バッテリー用のポリマー電解質
高イオン伝導度及び高機械強度を有する、ナノ構造ゲルポリマー電解質が開示される。前記電解質は少なくとも2つのドメインを有し、そのうちの1つのドメインはイオン伝導性ゲルポリマーを含み、もう一方のドメインは当該電解質用の構造を提供する硬質ポリマーを含む。前記2つのドメインはブロックコポリマーによって形成される。第一のブロックは、それ自体伝導性であってもなくてもよいが、液体電解質を吸収して、それによりゲルを作ることの出来る、ポリマーマトリックスを提供する。例示的なナノ構造ゲルポリマー電解質は、25℃で1×10−4Scm−1以上のイオン伝導度を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2008年1月16日に出願された米国仮出願番号61/021,613に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【0002】
[技術分野]
本発明は、一般的には電解質材料に関し、より具体的には高伝導度及び高機械強度の両方を有し、処理が容易且つ可能なゲルポリマー電解質に関する。
【背景技術】
【0003】
携帯電話、ラップトップ・コンピューター及び他の家庭用電化製品などの技術製品への世界的需要が高まるにつれて、充電式バッテリーに対する需要が急速に増大している。また、高エネルギー密度を有する充電式バッテリーに対する巨大潜在市場を作り出している、配電網負荷平準化装置や電気で動く乗り物などの環境保全技術を開発しようとする現在の取り組みにより、充電式バッテリーへの関心が増している。
【0004】
リチウムイオンバッテリーは、携帯用電子機器用の充電式バッテリーのうち、最も普及しているタイプの1つである。リチウムイオンバッテリーは高エネルギー密度及び高出力密度を提供し、不使用時の電荷損失を遅くし、メモリ効果に悩まされない。高エネルギー密度などの多くの利点により、リチウムイオンバッテリーは、防衛、宇宙空間、バックアップ用蓄電、及び輸送用途においてもますます用いられてきている。
【0005】
電解質は、充電式リチウムイオンバッテリーの重要部分である。負の電解質材料は酸化されて電子を生成し、正の電解質材料は還元されて電子を消費するため、放電の間、電解質は電解質間におけるイオン流動用の媒体となる。電子は、外部回路を介して電流として流れる。従来の充電式リチウムイオンバッテリーは、非ポリマー液体電解質を用いてきた。リチウムイオンバッテリーにおける例示的な液体電解質は、アルキルカーボナートなどの有機溶媒中のLiPF6、LiBF4又はLiClO4などのリチウム塩から構成される。
【0006】
非ポリマー液体電解質は、現在のリチウムをベースとする技術の中心であるが、ポリマー電解質はリチウムをベースとするバッテリーの次なる進歩の波を構成するかもしれない。他の利点の中で、ポリマー電解質は高温安定性を有し、自己放電の割合が低く、幅広い範囲の環境条件において安定して実施でき、安全性が高く、バッテリー形態が柔軟で、環境影響を最小限にでき、材料及び処理コストが低い可能性があるため、充電式のゲルポリマー電解質バッテリーは、リチウムイオンバッテリー技術にとって特に魅力的である。ゲルポリマー電解質は、一部には、携帯用電子機器に用いられる最近のバッテリーの、薄く真空包装のポーチ電池デザインに見られるような新規形状因子及び包装方法に適しているために、非常に興味を持たれている。
【0007】
ゲル電解質の商業用途に必要な機械的頑健性を達成するために、ポリマーマトリックスの架橋又は熱硬化が用いられてきた。しかしながら、架橋後には、電解質はもはや流動せず、不溶性であるため、次の処理可能性、並びに電解質と他のバッテリー部品との統合や包装(パッケージ化)が厳しく制限されてしまう。また、架橋の最適化には非常にコストがかかる。架橋により生ずる体積変化は、従来のゲル電解質の制御された処理及び製造を困難にし、架橋はイオン伝導度を低下させる傾向がある。また、架橋材料は一般的にリサイクル不可能である。
【0008】
原型的なゲルポリマー電解質は、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリ(アクリロニトリル)(PAN)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)及びポリ(ビニリデンフルオリド)(PVdF)などの材料をベースとしてきた。しかしながら、特に、電気化学電池に用いるのに適した伝導度を得るために十分な液体電解質で満たす場合には、架橋しないと、これらの材料をベースとした電解質は機械的特性の貧弱さに悩まされる。ポリマー電解質は、従来のリチウムイオン陽極よりも高エネルギー密度をもたらすリチウム金属陽極の使用を可能にするかもしれないが、フッ素化したポリマーをリチウム金属とともに用いた場合にはリチウムとフッ素の間で界面反応が起きて、LiFを形成してしまうという望ましくない結果が生じるため、この場合にはフッ素化したポリマーは化学的に安定ではない。LiFは電池インピーダンスを高め、LiFを形成するために用いられるリチウムはもはや電池の充電及び放電に関与出来ない。このため、PVdFをベースとした電解質はリチウム金属陽極を有するバッテリーには不適切である。また、特に高温において、溶媒が蒸発すると、これらのシステムの性能が経時的に低下していき、密閉包装が必要となる。
【0009】
高イオン伝導度を有するとともに、高機械強度、リチウムとの低反応性、並びに溶媒の低揮発性及び低蒸発性をも有する、非架橋性ポリマー電解質材料に対する強い需要が未だ存在する。
【0010】
前述の態様その他については、当業者であれば、添付図面を参照しつつ以下の実施態様の記載から容易に理解するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1A】図1Aは、構造網中のイオン伝導路網を有する電解質材料の簡易図である。
【図1B】図1Bは、構造網中のイオン伝導路網を有する電解質材料の簡易図である。
【図2A】図2Aは、二相ナノ構造ゲルポリマー電解質を構成する複数の直鎖状ポリマージブロックの略図である。
【図2B】図2Bは、第一ドメインと第二ドメインの領域を交互に入れ替えた、二相ナノ構造ゲルジブロックポリマー電解質の一部の略図である。
【図3】図3は、本発明の実施態様に従う、2ドメイン有孔ラメラ状(層状)形態の一部の略図である。
【図4】図4は、A−B−A形態で配列された2種類のポリマーブロックから作られた複数の直鎖状ポリマートリブロックの略図である。
【図5】図5は、第一ドメインと第二ドメインの領域を交互に入れ替えた、二相ナノ構造ゲルトリブロックポリマー電解質の一部の略図である。
【図6】図6は、A−B−C形態で配列された3種類のポリマーブロックから作られた複数の直鎖状ポリマートリブロックの略図である。
【図7】図7は、第一ドメイン、第二ドメイン及び第三ドメインの領域を交互に入れ替えた、三相ナノ構造ゲルトリブロックポリマー電解質の一部の略図である。
【図8A】図8Aは、3ドメインのトリブロック電解質から形成される固体電解質材料として可能ないくつかの形態の簡易図である。
【図8B】図8Bは、3ドメインのトリブロック電解質から形成される固体電解質材料として可能ないくつかの形態の簡易図である。
【図8C】図8Cは、3ドメインのトリブロック電解質から形成される固体電解質材料として可能ないくつかの形態の簡易図である。
【図9】図9は、温度の関数として、エチレンカーボナート(EC)で満たされたポリ(スチレン−ブロック−エチレンオキシド)コポリマーゲルの伝導度を示す簡易図である。
【0012】
[発明の詳細な説明]
電気化学電池用の電解質材料との関連で、好ましい実施態様を説明する。しかしながら、当業者であれば、本明細書に開示された材料及び方法は、高イオン伝導性が望まれる多くの他の背景、特に機械的強度が重要である多くの他の状況における用途を有していると容易に理解するであろう。
【0013】
本発明のこれら及び他の目的及び利点は、添付図面と組み合わせて以下の記載から、より十分に明らかになるであろう。
【0014】
本発明の1つの実施態様において、ナノ構造ポリマー電解質材料は、イオンの流れのためのゲル化領域、及び電解質全体に良好な機械的強度を与える硬質領域の両方を有するブロックコポリマーである。前記ゲル化領域は、液体電解質を加える前はそれ自体イオン伝導性であってもなくてもよいブロックポリマーを設けることにより形成される。前記硬質領域は、硬質ポリマーブロックの相分離されたドメインにより形成される。前記液体電解質は溶媒及び塩の両方を含み、イオン伝導性及び電子絶縁性を与える。
【0015】
本発明の1つの実施態様において、ナノ構造ゲルポリマー電解質材料は、エネルギー密度を増大させ、熱及び環境安定性を向上させ、自己放電速度を低減し、安全性を高め、製造コストを減らし、新規形状因子を可能にすることにより、リチウムをベースとするバッテリーの性能を向上させるために用いられ得る。例示的な実施態様において、ナノ構造ゲルポリマー電解質材料は、フッ素化分子を含まず、25℃で1×10-4Scm-1以上のイオン伝導度を有する。他の例示的な実施態様において、ナノ構造ゲルポリマー電解質材料は、架橋されておらず、フッ素化分子を含まず、25℃で1×10-4Scm-1以上のイオン伝導度を有する。
【0016】
本発明の1つの実施態様において、ナノ構造ゲルポリマー電解質は、陽極と陰極の間のセパレータ領域における電気化学電池中で用いられる。例示的な実施態様において、陰極は、フッ素化された種と高反応性であるリチウム金属又はその合金である。ナノ構造ゲルポリマー電解質は、ナノ構造ゲルポリマー電解質セパレータを介してイオンの伝導を促進する液体電解質(溶媒及び塩)を含む。
【0017】
図1Aは、二相ナノ構造材料100の略図である。前記材料100は、伝導相110を有するいくつかの領域と、構造相120を有するいくつかの領域とを有する。前記伝導相110は、イオン伝導性液体電解質を吸収することの出来るマトリックスを提供するポリマーを有する。前記伝導相110は、前記液体電解質が導入される前は、それ自体イオン伝導性であってもそうでなくてもよい。前記構造相120には、前記伝導相110がちりばめられている。
【0018】
図1Bにおいて、電解質材料130は、液体電解質115(灰色で示されている)を伝導相110に加えることにより形成されており、図1Aの構造で可能なイオン伝導度よりも高いイオン伝導度が得られる。前記構造相120は、本質的に前記液体電解質115の添加による影響を受けない。図1Bに示す構造は、前記電解質130が二相構造を有することを示す以外のどのような特別な意味も伝えることを意図してはいない。図1B中の形態は凡そ層状(ラメラ状:lamellar)であるけれども、2ドメインのナノ構造として知られる他の形態も可能である。
【0019】
図2Aは、本発明の実施態様に従う、二相ナノ構造ゲルポリマー電解質を構成する複数の直鎖状ポリマージブロック201の略図である。各直鎖状ポリマージブロックは、互いに異なる第一ポリマーブロック202及び第二ポリマーブロック203の自己集合により作られる。前記ポリマーブロック202は、一端で前記ポリマーブロック203と共有結合している。前記ポリマーブロック202は、液体電解質を吸収することの出来るマトリックスを提供するポリマーから作られる。ポリマーブロック202中のポリマーは、前記液体電解質が添加される前は、それ自体イオン伝導性であってもそうでなくてもよい。前記ポリマーブロック203は、高機械強度を有するポリマーから作られる。ポリマーブロック203が、ホモポリマー状態で、前記伝導ブロック202に添加される液体電解質の存在下で5%未満膨潤するポリマーから作られると、特に有用である。
【0020】
図2Bは、本発明の実施態様に従う、第一ドメイン210−xと第二ドメイン220−xの領域を交互に入れ替えた二相ナノ構造ゲルポリマー電解質の一部の略図である。第一ドメイン210−1(及び210−2)は、第一相のポリマーブロック212−1、212−2を有する。第一ドメイン210−x中で、ポリマーブロック212−1、212−2は互いに共有結合してはおらず、それらの末端が触れる領域で互いに対してスライドすることが出来る。第二ドメイン220−1は、第二相のポリマーブロック222−1、222−2を有する。第二ドメイン220−x中で、ポリマーブロック222−1、222−2は互いに共有結合してはおらず、それらの末端が触れる領域で互いに対してスライドすることが出来る。第一ドメイン210−1は、第二ドメイン220−1の片側に隣接している。第一ドメイン210−2は、第二ドメイン220−1のもう一方の側に隣接している。第一ドメイン210−1に隣接する他の第二ドメイン(一部のみを示す)が存在する。第一ドメイン210−2に隣接する他の第二ドメイン(一部のみを示す)が存在する。二相構造は第一ドメイン210−xと第二ドメイン220−xを交互に入れ替えて続く。
【0021】
ある配列において、第一ドメイン210−xは伝導性ドメインであり;ポリマーブロック212−xは、それ自体イオン伝導性である及び/又はイオン伝導性液体電解質を吸収できるマトリックスを提供する、ポリマーを有する。第二ドメイン220−xは構造ドメインであり;ポリマーブロック222−xは、高機械強度を有するポリマーを有する。他の配列において、第一ドメイン210−xは構造ドメインであり;ポリマーブロック212−xは、高機械強度を有するポリマーを有する。第二ドメイン220−xは伝導性ドメインであり;ポリマーブロック222−xは、それ自体イオン伝導性である及び/又はイオン伝導性液体電解質を吸収できるマトリックスを提供する、ポリマーを有する。
【0022】
当該技術分野においてよく知られているように、ジブロックは様々な形態に配列される。本明細書に開示される本発明の実施態様において、該ジブロックは、限定されることなくあらゆる幾何学的に可能な形態に配列されてもよい。可能な形態の非限定的な例としては、層状(ラメラ状)、分岐状、円筒状及びらせん状が挙げられる。
【0023】
図3は、本発明の実施態様に従う、2ドメイン有孔層状形態の一部の略図である。前記有孔層状構造は、第一ドメイン315−x及び第二ドメイン325−xの交互層を有する。前記第二ドメイン325−1に向けて拡がった、前記第一ドメイン315−1、315−2の拡張部350が存在する。前記第一ドメイン層315−xの体積分率が前記第二ドメイン相325−xの体積分率よりも大きい場合、前記第一ドメイン315−xは、前記第二ドメイン325−x中のパーフォレーション(孔)の中に拡がる。
【0024】
ある配列において、前記第一ドメイン315−xは伝導相を有し、前記第二ドメイン325−xは構造相を有する。そのような配列により、孔/拡張部のない形態よりも高伝導性を有するナノ構造ゲルポリマー電解質となり得る。他の配列においては、前記第一ドメイン315−xは構造相を有し、前記第二ドメイン325−xは伝導相を有する。そのような配列により、孔/拡張部のない形態よりも高い機械強度を有するナノ構造ゲルポリマー電解質となり得る。
【0025】
図4は、A−B−A形態で配列された2種類のポリマーブロックの自己集合により作られた複数の直鎖状ポリマートリブロック410の略図である。各トリブロックは第一型の第一ポリマーブロック412−1、第二型のポリマーブロック422、及び第一型の第二ポリマーブロック421−2を有する。前記ポリマーブロック412−1は、前記ポリマーブロック422と共有結合している。前記ポリマーブロック412−2もまた、前記ポリマーブロック422と共有結合している。ある配列において、前記第一型のポリマーブロック412−1、412−2は、それ自体イオン伝導性である及び/又はイオン伝導性液体電解質を吸収できるマトリックスを提供する、ポリマーを有し、前記第二型のポリマーブロック422は、高機械強度を有するポリマーを有する。他の配列において、前記第一型のポリマーブロック412−1、412−2は、高い機械強度を有するポリマーを有し、前記第二型のポリマーブロック422は、それ自体イオン伝導性である及び/又はイオン伝導性液体電解質を吸収できるマトリックスを提供する、ポリマーを有する。
【0026】
図5は、本発明の実施態様に従う、第一ドメイン510−xと第二ドメイン520−xの領域を交互に入れ替えた二相ナノ構造ゲルポリマー電解質の一部の略図である。前記二相構造は、図4に示されるような複数のトリブロックコポリマーから作られる。第一ドメイン510−1、510−2は、第一相のポリマーブロック512を有する。第二ドメイン520−1は、第二相のポリマーブロック522−1、522−2を有する。あらゆる第二ドメイン520−x中で、ポリマーブロック522−1、522−2は互いに共有結合してはおらず、それらの末端が触れる領域で互いに対してスライドすることが出来る。前記第一ドメイン510−1は、前記第二ドメイン520−1の片側に隣接している。前記第一ドメイン510−2は、前記第二ドメイン520−1のもう一方の側に隣接している。第一ドメイン510−1、510−2に隣接する他の第二ドメイン(一部のみを示す)が存在する。二相構造は第一ドメイン510−xと第二ドメイン520−xの領域を交互に入れ替えて続く。
【0027】
ある配列において、第一ドメイン510−xは伝導性ドメインであり;ポリマーブロック512は、それ自体イオン伝導性である及び/又はイオン伝導性液体電解質を吸収できるマトリックスを提供する、ポリマーを有する。第二ドメイン520−xは構造ドメインであり;ポリマーブロック522−xは、高機械強度を有するポリマーを有する。他の配列において、第一ドメイン510−xは構造ドメインであり;ポリマーブロック512は、高機械強度を有するポリマーを有する。第二ドメイン520−xは伝導性ドメインであり;ポリマーブロック522−xは、それ自体イオン伝導性である及び/又はイオン伝導性液体電解質を吸収できるマトリックスを提供する、ポリマーを有する。トリブロックコポリマーから作られた二相ナノ構造ゲルポリマー電解質は、ジブロックコポリマーから作られた電解質よりも処理中取り扱いやすい可能性がある。ジブロック構造において、各ブロックコポリマー鎖は2つのドメインの一部である。トリブロック構造において、各ブロックコポリマー鎖は3つのドメインの一部である。鎖当たりの物理的なからみ合わせ(physical entanglement)の数は、前記鎖が一部を形成するドメインの数とともに増加する。全体の構造の靭性(toughness)は、物理的なからみ合わせの数とともに増大する。靭性の増大は、ブロックコポリマー材料を容易に処理(加工)するのに非常に重要であり得る。
【0028】
図6は、A−B−C形態で配列された3種類のポリマーブロックの自己集合により作られた複数の直鎖状ポリマートリブロック610の略図である。各トリブロックは、第一型のポリマーブロック612、第二型のポリマーブロック622、及び第三型のポリマーブロック632を有する。前記ポリマーブロック612は、前記ポリマーブロック622と共有結合している。前記ポリマーブロック632もまた、前記ポリマーブロック622と共有結合している。ある配列において、第一型のポリマーブロック612は、それ自体イオン伝導性である及び/又はイオン伝導性液体電解質を吸収できるマトリックスを提供する、ポリマーを有する。前記第二型のポリマーブロック622は、高機械強度を有するポリマーを有する。前記第三型のポリマーブロック632は、複数の直鎖状ポリマートリブロック610から作られた電解質に、所望の特性を高める又は加えるポリマーを有する。他の配列において、ブロックの1つがイオン伝導性であり、他の1つが高機械強度を有し、他の1つが複数の直鎖状ポリマートリブロック610から作られた電解質に所望の特性を高める又は加える限り、ポリマーブロック612、622、632の役割は変化し得る。
【0029】
図7は、本発明の実施態様に従う、第一ドメイン710−x、第二ドメイン720−x、第三ドメイン730−xの領域を交互に入れ替えた三相ナノ構造ゲルポリマー電解質の一部の略図である。前記三相構造は、図6に示されるような複数のA−B−Cトリブロックコポリマーから作られる。前記トリブロックコポリマーは、末端から末端まで(A−B−C)(C−B−A)(A−B−C)配列で並べられている。第一ドメイン710−1は、第一相のポリマーブロック712−1、712−2を有する。あらゆる第一ドメイン710−x中で、ポリマーブロック712−1、712−2は互いに共有結合してはおらず、それらの末端が触れる領域で互いに対してスライドすることが出来る。第二ドメイン720−1は、第二相のポリマーブロック722を有する。第一ドメイン710−1は、第二ドメイン720−1の片側に隣接している。第三相のポリマーブロック732−1、732−2を有する第三ドメイン730−1は、前記第二ドメイン720−1のもう一方の側に隣接している。あらゆる第一ドメイン730−x中で、ポリマーブロック732−1、732−2は互いに共有結合してはおらず、それらの末端が触れる領域で互いに対してスライドすることが出来る。三相ナノ構造ゲルポリマー電解質全体を形成するために、図7に示した交互入れ替えパターンを継続する、別の第一ドメイン710−x、第二ドメイン720−x及び第三ドメイン730−x(一部のみを示す)が存在する。
【0030】
本発明のある実施態様において、第一ドメイン710−xは伝導性ドメインであり;ポリマーブロック712−xは、それ自体イオン伝導性である及び/又はイオン伝導性液体電解質を吸収できるマトリックスを提供する、ポリマーを有する。ある配列において、第二ドメイン720−xは構造ドメインであり;ポリマーブロック722は、高機械強度を有するポリマーを有する。第三ドメイン730−xは他の所望の特性を加え;ポリマーブロック732−xは、電解質に所望の特性を高める又は加えるポリマーを有する。第三ドメイン730−xは、ナノ構造ゲルポリマー電解質の全靭性を増大させるために選ばれ得るものであり、それにより処理しやすくなる。他の配列において、第二ドメイン720−x及び第三ドメイン730−xの役割は逆転されている。
【0031】
本発明の他の実施態様において、第二ドメイン720−xは伝導性ドメインであり;ポリマーブロック722は、それ自体イオン伝導性である及び/又はイオン伝導性液体電解質を吸収できるマトリックスを提供する、ポリマーを有する。ある配列において、第一ドメイン710−xは構造ドメインであり;ポリマーブロック712−xは、高機械強度を有するポリマーを有する。第三ドメイン730−xは他の所望の特性を加え;ポリマーブロック732−xは、電解質に所望の特性を高める又は加えるポリマーを有する。第三ドメイン730−xは、ナノ構造ゲルポリマー電解質の全靭性を増大させるために選ばれ得るものであり、それにより処理しやすくなる。他の配列において、第一ドメイン710−x及び第三ドメイン730−xの役割は逆転されている。
【0032】
本発明の更に別の実施態様において、第三ドメイン730−xは伝導性ドメインであり;ポリマーブロック732−xは、それ自体イオン伝導性である及び/又はイオン伝導性液体電解質を吸収できるマトリックスを提供する、ポリマーを有する。ある配列において、第一ドメイン710−xは構造ドメインであり;ポリマーブロック712は、高機械強度を有するポリマーを有する。第二ドメイン720−xは他の所望の特性を加え;ポリマーブロック722は、電解質に所望の特性を高める又は加えるポリマーを有する。第三ドメイン730−xは、ナノ構造ゲルポリマー電解質の全靭性を増大させるために選ばれ得るものであり、それにより処理しやすくなる。他の配列において、第一ドメイン710−x及び第二ドメイン720−xの役割は逆転されている。
【0033】
当該技術分野においてよく知られているように、トリブロックは様々な形態に配列され得る。本明細書に開示される本発明の実施態様において、該トリブロックは、限定されることなくあらゆる幾何学的に可能な形態に配置されてもよい。三相トリブロック構造に関する可能な形態の非限定的な例としては、図8A〜図8Cに示すものが挙げられる。前記形態には、図中の模様のあるドメイン及び白色のドメインによって示されるように、2つの主要ドメインが含まれる。前記形態には、更に、図中の黒色のドメインによって示されるように、第三ドメインが含まれる。
【0034】
ある実施態様において、主要ドメイン(模様のあるドメイン又は白色のドメイン)のうち、1つは構造ドメインであり、もう1つは伝導性ドメインである。第三ドメインは伝導性又は構造ドメインである必要はなく、上記の通り、ナノ構造ゲルポリマー電解質に他の所望特性を加えることが出来る。
【0035】
ある配列において、ナノ構造ゲルポリマー電解質のブロックコポリマーは直鎖状のコポリマーである。他の配列において、ナノ構造ゲルポリマー電解質のブロックコポリマーは分岐鎖状のコポリマーである。他の配列において、ナノ構造ゲルポリマー電解質のブロックコポリマーはジブロックコポリマーである。他の配列において、ナノ構造ゲルポリマー電解質のブロックコポリマーはトリブロックコポリマーである。
【0036】
いくつかの配列において、ナノ構造ゲルポリマー電解質のミクロ構造は、整列した又は異方性のドメイン、並びに、欠陥及び局所的非連続的な領域を有する。いくつかの配列において、マクロ構造は、特有の組成又は配向性を有する散発的な粒子(grains)を有する。
【0037】
ある実施態様において、ナノ構造ゲルポリマー電解質に用いるポリマーを、以下のガイドラインを用いて選択することが出来る。先に述べたように、液体電解質と混合したときに伝導性ポリマーが25℃で10-4Scm-1以上のイオン伝導度を有し、関心のある電気化学電池の使用温度(例えば、0〜90℃の間)で熱的に安定であると有用である。リチウム塩に対して伝導性ポリマーが化学的に安定であると有用である。構造ポリマーが、関心のある電気化学電池の使用温度で1×106Paを超える弾性率(modulus)を有すると有用である。他の配列において、構造ポリマーが、関心のある電気化学電池の使用温度で1×107Paを超える弾性率(modulus)を有すると有用である。構造ポリマーが、ホモポリマー状態で、伝導性ポリマー中に用いられる液体電解質の存在下で5%未満膨潤すると有用である。第三相ポリマーは、ゴム状(rubbery)であってもよく、関心のある電気化学電池の使用・処理温度よりも低いガラス転移点を有してもよい。ナノ構造ゲルポリマー電解質中の材料全てが相互に非混和であると有用である。
【0038】
ナノ構造ゲルポリマー電解質の伝導相に用いることの出来るポリマーの非限定的な例には、ポリエーテル、直鎖状コポリマー及びポリアミンが含まれる。ある配列において、ポリエチレンオキシドが用いられる。他の配列において、エーテルを含む直鎖状コポリマーが用いられる。他の配列において、直鎖状のポリエーテル、直鎖状のポリアクロニトリル(polyacronitriles)、直鎖状のポリビニルアルコール、及び直鎖状のポリアクリレートを用いることが出来る。更に別の配列において、ポリシロキサン、ポリホスファゼン、ポリエーテル、ポリエチレン、ポリアクリレートなどの、ガラス転移点の低い骨格を有するくし形構造、及び、PEG−ジメチルエーテル、PEG−EC及びPEG−CNなどの置換ポリエチレングリコールであるペンダントを有するポリマーを用いることが出来る。そのようなポリマーの詳細は、参照することにより本明細書に援用される2008年4月8日に米国に出願された米国仮出願番号61/056688の中に見ることが出来る。
【0039】
ある実施態様において、伝導相に加えられる液体電解質は、溶媒及び塩を含む。適切な溶媒の非限定的な例としては、置換エーテル、置換アミン、置換アミド、置換ホスファゼン、置換PEG(上記段落を参照のこと)、アルキルカーボナート、ニトリル、ボラン及びラクトンなどの極性添加剤が挙げられる。ある配列において、前記溶媒は、5000ダルトン以下の分子量を有する。他の配列において、前記溶媒は、1000ダルトン以下の分子量を有する。例示的な液体電解質は、25℃で1×10-4Scm-1以上のイオン伝導度により特徴付けられてもよい。他の実施態様によれば、例示的な液体電解質は、25℃で1×10-3Scm-1以上のイオン伝導度により特徴付けられてもよい。構造相として用いられるポリマーが、ホモポリマー状態で、液体電解質に用いられる溶媒の存在下で5%未満膨潤すると特に有用である。
【0040】
本発明の他の実施態様において、溶媒は、N−ブチル−N31メチルピロリジニウム・ビス(3−トリフルオロメタンスルホニル)イミド[PYR14+TFSI−]又は1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム・ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド[BMITFSI]などの、室温イオン性液体であってもよい。本発明の他の実施態様において、溶媒は、ポリエチレングリコールボラートエステル又はポリエチレングリコールアルミナートエステルなどのルイス酸であってもよい。本発明の別の他の実施態様において、溶媒は、エチレンカルボナート又はプロピレンカルボナートなどの高誘電性有機可塑剤であってもよい。
【0041】
本発明のある実施態様において、電解質材料が100℃に60分間加熱された後に、第一ドメイン中の溶媒の20%未満が蒸発する。本発明の他の実施態様において、電解質材料が100℃に60分間加熱された後に、第一ドメイン中の溶媒の10%未満が蒸発する。
【0042】
本発明の実施態様において用いられる電解質塩に特に制限はなく、所望の電荷担体として特定されるイオンを含むあらゆる電解質塩を用いることが出来る。該溶媒中における解離定数の大きい電解質塩を用いることが特に有用である。好適な例としては、アルカリ金属塩、(CH3)4NBF6などの第4級アンモニウム塩、(CH3)4PBF6などの第4級ホスホニウム塩、AgClO4などの遷移金属塩、又は、塩酸、過塩素酸及びフルオロホウ酸(fluoroboric acid)などのプロトン酸が挙げられ、これらの中でもアルカリ金属塩、第4級アンモニウム塩、第4級ホスホニウム塩、遷移金属塩が好ましい。
【0043】
好適な電解質塩の具体例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、銀、バリウム、鉛、カルシウム、ルテニウム、タンタル、ロジウム、イリジウム、コバルト、ニッケル、モリブデン、タングステン又はバナジウムの、塩化物、臭化物、硫酸塩、硝酸塩、硫化物、水素化物、窒化物、リン化物、スルホンアミド、トリフラート、チオシアン酸塩(thiocynates)、過塩素酸塩、ホウ酸塩又はセレン化物からなる群から選択される金属塩などの従来のアルカリ金属塩が挙げられる。電解質塩は、単独で用いてもよく、2以上の異なる塩の混合物中で用いてもよい。
【0044】
いくつかの配列において、リチウム塩が用いられる。具体的なリチウム塩の例としては、LiSCN、LiN(CN)2、LiClO4、LiBF4、LiAsF6、LiPF6、LiCF3SO3、Li(CF3SO2)2N、Li(CF3SO2)3C、LiN(SO2C2F5)2、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2CF2CF3)2、リチウムアルキルフルオロホスファート、リチウムオキサラトボラート(lithium oxalatoborate)、及び5〜7員環を有する他のリチウムビス(キラト(chelato))ボラート、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホンイミド)(LiTFSI)、LiPF3(C2F5)3、LiPF3(CF3)3、LiB(C2O4)2、並びにこれらの混合物が挙げられる。本発明の他の実施態様において、他の電気化学に関し、電解質は、ポリマーと様々な種類の塩とを組み合わせることにより作られる。非限定的な例として、AgSO3CF3、NaSCN、NaSO3CF3、KTFSI、NaTFSI、Ba(TFSI)2、Pb(TFSI)2及びCa(TFSI)2が挙げられる。
【0045】
本発明のある実施態様において、伝導相は、Al2O3粒子、TiO2粒子及び/又はSiO2粒子などの複数のセラミック粒子をも含む。ある配列において、前記セラミック粒子は5ナノメートル以下の最小寸法を有する。
【0046】
ナノ構造ゲルポリマー電解質の構造相に用いられるポリマーの非限定的な例としては、ポリスチレン、ポリメタクリレート、ポリビニルピリジン、ポリビニルシクロヘキサン、ポリイミド、ポリアミド及びポリプロピレンが挙げられる。前記構造相として用いることのできる他の材料には、スチレン、メタクリレート及びビニルピリジンを含むコポリマーが含まれるが、これらに限定されることはない。ある配列において、構造相は、90℃で106Paよりも大きい体積弾性率を有するポリマーブロックから作られる。構造相として用いられるポリマーが、ホモポリマー状態で、液体電解質に用いられる溶媒の存在下で5%未満膨潤すると特に有用である。
【0047】
ナノ構造ゲルポリマー電解質の第三相中に用いることの出来るポリマーの非限定的な例としては、ポリシロキサン、ポリアクリレート又はポリジエンから作られるゴム状ポリマーが挙げられる。例示的なポリシロキサンは、ポリジメチルシロキサンである。例示的なポリアクリレートは、ポリ(2−エチルヘキシルアクリレート)、ポリデシルメタクリレート又はポリラウリルメタクリレートである。例示的なポリジエンは、ポリイソプレン又はポリブタジエンである。他の配列において、第三相は、様々な種類の直鎖状ポリマーブロックの1つから作られる。第三相は、副相(minor phase)であってよく、ナノ構造ゲルポリマー電解質の靭性全体を増大させてもよい。
【0048】
本明細書において開示されるナノ構造ゲルジブロックコポリマー電解質は様々な材料のいずれからも作ることが出来る。ある配列において、ナノ構造ゲルポリマー電解質は、ポリエチレンオキシドの第一伝導相及びポリスチレンの第二構造相を有するポリ(スチレン−ブロック−エチレンオキシド)(SEO)ジブロックコポリマーから作られる。SEOジブロックコポリマー電解質は、約100,000〜1,000,000ダルトンの分子量を有し得る。ある配列において、SEOジブロックコポリマー電解質は、約100,000〜500,000ダルトンの分子量を有し得る。他の配列において、SEOジブロックコポリマー電解質は、約400,000ダルトンの分子量を有し得る。いくつかの配列において、SEOジブロックコポリマー電解質は脆性であり、独立して立つ薄膜を形成しようと試みると簡単にばらばらになり得る。一般に、ナノ構造ゲルポリマー電解質の靭性は、分子量とともに増大する。
【0049】
本明細書に開示される二相ナノ構造ゲルトリブロックコポリマー電解質は、様々な材料のいずれからも作ることができる。ある配列において、ナノ構造ゲルポリマー電解質は、第一構造相及び第二伝導相を有するポリ(スチレン−ブロック−エチレンオキシド−ブロック−スチレン)(SEOS)トリブロックコポリマーから作られる。SEOトリブロックコポリマー電解質は、約100,000〜1,000,000ダルトンの分子量を有し得る。ある配列において、SEOトリブロックコポリマー電解質は、約100,000〜500,000ダルトンの分子量を有する。他の配列において、SEOトリブロックコポリマー電解質は、約400,000ダルトンの分子量を有する。いくつかの配列において、SEOSトリブロックコポリマー電解質は脆性ではなく、独立して立つ薄膜を形成しようと試みると簡単にはばらばらにならない。
【0050】
他の配列において、ナノ構造ゲルポリマー電解質は、ポリ(エチレンオキシド−ブロック−スチレン−ブロック−エチレンオキシド)(EOSEO)トリブロックコポリマーから作られる。EOSEOトリブロックコポリマー電解質は、約100,000〜1,000,000ダルトンの分子量を有し得る。ある配列において、EOSEOトリブロックコポリマー電解質は、約100,000〜500,000ダルトンの分子量を有する。他の配列において、EOSEOトリブロックコポリマー電解質は、約400,000ダルトンの分子量を有する。
【0051】
本明細書に開示される三相ナノ構造ゲルトリブロックコポリマー電解質は、様々な材料のいずれからも作ることができる。ある配列において、ナノ構造ゲルポリマー電解質は、ポリ(イソプレン−ブロック−スチレン−ブロック−エチレンオキシド)(ISEO)トリブロックコポリマーから作られる。ISEOトリブロックコポリマー電解質は、約100,000〜1,000,000ダルトンの分子量を有し得る。ある配列において、ISEOトリブロックコポリマー電解質は、約100,000〜500,000ダルトンの分子量を有する。他の配列において、ISEOトリブロックコポリマー電解質は、約400,000ダルトンの分子量を有する。
【0052】
図9は、本発明の実施態様に従う2つのナノ構造ゲルポリマー電解質について、逆温度の関数としてのイオン伝導度を示す図である。コポリマー1及びコポリマー2の両方とも、60質量%の伝導性ドメインと40質量%の構造ドメインを有する二相ナノ構造ゲルポリマー電解質である。伝導性ゲルドメイン中で、コポリマー1は、79質量%のポリエチレンオキシド(PEO)と21質量%のエチレンカーボナート(EC)(液体電解質)を含む。伝導性ゲルドメイン中で、コポリマー2は28質量%のPEOと72質量%のECを含む。図によると、コポリマー1よりもエチレンカーバイドの多いコポリマー2の方がイオン伝導性が高く、このことは、高ゲル状の伝導相が、「より乾燥した」伝導相と比較して伝導性が高いことを示す。
【0053】
以下は、本発明において意図されるゲル電解質システムを製造するために用いられ得る処理技術の様々な実施態様の記載である。ある実施態様によれば、セパレータのドメイン構造は、様々な相の動力学的制御、特に熱力学的に好ましい相分離の動力学的制限を介して形成され維持される。溶液に混合された異種のホモポリマーは、溶媒の高速除去を介して、及びいくつかの場合においては、その後乾燥ポリマーを加熱することによるわずかな活性化を介して、所望のドメイン構造を形成してもよい。形態を維持するために、その後、材料を低温に保って相分離を防いでもよく、多様なこれらのホモポリマーによる共有結合架橋を用いて当該形態の状態を効果的に固定させてもよい。
【0054】
上記のブロックコポリマーをベースとした電解質を用いる他の実施態様によれば、当該形態は相間の共有結合を介して維持され、得られる具体的な形態は、ポリマーの組成、体積分率、及び分子構造に依存する。ポリ(スチレンブロック−エチレンオキシド)(SEO)ジブロックコポリマーを合成する例示的な方法には、第一ブロックとしてポリスチレン(PS)を合成する工程と、第二ブロックとしてエチレンオキシド(EO)を合成する工程が含まれる。前記方法は、精製したベンゼンを蒸留して真空ライン上の反応器内に入れる工程、及び前記真空ラインから反応器を取ってグローブボックス内に入れる工程を有し、グローブボックス内でs−ブチルリチウムなどの開始剤が加えられてもよい。前記方法は、前記反応器を前記真空ラインに戻して脱ガスする工程、及びスチレンモノマーを蒸留して前記反応器内に入れる工程を有する。
【0055】
前記方法は、前記反応器を室温に温める工程、少なくとも6時間攪拌する工程、及び分子量を決定するために前記グローブボックス内の一定分量(アリコート;aliquot)のリビング・ポリスチレン前駆体を分離する工程を有する。前記方法は、前記反応器を真空ラインに戻して完全に脱ガスする工程、及び数ミリリットルのエチレンオキシドを蒸留して前記脱ガスした反応器に入れる工程を有する。前記方法は、前記反応器を室温に温める工程、2時間攪拌する工程、前記反応器を前記グローブボックスに入れる工程、強塩基を開始剤に対して1:1のモル比で加える工程を有する。前記方法は、前記強塩基としてt−ブチルホスファゼン塩基(t−BuP4)を加える工程を有する。
【0056】
前記工程は、前記反応器を前記真空ラインに戻して完全に脱ガスする工程、室温で12時間攪拌して前記t−BuP4を前記エチレンオキシド終端されたPS鎖と反応させる工程、及びドライアイス/イソプロパノールを用いて、所望量のエチレンオキシドを蒸留して前記反応器に入れる工程を有する。前記方法は、前記反応器を50℃に加熱する工程、及び温水浴中で5日間攪拌する工程を有する。前記方法は、前記反応器を前記グローブボックスに戻す工程、メタノールを用いて前記リビングSEOジブロックコポリマーを終結させる工程、及びヘキサン中での沈殿及び真空凍結乾燥によりベンゼンから前記SEOジブロックコポリマーを分離する工程を有する。
【0057】
ポリ(スチレン−ブロック−エチレンオキシド−ブロック−スチレン)(SEOS)トリブロックコポリマーを製造する例示的な方法は、上記のSEOを製造する方法と類似している。しかしながら、メタノールを用いて最終ポリマーを終結させる代わりに、二機能性停止剤として好ましくはジクロロジメチルシランが用いられる。実施態様によれば、前記二機能性停止剤は2つのSEO鎖を結合してSEOS鎖を形成させる。
【0058】
前記方法は、前記二機能性停止剤を添加した後に、反応混合物を5日間攪拌して、これにより緩やかな反応が完了に向かうことを可能にする工程を有する。前記方法は、メタノールを添加して残存するリビング鎖を終結させる工程、及びヘキサン中での沈殿と真空凍結乾燥によりベンゼンからSEOSトリブロックコポリマーを分離させる工程を有する。
【0059】
ポリ(エチレンオキシド−ブロック−スチレン−ブロック−エチレンオキシド)(EOSEO)トリブロックコポリマーを合成する例示的な方法は、上記のSEOを製造する方法と類似している。しかしながら、s−ブチルリチウムを用いてスチレンを開始する代わりに、好ましくは二機能性開始剤が用いられる。実施態様によれば、前記開始剤により前記PS鎖が鎖両末端から伸びていく。特定の実施態様において、前記二機能性開始剤として、THF中のナフタレンカリウムを用いることが出来る。
【0060】
実施態様によれば、例示的な方法は、分子量を決定するために前記グローブボックス中で一定分量のリビング・ポリスチレン前駆体を分離する工程、及び前記反応器を前記真空ラインに戻して完全に脱ガスをする工程を更に有する。前記方法は、数ミリリットルのエチレンオキシドを蒸留して前記脱ガスした反応器に入れる工程を有する。前記方法は、前記反応器を室温に温める工程、2時間攪拌する工程、前記反応器を前記グローブボックスに戻す工程、強塩基を開始剤に対して1:1のモル比で加える工程を有する。前記方法は、前記強塩基としてt−ブチルホスファゼン塩基(t−BuP4)を加える工程を有する。前記工程は、前記反応器を前記真空ラインに戻して完全に脱ガスする工程、室温で12時間攪拌して前記t−BuP4を前記エチレンオキシド終端されたPS鎖と反応させる工程、及びドライアイス/イソプロパノールを用いて、所望量のエチレンオキシドを蒸留して前記反応器に入れる工程を有する。前記方法は、前記反応器を50℃に加熱する工程、温水浴中で5日間攪拌する工程、及び前記反応器を前記グローブボックスに戻す工程を有する。前記方法は、メタノールを用いて前記リビングEOSEOトリブロックコポリマーを終結させる工程、及びヘキサン中での沈殿及び真空凍結乾燥によりベンゼンから前記EOSEOトリブロックコポリマーを分離する工程を有する。
【0061】
ポリ(イソプレン−ブロック−スチレン−ブロック−エチレンオキシド)(ISEO)トリブロックコポリマーを合成する例示的な方法は、ベンゼン中でポリイソプレンブロックを合成する工程を有する。前記方法は、精製したベンゼンを蒸留して真空ライン上の反応器内に入れる工程、及び前記真空ラインから反応器を取ってグローブボックス内に入れる工程を有し、グローブボックス内でs−ブチルリチウムなどの開始剤が加えられる。前記方法は、前記反応器を前記真空ラインに戻して脱ガスする工程、前記イソプレンモノマーを蒸留して前記反応器に入れる工程、前記混合物を少なくとも6時間攪拌する工程、及び分子量を決定するために、前記グローブボックス内で一定分量のリビング・ポリイソプレン前駆体を分離する工程を有する。
【0062】
前記方法は、前記反応器を前記真空ラインに戻して完全に脱ガスをする工程、前記スチレンを蒸留してリビング・ポリイソプレン溶液に入れる工程、及び前記反応を少なくとも6時間行ってポリイソプレン−ブロック−ポリスチレン・リビングポリマーを形成する工程を有する。前記方法は、ドライアイス/イソプロパノールを用いて前記反応器を冷却する工程、数ミリリットルのエチレンオキシドを蒸留して前記反応器に入れる工程、前記反応器を室温に温める工程、及び2時間攪拌する工程を有する。前記方法は、前記反応器を前記グローブボックスに入れる工程、及び強塩基を前記開始剤に対して1:1のモル比で添加する工程を有する。前記方法は、前記強塩基としてt−ブチルホスファゼン塩基(t−BuP4)を加える工程を有する。
【0063】
前記工程は、前記反応器を前記真空ラインに戻して完全に脱ガスする工程、室温で12時間攪拌して前記t−BuP4を前記エチレンオキシド終端されたPI−PS鎖と反応させる工程、及びドライアイス/イソプロパノールを用いて、所望量のエチレンオキシドを蒸留して前記反応器に入れる工程を有する。前記方法は、前記反応器を50℃に加熱する工程、及び温水浴中で5日間攪拌する工程を有する。前記方法は、前記反応器を前記グローブボックスに戻す工程、メタノールを用いて前記リビングISEOトリブロックコポリマーを終結させる工程、及びヘキサン中での沈殿及び真空凍結乾燥によりベンゼンから前記ISEOジブロックコポリマーを分離する工程を有する。
【0064】
ゲル電解質材料を製造するためにベンゼンを精製する実施態様によれば、出発物質ベンゼンはAldrichから購入してもよい。ベンゼンを精製する例示的な方法は、真空ラインと結合した長首フラスコ内で、少なくとも8時間、新鮮で粉末状の水素化カルシウム上で攪拌させる工程を有する。前記方法は、液体窒素を用いて水素化カルシウムの混合物を凍結させる工程、及び真空下で前記混合物を脱ガスする工程を有する。前記方法は、水素化カルシウム混合物からベンゼンを蒸留してs−ブチルリチウム精製段階に進む工程、及び前記s−ブチルリチウム上で少なくとも8時間前記ベンゼンを攪拌する工程、及び脱ガスする工程を有する。
【0065】
ゲル電解質材料を製造するためにスチレンを精製する実施態様によれば、出発物質スチレンはAldrichから購入してもよい。例示的な精製スチレンは、使用前は冷凍庫に保存されていてよい。前記実施態様によれば、前記方法は、前記真空ラインと結合したフラスコにスチレンを注ぐ工程、凍結する工程、及び脱ガスする工程を有する。前記方法は、ジブチルマグネシウム(ヘプタン中で1.0M)をピペットで取ってグローブボックス内の第二フラスコに入れる工程、スチレン100mLごとに対し10mLのジブチルマグネシウムを添加して精製する工程を有する。前記方法は、前記フラスコを前記真空ラインと結合させる工程、前記ジブチルマグネシウムのフラスコから前記ヘプタンを蒸留する工程、前記スチレンを蒸留して前記ジブチルマグネシウム上に入れる工程、前記ジブチルマグネシウム上で少なくとも8時間、前記スチレンを攪拌する工程、及び完全に脱ガスする工程を有する。
【0066】
ゲル電解質材料を製造するためにイソプレンを精製する実施態様によれば、出発物質イソプレンはAldrichから購入してもよい。例示的な精製イソプレンは、使用前は冷凍庫に保存されていてよい。前記実施態様によれば、前記方法は、新鮮で粉末状の水素化カルシウムを有する長首フラスコにイソプレンを注ぐ工程、前記フラスコを真空ラインと結合させる工程、凍結する工程、及び脱ガスする工程を有する。前記方法は、s−ブチルリチウム(シクロヘキサン中で1.4M)をピペットで取って第二の長首フラスコに入れる工程、イソプレン100mLごとに対し10mLのs−ブチルリチウムを添加して精製する工程、前記s−ブチルリチウムフラスコの前記シクロヘキサンを蒸留する工程、及びドライアイス/イソプロパノールを冷却剤として用いて、前記イソプレンを蒸留して乾燥s−ブチルリチウムに入れる工程を有する。前記方法は、前記ドライアイスから前記混合物を取り出す工程、及び冷却剤なしに3分間攪拌する工程を有し、前記フラスコを3分よりも長い間冷却槽から出さないようにする。前記方法は、液体窒素内で前記混合物を凍結させる工程、脱ガスする工程、前記攪拌/脱ガスの手順をもう2回繰り返して精製度を高める工程、及びイソプレンを蒸留して計量用のアンプルに入れて前記イソプレンを使用しやすくする工程を有する。
【0067】
ゲル電解質材料を製造するためにエチレンオキシドを精製する実施態様によれば、出発物質エチレンオキシドはAldrichから購入してもよい。例示的な方法は、ドライアイス/イソプロパノールを冷却剤として用いて、エチレンオキシドを凝縮して新鮮で粉末状の水素化カルシウムを含む長首フラスコに入れる工程、エチレンオキシドを凍結させて脱ガスする工程を有し、エチレンオキシドは使用前は冷蔵庫内のガスシリンダー内で保存されていてもよい。前記方法は、ドライアイス/イソプロパノール内に包みつつ、水素化カルシウム上で最少で8時間エチレンオキシドを攪拌する工程、n−ブチルリチウムをピペットで取って第二の長首フラスコに入れる工程、前記フラスコを前記真空ラインと結合させる工程、及び脱ガスする工程を有する。
【0068】
前記方法は、エチレンオキシド100mLごとに対して、ヘキサン中のn−ブチルリチウム10mLを加えて精製する工程、前記n−ブチルリチウムのフラスコからヘキサンを蒸留する工程、及び、ドライアイス/イソプロパノールを冷却剤として用いて、エチレンオキシドを蒸留して前記乾燥n−ブチルリチウムに入れる工程を有する。前記方法は、ドライアイス/イソプロパノール槽を取り出して取り替える工程、前記混合物を0℃で30分間攪拌する工程、及び危険な暴走反応を防ぐために前記混合物が0℃よりも温かくないことを確実にする工程を有する。前記方法は、ドライアイス/イソプロパノールを冷却剤として用いて、n−ブチルリチウムからエチレンオキシドを蒸留して計量用アンプルに入れる工程、及び前記アンプルを0℃に保って、前記エチレンオキシドを使用しやすくする工程を有する。
【0069】
ゲル電解質材料を製造するためにジクロロジメチルシランを精製する実施態様によれば、出発物質ジクロロメチルシランはAldrichから購入してもよい。実施態様によれば、前記方法は、真空ラインと結合した長首フラスコ内で、少なくとも8時間、新鮮で粉末状の水素化カルシウム上で攪拌する工程を有する。前記方法は、前記ジクロロメチルシランを凍結する工程、及び使用前に完全に脱ガスする工程を有する。
【0070】
上記に加えて、他の実施態様によれば、前記出発物質を調製して前記物質を精製するのに、さらに別の工程を行わなければならない。実施態様によれば、前記特定の工程は、ポリマーセパレータを乾燥させる工程を有する。ポリマーセパレータを乾燥させる方法は、先に述べたような前記ジブロック及びトリブロックのコポリマーを合成する工程を有する。混合物に水が含まれていないことを保証するために、前記方法は、混合する前に各成分を乾燥させる工程を有する。前記方法は、前記グローブボックス・アンテチャンバー(antechamber)内で真空下、前記ポリマーを150℃に加熱する工程、及び12時間該チャンバー内に保って水分を取り除く工程を有する。前記方法は、前記ゲルが調製されるまで前記ポリマーをアルゴンで満たされたグローブボックス内に保持する工程を有する。
【0071】
他の実施態様によれば、特定の工程は、例示的な電解質の塩成分を調製する工程を有する。塩成分を調製する方法は、Aldrichから購入したリチウムビス(トリフルオロメタン)スルホンイミド(LiTFSI)を使用前に乾燥させる工程を有する。前記方法は、LiTFSIの高吸湿特性のため、前記アルゴングローブボックス内でLiTFSIのみを処理する工程を有する。LiTFSIが乾燥していることを保証するために、前記方法は、前記グローブボックス内で真空下12時間、LiTFSIを150℃に加熱する工程を有する。前記方法は、前記ゲルが調製されるまで前記アルゴンで満たされたグローブボックス内にLiTFSIを保持する工程を有する。
【0072】
他の実施態様によれば、前記特定の工程は、エチレンカーボナートを精製する工程を有する。エチレンカーボナート(EC)を精製する方法は、Aldrichから購入したECを使った2つの工程手順を有する。ECは、本発明において意図されるゲル電解質において溶媒として用いられる。ECは室温で固体であるため、前記方法は、最初に60℃に加熱する工程、及び分子篩(4A)上で攪拌して水汚染を除去する工程を有する。前記方法は、ECを蒸留して重い不純物を取り除く工程を有する。前記方法は、精製後、前記ゲルが調製されるまで、前記グローブボックス内に前記ECを保存する工程を有する。
【0073】
他の実施態様によれば、前記特定の工程は、ポリマーゲルを調製する工程を有する。ポリマーゲルを調製する方法は、グローブボックス内にアルゴンを充填する工程、及び処理工程全般に渡って前記材料を空気フリーに保つ工程を有する。前記方法は、ベンゼン及びアセトニトリル(体積比で20:1の割合)の相溶性溶媒混合物を調製する工程を有する。前記方法は、前記ポリマー、LiTFSI及びECの重さを測り、所望量瓶の中に入れる工程を有する。前記方法は、前記相溶性溶媒混合物を前記瓶に添加して、凡そ2質量%のポリマー/LiTFSI/EC溶液を調製する工程を有する。前記方法は、少なくとも12時間溶液を攪拌して前記ポリマーを完全に溶解・混合させる工程を有する。
【0074】
前記実施態様によれば、前記方法は、ドライアイスを用いてTFSI/EC溶液を凍結させる工程、及び真空下で前記凍結した溶液を凍結乾燥する工程を有する。前記方法は、2日間真空にして、前記混合物からベンゼン及びアセトニトリルを除去する工程を有する。前記方法は、前記乾燥したサンプルを前記グローブボックスに戻して鎖前記サンプルを空気にさらさないことを保証する工程を有する。前記方法は、前記サンプルを圧縮成形する工程、及びバッテリー電解質を製造するために前記サンプルを用いる工程を有する。
【0075】
実施態様によれば、前記特定の工程は、あるポリマーを添加剤として選択する工程を有する。前記実施態様によれば、ECを溶媒としてポリマー塩電解質に添加すると、「ニート」ポリマー−塩電解質と比較して伝導度が高くなる。しかしながら、大量のECを前記コポリマーに添加すると、前記ポリマーはEC溶媒中で大きく膨潤してしまう。その結果、前記電解質の機械特性が失われてしまう。ECは、前記コポリマーの伝導相を膨潤させるが、機械的に硬質な相を膨潤させないため、機械的完全性を維持しつつ、少量で伝導性を増大させるのに十分な量のECを前記コポリマーに添加することが出来る。前記方法は、前記機械的に硬質な相が構造的完全性を維持し更に促進するのに十分なゲル体積分率を占めるよう、添加剤として少量のECを前記ゲル電解質システムに添加する工程を有する。
【0076】
前記方法は、伝導相中の増大するEC量と、膨潤する伝導相を機械的完全性を維持するのに十分な体積分率よりも小さい体積分率に保つ必要性とのバランスを取る工程を有する。実施態様によれば、最初のコポリマーが副成分(minor component)として伝導相を有する場合、特に10〜30%の範囲内で有する場合に、このトレードオフは最大化され得る。前記方法は、総伝導相体積を機械的完全性を維持するのに十分な分率よりも低い分率に維持しつつ、前記伝導相をECで大きく膨潤させる構造を作り上げるために、10〜30%体積分率の範囲内で副成分を提供する工程を有する。
【0077】
上記開示は、イオンの流れに対する制御されたナノ構造通路を提供し、従来のポリマー処理方法を用いて製造するのに適用できる、高い機械的安定性及び高い伝導性の両方を示す電解質材料を提供する。本発明は上記特定の実施態様との関連で記載されたが、変更態様及び変形態様が可能である。例えば、多相ポリマーシステムを用いるという概念は、バッテリー電解質の機械的強度及び伝導性を向上させるために、水性及び非水性のどちらの他のゲル電解質システムにも拡張することが出来る。従って、本発明の範囲及び幅は、上記特定の実施態様によって限定されるべきではなく、特許請求の範囲及びその最大限の均等によって決定されるべきである。
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2008年1月16日に出願された米国仮出願番号61/021,613に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【0002】
[技術分野]
本発明は、一般的には電解質材料に関し、より具体的には高伝導度及び高機械強度の両方を有し、処理が容易且つ可能なゲルポリマー電解質に関する。
【背景技術】
【0003】
携帯電話、ラップトップ・コンピューター及び他の家庭用電化製品などの技術製品への世界的需要が高まるにつれて、充電式バッテリーに対する需要が急速に増大している。また、高エネルギー密度を有する充電式バッテリーに対する巨大潜在市場を作り出している、配電網負荷平準化装置や電気で動く乗り物などの環境保全技術を開発しようとする現在の取り組みにより、充電式バッテリーへの関心が増している。
【0004】
リチウムイオンバッテリーは、携帯用電子機器用の充電式バッテリーのうち、最も普及しているタイプの1つである。リチウムイオンバッテリーは高エネルギー密度及び高出力密度を提供し、不使用時の電荷損失を遅くし、メモリ効果に悩まされない。高エネルギー密度などの多くの利点により、リチウムイオンバッテリーは、防衛、宇宙空間、バックアップ用蓄電、及び輸送用途においてもますます用いられてきている。
【0005】
電解質は、充電式リチウムイオンバッテリーの重要部分である。負の電解質材料は酸化されて電子を生成し、正の電解質材料は還元されて電子を消費するため、放電の間、電解質は電解質間におけるイオン流動用の媒体となる。電子は、外部回路を介して電流として流れる。従来の充電式リチウムイオンバッテリーは、非ポリマー液体電解質を用いてきた。リチウムイオンバッテリーにおける例示的な液体電解質は、アルキルカーボナートなどの有機溶媒中のLiPF6、LiBF4又はLiClO4などのリチウム塩から構成される。
【0006】
非ポリマー液体電解質は、現在のリチウムをベースとする技術の中心であるが、ポリマー電解質はリチウムをベースとするバッテリーの次なる進歩の波を構成するかもしれない。他の利点の中で、ポリマー電解質は高温安定性を有し、自己放電の割合が低く、幅広い範囲の環境条件において安定して実施でき、安全性が高く、バッテリー形態が柔軟で、環境影響を最小限にでき、材料及び処理コストが低い可能性があるため、充電式のゲルポリマー電解質バッテリーは、リチウムイオンバッテリー技術にとって特に魅力的である。ゲルポリマー電解質は、一部には、携帯用電子機器に用いられる最近のバッテリーの、薄く真空包装のポーチ電池デザインに見られるような新規形状因子及び包装方法に適しているために、非常に興味を持たれている。
【0007】
ゲル電解質の商業用途に必要な機械的頑健性を達成するために、ポリマーマトリックスの架橋又は熱硬化が用いられてきた。しかしながら、架橋後には、電解質はもはや流動せず、不溶性であるため、次の処理可能性、並びに電解質と他のバッテリー部品との統合や包装(パッケージ化)が厳しく制限されてしまう。また、架橋の最適化には非常にコストがかかる。架橋により生ずる体積変化は、従来のゲル電解質の制御された処理及び製造を困難にし、架橋はイオン伝導度を低下させる傾向がある。また、架橋材料は一般的にリサイクル不可能である。
【0008】
原型的なゲルポリマー電解質は、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリ(アクリロニトリル)(PAN)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)及びポリ(ビニリデンフルオリド)(PVdF)などの材料をベースとしてきた。しかしながら、特に、電気化学電池に用いるのに適した伝導度を得るために十分な液体電解質で満たす場合には、架橋しないと、これらの材料をベースとした電解質は機械的特性の貧弱さに悩まされる。ポリマー電解質は、従来のリチウムイオン陽極よりも高エネルギー密度をもたらすリチウム金属陽極の使用を可能にするかもしれないが、フッ素化したポリマーをリチウム金属とともに用いた場合にはリチウムとフッ素の間で界面反応が起きて、LiFを形成してしまうという望ましくない結果が生じるため、この場合にはフッ素化したポリマーは化学的に安定ではない。LiFは電池インピーダンスを高め、LiFを形成するために用いられるリチウムはもはや電池の充電及び放電に関与出来ない。このため、PVdFをベースとした電解質はリチウム金属陽極を有するバッテリーには不適切である。また、特に高温において、溶媒が蒸発すると、これらのシステムの性能が経時的に低下していき、密閉包装が必要となる。
【0009】
高イオン伝導度を有するとともに、高機械強度、リチウムとの低反応性、並びに溶媒の低揮発性及び低蒸発性をも有する、非架橋性ポリマー電解質材料に対する強い需要が未だ存在する。
【0010】
前述の態様その他については、当業者であれば、添付図面を参照しつつ以下の実施態様の記載から容易に理解するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1A】図1Aは、構造網中のイオン伝導路網を有する電解質材料の簡易図である。
【図1B】図1Bは、構造網中のイオン伝導路網を有する電解質材料の簡易図である。
【図2A】図2Aは、二相ナノ構造ゲルポリマー電解質を構成する複数の直鎖状ポリマージブロックの略図である。
【図2B】図2Bは、第一ドメインと第二ドメインの領域を交互に入れ替えた、二相ナノ構造ゲルジブロックポリマー電解質の一部の略図である。
【図3】図3は、本発明の実施態様に従う、2ドメイン有孔ラメラ状(層状)形態の一部の略図である。
【図4】図4は、A−B−A形態で配列された2種類のポリマーブロックから作られた複数の直鎖状ポリマートリブロックの略図である。
【図5】図5は、第一ドメインと第二ドメインの領域を交互に入れ替えた、二相ナノ構造ゲルトリブロックポリマー電解質の一部の略図である。
【図6】図6は、A−B−C形態で配列された3種類のポリマーブロックから作られた複数の直鎖状ポリマートリブロックの略図である。
【図7】図7は、第一ドメイン、第二ドメイン及び第三ドメインの領域を交互に入れ替えた、三相ナノ構造ゲルトリブロックポリマー電解質の一部の略図である。
【図8A】図8Aは、3ドメインのトリブロック電解質から形成される固体電解質材料として可能ないくつかの形態の簡易図である。
【図8B】図8Bは、3ドメインのトリブロック電解質から形成される固体電解質材料として可能ないくつかの形態の簡易図である。
【図8C】図8Cは、3ドメインのトリブロック電解質から形成される固体電解質材料として可能ないくつかの形態の簡易図である。
【図9】図9は、温度の関数として、エチレンカーボナート(EC)で満たされたポリ(スチレン−ブロック−エチレンオキシド)コポリマーゲルの伝導度を示す簡易図である。
【0012】
[発明の詳細な説明]
電気化学電池用の電解質材料との関連で、好ましい実施態様を説明する。しかしながら、当業者であれば、本明細書に開示された材料及び方法は、高イオン伝導性が望まれる多くの他の背景、特に機械的強度が重要である多くの他の状況における用途を有していると容易に理解するであろう。
【0013】
本発明のこれら及び他の目的及び利点は、添付図面と組み合わせて以下の記載から、より十分に明らかになるであろう。
【0014】
本発明の1つの実施態様において、ナノ構造ポリマー電解質材料は、イオンの流れのためのゲル化領域、及び電解質全体に良好な機械的強度を与える硬質領域の両方を有するブロックコポリマーである。前記ゲル化領域は、液体電解質を加える前はそれ自体イオン伝導性であってもなくてもよいブロックポリマーを設けることにより形成される。前記硬質領域は、硬質ポリマーブロックの相分離されたドメインにより形成される。前記液体電解質は溶媒及び塩の両方を含み、イオン伝導性及び電子絶縁性を与える。
【0015】
本発明の1つの実施態様において、ナノ構造ゲルポリマー電解質材料は、エネルギー密度を増大させ、熱及び環境安定性を向上させ、自己放電速度を低減し、安全性を高め、製造コストを減らし、新規形状因子を可能にすることにより、リチウムをベースとするバッテリーの性能を向上させるために用いられ得る。例示的な実施態様において、ナノ構造ゲルポリマー電解質材料は、フッ素化分子を含まず、25℃で1×10-4Scm-1以上のイオン伝導度を有する。他の例示的な実施態様において、ナノ構造ゲルポリマー電解質材料は、架橋されておらず、フッ素化分子を含まず、25℃で1×10-4Scm-1以上のイオン伝導度を有する。
【0016】
本発明の1つの実施態様において、ナノ構造ゲルポリマー電解質は、陽極と陰極の間のセパレータ領域における電気化学電池中で用いられる。例示的な実施態様において、陰極は、フッ素化された種と高反応性であるリチウム金属又はその合金である。ナノ構造ゲルポリマー電解質は、ナノ構造ゲルポリマー電解質セパレータを介してイオンの伝導を促進する液体電解質(溶媒及び塩)を含む。
【0017】
図1Aは、二相ナノ構造材料100の略図である。前記材料100は、伝導相110を有するいくつかの領域と、構造相120を有するいくつかの領域とを有する。前記伝導相110は、イオン伝導性液体電解質を吸収することの出来るマトリックスを提供するポリマーを有する。前記伝導相110は、前記液体電解質が導入される前は、それ自体イオン伝導性であってもそうでなくてもよい。前記構造相120には、前記伝導相110がちりばめられている。
【0018】
図1Bにおいて、電解質材料130は、液体電解質115(灰色で示されている)を伝導相110に加えることにより形成されており、図1Aの構造で可能なイオン伝導度よりも高いイオン伝導度が得られる。前記構造相120は、本質的に前記液体電解質115の添加による影響を受けない。図1Bに示す構造は、前記電解質130が二相構造を有することを示す以外のどのような特別な意味も伝えることを意図してはいない。図1B中の形態は凡そ層状(ラメラ状:lamellar)であるけれども、2ドメインのナノ構造として知られる他の形態も可能である。
【0019】
図2Aは、本発明の実施態様に従う、二相ナノ構造ゲルポリマー電解質を構成する複数の直鎖状ポリマージブロック201の略図である。各直鎖状ポリマージブロックは、互いに異なる第一ポリマーブロック202及び第二ポリマーブロック203の自己集合により作られる。前記ポリマーブロック202は、一端で前記ポリマーブロック203と共有結合している。前記ポリマーブロック202は、液体電解質を吸収することの出来るマトリックスを提供するポリマーから作られる。ポリマーブロック202中のポリマーは、前記液体電解質が添加される前は、それ自体イオン伝導性であってもそうでなくてもよい。前記ポリマーブロック203は、高機械強度を有するポリマーから作られる。ポリマーブロック203が、ホモポリマー状態で、前記伝導ブロック202に添加される液体電解質の存在下で5%未満膨潤するポリマーから作られると、特に有用である。
【0020】
図2Bは、本発明の実施態様に従う、第一ドメイン210−xと第二ドメイン220−xの領域を交互に入れ替えた二相ナノ構造ゲルポリマー電解質の一部の略図である。第一ドメイン210−1(及び210−2)は、第一相のポリマーブロック212−1、212−2を有する。第一ドメイン210−x中で、ポリマーブロック212−1、212−2は互いに共有結合してはおらず、それらの末端が触れる領域で互いに対してスライドすることが出来る。第二ドメイン220−1は、第二相のポリマーブロック222−1、222−2を有する。第二ドメイン220−x中で、ポリマーブロック222−1、222−2は互いに共有結合してはおらず、それらの末端が触れる領域で互いに対してスライドすることが出来る。第一ドメイン210−1は、第二ドメイン220−1の片側に隣接している。第一ドメイン210−2は、第二ドメイン220−1のもう一方の側に隣接している。第一ドメイン210−1に隣接する他の第二ドメイン(一部のみを示す)が存在する。第一ドメイン210−2に隣接する他の第二ドメイン(一部のみを示す)が存在する。二相構造は第一ドメイン210−xと第二ドメイン220−xを交互に入れ替えて続く。
【0021】
ある配列において、第一ドメイン210−xは伝導性ドメインであり;ポリマーブロック212−xは、それ自体イオン伝導性である及び/又はイオン伝導性液体電解質を吸収できるマトリックスを提供する、ポリマーを有する。第二ドメイン220−xは構造ドメインであり;ポリマーブロック222−xは、高機械強度を有するポリマーを有する。他の配列において、第一ドメイン210−xは構造ドメインであり;ポリマーブロック212−xは、高機械強度を有するポリマーを有する。第二ドメイン220−xは伝導性ドメインであり;ポリマーブロック222−xは、それ自体イオン伝導性である及び/又はイオン伝導性液体電解質を吸収できるマトリックスを提供する、ポリマーを有する。
【0022】
当該技術分野においてよく知られているように、ジブロックは様々な形態に配列される。本明細書に開示される本発明の実施態様において、該ジブロックは、限定されることなくあらゆる幾何学的に可能な形態に配列されてもよい。可能な形態の非限定的な例としては、層状(ラメラ状)、分岐状、円筒状及びらせん状が挙げられる。
【0023】
図3は、本発明の実施態様に従う、2ドメイン有孔層状形態の一部の略図である。前記有孔層状構造は、第一ドメイン315−x及び第二ドメイン325−xの交互層を有する。前記第二ドメイン325−1に向けて拡がった、前記第一ドメイン315−1、315−2の拡張部350が存在する。前記第一ドメイン層315−xの体積分率が前記第二ドメイン相325−xの体積分率よりも大きい場合、前記第一ドメイン315−xは、前記第二ドメイン325−x中のパーフォレーション(孔)の中に拡がる。
【0024】
ある配列において、前記第一ドメイン315−xは伝導相を有し、前記第二ドメイン325−xは構造相を有する。そのような配列により、孔/拡張部のない形態よりも高伝導性を有するナノ構造ゲルポリマー電解質となり得る。他の配列においては、前記第一ドメイン315−xは構造相を有し、前記第二ドメイン325−xは伝導相を有する。そのような配列により、孔/拡張部のない形態よりも高い機械強度を有するナノ構造ゲルポリマー電解質となり得る。
【0025】
図4は、A−B−A形態で配列された2種類のポリマーブロックの自己集合により作られた複数の直鎖状ポリマートリブロック410の略図である。各トリブロックは第一型の第一ポリマーブロック412−1、第二型のポリマーブロック422、及び第一型の第二ポリマーブロック421−2を有する。前記ポリマーブロック412−1は、前記ポリマーブロック422と共有結合している。前記ポリマーブロック412−2もまた、前記ポリマーブロック422と共有結合している。ある配列において、前記第一型のポリマーブロック412−1、412−2は、それ自体イオン伝導性である及び/又はイオン伝導性液体電解質を吸収できるマトリックスを提供する、ポリマーを有し、前記第二型のポリマーブロック422は、高機械強度を有するポリマーを有する。他の配列において、前記第一型のポリマーブロック412−1、412−2は、高い機械強度を有するポリマーを有し、前記第二型のポリマーブロック422は、それ自体イオン伝導性である及び/又はイオン伝導性液体電解質を吸収できるマトリックスを提供する、ポリマーを有する。
【0026】
図5は、本発明の実施態様に従う、第一ドメイン510−xと第二ドメイン520−xの領域を交互に入れ替えた二相ナノ構造ゲルポリマー電解質の一部の略図である。前記二相構造は、図4に示されるような複数のトリブロックコポリマーから作られる。第一ドメイン510−1、510−2は、第一相のポリマーブロック512を有する。第二ドメイン520−1は、第二相のポリマーブロック522−1、522−2を有する。あらゆる第二ドメイン520−x中で、ポリマーブロック522−1、522−2は互いに共有結合してはおらず、それらの末端が触れる領域で互いに対してスライドすることが出来る。前記第一ドメイン510−1は、前記第二ドメイン520−1の片側に隣接している。前記第一ドメイン510−2は、前記第二ドメイン520−1のもう一方の側に隣接している。第一ドメイン510−1、510−2に隣接する他の第二ドメイン(一部のみを示す)が存在する。二相構造は第一ドメイン510−xと第二ドメイン520−xの領域を交互に入れ替えて続く。
【0027】
ある配列において、第一ドメイン510−xは伝導性ドメインであり;ポリマーブロック512は、それ自体イオン伝導性である及び/又はイオン伝導性液体電解質を吸収できるマトリックスを提供する、ポリマーを有する。第二ドメイン520−xは構造ドメインであり;ポリマーブロック522−xは、高機械強度を有するポリマーを有する。他の配列において、第一ドメイン510−xは構造ドメインであり;ポリマーブロック512は、高機械強度を有するポリマーを有する。第二ドメイン520−xは伝導性ドメインであり;ポリマーブロック522−xは、それ自体イオン伝導性である及び/又はイオン伝導性液体電解質を吸収できるマトリックスを提供する、ポリマーを有する。トリブロックコポリマーから作られた二相ナノ構造ゲルポリマー電解質は、ジブロックコポリマーから作られた電解質よりも処理中取り扱いやすい可能性がある。ジブロック構造において、各ブロックコポリマー鎖は2つのドメインの一部である。トリブロック構造において、各ブロックコポリマー鎖は3つのドメインの一部である。鎖当たりの物理的なからみ合わせ(physical entanglement)の数は、前記鎖が一部を形成するドメインの数とともに増加する。全体の構造の靭性(toughness)は、物理的なからみ合わせの数とともに増大する。靭性の増大は、ブロックコポリマー材料を容易に処理(加工)するのに非常に重要であり得る。
【0028】
図6は、A−B−C形態で配列された3種類のポリマーブロックの自己集合により作られた複数の直鎖状ポリマートリブロック610の略図である。各トリブロックは、第一型のポリマーブロック612、第二型のポリマーブロック622、及び第三型のポリマーブロック632を有する。前記ポリマーブロック612は、前記ポリマーブロック622と共有結合している。前記ポリマーブロック632もまた、前記ポリマーブロック622と共有結合している。ある配列において、第一型のポリマーブロック612は、それ自体イオン伝導性である及び/又はイオン伝導性液体電解質を吸収できるマトリックスを提供する、ポリマーを有する。前記第二型のポリマーブロック622は、高機械強度を有するポリマーを有する。前記第三型のポリマーブロック632は、複数の直鎖状ポリマートリブロック610から作られた電解質に、所望の特性を高める又は加えるポリマーを有する。他の配列において、ブロックの1つがイオン伝導性であり、他の1つが高機械強度を有し、他の1つが複数の直鎖状ポリマートリブロック610から作られた電解質に所望の特性を高める又は加える限り、ポリマーブロック612、622、632の役割は変化し得る。
【0029】
図7は、本発明の実施態様に従う、第一ドメイン710−x、第二ドメイン720−x、第三ドメイン730−xの領域を交互に入れ替えた三相ナノ構造ゲルポリマー電解質の一部の略図である。前記三相構造は、図6に示されるような複数のA−B−Cトリブロックコポリマーから作られる。前記トリブロックコポリマーは、末端から末端まで(A−B−C)(C−B−A)(A−B−C)配列で並べられている。第一ドメイン710−1は、第一相のポリマーブロック712−1、712−2を有する。あらゆる第一ドメイン710−x中で、ポリマーブロック712−1、712−2は互いに共有結合してはおらず、それらの末端が触れる領域で互いに対してスライドすることが出来る。第二ドメイン720−1は、第二相のポリマーブロック722を有する。第一ドメイン710−1は、第二ドメイン720−1の片側に隣接している。第三相のポリマーブロック732−1、732−2を有する第三ドメイン730−1は、前記第二ドメイン720−1のもう一方の側に隣接している。あらゆる第一ドメイン730−x中で、ポリマーブロック732−1、732−2は互いに共有結合してはおらず、それらの末端が触れる領域で互いに対してスライドすることが出来る。三相ナノ構造ゲルポリマー電解質全体を形成するために、図7に示した交互入れ替えパターンを継続する、別の第一ドメイン710−x、第二ドメイン720−x及び第三ドメイン730−x(一部のみを示す)が存在する。
【0030】
本発明のある実施態様において、第一ドメイン710−xは伝導性ドメインであり;ポリマーブロック712−xは、それ自体イオン伝導性である及び/又はイオン伝導性液体電解質を吸収できるマトリックスを提供する、ポリマーを有する。ある配列において、第二ドメイン720−xは構造ドメインであり;ポリマーブロック722は、高機械強度を有するポリマーを有する。第三ドメイン730−xは他の所望の特性を加え;ポリマーブロック732−xは、電解質に所望の特性を高める又は加えるポリマーを有する。第三ドメイン730−xは、ナノ構造ゲルポリマー電解質の全靭性を増大させるために選ばれ得るものであり、それにより処理しやすくなる。他の配列において、第二ドメイン720−x及び第三ドメイン730−xの役割は逆転されている。
【0031】
本発明の他の実施態様において、第二ドメイン720−xは伝導性ドメインであり;ポリマーブロック722は、それ自体イオン伝導性である及び/又はイオン伝導性液体電解質を吸収できるマトリックスを提供する、ポリマーを有する。ある配列において、第一ドメイン710−xは構造ドメインであり;ポリマーブロック712−xは、高機械強度を有するポリマーを有する。第三ドメイン730−xは他の所望の特性を加え;ポリマーブロック732−xは、電解質に所望の特性を高める又は加えるポリマーを有する。第三ドメイン730−xは、ナノ構造ゲルポリマー電解質の全靭性を増大させるために選ばれ得るものであり、それにより処理しやすくなる。他の配列において、第一ドメイン710−x及び第三ドメイン730−xの役割は逆転されている。
【0032】
本発明の更に別の実施態様において、第三ドメイン730−xは伝導性ドメインであり;ポリマーブロック732−xは、それ自体イオン伝導性である及び/又はイオン伝導性液体電解質を吸収できるマトリックスを提供する、ポリマーを有する。ある配列において、第一ドメイン710−xは構造ドメインであり;ポリマーブロック712は、高機械強度を有するポリマーを有する。第二ドメイン720−xは他の所望の特性を加え;ポリマーブロック722は、電解質に所望の特性を高める又は加えるポリマーを有する。第三ドメイン730−xは、ナノ構造ゲルポリマー電解質の全靭性を増大させるために選ばれ得るものであり、それにより処理しやすくなる。他の配列において、第一ドメイン710−x及び第二ドメイン720−xの役割は逆転されている。
【0033】
当該技術分野においてよく知られているように、トリブロックは様々な形態に配列され得る。本明細書に開示される本発明の実施態様において、該トリブロックは、限定されることなくあらゆる幾何学的に可能な形態に配置されてもよい。三相トリブロック構造に関する可能な形態の非限定的な例としては、図8A〜図8Cに示すものが挙げられる。前記形態には、図中の模様のあるドメイン及び白色のドメインによって示されるように、2つの主要ドメインが含まれる。前記形態には、更に、図中の黒色のドメインによって示されるように、第三ドメインが含まれる。
【0034】
ある実施態様において、主要ドメイン(模様のあるドメイン又は白色のドメイン)のうち、1つは構造ドメインであり、もう1つは伝導性ドメインである。第三ドメインは伝導性又は構造ドメインである必要はなく、上記の通り、ナノ構造ゲルポリマー電解質に他の所望特性を加えることが出来る。
【0035】
ある配列において、ナノ構造ゲルポリマー電解質のブロックコポリマーは直鎖状のコポリマーである。他の配列において、ナノ構造ゲルポリマー電解質のブロックコポリマーは分岐鎖状のコポリマーである。他の配列において、ナノ構造ゲルポリマー電解質のブロックコポリマーはジブロックコポリマーである。他の配列において、ナノ構造ゲルポリマー電解質のブロックコポリマーはトリブロックコポリマーである。
【0036】
いくつかの配列において、ナノ構造ゲルポリマー電解質のミクロ構造は、整列した又は異方性のドメイン、並びに、欠陥及び局所的非連続的な領域を有する。いくつかの配列において、マクロ構造は、特有の組成又は配向性を有する散発的な粒子(grains)を有する。
【0037】
ある実施態様において、ナノ構造ゲルポリマー電解質に用いるポリマーを、以下のガイドラインを用いて選択することが出来る。先に述べたように、液体電解質と混合したときに伝導性ポリマーが25℃で10-4Scm-1以上のイオン伝導度を有し、関心のある電気化学電池の使用温度(例えば、0〜90℃の間)で熱的に安定であると有用である。リチウム塩に対して伝導性ポリマーが化学的に安定であると有用である。構造ポリマーが、関心のある電気化学電池の使用温度で1×106Paを超える弾性率(modulus)を有すると有用である。他の配列において、構造ポリマーが、関心のある電気化学電池の使用温度で1×107Paを超える弾性率(modulus)を有すると有用である。構造ポリマーが、ホモポリマー状態で、伝導性ポリマー中に用いられる液体電解質の存在下で5%未満膨潤すると有用である。第三相ポリマーは、ゴム状(rubbery)であってもよく、関心のある電気化学電池の使用・処理温度よりも低いガラス転移点を有してもよい。ナノ構造ゲルポリマー電解質中の材料全てが相互に非混和であると有用である。
【0038】
ナノ構造ゲルポリマー電解質の伝導相に用いることの出来るポリマーの非限定的な例には、ポリエーテル、直鎖状コポリマー及びポリアミンが含まれる。ある配列において、ポリエチレンオキシドが用いられる。他の配列において、エーテルを含む直鎖状コポリマーが用いられる。他の配列において、直鎖状のポリエーテル、直鎖状のポリアクロニトリル(polyacronitriles)、直鎖状のポリビニルアルコール、及び直鎖状のポリアクリレートを用いることが出来る。更に別の配列において、ポリシロキサン、ポリホスファゼン、ポリエーテル、ポリエチレン、ポリアクリレートなどの、ガラス転移点の低い骨格を有するくし形構造、及び、PEG−ジメチルエーテル、PEG−EC及びPEG−CNなどの置換ポリエチレングリコールであるペンダントを有するポリマーを用いることが出来る。そのようなポリマーの詳細は、参照することにより本明細書に援用される2008年4月8日に米国に出願された米国仮出願番号61/056688の中に見ることが出来る。
【0039】
ある実施態様において、伝導相に加えられる液体電解質は、溶媒及び塩を含む。適切な溶媒の非限定的な例としては、置換エーテル、置換アミン、置換アミド、置換ホスファゼン、置換PEG(上記段落を参照のこと)、アルキルカーボナート、ニトリル、ボラン及びラクトンなどの極性添加剤が挙げられる。ある配列において、前記溶媒は、5000ダルトン以下の分子量を有する。他の配列において、前記溶媒は、1000ダルトン以下の分子量を有する。例示的な液体電解質は、25℃で1×10-4Scm-1以上のイオン伝導度により特徴付けられてもよい。他の実施態様によれば、例示的な液体電解質は、25℃で1×10-3Scm-1以上のイオン伝導度により特徴付けられてもよい。構造相として用いられるポリマーが、ホモポリマー状態で、液体電解質に用いられる溶媒の存在下で5%未満膨潤すると特に有用である。
【0040】
本発明の他の実施態様において、溶媒は、N−ブチル−N31メチルピロリジニウム・ビス(3−トリフルオロメタンスルホニル)イミド[PYR14+TFSI−]又は1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム・ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド[BMITFSI]などの、室温イオン性液体であってもよい。本発明の他の実施態様において、溶媒は、ポリエチレングリコールボラートエステル又はポリエチレングリコールアルミナートエステルなどのルイス酸であってもよい。本発明の別の他の実施態様において、溶媒は、エチレンカルボナート又はプロピレンカルボナートなどの高誘電性有機可塑剤であってもよい。
【0041】
本発明のある実施態様において、電解質材料が100℃に60分間加熱された後に、第一ドメイン中の溶媒の20%未満が蒸発する。本発明の他の実施態様において、電解質材料が100℃に60分間加熱された後に、第一ドメイン中の溶媒の10%未満が蒸発する。
【0042】
本発明の実施態様において用いられる電解質塩に特に制限はなく、所望の電荷担体として特定されるイオンを含むあらゆる電解質塩を用いることが出来る。該溶媒中における解離定数の大きい電解質塩を用いることが特に有用である。好適な例としては、アルカリ金属塩、(CH3)4NBF6などの第4級アンモニウム塩、(CH3)4PBF6などの第4級ホスホニウム塩、AgClO4などの遷移金属塩、又は、塩酸、過塩素酸及びフルオロホウ酸(fluoroboric acid)などのプロトン酸が挙げられ、これらの中でもアルカリ金属塩、第4級アンモニウム塩、第4級ホスホニウム塩、遷移金属塩が好ましい。
【0043】
好適な電解質塩の具体例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、銀、バリウム、鉛、カルシウム、ルテニウム、タンタル、ロジウム、イリジウム、コバルト、ニッケル、モリブデン、タングステン又はバナジウムの、塩化物、臭化物、硫酸塩、硝酸塩、硫化物、水素化物、窒化物、リン化物、スルホンアミド、トリフラート、チオシアン酸塩(thiocynates)、過塩素酸塩、ホウ酸塩又はセレン化物からなる群から選択される金属塩などの従来のアルカリ金属塩が挙げられる。電解質塩は、単独で用いてもよく、2以上の異なる塩の混合物中で用いてもよい。
【0044】
いくつかの配列において、リチウム塩が用いられる。具体的なリチウム塩の例としては、LiSCN、LiN(CN)2、LiClO4、LiBF4、LiAsF6、LiPF6、LiCF3SO3、Li(CF3SO2)2N、Li(CF3SO2)3C、LiN(SO2C2F5)2、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2CF2CF3)2、リチウムアルキルフルオロホスファート、リチウムオキサラトボラート(lithium oxalatoborate)、及び5〜7員環を有する他のリチウムビス(キラト(chelato))ボラート、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホンイミド)(LiTFSI)、LiPF3(C2F5)3、LiPF3(CF3)3、LiB(C2O4)2、並びにこれらの混合物が挙げられる。本発明の他の実施態様において、他の電気化学に関し、電解質は、ポリマーと様々な種類の塩とを組み合わせることにより作られる。非限定的な例として、AgSO3CF3、NaSCN、NaSO3CF3、KTFSI、NaTFSI、Ba(TFSI)2、Pb(TFSI)2及びCa(TFSI)2が挙げられる。
【0045】
本発明のある実施態様において、伝導相は、Al2O3粒子、TiO2粒子及び/又はSiO2粒子などの複数のセラミック粒子をも含む。ある配列において、前記セラミック粒子は5ナノメートル以下の最小寸法を有する。
【0046】
ナノ構造ゲルポリマー電解質の構造相に用いられるポリマーの非限定的な例としては、ポリスチレン、ポリメタクリレート、ポリビニルピリジン、ポリビニルシクロヘキサン、ポリイミド、ポリアミド及びポリプロピレンが挙げられる。前記構造相として用いることのできる他の材料には、スチレン、メタクリレート及びビニルピリジンを含むコポリマーが含まれるが、これらに限定されることはない。ある配列において、構造相は、90℃で106Paよりも大きい体積弾性率を有するポリマーブロックから作られる。構造相として用いられるポリマーが、ホモポリマー状態で、液体電解質に用いられる溶媒の存在下で5%未満膨潤すると特に有用である。
【0047】
ナノ構造ゲルポリマー電解質の第三相中に用いることの出来るポリマーの非限定的な例としては、ポリシロキサン、ポリアクリレート又はポリジエンから作られるゴム状ポリマーが挙げられる。例示的なポリシロキサンは、ポリジメチルシロキサンである。例示的なポリアクリレートは、ポリ(2−エチルヘキシルアクリレート)、ポリデシルメタクリレート又はポリラウリルメタクリレートである。例示的なポリジエンは、ポリイソプレン又はポリブタジエンである。他の配列において、第三相は、様々な種類の直鎖状ポリマーブロックの1つから作られる。第三相は、副相(minor phase)であってよく、ナノ構造ゲルポリマー電解質の靭性全体を増大させてもよい。
【0048】
本明細書において開示されるナノ構造ゲルジブロックコポリマー電解質は様々な材料のいずれからも作ることが出来る。ある配列において、ナノ構造ゲルポリマー電解質は、ポリエチレンオキシドの第一伝導相及びポリスチレンの第二構造相を有するポリ(スチレン−ブロック−エチレンオキシド)(SEO)ジブロックコポリマーから作られる。SEOジブロックコポリマー電解質は、約100,000〜1,000,000ダルトンの分子量を有し得る。ある配列において、SEOジブロックコポリマー電解質は、約100,000〜500,000ダルトンの分子量を有し得る。他の配列において、SEOジブロックコポリマー電解質は、約400,000ダルトンの分子量を有し得る。いくつかの配列において、SEOジブロックコポリマー電解質は脆性であり、独立して立つ薄膜を形成しようと試みると簡単にばらばらになり得る。一般に、ナノ構造ゲルポリマー電解質の靭性は、分子量とともに増大する。
【0049】
本明細書に開示される二相ナノ構造ゲルトリブロックコポリマー電解質は、様々な材料のいずれからも作ることができる。ある配列において、ナノ構造ゲルポリマー電解質は、第一構造相及び第二伝導相を有するポリ(スチレン−ブロック−エチレンオキシド−ブロック−スチレン)(SEOS)トリブロックコポリマーから作られる。SEOトリブロックコポリマー電解質は、約100,000〜1,000,000ダルトンの分子量を有し得る。ある配列において、SEOトリブロックコポリマー電解質は、約100,000〜500,000ダルトンの分子量を有する。他の配列において、SEOトリブロックコポリマー電解質は、約400,000ダルトンの分子量を有する。いくつかの配列において、SEOSトリブロックコポリマー電解質は脆性ではなく、独立して立つ薄膜を形成しようと試みると簡単にはばらばらにならない。
【0050】
他の配列において、ナノ構造ゲルポリマー電解質は、ポリ(エチレンオキシド−ブロック−スチレン−ブロック−エチレンオキシド)(EOSEO)トリブロックコポリマーから作られる。EOSEOトリブロックコポリマー電解質は、約100,000〜1,000,000ダルトンの分子量を有し得る。ある配列において、EOSEOトリブロックコポリマー電解質は、約100,000〜500,000ダルトンの分子量を有する。他の配列において、EOSEOトリブロックコポリマー電解質は、約400,000ダルトンの分子量を有する。
【0051】
本明細書に開示される三相ナノ構造ゲルトリブロックコポリマー電解質は、様々な材料のいずれからも作ることができる。ある配列において、ナノ構造ゲルポリマー電解質は、ポリ(イソプレン−ブロック−スチレン−ブロック−エチレンオキシド)(ISEO)トリブロックコポリマーから作られる。ISEOトリブロックコポリマー電解質は、約100,000〜1,000,000ダルトンの分子量を有し得る。ある配列において、ISEOトリブロックコポリマー電解質は、約100,000〜500,000ダルトンの分子量を有する。他の配列において、ISEOトリブロックコポリマー電解質は、約400,000ダルトンの分子量を有する。
【0052】
図9は、本発明の実施態様に従う2つのナノ構造ゲルポリマー電解質について、逆温度の関数としてのイオン伝導度を示す図である。コポリマー1及びコポリマー2の両方とも、60質量%の伝導性ドメインと40質量%の構造ドメインを有する二相ナノ構造ゲルポリマー電解質である。伝導性ゲルドメイン中で、コポリマー1は、79質量%のポリエチレンオキシド(PEO)と21質量%のエチレンカーボナート(EC)(液体電解質)を含む。伝導性ゲルドメイン中で、コポリマー2は28質量%のPEOと72質量%のECを含む。図によると、コポリマー1よりもエチレンカーバイドの多いコポリマー2の方がイオン伝導性が高く、このことは、高ゲル状の伝導相が、「より乾燥した」伝導相と比較して伝導性が高いことを示す。
【0053】
以下は、本発明において意図されるゲル電解質システムを製造するために用いられ得る処理技術の様々な実施態様の記載である。ある実施態様によれば、セパレータのドメイン構造は、様々な相の動力学的制御、特に熱力学的に好ましい相分離の動力学的制限を介して形成され維持される。溶液に混合された異種のホモポリマーは、溶媒の高速除去を介して、及びいくつかの場合においては、その後乾燥ポリマーを加熱することによるわずかな活性化を介して、所望のドメイン構造を形成してもよい。形態を維持するために、その後、材料を低温に保って相分離を防いでもよく、多様なこれらのホモポリマーによる共有結合架橋を用いて当該形態の状態を効果的に固定させてもよい。
【0054】
上記のブロックコポリマーをベースとした電解質を用いる他の実施態様によれば、当該形態は相間の共有結合を介して維持され、得られる具体的な形態は、ポリマーの組成、体積分率、及び分子構造に依存する。ポリ(スチレンブロック−エチレンオキシド)(SEO)ジブロックコポリマーを合成する例示的な方法には、第一ブロックとしてポリスチレン(PS)を合成する工程と、第二ブロックとしてエチレンオキシド(EO)を合成する工程が含まれる。前記方法は、精製したベンゼンを蒸留して真空ライン上の反応器内に入れる工程、及び前記真空ラインから反応器を取ってグローブボックス内に入れる工程を有し、グローブボックス内でs−ブチルリチウムなどの開始剤が加えられてもよい。前記方法は、前記反応器を前記真空ラインに戻して脱ガスする工程、及びスチレンモノマーを蒸留して前記反応器内に入れる工程を有する。
【0055】
前記方法は、前記反応器を室温に温める工程、少なくとも6時間攪拌する工程、及び分子量を決定するために前記グローブボックス内の一定分量(アリコート;aliquot)のリビング・ポリスチレン前駆体を分離する工程を有する。前記方法は、前記反応器を真空ラインに戻して完全に脱ガスする工程、及び数ミリリットルのエチレンオキシドを蒸留して前記脱ガスした反応器に入れる工程を有する。前記方法は、前記反応器を室温に温める工程、2時間攪拌する工程、前記反応器を前記グローブボックスに入れる工程、強塩基を開始剤に対して1:1のモル比で加える工程を有する。前記方法は、前記強塩基としてt−ブチルホスファゼン塩基(t−BuP4)を加える工程を有する。
【0056】
前記工程は、前記反応器を前記真空ラインに戻して完全に脱ガスする工程、室温で12時間攪拌して前記t−BuP4を前記エチレンオキシド終端されたPS鎖と反応させる工程、及びドライアイス/イソプロパノールを用いて、所望量のエチレンオキシドを蒸留して前記反応器に入れる工程を有する。前記方法は、前記反応器を50℃に加熱する工程、及び温水浴中で5日間攪拌する工程を有する。前記方法は、前記反応器を前記グローブボックスに戻す工程、メタノールを用いて前記リビングSEOジブロックコポリマーを終結させる工程、及びヘキサン中での沈殿及び真空凍結乾燥によりベンゼンから前記SEOジブロックコポリマーを分離する工程を有する。
【0057】
ポリ(スチレン−ブロック−エチレンオキシド−ブロック−スチレン)(SEOS)トリブロックコポリマーを製造する例示的な方法は、上記のSEOを製造する方法と類似している。しかしながら、メタノールを用いて最終ポリマーを終結させる代わりに、二機能性停止剤として好ましくはジクロロジメチルシランが用いられる。実施態様によれば、前記二機能性停止剤は2つのSEO鎖を結合してSEOS鎖を形成させる。
【0058】
前記方法は、前記二機能性停止剤を添加した後に、反応混合物を5日間攪拌して、これにより緩やかな反応が完了に向かうことを可能にする工程を有する。前記方法は、メタノールを添加して残存するリビング鎖を終結させる工程、及びヘキサン中での沈殿と真空凍結乾燥によりベンゼンからSEOSトリブロックコポリマーを分離させる工程を有する。
【0059】
ポリ(エチレンオキシド−ブロック−スチレン−ブロック−エチレンオキシド)(EOSEO)トリブロックコポリマーを合成する例示的な方法は、上記のSEOを製造する方法と類似している。しかしながら、s−ブチルリチウムを用いてスチレンを開始する代わりに、好ましくは二機能性開始剤が用いられる。実施態様によれば、前記開始剤により前記PS鎖が鎖両末端から伸びていく。特定の実施態様において、前記二機能性開始剤として、THF中のナフタレンカリウムを用いることが出来る。
【0060】
実施態様によれば、例示的な方法は、分子量を決定するために前記グローブボックス中で一定分量のリビング・ポリスチレン前駆体を分離する工程、及び前記反応器を前記真空ラインに戻して完全に脱ガスをする工程を更に有する。前記方法は、数ミリリットルのエチレンオキシドを蒸留して前記脱ガスした反応器に入れる工程を有する。前記方法は、前記反応器を室温に温める工程、2時間攪拌する工程、前記反応器を前記グローブボックスに戻す工程、強塩基を開始剤に対して1:1のモル比で加える工程を有する。前記方法は、前記強塩基としてt−ブチルホスファゼン塩基(t−BuP4)を加える工程を有する。前記工程は、前記反応器を前記真空ラインに戻して完全に脱ガスする工程、室温で12時間攪拌して前記t−BuP4を前記エチレンオキシド終端されたPS鎖と反応させる工程、及びドライアイス/イソプロパノールを用いて、所望量のエチレンオキシドを蒸留して前記反応器に入れる工程を有する。前記方法は、前記反応器を50℃に加熱する工程、温水浴中で5日間攪拌する工程、及び前記反応器を前記グローブボックスに戻す工程を有する。前記方法は、メタノールを用いて前記リビングEOSEOトリブロックコポリマーを終結させる工程、及びヘキサン中での沈殿及び真空凍結乾燥によりベンゼンから前記EOSEOトリブロックコポリマーを分離する工程を有する。
【0061】
ポリ(イソプレン−ブロック−スチレン−ブロック−エチレンオキシド)(ISEO)トリブロックコポリマーを合成する例示的な方法は、ベンゼン中でポリイソプレンブロックを合成する工程を有する。前記方法は、精製したベンゼンを蒸留して真空ライン上の反応器内に入れる工程、及び前記真空ラインから反応器を取ってグローブボックス内に入れる工程を有し、グローブボックス内でs−ブチルリチウムなどの開始剤が加えられる。前記方法は、前記反応器を前記真空ラインに戻して脱ガスする工程、前記イソプレンモノマーを蒸留して前記反応器に入れる工程、前記混合物を少なくとも6時間攪拌する工程、及び分子量を決定するために、前記グローブボックス内で一定分量のリビング・ポリイソプレン前駆体を分離する工程を有する。
【0062】
前記方法は、前記反応器を前記真空ラインに戻して完全に脱ガスをする工程、前記スチレンを蒸留してリビング・ポリイソプレン溶液に入れる工程、及び前記反応を少なくとも6時間行ってポリイソプレン−ブロック−ポリスチレン・リビングポリマーを形成する工程を有する。前記方法は、ドライアイス/イソプロパノールを用いて前記反応器を冷却する工程、数ミリリットルのエチレンオキシドを蒸留して前記反応器に入れる工程、前記反応器を室温に温める工程、及び2時間攪拌する工程を有する。前記方法は、前記反応器を前記グローブボックスに入れる工程、及び強塩基を前記開始剤に対して1:1のモル比で添加する工程を有する。前記方法は、前記強塩基としてt−ブチルホスファゼン塩基(t−BuP4)を加える工程を有する。
【0063】
前記工程は、前記反応器を前記真空ラインに戻して完全に脱ガスする工程、室温で12時間攪拌して前記t−BuP4を前記エチレンオキシド終端されたPI−PS鎖と反応させる工程、及びドライアイス/イソプロパノールを用いて、所望量のエチレンオキシドを蒸留して前記反応器に入れる工程を有する。前記方法は、前記反応器を50℃に加熱する工程、及び温水浴中で5日間攪拌する工程を有する。前記方法は、前記反応器を前記グローブボックスに戻す工程、メタノールを用いて前記リビングISEOトリブロックコポリマーを終結させる工程、及びヘキサン中での沈殿及び真空凍結乾燥によりベンゼンから前記ISEOジブロックコポリマーを分離する工程を有する。
【0064】
ゲル電解質材料を製造するためにベンゼンを精製する実施態様によれば、出発物質ベンゼンはAldrichから購入してもよい。ベンゼンを精製する例示的な方法は、真空ラインと結合した長首フラスコ内で、少なくとも8時間、新鮮で粉末状の水素化カルシウム上で攪拌させる工程を有する。前記方法は、液体窒素を用いて水素化カルシウムの混合物を凍結させる工程、及び真空下で前記混合物を脱ガスする工程を有する。前記方法は、水素化カルシウム混合物からベンゼンを蒸留してs−ブチルリチウム精製段階に進む工程、及び前記s−ブチルリチウム上で少なくとも8時間前記ベンゼンを攪拌する工程、及び脱ガスする工程を有する。
【0065】
ゲル電解質材料を製造するためにスチレンを精製する実施態様によれば、出発物質スチレンはAldrichから購入してもよい。例示的な精製スチレンは、使用前は冷凍庫に保存されていてよい。前記実施態様によれば、前記方法は、前記真空ラインと結合したフラスコにスチレンを注ぐ工程、凍結する工程、及び脱ガスする工程を有する。前記方法は、ジブチルマグネシウム(ヘプタン中で1.0M)をピペットで取ってグローブボックス内の第二フラスコに入れる工程、スチレン100mLごとに対し10mLのジブチルマグネシウムを添加して精製する工程を有する。前記方法は、前記フラスコを前記真空ラインと結合させる工程、前記ジブチルマグネシウムのフラスコから前記ヘプタンを蒸留する工程、前記スチレンを蒸留して前記ジブチルマグネシウム上に入れる工程、前記ジブチルマグネシウム上で少なくとも8時間、前記スチレンを攪拌する工程、及び完全に脱ガスする工程を有する。
【0066】
ゲル電解質材料を製造するためにイソプレンを精製する実施態様によれば、出発物質イソプレンはAldrichから購入してもよい。例示的な精製イソプレンは、使用前は冷凍庫に保存されていてよい。前記実施態様によれば、前記方法は、新鮮で粉末状の水素化カルシウムを有する長首フラスコにイソプレンを注ぐ工程、前記フラスコを真空ラインと結合させる工程、凍結する工程、及び脱ガスする工程を有する。前記方法は、s−ブチルリチウム(シクロヘキサン中で1.4M)をピペットで取って第二の長首フラスコに入れる工程、イソプレン100mLごとに対し10mLのs−ブチルリチウムを添加して精製する工程、前記s−ブチルリチウムフラスコの前記シクロヘキサンを蒸留する工程、及びドライアイス/イソプロパノールを冷却剤として用いて、前記イソプレンを蒸留して乾燥s−ブチルリチウムに入れる工程を有する。前記方法は、前記ドライアイスから前記混合物を取り出す工程、及び冷却剤なしに3分間攪拌する工程を有し、前記フラスコを3分よりも長い間冷却槽から出さないようにする。前記方法は、液体窒素内で前記混合物を凍結させる工程、脱ガスする工程、前記攪拌/脱ガスの手順をもう2回繰り返して精製度を高める工程、及びイソプレンを蒸留して計量用のアンプルに入れて前記イソプレンを使用しやすくする工程を有する。
【0067】
ゲル電解質材料を製造するためにエチレンオキシドを精製する実施態様によれば、出発物質エチレンオキシドはAldrichから購入してもよい。例示的な方法は、ドライアイス/イソプロパノールを冷却剤として用いて、エチレンオキシドを凝縮して新鮮で粉末状の水素化カルシウムを含む長首フラスコに入れる工程、エチレンオキシドを凍結させて脱ガスする工程を有し、エチレンオキシドは使用前は冷蔵庫内のガスシリンダー内で保存されていてもよい。前記方法は、ドライアイス/イソプロパノール内に包みつつ、水素化カルシウム上で最少で8時間エチレンオキシドを攪拌する工程、n−ブチルリチウムをピペットで取って第二の長首フラスコに入れる工程、前記フラスコを前記真空ラインと結合させる工程、及び脱ガスする工程を有する。
【0068】
前記方法は、エチレンオキシド100mLごとに対して、ヘキサン中のn−ブチルリチウム10mLを加えて精製する工程、前記n−ブチルリチウムのフラスコからヘキサンを蒸留する工程、及び、ドライアイス/イソプロパノールを冷却剤として用いて、エチレンオキシドを蒸留して前記乾燥n−ブチルリチウムに入れる工程を有する。前記方法は、ドライアイス/イソプロパノール槽を取り出して取り替える工程、前記混合物を0℃で30分間攪拌する工程、及び危険な暴走反応を防ぐために前記混合物が0℃よりも温かくないことを確実にする工程を有する。前記方法は、ドライアイス/イソプロパノールを冷却剤として用いて、n−ブチルリチウムからエチレンオキシドを蒸留して計量用アンプルに入れる工程、及び前記アンプルを0℃に保って、前記エチレンオキシドを使用しやすくする工程を有する。
【0069】
ゲル電解質材料を製造するためにジクロロジメチルシランを精製する実施態様によれば、出発物質ジクロロメチルシランはAldrichから購入してもよい。実施態様によれば、前記方法は、真空ラインと結合した長首フラスコ内で、少なくとも8時間、新鮮で粉末状の水素化カルシウム上で攪拌する工程を有する。前記方法は、前記ジクロロメチルシランを凍結する工程、及び使用前に完全に脱ガスする工程を有する。
【0070】
上記に加えて、他の実施態様によれば、前記出発物質を調製して前記物質を精製するのに、さらに別の工程を行わなければならない。実施態様によれば、前記特定の工程は、ポリマーセパレータを乾燥させる工程を有する。ポリマーセパレータを乾燥させる方法は、先に述べたような前記ジブロック及びトリブロックのコポリマーを合成する工程を有する。混合物に水が含まれていないことを保証するために、前記方法は、混合する前に各成分を乾燥させる工程を有する。前記方法は、前記グローブボックス・アンテチャンバー(antechamber)内で真空下、前記ポリマーを150℃に加熱する工程、及び12時間該チャンバー内に保って水分を取り除く工程を有する。前記方法は、前記ゲルが調製されるまで前記ポリマーをアルゴンで満たされたグローブボックス内に保持する工程を有する。
【0071】
他の実施態様によれば、特定の工程は、例示的な電解質の塩成分を調製する工程を有する。塩成分を調製する方法は、Aldrichから購入したリチウムビス(トリフルオロメタン)スルホンイミド(LiTFSI)を使用前に乾燥させる工程を有する。前記方法は、LiTFSIの高吸湿特性のため、前記アルゴングローブボックス内でLiTFSIのみを処理する工程を有する。LiTFSIが乾燥していることを保証するために、前記方法は、前記グローブボックス内で真空下12時間、LiTFSIを150℃に加熱する工程を有する。前記方法は、前記ゲルが調製されるまで前記アルゴンで満たされたグローブボックス内にLiTFSIを保持する工程を有する。
【0072】
他の実施態様によれば、前記特定の工程は、エチレンカーボナートを精製する工程を有する。エチレンカーボナート(EC)を精製する方法は、Aldrichから購入したECを使った2つの工程手順を有する。ECは、本発明において意図されるゲル電解質において溶媒として用いられる。ECは室温で固体であるため、前記方法は、最初に60℃に加熱する工程、及び分子篩(4A)上で攪拌して水汚染を除去する工程を有する。前記方法は、ECを蒸留して重い不純物を取り除く工程を有する。前記方法は、精製後、前記ゲルが調製されるまで、前記グローブボックス内に前記ECを保存する工程を有する。
【0073】
他の実施態様によれば、前記特定の工程は、ポリマーゲルを調製する工程を有する。ポリマーゲルを調製する方法は、グローブボックス内にアルゴンを充填する工程、及び処理工程全般に渡って前記材料を空気フリーに保つ工程を有する。前記方法は、ベンゼン及びアセトニトリル(体積比で20:1の割合)の相溶性溶媒混合物を調製する工程を有する。前記方法は、前記ポリマー、LiTFSI及びECの重さを測り、所望量瓶の中に入れる工程を有する。前記方法は、前記相溶性溶媒混合物を前記瓶に添加して、凡そ2質量%のポリマー/LiTFSI/EC溶液を調製する工程を有する。前記方法は、少なくとも12時間溶液を攪拌して前記ポリマーを完全に溶解・混合させる工程を有する。
【0074】
前記実施態様によれば、前記方法は、ドライアイスを用いてTFSI/EC溶液を凍結させる工程、及び真空下で前記凍結した溶液を凍結乾燥する工程を有する。前記方法は、2日間真空にして、前記混合物からベンゼン及びアセトニトリルを除去する工程を有する。前記方法は、前記乾燥したサンプルを前記グローブボックスに戻して鎖前記サンプルを空気にさらさないことを保証する工程を有する。前記方法は、前記サンプルを圧縮成形する工程、及びバッテリー電解質を製造するために前記サンプルを用いる工程を有する。
【0075】
実施態様によれば、前記特定の工程は、あるポリマーを添加剤として選択する工程を有する。前記実施態様によれば、ECを溶媒としてポリマー塩電解質に添加すると、「ニート」ポリマー−塩電解質と比較して伝導度が高くなる。しかしながら、大量のECを前記コポリマーに添加すると、前記ポリマーはEC溶媒中で大きく膨潤してしまう。その結果、前記電解質の機械特性が失われてしまう。ECは、前記コポリマーの伝導相を膨潤させるが、機械的に硬質な相を膨潤させないため、機械的完全性を維持しつつ、少量で伝導性を増大させるのに十分な量のECを前記コポリマーに添加することが出来る。前記方法は、前記機械的に硬質な相が構造的完全性を維持し更に促進するのに十分なゲル体積分率を占めるよう、添加剤として少量のECを前記ゲル電解質システムに添加する工程を有する。
【0076】
前記方法は、伝導相中の増大するEC量と、膨潤する伝導相を機械的完全性を維持するのに十分な体積分率よりも小さい体積分率に保つ必要性とのバランスを取る工程を有する。実施態様によれば、最初のコポリマーが副成分(minor component)として伝導相を有する場合、特に10〜30%の範囲内で有する場合に、このトレードオフは最大化され得る。前記方法は、総伝導相体積を機械的完全性を維持するのに十分な分率よりも低い分率に維持しつつ、前記伝導相をECで大きく膨潤させる構造を作り上げるために、10〜30%体積分率の範囲内で副成分を提供する工程を有する。
【0077】
上記開示は、イオンの流れに対する制御されたナノ構造通路を提供し、従来のポリマー処理方法を用いて製造するのに適用できる、高い機械的安定性及び高い伝導性の両方を示す電解質材料を提供する。本発明は上記特定の実施態様との関連で記載されたが、変更態様及び変形態様が可能である。例えば、多相ポリマーシステムを用いるという概念は、バッテリー電解質の機械的強度及び伝導性を向上させるために、水性及び非水性のどちらの他のゲル電解質システムにも拡張することが出来る。従って、本発明の範囲及び幅は、上記特定の実施態様によって限定されるべきではなく、特許請求の範囲及びその最大限の均等によって決定されるべきである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン伝導性ポリマーゲル相を有する第一ドメイン及び前記第一ドメインに隣接する第二ドメインを有するナノ構造電解質材料であって、
前記第一ドメインは前記電解質材料の伝導部位を形成しており;
前記第二ドメインは硬質ポリマー相を有し、前記硬質ポリマー相は90℃で106Paよりも大きい体積弾性率を有し、前記第二ドメインは前記電解質材料の構造部位を形成し;
前記電解質材料は、非フッ素化材料であって、25℃で1×10-4Scm-1以上のイオン伝導度を有する、ナノ構造電解質材料。
【請求項2】
前記ナノ構造ポリマー電解質が架橋を有さないことを特徴とする、請求項1に記載の電解質材料。
【請求項3】
前記イオン伝導性ポリマーゲル相が液体電解質を有する、請求項1に記載の電解質材料。
【請求項4】
前記硬質ポリマー相が、ホモポリマー状態において、前記液体電解質の存在下で5%未満膨潤する、請求項3に記載の電解質材料。
【請求項5】
前記液体電解質が電解質塩を有する、請求項3に記載の電解質材料。
【請求項6】
前記塩がリチウム塩を含む、請求項5に記載の電解質材料。
【請求項7】
前記液体電解質が、置換エーテル、置換アミン、置換アミド、置換ホスファゼン、置換PEG、アルキルカーボナート、ニトリル、ボラン、及びラクトンなどの極性添加剤からなる群から選択される溶媒を含む、請求項3に記載の電解質材料。
【請求項8】
前記溶媒が5000ダルトン以下の分子量を有する、請求項7に記載の電解質材料。
【請求項9】
前記溶媒が1000ダルトン以下の分子量を有する、請求項7に記載の電解質材料。
【請求項10】
前記溶媒が、N−ブチル−N31メチルピロリジニウム・ビス(3−トリフルオロメタンスルホニル)イミド[PYR14+TFSI−]又は1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム・ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド[BMITFSI]などの、室温イオン性液体を含む、請求項3に記載の電解質材料。
【請求項11】
前記溶媒が、ポリエチレングリコールボラートエステル又はポリエチレングリコールアルミナートエステルなどのルイス酸を含む、請求項3に記載の電解質材料。
【請求項12】
前記溶媒が、エチレンカーボナート又はプロピレンカーボナートなどの高誘電性有機可塑剤を含む、請求項3に記載の電解質材料。
【請求項13】
前記硬質ポリマー相が、25℃で1×106Paよりも大きい体積弾性率を有する、請求項1に記載の電解質材料。
【請求項14】
前記電解質材料が、25℃で1×10-3Scm-1以上のイオン伝導度を有する、請求項1に記載の電解質材料。
【請求項15】
前記ナノ構造ゲルポリマー電解質が複数のブロックコポリマーを有し、前記第一ドメインが複数の第一ポリマーブロックを有し、前記第二ドメインが複数の第二ポリマーブロックを有する、請求項1に記載の電解質材料。
【請求項16】
前記ブロックコポリマーが直鎖状のコポリマーを有する、請求項15に記載の電解質材料。
【請求項17】
前記ブロックコポリマーが分岐鎖状のコポリマーを有する、請求項15に記載の電解質材料。
【請求項18】
前記ブロックコポリマーがジブロックコポリマーを有する、請求項15に記載の電解質材料。
【請求項19】
前記ブロックコポリマーがトリブロックコポリマーを有する、請求項15に記載の電解質材料。
【請求項20】
前記第一ポリマーブロックが、ポリエステル、直鎖状のコポリマー、ポリアミン、ポリエチレンオキシド、直鎖状のポリエーテル、直鎖状のポリアクロニトリル(acronitrile)、直鎖状のポリビニルアルコール及び直鎖状のポリアクリレートからなる群から選択される1以上のポリマーを含む、請求項15に記載の電解質材料。
【請求項21】
前記第一ポリマーブロックが、ポリシロキサン、ポリホスファゼン、ポリエーテル、ポリエチレン及びポリアクリレートからなる群から選択される低いガラス転移点の骨格を有し、且つPEG−ジメチルエーテル、PEG−EC及びPEG−CNなどの置換ポリエチレングリコールからなる群から選択されるペンダントを有する、1又はくし状ポリマーを有する、請求項15に記載の電解質材料。
【請求項22】
前記第二ポリマーブロックが、スチレン、メタクリレート、ビニルピリジン、ビニルシクロヘキサン、イミド、アミド、プロピレン及びこれらのコポリマーからなる群から選択される1以上の成分を有する、請求項15に記載の電解質材料。
【請求項23】
前記第二ポリマーブロックがポリスチレンを有する、請求項22に記載の電解質材料。
【請求項24】
前記第二ポリマーブロックが、各々50000ダルトン以上の分子量を有する、請求項15に記載の電解質材料。
【請求項25】
前記第一相及び前記第二相が層状構造で配列される、請求項1に記載の電解質材料。
【請求項26】
前記電解質材料が100℃に60分間加熱された後に、第一ドメイン中の溶媒の20%未満が蒸発する、請求項7に記載の電解質材料。
【請求項27】
前記電解質材料が100℃に60分間加熱された後に、第一ドメイン中の溶媒の10%未満が蒸発する、請求項26に記載の電解質材料。
【請求項28】
前記第一相が、Al2O3粒子、TiO2粒子及びSiO2粒子からなる群から選択される複数のセラミック粒子を更に含む、請求項1に記載の電解質材料。
【請求項29】
前記複数のセラミック粒子が、各々5ナノメートル以下の最小寸法を有する、請求項28に記載の電解質材料。
【請求項30】
第三相を含む第三ドメインを更に有し、当該第三相が複数の第三ポリマーブロックを有する、請求項1に記載の電解質材料。
【請求項31】
前記第三ドメインが、ポリジメチルシロキサンなどのポリシロキサン、ポリ(2−エチルヘキシルアクリレート)、ポリデシルメタクリレート若しくはポリラウリルメタクリレートなどのポリアクリレート、又はポリイソプレン若しくはポリブタジエンなどのポリジエンから作られるゴム状ポリマーからなる群から選択される1以上のポリマーを含む、請求項30に記載の電解質材料。
【請求項32】
前記第三ドメインが、前記第一ドメイン又は第二ドメインのいずれかよりも体積が小さい、請求項30に記載の電解質材料。
【請求項33】
前記第三ドメインが、前記材料中で約10%〜30%の体積を占める、請求項30に記載の電解質材料。
【請求項34】
前記第一ドメインが約10nm〜100nmの最小寸法を有し、前記第二ドメインが約10nm〜100nmの最小寸法を有する、請求項1に記載の電解質材料。
【請求項35】
陽極;
陰極;及び
請求項1に記載のナノ構造ゲルポリマー電解質、を有するバッテリー電池であって、
前記ナノ構造ゲルポリマー電解質は、前記陽極と前記陰極の間におけるイオン伝達を提供するために配置されることを特徴とする、バッテリー電池。
【請求項36】
前記第一相がポリエチレンオキシドを含む、請求項35に記載のバッテリー電池。
【請求項37】
前記第二相がポリスチレンを含む、請求項35に記載のバッテリー電池。
【請求項38】
第三相を含む第三ドメインを更に有する、請求項35に記載のバッテリー電池。
【請求項39】
前記第三相がポリイソプレンを含む、請求項38に記載のバッテリー電池。
【請求項1】
イオン伝導性ポリマーゲル相を有する第一ドメイン及び前記第一ドメインに隣接する第二ドメインを有するナノ構造電解質材料であって、
前記第一ドメインは前記電解質材料の伝導部位を形成しており;
前記第二ドメインは硬質ポリマー相を有し、前記硬質ポリマー相は90℃で106Paよりも大きい体積弾性率を有し、前記第二ドメインは前記電解質材料の構造部位を形成し;
前記電解質材料は、非フッ素化材料であって、25℃で1×10-4Scm-1以上のイオン伝導度を有する、ナノ構造電解質材料。
【請求項2】
前記ナノ構造ポリマー電解質が架橋を有さないことを特徴とする、請求項1に記載の電解質材料。
【請求項3】
前記イオン伝導性ポリマーゲル相が液体電解質を有する、請求項1に記載の電解質材料。
【請求項4】
前記硬質ポリマー相が、ホモポリマー状態において、前記液体電解質の存在下で5%未満膨潤する、請求項3に記載の電解質材料。
【請求項5】
前記液体電解質が電解質塩を有する、請求項3に記載の電解質材料。
【請求項6】
前記塩がリチウム塩を含む、請求項5に記載の電解質材料。
【請求項7】
前記液体電解質が、置換エーテル、置換アミン、置換アミド、置換ホスファゼン、置換PEG、アルキルカーボナート、ニトリル、ボラン、及びラクトンなどの極性添加剤からなる群から選択される溶媒を含む、請求項3に記載の電解質材料。
【請求項8】
前記溶媒が5000ダルトン以下の分子量を有する、請求項7に記載の電解質材料。
【請求項9】
前記溶媒が1000ダルトン以下の分子量を有する、請求項7に記載の電解質材料。
【請求項10】
前記溶媒が、N−ブチル−N31メチルピロリジニウム・ビス(3−トリフルオロメタンスルホニル)イミド[PYR14+TFSI−]又は1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム・ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド[BMITFSI]などの、室温イオン性液体を含む、請求項3に記載の電解質材料。
【請求項11】
前記溶媒が、ポリエチレングリコールボラートエステル又はポリエチレングリコールアルミナートエステルなどのルイス酸を含む、請求項3に記載の電解質材料。
【請求項12】
前記溶媒が、エチレンカーボナート又はプロピレンカーボナートなどの高誘電性有機可塑剤を含む、請求項3に記載の電解質材料。
【請求項13】
前記硬質ポリマー相が、25℃で1×106Paよりも大きい体積弾性率を有する、請求項1に記載の電解質材料。
【請求項14】
前記電解質材料が、25℃で1×10-3Scm-1以上のイオン伝導度を有する、請求項1に記載の電解質材料。
【請求項15】
前記ナノ構造ゲルポリマー電解質が複数のブロックコポリマーを有し、前記第一ドメインが複数の第一ポリマーブロックを有し、前記第二ドメインが複数の第二ポリマーブロックを有する、請求項1に記載の電解質材料。
【請求項16】
前記ブロックコポリマーが直鎖状のコポリマーを有する、請求項15に記載の電解質材料。
【請求項17】
前記ブロックコポリマーが分岐鎖状のコポリマーを有する、請求項15に記載の電解質材料。
【請求項18】
前記ブロックコポリマーがジブロックコポリマーを有する、請求項15に記載の電解質材料。
【請求項19】
前記ブロックコポリマーがトリブロックコポリマーを有する、請求項15に記載の電解質材料。
【請求項20】
前記第一ポリマーブロックが、ポリエステル、直鎖状のコポリマー、ポリアミン、ポリエチレンオキシド、直鎖状のポリエーテル、直鎖状のポリアクロニトリル(acronitrile)、直鎖状のポリビニルアルコール及び直鎖状のポリアクリレートからなる群から選択される1以上のポリマーを含む、請求項15に記載の電解質材料。
【請求項21】
前記第一ポリマーブロックが、ポリシロキサン、ポリホスファゼン、ポリエーテル、ポリエチレン及びポリアクリレートからなる群から選択される低いガラス転移点の骨格を有し、且つPEG−ジメチルエーテル、PEG−EC及びPEG−CNなどの置換ポリエチレングリコールからなる群から選択されるペンダントを有する、1又はくし状ポリマーを有する、請求項15に記載の電解質材料。
【請求項22】
前記第二ポリマーブロックが、スチレン、メタクリレート、ビニルピリジン、ビニルシクロヘキサン、イミド、アミド、プロピレン及びこれらのコポリマーからなる群から選択される1以上の成分を有する、請求項15に記載の電解質材料。
【請求項23】
前記第二ポリマーブロックがポリスチレンを有する、請求項22に記載の電解質材料。
【請求項24】
前記第二ポリマーブロックが、各々50000ダルトン以上の分子量を有する、請求項15に記載の電解質材料。
【請求項25】
前記第一相及び前記第二相が層状構造で配列される、請求項1に記載の電解質材料。
【請求項26】
前記電解質材料が100℃に60分間加熱された後に、第一ドメイン中の溶媒の20%未満が蒸発する、請求項7に記載の電解質材料。
【請求項27】
前記電解質材料が100℃に60分間加熱された後に、第一ドメイン中の溶媒の10%未満が蒸発する、請求項26に記載の電解質材料。
【請求項28】
前記第一相が、Al2O3粒子、TiO2粒子及びSiO2粒子からなる群から選択される複数のセラミック粒子を更に含む、請求項1に記載の電解質材料。
【請求項29】
前記複数のセラミック粒子が、各々5ナノメートル以下の最小寸法を有する、請求項28に記載の電解質材料。
【請求項30】
第三相を含む第三ドメインを更に有し、当該第三相が複数の第三ポリマーブロックを有する、請求項1に記載の電解質材料。
【請求項31】
前記第三ドメインが、ポリジメチルシロキサンなどのポリシロキサン、ポリ(2−エチルヘキシルアクリレート)、ポリデシルメタクリレート若しくはポリラウリルメタクリレートなどのポリアクリレート、又はポリイソプレン若しくはポリブタジエンなどのポリジエンから作られるゴム状ポリマーからなる群から選択される1以上のポリマーを含む、請求項30に記載の電解質材料。
【請求項32】
前記第三ドメインが、前記第一ドメイン又は第二ドメインのいずれかよりも体積が小さい、請求項30に記載の電解質材料。
【請求項33】
前記第三ドメインが、前記材料中で約10%〜30%の体積を占める、請求項30に記載の電解質材料。
【請求項34】
前記第一ドメインが約10nm〜100nmの最小寸法を有し、前記第二ドメインが約10nm〜100nmの最小寸法を有する、請求項1に記載の電解質材料。
【請求項35】
陽極;
陰極;及び
請求項1に記載のナノ構造ゲルポリマー電解質、を有するバッテリー電池であって、
前記ナノ構造ゲルポリマー電解質は、前記陽極と前記陰極の間におけるイオン伝達を提供するために配置されることを特徴とする、バッテリー電池。
【請求項36】
前記第一相がポリエチレンオキシドを含む、請求項35に記載のバッテリー電池。
【請求項37】
前記第二相がポリスチレンを含む、請求項35に記載のバッテリー電池。
【請求項38】
第三相を含む第三ドメインを更に有する、請求項35に記載のバッテリー電池。
【請求項39】
前記第三相がポリイソプレンを含む、請求項38に記載のバッテリー電池。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9】
【公表番号】特表2011−510456(P2011−510456A)
【公表日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−543297(P2010−543297)
【出願日】平成21年1月16日(2009.1.16)
【国際出願番号】PCT/US2009/031356
【国際公開番号】WO2009/092058
【国際公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【出願人】(510196866)シーオゥ インコーポレイテッド (1)
【出願人】(592130699)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (364)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of The University of California
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月16日(2009.1.16)
【国際出願番号】PCT/US2009/031356
【国際公開番号】WO2009/092058
【国際公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【出願人】(510196866)シーオゥ インコーポレイテッド (1)
【出願人】(592130699)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (364)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of The University of California
【Fターム(参考)】
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