説明

バッテリユニット

【課題】バッテリユニットの密閉性を改善する。
【解決手段】少なくとも1つの密閉層12;14aを備えたバッテリユニット、特に工具のバッテリユニットを提案する。この密閉層12;14aは、破損による開口16を弾性回復によって自動的に少なくとも実質的に密閉するために設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1からは、ケーシングと複数のバッテリセルとを備えたバッテリユニットが公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】ドイツ国特許出願公開公報明細書DE4444029A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、バッテリユニットの密閉性を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題は、破損による開口を弾性回復によって自動的に少なくとも実質的に密閉するために設けられた少なくとも1つの密閉層を備えたバッテリユニット、特に工具のバッテリユニットによって解決される。
【発明の効果】
【0006】
「密閉層」は、特に、破損による開口が形成される破損の間と、有利には破損した後とに、とりわけ電解質などの流体の流出を少なくとも実質的に阻止する部材を意味している。有利には、この密閉層は、電子装置を有する領域及び/又は使用者が触れる可能性のある領域への容器からの流出を少なくとも実質的に阻止する。有利には、この密閉層は、5cmより大きい、特に有利には10cmより大きい表面積を有している。有利には、この密閉層は、例えばO−リングなどの密閉リングとは異なるように形成されている。「O−リング」ないしは「密閉リング」は、特に、とりわけ回転対称軸に沿う半径方向の長さと軸方向の長さとの比が5より大きい、有利には10より大きい密閉手段を意味している。「設ける」とは、特に、特別に設計する及び/又は備え付けることを意味している。「弾性回復」とは、密閉層の少なくとも一部が、破損前に配置されていた方向に動くことを意味している。有利には、この密閉層の部分は、破損した際にこの部分が動かされた道程の少なくとも50%、有利には少なくとも80%、特に有利には少なくとも90%元に戻る。「破損による開口」は、特に、少なくとも流体を貯蔵する容器、有利には電解質を貯蔵する容器の、とりわけ特別には設計していない及び/又は備え付けていない且つとりわけ機能的でない開口を意味している。有利には、密閉層は、少なくとも容器とこの密閉層とを貫通する破損による開口を少なくとも実質的に密閉するために設けられている。例えば、この破損による開口は、例えば釘などの鋭利な物体が少なくとも密閉層と容器とを通って容器内に突き刺さることによって生じる。特に、この密閉層は鋭利な物体が取り去られた後でも容器を密閉する。「自動的」という概念は、外的な影響の変化に依存しないで密閉層が破損による開口を密閉するということを意味しており、この影響とは、有利には、破損時における、鋭利な物体が突き刺さり、取り去られることには依存しない。「少なくとも実質的に密閉する」とは、特に、破損による開口の、流体を流出させてしまう作用を生じる断面を、密閉層が少なくとも約75%、有利には少なくとも約90%、特に有利には少なくとも約99%低減するということを意味している。有利には、この密閉層は液状の流体、特に有利にはガス状の流体の流出を阻止する。詳細には、とりわけ流体の10%以上の流出を1時間未満の間、特に有利には24時間未満の間阻止する。本発明によるバッテリユニットの実施形態によって、破損の際の使用者に対する特に大きな安全性を実現することができる。特に、密閉層は付加的に、圧潰力による例えば裂け目などの破損を密閉する。これによって、バッテリユニットからの化学剤の流出が避けられ、火災の危険を回避することができる。
【0007】
別の実施形態によれば、密閉層がゴム弾性材料を有することが提案される。これによって、特に有利な密閉効果を構造上簡単に実現することができる。「ゴム弾性材料」は、特に、ゴム、シリコーン、天然ゴム、合成ゴム、エラストマ、ラテックス及び/又は当業者が有利と見なす別の材料である。有利には、ゴム弾性材料は、0.5kN/mmより小さい、有利には0.2kN/mmより小さい、特に有利には0.1kN/mmより小さい弾性率を有している。有利には、このゴム弾性材料は、50%より大きい、有利には100%より大きい、特に有利には200%より大きい破壊伸び率を有している。
【0008】
さらに、バッテリユニットが、密閉層によって少なくとも外被状に取り囲まれたバッテリセルを含むことが提案される。これによって、特に効果的な保護が実現可能である。「バッテリセル」は、特に、エネルギを貯蔵し且つ電力として供給するために設けられている部材を意味している。有利には、このバッテリセルは、リチウムバッテリセル、燃料電池セル及び/又は当業者が有利と見なすほかのバッテリセルとして形成されている。「リチウムバッテリセル」は、特に、リチウムイオンバッテリセル、LiFePOバッテリセル、LiMnバッテリセル、Li(NiCoMn)Oバッテリセル、Li(NiCoAl)Oバッテリセル、リチウム酸素バッテリセル、リチウム硫黄バッテリセル、リチウムポリマバッテリセルなどを意味している。「外被状に取り囲む」という言い回しは、特に、密閉層がバッテリセルの少なくとも1つの面をほとんど360°取り囲むことを意味している。代替的には、密閉層は、バッテリセルの外面だけを取り囲んでもよい、すなわち、バッテリユニットの外壁を向いている面を取り囲んでもよい。有利には、この密閉層は、少なくとも10mmの区間、有利には20mmの区間でバッテリセルの主延在方向に沿ってこのバッテリセルを外被状に取り囲む。詳細には、特に、この密閉層は、主延在方向に対して垂直な面で取り囲んでいる。有利には、この密閉層は、バッテリセルを円筒状に、つまり円状の断面で外被状に取り囲むのである。
【0009】
また、バッテリユニットはセルケーシングを備えたバッテリセルを含んでおり、このセルケーシングに密閉層が少なくとも部分的にとりわけ直接接することが提案される。これによって、特に有利な密閉効果を構造上簡単に実現することができる。「セルケーシング」は、特に、バッテリセルの堅固な包被を意味している。有利には、このセルケーシングは、流体を貯蔵する容器の少なくとも一部である。有利には、このセルケーシングは、バッテリセルのアノードとカソードとを固定する。「少なくとも部分的に接する」とは、特に、セルケーシングと密閉層とが、1cmより大きい、有利には2cmより大きい接触面を有することを意味している。有利には、この密閉層は、とりわけ内側で及び/又は有利には外側でセルケーシングに締りばめされているか、及び/又は、接着ばめされているか、及び/又は、収縮ばめされているか、及び/又は、当業者が有利と見なすほかのやり方で接している。
【0010】
さらに、バッテリユニットはケーシング部材を備えており、このケーシング部材が少なくとも1つのバッテリセルを固定し、且つこのケーシング部材に密閉層が少なくとも部分的にとりわけ直接接することが提案される。これによって、複数のバッテリセルを構造上簡単に密閉することができる。「ケーシング部材」は、特に、少なくとも1つのバッテリセルを直接又は間接的に固定する手段を意味している。有利には、このケーシング部材は少なくとも2つのバッテリセルを固定する。有利には、このケーシング部材は、装置に固定するための結合手段を備えており、バッテリユニットは、少なくとも1つの動作モードにおいてこの装置にエネルギを送出する。
【0011】
本発明の1つの有利な実施形態によれば、密閉層が、セルケーシングの外面に少なくとも部分的に接することが提案される。これによって、単純な取付で特に良好な密閉効果を構造上簡単に実現することができる。特に、既に設けられているバッテリセルを構造上簡単に保護することができる。「セルケーシングの外面」は、特に、バッテリセルの中心とは反対側の面を意味している。代替的に又は付加的に、密閉層は、ケーシング部材の外面に少なくとも部分的に接していてもよい。
【0012】
さらに、バッテリセルが可燃性電解質を有することが提案される。これによって、割安且つ小さな重量でとりわけ大量のエネルギを貯蔵することができる。「可燃性」とは、特に、少なくともEG指令RL67/548/EWGによれば、電解質が少なくとも可燃性であること、有利には易燃性であることを意味している。「電解質」は、特に、電気エネルギを取り出すことができるように貯蔵するために設けられる手段を意味している。代替的に又は付加的に、この電解質は腐食性又は毒性を持っていてもよい。
【0013】
さらに、密閉層をバンド状に形成することが提案される。これによって、特に単純な取付が可能になる。「バンド状」という概念は、特に、厚さが薄い密閉層の場合に長さと幅との比が3より大きい、有利には6より大きいことを意味している。「厚さが薄い」とは、特に、厚さが長さ及び幅よりも小さいことを意味している。この密閉層は、有利には5mmより薄い、特に有利には2mmより薄い。
【0014】
さらに、本発明は、工具とバッテリユニットとを有するシステムに関する。このようなシステムとしては、特に、ドリル及び/又はハンマドリル及び/又はセーバーソー及び/又は電気かんな及び/又はドライバー及び/又はフライス削り機及び/又はグラインダー及び/又はディスクグラインダー及び/又はガーデンツール及び/又はメジャーリングツール及び/又は多機能工具のような、当業者が有利と見なす、バッテリユニットで動作する全ての工具が考えられる。これによって、特に安全なシステムを提供することができる。工具での利用に対して代替的に又は付加的に、自動車、ハイブリッド自動車、電気自動車、電動オートバイ、電動スクーター、スケールモデル及び当業者が有利と見なすほかの分野での利用も考えられる。
【0015】
さらなる利点は、次の図面の説明から得られる。図面には、本発明の2つの実施例が示されている。図面、明細書及び請求項は、多数の特徴を組合せで含んでいる。当業者であれば、特徴を目的に応じて個々でも考察し、更なる有利な組合せにまとめるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】工具と本発明によるバッテリユニットとを備えた本発明によるシステムを示した図
【図2】図1のバッテリユニットを水平方向の断面で示した図
【図3】破損による開口を有するバッテリユニットのバッテリセルを詳細に示した図
【図4】図1のバッテリユニットを鉛直方向の断面で示した図
【図5】図1のバッテリユニットのバッテリセル及び密閉層を示した図
【図6】バッテリセルとバンド状の密閉層とを備えた図1のバッテリユニットの別の実施例を示した図
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1には、工具32と工具用バッテリ34とを備えたシステム30が示されている。工具32は、バッテリで動作するインパクトドリルドライバとして形成されている。工具32は、メイングリップ38を備えたピストル状ケーシング36を備えている。メイングリップ38は、使用者が取り外しできるようなかたちで、動作可能な状態の工具用バッテリ34に接続されている。詳細には、メイングリップ38は、この実施例では工具32の工具用チャック40とは反対側に接続されている。代替的には、工具32は、使用者が取り外しできないようなかたちで工具用バッテリ34に接続されていてもよい。
【0018】
図2及び4には断面図が示されており、図3には工具用バッテリ34の部分的な断面図が示されている。工具用バッテリ34はバッテリユニット10を備えている。バッテリユニット10は、工具用バッテリユニットとして形成されている。バッテリユニット10は、外側の密閉層12及び内側の密閉層14aと、バッテリセル18と、ケーシング部材22とを含んでいる。ケーシング部材22と、当業者が有利と見なすが詳しくは描写されていない別の部材とがバッテリセル18を固定している。外側の密閉層12及び内側の密閉層14aは、破損による開口16を破損の間及び破損した後に弾性回復によって自動的に密閉する。図2には、鋭利な物体42が突き刺さることによる破損と、破損による開口16とが示されている。
【0019】
図5には、バッテリセル18のうちの1つが単独で示されている。バッテリセル18は、それぞれ1つのセルケーシング20及び可燃性電解質28を有している。セルケーシング20は、電解質28のためのそれぞれ1つの容器である。破損による開口16は、セルケーシング20のうちの少なくとも1つにおける、設計していない及び/又は備え付けていない開口として形成されている。さらに、図示されているように、密閉層12,14a及びケーシング部材22は、破損による開口16の一部を有する可能性がある。破損による開口16は、例えば鋭利な物体42がセルケーシング20のうちの1つに突き刺さり取り去られることによって生じる。詳細には、破損による開口16は、例えば鋭利な物体42が密閉層12,14aとケーシング部材22とに突き刺さり取り去られることによって生じる。
【0020】
密閉層12,14aは、それぞれゴム弾性材料を有している。破損の間、密閉層12,14aの1つ又は複数が破損を生じさせる物体42に接しており、セルケーシング20は物体42に沿って密閉していく。物体42が取り去られるときには、密閉層12,14aは元の形状に弾性回復し、これによって破損による開口16が密閉される。
【0021】
このために、内側の密閉層14aは、それぞれセルケーシング20のうちの1つの外面24に極めて密に接している。さらに、内側の密閉層14aは、バッテリセル18のうち1つの主延在方向とは垂直な面において外被状にセルケーシング20を取り囲んでいる。破損の間、密閉層14aは、実質的に弾性的に変形する。これによって、密閉層14aの一部を元の位置に戻す力が生じる。この場合、密閉層14aは破損による開口16の大きさを小さくする。破損による開口16が最大の大きさを超えない限り、密閉層14aを相応に設計し、特に予めバイアスをかけておくことによって、この破損による開口16は通常完全に密閉される。
【0022】
外側の密閉層12は、ケーシング部材22の内面26aにおいてケーシング部材22に密に接している。このために、この外側の密閉層はケーシング部材22に注入されて形成されている。動作可能な状態では、工具用バッテリ34の、工具の側の面は工具によって保護されているので、この面には密閉層は存在しない。代替的に又は付加的に、この外側の密閉層は外面に接しており、及び/又は、複数のバッテリセル、特に全てのバッテリセルを有利には完全に取り囲んでいてもよい。
【0023】
ケーシング部材22は2つの部分から成る。これらの2つの部分は、詳細には示されていないが、互いにねじで固定されている。ケーシング部材22の2つの部分の間にO−リング44が配置されており、O−リング44によって、工具用バッテリ34へのよごれ及び湿気の侵入が防止される。O−リング44は、密閉層12,14aとは別個に形成されている。
【0024】
図6には、本発明の別の実施例が示されている。後続の記載及び図面は、実質的に実施例間の差異のみに関している。ここで、同じ名称の部材、特に同じ参照記号を付された部材に関しては、特に図1〜5の他の実施例の図面および/または説明を基本的に参照してよい。実施例を区別するために、文字aは図1〜5における実施例の参照記号として用いられている。図6の実施例では、文字aが文字bに代替されている。
【0025】
図6には、バンド状に形成された密閉層14bを備えたバッテリセル18が示されている。密閉層14bは、バッテリセル18のセルケーシング20の周りに外被状に巻回されている。
【符号の説明】
【0026】
10 バッテリユニット
12 密閉層
14a 密閉層
14b 密閉層
16 破損による開口
18 バッテリセル
20 セルケーシング
22 ケーシング部材
24 セルケーシング20の外面
26a ケーシング部材22の内面
28 電解質
30 システム
32 工具
34 工具用バッテリ
36 ピストル状ケーシング
38 メイングリップ
40 工具用チャック
42 鋭利な物体
44 O−リング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの密閉層(12;14a;14b)を備えたバッテリユニット、特に工具のバッテリユニットであって、
前記密閉層(12;14a;14b)は、破損による開口(16)を弾性回復によって自動的に少なくとも実質的に密閉するために設けられている
ことを特徴とするバッテリユニット。
【請求項2】
前記密閉層(12;14a;14b)はゴム弾性材料を有している、請求項1記載のバッテリユニット。
【請求項3】
前記密閉層(14a;14b)によって少なくとも外被状に取り囲まれたバッテリセル(18)を有する、請求項1又は2記載のバッテリユニット。
【請求項4】
前記密閉層(14a;14b)に少なくとも部分的に接しているセルケーシング(20)を備えた前記バッテリセル(18)を有する、請求項1から3のいずれか1項記載のバッテリユニット。
【請求項5】
少なくとも1つの前記バッテリセル(18)を固定し且つ前記密閉層(12)に少なくとも部分的に接しているケーシング部材(22)を有する、請求項1から4のいずれか1項記載のバッテリユニット。
【請求項6】
前記密閉層(12;14a;14b)は、前記セルケーシング(20)の外面(24)に少なくとも部分的に接している、請求項4記載のバッテリユニット。
【請求項7】
前記バッテリセル(18)は可燃性電解質(28)を有している、請求項3又は4記載のバッテリユニット。
【請求項8】
前記密閉層(14b)はバンド状に形成されている、請求項1から7のいずれか1項記載のバッテリユニット。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項記載のバッテリユニット(10)の密閉層。
【請求項10】
請求項1から8のいずれか1項記載のバッテリユニット(10)と、工具(32)とを備えたシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−69521(P2012−69521A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−204204(P2011−204204)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】