記バケットを回転可能に支持しているバケット支持手段をケーシングの内周面に固定して上で、そのバケット支持手段に搭載されているバケット駆動手段にてバケットを回転駆動させるものとする。
【0009】
また、請求項3に記載のように、上記ケーシングの内周面に対するバケット支持手段の固定は、そのバケット支持手段に搭載されているグリッパ手段にて行うものとする。
【0010】
より具体的には、請求項4に記載のように、地中に圧入したケーシング内にバケットを収容配置し、そのバケットを回転させることでケーシングの孔底部を掘削するようにした削孔方法において、上記バケットを回転可能に支持しているバケット支持手段をバケットとともにケーシング内に吊り降ろして、バケットを孔底部に着底させる工程と、着底したバケットを支持しているバケット支持手段を当該バケット支持手段に搭載されているグリッパ手段にてケーシングの内周面に固定する工程と、上記ケーシングを回転させながら圧入するのと並行して、上記バケットをバケット支持手段に搭載されているバケット駆動手段によりケーシングの回転方向とは逆方向に且つケーシングの回転速度よりも大きな回転速度で回転させて、孔底部の土砂を掘削しながらバケット内に取り込む工程と、上記ケーシング内の内周面に対するバケット支持手段の固定を解除した上で、土砂取り込み後のバケットをバケット支持手段ごとケーシング外に搬出してバケット内の土砂を排土する工程と、を含むものとする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、上記削孔技術を削孔装置として捉えたものであって、地中に圧入したケーシング内にバケットを収容配置し、ケーシングを回転させながら圧入するのと並行して、バケットも回転させることでケーシングの孔底部を掘削するようにしたバケット式削孔装置において、索条体により吊り下げ支持されるバケット支持手段と、上記バケット支持手段に回転可能に支持されていて、バケット支持手段とともにケーシング内に収容配置されるバケットと、上記バケット支持手段に搭載されて、ケーシングの内周面に対するバケット支持手段の固定とその解除を司るグリッパ手段と、上記バケット支持手段に搭載されて、バケットをケーシングの回転方向とは逆方向に且つケーシングの回転速度よりも大きな回転速度で回転させるバケット駆動手段と、を備えていることを特徴とする。
【0012】
上記グリッパ手段およびバケット駆動手段は、例えば請求項6に記載のように、共に油圧式のものとする。
【0013】
そして、グリッパ手段およびバケット駆動手段が共に油圧式のものである場合には、油圧ホース等が作業の障害とならないように、例えば請求項7に記載の油圧中継手段を併用するものとする。すなわち、請求項7に記載の発明は、上記ケーシングの上端に搭載される油圧中継手段を有していて、上記バケット支持手段をケーシング内から吊り上げる際には、そのバケット支持手段の上に油圧中継手段を搭載した状態で吊り上げる一方、上記バケット支持手段をケーシング内に吊り降ろす際には、上記油圧中継手段をケーシングの上端に移載した上でバケット支持手段を単独で降下させるようになっていることを特徴とする。
【0014】
この場合において、上記油圧中継手段は、請求項8に記載のように、当該油圧中継手段と油圧式のグリッパ手段およびバケット駆動手段とをそれぞれに接続している油圧ホースの巻き取りと繰り出しを司るホースリールユニットを備えているものとする。
【0015】
請求項9に記載の発明では、請求項5〜8のいずれか一つに記載のバケット式削孔装置を前提として、上記バケット支持手段をクレーンタイプの母機に索条体を介して吊り下げ支持させてあることを明確化している。
【0016】
また、バケットへの土砂取り込みと排土とを効率良く行う上では、請求項10に記載のように、上記バケットは、底蓋に掘削刃と土砂取り込み用の開口部が形成されているとともに、底蓋自体が開閉可能となっていることが望ましい。
【0017】
したがって、少なくとも請求項1に記載の発明では、バケットの回転とそれに基づく掘削と土砂の取り込みはケーシングの回転に依存しなくなり、少なくともバケットの回転開始と回転停止のタイミングの設定や回転速度の設定はケーシングの回転に依存することなく独立して行えることで、効率的な掘削と土砂取り込みを行えることになる。
【発明の効果】
【0018】
請求項1,5に記載の発明によれば、バケットの回転はケーシングの回転に依存することなく独立したバケット駆動手段にて別個に行われることから、バケットの回転開始や回転停止のタイミングあるいは回転速度は任意に設定することが可能であり、それによって効率的な掘削と土砂取り込みが行え、作業性が向上する。
【0019】
請求項8に記載の発明によれば、油圧式のグリッパ手段およびバケット駆動手段が油圧中継手段を備えているとともに、その油圧中継手段が油圧ホースの巻き取りと繰り出しを司るホースリールユニットを有していることから、油圧ホースの取り回し性が良好なものとなって、その油圧ホースの取り回しが作業に支障をきたすことがなく、作業性が一段と向上する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係るバケット式削孔装置のより具体的な第1の実施の形態を示す図で、全体の概略説明図。
【図2】図1のバケット式削孔装置での主要素をなすバケットおよび支持フレームの詳細を示す正面図。
【図3】図2の平面図。
【図4】図2の右側面図。
【図5】図2のA−A線に沿う断面図。
【図6】図2のB−B線に沿う断面図。
【図7】図2のC−C線に沿う断面図。
【図8】図2のD−D線に沿う断面図。
【図9】図1の状態からバケットをケーシング内に投入した時の状態を示す拡大説明図。
【図10】図1に示した削孔装置による削孔手順を示す図で、(A)は支持フレームおよびバケットとともに補器受け台を吊り上げている状態を示す説明図、(B)は支持フレームとともにバケットをケーシング内に吊り降ろした状態を示す説明図。
【図11】図1に示した削孔装置による削孔手順を示す図で、(A)は支持フレームをケーシング内に固定した状態を示す説明図、(B)はケーシングの回転とともにバケットを回転している時の説明図。
【図12】図1に示した削孔装置による削孔手順を示す図で、(A)は図11の(B)の状態からバケットを吊り上げた状態を示す説明図、(B)はバケットの底蓋を開いて排土する時の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1以下の図面は本発明に係る削孔方法およびバケット式削孔装置のより具体的な実施の形態を示す図であり、図1はバケット式削孔装置の全体の概略を示し、図2〜8は図1におけるバケット2の詳細を示している。さらに、図10〜12は図1に示したバケット式削孔装置での削孔手順を示している。
【0022】
図1に示すように、本実施の形態に係るバケット式削孔装置(以下、単に削孔装置と言う。)では、地表面から地盤中に圧入される所定の直径の鋼管製のケーシング(ケーシングチューブとも言う。)1と、このケーシング1の中に投入されて、ケーシング1の孔底部の土砂の掘削とその取り込み、さらにはケーシング1の外部への排土もしくは揚土を司るバケット2と、を主要素とするものであり、それらに関連して、地表面G側には全旋回式オールケーシング掘削機(以下、単に掘削機と言う。)3と、バケット2の吊り下げ母機(ベースマシン)として機能するクローラクレーン(以下、単にクレーンと言う、)4と、が用意される。
【0023】
掘削機3は、周知のように、図示外のグリッパにてケーシング1の外周面を把持してこれを回転(旋回)させる機能と、回転しているケーシング1を地盤中に圧入する機能(油圧ジャッキ機能)とを有している。ケーシング1の下端には複数のカッタビット5(図9参照)を装着してあるとともに、ケーシング1は圧入施工の途中で何回かチューブセグメントが継ぎ足されて、最終的に所定深度まで圧入される。
【0024】
他方、バケット2は、クレーン4のブーム6に索条体であるワイヤ(補巻きワイヤ)7を介して吊り下げ支持させてある。より具体的には、後述するように、ワイヤ7にてバケット支持手段としての支持フレーム8を直接吊り下げ支持するようになっているとともに、その支持フレーム8に対してバケット2を鉛直な軸心回りに回転可能に支持させてある。さらに、本実施の形態では、後述するように、上記バケット2が支持フレーム8とともにケーシング1内に投入されている時に、ケーシング1の上端に搭載される油圧中継手段としての補器受け台9を併用するようになっていてることから(図9参照)、逆に図1に示すようにバケット2を支持フレーム8とともに吊り上げた時には、支持フレーム8の上に補器受け台9を載せた状態で一緒に吊り上げるようになっている。
【0025】
なお、ワイヤ7の先端にはスィーベル10を介して連結ワイヤ11が接続されていて、この連結ワイヤ11が後述する支持フレーム8に連結されることになる。
【0026】
図2〜8は上記支持フレーム8を含むバケット2の詳細を示す図で、図2はその正面図を、図3は図2の平面図を、図4は図2の右側面図をそれぞれ示している。また、図5〜8は図2のA−A線、B−B線、C−C線およびD−D線に沿うそれぞれの断面図を示している。
【0027】
図2〜4に示すように、支持フレーム8は円筒状の上部ボックス部12と同じく偏平な円筒状のギヤボックス部13とを角柱状の中間ポスト14を介して連結したもので、上部ボックス部12の上面には吊り下げ支持具を兼ねた先端テーパ状のガイドポスト15をブラケット16にて連結してあり、このガイドポスト15に対して先に述べた連結ワイヤ11が連結されることになる。上部ボックス部12における円筒外周面の四等分位置には、図5にも示すように、共に同じ突出長を有する四つのスタビライザ17を放射状に装着してあり、これらのスタビライザ17の先端が描く軌跡の直径はケーシング1の内径よりもわずかに小さい大きさに設定してある。このスタビライザ17は、後述するように、バケット2を支持フレーム8ごとケーシング1内に投入する際のガイトとして機能するほか、振れ止め機能とセンタリング機能とを有するものである。
【0028】
また、角柱状の中間ポスト14の各面には、図6にも示すように、スタビライザ17と同様に共に同じ突出長を有する四つのグリッパアーム18を放射状に装着してある。なお、図4では、図面の錯綜化を避けるためにグリッパアーム18を図示省略してある。各グリッパアーム18の先端には、ケーシング1からの反力受けとして機能する摩擦係数の大きな板状のパッド19と、そのパッド19を外側に押圧操作する油圧シリンダ20とを設けてある。そして、油圧シリンダ20の押圧操作にて各パッド19をケーシング1の内周面に押し付けることで、そのパッド19の摩擦力をもって支持フレーム8をケーシング1の内周面に固定することが可能であり、したがって、パッド19および油圧シリンダ20を含むこれらの四つのグリッパアーム18をもって支持フレーム8をケーシング1の内周面に固定するためのグリッパ手段を形成している。
【0029】
上記ギヤボックス部13には、図6にも示すように、ベアリング21を介してバケット2の上部ブラケット22(図7参照)を鉛直軸心回りに回転可能に軸受支持させてあるとともに、上部ブラケット22にはギヤボックス部13内において大径のドリブンギヤ23を連結してある。また、ギヤボックス部13の上面の四等分位置には、グリッパアーム18と干渉しないようにバケット駆動手段としての同一の四つの油圧モータ24を下向きに立設してある。なお、図2では図面の錯綜化を避けるために油圧モータ24を図示省略してある。
【0030】
各油圧モータ24の出力軸にはギヤボックス部13内において小径のドライブギヤ25を連結してあるとともに、それぞれのドライブギヤ25を大径のドリブンギヤ23に噛み合わせてある。したがって、四つの油圧モータ24を一斉に起動させることにより、ドライブギヤ25およびドリブンギヤ23を介してバケット2を支持フレーム8に対して回転駆動させることができる。
【0031】
バケット2は、中空円筒状のバケット本体26とそのバケット本体26の下面に開閉可能に装着した底蓋27とで構成してあり、全体としては上面が開口した有底円筒状のもので、その直径はケーシング1内に収容可能な大きさに設定してある。底蓋27は図2,4および図8から明らかなように略円錐浅皿状のもので、その一部をヒンジ28にてバケット本体26の下端開口縁部に開閉可能(回動可能)に連結してあるとともに、バケット本体26の下端開口縁部のうちヒンジ28の反対側の位置には蓋ロック機構29を設けてある。
【0032】
蓋ロック機構29は、バケット本体26の内周面にブラケット30を介して装着されて、上端にハンドル部31aを有する操作レバー31と、底蓋27の内側に装着されて、操作レバー31の下端の鉤状のロックピン31bと係合可能なスロットを有するロックプレート32とから構成してある。そして、操作レバー31をその軸心回りに回動操作して、ロックピン31bをロックプレート32に係止させればロック状態となって底蓋27の閉蓋状態を保持できる一方、操作レバー31の逆回動操作によりロックプレート32に対するロックピン31bの係止を解除すれば、底蓋27がアンロック状態となってその底蓋27の開蓋が可能となるものである。
【0033】
また、図8に示すように、底蓋27はその内面を複数の補強リブ33にて補強してあるとともに、直径方向の二箇所には土砂取り込み口34を開口形成してあり、その土砂取り込み口34の開口縁にはスクレーパを兼ねたビット35を装着してある。なお、後述するように、本実施の形態では、ケーシング1を例えば右回転とする場合には、バケット2はそれとは逆方向の左回転とすることを前提としていることから、土砂取り込み口34の形状およびビット35の向きはバケット2の回転方向を考慮して決定してある。
【0034】
ここで、上記バケット2を支持している支持フレーム8はアクチュエータとして油圧シリンダ20や油圧モータ24を備えていて、地表面G側からの油圧供給のための油圧ホース36,37(図9参照)が付帯することになるほか、電磁弁等の油圧制御機器が必須となる。そのために、上部ボックス部12はそれらの電磁弁等の油圧制御機器を収容するための防水ボックスを兼ねている。
【0035】
このように構成されたバケット2によれば、支持フレーム8ごとケーシング1内に投入してその孔底部に着底させた上で、グリッパアーム18の先端のパッド19を押し出してケーシング1の内周面に圧接させることにより、その圧接による摩擦力をもって支持フレーム8がケーシング1の内周面に固定される。故に、ケーシング1を例えば右回転で回転駆動した場合には、支持フレーム8はバケット2を支持したままでケーシング1とともに回転することになる。
【0036】
その際に、油圧モータ24によりバケット2をケーシング1とは反対方向に、すなわちケーシング1が右回転である場合にはバケット2は左回転にて回転駆動するものとし、なお且つケーシング1の回転速度よりも大きな速度でバケット2を回転駆動させるものとする。
【0037】
そして、バケット2の下降はケーシング1の圧入動作に依存してそのケーシング1の圧入によってケーシング1と一体的に行うものとする。
【0038】
こうすることにより、ケーシング1内の孔底部の土砂が掘削されながら底蓋27側の土砂取り込み口34からバケット2の内部に効率良く短時間のうちに取り込まれることになる。
【0039】
この場合において、バケット2の回転は、ケーシング1の回転とは無関係に独立した油圧モータ24によってなされるものであるから、バケット2の回転開始や回転停止のタイミングは必ずしもケーシング1の回転に完全に同期している必要はなく、バケット2の回転速度とともにバケット2の回転開始や回転停止のタイミングは任意に設定可能である。
【0040】
ただし、先に述べたように、バケット2の下降動作はケーシング1の圧入動作に依存することから、少なくともケーシング1の連続的な圧入動作中は、バケット2も連続的に且つケーシング1の回転速度よりも大きな速度で回転させることが効率的な掘削と土砂取り込みとを行う上で望ましいものとなる。
【0041】
ここで、上記バケット2を支持フレーム8とともにケーシング1内に吊り降ろした状態を図9に示す。そして、先に述べたように、支持フレーム8にはアクチュエータとして油圧シリンダ20や油圧モータ24が採用されていて、それらの油圧シリンダ20や油圧モータ24への地表面G側からの油圧供給のために、油圧シリンダ20および油圧モータ24ごとに独立した油圧ホース36,37が付帯していることから、それらの油圧ホース36,37の取り回しが本来の作業に支障をきたさないように配慮する必要がある。なお、油圧ホース36,37とは別に給電ケーブルも付帯しているが、給電ケーブルについては油圧ホース36または37と一緒に結束してあるので、ここでは、あくまで油圧ホース36,37のみに着目するものとする。
【0042】
そして、本実施の形態では、支持フレーム8側へは図1に示したクレーン4側から油圧が供給されることから、油圧中継手段として補器受け台9を採用し、この補器受け台9を図9に示すようにケーシング1の上端に着脱可能に搭載して、この補器受け台9を経由してケーシング1内に投入されている支持フレーム8側に油圧を供給するようにしてある。
【0043】
補器受け台9は、図9に示すように、下面に据え付けガイド40aを有する円形のベース40を主要素としていて、ケーシング1の上端面に載置するだけでその姿勢を安定して維持できる構造となっている。
【0044】
ベース40の上面中央部には先に述べた支持フレーム8側のガイドポスト15(図2参照)を受容可能なガイドスリーブ41を立設してあり、このガイドスリーブ41はベース40の下面に開口している。そして、後述するように、支持フレーム8にて補器受け台9をリフトアップさせて、その補器受け台9を図1のように支持フレーム8とともに吊り上げる際に、支持フレーム8側のガイドポスト15をガイドスリーブ41にて受容して、両者の相対位置決めとともに支持フレーム8に対する補器受け台9の姿勢変化を規制している。
【0045】
ガイドスリーブ41の上端には、クレーン4側から伸びる元圧側油圧ホース42が止着されたセンタースィーベル43が装着されているとともに、センタースィーベル43からはセンタースィーベルロックバー44が水平方向に伸びている。他方、掘削機3側にはセンタースィーベルロック用ガイドポスト45が立設されていて、後述するように、ケーシング1の上端面に搭載した補器受け台9がケーシング1とともに回転する際に、センタースィーベルロックバー44をセンタースィーベルロック用ガイドポスト45に当接させることで回り止め機能が発揮されるようになっている。こうすることにより、センタースィーベルロックバー44がセンタースィーベルロック用ガイドポスト45の高さの範囲内にあるかぎりは、元圧側油圧ホース42の無用な動きが規制される。
【0046】
また、ベース40の上面には油圧ホース36,37ごとに独立した一対の油圧ホースリールユニット46,47を搭載してある。各油圧ホース36,37には元圧側油圧ホース42からの油圧が分配されているとともに、油圧が分配された各油圧ホース36,37がそれぞれに独立した油圧ホースリールユニット46,47に巻き取られている。この油圧ホースリールユニット46,47は、ホースリール自体にばね等による適度な巻き取り力が常時付与されている公知の構造のものである。
【0047】
そして、図9に示すように、バケット2が支持フレーム8とともに下降している時には、各油圧ホースリールユニット46,47から弛みを生ずることなく油圧ホース36,37がスムースに引き出される一方、逆にバケット2が支持フレーム8とともに吊り上げられて補器受け台9に接近する時には、それに応じて各油圧ホース36,37がスムースに各油圧ホースリールユニット46,47に巻き取られるようになっている。つまり、各油圧ホースリールユニット46,47は、補器受け台9に対する支持フレーム8の接近離間動作に応じて各油圧ホース36,37の繰り出し長さを調整する機能を有している。
【0048】
以上のように構成されたバケット式削孔装置の一連の動きを説明すれば次のとおりである。
【0049】
図10の(A)は図1と同じ状態を示しており、同図に示すように、ワイヤ7にて吊り下げ支持された支持フレーム8は、その下側にバケット2を支持しているのと同時に、その上側に補器受け台9を搭載して吊り上げている状態にあり、且つケーシング1の真上に位置している。この状態では、先に述べたように、支持フレーム8側のガイドポスト15(図2参照)が補器受け台9側のガイドスリーブ41(図9参照)に内挿されているので、支持フレーム8に対する補器受け台9の姿勢変化が規制されて、補器受け台9は図10の(A)の姿勢を安定的に維持している。また、支持フレーム8に付帯している油圧ホース36,37の大部分が各油圧ホースリールユニット46,47に巻き取られているほか、図2に示したグリッパアーム18の先端のパッド19は後退している。
【0050】
図10の(A)の状態から支持フレーム8をゆっくりと吊り降ろすべく下降させ、バケット2を支持フレーム8とともにケーシング1内に挿入する。その下降過程で補器受け台9がケーシング1の上端面に着座すると、それをもって同図(B)に示すように補器受け台9がケーシング1の上端面に移載されて据え付けられ、以降は補器受け台9の重量が支持フレーム8に負荷されることはなくなる。
【0051】
補器受け台9がケーシング1の上端面に移載されて据え付けられた以降に、なおもバケット2を支持フレーム8ごとゆっくりと吊り降ろすべく下降させると、油圧ホース36,37が徐々に油圧ホースリールユニット46,47から繰り出されて、図10の(B)に示すように、やがてはバケット2がケーシング1の孔底に着底することになる。なお、バケット2が支持フレーム8とともにケーシング1内を下降する過程では、図2に示したスタビライザ17やグリッパアーム18によってバケット2等の振れ止め効果とセンタリング効果が発揮される。
【0052】
バケット2がケーシング1の孔底部に着底したならば、図11の(A)に示すように、支持フレーム8に付帯しているグリッパアーム18の先端のパッド19をケーシング1の内周面に押し付ける。より具体的には、図2に示した各グリッパアーム18の先端のパッド19を油圧シリンダ20にて押し出し、ケーシング1の内周面に強く圧接させて、その状態を保持する。これにより、ケーシング1の内周面とパッド19との摩擦力をもって支持フレーム8全体がケーシング1に固定され、支持フレーム8およびバケット2はケーシング1と同心状に保たれることになる。なお、この時にはバケット2の底蓋27は閉じた状態を保持している。
【0053】
こうして、支持フレーム8がケーシング1に固定されたならば、図11の(B)に示すように、掘削機3の起動によりケーシング1を所定速度で回転させるとともに、所定の推力で地盤中に圧入する一方、同時に支持フレーム8側の油圧モータ24(図4参照)を起動して、バケット2をケーシング1よりも大きな回転速度で回転させる。
【0054】
この場合において、バケット2の回転方向はケーシング1の回転方向に対して逆方向とし、例えばケーシング1を右回転とした場合には、バケット2は左回転でケーシング1よりも大きな回転速度で回転させるものとする。つまり、ケーシング1の内周面にパッド19の摩擦力で固定支持されている支持フレーム8は、ケーシング1とともに同方向に回転することになるが、その支持フレーム8に支持されているバケット2はケーシング1よりも大きな回転速度で逆方向に強制回転させ、ケーシング1とバケット2との相対回転速度差を可及的に大きく確保する。
【0055】
また、ケーシング1の上端面に搭載されている補器受け台9はケーシング1とともに回転することになるが、先に述べたセンタースィーベルロックバー44の一部とセンタースィーベルロック用ガイドポスト45との当接のために元圧側油圧ホース42等の供回りが防止される。
【0056】
そして、この相対回転速度差とケーシング1の圧入ストロークのために、ケーシング1の孔底の土砂が掘削されて、バケット2の底蓋27の開口部34(図8参照)からバケット2の内部にスムースに取り込まれることになる。
【0057】
支持フレーム8に支持されているバケット2がケーシング1とともに所定量、例えばバケット2の全高にほぼ等しい1.5m程度可能したならば、ケーシング1の回転停止および圧入停止とともに、バケット2の回転も停止させる。さらに、グリッパアーム18の先端のパッド19も後退させて、ケーシング1の内周面に対する支持フレーム8の固定を解除する。
【0058】
ここで、先にも述べたように、バケット2の回転は、ケーシング1の回転とは無関係に独立した油圧モータ24によってなされるものであるから、バケット2の回転開始や回転停止のタイミングは必ずしもケーシング1の回転に完全に同期している必要はなく、バケット2の回転速度とともにバケット2の回転開始や回転停止のタイミングは任意に設定可能である。
【0059】
そして、土砂が収容されているバケット2を支持フレーム8ごとゆっくりと吊り上げて、バケット2内の土砂を揚土するべくケーシング1の外部に搬出し、図12の(A)に示すように残土集積場まで移動させる。上記のようなバケット2の吊り上げ過程では、油圧ホース36,37が順次油圧ホースリールユニット46,47に巻き取られる一方、支持フレーム8は、それまでケーシング1の上端面に搭載されていた補器受け台9までもリフトアップさせて一緒に吊り上げることになる。
【0060】
この後、図11の(B)に示すように、残土集積場にてバケット2の高さ調整を行った上で、操作レバー31(図4参照)による開蓋操作によりバケット2の底蓋27を開いて、バケット2内の土砂を排土する。
【0061】
排土が終了したならば底蓋27を閉じ、以降は図10の(A)以降の操作を繰り返すことになる。
【0062】
このように本実施の形態によれば、バケット2による土砂の掘削と取り込みをきわめて効率良く行うことができるとともに、ケーシング1の外部への揚土(排土)も効率的に行えるほか、以下に列記するような利点がある。
【0063】
(1)水中掘削にも容易に適用することができ、その場合でも作業効率はほとんど変わらない。
【0064】
(2)掘削と土砂取り込みの効率化によって作業時間を短縮でき、CO2の削減が図れる。
【0065】
(3)動力として油圧を基本としているので、いわゆるラフタークレーンでも作業可能である。
【0066】
(4)バケットによる掘削と土砂取り込みにクレーンオペレータの技術を必要としない。
【符号の説明】
【0067】
1…ケーシング
2…バケット
3…全旋回式オールケーシング掘削機
4…クローラクレーン(吊り下げ母機)
7…ワイヤ(索条体)
8…支持フレーム(バケット支持手段)
9…補器受け台(油圧中継手段)
18…グリッパアーム(グリッパ手段)
19…パッド(グリッパ手段)
20…油圧シリンダ(グリッパ手段)
24…油圧モータ(バケット駆動手段)
26…バケット本体
27…底蓋
36…油圧ホース
37…油圧ホース
46…油圧ホースリールユニット
47…油圧ホースリールユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に圧入したケーシング内にバケットを収容配置し、そのバケットを回転させることでケーシングの孔底部を掘削するようにした削孔方法において、
上記ケーシングを回転させながら圧入するのと並行して、上記バケットを独立したバケット駆動手段によりケーシングの回転方向とは逆方向に且つケーシングの回転速度よりも大きな回転速度で回転させることを特徴とする削孔方法。
【請求項2】
上記バケットを回転可能に支持しているバケット支持手段をケーシングの内周面に固定して上で、そのバケット支持手段に搭載されているバケット駆動手段にてバケットを回転駆動させることを特徴とする請求項1に記載の削孔方法。
【請求項3】
上記ケーシングの内周面に対するバケット支持手段の固定は、そのバケット支持手段に搭載されているグリッパ手段にて行うものであることを特徴とする請求項2に記載の削孔方法。
【請求項4】
地中に圧入したケーシング内にバケットを収容配置し、そのバケットを回転させることでケーシングの孔底部を掘削するようにした削孔方法において、
上記バケットを回転可能に支持しているバケット支持手段をバケットとともにケーシング内に吊り降ろして、バケットを孔底部に着底させる工程と、
着底したバケットを支持しているバケット支持手段を当該バケット支持手段に搭載されているグリッパ手段にてケーシングの内周面に固定する工程と、
上記ケーシングを回転させながら圧入するのと並行して、上記バケットをバケット支持手段に搭載されているバケット駆動手段によりケーシングの回転方向とは逆方向に且つケーシングの回転速度よりも大きな回転速度で回転させて、孔底部の土砂を掘削しながらバケット内に取り込む工程と、
上記ケーシング内の内周面に対するバケット支持手段の固定を解除した上で、土砂取り込み後のバケットをバケット支持手段ごとケーシング外に搬出してバケット内の土砂を排土する工程と、
を含むことを特徴とする削孔方法。
【請求項5】
地中に圧入したケーシング内にバケットを収容配置し、ケーシングを回転させながら圧入するのと並行して、バケットも回転させることでケーシングの孔底部を掘削するようにしたバケット式削孔装置において、
索条体により吊り下げ支持されるバケット支持手段と、
上記バケット支持手段に回転可能に支持されていて、バケット支持手段とともにケーシング内に収容配置されるバケットと、
上記バケット支持手段に搭載されて、ケーシングの内周面に対するバケット支持手段の固定とその解除を司るグリッパ手段と、
上記バケット支持手段に搭載されて、バケットをケーシングの回転方向とは逆方向に且つケーシングの回転速度よりも大きな回転速度で回転させるバケット駆動手段と、
を備えていることを特徴とするバケット式削孔装置。
【請求項6】
上記グリッパ手段およびバケット駆動手段が共に油圧式のものであることを特徴とする請求項5に記載のバケット式削孔装置。
【請求項7】
上記ケーシングの上端に搭載される油圧中継手段を有していて、
上記バケット支持手段をケーシング内から吊り上げる際には、そのバケット支持手段の上に油圧中継手段を搭載した状態で吊り上げる一方、
上記バケット支持手段をケーシング内に吊り降ろす際には、上記油圧中継手段をケーシングの上端に移載した上でバケット支持手段を単独で降下させるようになっていることを特徴とする請求項6に記載のバケット式削孔装置。
【請求項8】
上記油圧中継手段は、当該油圧中継手段と油圧式のグリッパ手段およびバケット駆動手段とをそれぞれに接続している油圧ホースの巻き取りと繰り出しを司るホースリールユニットを備えていることを特徴とする請求項7に記載のバケット式削孔装置。
【請求項9】
上記バケット支持手段をクレーンタイプの母機に索条体を介して吊り下げ支持させてあることを特徴とする請求項5〜8のいずれか一つに記載のバケット式削孔装置。
【請求項10】
上記バケットは、底蓋に掘削刃と土砂取り込み用の開口部が形成されているとともに、底蓋自体が開閉可能となっていることを特徴とする請求項5〜9のいずれか一つに記載のバケット式削孔装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−12839(P2012−12839A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−150691(P2010−150691)
【出願日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【特許番号】特許第4714792号(P4714792)
【特許公報発行日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(510183073)八州建機株式会社 (2)
【Fターム(参考)】