説明

バタフライバルブ

【課題】弁体と弁棒の組立分解作業を著しく簡素化するとともに、当該作業に要する細かい部材や特別な工具を不要とし、異物の発生を確実に防止することが可能なバタフライバルブを提供する。
【解決手段】先端周囲部14a、14bに、全てに渡って、外周から所定の深さt1で、且つ、前記弁体12の厚さと同等の厚さで凹状に切削された周囲溝15a、15bと、前記周囲溝15a、15bの底面の両端近傍に、所定の鋭角で、前記先端周囲部の先端面に向かって緩やかに傾斜する第一のテーパ面16a、16bと、弁体12の外周の両端部17a、17bに、前記周囲溝15a、15bの底面が描く形状と同等の形状に切削された開口部18a、18bと、前記開口部18a、18bの両側面に、前記第一のテーパ面の鋭角と同等の鋭角で、前記弁体の中心に向かって緩やかに傾斜する第二のテーパ面19a、19bとを備えるバタフライバルブ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バタフライバルブに関し、詳しくは、弁体と弁棒の組立分解作業を著しく簡素化するとともに、当該作業に要する細かい部材や特別な工具を不要とし、更に、清掃等のメンテナンス作業も容易とすることが可能なバタフライバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のバタフライバルブは、250A程度の大きさの管で構成された円筒状の弁箱に、一対の孔が穿設され、当該弁箱の内面にゴムシートを貼り付けた構成としている。そして、円盤状の弁体に、貫通孔が穿設してあり、弁棒にはハンドルが取り付けられ、当該弁箱の内部に弁体を挿入するとともに、弁箱の外側から孔に挿入した弁棒を弁体の貫通孔に通して2本のピンで弁棒に対して弁体を固定した構成としている。
【0003】
前記構成では、前記弁体に穿設されている貫通孔の大きさは、例えば、φ25で長さ250mmと細長いものであり、この貫通孔の清掃は極めて困難であるという問題がある。又、バタフライバルブの総重量が約20kg程度であるとともに、前記弁棒の長さが300mmもあるため、前記バタフライバルブの組立分解作業が非常に困難であるという問題がある。更に、ゴムシートは弁箱の内面にボンドで貼り付ける方式が一般的であり、長期間使用するとその接着面が剥がれて、前記ゴムシートと前記弁箱の内面との隙間に洗浄水や粉体が侵入し、除去出来なくなるという問題がある。そして、従来のゴムシートの材質は通常はネオプレン60゜が使用されるが、当該ネオプレンは硬質であるため、前記ゴムシートの脱着作業に多大な労力を要しているという問題がある。又、前記弁箱に穿設されている孔と弁棒との接触部が金属同志の摩擦によって、短期間の使用の内に金属屑が発生するといった問題がある。
【0004】
このような問題を解決するために、例えば、特開平7−293711号公報(特許文献1)には、筒状の弁箱内で平板状の弁体を回転させることにより通路を開閉するバタフライバルブが開示されている。前記バタフライバルブでは、弁体に一対の凹部を形成し、弁箱に形成された一対の孔の一方に押さえ具を脱着自在に装着し、当該押さえ具の先端部を前記弁体の凹部の一方に挿入する。そして、前記一対の孔の他方にハンドルを脱着自在に装着し、当該ハンドルの先端部を前記弁体の凹部の他方に係脱自在に挿入する。これにより、清掃や組立分解作業が著しく容易になる等の上述した問題を解決することが出来るとしている。
【0005】
又、特開2000−257726号公報(特許文献2)には、両端がヘルールのリング状の囲壁からなるケース本体と、このケース本体に回動可能に軸支され、粉、粒、などの流体の通過を断続する円形のバタフライバルブとが備えられたバタフライバルブ装置が開示されている。前記バタフライバルブでは、円形のバタフライバルブとして、円盤状のバタフライバルブ本体と、その外周の凹溝に嵌合しケース本体内面に摺接可能なパッキン状の弾性リングとが備えられている。又、ケース本体の左右対称位置の貫通孔と、その外側に位置する一対のヘルール軸受と、これに外側より挿嵌されて支承される一対の弁棒とが備えられる。そして、前記バタフライバルブ本体の左右には、前記弾性リングと同一厚さで且つ、前記弁棒の先端形状に合致する薄肉平坦部とその外側に切欠空間部とが形成され、前記弁棒先端部には、前記薄肉平坦部と、切欠空間部に位置する弾性リングとを、密接に挟持可能なスリット部が形成される。これにより、遮蔽時のシール性が良く、原料が隙間に詰まって残留することがなく、組立分解操作を迅速に行うことが出来るとしている。又、前記バタフライバルブ装置は、前記一方のヘルール軸受外側には、盲ヘルールが位置し、他方のヘルール軸受外側には、作動側ヘルールが位置し、これら二組の隣接したヘルールは、夫々クランプにより結合され、前記作動側ヘルールを貫通する弁棒に回動動作を伝達する作動体が着脱可能に嵌着される。これにより、熟練者でなくても組立分解操作を治工具を用いず手作業で迅速に行うことが出来るとともに、細い部品が原料の中に異物として混入され、不測の事態が生ずるのを未然に防止することが出来るとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−293711号公報
【特許文献2】特開2000−257726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記特許文献1に記載の発明では、弁棒の先端部を装着する弁体の凹部を作成する場合に、高度な溶接工程、鋳物工程を行う必要があり、当該作成に要する費用が高価になるとともに、前記工程に手間が掛かるという問題がある。
【0008】
又、前記特許文献2に記載の発明では、前記特許文献1と同様に、前記弁体の薄肉平坦部を作成する場合に、高度な溶接工程、鋳物工程を行う必要があるという問題がある。
【0009】
又、従来のバタフライバルブでは、上述したように、前記弁体に前記弁棒を装着する際に、所定のネジを利用していた。従来のバタフライバルブ110では、図11に示すように、前記弁体111の外周の両端(左右両端)111a、111bに装着される一対の弁棒112a、112bの先端112a1、112b1に、当該弁体111の厚さと同等の厚さでスリット(図示せず)を予め切削しておく。又、前記一対の弁棒112a、112bの先端112a1、112b1における当該スリットが、前記弁体111の外周の両端111a、111bを挟持可能に構成する。次に、前記一対の弁棒112a、112bの先端112a1、112b1の一方向(正面視方向)から、前記スリットを介し、当該先端112a1、112b1の他方向(背面視方向)まで貫通する所定のネジ孔112a2、112b2をそれぞれ2つ設けておく。一方、前記一対の弁棒112a、112bのネジ孔112a2、112b2に対応して、前記弁体111の外周の両端111a、111bに、2つの挿通孔(図示せず)をそれぞれ設けておく。このような構成で、前記弁体111を弁箱113の内部に配置し、当該弁箱113に予め設けられた貫通孔(図示せず)を介して、前記一対の弁棒112a、112bの先端112a1、112b1におけるスリットを、当該弁体111の外周の両端111a、111bへ両側からそれぞれ嵌め合わせる。これにより、前記弁体111が前記一対の弁棒112a、112bにより支承される。次に、予め用意しておいた所定のネジ114を、前記一対の弁棒112a、112bの先端112a1、112b1に設けられたネジ孔112a2、112b2に挿通する。更に、前記ネジ114を、前記弁体111の挿通孔に貫通させた後、当該ネジ114を予め用意したナットで固定し、当該ネジ114と当該ナットとを栓熔接する。これにより、前記弁棒112a、112bと前記弁体111とを確実に固定し、前記ネジ114の落下を防止する。
【0010】
しかしながら、前記従来のバタフライバルブ110では、一度、前記弁棒112a、112bを前記弁体111に装着すると、上述した溶接工程により、両者を簡単に取り外すことが出来ず、仮に、清掃等のメンテナンス作業をする場合に、非常に手間が掛かるという問題がある。又、前記ネジ114を用いるため、所定の引っ掛かり部(突起部)が生じ、当該引っ掛かり部に粉体などが残留、凝集し、やはり、前記清掃等のメンテナンス作業に手間が掛かるという問題がある。更に、前記従来のバタフライバルブ110では、長期間使用すると、何らかの原因により溶接したネジ114が落下する場合があり、当該ネジ114の落下に起因する異物が発生するという問題がある。
【0011】
そこで、本発明は、前記問題を解決するためになされたものであり、弁体と弁棒の組立分解作業を著しく簡素化するとともに、当該作業に要する細かい部材や特別な工具を不要とし、更に、清掃等のメンテナンス作業も容易とすることが可能なバタフライバルブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、本発明に係る新規なバタフライバルブを完成させた。
【0013】
即ち、本発明に係るバタフライバルブは、弁箱内に配置される弁体の外周の両端に、略円柱形の一対の弁棒をそれぞれ装着することで、前記弁棒の回転を介して、前記弁体を前記弁箱内で回転させるバタフライバルブであって、以下の構成を採用する。
【0014】
前記バタフライバルブは、前記弁体に装着される弁棒の部分である、一方の側面の所定の位置から先端面を通り他方の側面の所定の位置までの先端周囲部に、当該先端周囲部の全てに渡って、当該先端周囲部の外周から所定の深さで、且つ、前記弁体の厚さと同等の厚さで凹状に切削された周囲溝を備える。又、前記バタフライバルブは、前記周囲溝の底面の両端近傍に対応する前記先端周囲部の両側面に、前記弁棒の軸方向に対し所定の鋭角で、前記先端周囲部の先端面に向かって緩やかに傾斜する第一のテーパ面を備える。更に、前記バタフライバルブは、前記弁棒に装着される弁体の外周の両端部に、前記周囲溝の底面が描く形状と同等の形状に切削された開口部と、前記開口部の両側面に、前記弁体の径方向に対し、前記第一のテーパ面の鋭角と同等の鋭角で、前記弁体の中心に向かって緩やかに傾斜する第二のテーパ面とを備える。
【0015】
これにより、前記第一のテーパ面と第二のテーパ面との当接面に生じる静止摩擦力によって前記弁棒と前記弁体とを装着することが可能となり、両者の組立分解作業を著しく簡素化することが可能となる。又、前記組立分解作業には、特に細かい部材や特別な工具を必要としないため、熟練した作業者でない通常の作業者であっても前記組立分解作業を容易に行うことが可能となるとともに、前記部材に起因する異物の発生も確実に防止することが可能となる。又、前記弁棒と前記弁体との装着には、ネジなどの引っ掛かり部(突起部)が生じないから、清掃等のメンテナンス作業も極めて容易となる。
【0016】
又、前記第一のテーパ面の鋭角と前記第二のテーパ面の鋭角とが、それぞれ0.5度〜30.0度の範囲であると好ましく、特に、それぞれ0.5度〜3.0度の範囲であると更に好ましい。
【0017】
又、前記周囲溝の底面の両端部に対応する前記先端周囲部の両側面の末端部が、前記弁棒の内側に向かって凹むように所定の曲率半径で曲線状に形成され、前記開口部の両側面の末端部が、前記弁体の外側に向かって凸むように前記曲率半径で曲線状に形成される。
【0018】
又、前記周囲溝の底面の中央近傍面に対応する前記先端周囲部の先端面の深さが、前記弁棒を前記弁体に装着した場合に、当該弁棒の周囲溝の底面の中央近傍面と当該弁体の開口部の内側面との間に所定の隙間が生じる深さである。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るバタフライバルブは、弁体と弁棒の組立分解作業を著しく簡素化するとともに、当該作業に要する細かい部材や特別な工具を不要とし、異物の発生を確実に防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係るバタフライバルブの斜視図である。
【図2】本発明に係るバタフライバルブの弁体と弁棒を組み立てた状態の平面図である。
【図3】本発明に係るバタフライバルブの弁体と弁棒を組み立てた状態の正面図である。
【図4】本発明に係るバタフライバルブの弁体と弁棒を組み立てた状態の左側面図である。
【図5】本発明に係るバタフライバルブの弁体と弁棒を組み立てた状態の右側面図である。
【図6】本発明に係るバタフライバルブの弁体と弁棒を分解した状態の平面図である。
【図7】本発明に係るバタフライバルブの弁体と弁棒を分解した状態の正面図である。
【図8】本発明に係るバタフライバルブの弁棒の拡大A−A線断面平面図、拡大正面図、拡大側面図である。
【図9】本発明に係るバタフライバルブの弁体の一方の端部の拡大平面図、拡大正面図、拡大側面図である。
【図10】本発明に係るバタフライバルブの弁棒を弁体に装着する場合の拡大平面図である。
【図11】従来のバタフライバルブの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、添付図面を参照して、本発明に係るバタフライバルブの実施形態について説明し、本発明の理解に供する。尚、以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0022】
図1は、本発明に係るバタフライバルブの斜視図である。
【0023】
本発明に係るバタフライバルブ10は、主として、外装となる中空筒体の弁箱11と、円盤状の弁体12と、略円柱形の一対の弁軸13a、13bとから構成される。
【0024】
前記弁箱11は、所定のバルブに装着可能なバルブ形状の中空筒体であり、前記弁軸13a、13bを貫通可能な貫通孔11a、11bが左右両側に設けられている。
【0025】
又、前記一対の弁棒13a、13bには、自身の先端面近傍に、所定の周囲溝がそれぞれ切削されているとともに、前記弁体12の外周の左右両端部には、前記周囲溝と装着(嵌合)する開口部が切削されている(後述する)。
【0026】
ここで、前記弁箱11の内部に前記弁体12を配置した状態で、当該弁箱11の貫通孔11a、11bを介して、前記一対の弁棒13a、13bの先端面の周囲溝を、前記弁体12の両端部の開口部に両側からそれぞれ装着すると、前記弁棒13a、13bが前記弁体12に固定される。前記弁体12は、一方の弁棒13aの回転により、前記弁箱11の内部で回転自在となる。
【0027】
又、一方の弁棒13aの末端13a1は、外部に設けられるハンドル部の端部(図示せず)と装着可能な形状、例えば、略直方体の形状に形成されており、当該略直方体の形状に前記ハンドル部の端部を装着し、当該ハンドル部を回転させると、当該回転が前記弁棒13aを介して前記弁体12に伝達され、当該弁体12が回転される。
【0028】
ところで、前記弁体12の直径(寸法)は、前記弁箱11の内径よりも所定の大きさ(例えば、数μm−数十μm)だけ縮小された直径に構成される。このような構成とすると、本発明に係るバタフライバルブ10を、例えば、麺粉、パン粉などの粉体が通過するバルブに適用した場合に、前記弁体12の外周と、前記弁箱11の内径との間の隙間(クリアランス)に、前記粉体が凝集され、当該凝集された粉体からなるシール(マテリアルシールともいう)が自然に形成される。前記シールは、通常、前記隙間に設けられるゴム弾性体からなる弾性リングのように閉弁時(遮断時)の気密性を高める。そのため、本発明に係るバタフライバルブ10では、所定のバルブに適用すると、別個に前記弾性リングを設ける必要が無くなり、コストダウンを図ることが可能となるとともに、前記弾性リングの磨耗による異物発生を確実に防止する。特に、前記粉体が、糖などの結晶系である場合、前記弾性リングの磨耗は著しくなるが、前記構成のバルブとすると、その磨耗による異物発生を確実に防止出来る。
【0029】
次に、本発明に係るバタフライバルブの弁体と弁棒について説明する。
【0030】
図2は、本発明に係るバタフライバルブの弁体と弁棒を組み立てた状態の平面図であり、図3は、本発明に係るバタフライバルブの弁体と弁棒を組み立てた状態の正面図である。又、図4は、本発明に係るバタフライバルブの弁体と弁棒を組み立てた状態の左側面図であり、図5は、本発明に係るバタフライバルブの弁体と弁棒を組み立てた状態の右側面図である。尚、本発明に係るバタフライバルブの弁体と弁棒を組み立てた状態の底面図は、前記平面図と対称であり、本発明に係るバタフライバルブの弁体と弁棒を組み立てた状態の背面図は、前記正面図と対称であるため、省略する。
【0031】
又、図6は、本発明に係るバタフライバルブの弁体と弁棒を分解した状態の平面図であり、図7は、本発明に係るバタフライバルブの弁体と弁棒を分解した状態の正面図である。
【0032】
本発明に係るバタフライバルブ10の弁棒13a、13bには、図2〜図7に示すように、前記弁体12に装着される弁棒13a、13bの部分である、一方の側面の所定の位置14a1、14b1から先端面14a2、14b2を通り他方の側面の所定の位置14a3、14b3までの先端周囲部14a、14bに、当該先端周囲部14a、14bの全てに渡って、当該先端周囲部14a、14bの外周から所定の深さt1で凹状に切削された周囲溝15a、15bが備えられる。
【0033】
ここで、前記他方の側面の所定の位置14a3、14b3は、一方の側面の所定の位置14a1、14b1に対向する。又、前記先端周囲部14a、14bの先端面14a2、14b2は、前記弁棒13a、13bの円柱形の底面に対応する。
【0034】
更に、前記周囲溝15a、15bは、正面視において、前記弁体12の厚さと同等の厚さt2で凹状に切削される。ここで、同等とは、同一を含む意味であり、略同一を意味する。以下、同様である。
【0035】
次に、一方の弁棒13aの先端周囲部14a(周囲溝15a)の構成について、詳細に説明する。
【0036】
図8は、本発明に係るバタフライバルブの一方の弁棒の拡大A−A線断面平面図、拡大正面図、拡大側面図である。
【0037】
図8に示すように、一方の弁棒13aにおいて、前記周囲溝15aの底面の両端近傍に対応する前記先端周囲部14aの両側面に、前記弁棒13aの軸方向に対し所定の鋭角α1で、前記先端周囲部14aの先端面14a2に向かって緩やかに傾斜する第一のテーパ面16aが設けられている。
【0038】
ここで、前記第一のテーパ面16aは、前記先端周囲部14aの両側面のうち、前記所定の位置14a1、14a3から先端面よりの所定の位置14a4から先端面14a2の手前までの範囲、言い換えると、前記周囲溝15aの底面の両端近傍14a4から中央近傍面15a1の手前までの範囲にわたって設けられている。
【0039】
尚、前記周囲溝15aの底面の両端は、前記先端周囲部14aの側面の末端に対応し、前記周囲溝15aの底面の中央近傍面は、前記先端周囲部14aの先端面に対応するように表現している。
【0040】
又、他方の弁棒13aであっても、前記一方の弁棒13aと同様の第一のテーパ面16bが前記先端周囲部14aの両側面にそれぞれ設けられる。
【0041】
ところで、本発明に係るバタフライバルブ10の弁体12には、図2〜図7に示すように、前記弁棒13a、13bに装着される弁体12の外周の両端部17a、17bに、前記周囲溝15a、15bの底面が描く形状と同等の形状(同等の側面の形状)に切削された開口部18a、18bが備えられている。
【0042】
次に、弁体12の開口部18aの構成について、詳細に説明する。
【0043】
図9は、本発明に係るバタフライバルブの弁体の一方の端部の拡大平面図、拡大正面図、拡大側面図である。
【0044】
図9に示すように、一方の弁棒13aが装着される弁体12の一方の開口部18aの両側面に、前記弁体12の径方向に対し、前記第一のテーパ面16aの鋭角α1と同等の鋭角α2で、前記弁体12の中心に向かって緩やかに傾斜する第二のテーパ面19aが設けられている。ここで、前記第二のテーパ面19aの鋭角α2が、前記第一のテーパ面16aの鋭角α1と同等であるとは、同一を含み、その理由は、当該第二のテーパ面19a及び当該第一のテーパ面16aを切削(形成)する際に、内部残留応力、切削誤差などにより、必ずしも同一とならない場合があるからである。
【0045】
ここで、前記第二のテーパ面19aは、前記開口部18aの両側面のうち、前記弁体12の外周から内部よりの所定の位置18a1から内側面18a2の手前までの範囲にわたって設けられている。
【0046】
又、他方の開口部18bであっても、前記一方の開口部18aと同様の第二のテーパ面19bが設けられる。
【0047】
さて、次に、本発明に係るバタフライバルブ10の弁棒13a、13bを弁体12に装着する場合について、詳細に説明する。
【0048】
図10は、本発明に係るバタフライバルブの弁棒を弁体に装着する場合の拡大平面図である。
【0049】
図10に示すように、前記弁体12の一方の開口部18aに、前記一方の弁棒13aの周囲溝15aを嵌め合わせれば、当該周囲溝15aの底面が形成する形状(切削後の前記先端周囲部14aの両側面及び先端面が形成する形状)が凸部となり、前記開口部18aの側面が形成する形状が凹部となって嵌り込む。そして、前記周囲溝15aの第一のテーパ面16aが前記開口部18aの第二のテーパ面19aに当接するとともに、当該第一のテーパ面16a(前記周囲溝15aの両側面)が、丁度、当該第二のテーパ面19a(前記開口部18aの両側面)を拡張するように所定の力(垂直抗力とする)を作用することになる。これにより、前記一方の弁棒13aが前記弁体12の一方の開口部18aに装着される。
【0050】
ここで、仮に、前記一方の弁棒13aを前記弁体12から引き抜こうとすると、前記第一のテーパ面16aが、前記第二のテーパ面19aに前記弁棒13aの軸方向(前記弁体12の径方向)、つまり、引き抜く方向に対して所定の鋭角α1(α2)で当接し、且つ、前記垂直抗力が作用しているから、当該当接面に、前記引き抜く方向とは逆方向に静止摩擦力が生じることになる。
【0051】
ここで、前記静止摩擦力F(N)は、例えば、次式で示される。
【0052】
F=tanα*N
【0053】
Fが、静止摩擦力(N)であり、α(α1、α2に対応)が、前記鋭角(度)であり、Nが、垂直抗力(N)である。尚、αが小さい程、又はNが大きい程、Fが大きくなることが理解される。
【0054】
前記式の静止摩擦力Fが生じる場合、前記一方の弁棒13aを引き抜く力が、当該静止摩擦力Fを超えない限り、当該弁棒13aを前記弁体12から外すことが出来なくなる。つまり、前記装着に要する細かい部材や特別な工具が無くても、前記静止摩擦力Fで前記弁棒13aを前記弁体12に装着(組立)することが可能となるのである。
【0055】
一方、例えば、所定のドライバーの末端部で前記一方の弁棒13aを前記弁体12から外れるように(引き抜く方向に)当該一方の弁棒13aに所定の衝撃を加えれば、当該一方の弁棒13aを引き抜く力が前記静止摩擦力Fを超えて、当該一方の弁棒13aが前記弁体12から容易に外れる。つまり、前記弁棒13aを前記弁体12から取り外す(分解)場合であっても、特別な工具を用いる必要が無く、簡単に分解作業を行うことが可能となるのである。尚、前記他方の弁棒13bであっても、同様である。
【0056】
総じて、前記弁棒13a、13bと前記弁体12との組立分解作業を飛躍的に簡素化することが可能となる。
【0057】
又、前記組立分解作業には、上述したように細かい部材(従来であれば、ネジなど)や溶接作業なども不要とするため、熟練した作業者でない通常の作業者であっても前記組立分解作業を容易に行うことが可能となるとともに、前記部材に起因する異物の発生も確実に防止することが可能となる。
【0058】
更に、前記弁棒13a、13bと前記弁体12との装着には、ネジなどの引っ掛かり部(突起部)が生じない構成であるから、例えば、粉体が通過するバタフライバルブに適用した場合に、当該粉体が、前記引っ掛かり部に残留して凝集することが無くなる。又、例えば、清掃等のメンテナンス作業においても、当該メンテナンス作業の部材が、前記引っ掛かり部に引っ掛かって邪魔になることも無い。従って、前記メンテナンス作業が極めて容易となる。
【0059】
尚、前記弁棒13a、13bの周囲溝15a、15bを前記弁体12の開口部18a、18bに装着した場合、当該周囲溝15a、15bの厚みが、当該弁体12の厚みと同等であるため、当該周囲溝15a、15bの底面を挟む両側面、つまり、前記弁棒13a、13bの上下の部材が、丁度、前記開口部18a、18bの上下面と擦れ合い、挟み込む形態となる。そのため、前記弁棒13a、13bを回転させた場合に、当該弁棒13a、13bの周囲溝15a、15bの、前記弁体12の開口部18a、18bに対する挟み込みが前記回転を適切に伝達し、当該弁体12は回転されることになる。
【0060】
ここで、本発明に係るバタフライバルブ10では、前記第一のテーパ面16a、16bの鋭角α1と前記第二のテーパ面19a、19bの鋭角α2とが、それぞれ0.5度〜30.0度の範囲であると好ましい。この範囲は、前記第一のテーパ面16a、16bと前記第二のテーパ面19a、19bとの当接面において必要な静止摩擦力Fを生じさせる範囲であり、このような構成とすると、前記弁棒13a、13bが前記弁体12から容易に抜け落ちる可能性を低減させることが可能となる。尚、前記第一のテーパ面16a、16bの鋭角α1と前記第二のテーパ面19a、19bの鋭角α2とが、前記範囲内であっても、同等であることには変わりない。又、前記鋭角α1、α2の範囲は、所定のテーパ面の静止摩擦力を利用して固定するピンのテーパピンのテーパ面の鋭角の範囲に対応する。
【0061】
一方、前記第一のテーパ面16a、16bの鋭角α1及び前記第二のテーパ面19a、19bの鋭角α2が、それぞれ0.5度未満である場合やそれぞれ30.0度を超える場合、当該第一のテーパ面16a、16bと当該第二のテーパ面19a、19bとの当接面に働く静止摩擦力Fが小さくなり、前記弁棒13a、13bが前記弁体12から抜け落ちる可能性があるため、好ましくない。
【0062】
更に、強固な静止摩擦力Fを得るためには、前記第一のテーパ面16a、16bの鋭角α1と前記第二のテーパ面19a、19bの鋭角α2とが、それぞれ0.5度〜3.0度の範囲であると、上述した式により、tanαが1に近づき、前記静止摩擦力Fが大きくなり、特に好ましい。
【0063】
尚、図1〜図10に示す前記第一のテーパ面16a、16bの鋭角α1と前記第二のテーパ面19a、19bの鋭角α2は、同一で、1.0度であるが、この角度は、あくまでも一例である。
【0064】
又、本発明に係るバタフライバルブ10では、前記第一のテーパ面16a、16bの鋭角α1と前記第二のテーパ面19a、19bの鋭角α2とが、当該第一のテーパ面16a、16bと当該第二のテーパ面19a、19bとの当接面に前記静止摩擦力Fが生じる範囲内(例えば、1.0度未満の範囲内)で同等であることが好ましい。
【0065】
特に、前記第一のテーパ面16a、16bの鋭角α1と前記第二のテーパ面19a、19bの鋭角α2とが同一であれば、当該第一のテーパ面16a、16bと当該第二のテーパ面19a、19bとが、全面的に当接(接触)するため、十分な静止摩擦力Fが生じて最も好ましい。ここで、本発明に係るバタフライバルブ10を製造する際に、上述のように、前記第一のテーパ面16a、16bを含む弁棒13a、13bの周囲溝15a、15bと、前記第二のテーパ面19a、19bを含む弁体12の開口部18a、18bとを切削すると、内部残留応力、切削誤差などが必ず生じるので、必ずしも同一とならない場合がある。現実には、前記第一のテーパ面16a、16bの鋭角α1と前記第二のテーパ面19a、19bの鋭角α2とが、前記静止摩擦力Fの生じる範囲で同等であれば、前記弁棒13a、13bの周囲溝15a、15bの底面(内側面)と、弁体12の開口部18a、18bの内側面とが所定の面積の範囲で当接し、当該静止摩擦力Fの発生が担保されるため、問題ない。
【0066】
又、本発明に係るバタフライバルブ10では、図8に示すように、前記周囲溝15aの底面の両端部15a2に対応する前記先端周囲部14aの両側面の末端部14a1、14a3が、前記弁棒13aの内側に向かって凹むように所定の曲率半径Rで曲線状に形成され、図9に示すように、前記開口部18aの両側面の末端部18a3が、前記弁体12の外側に向かって凸む(つばくむ、突出する)ように前記曲率半径Rで曲線状に形成されると好ましい。前記周囲溝15aの底面の両端部15a2と前記開口部18aの両側面の末端部18a3との間の隙間が、異物の最も入り込み易い箇所であるが、このような構成とすると、当該隙間が、直線状とならないため、当該隙間に異物が入り難くなる。
【0067】
一方、例えば、前記周囲溝15aの底面の両端部15a2を直線状に形成し、前記開口部18aの両側面の末端部18a3を直線状に形成すると、両者間の隙間が直線状となり、異物が入り込み易く、清掃等のメンテナンス作業を頻繁に行う必要が生じ、好ましくない。
【0068】
尚、前記曲率半径Rは、前記隙間が直線状とならなければ、どのような値でも構わないが、例えば、図8、図9に示す前記曲率半径Rは、16mmである。
【0069】
又、本発明に係るバタフライバルブ10では、図10に示すように、前記周囲溝15aの底面の中央近傍面15a1に対応する前記先端周囲部14aの先端面14a2の深さt3が、前記弁棒13aを前記弁体12に装着した場合に、当該弁棒13aの周囲溝15aの底面の中央近傍面15a1と当該弁体12の開口部18aの内側面18a2との間に所定の隙間t4が生じる深さであると好ましい。このように構成すると、前記弁棒13aを前記弁体12に装着した場合に、前記第一のテーパ面16aと前記第二のテーパ面19aとの当接面に静止摩擦力Fを働かせながら前記弁棒13aを前記弁体13に差し込むことが可能となる。そして、前記隙間t4が、前記周囲溝15aと前記開口部18aとに生じる切削誤差を吸収し(含み)、前記第一のテーパ面16aと前記第二のテーパ面19aとを全面的に当接(接触)させることが可能となり、十分な静止摩擦力Fを生じさせることが可能となる。そのため、前記弁棒13aを前記弁体12から取り外す場合に、外し易くなる。尚、前記隙間t4は、0.数mm(例えば,0.1mm、0.2mmなど)の範囲内である。
【0070】
一方、前記弁棒13aを前記弁体12に装着した場合に、前記周囲溝15aの底面の中央近傍面15a1と前記開口部18aの内側面18a2との間に所定の隙間t4が生じないと、前記切削誤差が吸収されず、前記第一のテーパ面16aと前記第二のテーパ面19aとが全面的に当接しない可能性があり、好ましくない。
【0071】
又、本発明に係るバタフライバルブ10では、前記周囲溝15a、15bの深さt1は、前記弁棒13a、13bを回転させた場合に前記弁体12に回転が生じるのに必要な深さの範囲であり、例えば、前記弁棒13a、13bの先端周囲部14a、14bの幅方向(軸方向と垂直な方向)の寸法に対して1/3〜1/6の範囲とすることが出来る。このように構成すると、前記周囲溝15a、15bが、前記開口部18a、18bに対して適当な強度で嵌め込まれるとともに、当該開口部18a、18bに対する前記周囲溝15a、15bの挟み込みが強固になされ、前記弁棒13a、13bの回転が、前記弁体12に適切に伝達される。前記弁棒13a、13bの先端周囲部14a、14bの幅方向の寸法が、30mmであれば、例えば、前記周囲溝15a、15bの深さt1は、5mmである。
【0072】
又、本発明に係るバタフライバルブ10では、前記弁棒13a、13bの先端周囲部14a、14bの軸方向の寸法は、前記弁体12の直径に対して1/8〜1/10の範囲とすることが出来る。このように構成すると、前記弁棒13a、13bの周囲溝15a、15bに前記弁体12の開口部18a、18bを装着した際に、当該弁棒13a、13bが当該弁体12を確実に支承することが可能となる。
【0073】
又、本発明に係るバタフライバルブ10では、前記弁棒13a、13b及び前記弁体12は、通常の材質、例えば、硬質ステンレスなどを用いることが出来る。又、前記弁棒13a、13b及び前記弁体12は、必要に応じて、表面をクロムメッキで加工すると、両者を装着した際に擦れ粉が生じ難く、異物発生(かじり発生)を防止することが可能となる。
【0074】
このように、本発明に係るバタフライバルブ10では、前記弁棒13a、13bに、前記周囲溝15a、15bと前記第一のテーパ面16a、16bとを備え、前記弁体12に、前記開口部18a、18bと前記第二のテーパ面19a、19bとを備える。
【0075】
これにより、前記第一のテーパ面16a、16bと第二のテーパ面19a、19bとの当接面に生じる静止摩擦力によって前記弁棒13a、13bと前記弁体12とを装着することが可能となり、両者の組立分解作業を著しく簡素化することが可能となる。又、前記組立分解作業には、特に細かい部材や特別な工具を必要としないため、熟練した作業者でない通常の作業者であっても前記組立分解作業を容易に行うことが可能となるとともに、前記部材に起因する異物の発生も確実に防止することが可能となる。
【0076】
尚、本発明に係るバタフライバルブは、図2〜図10に基づいて、当業者が、通常の切削刃、例えば、円板状の切削刃や棒状の切削刃を用いて製造することが出来ることは言うまでも無い。
【産業上の利用可能性】
【0077】
以上のように、本発明に係るバタフライバルブは、弁体と弁棒の組立分解作業を著しく簡素化するとともに、当該作業に要する細かい部材や特別な工具を不要とし、異物の発生を確実に防止することが可能なバタフライバルブとして有効である。
【符号の説明】
【0078】
10 バタフライバルブ
11 弁箱
12 弁体
13a、13b 一対の弁軸
14a、14b 先端周囲部
15a、15b 周囲溝
16a、16b 第一のテーパ面
17a、17b 弁体の外周の両端部
18a、18b 開口部
19a、19b 第二のテーパ面


【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁箱内に配置される弁体の外周の両端に、略円柱形の一対の弁棒をそれぞれ装着することで、前記弁棒の回転を介して、前記弁体を前記弁箱内で回転させるバタフライバルブであって、
前記弁体に装着される弁棒の部分である、一方の側面の所定の位置から先端面を通り他方の側面の所定の位置までの先端周囲部に、当該先端周囲部の全てに渡って、当該先端周囲部の外周から所定の深さで、且つ、前記弁体の厚さと同等の厚さで凹状に切削された周囲溝と、
前記周囲溝の底面の両端近傍に対応する前記先端周囲部の両側面に、前記弁棒の軸方向に対し所定の鋭角で、前記先端周囲部の先端面に向かって緩やかに傾斜する第一のテーパ面と、
前記弁棒に装着される弁体の外周の両端部に、前記周囲溝の底面が描く形状と同等の形状に切削された開口部と、
前記開口部の両側面に、前記弁体の径方向に対し、前記第一のテーパ面の鋭角と同等の鋭角で、前記弁体の中心に向かって緩やかに傾斜する第二のテーパ面と
を備えるバタフライバルブ。
【請求項2】
前記第一のテーパ面の鋭角と前記第二のテーパ面の鋭角とが、それぞれ0.5度〜30.0度の範囲である
請求項1に記載のバタフライバルブ。
【請求項3】
前記第一のテーパ面の鋭角と前記第二のテーパ面の鋭角とが、それぞれ0.5度〜3.0度の範囲である
請求項1又は2に記載のバタフライバルブ。
【請求項4】
前記周囲溝の底面の両端部に対応する前記先端周囲部の両側面の末端部が、前記弁棒の内側に向かって凹むように所定の曲率半径で曲線状に形成され、
前記開口部の両側面の末端部が、前記弁体の外側に向かって凸むように前記曲率半径で曲線状に形成される
請求項1−3のいずれか一項に記載のバタフライバルブ。
【請求項5】
前記周囲溝の底面の中央近傍面に対応する前記先端周囲部の先端面の深さが、前記弁棒を前記弁体に装着した場合に、当該弁棒の周囲溝の底面の中央近傍面と当該弁体の開口部の内側面との間に所定の隙間が生じる深さである
請求項1−4のいずれか一項に記載のバタフライバルブ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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