説明

バチルス・チューリンジエンシスに由来するタンパク質の新規調製方法

【課題】バチルス・チューリンジエンシスが産生する有用な活性を示すタンパク質を、従来の方法と同等の活性でかつ高濃度に調製する方法を得ること。
【解決手段】バチルス・チューリンジエンシス由来の活性を有するタンパク質の前駆体タンパク質を酸性溶液を用いて溶解し、酸性で活性を示すプロテアーゼで活性化することにより、活性を有するタンパク質を活性を保ったまま高濃度で調製する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物由来の有用なタンパク質の調製方法に関し、詳細すれば、バチルス・チューリンジエンシス(Bacillus thuringiensis)由来である、細胞認識能および細胞破壊能を含む各種活性を持つタンパク質の新規な調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バチルス・チューリンジエンシスは、1901年に日本人研究者の石渡繁胤氏によって蚕の病原細菌として発見された。以来、本細菌が生産する毒素タンパク質は、微生物殺虫剤として幅広く農業害虫、衛生害虫の防除に利用されてきた。
【0003】
これまでの研究によって、殺虫活性を持つ結晶性タンパク質は、アルカリによる可溶化後、必要に応じてプロテアーゼ処理によって活性化され、昆虫に対する毒性を発揮することが知られている。殺虫活性を持つ結晶性タンパク質は、
(1)プロテアーゼによって活性化された状態において昆虫細胞に選択的な破壊活性を示すCryタンパク質(通常、活性化形態では分子量60〜75kDa)、および
(2)昆虫の細胞に対して非選択的な破壊活性を有し、かつ赤血球の溶血活性を有するCytタンパク質(通常、活性化形態では分子量22〜30kDa)
に分類されることが明らかになっている。
【0004】
細胞認識タンパク質としてのバチルス・チューリンジエンシスの結晶性タンパク質は、Cryタンパク質に代表される選択性の高さ、多様性の豊富さ、および原核生物由来のタンパク質であるが故の遺伝子改変のし易さという、抗体等他の細胞認識タンパク質にない優れた特徴を持っている。しかし、その用途は、今のところ昆虫細胞を標的とした殺虫剤としての利用に限定されている。また、殺虫活性を有する結晶性タンパク質を発現している菌株は、バチルス・チューリンジエンシスのうちわずか30〜40%にすぎず、バチルス・チューリンジエンシスが生産する殺虫活性を有しない結晶性タンパク質の持つ性質については、これまで不明であった。
【0005】
本発明者らは、土壌から分離されたバチルス・チューリンジエンシス菌株を用いて、活性が不明であったタンパク質が、アルカリによる可溶化後にプロテアーゼによって活性化されると、脊椎動物細胞(癌細胞を含む)を選択的に認識および破壊することを明らかにし、バチルス・チューリンジエンシスA1470株由来の分子量が約34kDaの前駆体タンパク質およびそれを活性化することにより得られる分子量約26kDaのタンパク質を特許出願(特願2004-156147:発明の名称「バチルス・チューリンジエンシスA1470株由来の細胞認識および細胞傷害活性を有する新規タンパク質およびそれをコードする遺伝子」)している。
【0006】
このようにバチルス・チューリンジエンシスは殺虫活性、溶血活性、細胞認識および細胞傷害活性などさまざまな活性を示すタンパク質を生産するが、バチルス・チューリンジエンシスの研究自体が殺虫活性についての研究から出発したこと、昆虫の消化液のほとんどがアルカリ性であることから、これまでアルカリ溶液でのみ可溶化がおこなわれてきた。また、研究の過程でバチルス・チューリンジエンシス由来のタンパク質を酸性溶液中におくことも多々あったと思われるが、バチルス・チューリンジエンシス由来のタンパク質はほとんどの場合、酸性条件下で失活することから、酸性を経由する実験は失敗に終わることが多く、こうした経緯からも、これまで、バチルス・チューリンジエンシス由来のタンパク質の可溶化を酸性溶液で行うことはなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
いままでにバチルス・チューリンジエンシスが産生するいくつかの細胞認識および細胞傷害活性を示すタンパク質が報告されているが、アルカリ溶液で可溶化し、アルカリ条件下で活性を持つプロテアーゼで活性化する調製方法では、最終的に得られるタンパク質濃度が低い場合が多かった。特にバチルス・チューリンジエンシスA1470株由来の細胞認識および細胞傷害活性を有するタンパク質については、従来の方法で得られるタンパク質の最終濃度は約20μg/mLときわめて低いものであった。
【0008】
今までのバチルス・チューリンジエンシス研究の歴史的な流れから、バチルス・チューリンジエンシスが産生するタンパク質の機能のスクリーニングを行う際には必ずアルカリ溶液で可溶化し、アルカリ条件下で活性のあるプロテアーゼで活性化して機能確認を行ってきている。このため、酸性条件下でのみ活性を示すタンパク質についてはスクリーニングから漏れてしまっている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、その第一の側面において、バチルス・チューリンジエンシス由来の細胞認識および細胞傷害活性を有するタンパク質の前駆体タンパク質を酸性溶液を用いて溶解し、酸性で活性を示すプロテアーゼで活性化することにより、細胞認識および細胞傷害活性を有するタンパク質を高濃度で調製する方法を提供する。
【0010】
本発明は、バチルス・チューリンジエンシス由来の細胞認識および細胞傷害活性を有するタンパク質の前駆体タンパク質を可溶化するのに約1 mM〜約100 mMの塩酸を用いる方法を提供する。
【0011】
本発明は、バチルス・チューリンジエンシス由来の細胞認識および細胞傷害活性を有するタンパク質の前駆体タンパク質を活性化するのに酸性条件下で活性を持つプロテアーゼ、好ましくはペプシンを用いる方法を提供する。
【0012】
本発明は、バチルス・チューリンジエンシス由来の細胞認識および細胞傷害活性を有するタンパク質の前駆体タンパク質がこの前駆体タンパク質遺伝子を組み込んだ細菌、放線菌、酵母、糸状菌等の宿主細胞由来である場合のタンパク質の調製方法を提供する。
【0013】
本発明は、バチルス・チューリンジエンシス由来の細胞認識および細胞傷害活性を有するタンパク質の前駆体タンパク質がこの前駆体タンパク質遺伝子を組み込んだ大腸菌由来である場合のタンパク質の調製方法を提供する。
【0014】
本発明は、その第二の側面において、バチルス・チューリンジエンシスA1470株由来の分子量34kDaの前駆体タンパク質を酸性溶液を用いて溶解し、酸性で活性を示すプロテアーゼで活性化することにより、細胞認識および細胞傷害活性を有するタンパク質を高濃度で調製する方法を提供する。
【0015】
本発明は、バチルス・チューリンジエンシスA1470株由来の分子量34kDa前駆体タンパク質を可溶化するのに約1 mM〜約100 mMの塩酸を用いる方法を提供する。
【0016】
本発明は、バチルス・チューリンジエンシスA1470株由来の分子量34kDa前駆体タンパク質を活性化するのに酸性条件下で活性を持つプロテアーゼ、好ましくはペプシンを用いる方法を提供する。
【0017】
本発明は、バチルス・チューリンジエンシスA1470株由来の分子量34kDa前駆体タンパク質がこの前駆体タンパク質遺伝子を組み込んだ細菌、放線菌、酵母、糸状菌等の宿主細胞由来である場合のタンパク質の調製方法を提供する。
【0018】
本発明は、バチルス・チューリンジエンシスA1470株由来の分子量34kDa前駆体タンパク質がこの前駆体タンパク質遺伝子を組み込んだ大腸菌由来である場合のタンパク質の調製方法を提供する。
【0019】
本発明は、バチルス・チューリンジエンシスのライブラリからそれぞれの株が産生するタンパク質の機能をスクリーニングする際に、バチルス・チューリンジエンシス株が産生するタンパク質を酸性溶液を用いて溶解し、酸性で活性を示すプロテアーゼで活性化して調製する方法を提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明者らは、選択的な細胞認識および細胞障害活性を有する、バチルス・チューリンジエンシスA1470株の生産する毒素タンパク質について、酸性溶液で可溶化し、酸性条件で活性を持つプロテアーゼで活性化した場合も、従来の方法(アルカリ溶液で可溶化し、アルカリ条件下で活性を持つプロテアーゼで活性化する調製方法)と全く同等の細胞認識および細胞傷害活性を示すことを明らかにした。また、この新規な調製方法により、最終的に得られるタンパク質濃度が従来の方法の約9.8倍(約195μg/mL)と飛躍的に高くなることを明らかにした。
【0021】
細胞認識および細胞障害活性を有するタンパク質を高濃度に調製できる本発明により、これらのタンパク質の作用機構の解明や応用化研究がきわめて容易に進められるようになる。つまり、細胞認識および細胞傷害活性を持つタンパク質の研究の進展のためにはこれらのタンパク質に対する抗体の作成やこれらのタンパク質の標識が必須であるが、こうした作業は一定以上の高濃度のタンパク質溶液でないと難しいものが多い。このため従来の技術では細胞認識および細胞傷害活性を持つタンパク質の応用化研究が困難であった。
【0022】
また、本発明を含む研究開発の最終的な目標は細胞認識および細胞傷害活性を持つタンパク質を用いてガン治療薬やガン診断薬を開発することであるが、これらの薬品を製造する際には、本発明により従来技術を用いた場合の1/10規模で製造プラントを用意することができる。これは、本発明により最終製品のコストを大きく引き下げることを意味する。
【0023】
さらに、本発明により提供する手段は、バチルス・チューリンジエンシスが作る様々なタンパク質をスクリーニングしていく際に、今まで隠れていた機能を探索する有用なツールとなりうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明による調製方法の材料となるタンパク質は、バチルス・チューリンジエンシス由来のタンパク質でそのタンパク質を発現する細胞から得られる。バチルス・チューリンジエンシスのタンパク質を発現する細胞としては、例えば、そのタンパク質を天然で発現する細胞(バチルス・チューリンジエンシス株)、そのタンパク質を発現するDNAをコードする発現ベクターを含有する形質転換体が挙げられる。本発明による調製方法の材料となるタンパク質は、天然で発現する細胞や上記のようにして調製される発現ベクターを含む形質転換体を培地中で培養し、得られる培養物から回収することによって製造することができる。
【0025】
その際に使用される培地は、それぞれの細胞の生育に必要な炭素源,無機窒素源もしくは有機窒素源を含んでいることが好ましい。炭素源としては、例えばグルコース,デキストラン,可溶性デンプン,ショ糖などが、無機窒素源もしくは有機窒素源としては、例えばアンモニウム塩類,硝酸塩類,アミノ酸,コーンスチープ・リカー,ペプトン,カゼイン,肉エキス,大豆粕,バレイショ抽出液などが例示される。また所望により他の栄養素〔例えば、無機塩(例えば塩化カルシウム,リン酸二水素ナトリウム,塩化マグネシウム),ビタミン類,抗生物質(例えばテトラサイクリン,ネオマイシン,アンピシリン,カナマイシン等)など〕を含んでいてもよい。
【0026】
培養は当分野において知られている方法により行われる。下記に宿主細胞に応じて用いられる具体的な培地および培養条件を例示するが、本発明における培養条件はこれらに何ら限定されるものではない。
【0027】
宿主が細菌,放線菌,酵母,糸状菌等である場合、例えば上記栄養源を含有する液体培地が適当である。好ましくは、pHが5〜8である培地である。宿主が大腸菌の場合、好ましい培地としてLB培地,M9培地(Miller. J., Exp. Mol. Genet, p.431, Cold Spring Harbor Laboratory, New York (1972))等が例示される。培養は、必要により通気・攪拌をしながら、通常14〜43℃で約3〜24時間行うことができる。宿主が枯草菌の場合、必要により通気・攪拌をしながら、通常30〜40℃で約16〜96時間行うことができる。宿主がバチルス・チューリンジエンシスの場合、好ましい培地としては、CYS培地(Yamamoto, T.,ACS Symp. Ser. 432, 46-60(1990))が挙げられる(この場合、培養は、例えば、寒天平板上で20℃で96時間行なわれる)。宿主が酵母の場合、培地として、例えばBurkholder最少培地(Bostian. K.L. et al, Proc. Natl. Acad. Sci.USA, 77, 4505 (1980))が挙げられ、pHは5〜8であることが望ましい。培養は通常約20〜35℃で約14〜144時間行なわれ、必要により通気や攪拌を行うこともできる。
【0028】
こうして得たバチルス・チューリンジエンシス由来のタンパク質に酸性溶液、好ましくは1 mM〜100 mMの塩酸、さらに好ましくは10 mMの塩酸を加え、可溶化する。適切な酸の濃度や可溶化の条件は対象となるタンパク質によって異なるが、通常は10 mM前後の塩酸を加え、攪拌すれば十分である。必要な場合は37℃で1時間程度のインキュベートが効果的な場合もある。
【0029】
バチルス・チューリンジエンシス由来のタンパク質の可溶化液に酸性条件で活性を示すプロテアーゼ、好ましくはペプシンを適量加え、適温で一定時間プロテアーゼによる活性化を行う。活性化は通常30〜40℃で約1〜2時間という条件で行うことができる。
【0030】
得られた活性化溶液のタンパク質濃度を定量した後に、該タンパク質のさまざまな活性について検討を行うことができる。例えば、細胞傷害活性を測定する場合について紹介する。「細胞障害活性」とは、特定の細胞を特異的に破壊する能力をいう。例えば、実施例に記載されるMTTアッセイにより測定した場合に、特定の細胞に対して例えば、約2μg/mL以下、好ましくは約1μg/mL以下、より好ましくは約0.5μg/mL以下のEC50(μg精製タンパク質/mL)を示す場合に、「細胞障害活性」を有するものとみなされる。また、MTTアッセイ以外の方法によって測定する場合には、特定の細胞に対する細胞障害活性が、ネガティブコントロールに対する細胞障害活性よりも有意に高い場合に、その細胞に対して細胞障害活性を有するものとみなされる。
【0031】
本発明により調製したタンパク質の精製は、通常使用される種々の分離技術を適宜組み合わせることにより行うことができる。本発明のタンパク質は、例えば、塩析、溶媒沈澱、透析、限外濾過、ゲル濾過、非変性PAGE、SDS−PAGE、イオン交換クロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、逆相高速液体クロマトグラフィー、等電点電気泳動などの公知の分離方法を適当に選択して行うことにより得ることができる。
【実施例】
【0032】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、これらは単なる例示であって、本発明の範囲を何ら限定するものではない。なお実験に用いたCACO-2細胞(ヒト結腸癌細胞)は理化学研究所から購入した。
【0033】
実施例1[形質転換体からのバチルス・チューリンジエンシスA1470株由来の分子量34kDaの前駆体タンパク質の調製]
本タンパク質の調製は、次の通りである。まず、バチルス・チューリンジエンシスA1470株由来の分子量34kDaの前駆体タンパク質の遺伝子を含むプラスミドを導入した大腸菌株をLB培地に植えて、37℃で振とうしながら1晩培養した。これを8,000×g, 15minの遠心分離で集菌し、−20℃で凍結した。集菌し凍結した大腸菌を溶解液(50 mM Tris-HCl(pH8), 25% Sucrose, 1 mM EDTA)10 mLに分散し、10 mg/mLリゾチームを0.5 mL入れて、室温で30min放置し、その後超音波破砕機で3分間処理し、10 mL界面活性剤液(0.2M NaCl, 1%デオキシコール酸ナトリウム, 1% Nonidet P-40)を入れて室温で30分間放置した。これを8,000×g, 30minで遠心分離すると目的の前駆体タンパク質を含む封入体を回収できた。1% TritonX-100, 1 mM EDTA液20 mLで洗浄し、8,000×g, 15minで遠心分離する操作を2回繰り返し、蒸留水で3回洗浄し、これを形質転換体からのバチルス・チューリンジエンシスA1470株由来の分子量34kDaの前駆体タンパク質の調製物とした。
【0034】
実施例2[34kDaの前駆体タンパク質からの従来法による活性化タンパク質の調製]
実施例1で得た前駆体タンパク質を含む封入体を50 mM Na2CO3(pH10.5)、10 mM DTTおよび1 mM EDTAからなるアルカリ緩衝液240 μlを加えて37℃で1時間可溶化した。次に遠心分離により本タンパク質を含む上清を回収し、最終濃度が30 μg/mLとなるようにプロテイナーゼKを加え、37℃で1.5時間インキュベートした。その後、PMSFを最終濃度1 mMになるように加え、フィルターでの濾過によって除菌して、活性化タンパク質溶液を得た。十分量の前駆体タンパク質を含む封入体を用いて、この調製方法による可溶化タンパク質溶液と活性化タンパク質溶液の最高濃度を測定したところ、それぞれ441 μg/mLと20 μg/mLであった。
【0035】
実施例3[34kDaの前駆体タンパク質からの酸性溶液による可溶化・活性化による活性化タンパク質の調製]
実施例1で得た前駆体タンパク質を含む封入体に10 mM HClを加えて37℃で1時間可溶化した。次に遠心分離により本タンパク質を含む上清を回収し、最終濃度が200 μg/mLとなるようにペプシンを加え、37℃で1.5時間インキュベートした。その後、ペプスタチンを必要量加えて活性化を停止し、遠心分離により不要物を除去して活性化タンパク質溶液を得た。十分量の前駆体タンパク質を含む封入体を用いて、この調製方法による可溶化を行ったところ少なくとも14.7 mg/mLまでは可能であることが明らかになった。タンパク濃度が高すぎるとペプシンの量を増やしても活性化が不十分になるため、活性化を前駆体タンパク質濃度1.47 mg/mLの可溶化液を用いて行ったところ、195 μg/mLの活性化タンパク質溶液を得た。
【0036】
実施例4[活性化タンパク質の質量分析]
実施例2および3で得た活性化タンパク質を飛行時間型質量分析装置にかけ、その分子量を検討したところ、従来の方法で調製した活性化タンパク質が26,816、酸性溶液で可溶化しペプシンで活性化した活性化タンパク質が27,020とほぼ同等の分子量を示した。
【0037】
実施例5[ヒト結腸癌細胞の調製]
CACO-2細胞(ヒト結腸癌細胞)を20% FBSと1% NEAAを含むMEM培地をもちいて培養し、2.2×105細胞/mLの濃度で96ウェルマルチウェルプレートに90μlずつ分注した。この96ウェルマルチウェルプレート中で細胞をさらに24時間培養し、次いで細胞障害効果の測定を行った。
【0038】
実施例6[ヒト結腸癌細胞に対する細胞障害効果の測定]
実施例2および3で得た活性化タンパク質を実施例5で調製した96ウェルマルチタイタープレートの各ウェル中のヒト結腸癌細胞に、活性化タンパク質を終濃度で2μg/mLから1/2づつの段階希釈になるように添加した。細胞生存率の測定をタンパク質添加の20時間後に行なった。細胞生存率については、市販の試薬を用いてMTT法により測定した。それぞれのタンパク質濃度と細胞生存率の関係を示すグラフを図1に示した。従来の調製法と酸性溶液による調製法はほとんど同じ細胞生存曲線を示すことが明らかになった。また、それぞれの曲線からプロビット法によりEC50を計算したところ、従来の調製法では0.369 μg/mL、酸性溶液による調製法では0.331 μg/mLとほぼ同一であった。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本タンパク質を従来法で調製した場合と酸性溶液による可溶化で調製した場合とでCACO-2細胞に対する細胞生存曲線比較する図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バチルス・チューリンジエンシス由来の細胞認識および細胞傷害活性を有するタンパク質の前駆体タンパク質を酸性溶液を用いて溶解し、酸性で活性を示すプロテアーゼで活性化することにより、細胞認識および細胞傷害活性を有するタンパク質を高濃度で調製する方法。
【請求項2】
前記酸性溶液が約1 mM〜約100 mMの塩酸である請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記プロテアーゼがペプシンである請求項1記載の方法。
【請求項4】
細胞認識および細胞傷害活性を有するタンパク質の前駆体タンパク質がこの前駆体タンパク質遺伝子を組み込んだ細菌、放線菌、酵母、糸状菌等の宿主細胞由来である請求項1記載の方法。
【請求項5】
細胞認識および細胞傷害活性を有するタンパク質の前駆体タンパク質がこの前駆体タンパク質遺伝子を組み込んだ大腸菌由来である請求項1記載の方法。
【請求項6】
細胞認識および細胞傷害活性を有するタンパク質の前駆体タンパク質が特願2004-156147に記載されたバチルス・チューリンジエンシスA1470株由来の分子量34kDaのタンパク質である請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記酸性溶液が約1 mM〜約100 mMの塩酸である請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記プロテアーゼがペプシンである請求項6記載の方法。
【請求項9】
バチルス・チューリンジエンシスA1470株由来の分子量34kDaのタンパク質がこのタンパク質遺伝子を組み込んだ細菌、放線菌、酵母、糸状菌等の宿主細胞由来である請求項6記載の方法。
【請求項10】
バチルス・チューリンジエンシスA1470株由来の分子量34kDaのタンパク質がこのタンパク質遺伝子を組み込んだ大腸菌由来である請求項6記載の方法。
【請求項11】
バチルス・チューリンジエンシスのライブラリからそれぞれの株が産生するタンパク質の機能をスクリーニングする際に、バチルス・チューリンジエンシス株が産生するタンパク質を酸性溶液を用いて溶解し、酸性で活性を示すプロテアーゼで活性化して調製する方法。


【図1】
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【公開番号】特開2006−67871(P2006−67871A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−253995(P2004−253995)
【出願日】平成16年9月1日(2004.9.1)
【出願人】(304043154)
【Fターム(参考)】