説明

バランス修正装置

【課題】回転体のバランス修正装置において、その軸方向寸法を抑え、支持体に対する回転体の着脱作業の能率を飛躍的に向上させる。
【解決手段】回転体9を回転可能に支持する支持体と、支持体に支持された回転体9の一部をバランス修正のために切削する切削装置15と、切削の時に、回転体9が回転しないように回転体9の一端部9aを把持する把持装置17とを備える。把持装置17は、回転体9の軸方向と交差する交差方向において、一端部9aを把持できる把持準備位置と把持準備位置から外れた退避位置との間で、移動可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転する回転体を有する回転機械のバランス修正装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回転機械は、流体により回転駆動されて運動エネルギを流体から与えられ、または、回転することで流体に運動エネルギを与える回転体を有する。本願において、回転機械は、過給機、ガスタービン、ターボ圧縮機などであってよい。
【0003】
回転体のバランス修正では、回転体の一部を切削する。即ち、回転体を回転可能に支持体で支持した状態で、回転体の一部を切削装置で切削する。この切削は、予め計測により取得したアンバランスデータが示す位置と切削量に基づいて行われる。アンバランスデータが示す位置は、回転体の回転方向位置であるので、切削時に、回転体が回転しないようにする必要がある。そのために、回転体が回転しないように回転体の一端部を把持装置で把持した状態で、回転体を切削する。
【0004】
このようにバランス修正を行う装置は、例えば、下記の特許文献1(未公開)に記載されている。また、従来のバランス修正装置は、例えば、下記の特許文献2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特願2008−047960号
【特許文献2】特開2002−39904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した把持装置は、回転体の一端部を把持する把持部(例えばコレットチャック)と、この把持部が取り付けられる本体とを有する。この把持部は、消耗品であるため、定期的に交換する必要がある。
【0007】
把持部を交換するため、把持装置と支持体(または回転体)との間に把持部を挿入できるスペースを設ける必要がある。この場合、以下の問題がある。
(1)前記スペースを確保するため、把持装置を、回転体の軸方向に、回転体の一端部から後退させる必要があり、この後退距離を大きくしなければならない。
(2)前記後退距離が大きくなると、前記軸方向におけるバランス修正装置の寸法が大きくなってしまう。
(3)前記後退距離を、前記スペースを確保するだけにすると、支持体に対する回転体の着脱作業の能率が低くなるか、支持体に対する回転体の着脱作業ができない。即ち、支持体に対する回転体の着脱作業において、回転体や、これに付随する部品や、前記着脱作業に使用する工具などが把持装置に干渉しやすくなるか、干渉してしまう。干渉してしまう場合には、別の場所で回転体を支持体に組み、その後、この支持体を把持装置の隣に戻す必要がある。
【0008】
そこで、本発明の目的は、上述の問題(1)〜(3)を解決することにある。即ち、本発明の目的は、上述の把持装置や支持体などを有するバランス修正装置において、前記軸方向におけるバランス修正装置の寸法を抑え、支持体に対する回転体の着脱作業の能率を飛躍的に向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、本発明によると、回転する回転体を有する回転機械のバランス修正装置であって、
前記回転体を回転可能に支持する支持体と、
前記支持体に支持された回転体の一部をバランス修正のために切削する切削装置と、
前記切削の時に、前記回転体が回転しないように前記回転体の一端部を把持する把持装置と、を備え、
前記把持装置は、前記回転体の軸方向と交差する交差方向において、前記一端部を把持できる把持準備位置と該把持準備位置から外れた退避位置との間で、移動可能である、ことを特徴とするバランス修正装置が提供される。
【0010】
上述した本発明のバランス修正装置では、前記回転体の軸方向と交差する交差方向において、前記把持装置は、前記一端部を把持できる把持準備位置と、前記把持準備位置から外れた退避位置との間で移動可能であるので、前記把持装置を前記退避位置に移動させて前記把持装置の消耗部品を交換できる。この場合に、退避位置は、前記把持準備位置から前記軸方向と交差する方向に外れているので、前記軸方向におけるバランス修正装置の寸法を抑えることができる。
また、前記支持体に対し前記回転体を脱着する時に、前記把持装置を前記退避位置に退避させておけば、前記把持装置が把持準備位置で占めていた空間を利用して、支持体に対し前記回転体を着脱できる。即ち、この着脱作業時に、回転体や、これに付随する部品や、該着脱作業に使用する工具などが把持装置に干渉しない。従って、回転体の着脱作業の能率が飛躍的に向上する。
【0011】
本発明の実施形態1によると、前記把持装置が設置され前記交差方向に移動可能な基礎体と、前記交差方向に前記基礎体を駆動する駆動装置と、を備える。
【0012】
本発明の実施形態2によると、前記把持装置が設置され前記交差方向に移動可能な基礎体を備え、該基礎体は、ガイドレールに案内されながら前記交差方向に移動可能である。
【0013】
前記実施形態1または2において、前記基礎体は、前記交差方向に移動可能な交差方向移動体と、この交差方向移動体に対し前記回転体の軸方向に移動可能な軸方向移動体と、を有し、
交差方向移動体が前記把持準備位置にある状態で、軸方向移動体は、前記回転体の一端部を前記把持装置が把持する前進位置と、該前進位置から後退した後退位置との間で前記軸方向に移動可能である。
【0014】
このように、前記基礎体は、前記交差方向に移動可能な交差方向移動体と、この交差方向移動体に対し前記回転体の軸方向に移動可能な軸方向移動体と、を有するので、軸方向移動体を前記軸方向に前後させることで、回転体の一端部に対し軸方向に把持装置を近接または離間させることができる。
【0015】
上述の本発明、実施形態1、または実施形態2において、前記支持体は、前記切削装置により前記回転体を切削する時だけでなく、前記回転体のアンバランスを計測するために前記回転体を回転させる時にも、前記回転体を支持し、
前記回転機械は、回転駆動されるタービン翼を有する前記回転体と、該回転体を回転可能に支持する静止側部材と、を備え、
前記支持体は、前記静止側部材を介して前記回転体を支持し、この状態で、該支持体の内部に前記タービン翼が位置し、
前記支持体に支持された状態の前記回転体を回転駆動するために、前記支持体の内部には、前記タービン翼を回転駆動する流体を流す流路が形成された流路形成体が取り付けられ、
前記支持体の内部から前記流路形成体を取り出すための取出穴が、前記把持準備位置の側に開口するように前記支持体に形成されている。
【0016】
このように、前記支持体の内部から前記流路形成体を取り出すための取出穴が、前記把持準備位置の側に開口するように前記支持体に形成されているので、支持体の内部に対し前記流路形成体を脱着する時に、前記把持装置を前記退避位置に退避させておけば、前記把持装置が把持準備位置で占めていた空間と、支持体の内部との間で、流路形成体を移動できる(なお、この移動は、前記取出穴を通して前記軸方向に行われる)。
【発明の効果】
【0017】
上述した本発明によると、バランス修正装置において、その軸方向寸法を抑えることができ、支持体に対する回転体の着脱作業の能率を飛躍的に向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態によるバランス修正装置の構成を示す。
【図2】図1のA−A矢視から見た簡略平面図である。
【図3】図2の状態から基礎体(交差方向移動体)を退避位置へ移動させた状態を示す簡略平面図である。
【図4】図1のB−B矢視図である。
【図5】図1の破線Cで囲んだ部分の拡大図である。
【図6】図1、図2の状態から、軸方向移動体を前進位置へ移動させた状態を示す。
【図7】図6のA−A矢視から見た簡略平面図である。
【図8】交差方向移動体の駆動装置をロッドレスシリンダで構成した場合を示す簡略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明を実施するための最良の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0020】
図1は、本発明の実施形態によるバランス修正装置10の構成図である。バランス修正装置は、回転機械20の回転バランスを修正する装置である。
【0021】
回転機械20は、この例では、過給機である、過給機20は、エンジンの排ガスにより回転駆動されるタービン翼3と、タービン翼3と一体的に回転することで圧縮空気をエンジンに供給するコンプレッサ翼5と、一端部にタービン翼3が結合され他端部にコンプレッサ翼5が結合される回転軸7と、を有する。タービン翼3、コンプレッサ翼5、および回転軸7から過給機20の回転体9が構成される。また、過給機20は、回転体9を回転可能に支持する静止側部材11を有する。図1の例では、静止側部材11は、回転体9(回転軸7)を支持する軸受7a,7bが内部に組み込まれる軸受ハウジングである。
【0022】
バランス修正装置10は、回転体9のバランスを修正するために、支持体13、切削装置15、把持装置17、および基礎体19を備える。支持体13は、回転機械20の回転体9を回転可能に支持する。切削装置15は、支持体13に支持された回転体9の一部をバランス修正のために切削する。把持装置17は、前記切削の時に、回転体9が回転しないように回転体9の一端部9a(図1の例では、タービン翼3側の先端)を把持する。基礎体19には、把持装置17が設置される。
【0023】
本実施形態によると、把持装置17は、回転体9の軸方向と交差する交差方向(この例では、前記軸方向と直交する水平方向)において、回転体9の一端部9aを把持できる把持準備位置と、前記把持準備位置から外れた退避位置との間で移動可能である。そのために、把持装置17が設置された基礎体19は、駆動装置18に駆動されることで前記交差方向に移動可能である。図2は、図1のA−A矢視図(即ち、平面図)であり、把持装置17が前記把持準備位置にある状態を示し、図3は、把持装置17が前記退避位置にある状態を示す。なお、図2、図3において、簡単のため、回転体9、把持装置17の一部、基礎体19、および後述の駆動装置18、21のみを示している。
【0024】
支持体13をより詳しく説明する。支持体13は、切削装置15により回転体9を切削する時だけでなく、回転体9のアンバランスを計測するために回転体9を回転させる時にも、回転体9を支持する。支持体13は、補強部材23を介して静止側部材11を支持することで、補強部材23と静止側部材11を介して回転体9を支持し、この状態で、タービン翼3が支持体13の内部に位置する。支持体13に支持された状態の回転体9を回転駆動するために、支持体13の内部には、タービン翼3を回転駆動する流体を流す流路25a、25bが形成された流路形成体25が取り付けられる。
【0025】
また、支持体13には、支持体13の外部から流路25a(即ち、スクロール)へ流体(圧縮ガス)を通す通路(図示せず)が形成されてよい。この流体は、流路25aからタービン翼3へ流れ、タービン翼3を回転駆動させた後、流路25bを通り、次いで、支持体13に形成された排気口13aから支持体13の外部へ排出される。
【0026】
さらに、支持体13の内部から流路形成体25を取り出すための取出穴13bが、前記把持準備位置の側に前記軸方向に開口するように支持体13に形成されている。この取出穴13bを塞ぐ閉塞部材27が、ボルトなどにより支持体13に取り外し可能に取り付けられる。図1の例では、この閉塞部材27に排気口13aが形成される。また、図1の例では、流路形成体25は、例えば閉塞部材27を前記軸方向に貫通するボルトにより、閉塞部材27に取り付けられ、これにより、閉塞部材27を介して支持体13に取り付けられる。
【0027】
なお、補強部材23には、回転体9の一部(即ち、タービン翼3が位置する部分)を通すための貫通穴(図示せず)が、その中央において図1の左右方向に貫通している。また、支持体13には、図1の右側から支持体13の内部に、前記軸方向に回転体9の一部(即ち、タービン翼3が位置する部分)を挿入するための挿入穴(図示せず)が、その中央において図1の右方向に開口している。また、補強部材23は、ボルトなどにより支持体13に結合されてもよいし、支持体13と一体成型されてもよい。図1の例では、押圧手段24により、静止側部材11の被押付部11aを補強部材23に押し付ける。押圧手段24は、例えば油圧クランプであり、この場合、油圧クランプ24のクランプロッド24a(例えばスイング式クランプロッド)が、静止側部材11の被押付部11aを補強部材23に前記軸方向に押し付けることで、静止側部材11が補強部材23を介して支持体13に支持される。油圧室を内部に有する油圧クランプ24の本体24bは、支持体13に固定されてよい。このような、油圧クランプ24を、回転軸7の周方向に間隔をおいて複数設けてよい。図4は、図1のB−B矢視図であり、図4の破線で囲まれた範囲Rにおいて、補強部材23は、支持体13に前記軸方向に接触または結合している。
【0028】
切削装置15をより詳しく説明する。切削装置15は、回転体9の他端部9b(この例では、コンプレッサ翼5側の端部)の一部を除去加工する加工具15a(例えば、エンドミル)と、該加工具15aが取り付けられる可動部15bと、該可動部15bを移動させる切削制御部15cと、を有する。この切削制御部15cは、サーボモータを用いて、例えば可動部15bを軸方向(回転軸7の軸方向)、2軸方向(回転軸7の軸方向、および該軸方向と直交する水平方向)または3軸方向(互いに直交する水平2方向と鉛直方向)に移動させる制御装置である。
【0029】
把持装置17をより詳しく説明する。把持装置17は、回転体9の一端部9aを把持する把持部17aと、該把持部17aが先端に結合された把持シャフト17bとを有する。
【0030】
把持部17aは、この例では、コレットチャック17aである。図5は、図1の破線Cで囲んだ部分の拡大図であり、コレットチャック17aを示す。コレットチャック17aは、その周方向に隙間をおいて配置された複数のコレット爪29を有する。各コレット爪29は、コレットチャック17aまたは回転軸7の軸方向(図1、図5の左右方向)から傾いて配置されて、各コレット爪29は、先端部(図1、図5の右端部)のほうが後端部(図1、図5の左端部)よりもコレットチャック17aの中心軸Aに近接している。また、複数のコレット爪29は、後端部において一体的に結合されている。コレットチャック17aの後端部は把持シャフト17bの先端部(図1、図5の右端部)に取り付けられ、これによりコレットチャック17aが把持シャフト17bに支持される。把持装置17は。円筒形の部材であるクランプ部材17cをさらに有する。クランプ部材17cは、コレットチャック17aおよび把持シャフト17bに嵌合している。また、クランプ部材17cは、把持シャフト17bおよびコレットチャック17aの軸方向に移動可能となっている。クランプ部材17cを、適宜の手段により、軸方向後方側(図5の左方向)に移動させることで、クランプ部材17cの内面が各コレット爪29をクランプ部材17cの半径方向内側に押圧する。これにより、各コレット爪29が前記半径方向内側に撓み、コレットチャック17aの内部空間に挿入されている回転体9の一端部9aを強固に把持する。なお、使用により消耗したコレットチャック17aを新たなコレットチャック17aに交換できるように、コレットチャック17aは、ボルト16などにより把持シャフト17bに着脱可能である。
【0031】
基礎体19をより詳しく説明する。基礎体19は、前記交差方向に移動可能な交差方向移動体19aと、交差方向移動体19aに設けられ、交差方向移動体19aに対し回転体9の軸方向に移動可能な軸方向移動体19bと、を有する。交差方向移動体19aが前記把持準備位置にある状態(図1、図2の状態)で、軸方向移動体19bは、回転体9の一端部9aを把持装置17が把持する前進位置(図6、図7の状態)と、該前進位置から後退した後退位置(図2の状態)との間で前記軸方向に移動可能である。即ち、交差方向移動体19aが前記把持準備位置にある状態で、前記後退位置から軸方向移動体19bが前記前進位置まで前記軸方向に移動することで、図6のように、把持部17aが、排気口13aを通して回転体9の一端部9aを把持する前記前進位置まで移動する。
【0032】
交差方向移動体19aは、駆動装置18に駆動されることで前記交差方向に往復動する。駆動装置18は、例えば、前記交差方向に伸縮するエアシリンダ装置と、該エアシリンダ装置に空圧を供給することでエアシリンダ装置を伸縮させる空圧供給装置とからなる。この場合、例えば、図2のように、該エアシリンダ装置のシリンダ18aは、バランス修正装置10の設置台に固定され、該エアシリンダ装置のピストン先端18bは交差方向移動体19aに固定される。
【0033】
軸方向移動体19bは、駆動装置21に駆動されることで前記軸方向に往復動する。駆動装置21は、例えば、前記軸方向に伸縮するエアシリンダ装置と、該エアシリンダ装置に空圧を供給することでエアシリンダ装置を伸縮させる空圧供給装置とからなる。この場合、例えば、図2のように、該エアシリンダ装置のシリンダ21aは、交差方向移動体19aに固定され、エアシリンダ装置のピストン先端21bは軸方向移動体19bに固定される。
【0034】
軸方向移動体19bに関連して、把持装置17は、支持部材31、被押圧部材33、回転位置調節装置35、および回転阻止機構37をさらに有する。
【0035】
2つの支持部材31が、図1のように、前記軸方向に間隔をおいて軸方向移動体19bに固定される。各支持部材31は、把持シャフト17bが回転できるように把持シャフト17bを支持する。そのために、例えば、各支持部材31には、把持シャフト17bが遊びをもって貫通する貫通孔が形成されている。
【0036】
2つの被押圧部材33は、把持シャフト17bに固定される。一方の被押圧部材33は、前記軸方向の一方側から一方の支持部材31に接触し、他方の被押圧部材33は、前記軸方向の他方側から他方の支持部材31に接触する。この構成で、軸方向移動体19bが前記軸方向に移動すると、軸方向移動体19bが支持部材31を介して被押圧部材33を前記軸方向に押圧することで、把持シャフト17bが軸方向移動体19bと共に前記軸方向に移動する。
【0037】
回転位置調節装置35は、把持シャフト17bの回転位置を調節する。回転位置調節装置35は、軸方向移動体19bに設置され、軸方向移動体19bと共に前記軸方向に移動する。また、回転位置調節装置35は、把持部17aが回転体9の一端部9aを把持した状態で、把持シャフト17bを回転させ、これにより、回転体9を回転させ、回転体9の回転方向位置を調節する。図1の例では、回転位置調節装置35は、サーボモータ35aと、サーボモータ35aの回転を減速してサーボモータ35aの回転駆動力を出力する減速機35bと、減速機35bの出力軸に固定されたギヤ35cと、このギヤ35cと噛み合い把持シャフト17bに固定された位置調整ギヤ35dと、を有する。
【0038】
回転阻止機構37は、加工具15aが回転体9の他端部9bを除去加工している時に回転体9を把持した把持部17aが回転してしまわないように、把持シャフト17bをその回転方向に固定する。例えば、回転阻止機構37は、把持シャフト17bに固定され把持シャフト17bから把持シャフト17bの半径方向に突出したフランジ部37aと、このフランジ部37aを把持シャフト17bの軸方向に強固に挟み込むクランプ装置37bとを有するものであってよい。このクランプ装置37bは軸方向移動体17bに固定されるが、その固定位置が適宜の手段によって調節可能になっている。
【0039】
また、バランス修正装置10は、回転体9のアンバランス計測も行える。そのために、バランス修正装置10は、図1にのみ示すように、加速度センサ47、角度センサ49、演算器51、および上述の切削制御部15cを備える。
加速度センサ47は、支持体13に取り付けられる。加速度センサ47は、回転体9が回転している状態で、支持体13の加速度(即ち、振動)を検出する。回転体9の回転は、上述したように、支持体13の外部から流路形成体25の流路25aに流体を供給することで行う。これにより、当該流体によりタービン翼3が回転駆動されて回転体9が回転する。
角度センサ49は、回転体9の回転角を検出する。この回転角は、回転体9が1回転することでゼロ度〜360度まで変化する。即ち、回転角は、所定の始点となる回転体9の回転位相(始点回転角)から回転体9が回転した角度を示す。角度センサ49は、回転体9の他端部9b付近に設けられるが、不使用時には、図示しない装置により加工具15aと干渉しない位置に移動させられる。
演算器51は、加速度センサ47が検出した前記加速度と角度センサ49が検出した前記回転角との関係を表す振動データを生成し、さらに、この振動データから、影響係数を用いて回転体9のアンバランスデータUを算出する。なお、影響係数は、予め取得しておく。影響係数は、例えば、回転体9に試し錘を取り付けること等により回転体9にバランス変化を与え、このバランス変化による振動データ(前記と同様の振動データ)の変化に基づいて算出される。
切削制御部15cは、アンバランスデータUに基づいて加工具15aを移動させる。即ち、切削制御部15cは、演算器51が算出したアンバランスデータUが示す回転角において、アンバランスデータUが示すアンバランス量(=r×m、ここでrは回転体9の軸心からの距離であり、mは質量である)だけ加工具15aが回転体9を切削するように可動部15bを移動させる制御を行う。
【0040】
上述のバランス修正装置10によるバランス修正の手順について説明する。まず、上述のように、交差方向移動体19aが前記把持準備位置にある状態で、軸方向移動体19bを、把持装置17が回転体9の一端部9aを把持する前記前進位置に移動させる。次いで、把持装置17の把持部17aが回転体9の一端部9aを把持する。その後、回転阻止機構37により、上述のように、把持シャフト17bを回転しないように固定する。次に、上述のアンバランスデータUに基づいて、上述のように、切削制御部15cが可動部15bを移動させることで、回転体9の他端部9bを切削する。なお、切削する直前に、回転位置調節装置35により、上述のように把持シャフト17bを回転させ、回転体9の回転方向位置を調節してよい。
【0041】
上述した本発明の実施形態によるバランス修正装置10では、次の作用効果が得られる。
【0042】
(A)把持装置17は、回転体9の一端部9aを把持できる把持準備位置と、前記把持準備位置から外れた退避位置との間で前記前記交差方向に移動可能であるので、把持装置17を前記退避位置に移動させて把持装置17の消耗部品を交換できる。より具体的には、図6の状態から、軸方向移動体19bを回転体9の一端部9aから軸方向に後退させ(図1、図2の状態)、次いで、交差方向移動体19aを前記把持準備位置から前記退避位置へ交差方向に移動させ、この状態(図3の状態)で、把持部17aを把持シャフト17bから外し、該把持シャフト17bに新たな把持を取り付けることができる。この場合に、退避位置は、前記把持準備位置から前記軸方向と交差する方向に外れているので、前記軸方向におけるバランス修正装置10の寸法を抑えることができる。
【0043】
(B)支持体13に対し回転体9を脱着する時に、把持装置17を前記退避位置に退避させておけば、把持装置17が把持準備位置で占めていた空間を利用して、支持体13に対し回転体9を着脱できる。より具体的には、図3のように、交差方向移動体19aを前記退避位置に位置させ、この状態で、把持装置17と基礎体19が把持準備位置で占めていた空間を利用して、支持体13に対し回転体9を着脱できる。即ち、この着脱作業時に、回転体9や、これに付随する部品や、該着脱作業に使用する工具などが把持装置17に干渉しない。従って、回転体9の着脱作業の能率が飛躍的に向上する。
【0044】
(C)支持体13の内部から流路形成体25を取り出すための取出穴13bが、前記把持準備位置の側に開口するように支持体13に形成されているので、支持体13の内部に対し流路形成体25を脱着する時に、把持装置17を前記退避位置に退避させておけば、把持装置17が把持準備位置で占めていた空間と、支持体13の内部との間で、流路形成体25を移動できる。より具体的には、図3のように、交差方向移動体19aを前記退避位置に位置させ、この状態で、支持体13の内部から取出穴13bを通して、流路形成体25を、把持装置17と基礎体19が把持準備位置で占めていた空間へ取り出し、または、該空間からから取出穴13bを通して、流路形成体25を支持体13の内部に取り付けることができる。なお、この時、閉塞部材27は、支持体13から外しておく。
【0045】
本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、以下のように変更を加えてよい。
【0046】
上述の実施形態では、駆動装置18(または駆動装置21)により、前記交差方向に交差方向移動体19a(または前記軸方向に軸方向移動体19b)を移動させたが、本発明はこれに限定されない。即ち、駆動装置18を設けずに、手動で、ガイドレールに案内されながら、回転体9に対し前記交差方向に交差方向移動体19aを移動させてもよいし、駆動装置21を設けずに、手動で、ガイドレールに案内されながら、交差方向移動体19aに対し前記軸方向に軸方向移動体19bを移動させてもよい。これらの場合、他の構成は上述の実施形態と同じであってよい。
【0047】
上述の実施形態では、駆動装置18は、伸縮するエアシリンダ装置により構成されたが、省スペース化のためロッドレスシリンダにより構成されてよい。ロッドレスシリンダは、図8に示す構成を有する。図8は、駆動装置18をロッドレスシリンダで構成した場合を示す。ロッドレスシリンダは、シリンダチューブ18c、ピストン18d、スライダ18eなどを有する。ピストン18dは、シリンダチューブ18cの内部に設けられ、シリンダチューブ18cの軸方向に移動可能である。ピストン18dの外周面には磁石39が取り付けられている。スライダ18eは、シリンダチューブ18cを囲むように設けられ、シリンダチューブ18cに案内されながらシリンダチューブ18cの軸方向に移動可能である。スライダ18eの内周面には、磁石39と対向する磁石41が取り付けられている。シリンダチューブ18cの一端側の空圧導入口43からシリンダチューブ18c内に空圧が供給されると、ピストン18dがシリンダチューブ18cの他端側に移動する。この時、磁石39と磁石41との間の引力により、スライダ18eはピストン18dと共にシリンダチューブ18cの他端側に移動する。同様に、シリンダチューブ18cの他端側の空圧導入口45から空圧がシリンダチューブ18c内に供給されると、ピストン18dがシリンダチューブ18cの一端側に移動する。この時、磁石39と磁石41との間の引力により、スライダ18eはピストン18dと共にシリンダチューブ18cの一端側に移動する。このようなロッドレスシリンダにより駆動装置18を構成する場合、シリンダチューブ18cは、前記交差方向に向けられてバランス修正装置10の設置台に固定され、スライダ18eは、交差方向移動体19aに固定されてよい。同様に、駆動装置21も上述のロッドレスシリンダにより構成されてもよい。この場合、シリンダチューブは、前記軸方向に向けられて交差方向移動体19aに固定され、スライダは、軸方向移動体19bに固定されてよい。
【0048】
補強部材23を設けずに、静止側部材11を、適宜の手段により、直接、支持体13に取り付けることで、支持体13が静止側部材11を支持してもよい。この場合、他の構成は上述の実施形態と同じであってよい。
【符号の説明】
【0049】
3 タービン翼、5 コンプレッサ翼、7 回転軸、
7a,7b 軸受、9 回転体、9a 回転体の一端部、
9b 回転体の他端部、10 バランス修正装置、
11 静止側部材、11a 被押付部、13 支持体、
13a 排気口、13b 取出穴、15 切削装置、
15a 加工具、15b 可動部、17 把持装置、
17a 把持部、17b 把持シャフト、
17c クランプ部材、18 駆動装置,19 基礎体、
19a 交差方向移動体、19b 軸方向移動体、
20 回転機械、21 駆動装置、23 補強部材、
25 流路形成体、25a,25b 流路、27 閉塞部材、
29 コレット爪、31 支持部材、33 被押圧部材、
35 回転位置調節装置、37 回転阻止機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転する回転体を有する回転機械のバランス修正装置であって、
前記回転体を回転可能に支持する支持体と、
前記支持体に支持された回転体の一部をバランス修正のために切削する切削装置と、
前記切削の時に、前記回転体が回転しないように前記回転体の一端部を把持する把持装置と、を備え、
前記把持装置は、前記回転体の軸方向と交差する交差方向において、前記一端部を把持できる把持準備位置と該把持準備位置から外れた退避位置との間で、移動可能である、ことを特徴とするバランス修正装置。
【請求項2】
前記把持装置が設置され前記交差方向に移動可能な基礎体と、
前記交差方向に前記基礎体を駆動する駆動装置と、を備える、ことを特徴とする請求項1に記載のバランス修正装置。
【請求項3】
前記基礎体は、前記交差方向に移動可能な交差方向移動体と、この交差方向移動体に対し前記回転体の軸方向に移動可能な軸方向移動体と、を有し、
交差方向移動体が前記把持準備位置にある状態で、軸方向移動体は、前記回転体の一端部を前記把持装置が把持する前進位置と、該前進位置から後退した後退位置との間で前記軸方向に移動可能である、ことを特徴とする請求項2に記載のバランス修正装置。
【請求項4】
前記支持体は、前記切削装置により前記回転体を切削する時だけでなく、前記回転体のアンバランスを計測するために前記回転体を回転させる時にも、前記回転体を支持し、
前記回転機械は、回転駆動されるタービン翼を有する前記回転体と、該回転体を回転可能に支持する静止側部材と、を備え、
前記支持体は、前記静止側部材を介して前記回転体を支持し、この状態で、該支持体の内部に前記タービン翼が位置し、
前記支持体に支持された状態の前記回転体を回転駆動するために、前記支持体の内部には、前記タービン翼を回転駆動する流体を流す流路が形成された流路形成体が取り付けられ、
前記支持体の内部から前記流路形成体を取り出すための取出穴が、前記把持準備位置の側に開口するように前記支持体に形成されている、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のバランス修正装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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