説明

バラ干し海苔の製造方法

【課題】バラ干し海苔の色の見た目の色の改善を図り、長期間冷凍保存をしても品質や鮮度が劣化しないバラ干し海苔の製造方法を提供する。
【解決手段】バラ干し海苔の製造方法は、採集した原藻を熱湯に浸漬し湯引かせる湯引き工程S11、次に、脱水工程S12、その後、乾燥工程S13、から成る。これに加えて、原藻を湯引き後に凍結保存を行うことにより、原料として長期保存が可能となり、時期・量を問わずバラ干し海苔を供給できる。本バラ干し海苔の製造方法によれば、バラ干し海苔の保存性や風味を向上できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バラ干し海苔の製造方法の技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
バラ干し海苔の製造方法において、原料である摘採された生ノリの原藻は常温で放置すると腐敗が始まるため、すぐに乾燥させる必要がある。そのため、市場に流通しているバラ干し海苔はほとんどが乾物である。このような従来のバラ干し海苔の色は、黒茶色で見た目が悪いという問題がある。そこで、火入れすることにより、緑〜深緑色に見た目の色を改善し、また香ばしい香りを与えている。
【0003】
一方、原料の原藻を冷凍保存して必要に応じて解凍して乾燥させることにより、長期間保存することができ、時期を問わずバラ干し海苔を市場に流通させることができる。しかしながら、一度凍結すると海苔の細胞は破壊されてしまい、解凍後にドリップ等が出て品質が劣化するといった問題がある。
【0004】
バラ干し海苔の市場拡大を図るべく、従来のバラ干し海苔の色の見た目の色の改善を図ることができ、また長期間冷凍保存をしても品質や鮮度が劣化しないバラ干し海苔の製造方法が要望されている。
なお、本書における用語として、“生ノリ”や“原藻”を加工前の原料を表すものとして用い、“〜後のもの”や“〜した原藻”を何かの工程をして半製品状態のものを表すものとして用い、“バラ干し海苔”を出来た製品を表すものとして用いる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−43994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記状況に鑑みて、本発明は、従来のバラ干し海苔の色調の改善を図ることができ、また長期間冷凍保存をしても品質や鮮度が劣化しないバラ干し海苔の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成すべく、本発明の第1の観点によれば、採集した原藻を熱湯に浸漬し湯引かせる湯引き工程、次に、脱水工程、その後、乾燥工程、から成るバラ干し海苔の製造方法が提供される。
かかる第1の観点の方法によれば、湯引き工程が無い従来のバラ干し海苔と比べて、見た目の色が見映えが良い鮮やかな緑色にすることができる。
【0008】
ここで、湯引き工程とは、原藻を熱湯にくぐらせて表面だけ熱を通すこと、原藻を熱湯に短時間浸漬すること、蒸煮することなどの処理を施すことであり、湯通しとも言われる。熱湯は、真水を加熱するものであっても、塩水を加熱するものであってもよい。熱湯浸漬の場合は、原藻の色が緑色に変化するまで原藻を80℃以上の熱湯に浸漬させる。また、蒸煮の場合は、80℃以上の蒸気で蒸す。蒸煮の場合は熱湯浸漬に比べ時間を少しかける。なお、蒸気を加圧した場合は蒸煮時間を短縮でき、蒸気を加熱させてより高温にした場合も蒸煮時間を短縮できる。
また、湯引き工程を経た後は速やかに冷却し、脱水工程を行う。冷却は湯引きした原藻を水道水の流水にて短時間で冷やす。脱水は水切り袋に移して遠心式脱水機などで行われるのが好ましい。
また、乾燥工程は、40℃前後の熱風乾燥でも、日干しでも、常温で放置して乾燥させても構わない。例えば、乾燥は湯引き脱水した後セイロにほぐし拡げ、約1日天日で乾燥する。
なお、摘採した生ノリの原藻であれば、いずれも使用でき、その種類、養殖法等は特に限定されるものではない。
【0009】
次に、本発明の第2の観点によれば、採集した原藻を熱湯に浸漬し湯引かせる湯引き工程、次に、脱水工程、次に、凍結保存工程、次に、解凍工程、その後、乾燥工程、から成るバラ干し海苔の製造方法が提供される。
かかる第2の観点の方法によれば、凍結させた後に解凍したとしても、海苔の品質や鮮度を劣化させない。また、凍結保存工程により凍結状態で長期間保存することができるので、時期を問わずバラ干し海苔を市場に流通させることができる。
【0010】
ここで、凍結保存工程とは、脱水工程を経た後のものをトレーにほぐし拡げ、約−10℃以下で保存する。凍結させる方法については、緩慢凍結あるいは急速冷凍等の方法が好適に用いられ、特に凍結条件は制限されない。
なお、湯引き工程、脱水工程および乾燥工程は、上記第1の観点の方法と同様であり説明を省略する。

【0011】
ここで、上記の第1の観点又は第2の観点のバラ干し海苔の製造方法の湯引き工程において、熱湯浸漬の場合、熱湯の温度が90〜100℃の範囲で、熱湯への浸漬時間が10〜20秒の範囲であることが好ましい。熱湯処理は、浸漬温度が80℃以上で行うことができるが、90〜100℃の範囲で行うことがより好適である。常圧、減圧、加圧などの圧力条件に特に制限されるものではない。また、熱湯への浸漬時間は原藻が緑色を呈するまでで良く、香味の損失を最小限に抑えるために短時間で行うことが好ましく、10〜20秒の範囲とし、特に15秒程度が適当である。なお、加圧することにより、より短時間にすることができる。
【0012】
また、上記の第1の観点又は第2の観点のバラ干し海苔の製造方法の湯引き工程において、蒸煮の場合、蒸気温度が90〜120℃の範囲で、蒸煮時間が10〜20秒の範囲であることが好ましい。蒸煮処理は、蒸気温度が80〜180℃の範囲で行うことができるが、90〜120℃の範囲で行うことがより好適である。常圧、減圧、加圧などの圧力条件に特に制限されるものではない。また、蒸煮時間は原藻が緑色を呈するまでで良く、香味の損失を最小限に抑えるために短時間で行うことが好ましく、5〜30秒の範囲とし、特に10〜20秒の範囲が適当である。なお、加圧することにより、より短時間にすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、バラ干し海苔の色の見た目の色を鮮明な緑色にすることができ、また冷凍・解凍を行うことによる品質や鮮度の劣化を回避できるといった効果を有する。
すなわち、本発明のバラ干し海苔の製造方法によれば、バラ干し海苔の保存性や風味を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】バラ干し海苔の製造方法1の処理工程のフロー図
【図2】バラ干し海苔の製造方法2の処理工程のフロー図
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明していく。なお、本発明の範囲は、以下の実施例や図示例に限定されるものではなく、幾多の変更及び変形が可能である。
【実施例1】
【0016】
先ず、採集した原藻を流水海水にて洗浄し、ザルに移して余分な水分を落とす。
次に、沸騰させた2%塩水にザルのまま15秒間浸漬した後、流水で速やかに冷却する。
冷却した後、水切りネットに移し遠心式脱水機で脱水し、含まれている水分や付着水等を取り除く。
そして脱水後にセイロに細かく拡げ、天日で一日乾燥させる。
これらの工程を経て、実施例1のバラ干し海苔を得る。
【0017】
以下に、従来のバラ干し海苔(No.1)とそれに更に火入れしたもの(No.2)と本発明のバラ干し海苔(No.3)について、その香り、色、食味を比較した結果を説明する。
下表1は、乾燥後のバラ干し海苔の現物のまま評価した結果である。また、下表2は、乾燥後のバラ干し海苔を湯戻ししたものの評価結果である。
【0018】
【表1】

【0019】
【表2】

【0020】
従来のバラ干し海苔(No.1)とそれに更に火入れしたもの(No.2)と本発明のバラ干し海苔(No.3)は、いずれも茶葉のような形態を呈している。本来、乾海苔は黒色(バラ干しも)であるものを火入れすると緑色に変化する。本発明のバラ干し海苔(No.3)は、上記表1,2に示すように、火入れしなくても鮮やかな緑色をしていた。色や食味の向上が確認できた。
また、乾燥後のバラ干し海苔を湯戻ししたものは、従来のバラ干し海苔(No.4)とそれに更に火入れしたもの(No.5)と比べて、鮮やかな緑色をしており、また、食感もシャキシャキとし、色や食味の向上が確認できた。
【0021】
また、従来のバラ干し海苔の場合、乾燥工程までにおいては異物除去が原藻を洗う段階でのみ行われるため、異物混入が多いといった問題がある。これに対して、本発明のバラ干し海苔の場合は、乾燥工程までにおいて原藻を洗う段階と湯通しの段階の2段階で汚れが落とせるという利点がある。また、湯通しした原藻は色が変わるため異物が発見しやすくなり、冷却の最中に異物選別できるといった利点もある。すなわち、本発明のバラ干し海苔の製造工程においては、従来のバラ干し海苔の製造工程と比べて、異物の混入のリスクが軽減できるのである。
【実施例2】
【0022】
先ず、採集した原藻を流水海水にて洗浄し、ザルに移して余分な水分を落とす。
次に、沸騰させた2%塩水にザルのまま15秒間浸漬した後、流水で速やかに冷却する。
冷却した後、水切りネットに移し遠心式脱水機で脱水し、含まれている水分や付着水等を取り除く。
脱水した後、トレーに荒くほぐし拡げて−10℃の冷凍庫で凍結保存する。
3ヶ月後に常温で解凍し、解凍後にセイロに細かく拡げ天日で一日乾燥させる。
これらの工程を経て、実施例2のバラ干し海苔を得る。
実施例2のバラ干し海苔も、実施例1のバラ干し海苔と同様に、火入れしなくても鮮やかな緑色をしていた。色や食味の向上が確認できた。また、乾燥後のバラ干し海苔を湯戻ししたものも、従来のバラ干し海苔とそれに更に火入れしたものと比べて、鮮やかな緑色をしており、また、食感もシャキシャキとし、色や食味の向上が確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、バラ干し海苔の製造方法として有用である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
採集した原藻を熱湯に浸漬し湯引かせる湯引き工程、
次に、脱水工程、
その後、乾燥工程、
から成ることを特徴とするバラ干し海苔の製造方法。
【請求項2】
採集した原藻を熱湯に浸漬し湯引かせる湯引き工程、
次に、脱水工程、
次に、凍結保存工程、
次に、解凍工程、
その後、乾燥工程、
から成ることを特徴とするバラ干し海苔の製造方法。
【請求項3】
前記湯引き工程において、熱湯浸漬の場合、熱湯温度が90〜100℃の範囲で、熱湯への浸漬時間が10〜20秒の範囲であることを特徴とする請求項1又は2に記載のバラ干し海苔の製造方法。
【請求項4】
前記湯引き工程において、蒸煮の場合、蒸気温度が90〜120℃の範囲で、蒸煮時間が10〜20秒の範囲であることを特徴とする請求項1又は2に記載のバラ干し海苔の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−157279(P2012−157279A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−18901(P2011−18901)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(592245502)兵庫県漁業協同組合連合会 (1)
【出願人】(592216384)兵庫県 (258)
【Fターム(参考)】