説明

バッテリ状態検知センサ装置

【課題】シャント抵抗器と電子制御基板を接続導体で接続して保護ケースに配置する組み立て時に、接続導体を電気的に接続しているシャント抵抗器の接続部と電子制御基板の接続部における応力負荷の発生と、接続導体の破断のリスクを解消して、長期的な電気的接続信頼性を確保できるバッテリ状態検知センサ装置を提供する。
【解決手段】シャント抵抗器4の電気接続部11S、12Tと電子制御基板5の電気接続部5S、5Tを電気的に接続してシャント抵抗器の電気接続部と電子制御基板の電気接続部の間で弛ませて配置されている超弾性合金のリード線21、22と、シャント抵抗器を保持し電子制御基板と接続導体を収容した状態で樹脂モールド材が充填されて加熱硬化された樹脂モールド材により電子制御基板と接続導体が封止されている保護ケース90と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリ状態検知センサ装置に関し、特に自動車のバッテリの充電状態を検知するためのバッテリ状態検知センサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
バッテリ状態検知センサ装置は、例えば自動車のバッテリの充電状態(SOC)を求めるために、電流の収支(充放電履歴)を計測しており、電流の充電量/放電量を検出するために、構成部品の中に電流センサを内蔵している。
電流を検出するには、ホール式センサかシャント抵抗器を用いることが一般的であるが、精度良く電流の収支を計測するためにシャント抵抗器が用いられる。このようなシャント抵抗器は、特許文献1に記載されている。
【0003】
シャント抵抗器に流れた電流は、シャント抵抗器のシャント抵抗体の両側面における電圧差として出力され、その電圧をECU(エンジン電子制御装置)基板上のアナログーデジタル変換回路(AD回路)を用いて変換して測定している。このため、シャント抵抗器とECU基板とを導体部で接続する必要があるので、シャント抵抗器とECU基板はリード線やハーネスにより電気的に接続されている。
【0004】
また、バッテリ状態検知センサ装置は、自動車のエンジンルーム内のバッテリに接続されてエンジンルームの天面や側面に配置されるので、高温にさらされるとともに高い湿度状態にもさらされる。このため、この種のバッテリ状態検知センサ装置では、樹脂等を充填してモールドすることでECU基板を外気と遮断するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11―307301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、従来の構造のバッテリ状態検知センサ装置を組み立てる方法は、次の通りである。
構成部品であるシャント抵抗器とECU基板を組み立てる仕方としては、図5(A)に示すように、(1)予めシャント抵抗器100とECU基板101をリード線200によりはんだ付け(ロウ付け)したものを、保護ケースのケース本体103内に収める方法と、図5(B)に示すように、(2)ケース本体103内にシャント抵抗器100かECU基板101の一方を先に収納した後、もう一方を後からケース本体103内に配置して収納し、シャント抵抗器100とECU基板101をリード線200によりはんだ付けする方法がある。
【0007】
(1)の組み立て方法では、予めシャント抵抗器100とECU基板101を一体とするので、シャント抵抗器100とECU基板101をリード線200ではんだ付けする作業時に、はんだ小手の先をシャント抵抗器100とECU基板101挿入すればよいので、半田付け作業のスペースが確保し易い。このため、バッテリ状態検知センサ装置の小型化や部品の配置、ケース本体の形状等に制約が生じずに作業性が良い。しかし、シャント抵抗器100とECU基板101をリード線200ではんだ付けして接続後、ケース本体103内に収納する必要があるので、収納時の取り扱いによってリード線103に張力が加わって、接続部に余計な負担がかかる恐れがある。
【0008】
また、ケース本体の成型公差、およびシャント抵抗器100とECU基板101を一体に接続した部分の作成時の寸法ばらつきにより、ケース本体103内に収納後にリード線200自体、ECU基板101におけるリード線103の接続部、シャント抵抗器100におけるリード線103の接続部に応力が生じる。このため、シャント抵抗器100とリード線200の接続部と、ECU基板101とリード線200の接続部の長期的な電気的接続信頼性が保証できない恐れがある。リード線200を細く長めにすることで、ECU基板101におけるリード線103の接続部、シャント抵抗器100におけるリード線103の接続部への応力を低減できるが、リード線200をケース本体内に収納する際に、細いリード線に負荷がかかりリード線の破断や伸びが生じてリード線が細径化して強度が低下してしまう。
【0009】
また、(2)の組み立て方法では、ケース本体103内にシャント抵抗器100かECU基板101の一方を先に収納後、もう一方を後からケース本体103に配置して収納し、シャント抵抗器100とECU基板101をリード線200によりはんだ付けするので、ケース本体103にははんだ小手を挿入するために開放スペース部分を設けて、はんだ小手による作業スペースを確保する必要がある。このため、ケース本体103の小型化が図れず、ケース本体103内の部品配置やケース本体103の形状に制約が生じてしまう。リード線200を細く長めにすると、膨張収縮時にひずみがリード線に集中して断線する恐れがある。
【0010】
さらに、(1)の組み立て方法と(2)の組み立て方法において、図6に示すように、ECU基板101の湿度対策のために、樹脂モールド材230をケース本体103内に充填してモールドする場合には、樹脂モールド材230の注入時に樹脂の粘性により細いリード線200に圧力がかかる。
【0011】
そして、樹脂モールド材230を加熱硬化させるために、図7に示すように、ヒータ250によりバッテリ状態検知センサ装置300を加熱する。この加熱の際に、シャント抵抗器100とECU基板101の膨張収縮による応力により、リード線200が伸ばされて破断したり屈曲したりして、長期的な電気的な接続信頼性が保証できないという問題があった。
そこで、本発明は上記課題を解消するために、シャント抵抗器と電子制御(ECU)基板を接続導体(リード線)で接続して保護ケースに配置する組み立て時に、接続導体を電気的に接続しているシャント抵抗器との接続部および電子制御基板との接続部における応力負荷の発生と、接続導体の破断のリスクを解消して、長期的な電気的接続信頼性を確保できるバッテリ状態検知センサ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解消するために、本発明のバッテリ状態検知センサ装置は、シャント抵抗器と、電子制御基板と、前記シャント抵抗器と前記電子制御基板を電気的に接続する超弾性合金からなる接続導体と、前記シャント抵抗器、前記電子制御基板、および前記接続導体を収容した状態で、樹脂モールド材によって封止されている保護ケースと、を備えることを特徴とする。これにより、シャント抵抗器と電子制御基板を接続導体で接続して保護ケースに配置する組み立て時に、接続導体を電気的に接続しているシャント抵抗器の接続部と電子制御基板の接続部における応力負荷の発生と、接続導体の破断のリスクを解消して、長期的な電気的接続信頼性を確保できる。
【0013】
本発明のバッテリ状態検知センサ装置では、前記接続導体は線状部材であることを特徴とする。これにより、接続導体は保護ケース内において加熱硬化させた樹脂モールド材により簡単に封止することができる。
本発明のバッテリ状態検知センサ装置では、前記保護ケースは、箱状のケース本体と、前記ケース本体の開口部を塞ぐ蓋部材とを有することを特徴とする。これにより、電子制御基板は、保護ケースにより熱や湿気から保護することができる。
【0014】
本発明のバッテリ状態検知センサ装置では、前記シャント抵抗器は板状部材であり、前記電子制御基板は前記ケース本体の内底部に配置され、前記シャント抵抗器は前記ケース本体の側面部に形成された切り欠き部に配置されていることを特徴とする。これにより、電子制御基板はケース本体の内底部において樹脂モールド材を用いて確実に封止でき、シャント抵抗器はケース本体に対して確実に配置することができる。本発明のバッテリ状態検知センサ装置では、前記超弾性合金からなる接続導体のAF点が−40℃以上、75℃以下である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、シャント抵抗器と電子制御基板を接続導体で接続して保護ケースに配置する組み立て時に、接続導体を電気的に接続しているシャント抵抗器の接続部と電子制御基板の接続部における応力負荷の発生と、接続導体の破断のリスクを解消して、長期的な電気的接続信頼性を確保できるバッテリ状態検知センサ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のバッテリ状態検知センサ装置の好ましい実施形態を示す分解斜視図である。
【図2】バッテリ状態検知センサ装置を示す側面図である。
【図3】図2のバッテリ状態検知センサ装置を矢印V方向から見た平面図である。
【図4】バッテリ状態検知センサ装置を加熱する様子と、加熱後のバッテリ状態検知センサ装置を示す図である。
【図5】従来例を示す図である。
【図6】従来例を示す図である。
【図7】従来例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。
図1は、本発明のバッテリ状態検知センサ装置の好ましい実施形態を示す分解斜視図である。図2は、バッテリ状態検知センサ装置を示す側面図である。図3は、図2のバッテリ状態検知センサ装置を矢印V方向から見た平面図である。
図1と図2に示すバッテリ状態検知センサ装置1は、ケース本体2と、蓋部材3と、シャント抵抗器4と、ECU(エンジン電子制御装置)基板5を有している。ケース本体2と蓋部材3は、ECU基板5の保護ケース90を構成している。
【0018】
図1と図2に示すケース本体2と蓋部材3は、例えば耐熱性のプラスチックや金属により作られており、ケース本体2は底面部2A、4つの側面部2B〜2Eにより構成され、底面部2Aと対向する面に開口部2Fを有する箱部材である。従って、ケース本体2の上部は開口部2Fである。対向している側面部2Bと側面部2Dには、それぞれ切り欠き部6が形成されている。
【0019】
蓋部材3は、上面部7と下面部8を有している。図2に示すように、蓋部材3が開口部2Fを覆う際には、蓋部材3の下面部8が4つの側面部2B〜2Eの内面にはまり込むことにより、蓋部材3はケース本体2の内部を封止できる。
図1に示すECU基板5は、バッテリの電圧や電流収支(充放電履歴)、温度、インピーダンスを計測し、充電状態(SOC)や劣化状態を判定し、通信回線を通して、計測結果や判定結果を車体コントロールユニットへ送信するコンピューターユニットであり、自己診断機能などの機能を有する。ECU基板5には、複数の部品が搭載されており、図1と図2に示す例では電子部品5A〜5Dを示している。
【0020】
図1〜図3に示すシャント抵抗器4は、第1導体部としてのバスバー11と、第1導体部としてのバスバー12と、シャント抵抗体13を有している例えば平板状の部材であり、シャント抵抗体13は、バスバー11、12の間に配置されている。シャント抵抗器4の長手方向の長さLは、ケース本体2の長さMよりも大きい。ECU基板5の長さNは、ケース本体2の内寸法Cよりも小さい。
【0021】
バスバー11の電気的接続部11Sは、ECU基板5の電気的接続部5Sに対してリード線21により電気的に接続され、バスバー12の電気的接続部12Tは、ECU基板5の電気的接続部5Tに対してリード線22により電気的に接続されている。すなわち、リード線21の一端部はシャント抵抗器4の電気的接続部11Sに接続され、リード線21の他端部はECU基板5の電気的接続部5Sに接続されている。また、リード線22の一端部はシャント抵抗器4の電気的接続部12Tに接続され、リード線22の他端部はECU基板5の電気的接続部5Tに接続されている。
【0022】
図1〜図3に示すバッテリ状態検知センサ装置1は、例えば自動車のバッテリの充電状態(SOC)を求めるために、電流の収支(充放電履歴)を計測しており、電流の充電量/放電量を検出するために、構成部品の中に電流センサとしてのシャント抵抗器4を内蔵している。シャント抵抗器4に流れた電流は、シャント抵抗器4のシャント抵抗体13の両側面における電圧差として出力され、その電圧をECU基板5に対してアナログ−デジタル変換回路(AD回路)を用いて測定している。このため、シャント抵抗体13とECU基板5とは、リード線21、22を用いて電気的に接続されている。
【0023】
リード線21、22は、接続導体の一例であり、例えばNi−Ti−Cu−Cr系合金製の超弾性合金により形成された線状部材である。このリード線21、22は、例えば断面円形状の線状部材である。この超弾性合金は、変態温度以上で弾性域を超えて変形ひずみを加え(例えば通常の金属の弾性域の10倍もの変形をしたもの)ても、外部応力を除くと変形ひずみが消えて元の形状に戻る特性を有する。超弾性合金は、室温よりずっと低温で変形してから室温よりも高い温度にすると形状記憶効果を示す。
ところで、本発明の実施形態では、この超弾性合金のマイナス面の特性であるAF点(記憶回復温度:加熱時に形状が戻りきる温度)以上の温度で変形させたり、大きな変形ひずみで拘束すると変形が残留してしまう特性を利用する。このリード線21、22としては、例えばNi−Ti−Cu−Cr系合金製の超弾性合金のAF点(記憶回復温度)を、マイナス10℃付近に設定した線状部材を用いている。
【0024】
次に、図2と図3を参照すると、ケース本体2の底面部2A内には、ECU基板5が収容されるようになっている。図2と図3に示すように、シャント抵抗器4は、切り欠き部6に配置される。このシャント抵抗器4の配置状態では、図3に示すように、バスバー11の一部分11Dとバスバー12の一部分12Dが、ケース本体2の外側に突出している。ECU基板5の電子部品5A〜5Dは、ケース本体2内においてシャント抵抗器4の下部に位置される。そして、2本のリード線21、22の長さは、ECU基板5の上面5Pとシャント抵抗器4の下面4Pの間隔Sよりも少し大きくなっており、図2に示すようにこの状態では、2本のリード線21、22は弛ませる。
【0025】
次に、上述したバッテリ状態検知センサ装置1の組み立て製造方法を、図1〜図4を参照して説明する。図4(A)は、バッテリ状態検知センサ装置を加熱する様子を示す図であり、図4(B)は、加熱後のバッテリ状態検知センサ装置を示す図である。
まず、組み立て工程では、図1と図2に示すケース本体2の底面部2A内には、ECU基板5が収容され、シャント抵抗器4は切り欠き部6、6に配置される。この状態では、図3に示すように、シャント抵抗器4のバスバー11の一部分11Dとバスバー112の一部分12Dが、ケース本体2の側面部2B、2Dからそれぞれ側方に向けて突出している。図2に示すように、ECU基板5の電子部品5A〜5Dは、シャント抵抗器4の下部に位置される。これにより、ECU基板5はケース本体2の内底部において樹脂モールド材61を用いて確実に封止でき、シャント抵抗器4はケース本体2に対して確実に配置することができる。
【0026】
そして、図2に示すように、2本のリード線21、22の長さは、ECU基板5の上面5Pとシャント抵抗器4の下面4Pの間隔Sよりも少し大きくなっており、この状態では、2本のリード線21、22は弛ませてある。このように、予め2本のリード線21、22の長さを、ECU基板5の上面5Pとシャント抵抗器4の下面4Pの間隔Sよりも少し大きくしているのは、後で説明する樹脂モールド材の加熱硬化工程で、樹脂モールド材の加熱時の膨張収縮によるリード線21、22の破断を避けるためである。
【0027】
次に、樹脂充填工程では、図2に示す樹脂供給部60を用意する。この樹脂供給部60は、容器62と攪拌機63と供給管66とバルブ65を備えている。攪拌機63の羽根64が回転することで、容器62内の樹脂モールド材61を攪拌できる。
図2に示す蓋部材3によりケース本体2の開口部2Fを閉鎖する前に、樹脂供給部60の供給管66の先端部67がケース本体2内に挿入され、樹脂供給部60から樹脂モールド材61をケース本体2内に注入して、樹脂モールド材61によりケース本体2内を充填する。これにより、ECU基板5の湿度対策のために、樹脂モールド材61がケース本体2内においてECU基板5を封止でき、ECU基板5は外気に触れないようにすることができる。
リード線21、22は線状部材なので、注入された樹脂モールド材61が簡単にリード線21、22の周囲に入り込むことができ、リード線21、22は保護ケース90内において加熱硬化させた樹脂モールド材61により簡単に封止することができる。
【0028】
次に、図2と図4(A)に示すように、蓋部材3をケース本体2に載せてシャント抵抗器4を切り欠き部6側に押し付けて、リード線21、22をシャント抵抗器4の下面4PとECU基板5の上面5Pとの間で弛ませた状態にすると共に、蓋部材3によりケース本体2の開口部2Fを閉鎖する。
この際、シャント抵抗器4を押し付けることによる応力負荷や破損リスクは、超弾性合金の線材であるリード線21、22に吸収させることにより、超弾性力によりリード線21、22は屈曲することなく、リード線21、22の弛みで吸収することができる。すなわち、本発明の実施形態では、シャント抵抗器4とECU基板5を電気的に接続する接続導体としてのリード線21、22が超弾性合金により形成されているので、シャント抵抗器4とECU基板5をケース本体2内に組み上げる時の応力負荷や破損リスクを超弾性合金製のリード線21、22に吸収させることができる。従って、シャント抵抗器4とECU基板5の膨張収縮による応力負荷やリード線21、22が伸ばされたり破断することを防ぐことができる。
【0029】
また、リード線21、22は線状部材であり、樹脂モールド材61を注入するとリード線21、22の周りに容易に充填できる。従って、リード線21、22は保護ケース内において加熱硬化させた樹脂モールド材61により簡単にかつ確実に封止することができる。これにより、ECU基板5は、保護ケースのケース本体2と蓋部材3により封止され、熱や湿気から保護することができる。
【0030】
次に、加熱硬化工程では、図4(B)に示すように、蓋部材3により閉鎖されたケース本体2を、加熱装置70内に配置する。充填した樹脂モールド材61を加熱硬化させるために、加熱制御部150が加熱装置70を作動させ、超弾性合金製のリード線21、22を含むバッテリ状態検知センサ装置1を加熱する加熱硬化温度を、AF点(記憶回復温度)プラス50℃以上の加熱温度、例えば100℃の加熱温度に設定して、例えば加熱時間を4時間に設定する。
この加熱作業により樹脂モールド材61を硬化させる際に、超弾性合金であるリード線21、22の形状は現状の弛んだ形状に固定させ(超弾性特性を解消または低減させ)、超弾性合金の微細なバネ応力に起因する応力ひずみを低減もしくは解消することができる。
【0031】
すなわち、本発明の実施形態では、超弾性合金製のリード線21、22を用いることのマイナス面の特性であるAF点以上の温度で変形させたり、大きなひずみで拘束すると変形が残留してしまう特性を利用して、図4に示すようにリード線21、22を弛ませた状態でバッテリ状態検知センサ装置1を組み立てて、シャント抵抗器4とECU基板5の寸法位置がケース本体2において固定された後に、樹脂モールド材61の加熱硬化工程では、加熱温度をAF点プラス50℃以上にして加熱処理をする。
【0032】
この加熱処理により、超弾性合金の形状を現状の状態に固定させ(超弾性特性を解消または低減させ)、超弾性合金の微細なばね応力に起因する応力ひずみを低減もしくは解消して、リード線21、22に接続されるシャント抵抗器4の電気的接続部11S、12TとECU基板5の電気的接続部5S、5Tは応力の生じない理想的な状態にすることができる。このため、リード線21、22とシャント抵抗器4の電気的接続部11S、12Tとの間と、リード線21、22とECU基板5の電気的接続部5S、5Tとの間においては、長期的な電気接続信頼性を確保できる。
【0033】
ここで、本発明に用いることができる超弾性合金は、AF点が−40℃以上75℃以下であることが好ましい。このようなAF点を有する超弾性合金を使用することで、樹脂モールド材の熱硬化工程でリード線21、22の応力ひずみが低減もしくは解消される(例えば、組み立て工程の環境温度25℃では弾性力を維持し、ウレタン樹脂の硬化温度85℃で弾性力が開放される)ため、リード線21、22とシャント抵抗器4、あるいは、リード線21、22とECU基板5との接続部における長期的な電気接続信頼性を得ることができる。
【0034】
ところで、本発明は、上記実施形態に限定されず種々の変形例を採用できる。
超弾性合金としては、Ni−Ti系合金、例えば51Ni−49Tiを用いることができる。
Ni−Ti系合金以外に銅系及び鉄系の合金であっても良い。リード線21、22は、例えば断面円形状の線状部材であるが、これに限らず例えば断面矩形状の線状体等の任意の形状を採用できる。シャント抵抗器4は平板状でなくても良い。
【符号の説明】
【0035】
1 バッテリ状態検知センサ装置
2 ケース本体
3 蓋部材
4 シャント抵抗器
5 ECU(エンジン電子制御装置)基板
5S、5T 電気的接続部
6 切り欠き部
11、12 導体部としてのバスバー
11S、12T電気的接続部
13 シャント抵抗体
21、22 リード線(接続導体の一例)
90 保護ケース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャント抵抗器と、
電子制御基板と、
前記シャント抵抗器と前記電子制御基板を電気的に接続する超弾性合金からなる接続導体と、
前記シャント抵抗器、前記電子制御基板、および前記接続導体を収容した状態で、樹脂モールド材によって封止されている保護ケースと、
を備えることを特徴とするバッテリ状態検知センサ装置。
【請求項2】
前記接続導体は線状部材であることを特徴とする請求項1に記載のバッテリ状態検知センサ装置。
【請求項3】
前記保護ケースは、箱状のケース本体と、前記ケース本体の開口部を塞ぐ蓋部材とを有することを特徴とする請求項1に記載のバッテリ状態検知センサ装置。
【請求項4】
前記シャント抵抗器は板状部材であり、前記電子制御基板は前記ケース本体の内底部に配置され、前記シャント抵抗器は前記ケース本体の側面部に形成された切り欠き部に配置されていることを特徴とする請求項3に記載のバッテリ状態検知センサ装置。
【請求項5】
前記超弾性合金からなる接続導体のAF点が−40℃以上、75℃以下であることを特徴とする請求項1に記載のバッテリ状態検知センサ装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−236981(P2010−236981A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−84234(P2009−84234)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(391045897)古河AS株式会社 (571)
【Fターム(参考)】