バナナの追熟加工方法および追熟加工用システム
【課題】追熟加工コストを大幅に低減できるバナナの追熟加工方法と追熟加工用システムを提供する。
【解決手段】未成熟のバナナの呼吸活性化工程の後、呼吸を活性化されたバナナの熟成を抑制する降温工程の間にわたり、追熟加工室の雰囲気温度を、少なくともバナナ周囲において、バナナの熟成を抑制するのに適する予め設定した一定の低温値になるように調節する。降温工程が行われる追熟加工室の雰囲気流量を、少なくともバナナ周囲において、降温工程の間にわたり、バナナの果肉温度が時間経過により前記低温値に近づくように制御する。
【解決手段】未成熟のバナナの呼吸活性化工程の後、呼吸を活性化されたバナナの熟成を抑制する降温工程の間にわたり、追熟加工室の雰囲気温度を、少なくともバナナ周囲において、バナナの熟成を抑制するのに適する予め設定した一定の低温値になるように調節する。降温工程が行われる追熟加工室の雰囲気流量を、少なくともバナナ周囲において、降温工程の間にわたり、バナナの果肉温度が時間経過により前記低温値に近づくように制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバナナの追熟加工方法と、その方法を実施するための追熟加工用システムに関する。
【背景技術】
【0002】
バナナは植物防疫法により成熟した状態での輸入が規制されていることから、低温で輸入された未成熟バナナを追熟加工により成熟させる必要がある。バナナはクライマクテリック型果実であることから、追熟加工により未成熟のバナナの呼吸の活性化(クライマクテリック・ライズ)を引き出すことで、果皮を黄化させ、果肉を軟化させている。また、呼吸を活性化されたバナナを高温の状態に保持すると、果皮の劣化が生じたり、熟成が急速に進行して商品として販売できる期間が短くなり、急速に冷却すると果肉の糖度を十分に向上させることができず、冷却し過ぎると低温障害が生じる。そのためバナナの追熟加工は、追熟加工室内で未成熟のバナナの果肉温度を上昇させることで、バナナの呼吸を活性化させる呼吸活性化工程と、その呼吸を活性化されたバナナの果肉温度を時間をかけて設定値まで降下させることで、バナナの熟成を抑制する降温工程を有する。
【0003】
従来、追熟加工に際してバナナの果肉温度を制御するため、追熟加工室の雰囲気温度を変化させていた。図20は従来の追熟加工方法に関するものであり、一点鎖線αは追熟加工室の雰囲気の予め定めた目標温度と時間との関係、実線βは追熟加工室の雰囲気の実測温度と時間との関係、破線γはバナナの果肉温度の実測値と時間との関係を示す。すなわち、従来の追熟加工の降温工程においては、呼吸を活性化されたバナナの果肉温度を降下させるため、追熟加工室の雰囲気の目標温度αを経過時間に対応して予め設定し、その目標温度αに追従するよう追熟加工室の雰囲気温度βを変化させていた。(特許文献1〜4参照)。
【0004】
通常、バナナは追熟加工室において多数のカートンに収納された状態で追熟加工されることから、従来のように追熟加工室の雰囲気の実測温度を目標温度に追従させる場合、各カートンそれぞれにおけるバナナ周囲の雰囲気温度が位置によって不均一に変化するのを抑制する必要がある。そこで、例えば図18、図19に示すような追熟加工装置201が汎用されている。この追熟加工装置201は、追熟加工室202を構成するハウジング203と、追熟加工室202の冷房、暖房、換気を行なうための室温調節装置204と、ハウジング203の天井部に吊り下げ状に取り付けられた左右一対のエアバッグ205を有する。ハウジング203の前部に、バナナを収納したカートン206を出し入れするための扉207が設けられ、扉207を閉じることで追熟加工室202内は外気温度の影響を殆ど受けない略密閉された空間となる。追熟加工室202の両エアバッグ205の下方それぞれにおいて、複数のカートン206はパレット208を介して略隙間なく積層され、左右に間隔をおいて配置された一対のカートン積層体を構成する。各エアバッグ205は空気供給により膨張され、各カートン積層体とハウジング3の天井との間の隙間がなくされる。各カートン206には雰囲気流通用の孔206aが形成される。室温調節装置204は、追熟加工室202の天井近傍に配置された循環ファン204aを有し、追熟加工室202の中央領域の雰囲気を一定流量で吸引して左右領域に排出する。これにより、追熟加工室202における中央領域は左右領域よりも圧力が低下して差圧が生じ、その差圧により矢印で示す一定流量の循環気流が生じる。また、エアバッグ205により差圧の低下が抑制される。これにより、室温調節装置204により追熟加工室の雰囲気温度を変化させた時に、バナナ周囲の雰囲気温度が位置によって不均一に変化するのを抑制できる。また、上記のようなエアバッグに代えて、クッションと布からならベッド、積層されたカートンを覆うシート、追熟加工室内に突出可能なシャッター等を用いて追熟加工室内の差圧の低下を抑制し、雰囲気温度の変化が不均一になるのを抑制する追熟加工装置も従来から用いられている(特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−171901号公報
【特許文献2】特開平4−356158号公報
【特許文献3】特開昭60−217859号公報
【特許文献4】特開平2−299541号公報
【特許文献5】特開2003−9835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のように降温工程においてバナナの果肉温度を降下させるために追熟加工室の雰囲気温度を変化させる場合、雰囲気流量が少ないと果肉温度を均一に変化させるのが困難である。そのため、従来は大流量の循環気流を常に発生させることが必要とされていた。その結果、従来の追熟加工装置は非常に高価なものになり、メンテナンスに手間を要し、バナナ収納容量を大きくするための大型化が困難で、生産性を向上させるのが困難で、バナナの追熟加工コストの削減を阻害する大きな要因であった。本発明は、このような問題を解決することのできるバナナの追熟加工方法および追熟加工用システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、追熟加工室内で未成熟のバナナの呼吸を活性化させるために果肉温度を上昇させる呼吸活性化工程と、前記呼吸活性化工程の後に、前記追熟加工室内または異なる追熟加工室内で、呼吸を活性化されたバナナの熟成を抑制するために果肉温度を降下させる降温工程とを備えるバナナの追熟加工方法に適用される。
本発明によるバナナの追熟加工方法は、降温工程が行われる前記追熟加工室の雰囲気温度を、少なくともバナナ周囲において、降温工程の間にわたり、バナナの熟成を抑制するのに適する予め設定した一定の低温値になるように調節し、降温工程が行われる前記追熟加工室の雰囲気流量を、少なくともバナナ周囲において、降温工程の間にわたり、バナナの果肉温度が時間経過により前記低温値に近づくように制御することを特徴とする。
本発明によれば、呼吸活性化工程が行われたのと同一あるいは異なる追熟加工室内で、少なくともバナナ周囲の雰囲気温度を一定の低温値になるように調節している状態で、呼吸を活性化されたバナナの熟成を抑制するために果肉温度を降下させる降温工程が行われる。その降温工程においてバナナの果肉温度を降下させるため、降温工程が行われる追熟加工室の雰囲気流量を、少なくともバナナ周囲において制御する。すなわち、呼吸を活性化されたバナナの果肉温度は呼吸熱により上昇しようとするが、一定の低温値になるよう調節している雰囲気流量を制御することで、果肉温度を次第に低下させる。この際、バナナの呼吸が活発で果肉温度が高く低温値との差が大きい時は、雰囲気流量が少なくても熟成を十分に抑制できる。よって、従来のように大流量の循環気流を常に発生させる装置を不要にできる。
【0008】
降温工程が行われる追熟加工室の扉は、バナナ収納カートンの出し入れ等のために開閉される場合がある。そのため、追熟加工室の扉の近傍や、外気温度の変動の大きい時期においては、バナナ周囲の雰囲気温度は低温値になるように調節されていても大きく変動する可能性がある。そのような温度変動が小さかったり短時間であれば問題はないが、大きく長時間になると雰囲気流量を制御するだけではバナナの熟成を適正に抑制できなくなる可能性がある。そのため、降温工程が行われる前記追熟加工室の雰囲気温度を、少なくともバナナ周囲において、前記低温値になるように調節することで、降温工程の間にわたる時間平均で前記低温値の±1℃の範囲に保持するのが好ましい。通常は、降温工程が行われる前記追熟加工室の雰囲気温度を、少なくともバナナ周囲において、前記低温値になるように調節することで、降温工程の間にわたる時間平均で13℃〜15℃の範囲に保持するのが、雰囲気流量の制御によりバナナの熟成を抑制する上で好ましい。前記低温値は、呼吸を活性化されたバナナの熟成を雰囲気流量の制御により抑制するのに適した値であれば特に限定されず、バナナの種類、果肉固さ、鮮度、環境温度、商品として販売する期間等に応じて適宜選定すればよいが、13℃〜16℃の温度範囲から選定するのが好ましい。例えば、果皮が充分に黄化する前に追熟加工を完了するような場合の低温値は、充分に黄化させる場合の低温値よりも高くする。
【0009】
本発明方法において、降温工程が行われる前記追熟加工室に、バナナ周囲の雰囲気をファンの回転により循環させる循環装置を配置し、降温工程におけるバナナの果肉温度の標準範囲を、降温工程の経過時間に対応付けて予め設定し、前記ファンの回転速度と降温工程の経過時間との関係を、バナナの果肉温度が、降温工程の経過時間に対応した前記標準範囲内に保持されるように予め設定し、前記ファンの回転速度を前記関係に従い変化させることで、降温工程が行われる前記追熟加工室の少なくともバナナ周囲における雰囲気流量を制御するのが好ましい。
その果肉温度の標準範囲は、例えば熟成が過度に抑制されたり果皮の傷みが生じるといったことのない適正範囲になるように、実験や経験則に基づき降温工程の経過時間に対応付けて予め設定すればよい。これにより、設定した関係に従ってファンの回転速度を降温工程の経過時間に応じて変化させるだけで、バナナの熟成を適正に抑制できる。さらに、降温工程当初においては果肉温度と低温値との差が大きいため、ファンの回転速度の大きさが小さくても果肉温度を速やか且つ均一に降下させることができる。一方、果肉温度の低下に伴ってファンの回転速度の大きさを増大させることで、果肉温度と低温値との差が小さくても果肉温度を均一に降下させることができる。これにより、ファンの駆動に要するエネルギーが不必要に増大するのを防止し、省エネルギー化を図ってバナナの追熟加工コストを低減できる。
この場合、降温工程におけるバナナの果肉温度の実測値を時系列に求め、求めた実測値が前記標準範囲から外れる時、前記標準範囲になるように前記ファンの回転速度の大きさを変化させるのが好ましい。これにより、果肉温度が追熟加工室の扉の開閉等によって前記標準範囲から外れた場合、ファンの回転速度の大きさを変化させることで前記標準範囲内に戻し、バナナの熟成を適正に抑制することができる。
【0010】
本発明方法において、降温工程におけるバナナの果肉温度の目標値を、果肉温度が時間経過により前記低温値に近づいてバナナの熟成が抑制されるように、経過時間に対応して予め設定し、降温工程におけるバナナの果肉温度の実測値を時系列に求め、降温工程が行われる前記追熟加工室のバナナ周囲における雰囲気流量を、前記実測値が前記目標値に追従するように制御してもよい。これにより、降温工程における果肉温度の実測値が目標値よりも低ければ、低温値は目標値以下であることから、低温値になるように調節された雰囲気流量を少なくし、場合によっては零とすることで、果肉温度を上昇させることができる。また、果肉温度の実測値が目標値よりも高ければ、目標値以下の低温値になるように調節された雰囲気流量を多くすることで、果肉温度を低下させることができる。
【0011】
本発明方法において、前記ファンの回転速度の方向、すなわち回転方向を降温工程の途中に反転させるのが好ましい。これにより、バナナ周囲における雰囲気の流動方向を均一化し、果肉温度が不均一に降下するのを抑制できる。また、前記ファンの回転速度の大きさを、予め定めた設定時間だけ零とする期間を設けることでも、バナナ周囲における雰囲気の流動方向を均一化できる。さらに果肉温度を均一に降下させる上では、前記ファンの回転速度の大きさを、回転方向を反転させる前に予め定めた設定時間だけ零とする期間を設けるのが好ましい。
【0012】
本発明においては、呼吸活性化工程が行われる前記追熟加工室の雰囲気温度を、少なくともバナナ周囲において、呼吸活性化工程の間にわたり、前記低温値よりも高くバナナの呼吸を活性化させるのに適する予め設定した一定の高温値になるように調節するのが好ましい。これにより、降温工程が行われるのと同一の追熟加工室、あるいは、降温工程が行われるのとは異なる追熟加工室に、エチレンを投入して未成熟のバナナの果肉温度を上昇させることで呼吸を活性化させることができる。
【0013】
雰囲気温度の高温値への調節は、呼吸活性化工程においてバナナの呼吸を活性化させることができればよいことから、呼吸活性化工程が行われる前記追熟加工室の雰囲気温度を、少なくともバナナ周囲において、前記高温値になるように調節することで、呼吸活性化工程の間にわたる時間平均で前記高温値の±1℃の範囲に保持すれば足りる。前記高温値は未成熟のバナナの呼吸の活性化を引き出すことができれば特に限定されず、バナナの種類、果肉固さ、鮮度、環境温度等に応じて適宜選定すればよいが、19℃〜24℃の温度範囲から選定するのが好ましく、例えば高地栽培バナナでは低地栽培バナナよりも高くするのが好ましい。
【0014】
本発明においては、呼吸活性化工程を行う追熟加工室において降温工程も行なうようにしてもよいし、呼吸活性化工程が行われる追熟加工室と降温工程が行われる追熟加工室とを相異なるものとしてもよい。生産性向上を図る上では、呼吸活性化工程が行われる前記追熟加工室と、降温工程が行われる前記追熟加工室とを相異なるものとし、降温工程が行われる前記追熟加工室のバナナ収納容量を、呼吸活性化工程が行われる前記追熟加工室のバナナ収納容量よりも大きくし、降温工程が行われる前記追熟加工室における複数の領域それぞれにおいて、バナナを配置すると共に配置したバナナの果肉温度が前記低温値に近づくように雰囲気流量を制御するのが好ましい。これにより、降温工程を繰り返す周期を、呼吸活性化工程を繰り返す周期よりも長くし、降温工程が行われる追熟加工室における何れかの領域でバナナの果肉温度を降下させて降温工程を実行する間に、呼吸活性化工程が行われる追熟加工室においてバナナの呼吸を活性化させて呼吸活性化工程を実行すると共に、この呼吸活性化工程により呼吸が活性化されたバナナの果肉温度を降下させる降温工程を、降温工程が行われる追熟加工室における残りの何れかの領域で開始できる。
呼吸活性化工程が行われる追熟加工室と降温工程が行われる追熟加工室とを相異なるものとする場合、呼吸活性化工程を従来と同様の追熟加工装置を用いて従来と同様に行ない、既存設備の有効利用を図るようにしてもよい。
【0015】
本発明のバナナの追熟加工用システムは、降温工程が行われる前記追熟加工室において、バナナ周囲の雰囲気をファンの回転により循環させる循環装置と、前記ファンの回転速度を変化させることで、前記循環装置により循環される雰囲気流量を制御する制御手段とを備えることを特徴とする。本発明の追熟加工用システムは、本発明のバナナの追熟加工方法を実施するために用いることができる。なお、本発明システムは、呼吸活性化工程が行われる前記追熟加工室の雰囲気温度を、少なくともバナナ周囲において、前記高温値になるように調節する第1室温調節装置と、降温工程が行われる前記追熟加工室の雰囲気温度を、少なくともバナナ周囲において、前記低温値になるように調節する第2室温調節装置とを備えていてもよい。さらに本発明システムは、呼吸活性化工程が行われる追熟加工室と降温工程が行われる追熟加工室とを備えていてもよい。
【0016】
本発明のバナナの追熟加工用システムにおいて、前記ファンの回転速度と、降温工程の経過時間との予め設定した関係を記憶する記憶手段を備え、前記記憶手段に記憶された関係に従い、前記ファンの回転速度が前記制御手段により制御されるのが好ましい。これにより、その関係に従ってファンの回転速度を時間経過に応じて変化させるだけで、バナナの熟成を適正に抑制できる。
この場合、降温工程におけるバナナの果肉温度の実測値を時系列に求める温度センサと、降温工程におけるバナナの果肉温度の実測値を時系列に求める温度センサと、前記ファンの回転速度の大きさを前記制御手段による制御途中に変化させるオーバーライド信号を、前記制御手段に入力する入力手段とを備えるのが好ましい。これにより、果肉温度が前記標準範囲から外れた場合、ファンの回転速度を変化させるだけで前記標準範囲内に戻し、果肉温度の降下速度が過大になったり過少になるのを防止してバナナの熟成を適正に抑制できる。
【0017】
本発明方法において、呼吸活性化工程が行われる追熟加工室と降温工程が行われる追熟加工室とを相異なるものとする場合、本発明のバナナの追熟加工用システムは、呼吸活性化工程が行われる前記追熟加工室へエチレンを投入する装置を備えるのが好ましい。また、本発明方法において、呼吸活性化工程を行う追熟加工室において降温工程も行なう場合、本発明のバナナの追熟加工用システムは、前記追熟加工室へエチレンを投入する装置を備え、前記追熟加工室内の雰囲気温度を高温値になるように調節する室温調節装置により、前記追熟加工室内の雰囲気温度を低温値になるように調節するのが好ましい。
【0018】
本発明方法において、呼吸活性化工程を行う追熟加工室において降温工程も行なう場合、追熟加工室として汎用の保温倉庫等を用いてもよいし、追熟加工専用の追熟加工室を用いてもよい。また、本発明方法において、呼吸活性化工程が行われる追熟加工室と降温工程が行われる追熟加工室とを相異なるものとする場合、降温工程が行われる追熟加工室として汎用の保温倉庫等を用いてもよいし、降温工程専用の追熟加工室を用いてもよく、また、呼吸活性化工程が行われる追熟加工室として汎用の保温倉庫等を用いてもよいし、呼吸活性化工程専用の追熟加工室を用いてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、一般的なメンテナンスが容易な倉庫を追熟加工室として利用でき、大型化が容易で、生産性を向上でき、追熟加工コストを大幅に低減できるバナナの追熟加工方法と追熟加工用システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態に係るバナナの追熟加工用システムの構成図。
【図2】本発明の第1実施形態に係る循環装置の正面図。
【図3】本発明の第1実施形態に係る循環装置の側面図。
【図4】図3のIV−IV線断面図。
【図5】本発明の第1実施形態に係る循環装置の作動状態での側面図。
【図6】本発明の第1実施形態に係る循環装置の作動状態での正面図。
【図7】本発明の第1実施形態に係るバナナの追熟加工用システムにおける制御構成を示す図。
【図8】本発明の第1実施形態の循環装置により雰囲気流量を制御して実行した降温工程における、バナナの果肉温度およびモータ駆動用周波数と、経過時間との関係を示す図。
【図9】本発明の第2実施形態に係るバナナの追熟加工用システムの構成図。
【図10】本発明の第2実施形態に係る循環装置の斜視図。
【図11】本発明の第2実施形態に係る循環装置の作動状態での平面図。
【図12】本発明の第2実施形態に係る循環装置の作動状態での正面図。
【図13】本発明の第2実施形態に係る循環装置の作動状態での側面図。
【図14】本発明の第2実施形態に係るバナナの追熟加工用システムにおける制御構成を示す図。
【図15】本発明方法によりバナナを追熟加工する場合におけるバナナ周囲の雰囲気温度、果肉温度の目標値、および果肉温度の実測値と、経過時間との関係の説明図。
【図16A】図15の領域Aの拡大図。
【図16B】図15の領域Bの拡大図。
【図17】本発明の変形例に係るバナナの追熟加工用システムの構成を示す図。
【図18】従来の追熟加工装置の正断面図。
【図19】従来の追熟加工装置の側断面図。
【図20】従来の方法によりにバナナを追熟加工する場合における追熟加工室の雰囲気の実測温度、雰囲気の目標温度、および果肉温度の実測値と、経過時間との関係を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明のバナナの追熟加工方法を実施するための第1実施形態に係る追熟加工用システム1の構成を示す。このシステム1により、第1追熟加工室2内において、未成熟のバナナの呼吸を活性化させるために果肉温度を上昇させる呼吸活性化工程が行われ、この呼吸活性化工程の後に、第2追熟加工室3内において、呼吸を活性化されたバナナの熟成を抑制するために果肉温度を降下させる降温工程が行われる。本実施形態では、第1追熟加工室2のバナナ収納容量よりも第2追熟加工室3のバナナ収納容量が大きくされ、第1追熟加工室2の数(図示例では2)は第2追熟加工室3の数(図示例では1)よりも多くされ、第2追熟加工室3のバナナ収納容量合計は全ての第1追熟加工室2のバナナ収納容量合計以上とされている。なお、各追熟加工室2、3の数は特に限定されない。また、第1追熟加工室と第2追熟加工室とでバナナ収納容量を等しくしてもよい。あるいは、第2追熟加工室のバナナ収納容量よりも第1追熟加工室のバナナ収納容量を大きくすると共に第2追熟加工室の数を第1追熟加工室の数よりも多くし、全第2追熟加工室のバナナ収納容量合計を全第1追熟加工室のバナナ収納容量合計以上としてもよい。
【0022】
第1追熟加工室2は、室内の雰囲気である空気の温度を調節する第1室温調節装置4を備え、また、室内にエチレン投入装置24によってエチレンが投入される。エチレン投入装置24は公知のものを用いることができる。第1追熟加工室2は、バナナを収納したカートンを出し入れするための扉2′を有し、扉2′を閉じることで外気温度の影響を殆ど受けない略密閉された空間を構成し、例えば断熱材により覆われた保温倉庫により構成できる。
【0023】
第1室温調節装置4は、第1追熟加工室2の雰囲気温度を、呼吸活性化工程の間にわたり、一定の高温値になるように調節する。その高温値は、バナナの呼吸を活性化させるのに適する値になるように予め設定され、19℃〜24℃の温度範囲から選定するのが好ましく、本実施形態では20℃とされる。第1室温調節装置4による雰囲気温度の一定の高温値への調節精度は、呼吸活性化工程においてバナナの呼吸を活性化させることができる程度であればよく、高温値になるように調節することで、少なくともバナナ周囲において、呼吸活性化工程の間にわたる時間平均で高温値の±1℃の範囲に雰囲気温度を保持できるのが好ましい。すなわち、第1追熟加工室2の雰囲気温度は、呼吸活性化工程への実質的な影響がなければ換気等の際に高温値から多少変動してもよい。第1室温調節装置4は、第1追熟加工室2の雰囲気温度を高温値になるように調節できれば構成は限定されず、例えば室内の冷房、暖房機能を有し、天井や側壁等に分散する開口を介して温度調節された雰囲気を吹き出し、また、室内の雰囲気と外気との換気機能も有する公知の空調装置を用いることができる。
【0024】
第2追熟加工室3は、室内の雰囲気である空気の温度を調節する第2室温調節装置5を備える。第2追熟加工室3は、バナナを収納したカートンを出し入れするための扉3′を有し、扉3′を閉じることで外気温度の影響を殆ど受けない略密閉された空間を構成し、例えば断熱材により覆われた保温倉庫により構成できる。
【0025】
第2室温調節装置5は、第2追熟加工室3の雰囲気温度を降温工程の間にわたり一定の低温値になるように調節する。その低温値は、前記高温値よりも低くバナナの熟成を抑制するのに適する値になるように予め設定され、13℃〜16℃の温度範囲から選定するのが好ましく、本実施形態では14℃とされる。第2室温調節装置5による雰囲気温度の一定の低温値への調節精度は、降温工程においてバナナの果肉温度を雰囲気流量の変化のみにより制御することで、バナナの熟成を抑制できる程度であればよい。第2追熟加工室3の雰囲気温度は、バナナの搬出入や換気等の際に変動する可能性があるが、降温工程への実質的な影響がなければバナナの搬出入や換気等の際に低温値から多少変動してもよい。よって、雰囲気流量を制御することでバナナの熟成を適正に抑制する上では、第2追熟加工室3の雰囲気温度を、少なくともバナナ周囲において低温値になるように調節することで、降温工程の間にわたる時間平均で低温値の±1℃の範囲に保持するのが好ましく、特に13℃〜15℃の範囲に保持するのが好ましい。第2室温調節装置5は、第2追熟加工室3の雰囲気温度を低温値になるように調節できれば構成は限定されず、例えば室内の冷房、暖房機能を有し、天井や側壁等に分散する開口を介して温度調節された雰囲気を吹き出し、また、室内の雰囲気と外気との換気機能も有する公知の空調装置を用いることができる。
【0026】
各追熟加工室2、3における複数の領域それぞれに、バナナ周囲の雰囲気を循環させる循環装置10が配置されている。図2〜図4に示す本実施形態の各循環装置10はフレーム10Aと送風機10Bを有する。フレーム10Aは、矩形板状のベース10aと天板10bの四隅を支柱10cにより連結することで形成されている。フレーム10Aにおける左右(図2、図4における左右)の支柱10cの間は、前後一対の開口部10dとされている。フレーム10Aにおける前後(図3における左右)の支柱10cの間それぞれは、遮蔽板10eにより閉鎖されている。
【0027】
送風機10Bは、天板10b上に取り付けられたケーシング10fと、ケーシング10fに内蔵されたモータにより縦軸中心に駆動されるファン10gを有する。ケーシング10fの上部に上部流通孔(図示省略)が形成され、ケーシング10fの下部とフレーム10Aの天板10bに下部流通孔10hが形成されている。
【0028】
本実施形態においては、図2、図4に示すように、複数の循環装置10が互いに遮蔽板10eを介して接することで一列に並列され、図1に示すように、その循環装置10の列が第1追熟加工室2に2列、第2追熟加工室3に8列配置される。なお、各循環装置10の遮蔽板10eを着脱可能とし、一列に配置された循環装置10における両端の循環装置10の外端にのみ遮蔽板10eを取り付けてもよい。
【0029】
図5、図6に示すように、各追熟加工室2、3における各循環装置10の前後の床上に、バナナを収納した複数のカートン11がパレット12を介して略隙間なく積層され、カートン積層体13が構成される。カートン積層体13は循環装置10の支柱10cの前後面に略隙間なく接するように配置され、各循環装置10の前後開口部10dはカートン積層体13により覆われる。各カートン11は直方体形状で、前後左右壁に雰囲気流通用の孔11aが形成されている。これにより、各追熟加工室2、3における複数の領域それぞれにバナナが配置される。
【0030】
ファン10gの一方向への回転より、追熟加工室2、3内の雰囲気がケーシング10fの上部流通孔を介して吸引され、下部流通孔10hを介してフレーム10A内に導かれ、フレーム10Aの前後開口部10dを介して排気される。ファン10gの他方向への回転より、前後開口部10dを介してフレーム10A内に導かれれた追熟加工室2、3内の雰囲気が、ケーシング10fの下部流通孔10hを介して吸引された後に、ケーシング10fの上部流通孔を介して排気される。すなわち循環装置10は、追熟加工室2、3において、バナナ周囲の雰囲気をファン10gの回転により循環させることができ、また、そのファン10gの回転速度の変化により、その循環される雰囲気流量を変化させることができる。本実施形態では、ファン10gを回転させるモータの駆動電力を駆動周波数に応じて変化させればファン10gの回転速度が変化し、その回転速度は雰囲気流量に対応することから、追熟加工室2、3のバナナ周囲における雰囲気流量を制御できる。また、ファン10gの回転速度として、回転速度の大きさだけでなく回転速度の方向、すなわち回転方向を変化させることが可能とされ、ファン10gの回転方向を反転させたり、回転速度の大きさをを設定時間だけ零にすることができる。
【0031】
ファン10gの一方向への回転より、追熟加工室2、3内の雰囲気がフレーム10A内に導かれた後に前後開口部10dから排気されるので、フレーム10A内の圧力がカートン積層体13の周囲領域の圧力よりも高くなる。この圧力差により、追熟加工室2、3の少なくともバナナ周囲における雰囲気が、図5、図6における矢印で示す方向に流動することで循環する。また、ファン10gの他方向への回転より、追熟加工室2、3内の雰囲気がフレーム10A内に導かれた後にケーシング10fの上部流通孔を介して排気されるので、フレーム10A内の圧力がカートン積層体13の周囲領域の圧力よりも低くなる。この圧力差により、追熟加工室2、3の少なくともバナナ周囲における雰囲気が、図5、図6における矢印で示す方向とは逆方向に流動することで循環する。その循環する雰囲気流量はファン10gの回転速度の変化により変化する。
【0032】
図7に示すように、各循環装置10はコンピュータにより主構成される制御装置20に接続される。さらに制御装置20に、第1室温調節装置4、第1追熟加工室2の室温を時系列に求める室温センサ4a、第2室温調節装置5、第2追熟加工室3の室温を時系列に求める室温センサ5a、キーボード等により構成される入力装置21、呼吸活性化工程および降温工程におけるバナナの果肉温度の実測値を時系列に求める温度センサ22、第1追熟加工室2内の二酸化炭素濃度の実測値を求めるCO2 センサ23a、第2追熟加工室3内の二酸化炭素濃度の実測値を求めるCO2 センサ23b、第1追熟加工室2にエチレンを投入するエチレン投入装置24、表示装置やプリンタ等により構成される出力装置25が接続される。なお、温度センサ22は、追熟加工中の全てのバナナの果肉温度を求める必要はなく、一部の果肉温度を求めるもので足りる。また、第1追熟加工室2として一定容積の追熟加工専用の室を用いるのではなく、様々な容積の保温倉庫等を利用する場合、第1追熟加工室2内のエチレン濃度を測定するエチレン濃度センサを制御装置20に接続し、必要以上に第1追熟加工室2内のエチレン濃度が高くならないようにエチレン投入装置24を制御できるようにするのがよい。
【0033】
制御装置20は、第1追熟加工室2における循環装置10のファン10gの回転速度と、呼吸活性化工程の経過時間との予め設定した関係を記憶する記憶手段として機能する。この記憶される関係は、呼吸活性化工程の実行によりバナナの果肉温度が時間経過により上記高温値に近づき、バナナの呼吸が適正に活性化されるように実験により予め設定される。この記憶された関係に従いファン10gの回転速度が制御されることで、第1追熟加工室2の少なくともバナナ周囲における雰囲気流量が制御される。本実施形態の呼吸活性化工程においては、ファン10gの回転速度を変化させず、第1追熟加工室2の少なくともバナナ周囲における雰囲気流量は一定としている。
【0034】
また、制御装置20は、第2追熟加工室3における循環装置10のファン10gの回転速度と、降温工程の経過時間との予め設定した関係を記憶する記憶手段として機能する。なお、記憶される回転速度は、回転速度の大きさと回転速度の方向を含み、また、回転速度の大きさが零の場合も含む。この記憶される関係は、降温工程の実行によりバナナの果肉温度が時間経過により上記低温値に近づくように予め設定される。さらに本実施形態においては、その記憶される関係は、降温工程におけるバナナの果肉温度が、降温工程の経過時間に対応した標準範囲内に保持されるように予め設定される。制御装置20は、この記憶された関係に従いファン10gの回転速度を変化させることで、第2追熟加工室3における循環装置10が配置された複数の領域それぞれにおいて、少なくともバナナ周囲で循環装置10により循環される雰囲気流量を制御する制御手段として機能する。
【0035】
本実施形態では、ファン10gの回転速度と降温工程の経過時間との関係として、ファン10gの駆動用モータを駆動する際の駆動周波数と、ファン10gの一方向への回転時間と、他方向への回転時間と、回転速度の大きさを零とする時間とが、降温工程の開始時点からの経過時間に対応付けられて制御装置20に記憶される。
その駆動周波数はファン10gの回転速度の大きさに対応する。例えば図8のように横軸を降温工程の開始からの経過時間、右縦軸を駆動周波数とした場合、破線Eで示すように時間経過に伴い階段状に変化する駆動周波数が記憶される。
また、ファン10gの一方向への回転時間と、他方向への回転時間と、回転速度の大きさを零とする時間とは、例えば、一方向への回転時間が10分、次に他方向への回転時間が10分、次に回転速度の大きさを零とする時間が10分といった値が、降温工程の開始から時間経過に伴い順次繰り返されるように経過時間に対応付けられて記憶される。
制御装置20は、降温工程における時間経過に応じて、その時点でファン10gが駆動されるか回転速度が零とされるかを判断し、駆動される場合はその時点に対応する記憶された駆動周波数と記憶された回転方向に応じてファン10gを駆動し、回転速度が零とされる場合はファン10gを停止させる。これにより、降温工程の開始時点からファン10gは一方向への10分間駆動、他方向への10分間駆動、10分間駆動停止の動作パターンが繰り返される。なお、ファン10gの具体的な駆動時間や駆動停止過時間は10分間に限定されるものではない。また、ファン10gの駆動停止タイミングも回転方向の反転前に限定されず、例えば、降温工程の開始時点からファン10gは一方向への10分間駆動、10分間駆動停止、一方向への10分間駆動、他方向への10分間駆動、10分間駆動停止、他方向への10分間駆動の動作パターンが繰り返されるようにしてもよい。さらに、ファン10gを一方向へのみ回転させるようにしたり、あるいは、ファン10gを一方向への回転直後に他方向へ回転させることによって駆動停止時間を実質的になくしてもよい。
降温工程の開始から終了までの時間は、熟成が過度に抑制されたり果皮が傷まないように、実験や経験則に基づき定めればよい。このように記憶された関係に従いファン10gの回転速度を制御装置20により変化させることで、第2追熟加工室3の少なくともバナナ周囲における雰囲気流量を、降温工程の間にわたり、バナナの果肉温度が時間経過により低温値に近づくように制御できる。また、ファン10gの回転方向を降温工程の途中に反転させ、また、ファン10gの回転速度の大きさを降温工程の途中に予め定めた設定時間だけ零とする期間を設けることができる。なお、このように記憶される関係は単一である必要はなく、バナナの種類、果肉固さ、鮮度、環境温度、商品として販売する期間等の相違に応じて異なる複数の関係を予め設定して記憶し、その相違に応じて制御に用いる関係を入力装置21から制御装置20へ選択信号の入力により選択可能としてもよい。
【0036】
降温工程におけるバナナの果肉温度の標準範囲は、例えば熟成が過度に抑制されたり果皮の傷みが生じるといったことのない適正範囲になるように、実験や経験則に基づき降温工程の経過時間に対応付けて予め設定される。例えば図8において、実線A、一点鎖線B、二点鎖線C、三点鎖線Dは、低温値(本実施形態では14℃)になるように調節されている第2追熟加工室3において、本実施形態により雰囲気流量を制御して追熟加工した相異なるバナナの果肉温度(左縦軸)と降温工程の開始からの経過時間との関係を示す。実線A、一点鎖線B、二点鎖線C、三点鎖線Dに対応するバナナと、従来方法により追熟加工したバナナとを、降温工程の開始から25時間、49時間、および追熟加工終了時点において比較したしたところ、両者に差はなく何れも適正に追熟加工されていた。この場合、果肉温度の標準範囲を、降温工程の経過時間毎における、実線A、一点鎖線B、二点鎖線C、三点鎖線Dの中の最大果肉温度と最小果肉温度の間とすることができる。なお、図8は一例であり、バナナの種類、果肉固さ、鮮度、環境温度、商品として販売する期間等の相違に応じて果肉温度の標準範囲を異なるものとし、その相違に応じた標準範囲に基づいてファン10gの回転速度と降温工程の経過時間との関係を設定すればよい。
【0037】
入力装置21は、ファン10gの回転速度の大きさを制御装置20による制御途中に変化させるオーバーライド信号を、制御装置20に入力する入力手段として機能する。例えば、ファン10gの駆動用モータの駆動周波数、ファン10gの回転速度の変動率等がオーバーライド信号として入力される。これにより、降温工程において温度センサ22により求めた果肉温度の実測値が上記標準範囲から外れる時、その標準範囲内になるようにファン10gの回転速度の大きさを変化させ、果肉温度の降下速度が過大になったり過少になるのを防止できる。
【0038】
制御装置20が、入力装置21から入力される二酸化炭素の予め定めた設定濃度、各センサ4a、5a、22、23a、23bの検出値に基づき、制御プログラムに従い各室温調節装置4、5、循環装置10、エチレン投入装置24、出力装置25を制御することで、バナナの追熟加工を以下のように行うことができる。
【0039】
まず、未成熟のバナナを第1追熟加工室2に搬入し、第1追熟加工室2内で果肉温度を上昇させてバナナの呼吸を活性化させる呼吸活性化工程を行う。この際、制御装置20が第1室温調節装置4を室温センサ4aの検出温度に応じて制御することで、第1追熟加工室2の雰囲気温度を、少なくともバナナ周囲において、呼吸活性化工程の間にわたり上記高温値になるように調節する。また、制御装置20によりエチレン投入装置24を制御することで、第1追熟加工室2へのエチレンの投入を行う。さらに、各センサ22、23aの検出情報を出力するため、制御装置20は出力装置25を制御する。そして、呼吸活性化工程においてバナナ周囲における雰囲気を循環させるため、制御装置20は循環装置10のファン10gを回転させる。本実施形態では、呼吸活性化工程におけるファン10gの回転速度は予め設定された一定値とされる。これにより、第1追熟加工室2においてカートン11に収納されたバナナは循環する雰囲気に接し、果肉温度が上昇してバナナの呼吸が活性化される。バナナの呼吸の活性化を引き出したならば呼吸活性化工程を終了する。バナナの呼吸の活性化を引き出したか否かの判断は、例えば、果肉温度の検出値、二酸化炭素濃度の検出値、呼吸活性化工程の開始からの経過時間等に基づき、実験や経験則に基づき適宜行えばよい。第1追熟加工室2におけるエチレンの排出や二酸化炭素濃度の調節は第1室温調節装置4の換気機能により行えばよい。なお、第1室温調節装置4を、制御装置20とは別の制御装置や人間により作動されるものとし、第1追熟加工室2の雰囲気温度をセンサ4aとは別のセンサからの信号に基づき調節してもよい。
【0040】
呼吸活性化工程の終了後に、呼吸を活性化されたバナナを第1追熟加工室2から第2追熟加工室3に移し、第2追熟加工室3内で果肉温度を降下させてバナナの熟成を抑制する降温工程を行う。この際、制御装置20が第2室温調節装置5を室温センサ5aの検出温度に応じて制御することで、第2追熟加工室3の雰囲気温度を、少なくともバナナ周囲において、呼吸活性化工程の間にわたり上記低温値になるように調節する。また、各センサ22、23bの検出情報を出力するため、制御装置20は出力装置25を制御する。そして制御装置20は、ファン10gの回転速度を記憶した上記関係に従い変化させることで、第2追熟加工室3の少なくともバナナ周囲における雰囲気流量を制御する。これにより、カートン11に収納されたバナナは循環する雰囲気に接し、果肉温度が時間経過により上記低温値に近づくように降下してバナナの熟成が抑制される。第2追熟加工室3における二酸化炭素濃度の調節は第2室温調節装置5の換気機能により行えばよい。なお、第2室温調節装置5を、制御装置20とは別の制御装置や人間により作動されるものとし、第2追熟加工室3の雰囲気温度をセンサ5aとは別のセンサからの信号に基づき調節してもよい。
【0041】
本実施形態では、降温工程を繰り返す周期を呼吸活性化工程を繰り返す周期よりも長くし、第2追熟加工室3において循環装置10の何れかにより雰囲気が循環されている領域においてバナナの果肉温度を降下させて降温工程を実行する間に、第1追熟加工室2においてバナナの呼吸を活性化させて呼吸活性化工程を実行すると共に、この呼吸活性化工程により呼吸が活性化されたバナナの果肉温度を降下させる降温工程を、第2追熟加工室3における循環装置10の残りの何れかにより雰囲気が循環されている領域で開始する。これにより、あるロットのバナナにつき第1追熟加工室2で加工した後に第2追熟加工室3で加工している間に、第1追熟加工室2で別のロットのバナナにつき加工した後に、第2追熟加工室3で加工を開始することが可能になり、生産性向上を図ることができる。
【0042】
上記第1実施形態によれば、第1追熟加工室2の雰囲気温度が少なくともバナナ周囲において一定の高温値になるように調節されている状態で、バナナの呼吸を活性化させるために果肉温度を上昇させる呼吸活性化工程が行われる。しかる後に、第2追熟加工室3の雰囲気温度が少なくともバナナ周囲において一定の低温値になるように調節されている状態で、呼吸を活性化されたバナナの果肉温度を、雰囲気流量を変化させることで制御する降温工程が行われる。すなわち、呼吸を活性化されたバナナの果肉温度は呼吸熱により上昇しようとするが、一定の低温値になるよう調節している雰囲気流量を制御することで、果肉温度を低下させる。この際、果肉温度が高く低温値との差が大きい時は、雰囲気流量が少なくても熟成を十分に抑制できる。すなわち、降温工程当初においてバナナの呼吸が活発で果肉温度が高くても、第2追熟加工室3の雰囲気温度は低温値に調節されているので、第2追熟加工室3の雰囲気の実測温度と果肉温度の差は大きくなる。よって、バナナ周囲の雰囲気を流動させることができれば、バナナ表面が一定の低温値とされた雰囲気に接して果肉温度を速やか且つ均一に降下させることができる。これにより、従来のように大流量の循環気流を常に発生させる装置を不要にでき、追熟加工に必要な設備コストを低減し、設備のメンテナンスを容易にし、生産性を向上させ、バナナの追熟加工コストを大幅に低減できる。
【0043】
また、第1実施形態によれば、ファン10gの回転速度と経過時間との関係を予め実験により設定しておけば、その関係に従ってファン10gの回転速度を時間経過に応じて変化させるだけで、バナナの熟成を適正に抑制できる。さらに、降温工程当初においては果肉温度と低温値との差が大きいため、ファン10gの回転速度の大きさが小さくても果肉温度を速やか且つ均一に降下させることができる。一方、果肉温度の低下に伴ってファン10gの回転速度の大きさを増大させることで、果肉温度と低温値との差が小さくても果肉温度を均一に降下させることができる。これにより、ファン10gの駆動に要するエネルギーが不必要に増大するのを防止し、省エネルギー化を図ってバナナの追熟加工コストを低減できる。さらに、降温工程におけるバナナの果肉温度の実測値が標準範囲から外れる時、ファン10gの回転速度の大きさを変化させて標準範囲内に戻すことができ、バナナの熟成を適正に抑制できる。しかも、ファン10gの回転方向を降温工程の途中に反転させ、予め定めた設定時間だけファン10gの回転速度の大きさを零とする期間を設け、さらに回転方向を反転させる前に回転速度の大きさを零にできるので、バナナ周囲における雰囲気の流動方向を均一化し、果肉温度が不均一に降下するのを抑制できる。
【0044】
図9は、本発明のバナナの追熟加工方法を実施するための第2実施形態に係る追熟加工用システム101の構成を示す。このシステム101により、第1追熟加工室102内において、未成熟のバナナの呼吸を活性化させるために果肉温度を上昇させる呼吸活性化工程が行われ、第2追熟加工室103内において、呼吸を活性化されたバナナの熟成を抑制するために果肉温度を降下させる降温工程が行われる。本実施形態では、第1追熟加工室102のバナナ収納容量よりも第2追熟加工室103のバナナ収納容量が大きくされている。なお、各追熟加工室102、103の数は特に限定されない。また、第1追熟加工室と第2追熟加工室とでバナナ収納容量を等しくしてもよい。あるいは、第2追熟加工室のバナナ収納容量よりも第1追熟加工室のバナナ収納容量を大きくすると共に第2追熟加工室の数を第1追熟加工室の数よりも多くし、全第2追熟加工室のバナナ収納容量合計を全第1追熟加工室のバナナ収納容量合計以上としてもよい。
【0045】
第1追熟加工室102は、室内の雰囲気である空気の温度を調節する第1室温調節装置104を備え、また、室内にエチレン投入装置24によってエチレンが投入される。エチレン投入装置は公知のものを用いればよい。第1追熟加工室102は、バナナを収納したカートンを出し入れするための扉102′を有し、扉102′を閉じることで外気温度の影響を殆ど受けない略密閉された空間を構成し、例えば断熱材により覆われた保温倉庫により構成できる。
【0046】
第1室温調節装置104は、第1追熟加工室102の雰囲気温度を、呼吸活性化工程の間にわたり、一定の高温値になるように調節する。その高温値は、バナナの呼吸を活性化させるのに適する値になるように予め設定され、19℃〜24℃の温度範囲から選定するのが好ましく、本実施形態では20℃とされる。第1室温調節装置104による雰囲気温度の一定の高温値への調節精度は、呼吸活性化工程においてバナナの呼吸を活性化させることができる程度であればよく、高温値になるように調節することで、少なくともバナナ周囲において、呼吸活性化工程の間にわたる時間平均で高温値の±1℃の範囲に雰囲気温度を保持できるのが好ましい。すなわち、第1追熟加工室102の雰囲気温度は、呼吸活性化工程への実質的な影響がなければ換気等の際に高温値から多少変動してもよい。第1室温調節装置104は、第1追熟加工室102の雰囲気温度を高温値になるように調節できれば構成は限定されず、例えば室内の冷房、暖房機能を有し、天井や側壁等に分散する開口を介して温度調節された雰囲気を吹き出し、また、室内の雰囲気と外気との換気機能も有する公知の空調装置を用いることができる。
【0047】
第2追熟加工室103は、室内の雰囲気である空気の温度を調節する第2室温調節装置105を備える。第2追熟加工室103は、バナナを収納したカートンを出し入れするための扉103′を有し、扉103′を閉じることで外気温度の影響を殆ど受けない略密閉された空間を構成し、例えば断熱材により覆われた保温倉庫により構成できる。
【0048】
第2室温調節装置105は、第2追熟加工室103の雰囲気温度を降温工程の間にわたり一定の低温値になるように調節する。その低温値は、前記高温値よりも低くバナナの熟成を抑制するのに適する値になるように予め設定され、13℃〜16℃の温度範囲から選定するのが好ましく、本実施形態では14℃とされる。第2室温調節装置105による雰囲気温度の一定の低温値への調節精度は、降温工程においてバナナの果肉温度を雰囲気流量の変化のみにより制御できればよい。第2追熟加工室103の雰囲気温度は、バナナの搬出入や換気等の際に変動する可能性があるが、降温工程への実質的な影響がなければバナナの搬出入や換気等の際に低温値から多少変動してもよい。よって、雰囲気流量を制御することでバナナの熟成を適正に抑制する上では、第2追熟加工室103の雰囲気温度を、少なくともバナナ周囲において低温値になるように調節することで、降温工程の間にわたる時間平均で低温値の±1℃の範囲に保持するのが好ましく、特に13℃〜15℃の範囲に保持するのが好ましい。第2室温調節装置105は、第2追熟加工室103の雰囲気温度を低温値になるように調節できれば構成は限定されず、例えば室内の冷房、暖房機能を有し、天井や側壁等に分散する開口を介して温度調節された雰囲気を吹き出し、また、室内の雰囲気と外気との換気機能も有する公知の空調装置を用いることができる。
【0049】
各追熟加工室102、103における複数の領域それぞれに、バナナ周囲の雰囲気を循環させる循環装置110が配置されている。図10〜図13に示す本実施形態の各循環装置110は、ハウジング110aに内蔵されたモータにより横軸中心に駆動されるファン110bの回転より、ハウジング110aの前面中央に形成された吸引口110cから吸引した雰囲気を、ハウジング110aの左右側面に形成された排気口110dから排気することで雰囲気を循環させる。そのファン110bの回転速度の変更により、その循環される雰囲気流量を変化させることが可能とされている。すなわち、ファン110bの回転速度は雰囲気流量に対応し、本実施形態ではファン110bを回転させる際のモータの駆動電力を駆動周波数に応じて変化させれば、回転速度が変化し、追熟加工室102、103のバナナ周囲における雰囲気流量を制御できる。また、ファン110bの回転速度として、回転速度の大きさだけでなく回転方向を変化させることが可能とされ、ファン110bの回転方向を反転させたり、また、回転速度の大きさを設定時間だけ零にすることができる。
【0050】
本実施形態の循環装置110は可撓性および気密性を有するビニールシート等のカバー110fを有し、ハウジング110aの上部のロール110eに引き出し可能に巻き付けられている。カバー110fにより、バナナ周囲の雰囲気を循環装置110により効果的に循環させることが可能とされている。すなわち各追熟加工室102、103において、ハウジング110aの前方における左右に間隔をおいた床上に、図11〜図13に示すようにバナナを収納した複数のカートン11がパレット12を介して略隙間なく積層され、左右に間隔をおいて配置された一対のカートン積層体13を構成する。各カートン11の少なくとも左右壁に雰囲気流通用の孔11aが形成される。ロール110eから引き出されたカバー110fは、一対のカートン積層体13の上面と前面、および一対のカートン積層体13の間の空間の上方と前方を覆うことが可能とされている。なお、カバー110fの先端をパレートに着脱する連結具110gを設けてもよい。ファン110bの一方向への回転より、一対のカートン積層体13の間の雰囲気が吸引口110cから吸引され、排気口110dから排気される。これにより、一対のカートン積層体13の左右間領域は左右領域よりも圧力が低下して多少の差圧が生じ、図11において矢印で示すように追熟加工室102、103の少なくともバナナ周囲における雰囲気が循環する。また、ファン110bの他方向への回転により、図11において矢印で示す方向とは逆方向にバナナ周囲における雰囲気が循環する。その循環する雰囲気流量はファン110bの回転速度の変化により変化する。
【0051】
図14に示すように、各循環装置110はコンピュータにより主構成される制御装置120に接続される。制御装置120は、経過時間に対応して予め設定された降温工程におけるバナナの果肉温度の目標値を、その経過時間に対応付けて記憶する記憶手段として機能する。その目標値は、降温工程において果肉温度が時間経過により上記低温値に近づいてバナナの熟成が抑制されるように、経過時間に対応して予め設定される。すなわち目標値は、降温工程の開始当初は低温値よりも大きく、時間経過により小さくなって低温値に近づくように設定される。
【0052】
さらに制御装置120は、第1追熟加工室2における循環装置110のファン110bの回転速度と、呼吸活性化工程の経過時間との予め設定した関係を記憶する記憶手段として機能する。この記憶される関係は、呼吸活性化工程の実行によりバナナの果肉温度が時間経過により上記高温値に近づき、バナナの呼吸が適正に活性化されるように実験により予め設定される。この記憶された関係に従いファン110bの回転速度が制御されることで、第1追熟加工室102の少なくともバナナ周囲における雰囲気流量が制御される。本実施形態の呼吸活性化工程においては、ファン110bの回転速度を変化させず、第1追熟加工室102のバナナ周囲における雰囲気流量は一定としている。
【0053】
図14に示すように、制御装置120に、キーボード等により構成される入力装置121、呼吸活性化工程および降温工程におけるバナナの果肉温度の実測値を時系列に求める温度センサ122、第1追熟加工室102内の二酸化炭素濃度の実測値を求めるCO2 センサ123a、第2追熟加工室103内の二酸化炭素濃度の実測値を求めるCO2 センサ123b、第1追熟加工室102にエチレンを投入するエチレン投入装置124、表示装置やプリンタ等により構成される出力装置125が接続される。なお、温度センサ122は、追熟加工中の全てのバナナの果肉温度を求める必要はなく、一部の果肉温度を求めるもので足りる。各室温調節装置104、105は、本実施形態では制御装置120とは別の制御装置や人間により作動されるものとされ、追熟加工室102、103の室温を時系列に求めるセンサ(図示省略)からの信号に基づき雰囲気温度を調節する。また、第1追熟加工室102として一定容積の追熟加工専用の室を用いるのでなく、様々な容積の保温倉庫等を用いる場合、第1追熟加工室102内のエチレン濃度を測定するエチレン濃度センサを制御装置120に接続し、必要以上に第1追熟加工室102内のエチレン濃度が高くならないようにエチレン投入装置124を制御できるようにするのがよい。
【0054】
制御装置120は、入力装置121から入力される上記目標値、二酸化炭素の予め定めた設定濃度、各センサ122、123a、123bの検出値に基づき、制御プログラムに従い循環装置110、エチレン投入装置124、出力装置125を制御し、この際、ファン110bの回転速度を制御することで循環装置110により循環される雰囲気流量を制御する制御手段として機能する。各室温調節装置104、105は追熟加工室102、103の雰囲気温度を調節する。これによりバナナの追熟加工を以下のように行うことができる。
【0055】
まず、未成熟のバナナを第1追熟加工室102に搬入し、第1追熟加工室102内で果肉温度を上昇させてバナナの呼吸を活性化させる呼吸活性化工程を行う。この際、第1室温調節装置104により第1追熟加工室102の雰囲気温度を呼吸活性化工程の間にわたり上記高温値になるように調節する。また、制御装置120によりエチレン投入装置124を制御することで、第1追熟加工室102へのエチレンの投入を行う。さらに、各センサ122、123aの検出情報を出力するため、制御装置120は出力装置125を制御する。そして、呼吸活性化工程においてバナナ周囲における雰囲気を循環させるため、制御装置120は循環装置110のファン110bを回転させる。これにより、第1追熟加工室102においてカートン11に収納されたバナナは循環する雰囲気に接し、果肉温度が上昇してバナナの呼吸が活性化される。バナナの呼吸の活性化を引き出したならば呼吸活性化工程を終了する。バナナの呼吸の活性化を引き出したか否かの判断は、例えば、果肉温度の検出値、二酸化炭素濃度の検出値、呼吸活性化工程の開始からの経過時間等に基づき、実験や経験則に基づき適宜行えばよい。第1追熟加工室102におけるエチレンの排出や二酸化炭素濃度の調節は第1室温調節装置104の換気機能により行えばよい。なお、第1室温調節装置104を制御装置120に接続し、上記高温値を入力装置121から制御装置120に入力し、制御装置120からの信号により第1室温調節装置104を作動させることで、第1追熟加工室102の雰囲気温度の調節、エチレンの排出、二酸化炭素濃度の調節等を行うようにしてもよい。
【0056】
呼吸活性化工程の終了後に、呼吸を活性化されたバナナを第1追熟加工室102から第2追熟加工室103に移し、第2追熟加工室103内で果肉温度を降下させてバナナの熟成を抑制する降温工程を行う。この際、第2室温調節装置105により第2追熟加工室103の雰囲気温度を降温工程の間にわたり上記低温値になるように調節する。各センサ122、23bの検出情報を出力するため、御装置20は出力装置125を制御する。そして制御装置120は、温度センサ122により時系列に求められる果肉温度の実測値が、記憶した上記目標値に追従するように、第2追熟加工室103内のバナナ周囲において循環装置110により循環される雰囲気流量を、ファン110bの回転速度を変化させることで制御する。これにより、カートン11に収納されたバナナは循環する雰囲気に接し、果肉温度が降下してバナナの熟成が抑制される。バナナの熟成が抑制されたならば降温工程を終了する。降温工程を終了するか否かは、熟成が過度に抑制されたり果皮が傷まないように、実験や経験則に基づき適宜判断すればよい。第2追熟加工室103における二酸化炭素濃度の調節は第2室温調節装置105の換気機能により行えばよい。なお、第2室温調節装置105を制御装置120に接続し、上記低温値を入力装置121から制御装置120に入力し、制御装置120からの信号により第2室温調節装置105を作動させることで、第2追熟加工室103の雰囲気温度の調節、二酸化炭素濃度の調節等を行うようにしてもよい。
【0057】
本実施形態では、降温工程を繰り返す周期を呼吸活性化工程を繰り返す周期よりも長くし、第2追熟加工室103において循環装置110の何れかにより雰囲気が循環されている領域においてバナナの果肉温度を降下させて降温工程を実行する間に、第1追熟加工室102においてバナナの呼吸を活性化させて呼吸活性化工程を実行すると共に、この呼吸活性化工程により呼吸が活性化されたバナナの果肉温度を降下させる降温工程を、第2追熟加工室103における循環装置110の残りの何れかにより雰囲気が循環されている領域で開始する。これにより、あるロットのバナナにつき第1追熟加工室102で加工した後に第2追熟加工室103で加工している間に、第1追熟加工室102で別のロットのバナナにつき加工した後に、第2追熟加工室103で加工を開始することが可能になり、生産性向上を図ることができる。
【0058】
図15は、第2実施形態のシステムによりバナナを追熟加工する場合の各追熟加工室102、103のバナナ周囲の雰囲気温度、果肉温度の目標値、および果肉温度の実測値と、経過時間との関係を示す。図15における横軸は時刻、縦軸は温度、実線aは第1追熟加工室102の雰囲気温度である高温値、実線bは第2追熟加工室103の雰囲気温度である低温値、一点鎖線cは果肉温度の目標値、破線dは果肉温度の実測値を示す。図15においては、時刻t1において呼吸活性化工程が開始され、時刻t2において降温工程が開始され、時刻t3において降温工程が終了するものとされる。なお、図15は第1追熟加工室102から第2追熟加工室103へのバナナの移送時間は無視して作図されている。
【0059】
図15において領域Aで示す部分では、図16Aの拡大図に示すように、降温工程における果肉温度の実測値dが目標値cよりも図中δで示す偏差だけ小さい。この場合、実測値dが目標値cに追従するように、第2追熟加工室103のバナナ周囲において循環装置110により循環される雰囲気流量が少なくされ、場合によっては零とされ、バナナの呼吸熱の蓄積による果肉温度の上昇が図られる。図15において領域Bで示す部分では、図16Bの拡大図に示すように、降温工程における果肉温度の実測値dが目標値cよりも図中δで示す偏差だけ大きい。この場合、実測値dが目標値cに追従するように、第2追熟加工室103のバナナ周囲において循環装置110により循環される雰囲気流量が多くされ、果肉温度の低下が図られる。すなわち、果肉温度の目標値cと実測値dとの偏差δをなくすように雰囲気流量が制御され、例えば偏差δに応じて循環装置110におけるファン110bの駆動電力を変化させるフィードバック制御が行われる。雰囲気流量の初期値は、降温工程の開始時において果肉温度の実測値dが目標値cに一致した時の実験データや過去データを用いればよい。なお、バナナの熟成を適正に抑制できれば、果肉温度の目標値cと実測値dとの偏差δの大きさが一定の設定値以下である場合は、雰囲気流量を変化させないようにしてもよい。
【0060】
なお、本実施形態においては、呼吸活性化工程を行う第1追熟加工室102の雰囲気流量は一定としている。これは、呼吸活性化工程においてはバナナ周囲の雰囲気温度を低温値よりも高い高温値に調節して果肉温度が上昇すれば時間経過による上昇の仕方は特に問題とされないことによるが、呼吸活性化工程においても果肉温度の実測値が目標値に追従するように雰囲気流量を制御してもよい。また、ファン110bの回転方向を降温工程の途中に反転させることで、バナナ周囲における雰囲気の流動方向を均一化し、果肉温度が不均一に降下するのを抑制するのが好ましく、反転させる時点は予め設定しておけばよい。果肉温度を均一に降下させる上では、ファン110bの回転速度の大きさを、予め定めた設定時間だけ零とする期間を設けるのがより好ましく、さらに好ましくは、回転方向を反転させる前にファン110bの回転速度の大きさを零にすればよい。
【0061】
上記第2実施形態によれば、第1追熟加工室102の雰囲気温度が少なくともバナナ周囲において一定の高温値になるように調節されている状態で、バナナの呼吸を活性化させるために果肉温度を上昇させる呼吸活性化工程が行われる。しかる後に、第2追熟加工室103の雰囲気温度が少なくともバナナ周囲において一定の低温値になるように調節されている状態で、呼吸を活性化されたバナナの果肉温度を、雰囲気流量を変化させることで制御する降温工程が行われる。すなわち、呼吸を活性化されたバナナの果肉温度は呼吸熱により上昇しようとするが、一定の低温値になるよう調節している雰囲気流量を制御することで、果肉温度を低下させる。この際、果肉温度が高く低温値との差が大きい時は、雰囲気流量が少なくても熟成を十分に抑制できる。すなわち、降温工程当初においてバナナの呼吸が活発で果肉温度が高くても、第2追熟加工室103の雰囲気温度は低温値に調節されているので、第2追熟加工室103の雰囲気の実測温度と果肉温度の差は大きくなる。よって、バナナ周囲の雰囲気を流動させることができれば、バナナ表面が一定の低温値とされた雰囲気に接して果肉温度を速やか且つ均一に降下させることができる。よって、従来のように大流量の循環気流を常に発生させる装置を不要にでき、追熟加工に必要な設備コストを低減し、設備のメンテナンスを容易にし、生産性を向上させ、バナナの追熟加工コストを大幅に低減できる。
【0062】
本発明は上記各実施形態に限定されない。例えば、追熟加工室の構造は特に限定されず、上記実施形態では追熟加工室における複数の領域にそれぞれ循環装置を配置したが、追熟加工室における単一の領域に単一の循環装置を配置するものでもよい。また、従来の追熟加工装置における追熟加工室において本発明方法を実施し、そのために呼吸活性化工程と降温工程において追熟加工室における全域の雰囲気流量を制御してもよいが、本発明を実施する上では降温工程において雰囲気流量を、少なくともバナナ周囲において制御できれば足りる。
【0063】
上記各実施形態では呼吸活性化工程を行う追熟加工室と降温工程を行う追熟加工室とは相異なるものとされているが、図17の変形例に示すように複数の循環装置110を配置した一つの追熟加工室140において呼吸活性化工程と降温工程とを行うようにしてもよい。この場合、追熟加工室140の雰囲気温度を一つの室温調節装置141により呼吸活性化工程では高温値になるように調節し、降温工程では低温値になるように調節すればよい。なお、図17においては循環装置110、制御装置120として第2実施形態のものを記載したが、第1実施形態のものであってもよい。
【0064】
上記実施形態の追熟加工用システムは、専用の追熟加工室と室温調節装置を含まず、室温調節装置を有する保温倉庫等を追熟加工室として利用するものとしたが、本発明の追熟加工用システムは専用の追熟加工室や室温調節装置を備えていてもよい。
【0065】
バナナの追熟加工に際して、上記実施形態にはない構成を付加してもよく、例えば、追熟加工室内の湿度を高める加湿装置と、追熟加工室内の湿度を検出する湿度センサを制御装置に接続し、検出湿度が入力装置から入力される設定湿度以下にならないように加湿装置を制御する構成を付加してもよい。
【符号の説明】
【0066】
2、3、102、103、140…追熟加工室、4、5、104、105、141…室温調節装置、10、110…循環装置、10g、110b…ファン、20、120…制御装置(記憶手段、制御手段)、22、122…温度センサ。
【技術分野】
【0001】
本発明はバナナの追熟加工方法と、その方法を実施するための追熟加工用システムに関する。
【背景技術】
【0002】
バナナは植物防疫法により成熟した状態での輸入が規制されていることから、低温で輸入された未成熟バナナを追熟加工により成熟させる必要がある。バナナはクライマクテリック型果実であることから、追熟加工により未成熟のバナナの呼吸の活性化(クライマクテリック・ライズ)を引き出すことで、果皮を黄化させ、果肉を軟化させている。また、呼吸を活性化されたバナナを高温の状態に保持すると、果皮の劣化が生じたり、熟成が急速に進行して商品として販売できる期間が短くなり、急速に冷却すると果肉の糖度を十分に向上させることができず、冷却し過ぎると低温障害が生じる。そのためバナナの追熟加工は、追熟加工室内で未成熟のバナナの果肉温度を上昇させることで、バナナの呼吸を活性化させる呼吸活性化工程と、その呼吸を活性化されたバナナの果肉温度を時間をかけて設定値まで降下させることで、バナナの熟成を抑制する降温工程を有する。
【0003】
従来、追熟加工に際してバナナの果肉温度を制御するため、追熟加工室の雰囲気温度を変化させていた。図20は従来の追熟加工方法に関するものであり、一点鎖線αは追熟加工室の雰囲気の予め定めた目標温度と時間との関係、実線βは追熟加工室の雰囲気の実測温度と時間との関係、破線γはバナナの果肉温度の実測値と時間との関係を示す。すなわち、従来の追熟加工の降温工程においては、呼吸を活性化されたバナナの果肉温度を降下させるため、追熟加工室の雰囲気の目標温度αを経過時間に対応して予め設定し、その目標温度αに追従するよう追熟加工室の雰囲気温度βを変化させていた。(特許文献1〜4参照)。
【0004】
通常、バナナは追熟加工室において多数のカートンに収納された状態で追熟加工されることから、従来のように追熟加工室の雰囲気の実測温度を目標温度に追従させる場合、各カートンそれぞれにおけるバナナ周囲の雰囲気温度が位置によって不均一に変化するのを抑制する必要がある。そこで、例えば図18、図19に示すような追熟加工装置201が汎用されている。この追熟加工装置201は、追熟加工室202を構成するハウジング203と、追熟加工室202の冷房、暖房、換気を行なうための室温調節装置204と、ハウジング203の天井部に吊り下げ状に取り付けられた左右一対のエアバッグ205を有する。ハウジング203の前部に、バナナを収納したカートン206を出し入れするための扉207が設けられ、扉207を閉じることで追熟加工室202内は外気温度の影響を殆ど受けない略密閉された空間となる。追熟加工室202の両エアバッグ205の下方それぞれにおいて、複数のカートン206はパレット208を介して略隙間なく積層され、左右に間隔をおいて配置された一対のカートン積層体を構成する。各エアバッグ205は空気供給により膨張され、各カートン積層体とハウジング3の天井との間の隙間がなくされる。各カートン206には雰囲気流通用の孔206aが形成される。室温調節装置204は、追熟加工室202の天井近傍に配置された循環ファン204aを有し、追熟加工室202の中央領域の雰囲気を一定流量で吸引して左右領域に排出する。これにより、追熟加工室202における中央領域は左右領域よりも圧力が低下して差圧が生じ、その差圧により矢印で示す一定流量の循環気流が生じる。また、エアバッグ205により差圧の低下が抑制される。これにより、室温調節装置204により追熟加工室の雰囲気温度を変化させた時に、バナナ周囲の雰囲気温度が位置によって不均一に変化するのを抑制できる。また、上記のようなエアバッグに代えて、クッションと布からならベッド、積層されたカートンを覆うシート、追熟加工室内に突出可能なシャッター等を用いて追熟加工室内の差圧の低下を抑制し、雰囲気温度の変化が不均一になるのを抑制する追熟加工装置も従来から用いられている(特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−171901号公報
【特許文献2】特開平4−356158号公報
【特許文献3】特開昭60−217859号公報
【特許文献4】特開平2−299541号公報
【特許文献5】特開2003−9835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のように降温工程においてバナナの果肉温度を降下させるために追熟加工室の雰囲気温度を変化させる場合、雰囲気流量が少ないと果肉温度を均一に変化させるのが困難である。そのため、従来は大流量の循環気流を常に発生させることが必要とされていた。その結果、従来の追熟加工装置は非常に高価なものになり、メンテナンスに手間を要し、バナナ収納容量を大きくするための大型化が困難で、生産性を向上させるのが困難で、バナナの追熟加工コストの削減を阻害する大きな要因であった。本発明は、このような問題を解決することのできるバナナの追熟加工方法および追熟加工用システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、追熟加工室内で未成熟のバナナの呼吸を活性化させるために果肉温度を上昇させる呼吸活性化工程と、前記呼吸活性化工程の後に、前記追熟加工室内または異なる追熟加工室内で、呼吸を活性化されたバナナの熟成を抑制するために果肉温度を降下させる降温工程とを備えるバナナの追熟加工方法に適用される。
本発明によるバナナの追熟加工方法は、降温工程が行われる前記追熟加工室の雰囲気温度を、少なくともバナナ周囲において、降温工程の間にわたり、バナナの熟成を抑制するのに適する予め設定した一定の低温値になるように調節し、降温工程が行われる前記追熟加工室の雰囲気流量を、少なくともバナナ周囲において、降温工程の間にわたり、バナナの果肉温度が時間経過により前記低温値に近づくように制御することを特徴とする。
本発明によれば、呼吸活性化工程が行われたのと同一あるいは異なる追熟加工室内で、少なくともバナナ周囲の雰囲気温度を一定の低温値になるように調節している状態で、呼吸を活性化されたバナナの熟成を抑制するために果肉温度を降下させる降温工程が行われる。その降温工程においてバナナの果肉温度を降下させるため、降温工程が行われる追熟加工室の雰囲気流量を、少なくともバナナ周囲において制御する。すなわち、呼吸を活性化されたバナナの果肉温度は呼吸熱により上昇しようとするが、一定の低温値になるよう調節している雰囲気流量を制御することで、果肉温度を次第に低下させる。この際、バナナの呼吸が活発で果肉温度が高く低温値との差が大きい時は、雰囲気流量が少なくても熟成を十分に抑制できる。よって、従来のように大流量の循環気流を常に発生させる装置を不要にできる。
【0008】
降温工程が行われる追熟加工室の扉は、バナナ収納カートンの出し入れ等のために開閉される場合がある。そのため、追熟加工室の扉の近傍や、外気温度の変動の大きい時期においては、バナナ周囲の雰囲気温度は低温値になるように調節されていても大きく変動する可能性がある。そのような温度変動が小さかったり短時間であれば問題はないが、大きく長時間になると雰囲気流量を制御するだけではバナナの熟成を適正に抑制できなくなる可能性がある。そのため、降温工程が行われる前記追熟加工室の雰囲気温度を、少なくともバナナ周囲において、前記低温値になるように調節することで、降温工程の間にわたる時間平均で前記低温値の±1℃の範囲に保持するのが好ましい。通常は、降温工程が行われる前記追熟加工室の雰囲気温度を、少なくともバナナ周囲において、前記低温値になるように調節することで、降温工程の間にわたる時間平均で13℃〜15℃の範囲に保持するのが、雰囲気流量の制御によりバナナの熟成を抑制する上で好ましい。前記低温値は、呼吸を活性化されたバナナの熟成を雰囲気流量の制御により抑制するのに適した値であれば特に限定されず、バナナの種類、果肉固さ、鮮度、環境温度、商品として販売する期間等に応じて適宜選定すればよいが、13℃〜16℃の温度範囲から選定するのが好ましい。例えば、果皮が充分に黄化する前に追熟加工を完了するような場合の低温値は、充分に黄化させる場合の低温値よりも高くする。
【0009】
本発明方法において、降温工程が行われる前記追熟加工室に、バナナ周囲の雰囲気をファンの回転により循環させる循環装置を配置し、降温工程におけるバナナの果肉温度の標準範囲を、降温工程の経過時間に対応付けて予め設定し、前記ファンの回転速度と降温工程の経過時間との関係を、バナナの果肉温度が、降温工程の経過時間に対応した前記標準範囲内に保持されるように予め設定し、前記ファンの回転速度を前記関係に従い変化させることで、降温工程が行われる前記追熟加工室の少なくともバナナ周囲における雰囲気流量を制御するのが好ましい。
その果肉温度の標準範囲は、例えば熟成が過度に抑制されたり果皮の傷みが生じるといったことのない適正範囲になるように、実験や経験則に基づき降温工程の経過時間に対応付けて予め設定すればよい。これにより、設定した関係に従ってファンの回転速度を降温工程の経過時間に応じて変化させるだけで、バナナの熟成を適正に抑制できる。さらに、降温工程当初においては果肉温度と低温値との差が大きいため、ファンの回転速度の大きさが小さくても果肉温度を速やか且つ均一に降下させることができる。一方、果肉温度の低下に伴ってファンの回転速度の大きさを増大させることで、果肉温度と低温値との差が小さくても果肉温度を均一に降下させることができる。これにより、ファンの駆動に要するエネルギーが不必要に増大するのを防止し、省エネルギー化を図ってバナナの追熟加工コストを低減できる。
この場合、降温工程におけるバナナの果肉温度の実測値を時系列に求め、求めた実測値が前記標準範囲から外れる時、前記標準範囲になるように前記ファンの回転速度の大きさを変化させるのが好ましい。これにより、果肉温度が追熟加工室の扉の開閉等によって前記標準範囲から外れた場合、ファンの回転速度の大きさを変化させることで前記標準範囲内に戻し、バナナの熟成を適正に抑制することができる。
【0010】
本発明方法において、降温工程におけるバナナの果肉温度の目標値を、果肉温度が時間経過により前記低温値に近づいてバナナの熟成が抑制されるように、経過時間に対応して予め設定し、降温工程におけるバナナの果肉温度の実測値を時系列に求め、降温工程が行われる前記追熟加工室のバナナ周囲における雰囲気流量を、前記実測値が前記目標値に追従するように制御してもよい。これにより、降温工程における果肉温度の実測値が目標値よりも低ければ、低温値は目標値以下であることから、低温値になるように調節された雰囲気流量を少なくし、場合によっては零とすることで、果肉温度を上昇させることができる。また、果肉温度の実測値が目標値よりも高ければ、目標値以下の低温値になるように調節された雰囲気流量を多くすることで、果肉温度を低下させることができる。
【0011】
本発明方法において、前記ファンの回転速度の方向、すなわち回転方向を降温工程の途中に反転させるのが好ましい。これにより、バナナ周囲における雰囲気の流動方向を均一化し、果肉温度が不均一に降下するのを抑制できる。また、前記ファンの回転速度の大きさを、予め定めた設定時間だけ零とする期間を設けることでも、バナナ周囲における雰囲気の流動方向を均一化できる。さらに果肉温度を均一に降下させる上では、前記ファンの回転速度の大きさを、回転方向を反転させる前に予め定めた設定時間だけ零とする期間を設けるのが好ましい。
【0012】
本発明においては、呼吸活性化工程が行われる前記追熟加工室の雰囲気温度を、少なくともバナナ周囲において、呼吸活性化工程の間にわたり、前記低温値よりも高くバナナの呼吸を活性化させるのに適する予め設定した一定の高温値になるように調節するのが好ましい。これにより、降温工程が行われるのと同一の追熟加工室、あるいは、降温工程が行われるのとは異なる追熟加工室に、エチレンを投入して未成熟のバナナの果肉温度を上昇させることで呼吸を活性化させることができる。
【0013】
雰囲気温度の高温値への調節は、呼吸活性化工程においてバナナの呼吸を活性化させることができればよいことから、呼吸活性化工程が行われる前記追熟加工室の雰囲気温度を、少なくともバナナ周囲において、前記高温値になるように調節することで、呼吸活性化工程の間にわたる時間平均で前記高温値の±1℃の範囲に保持すれば足りる。前記高温値は未成熟のバナナの呼吸の活性化を引き出すことができれば特に限定されず、バナナの種類、果肉固さ、鮮度、環境温度等に応じて適宜選定すればよいが、19℃〜24℃の温度範囲から選定するのが好ましく、例えば高地栽培バナナでは低地栽培バナナよりも高くするのが好ましい。
【0014】
本発明においては、呼吸活性化工程を行う追熟加工室において降温工程も行なうようにしてもよいし、呼吸活性化工程が行われる追熟加工室と降温工程が行われる追熟加工室とを相異なるものとしてもよい。生産性向上を図る上では、呼吸活性化工程が行われる前記追熟加工室と、降温工程が行われる前記追熟加工室とを相異なるものとし、降温工程が行われる前記追熟加工室のバナナ収納容量を、呼吸活性化工程が行われる前記追熟加工室のバナナ収納容量よりも大きくし、降温工程が行われる前記追熟加工室における複数の領域それぞれにおいて、バナナを配置すると共に配置したバナナの果肉温度が前記低温値に近づくように雰囲気流量を制御するのが好ましい。これにより、降温工程を繰り返す周期を、呼吸活性化工程を繰り返す周期よりも長くし、降温工程が行われる追熟加工室における何れかの領域でバナナの果肉温度を降下させて降温工程を実行する間に、呼吸活性化工程が行われる追熟加工室においてバナナの呼吸を活性化させて呼吸活性化工程を実行すると共に、この呼吸活性化工程により呼吸が活性化されたバナナの果肉温度を降下させる降温工程を、降温工程が行われる追熟加工室における残りの何れかの領域で開始できる。
呼吸活性化工程が行われる追熟加工室と降温工程が行われる追熟加工室とを相異なるものとする場合、呼吸活性化工程を従来と同様の追熟加工装置を用いて従来と同様に行ない、既存設備の有効利用を図るようにしてもよい。
【0015】
本発明のバナナの追熟加工用システムは、降温工程が行われる前記追熟加工室において、バナナ周囲の雰囲気をファンの回転により循環させる循環装置と、前記ファンの回転速度を変化させることで、前記循環装置により循環される雰囲気流量を制御する制御手段とを備えることを特徴とする。本発明の追熟加工用システムは、本発明のバナナの追熟加工方法を実施するために用いることができる。なお、本発明システムは、呼吸活性化工程が行われる前記追熟加工室の雰囲気温度を、少なくともバナナ周囲において、前記高温値になるように調節する第1室温調節装置と、降温工程が行われる前記追熟加工室の雰囲気温度を、少なくともバナナ周囲において、前記低温値になるように調節する第2室温調節装置とを備えていてもよい。さらに本発明システムは、呼吸活性化工程が行われる追熟加工室と降温工程が行われる追熟加工室とを備えていてもよい。
【0016】
本発明のバナナの追熟加工用システムにおいて、前記ファンの回転速度と、降温工程の経過時間との予め設定した関係を記憶する記憶手段を備え、前記記憶手段に記憶された関係に従い、前記ファンの回転速度が前記制御手段により制御されるのが好ましい。これにより、その関係に従ってファンの回転速度を時間経過に応じて変化させるだけで、バナナの熟成を適正に抑制できる。
この場合、降温工程におけるバナナの果肉温度の実測値を時系列に求める温度センサと、降温工程におけるバナナの果肉温度の実測値を時系列に求める温度センサと、前記ファンの回転速度の大きさを前記制御手段による制御途中に変化させるオーバーライド信号を、前記制御手段に入力する入力手段とを備えるのが好ましい。これにより、果肉温度が前記標準範囲から外れた場合、ファンの回転速度を変化させるだけで前記標準範囲内に戻し、果肉温度の降下速度が過大になったり過少になるのを防止してバナナの熟成を適正に抑制できる。
【0017】
本発明方法において、呼吸活性化工程が行われる追熟加工室と降温工程が行われる追熟加工室とを相異なるものとする場合、本発明のバナナの追熟加工用システムは、呼吸活性化工程が行われる前記追熟加工室へエチレンを投入する装置を備えるのが好ましい。また、本発明方法において、呼吸活性化工程を行う追熟加工室において降温工程も行なう場合、本発明のバナナの追熟加工用システムは、前記追熟加工室へエチレンを投入する装置を備え、前記追熟加工室内の雰囲気温度を高温値になるように調節する室温調節装置により、前記追熟加工室内の雰囲気温度を低温値になるように調節するのが好ましい。
【0018】
本発明方法において、呼吸活性化工程を行う追熟加工室において降温工程も行なう場合、追熟加工室として汎用の保温倉庫等を用いてもよいし、追熟加工専用の追熟加工室を用いてもよい。また、本発明方法において、呼吸活性化工程が行われる追熟加工室と降温工程が行われる追熟加工室とを相異なるものとする場合、降温工程が行われる追熟加工室として汎用の保温倉庫等を用いてもよいし、降温工程専用の追熟加工室を用いてもよく、また、呼吸活性化工程が行われる追熟加工室として汎用の保温倉庫等を用いてもよいし、呼吸活性化工程専用の追熟加工室を用いてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、一般的なメンテナンスが容易な倉庫を追熟加工室として利用でき、大型化が容易で、生産性を向上でき、追熟加工コストを大幅に低減できるバナナの追熟加工方法と追熟加工用システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態に係るバナナの追熟加工用システムの構成図。
【図2】本発明の第1実施形態に係る循環装置の正面図。
【図3】本発明の第1実施形態に係る循環装置の側面図。
【図4】図3のIV−IV線断面図。
【図5】本発明の第1実施形態に係る循環装置の作動状態での側面図。
【図6】本発明の第1実施形態に係る循環装置の作動状態での正面図。
【図7】本発明の第1実施形態に係るバナナの追熟加工用システムにおける制御構成を示す図。
【図8】本発明の第1実施形態の循環装置により雰囲気流量を制御して実行した降温工程における、バナナの果肉温度およびモータ駆動用周波数と、経過時間との関係を示す図。
【図9】本発明の第2実施形態に係るバナナの追熟加工用システムの構成図。
【図10】本発明の第2実施形態に係る循環装置の斜視図。
【図11】本発明の第2実施形態に係る循環装置の作動状態での平面図。
【図12】本発明の第2実施形態に係る循環装置の作動状態での正面図。
【図13】本発明の第2実施形態に係る循環装置の作動状態での側面図。
【図14】本発明の第2実施形態に係るバナナの追熟加工用システムにおける制御構成を示す図。
【図15】本発明方法によりバナナを追熟加工する場合におけるバナナ周囲の雰囲気温度、果肉温度の目標値、および果肉温度の実測値と、経過時間との関係の説明図。
【図16A】図15の領域Aの拡大図。
【図16B】図15の領域Bの拡大図。
【図17】本発明の変形例に係るバナナの追熟加工用システムの構成を示す図。
【図18】従来の追熟加工装置の正断面図。
【図19】従来の追熟加工装置の側断面図。
【図20】従来の方法によりにバナナを追熟加工する場合における追熟加工室の雰囲気の実測温度、雰囲気の目標温度、および果肉温度の実測値と、経過時間との関係を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明のバナナの追熟加工方法を実施するための第1実施形態に係る追熟加工用システム1の構成を示す。このシステム1により、第1追熟加工室2内において、未成熟のバナナの呼吸を活性化させるために果肉温度を上昇させる呼吸活性化工程が行われ、この呼吸活性化工程の後に、第2追熟加工室3内において、呼吸を活性化されたバナナの熟成を抑制するために果肉温度を降下させる降温工程が行われる。本実施形態では、第1追熟加工室2のバナナ収納容量よりも第2追熟加工室3のバナナ収納容量が大きくされ、第1追熟加工室2の数(図示例では2)は第2追熟加工室3の数(図示例では1)よりも多くされ、第2追熟加工室3のバナナ収納容量合計は全ての第1追熟加工室2のバナナ収納容量合計以上とされている。なお、各追熟加工室2、3の数は特に限定されない。また、第1追熟加工室と第2追熟加工室とでバナナ収納容量を等しくしてもよい。あるいは、第2追熟加工室のバナナ収納容量よりも第1追熟加工室のバナナ収納容量を大きくすると共に第2追熟加工室の数を第1追熟加工室の数よりも多くし、全第2追熟加工室のバナナ収納容量合計を全第1追熟加工室のバナナ収納容量合計以上としてもよい。
【0022】
第1追熟加工室2は、室内の雰囲気である空気の温度を調節する第1室温調節装置4を備え、また、室内にエチレン投入装置24によってエチレンが投入される。エチレン投入装置24は公知のものを用いることができる。第1追熟加工室2は、バナナを収納したカートンを出し入れするための扉2′を有し、扉2′を閉じることで外気温度の影響を殆ど受けない略密閉された空間を構成し、例えば断熱材により覆われた保温倉庫により構成できる。
【0023】
第1室温調節装置4は、第1追熟加工室2の雰囲気温度を、呼吸活性化工程の間にわたり、一定の高温値になるように調節する。その高温値は、バナナの呼吸を活性化させるのに適する値になるように予め設定され、19℃〜24℃の温度範囲から選定するのが好ましく、本実施形態では20℃とされる。第1室温調節装置4による雰囲気温度の一定の高温値への調節精度は、呼吸活性化工程においてバナナの呼吸を活性化させることができる程度であればよく、高温値になるように調節することで、少なくともバナナ周囲において、呼吸活性化工程の間にわたる時間平均で高温値の±1℃の範囲に雰囲気温度を保持できるのが好ましい。すなわち、第1追熟加工室2の雰囲気温度は、呼吸活性化工程への実質的な影響がなければ換気等の際に高温値から多少変動してもよい。第1室温調節装置4は、第1追熟加工室2の雰囲気温度を高温値になるように調節できれば構成は限定されず、例えば室内の冷房、暖房機能を有し、天井や側壁等に分散する開口を介して温度調節された雰囲気を吹き出し、また、室内の雰囲気と外気との換気機能も有する公知の空調装置を用いることができる。
【0024】
第2追熟加工室3は、室内の雰囲気である空気の温度を調節する第2室温調節装置5を備える。第2追熟加工室3は、バナナを収納したカートンを出し入れするための扉3′を有し、扉3′を閉じることで外気温度の影響を殆ど受けない略密閉された空間を構成し、例えば断熱材により覆われた保温倉庫により構成できる。
【0025】
第2室温調節装置5は、第2追熟加工室3の雰囲気温度を降温工程の間にわたり一定の低温値になるように調節する。その低温値は、前記高温値よりも低くバナナの熟成を抑制するのに適する値になるように予め設定され、13℃〜16℃の温度範囲から選定するのが好ましく、本実施形態では14℃とされる。第2室温調節装置5による雰囲気温度の一定の低温値への調節精度は、降温工程においてバナナの果肉温度を雰囲気流量の変化のみにより制御することで、バナナの熟成を抑制できる程度であればよい。第2追熟加工室3の雰囲気温度は、バナナの搬出入や換気等の際に変動する可能性があるが、降温工程への実質的な影響がなければバナナの搬出入や換気等の際に低温値から多少変動してもよい。よって、雰囲気流量を制御することでバナナの熟成を適正に抑制する上では、第2追熟加工室3の雰囲気温度を、少なくともバナナ周囲において低温値になるように調節することで、降温工程の間にわたる時間平均で低温値の±1℃の範囲に保持するのが好ましく、特に13℃〜15℃の範囲に保持するのが好ましい。第2室温調節装置5は、第2追熟加工室3の雰囲気温度を低温値になるように調節できれば構成は限定されず、例えば室内の冷房、暖房機能を有し、天井や側壁等に分散する開口を介して温度調節された雰囲気を吹き出し、また、室内の雰囲気と外気との換気機能も有する公知の空調装置を用いることができる。
【0026】
各追熟加工室2、3における複数の領域それぞれに、バナナ周囲の雰囲気を循環させる循環装置10が配置されている。図2〜図4に示す本実施形態の各循環装置10はフレーム10Aと送風機10Bを有する。フレーム10Aは、矩形板状のベース10aと天板10bの四隅を支柱10cにより連結することで形成されている。フレーム10Aにおける左右(図2、図4における左右)の支柱10cの間は、前後一対の開口部10dとされている。フレーム10Aにおける前後(図3における左右)の支柱10cの間それぞれは、遮蔽板10eにより閉鎖されている。
【0027】
送風機10Bは、天板10b上に取り付けられたケーシング10fと、ケーシング10fに内蔵されたモータにより縦軸中心に駆動されるファン10gを有する。ケーシング10fの上部に上部流通孔(図示省略)が形成され、ケーシング10fの下部とフレーム10Aの天板10bに下部流通孔10hが形成されている。
【0028】
本実施形態においては、図2、図4に示すように、複数の循環装置10が互いに遮蔽板10eを介して接することで一列に並列され、図1に示すように、その循環装置10の列が第1追熟加工室2に2列、第2追熟加工室3に8列配置される。なお、各循環装置10の遮蔽板10eを着脱可能とし、一列に配置された循環装置10における両端の循環装置10の外端にのみ遮蔽板10eを取り付けてもよい。
【0029】
図5、図6に示すように、各追熟加工室2、3における各循環装置10の前後の床上に、バナナを収納した複数のカートン11がパレット12を介して略隙間なく積層され、カートン積層体13が構成される。カートン積層体13は循環装置10の支柱10cの前後面に略隙間なく接するように配置され、各循環装置10の前後開口部10dはカートン積層体13により覆われる。各カートン11は直方体形状で、前後左右壁に雰囲気流通用の孔11aが形成されている。これにより、各追熟加工室2、3における複数の領域それぞれにバナナが配置される。
【0030】
ファン10gの一方向への回転より、追熟加工室2、3内の雰囲気がケーシング10fの上部流通孔を介して吸引され、下部流通孔10hを介してフレーム10A内に導かれ、フレーム10Aの前後開口部10dを介して排気される。ファン10gの他方向への回転より、前後開口部10dを介してフレーム10A内に導かれれた追熟加工室2、3内の雰囲気が、ケーシング10fの下部流通孔10hを介して吸引された後に、ケーシング10fの上部流通孔を介して排気される。すなわち循環装置10は、追熟加工室2、3において、バナナ周囲の雰囲気をファン10gの回転により循環させることができ、また、そのファン10gの回転速度の変化により、その循環される雰囲気流量を変化させることができる。本実施形態では、ファン10gを回転させるモータの駆動電力を駆動周波数に応じて変化させればファン10gの回転速度が変化し、その回転速度は雰囲気流量に対応することから、追熟加工室2、3のバナナ周囲における雰囲気流量を制御できる。また、ファン10gの回転速度として、回転速度の大きさだけでなく回転速度の方向、すなわち回転方向を変化させることが可能とされ、ファン10gの回転方向を反転させたり、回転速度の大きさをを設定時間だけ零にすることができる。
【0031】
ファン10gの一方向への回転より、追熟加工室2、3内の雰囲気がフレーム10A内に導かれた後に前後開口部10dから排気されるので、フレーム10A内の圧力がカートン積層体13の周囲領域の圧力よりも高くなる。この圧力差により、追熟加工室2、3の少なくともバナナ周囲における雰囲気が、図5、図6における矢印で示す方向に流動することで循環する。また、ファン10gの他方向への回転より、追熟加工室2、3内の雰囲気がフレーム10A内に導かれた後にケーシング10fの上部流通孔を介して排気されるので、フレーム10A内の圧力がカートン積層体13の周囲領域の圧力よりも低くなる。この圧力差により、追熟加工室2、3の少なくともバナナ周囲における雰囲気が、図5、図6における矢印で示す方向とは逆方向に流動することで循環する。その循環する雰囲気流量はファン10gの回転速度の変化により変化する。
【0032】
図7に示すように、各循環装置10はコンピュータにより主構成される制御装置20に接続される。さらに制御装置20に、第1室温調節装置4、第1追熟加工室2の室温を時系列に求める室温センサ4a、第2室温調節装置5、第2追熟加工室3の室温を時系列に求める室温センサ5a、キーボード等により構成される入力装置21、呼吸活性化工程および降温工程におけるバナナの果肉温度の実測値を時系列に求める温度センサ22、第1追熟加工室2内の二酸化炭素濃度の実測値を求めるCO2 センサ23a、第2追熟加工室3内の二酸化炭素濃度の実測値を求めるCO2 センサ23b、第1追熟加工室2にエチレンを投入するエチレン投入装置24、表示装置やプリンタ等により構成される出力装置25が接続される。なお、温度センサ22は、追熟加工中の全てのバナナの果肉温度を求める必要はなく、一部の果肉温度を求めるもので足りる。また、第1追熟加工室2として一定容積の追熟加工専用の室を用いるのではなく、様々な容積の保温倉庫等を利用する場合、第1追熟加工室2内のエチレン濃度を測定するエチレン濃度センサを制御装置20に接続し、必要以上に第1追熟加工室2内のエチレン濃度が高くならないようにエチレン投入装置24を制御できるようにするのがよい。
【0033】
制御装置20は、第1追熟加工室2における循環装置10のファン10gの回転速度と、呼吸活性化工程の経過時間との予め設定した関係を記憶する記憶手段として機能する。この記憶される関係は、呼吸活性化工程の実行によりバナナの果肉温度が時間経過により上記高温値に近づき、バナナの呼吸が適正に活性化されるように実験により予め設定される。この記憶された関係に従いファン10gの回転速度が制御されることで、第1追熟加工室2の少なくともバナナ周囲における雰囲気流量が制御される。本実施形態の呼吸活性化工程においては、ファン10gの回転速度を変化させず、第1追熟加工室2の少なくともバナナ周囲における雰囲気流量は一定としている。
【0034】
また、制御装置20は、第2追熟加工室3における循環装置10のファン10gの回転速度と、降温工程の経過時間との予め設定した関係を記憶する記憶手段として機能する。なお、記憶される回転速度は、回転速度の大きさと回転速度の方向を含み、また、回転速度の大きさが零の場合も含む。この記憶される関係は、降温工程の実行によりバナナの果肉温度が時間経過により上記低温値に近づくように予め設定される。さらに本実施形態においては、その記憶される関係は、降温工程におけるバナナの果肉温度が、降温工程の経過時間に対応した標準範囲内に保持されるように予め設定される。制御装置20は、この記憶された関係に従いファン10gの回転速度を変化させることで、第2追熟加工室3における循環装置10が配置された複数の領域それぞれにおいて、少なくともバナナ周囲で循環装置10により循環される雰囲気流量を制御する制御手段として機能する。
【0035】
本実施形態では、ファン10gの回転速度と降温工程の経過時間との関係として、ファン10gの駆動用モータを駆動する際の駆動周波数と、ファン10gの一方向への回転時間と、他方向への回転時間と、回転速度の大きさを零とする時間とが、降温工程の開始時点からの経過時間に対応付けられて制御装置20に記憶される。
その駆動周波数はファン10gの回転速度の大きさに対応する。例えば図8のように横軸を降温工程の開始からの経過時間、右縦軸を駆動周波数とした場合、破線Eで示すように時間経過に伴い階段状に変化する駆動周波数が記憶される。
また、ファン10gの一方向への回転時間と、他方向への回転時間と、回転速度の大きさを零とする時間とは、例えば、一方向への回転時間が10分、次に他方向への回転時間が10分、次に回転速度の大きさを零とする時間が10分といった値が、降温工程の開始から時間経過に伴い順次繰り返されるように経過時間に対応付けられて記憶される。
制御装置20は、降温工程における時間経過に応じて、その時点でファン10gが駆動されるか回転速度が零とされるかを判断し、駆動される場合はその時点に対応する記憶された駆動周波数と記憶された回転方向に応じてファン10gを駆動し、回転速度が零とされる場合はファン10gを停止させる。これにより、降温工程の開始時点からファン10gは一方向への10分間駆動、他方向への10分間駆動、10分間駆動停止の動作パターンが繰り返される。なお、ファン10gの具体的な駆動時間や駆動停止過時間は10分間に限定されるものではない。また、ファン10gの駆動停止タイミングも回転方向の反転前に限定されず、例えば、降温工程の開始時点からファン10gは一方向への10分間駆動、10分間駆動停止、一方向への10分間駆動、他方向への10分間駆動、10分間駆動停止、他方向への10分間駆動の動作パターンが繰り返されるようにしてもよい。さらに、ファン10gを一方向へのみ回転させるようにしたり、あるいは、ファン10gを一方向への回転直後に他方向へ回転させることによって駆動停止時間を実質的になくしてもよい。
降温工程の開始から終了までの時間は、熟成が過度に抑制されたり果皮が傷まないように、実験や経験則に基づき定めればよい。このように記憶された関係に従いファン10gの回転速度を制御装置20により変化させることで、第2追熟加工室3の少なくともバナナ周囲における雰囲気流量を、降温工程の間にわたり、バナナの果肉温度が時間経過により低温値に近づくように制御できる。また、ファン10gの回転方向を降温工程の途中に反転させ、また、ファン10gの回転速度の大きさを降温工程の途中に予め定めた設定時間だけ零とする期間を設けることができる。なお、このように記憶される関係は単一である必要はなく、バナナの種類、果肉固さ、鮮度、環境温度、商品として販売する期間等の相違に応じて異なる複数の関係を予め設定して記憶し、その相違に応じて制御に用いる関係を入力装置21から制御装置20へ選択信号の入力により選択可能としてもよい。
【0036】
降温工程におけるバナナの果肉温度の標準範囲は、例えば熟成が過度に抑制されたり果皮の傷みが生じるといったことのない適正範囲になるように、実験や経験則に基づき降温工程の経過時間に対応付けて予め設定される。例えば図8において、実線A、一点鎖線B、二点鎖線C、三点鎖線Dは、低温値(本実施形態では14℃)になるように調節されている第2追熟加工室3において、本実施形態により雰囲気流量を制御して追熟加工した相異なるバナナの果肉温度(左縦軸)と降温工程の開始からの経過時間との関係を示す。実線A、一点鎖線B、二点鎖線C、三点鎖線Dに対応するバナナと、従来方法により追熟加工したバナナとを、降温工程の開始から25時間、49時間、および追熟加工終了時点において比較したしたところ、両者に差はなく何れも適正に追熟加工されていた。この場合、果肉温度の標準範囲を、降温工程の経過時間毎における、実線A、一点鎖線B、二点鎖線C、三点鎖線Dの中の最大果肉温度と最小果肉温度の間とすることができる。なお、図8は一例であり、バナナの種類、果肉固さ、鮮度、環境温度、商品として販売する期間等の相違に応じて果肉温度の標準範囲を異なるものとし、その相違に応じた標準範囲に基づいてファン10gの回転速度と降温工程の経過時間との関係を設定すればよい。
【0037】
入力装置21は、ファン10gの回転速度の大きさを制御装置20による制御途中に変化させるオーバーライド信号を、制御装置20に入力する入力手段として機能する。例えば、ファン10gの駆動用モータの駆動周波数、ファン10gの回転速度の変動率等がオーバーライド信号として入力される。これにより、降温工程において温度センサ22により求めた果肉温度の実測値が上記標準範囲から外れる時、その標準範囲内になるようにファン10gの回転速度の大きさを変化させ、果肉温度の降下速度が過大になったり過少になるのを防止できる。
【0038】
制御装置20が、入力装置21から入力される二酸化炭素の予め定めた設定濃度、各センサ4a、5a、22、23a、23bの検出値に基づき、制御プログラムに従い各室温調節装置4、5、循環装置10、エチレン投入装置24、出力装置25を制御することで、バナナの追熟加工を以下のように行うことができる。
【0039】
まず、未成熟のバナナを第1追熟加工室2に搬入し、第1追熟加工室2内で果肉温度を上昇させてバナナの呼吸を活性化させる呼吸活性化工程を行う。この際、制御装置20が第1室温調節装置4を室温センサ4aの検出温度に応じて制御することで、第1追熟加工室2の雰囲気温度を、少なくともバナナ周囲において、呼吸活性化工程の間にわたり上記高温値になるように調節する。また、制御装置20によりエチレン投入装置24を制御することで、第1追熟加工室2へのエチレンの投入を行う。さらに、各センサ22、23aの検出情報を出力するため、制御装置20は出力装置25を制御する。そして、呼吸活性化工程においてバナナ周囲における雰囲気を循環させるため、制御装置20は循環装置10のファン10gを回転させる。本実施形態では、呼吸活性化工程におけるファン10gの回転速度は予め設定された一定値とされる。これにより、第1追熟加工室2においてカートン11に収納されたバナナは循環する雰囲気に接し、果肉温度が上昇してバナナの呼吸が活性化される。バナナの呼吸の活性化を引き出したならば呼吸活性化工程を終了する。バナナの呼吸の活性化を引き出したか否かの判断は、例えば、果肉温度の検出値、二酸化炭素濃度の検出値、呼吸活性化工程の開始からの経過時間等に基づき、実験や経験則に基づき適宜行えばよい。第1追熟加工室2におけるエチレンの排出や二酸化炭素濃度の調節は第1室温調節装置4の換気機能により行えばよい。なお、第1室温調節装置4を、制御装置20とは別の制御装置や人間により作動されるものとし、第1追熟加工室2の雰囲気温度をセンサ4aとは別のセンサからの信号に基づき調節してもよい。
【0040】
呼吸活性化工程の終了後に、呼吸を活性化されたバナナを第1追熟加工室2から第2追熟加工室3に移し、第2追熟加工室3内で果肉温度を降下させてバナナの熟成を抑制する降温工程を行う。この際、制御装置20が第2室温調節装置5を室温センサ5aの検出温度に応じて制御することで、第2追熟加工室3の雰囲気温度を、少なくともバナナ周囲において、呼吸活性化工程の間にわたり上記低温値になるように調節する。また、各センサ22、23bの検出情報を出力するため、制御装置20は出力装置25を制御する。そして制御装置20は、ファン10gの回転速度を記憶した上記関係に従い変化させることで、第2追熟加工室3の少なくともバナナ周囲における雰囲気流量を制御する。これにより、カートン11に収納されたバナナは循環する雰囲気に接し、果肉温度が時間経過により上記低温値に近づくように降下してバナナの熟成が抑制される。第2追熟加工室3における二酸化炭素濃度の調節は第2室温調節装置5の換気機能により行えばよい。なお、第2室温調節装置5を、制御装置20とは別の制御装置や人間により作動されるものとし、第2追熟加工室3の雰囲気温度をセンサ5aとは別のセンサからの信号に基づき調節してもよい。
【0041】
本実施形態では、降温工程を繰り返す周期を呼吸活性化工程を繰り返す周期よりも長くし、第2追熟加工室3において循環装置10の何れかにより雰囲気が循環されている領域においてバナナの果肉温度を降下させて降温工程を実行する間に、第1追熟加工室2においてバナナの呼吸を活性化させて呼吸活性化工程を実行すると共に、この呼吸活性化工程により呼吸が活性化されたバナナの果肉温度を降下させる降温工程を、第2追熟加工室3における循環装置10の残りの何れかにより雰囲気が循環されている領域で開始する。これにより、あるロットのバナナにつき第1追熟加工室2で加工した後に第2追熟加工室3で加工している間に、第1追熟加工室2で別のロットのバナナにつき加工した後に、第2追熟加工室3で加工を開始することが可能になり、生産性向上を図ることができる。
【0042】
上記第1実施形態によれば、第1追熟加工室2の雰囲気温度が少なくともバナナ周囲において一定の高温値になるように調節されている状態で、バナナの呼吸を活性化させるために果肉温度を上昇させる呼吸活性化工程が行われる。しかる後に、第2追熟加工室3の雰囲気温度が少なくともバナナ周囲において一定の低温値になるように調節されている状態で、呼吸を活性化されたバナナの果肉温度を、雰囲気流量を変化させることで制御する降温工程が行われる。すなわち、呼吸を活性化されたバナナの果肉温度は呼吸熱により上昇しようとするが、一定の低温値になるよう調節している雰囲気流量を制御することで、果肉温度を低下させる。この際、果肉温度が高く低温値との差が大きい時は、雰囲気流量が少なくても熟成を十分に抑制できる。すなわち、降温工程当初においてバナナの呼吸が活発で果肉温度が高くても、第2追熟加工室3の雰囲気温度は低温値に調節されているので、第2追熟加工室3の雰囲気の実測温度と果肉温度の差は大きくなる。よって、バナナ周囲の雰囲気を流動させることができれば、バナナ表面が一定の低温値とされた雰囲気に接して果肉温度を速やか且つ均一に降下させることができる。これにより、従来のように大流量の循環気流を常に発生させる装置を不要にでき、追熟加工に必要な設備コストを低減し、設備のメンテナンスを容易にし、生産性を向上させ、バナナの追熟加工コストを大幅に低減できる。
【0043】
また、第1実施形態によれば、ファン10gの回転速度と経過時間との関係を予め実験により設定しておけば、その関係に従ってファン10gの回転速度を時間経過に応じて変化させるだけで、バナナの熟成を適正に抑制できる。さらに、降温工程当初においては果肉温度と低温値との差が大きいため、ファン10gの回転速度の大きさが小さくても果肉温度を速やか且つ均一に降下させることができる。一方、果肉温度の低下に伴ってファン10gの回転速度の大きさを増大させることで、果肉温度と低温値との差が小さくても果肉温度を均一に降下させることができる。これにより、ファン10gの駆動に要するエネルギーが不必要に増大するのを防止し、省エネルギー化を図ってバナナの追熟加工コストを低減できる。さらに、降温工程におけるバナナの果肉温度の実測値が標準範囲から外れる時、ファン10gの回転速度の大きさを変化させて標準範囲内に戻すことができ、バナナの熟成を適正に抑制できる。しかも、ファン10gの回転方向を降温工程の途中に反転させ、予め定めた設定時間だけファン10gの回転速度の大きさを零とする期間を設け、さらに回転方向を反転させる前に回転速度の大きさを零にできるので、バナナ周囲における雰囲気の流動方向を均一化し、果肉温度が不均一に降下するのを抑制できる。
【0044】
図9は、本発明のバナナの追熟加工方法を実施するための第2実施形態に係る追熟加工用システム101の構成を示す。このシステム101により、第1追熟加工室102内において、未成熟のバナナの呼吸を活性化させるために果肉温度を上昇させる呼吸活性化工程が行われ、第2追熟加工室103内において、呼吸を活性化されたバナナの熟成を抑制するために果肉温度を降下させる降温工程が行われる。本実施形態では、第1追熟加工室102のバナナ収納容量よりも第2追熟加工室103のバナナ収納容量が大きくされている。なお、各追熟加工室102、103の数は特に限定されない。また、第1追熟加工室と第2追熟加工室とでバナナ収納容量を等しくしてもよい。あるいは、第2追熟加工室のバナナ収納容量よりも第1追熟加工室のバナナ収納容量を大きくすると共に第2追熟加工室の数を第1追熟加工室の数よりも多くし、全第2追熟加工室のバナナ収納容量合計を全第1追熟加工室のバナナ収納容量合計以上としてもよい。
【0045】
第1追熟加工室102は、室内の雰囲気である空気の温度を調節する第1室温調節装置104を備え、また、室内にエチレン投入装置24によってエチレンが投入される。エチレン投入装置は公知のものを用いればよい。第1追熟加工室102は、バナナを収納したカートンを出し入れするための扉102′を有し、扉102′を閉じることで外気温度の影響を殆ど受けない略密閉された空間を構成し、例えば断熱材により覆われた保温倉庫により構成できる。
【0046】
第1室温調節装置104は、第1追熟加工室102の雰囲気温度を、呼吸活性化工程の間にわたり、一定の高温値になるように調節する。その高温値は、バナナの呼吸を活性化させるのに適する値になるように予め設定され、19℃〜24℃の温度範囲から選定するのが好ましく、本実施形態では20℃とされる。第1室温調節装置104による雰囲気温度の一定の高温値への調節精度は、呼吸活性化工程においてバナナの呼吸を活性化させることができる程度であればよく、高温値になるように調節することで、少なくともバナナ周囲において、呼吸活性化工程の間にわたる時間平均で高温値の±1℃の範囲に雰囲気温度を保持できるのが好ましい。すなわち、第1追熟加工室102の雰囲気温度は、呼吸活性化工程への実質的な影響がなければ換気等の際に高温値から多少変動してもよい。第1室温調節装置104は、第1追熟加工室102の雰囲気温度を高温値になるように調節できれば構成は限定されず、例えば室内の冷房、暖房機能を有し、天井や側壁等に分散する開口を介して温度調節された雰囲気を吹き出し、また、室内の雰囲気と外気との換気機能も有する公知の空調装置を用いることができる。
【0047】
第2追熟加工室103は、室内の雰囲気である空気の温度を調節する第2室温調節装置105を備える。第2追熟加工室103は、バナナを収納したカートンを出し入れするための扉103′を有し、扉103′を閉じることで外気温度の影響を殆ど受けない略密閉された空間を構成し、例えば断熱材により覆われた保温倉庫により構成できる。
【0048】
第2室温調節装置105は、第2追熟加工室103の雰囲気温度を降温工程の間にわたり一定の低温値になるように調節する。その低温値は、前記高温値よりも低くバナナの熟成を抑制するのに適する値になるように予め設定され、13℃〜16℃の温度範囲から選定するのが好ましく、本実施形態では14℃とされる。第2室温調節装置105による雰囲気温度の一定の低温値への調節精度は、降温工程においてバナナの果肉温度を雰囲気流量の変化のみにより制御できればよい。第2追熟加工室103の雰囲気温度は、バナナの搬出入や換気等の際に変動する可能性があるが、降温工程への実質的な影響がなければバナナの搬出入や換気等の際に低温値から多少変動してもよい。よって、雰囲気流量を制御することでバナナの熟成を適正に抑制する上では、第2追熟加工室103の雰囲気温度を、少なくともバナナ周囲において低温値になるように調節することで、降温工程の間にわたる時間平均で低温値の±1℃の範囲に保持するのが好ましく、特に13℃〜15℃の範囲に保持するのが好ましい。第2室温調節装置105は、第2追熟加工室103の雰囲気温度を低温値になるように調節できれば構成は限定されず、例えば室内の冷房、暖房機能を有し、天井や側壁等に分散する開口を介して温度調節された雰囲気を吹き出し、また、室内の雰囲気と外気との換気機能も有する公知の空調装置を用いることができる。
【0049】
各追熟加工室102、103における複数の領域それぞれに、バナナ周囲の雰囲気を循環させる循環装置110が配置されている。図10〜図13に示す本実施形態の各循環装置110は、ハウジング110aに内蔵されたモータにより横軸中心に駆動されるファン110bの回転より、ハウジング110aの前面中央に形成された吸引口110cから吸引した雰囲気を、ハウジング110aの左右側面に形成された排気口110dから排気することで雰囲気を循環させる。そのファン110bの回転速度の変更により、その循環される雰囲気流量を変化させることが可能とされている。すなわち、ファン110bの回転速度は雰囲気流量に対応し、本実施形態ではファン110bを回転させる際のモータの駆動電力を駆動周波数に応じて変化させれば、回転速度が変化し、追熟加工室102、103のバナナ周囲における雰囲気流量を制御できる。また、ファン110bの回転速度として、回転速度の大きさだけでなく回転方向を変化させることが可能とされ、ファン110bの回転方向を反転させたり、また、回転速度の大きさを設定時間だけ零にすることができる。
【0050】
本実施形態の循環装置110は可撓性および気密性を有するビニールシート等のカバー110fを有し、ハウジング110aの上部のロール110eに引き出し可能に巻き付けられている。カバー110fにより、バナナ周囲の雰囲気を循環装置110により効果的に循環させることが可能とされている。すなわち各追熟加工室102、103において、ハウジング110aの前方における左右に間隔をおいた床上に、図11〜図13に示すようにバナナを収納した複数のカートン11がパレット12を介して略隙間なく積層され、左右に間隔をおいて配置された一対のカートン積層体13を構成する。各カートン11の少なくとも左右壁に雰囲気流通用の孔11aが形成される。ロール110eから引き出されたカバー110fは、一対のカートン積層体13の上面と前面、および一対のカートン積層体13の間の空間の上方と前方を覆うことが可能とされている。なお、カバー110fの先端をパレートに着脱する連結具110gを設けてもよい。ファン110bの一方向への回転より、一対のカートン積層体13の間の雰囲気が吸引口110cから吸引され、排気口110dから排気される。これにより、一対のカートン積層体13の左右間領域は左右領域よりも圧力が低下して多少の差圧が生じ、図11において矢印で示すように追熟加工室102、103の少なくともバナナ周囲における雰囲気が循環する。また、ファン110bの他方向への回転により、図11において矢印で示す方向とは逆方向にバナナ周囲における雰囲気が循環する。その循環する雰囲気流量はファン110bの回転速度の変化により変化する。
【0051】
図14に示すように、各循環装置110はコンピュータにより主構成される制御装置120に接続される。制御装置120は、経過時間に対応して予め設定された降温工程におけるバナナの果肉温度の目標値を、その経過時間に対応付けて記憶する記憶手段として機能する。その目標値は、降温工程において果肉温度が時間経過により上記低温値に近づいてバナナの熟成が抑制されるように、経過時間に対応して予め設定される。すなわち目標値は、降温工程の開始当初は低温値よりも大きく、時間経過により小さくなって低温値に近づくように設定される。
【0052】
さらに制御装置120は、第1追熟加工室2における循環装置110のファン110bの回転速度と、呼吸活性化工程の経過時間との予め設定した関係を記憶する記憶手段として機能する。この記憶される関係は、呼吸活性化工程の実行によりバナナの果肉温度が時間経過により上記高温値に近づき、バナナの呼吸が適正に活性化されるように実験により予め設定される。この記憶された関係に従いファン110bの回転速度が制御されることで、第1追熟加工室102の少なくともバナナ周囲における雰囲気流量が制御される。本実施形態の呼吸活性化工程においては、ファン110bの回転速度を変化させず、第1追熟加工室102のバナナ周囲における雰囲気流量は一定としている。
【0053】
図14に示すように、制御装置120に、キーボード等により構成される入力装置121、呼吸活性化工程および降温工程におけるバナナの果肉温度の実測値を時系列に求める温度センサ122、第1追熟加工室102内の二酸化炭素濃度の実測値を求めるCO2 センサ123a、第2追熟加工室103内の二酸化炭素濃度の実測値を求めるCO2 センサ123b、第1追熟加工室102にエチレンを投入するエチレン投入装置124、表示装置やプリンタ等により構成される出力装置125が接続される。なお、温度センサ122は、追熟加工中の全てのバナナの果肉温度を求める必要はなく、一部の果肉温度を求めるもので足りる。各室温調節装置104、105は、本実施形態では制御装置120とは別の制御装置や人間により作動されるものとされ、追熟加工室102、103の室温を時系列に求めるセンサ(図示省略)からの信号に基づき雰囲気温度を調節する。また、第1追熟加工室102として一定容積の追熟加工専用の室を用いるのでなく、様々な容積の保温倉庫等を用いる場合、第1追熟加工室102内のエチレン濃度を測定するエチレン濃度センサを制御装置120に接続し、必要以上に第1追熟加工室102内のエチレン濃度が高くならないようにエチレン投入装置124を制御できるようにするのがよい。
【0054】
制御装置120は、入力装置121から入力される上記目標値、二酸化炭素の予め定めた設定濃度、各センサ122、123a、123bの検出値に基づき、制御プログラムに従い循環装置110、エチレン投入装置124、出力装置125を制御し、この際、ファン110bの回転速度を制御することで循環装置110により循環される雰囲気流量を制御する制御手段として機能する。各室温調節装置104、105は追熟加工室102、103の雰囲気温度を調節する。これによりバナナの追熟加工を以下のように行うことができる。
【0055】
まず、未成熟のバナナを第1追熟加工室102に搬入し、第1追熟加工室102内で果肉温度を上昇させてバナナの呼吸を活性化させる呼吸活性化工程を行う。この際、第1室温調節装置104により第1追熟加工室102の雰囲気温度を呼吸活性化工程の間にわたり上記高温値になるように調節する。また、制御装置120によりエチレン投入装置124を制御することで、第1追熟加工室102へのエチレンの投入を行う。さらに、各センサ122、123aの検出情報を出力するため、制御装置120は出力装置125を制御する。そして、呼吸活性化工程においてバナナ周囲における雰囲気を循環させるため、制御装置120は循環装置110のファン110bを回転させる。これにより、第1追熟加工室102においてカートン11に収納されたバナナは循環する雰囲気に接し、果肉温度が上昇してバナナの呼吸が活性化される。バナナの呼吸の活性化を引き出したならば呼吸活性化工程を終了する。バナナの呼吸の活性化を引き出したか否かの判断は、例えば、果肉温度の検出値、二酸化炭素濃度の検出値、呼吸活性化工程の開始からの経過時間等に基づき、実験や経験則に基づき適宜行えばよい。第1追熟加工室102におけるエチレンの排出や二酸化炭素濃度の調節は第1室温調節装置104の換気機能により行えばよい。なお、第1室温調節装置104を制御装置120に接続し、上記高温値を入力装置121から制御装置120に入力し、制御装置120からの信号により第1室温調節装置104を作動させることで、第1追熟加工室102の雰囲気温度の調節、エチレンの排出、二酸化炭素濃度の調節等を行うようにしてもよい。
【0056】
呼吸活性化工程の終了後に、呼吸を活性化されたバナナを第1追熟加工室102から第2追熟加工室103に移し、第2追熟加工室103内で果肉温度を降下させてバナナの熟成を抑制する降温工程を行う。この際、第2室温調節装置105により第2追熟加工室103の雰囲気温度を降温工程の間にわたり上記低温値になるように調節する。各センサ122、23bの検出情報を出力するため、御装置20は出力装置125を制御する。そして制御装置120は、温度センサ122により時系列に求められる果肉温度の実測値が、記憶した上記目標値に追従するように、第2追熟加工室103内のバナナ周囲において循環装置110により循環される雰囲気流量を、ファン110bの回転速度を変化させることで制御する。これにより、カートン11に収納されたバナナは循環する雰囲気に接し、果肉温度が降下してバナナの熟成が抑制される。バナナの熟成が抑制されたならば降温工程を終了する。降温工程を終了するか否かは、熟成が過度に抑制されたり果皮が傷まないように、実験や経験則に基づき適宜判断すればよい。第2追熟加工室103における二酸化炭素濃度の調節は第2室温調節装置105の換気機能により行えばよい。なお、第2室温調節装置105を制御装置120に接続し、上記低温値を入力装置121から制御装置120に入力し、制御装置120からの信号により第2室温調節装置105を作動させることで、第2追熟加工室103の雰囲気温度の調節、二酸化炭素濃度の調節等を行うようにしてもよい。
【0057】
本実施形態では、降温工程を繰り返す周期を呼吸活性化工程を繰り返す周期よりも長くし、第2追熟加工室103において循環装置110の何れかにより雰囲気が循環されている領域においてバナナの果肉温度を降下させて降温工程を実行する間に、第1追熟加工室102においてバナナの呼吸を活性化させて呼吸活性化工程を実行すると共に、この呼吸活性化工程により呼吸が活性化されたバナナの果肉温度を降下させる降温工程を、第2追熟加工室103における循環装置110の残りの何れかにより雰囲気が循環されている領域で開始する。これにより、あるロットのバナナにつき第1追熟加工室102で加工した後に第2追熟加工室103で加工している間に、第1追熟加工室102で別のロットのバナナにつき加工した後に、第2追熟加工室103で加工を開始することが可能になり、生産性向上を図ることができる。
【0058】
図15は、第2実施形態のシステムによりバナナを追熟加工する場合の各追熟加工室102、103のバナナ周囲の雰囲気温度、果肉温度の目標値、および果肉温度の実測値と、経過時間との関係を示す。図15における横軸は時刻、縦軸は温度、実線aは第1追熟加工室102の雰囲気温度である高温値、実線bは第2追熟加工室103の雰囲気温度である低温値、一点鎖線cは果肉温度の目標値、破線dは果肉温度の実測値を示す。図15においては、時刻t1において呼吸活性化工程が開始され、時刻t2において降温工程が開始され、時刻t3において降温工程が終了するものとされる。なお、図15は第1追熟加工室102から第2追熟加工室103へのバナナの移送時間は無視して作図されている。
【0059】
図15において領域Aで示す部分では、図16Aの拡大図に示すように、降温工程における果肉温度の実測値dが目標値cよりも図中δで示す偏差だけ小さい。この場合、実測値dが目標値cに追従するように、第2追熟加工室103のバナナ周囲において循環装置110により循環される雰囲気流量が少なくされ、場合によっては零とされ、バナナの呼吸熱の蓄積による果肉温度の上昇が図られる。図15において領域Bで示す部分では、図16Bの拡大図に示すように、降温工程における果肉温度の実測値dが目標値cよりも図中δで示す偏差だけ大きい。この場合、実測値dが目標値cに追従するように、第2追熟加工室103のバナナ周囲において循環装置110により循環される雰囲気流量が多くされ、果肉温度の低下が図られる。すなわち、果肉温度の目標値cと実測値dとの偏差δをなくすように雰囲気流量が制御され、例えば偏差δに応じて循環装置110におけるファン110bの駆動電力を変化させるフィードバック制御が行われる。雰囲気流量の初期値は、降温工程の開始時において果肉温度の実測値dが目標値cに一致した時の実験データや過去データを用いればよい。なお、バナナの熟成を適正に抑制できれば、果肉温度の目標値cと実測値dとの偏差δの大きさが一定の設定値以下である場合は、雰囲気流量を変化させないようにしてもよい。
【0060】
なお、本実施形態においては、呼吸活性化工程を行う第1追熟加工室102の雰囲気流量は一定としている。これは、呼吸活性化工程においてはバナナ周囲の雰囲気温度を低温値よりも高い高温値に調節して果肉温度が上昇すれば時間経過による上昇の仕方は特に問題とされないことによるが、呼吸活性化工程においても果肉温度の実測値が目標値に追従するように雰囲気流量を制御してもよい。また、ファン110bの回転方向を降温工程の途中に反転させることで、バナナ周囲における雰囲気の流動方向を均一化し、果肉温度が不均一に降下するのを抑制するのが好ましく、反転させる時点は予め設定しておけばよい。果肉温度を均一に降下させる上では、ファン110bの回転速度の大きさを、予め定めた設定時間だけ零とする期間を設けるのがより好ましく、さらに好ましくは、回転方向を反転させる前にファン110bの回転速度の大きさを零にすればよい。
【0061】
上記第2実施形態によれば、第1追熟加工室102の雰囲気温度が少なくともバナナ周囲において一定の高温値になるように調節されている状態で、バナナの呼吸を活性化させるために果肉温度を上昇させる呼吸活性化工程が行われる。しかる後に、第2追熟加工室103の雰囲気温度が少なくともバナナ周囲において一定の低温値になるように調節されている状態で、呼吸を活性化されたバナナの果肉温度を、雰囲気流量を変化させることで制御する降温工程が行われる。すなわち、呼吸を活性化されたバナナの果肉温度は呼吸熱により上昇しようとするが、一定の低温値になるよう調節している雰囲気流量を制御することで、果肉温度を低下させる。この際、果肉温度が高く低温値との差が大きい時は、雰囲気流量が少なくても熟成を十分に抑制できる。すなわち、降温工程当初においてバナナの呼吸が活発で果肉温度が高くても、第2追熟加工室103の雰囲気温度は低温値に調節されているので、第2追熟加工室103の雰囲気の実測温度と果肉温度の差は大きくなる。よって、バナナ周囲の雰囲気を流動させることができれば、バナナ表面が一定の低温値とされた雰囲気に接して果肉温度を速やか且つ均一に降下させることができる。よって、従来のように大流量の循環気流を常に発生させる装置を不要にでき、追熟加工に必要な設備コストを低減し、設備のメンテナンスを容易にし、生産性を向上させ、バナナの追熟加工コストを大幅に低減できる。
【0062】
本発明は上記各実施形態に限定されない。例えば、追熟加工室の構造は特に限定されず、上記実施形態では追熟加工室における複数の領域にそれぞれ循環装置を配置したが、追熟加工室における単一の領域に単一の循環装置を配置するものでもよい。また、従来の追熟加工装置における追熟加工室において本発明方法を実施し、そのために呼吸活性化工程と降温工程において追熟加工室における全域の雰囲気流量を制御してもよいが、本発明を実施する上では降温工程において雰囲気流量を、少なくともバナナ周囲において制御できれば足りる。
【0063】
上記各実施形態では呼吸活性化工程を行う追熟加工室と降温工程を行う追熟加工室とは相異なるものとされているが、図17の変形例に示すように複数の循環装置110を配置した一つの追熟加工室140において呼吸活性化工程と降温工程とを行うようにしてもよい。この場合、追熟加工室140の雰囲気温度を一つの室温調節装置141により呼吸活性化工程では高温値になるように調節し、降温工程では低温値になるように調節すればよい。なお、図17においては循環装置110、制御装置120として第2実施形態のものを記載したが、第1実施形態のものであってもよい。
【0064】
上記実施形態の追熟加工用システムは、専用の追熟加工室と室温調節装置を含まず、室温調節装置を有する保温倉庫等を追熟加工室として利用するものとしたが、本発明の追熟加工用システムは専用の追熟加工室や室温調節装置を備えていてもよい。
【0065】
バナナの追熟加工に際して、上記実施形態にはない構成を付加してもよく、例えば、追熟加工室内の湿度を高める加湿装置と、追熟加工室内の湿度を検出する湿度センサを制御装置に接続し、検出湿度が入力装置から入力される設定湿度以下にならないように加湿装置を制御する構成を付加してもよい。
【符号の説明】
【0066】
2、3、102、103、140…追熟加工室、4、5、104、105、141…室温調節装置、10、110…循環装置、10g、110b…ファン、20、120…制御装置(記憶手段、制御手段)、22、122…温度センサ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
追熟加工室内で未成熟のバナナの呼吸を活性化させるために果肉温度を上昇させる呼吸活性化工程と、
前記呼吸活性化工程の後に、前記追熟加工室内または異なる追熟加工室内で、呼吸を活性化されたバナナの熟成を抑制するために果肉温度を降下させる降温工程とを備えるバナナの追熟加工方法において、
降温工程が行われる前記追熟加工室の雰囲気温度を、少なくともバナナ周囲において、降温工程の間にわたり、バナナの熟成を抑制するのに適する予め設定した一定の低温値になるように調節し、
降温工程が行われる前記追熟加工室の雰囲気流量を、少なくともバナナ周囲において、降温工程の間にわたり、バナナの果肉温度が時間経過により前記低温値に近づくように制御することを特徴とするバナナの追熟加工方法。
【請求項2】
降温工程が行われる前記追熟加工室の雰囲気温度を、少なくともバナナ周囲において、前記低温値になるように調節することで、降温工程の間にわたる時間平均で前記低温値の±1℃の範囲に保持する請求項1に記載のバナナの追熟加工方法。
【請求項3】
前記低温値を13℃〜16℃の温度範囲から選定する請求項1または2に記載のバナナの追熟加工方法。
【請求項4】
降温工程が行われる前記追熟加工室に、バナナ周囲の雰囲気をファンの回転により循環させる循環装置を配置し、
降温工程におけるバナナの果肉温度の標準範囲を、降温工程の経過時間に対応付けて予め設定し、
前記ファンの回転速度と降温工程の経過時間との関係を、バナナの果肉温度が、降温工程の経過時間に対応した前記標準範囲内に保持されるように予め設定し、
前記ファンの回転速度を前記関係に従い変化させることで、降温工程が行われる前記追熟加工室の少なくともバナナ周囲における雰囲気流量を制御する請求項1〜3の中の何れか1項に記載のバナナの追熟加工方法。
【請求項5】
降温工程におけるバナナの果肉温度の実測値を時系列に求め、
求めた実測値が前記標準範囲から外れる時、前記標準範囲になるように前記ファンの回転速度の大きさを変化させる請求項4に記載のバナナの追熟加工方法。
【請求項6】
降温工程におけるバナナの果肉温度の目標値を、果肉温度が時間経過により前記低温値に近づいてバナナの熟成が抑制されるように、経過時間に対応して予め設定し、
降温工程におけるバナナの果肉温度の実測値を時系列に求め、
降温工程が行われる前記追熟加工室のバナナ周囲における雰囲気流量を、前記実測値が前記目標値に追従するように制御する請求項1〜3の中の何れか1項に記載のバナナの追熟加工方法。
【請求項7】
前記ファンの回転方向を降温工程の途中に反転させる請求項4〜6の中の何れか1項に記載のバナナの追熟加工方法。
【請求項8】
前記ファンの回転速度の大きさを、回転方向を反転させる前に予め定めた設定時間だけ零とする期間を設ける請求項7に記載のバナナの追熟加工方法。
【請求項9】
前記ファンの回転速度の大きさを、予め定めた設定時間だけ零とする期間を設ける請求項4〜7の中の何れか1項に記載のバナナの追熟加工方法。
【請求項10】
呼吸活性化工程が行われる前記追熟加工室の雰囲気温度を、少なくともバナナ周囲において、呼吸活性化工程の間にわたり、前記低温値よりも高くバナナの呼吸を活性化させるのに適する予め設定した一定の高温値になるように調節する請求項1〜9の中の何れか1項に記載のバナナの追熟加工方法。
【請求項11】
呼吸活性化工程が行われる前記追熟加工室の雰囲気温度を、少なくともバナナ周囲において、前記高温値になるように調節することで、呼吸活性化工程の間にわたる時間平均で前記高温値の±1℃の範囲に保持する請求項10に記載のバナナの追熟加工方法。
【請求項12】
前記高温値を19℃〜24℃の温度範囲から選定する請求項10または11に記載のバナナの追熟加工方法。
【請求項13】
呼吸活性化工程が行われる前記追熟加工室と、降温工程が行われる前記追熟加工室とを相異なるものとし、
降温工程が行われる前記追熟加工室のバナナ収納容量を、呼吸活性化工程が行われる前記追熟加工室のバナナ収納容量よりも大きくし、
降温工程が行われる前記追熟加工室における複数の領域それぞれにおいて、バナナを配置すると共に配置したバナナの果肉温度が前記低温値に近づくように雰囲気流量を制御する請求項1〜12の中の何れか1項に記載のバナナの追熟加工方法。
【請求項14】
請求項1〜13の中の何れか1項に記載のバナナの追熟加工方法を実施するために用いられる追熟加工用システムであって、
降温工程が行われる前記追熟加工室において、バナナ周囲の雰囲気をファンの回転により循環させる循環装置と、
前記ファンの回転速度を変化させることで、前記循環装置により循環される雰囲気流量を制御する制御手段とを備えることを特徴とするバナナの追熟加工用システム。
【請求項15】
前記ファンの回転速度と、降温工程の経過時間との予め設定した関係を記憶する記憶手段を備え、
前記記憶手段に記憶された関係に従い、前記ファンの回転速度が前記制御手段により制御される請求項14に記載のバナナの追熟加工用システム。
【請求項16】
降温工程におけるバナナの果肉温度の実測値を時系列に求める温度センサと、
前記ファンの回転速度の大きさを前記制御手段による制御途中に変化させるオーバーライド信号を、前記制御手段に入力する入力手段とを備える請求項15に記載のバナナの追熟加工方法。
【請求項17】
降温工程におけるバナナの果肉温度の実測値を時系列に求める温度センサと、
経過時間に対応して予め設定された降温工程におけるバナナの果肉温度の目標値を、経過時間に対応付けて記憶する記憶手段とを備え、
前記記憶手段に記憶された前記目標値に前記温度センサにより求められた前記実測値が追従するように、前記循環装置により循環される雰囲気流量が前記制御手段により制御される請求項14に記載のバナナの追熟加工用システム。
【請求項1】
追熟加工室内で未成熟のバナナの呼吸を活性化させるために果肉温度を上昇させる呼吸活性化工程と、
前記呼吸活性化工程の後に、前記追熟加工室内または異なる追熟加工室内で、呼吸を活性化されたバナナの熟成を抑制するために果肉温度を降下させる降温工程とを備えるバナナの追熟加工方法において、
降温工程が行われる前記追熟加工室の雰囲気温度を、少なくともバナナ周囲において、降温工程の間にわたり、バナナの熟成を抑制するのに適する予め設定した一定の低温値になるように調節し、
降温工程が行われる前記追熟加工室の雰囲気流量を、少なくともバナナ周囲において、降温工程の間にわたり、バナナの果肉温度が時間経過により前記低温値に近づくように制御することを特徴とするバナナの追熟加工方法。
【請求項2】
降温工程が行われる前記追熟加工室の雰囲気温度を、少なくともバナナ周囲において、前記低温値になるように調節することで、降温工程の間にわたる時間平均で前記低温値の±1℃の範囲に保持する請求項1に記載のバナナの追熟加工方法。
【請求項3】
前記低温値を13℃〜16℃の温度範囲から選定する請求項1または2に記載のバナナの追熟加工方法。
【請求項4】
降温工程が行われる前記追熟加工室に、バナナ周囲の雰囲気をファンの回転により循環させる循環装置を配置し、
降温工程におけるバナナの果肉温度の標準範囲を、降温工程の経過時間に対応付けて予め設定し、
前記ファンの回転速度と降温工程の経過時間との関係を、バナナの果肉温度が、降温工程の経過時間に対応した前記標準範囲内に保持されるように予め設定し、
前記ファンの回転速度を前記関係に従い変化させることで、降温工程が行われる前記追熟加工室の少なくともバナナ周囲における雰囲気流量を制御する請求項1〜3の中の何れか1項に記載のバナナの追熟加工方法。
【請求項5】
降温工程におけるバナナの果肉温度の実測値を時系列に求め、
求めた実測値が前記標準範囲から外れる時、前記標準範囲になるように前記ファンの回転速度の大きさを変化させる請求項4に記載のバナナの追熟加工方法。
【請求項6】
降温工程におけるバナナの果肉温度の目標値を、果肉温度が時間経過により前記低温値に近づいてバナナの熟成が抑制されるように、経過時間に対応して予め設定し、
降温工程におけるバナナの果肉温度の実測値を時系列に求め、
降温工程が行われる前記追熟加工室のバナナ周囲における雰囲気流量を、前記実測値が前記目標値に追従するように制御する請求項1〜3の中の何れか1項に記載のバナナの追熟加工方法。
【請求項7】
前記ファンの回転方向を降温工程の途中に反転させる請求項4〜6の中の何れか1項に記載のバナナの追熟加工方法。
【請求項8】
前記ファンの回転速度の大きさを、回転方向を反転させる前に予め定めた設定時間だけ零とする期間を設ける請求項7に記載のバナナの追熟加工方法。
【請求項9】
前記ファンの回転速度の大きさを、予め定めた設定時間だけ零とする期間を設ける請求項4〜7の中の何れか1項に記載のバナナの追熟加工方法。
【請求項10】
呼吸活性化工程が行われる前記追熟加工室の雰囲気温度を、少なくともバナナ周囲において、呼吸活性化工程の間にわたり、前記低温値よりも高くバナナの呼吸を活性化させるのに適する予め設定した一定の高温値になるように調節する請求項1〜9の中の何れか1項に記載のバナナの追熟加工方法。
【請求項11】
呼吸活性化工程が行われる前記追熟加工室の雰囲気温度を、少なくともバナナ周囲において、前記高温値になるように調節することで、呼吸活性化工程の間にわたる時間平均で前記高温値の±1℃の範囲に保持する請求項10に記載のバナナの追熟加工方法。
【請求項12】
前記高温値を19℃〜24℃の温度範囲から選定する請求項10または11に記載のバナナの追熟加工方法。
【請求項13】
呼吸活性化工程が行われる前記追熟加工室と、降温工程が行われる前記追熟加工室とを相異なるものとし、
降温工程が行われる前記追熟加工室のバナナ収納容量を、呼吸活性化工程が行われる前記追熟加工室のバナナ収納容量よりも大きくし、
降温工程が行われる前記追熟加工室における複数の領域それぞれにおいて、バナナを配置すると共に配置したバナナの果肉温度が前記低温値に近づくように雰囲気流量を制御する請求項1〜12の中の何れか1項に記載のバナナの追熟加工方法。
【請求項14】
請求項1〜13の中の何れか1項に記載のバナナの追熟加工方法を実施するために用いられる追熟加工用システムであって、
降温工程が行われる前記追熟加工室において、バナナ周囲の雰囲気をファンの回転により循環させる循環装置と、
前記ファンの回転速度を変化させることで、前記循環装置により循環される雰囲気流量を制御する制御手段とを備えることを特徴とするバナナの追熟加工用システム。
【請求項15】
前記ファンの回転速度と、降温工程の経過時間との予め設定した関係を記憶する記憶手段を備え、
前記記憶手段に記憶された関係に従い、前記ファンの回転速度が前記制御手段により制御される請求項14に記載のバナナの追熟加工用システム。
【請求項16】
降温工程におけるバナナの果肉温度の実測値を時系列に求める温度センサと、
前記ファンの回転速度の大きさを前記制御手段による制御途中に変化させるオーバーライド信号を、前記制御手段に入力する入力手段とを備える請求項15に記載のバナナの追熟加工方法。
【請求項17】
降温工程におけるバナナの果肉温度の実測値を時系列に求める温度センサと、
経過時間に対応して予め設定された降温工程におけるバナナの果肉温度の目標値を、経過時間に対応付けて記憶する記憶手段とを備え、
前記記憶手段に記憶された前記目標値に前記温度センサにより求められた前記実測値が追従するように、前記循環装置により循環される雰囲気流量が前記制御手段により制御される請求項14に記載のバナナの追熟加工用システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2013−99319(P2013−99319A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−219446(P2012−219446)
【出願日】平成24年10月1日(2012.10.1)
【出願人】(507233589)株式会社サミット神戸合同物産 (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年10月1日(2012.10.1)
【出願人】(507233589)株式会社サミット神戸合同物産 (2)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]