説明

バリアブル印刷データ処理時間予測プログラムおよび画像形成装置。

【課題】バリアブル印刷において、精度の高いラスタライズ時間の予測を行うことのできるバリアブル印刷データ処理時間予測プログラムを提供する。
【解決手段】固定データと可変データを含むバリアブル印刷データのなかから固定データの数と固定データ再使用数を求め(S5)、各固定データの実際のラスタライズ時間と、固定データ再使用数に再利用時間を乗算した結果とを加算して、固定データ総ラスタライズ時間を算出し(S6、7)、可変データの数と可変データのラスタライズ時間を乗算して可変データの総ラスタライズ時間を算出し(S8〜10)、算出した固定データ総ラスタライズ時間と可変データ総ラスタライズ時間を加算して、バリアブル印刷データのラスタライズ時間を算出する各手順をコンピュータに実行させるプログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バリアブル印刷データ処理時間予測方法およびバリアブル印刷データ処理時間予測プログラムに関し、詳しくは、バリアブル印刷におけるラスタライズ時間を予測するバリアブル印刷データ処理時間予測プログラムおよび画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータなどから出力された印刷データは、実際に印刷する画像の全ての点描をメモリ上に展開してビットマップデータにするラスタライズを行ってから、そのビットマップデータを用紙などに印刷する印刷エンジンに渡している。近年、印刷機器の進歩により、印刷エンジンの高速化が進んでいる一方、ラスタライズ処理が追いつかないという現象が現れてきている。たとえば、コンピュータから受け取った印刷データのなかの1ページ分のラスタライズが、印刷エンジンで実行される印刷処理よりも遅くて、印刷エンジンに空き時間が生じてしまうなどである。
【0003】
このようなラスタライズ処理にかかる時間を予測する技術がある。たとえば、バリアブルデータなどを含む複数ページ分の印刷データを受け取った後、任意のページ数ごとに区切りを入れて、区切りごとに1つのレコードとし、最初レコードについて実際に画像形成を行ってその時間を計測し、それ以降のレコード数に応じて全印刷データの画像処理時間を予測する(特許文献1)。
【0004】
ここでバリアブルデータは、たとえばPPML/VIPP/VPS/FreeFormといったページ記述言語(PDL)により、ページごとに変更されるデータである。このようなバリアブルデータは、ページに応じて変更される可変データと、各ページで同じ画像を印刷するための再使用可能な固定データとで構成されており、これらデータを用いた印刷をバリアブル印刷という。そしてバリアブル印刷では、固定データと可変データが1つのバリアブル印刷データとしてまとめられている。
【0005】
このようなバリアブル印刷においては、固定データは一度ビットマップデータへの展開が終わればメモリ上にキャッシュされて、再使用時には、キャッシュされたデータが使用される。このため再使用時にラスタライズ処理を行わなくてもよい(たとえば特許文献2)。
【0006】
なお、バリアブル印刷の標準化技術の1つとして、PDF/VT(Portable Document Format/Variable Transactional(ISO16612−2:2010および非特許文献1))がある。
【0007】
このようなバリアブル印刷において、従来のように印刷データをレコード単位に分けて、実測した最初のレコードの画像形成時間を元にして全体の印刷データを予測した場合、2番目以降のレコード内で使用される固定データがラスタライズ処理の必要なものか、キャッシュされているデータの再使用ですむのかにより、その画像形成時間は大きく違ってくる。このため従来技術をバリアブル印刷に適用した場合、印刷データ全体の予測時間に狂いが生じてしまうことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−102630号公報
【特許文献2】特開2010−218306号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】インターネット、URL:http://www.jsa.or.jp/stdz/instac/syoukai/H20_houkoku/H20annual-report/01_03.pdf 「高精細画像データ交換技術に関する標準化」、第32〜35頁「3.2.2.2 PDF/VT 規格化の動向」、財団法人 日本規格協会 情報技術標準化研究センター、平成21年3月発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明の目的は、バリアブル印刷において、精度の高いラスタライズ時間の予測を行うことのできるバリアブル印刷データ処理時間予測プログラムおよび画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の上記目的は、下記の手段によって達成される。
【0012】
(1)固定データと可変データを含むバリアブル印刷データを受け取る段階(a)と、前記バリアブル印刷データのなかから使用する前記固定データの数および前記固定データを再使用数する固定データ再使用数を求める段階(b)と、前記使用する前記固定データを実際にラスタライズして得られた実績値と、前記固定データ再使用数にあらかじめ決められた再使用時間を乗算した結果とを加算して、前記固定データの総ラスタライズ時間を算出する段階(c)と、前記可変データを少なくとも1つ実際にラスタライズして得られた実績値と使用する可変データの数を乗算して前記可変データの総ラスタライズ時間を算出する段階(d)と、前記段階(c)で前記算出した前記固定データの総ラスタライズ時間と前記(d)で前記算出した前記可変データの総ラスタライズ時間を加算する段階(e)と、を有する手順をコンピュータに実行させることを特徴とするバリアブル印刷データ処理時間予測プログラム。
【0013】
(2)用紙サイズの違い、解像度の違い、白黒またはカラーの違いによるラスタライズにかかる時間の基準値と、これらの違いによって変更する前記基準値の倍数を設定しておき、前記用紙サイズの違い、解像度の違い、白黒またはカラーの違いの設定に対応した前記倍数を前記基準値に乗算した結果を、前記段階(e)の算出結果に加算する段階(f)を、さらに有することを特徴とする(1)に記載のバリアブル印刷データ処理時間予測プログラム。
【0014】
(3)前記バリアブル印刷データは、少なくとも1つの上位グループを有し、当該上位グループのなかに少なくとも1つの前記可変データが配置された階層と、前記上位グループ内および/または前記上位グループ外に少なくとも1つ配置された前記固定データを有して、前記可変データごとに使用する前記固定データがあらかじめ指定されており、前記上位グループごとにラスタライズにかかる時間を算出することを特徴とする(1)または(2)に記載のバリアブル印刷データ処理時間予測プログラム。
【0015】
(4)前記上位グループごとに前記ラスタライズにかかる時間を算出した後、各上位グループを識別するための情報を、前記算出した前記ラスタライズにかかる時間の長さの順に表示する段階(g)をさらに有することを特徴とする(3)に記載のバリアブル印刷データ処理時間予測プログラム。
【0016】
(5)前記段階(g)において表示された前記ラスタライズにかかる時間の長さの順に、1つの前記上位グループを1つのジョブ単位として印刷を実行させる段階(h)をさらに有することを特徴とする(4)に記載のバリアブル印刷データ処理時間予測プログラム。
【0017】
(6)前記段階(g)において表示された前記上位グループから任意に指定された順番で、1つの前記上位グループを1つのジョブ単位として印刷を実行させる段階(i)をさらに有することを特徴とする(4)に記載のバリアブル印刷データ処理時間予測プログラム。
【0018】
(7)前記(1)〜(6)のいずれか1つに記載のバリアブル印刷データ処理時間予測プログラムを記録したコンピュータ実行可能な記憶媒体。
【0019】
(8)固定データと可変データを含むバリアブル印刷データを受け取る通信手段と、印刷データをラスタライズするラスタライズ手段と、前記バリアブル印刷データのなかから使用する前記固定データの数および前記固定データを再使用数する固定データ再使用数を求め、前記使用する前記固定データを前記ラスタライズ手段にラスタライズさせて得られた実績値と前記固定データ再使用数にあらかじめ決められた再使用時間を乗算した結果とを加算して前記固定データの総ラスタライズ時間を算出し、前記可変データを少なくとも1つ前記ラスタライズ手段にラスタライズさせて得られた実績値と使用する前記可変データの数を乗算して前記可変データの総ラスタライズ時間を算出し、前記算出した前記固定データの総ラスタライズ時間と前記算出した前記可変データの総ラスタライズ時間を加算する制御手段と、を有する画像形成装置。
【0020】
(9)前記制御手段は、用紙サイズの違い、解像度の違い、白黒またはカラーの違いによるラスタライズにかかる時間の基準値と、これらの違いによって変更する前記基準値の倍数を設定しておき、前記用紙サイズの違い、解像度の違い、白黒またはカラーの違いの設定に対応した前記倍数を前記基準値に乗算した結果を、さらに加算することを特徴とする(8)に記載の画像形成装置。
【0021】
(10)少なくとも1つの上位グループを有し、当該上位グループのなかに少なくとも1つの前記可変データが配置された階層と、前記上位グループ内および/または前記上位グループ外に少なくとも1つ配置された前記固定データを有して、前記可変データごとに使用する前記固定データがあらかじめ指定されており、前記制御手段は、前記上位グループごとにラスタライズにかかる時間を前記算出することを特徴とする(8)または(9)に記載の画像形成装置。
【0022】
(11)前記制御手段は、前記上位グループごとに前記ラスタライズにかかる時間を前記算出した後、各上位グループを識別するための情報を、前記ラスタライズにかかる時間の長さの順に表示手段に表示することを特徴とする(10)に記載の画像形成装置。
【0023】
(12)前記制御手段は、前記表示された前記ラスタライズにかかる時間の長さの順に、1つの前記上位グループを1つのジョブ単位として、印刷エンジンに印刷を実行させることを特徴とする(11)に記載の画像形成装置。
【0024】
(13)前記制御手段は、前記表示された前記上位グループから任意に指定された順番で、1つの前記上位グループを1つのジョブ単位として、印刷エンジンに印刷を実行させることを特徴とする(11)に記載の画像形成装置。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、バリアブル印刷データのなかから、固定データの数と、再使用する固定データ再使用数を求めて、それに基づいて全ての固定データをラスタライズする時間を算出し、さらに可変データの数から可変データをラスタライズする時間を算出して、それらの和を算出することで、バリアブル印刷データのラスタライズにかかる時間を予測することとしたので、固定データが再使用されることによりラスタライズ時間が短縮されることを考慮した精度の高いラスタライズ時間を予測することができる。しかも、ここでは最初の固定データのラスタライズ時間、および可変データのラスタライズ時間は実際にラスタライズ処理を行うことで実績値として求めたので、実際に印刷に使用する固定データや可変データのデータ量に合わせたラスタライズ時間を予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の画像形成装置の一実施形態であるプリンタシステムの構成を説明するためのブロック図である。
【図2】PDF/VTで規定されたデータ構造を採用したバリアブル印刷用の印刷データを説明するための図である。
【図3】ラスタライズ時間予測手順を示すフローチャートである。
【図4】図3に続くラスタライズ時間予測手順を示すフローチャートである。
【図5】カテゴリーごとにラスタライズ時間を予測した結果の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0028】
図1は、本発明の画像形成装置の一実施形態であるプリンタシステムの構成を説明するためのブロック図である。
【0029】
プリンタシステム1は、大別して制御部2と印刷部3よりなる。また、このプリンタシステム1は、ネットワーク50を介して、バリアブル印刷データを作成するコンピュータ51(PC)に接続されている。
【0030】
制御部2は制御手段となるものであり、CPU21、RIP部22(Raster Image Processor)、展開用メモリ23、転送用メモリ24、ハードディスク25(HDD)、通信インタフェース26(NIC:Network Interface Card)、操作部27、メモリ28を有する。
【0031】
CPU21は、このプリンタシステム1全体の制御を行う。特に本実施形態では、後述するバリアブル印刷におけるラスタライズ時間予測手順に基づいて作成されたプログラムを実行することで、バリアブル印刷時のラスタライズ時間を予測する。このためこのようなCPU21を含む制御部2は、プログラムを実行するコンピュータ51が内蔵されているものということができる。
【0032】
RIP部22(ラスタライズ手段)は、印刷データのなかからコマンドやページ記述言語(PDL:Page Description Language)を解析して、文字や画像などのデータをラスタライズして、印刷エンジン32へ出力させるビットマップデータの作成を行う。ビットマップデータは展開用メモリ23に展開されて記憶されることになる。
【0033】
展開用メモリ23は、RIP部22においてビットマップデータに展開されたデータの記憶を行う。転送用メモリ24は、展開用メモリ23に展開されたビットマップデータを印刷エンジン32に送る際に一時記憶する。なお、展開用メモリ23と転送用メモリ24は、物理的に異なるメモリチップよりなってもよし、物理的には同じメモリであって、そのなかの記憶領域をそれぞれに対応させて分割して使用する形態であってもよい。またこれらは、たとえばRAMが使用される。
【0034】
ハードディスク25は、後述するバリアブル印刷手順のプログラムを記憶するとともに、コンピュータ51などから送られてきた印刷データ(ラスタライズ前)の一時記憶に使用される。なお、バリアブル印刷手順のプログラムは、ハードディスク25に限らず、たとえばこのプリンタシステム1のファームウェアと共に提供され、EPROMなどのファームウェアの記憶部(不図示)に記憶されていてもよい。
【0035】
通信インタフェース26は、このプリンタシステム1をネットワーク50に接続する。このために、通信インタフェース26は、接続されるネットワーク50の規格に応じてデータの送受信を行う。ここでネットワーク50は、たとえば、イーサネット(登録商標)、トークンリング、およびFDDI(Fiber Distributed Data Interface)等の規格によりコンピュータ51やネットワーク機器同士を接続したLAN(Local Area Network)、またはLAN同士を専用線で接続したWAN(Wide Area Network)等の各種のネットワーク50である。なお、図1においては、ネットワーク50には、コンピュータ51とこのプリンタシステム1がそれぞれ1台ずつ接続されるが、これらは複数台接続されていてもよい。
【0036】
次に、操作部27は表示手段となるものであり、プリンタシステム1に対してユーザがさまざまな操作を入力するための操作パネルと、プリンタシステム1の状態(後述するバリアブル印刷の印刷予測時間の表示なども行う)を表示するための表示画面を備えている。これらはたとえば、液晶画面とタッチパネルなどからなる。なお、プリンタシステム1の操作は、ネットワーク50を介してコンピュータ51から行うことも可能となっている(後述するラスタライズ予測時間の表示もコンピュータ51へ送信することもできる)。
【0037】
メモリ28は、CPU21が各種処理のために使用する記憶装置である。
【0038】
印刷部3は、給紙部31、印刷エンジン32、および後処理部33を有する。
【0039】
給紙部31は、印刷エンジン32へ用紙などの印刷記録媒体を供給する。
【0040】
印刷エンジン32は、制御部2から送られてきたビットマップデータを、制御部2からの指令にしたがって、給紙部31から給紙される印刷記録媒体に印刷する。ここで、印刷エンジン32は、たとえば、インクジェット方式や電子写真方式によるものであり、特に限定されない。これらの印刷エンジン32は、用紙上への印刷時間として、たとえばA4サイズ用紙への印刷が80PPM(毎分80枚)程度可能なものとなっている。これは印刷データによっては、ラスタライズ(画像形成処理)にかかる時間よりも高速なものとなっている。このため1ページ目は、ラスタライズが終了すればすぐに転送されて印刷される。そして2ページ目以降は、印刷エンジン32が1ページ目の印刷動作中に、RIP部22よりラスタライズされる。このとき2ページ目以降のラスタライズに時間を要すると、2ページ目の印刷エンジン32へのビットマップデータの転送が遅れる。このため印刷エンジン32は待機することになる。このように、近年の高速印刷エンジンでは印刷に要する総合時間がラスタライズにかかる時間によって決まってしまうことになる。
【0041】
後処理部33は、印刷後の用紙へのステープル綴じ、複数部印刷の際に部ごとに分けるなどの処理を行う。このような後処理部33はオプション機能であり、プリンタシステム1としてはあってもなくてもよい。
【0042】
次に、プリンタシステム1によるバリアブル印刷動作について説明する。
【0043】
まず、バリアブル印刷のための印刷データについて説明する。バリアブル印刷のための印刷データは、たとえばPDF/VTで規定されたデータ構造を採用することができる。
【0044】
図2は、PDF/VTで規定されたデータ構造を採用したバリアブル印刷用の印刷データを説明するための図である。
【0045】
この印刷データ100は、1つのバリアブル印刷データとして階層構造をなしている。階層構造のルートとしてドキュメント階層101があり、そのなかにメタデータが階層構造になって分類定義されて含まれている。
【0046】
図示する例では、ルートであるドキュメント階層101の下に、カテゴリー111(上位グループ)、その下に可変データ112(下位グループ)と固定データ113がある、階層構造となっている。可変データ112には、それぞれどのような印刷形態で印刷するかを指定するジョブチケット115が付けられている。また、カテゴリーに含まれない固定データ116も、ドキュメント階層101の直下に含まれている。これらは全てメタデータである。
【0047】
カテゴリー111は、バリアブルデータをあらかじめ決めた条件で分類したメタデータである。たとえば、顧客の郵便番号による分類、商品ごとの分類、顧客年齢ごとの分類など、印刷データの作成者によって定義されるデータである。このカテゴリー111の使用形態の一例としては、ダイレクトメールがある。そのシナリオの一例としてはたとえば、今月は特定地域に対してダイレクトメールを送る際に郵便番号で分類したカテゴリーにより分類する。来月は特定の商品の販売促進を行うために、商品ごとのカテゴリーに分類するなどである。
【0048】
たとえば、郵便番号分けする場合、図示するカテゴリーAは、「1××−××××」を含む郵便番号、カテゴリーBは「2××−××××」を含む郵便番号とするなどである。同様に、商品で分ける場合は、カテゴリーAは普及機種、カテゴリー2は高機能機種とするなどである。また、このような郵便番号(すなわち特定地域)と商品分類を複合的に合わせたカテゴリーとしてもよい。たとえば、カテゴリーAは「1××−××××」を含む郵便番号でかつ普及機種、カテゴリーBは「2××−××××」を含む郵便番号でかつ高機能機種とするなどである。もちろんそのほかさまざまな分類や複合分類などが可能である。
【0049】
そして、印刷は、これらカテゴリー111ごとに一つのジョブとしてプリンタシステム1に投入したり、複数のカテゴリー111をまとめて投入したりすることが可能である。
【0050】
1つのカテゴリー111の下には、可変データ112と固定データ113が含まれている。これらもメタデータの1つである。
【0051】
可変データ112は、印刷ページや印刷位置などに応じて変更させて印刷されるものである。具体的には、たとえば、顧客の住所氏名、商品番号や商品写真、ページや印刷位置ごとに異なる見出し語などである。また、この可変データ112のなかにはそれらのデータをどのよう印刷するかを示すジョブチケット115が付属している(後述)。
【0052】
図示する第1可変データおよび第2可変データは、それぞれ可変データ112の1つひとつのグループを示している。たとえば、カテゴリーAが郵便番号分けである場合、第1可変データおよび第2可変データはともにカテゴリーAに分類された郵便番号を持つ顧客の住所氏名などの顧客情報である。ここで、第1可変データおよび第2可変データなどにグループに分けているのは、郵便番号をさらに細分化してグループ分けしてもよいし、同じ顧客情報を解像度などの印刷形態の違いで分けるなどしてもよい。図では第1可変データおよび第2可変データの2つしか示していないがさらに多くのグループ分けが可能である(もちろんグループが1つであってもよい)。
【0053】
そして、それぞれの可変データ112には、そのデータをどのような印刷形態で印刷するかを指定したジョブチケット115が付いている。具体的な印刷形態としては、たとえば第1可変データのデータを印刷する際の、用紙サイズ、解像度、カラー印刷、印刷するページ数、印刷物をステープル綴じ、ページ内の印刷位置、使用する固定データの指定などである。第2可変データも同様である。
【0054】
なお、ジョブチケット115に含まれる印刷形態はここに例示した以外のであってもよく、印刷時に実行させる指令である。したがってジョブチケット115の内容は、印刷する形態(用紙内のレイアウト)に応じて適宜追加したり省略したりできる。たとえば、可変データ112に付属させたジョブチケット115において、印刷位置や用紙サイズなどの指定がない場合、使用する固定データノレイアウトに合わせた用紙サイズが選択される。また、可変データ112のジョブチケット115に印刷するページの指定がなければ、その可変データ112を全ページ分印刷することになる。このような指定がない形態については、デフォルトとしてあらかじめプリンタシステム1に登録しておいてもよいし、ジョブを送信するときに、カテゴリー111とは関係なく無指定のデータを印刷する場合の形態としてプリンタシステム1に送信してもよい。
【0055】
固定データ113はいわゆるフォームデータと称されているものであり、複数のページや複数の印刷位置ごとに同じ内容を印刷するためのデータである。たとえば複数のページで同じ見出し語、複数のページの同じデザインのイメージ、帳票などにおける各項目名および枠線などである。ここで、複数のページ、複数の印刷位置とは、たとえばカタログ印刷などでは、第1〜第10ページまでは家庭用品であることを示す大見出し語、さらにそのなかの第1〜第5ページはリビング用品、第6〜第10ページは台所用品などを示す小見出し語とするなどである。さらには、1ページ内において、ページ内上部に高機能品を示す見出し語、下に普及品を示す見出し語とするなど、印刷位置ごとに異なるものとしてもよい。このような固定データ113は、1つのカテゴリー111のなかで複数あってもよい。
【0056】
一方、カテゴリー111に分類されない固定データ116もメタデータである。カテゴリー111に分類されない固定データ116とは、たとえば、複数のカテゴリー111をまたいで共通に印刷するデータ(イメージや語句など)である。ここで複数のカテゴリー111とは、少なくとも2つ以上のカテゴリー111をいう。
【0057】
次に、バリアブル印刷におけるラスタライズ時間予測手順を説明する。図3および図4は、ラスタライズ時間予測手順を示すフローチャートである。
【0058】
このラスタライズ時間予測手順は、上述した印刷データを印刷ジョブとして受け取った制御部2が実行する手順である。
【0059】
まず、CPU21は、バリアブル印刷データを受け取ると、ラスタライズ時間予測プログラムをハードディスク15内などから読み込む(不図示)。
【0060】
そして、CPU21は、受け取ったバリアブル印刷データの内容をそのまま操作部27の表示画面に表示する(S1)。この段階では、ラスタライズ時間はまだ予測していないので、受け取ったカテゴリーの順番がそのまま表示されることになる。
【0061】
続いて、CPU21は、ラスタライズ時間の予測を行うか否かを操作部27に表示して、ユーザからの指示を受け付ける(S2)。ここで予測しないとの指示であれば(S2:NO)、そのままこの手順は終了することになる。この場合、受け取った印刷データを通常通り(バリアブル印刷であればその内容にしたがって)、印刷実行することになる。
【0062】
一方、予測するとの指示であれば(S2:YES)、受け取った印刷データがバリアブル印刷データであるか否かを確認する。この判断は、バリアブル印刷データの場合、それを示すコマンドが印刷データのなかに格納されているのでそれで判断する(S3)。なお、この判断は、上記S2の前に行ってもよい。
【0063】
S3において、バリアブル印刷データではないと判断された場合(S3:NO)は、この手順は終了する。
【0064】
S3において、バリアブル印刷データであると判断されれば(S3:YES)、続いて、CPU21は、印刷データ中のカテゴリーをそれぞれ1つのジョブとして認識する(S4)。
【0065】
最初はカテゴリー順番1番として、以下の処理を実行することになる。その後は後述するようにカテゴリー順番がインクリメントされてカテゴリージョブごとに実行される。なお、カテゴリーの順番は、たとえば印刷データ中のデータ列として上位にある順とする。また、あらかじめアルファベット順や五十音順などカテゴリーの分類に合わせた順番で実行するようにユーザが指定できるようにしてもよい。
【0066】
続いて、CPU21は、このカテゴリーで使用される固定データの数と、固定データ再使用数を求める(S5)。ここで、「このカテゴリーで使用される固定データの数」とは、このカテゴリー内に配置された固定データに限らず、カテゴリー外に配置されている固定データであっても、このカテゴリー内の可変データが使用する固定データであれば全て含む数である。
【0067】
この固定データの数は、可変データのなかのジョブチケット115で指定されている固定データから求める。つまり、1つの固定データを使用する可変データグループが1つであれば固定データの数も1つである。1つの固定データを使用する可変データグループが2つあれば固定データの数も2つである。また1つの可変データグループ内で2つの固定データを指定していれば固定データの数は2つとなる。
【0068】
固定データ再使用数は、このカテゴリー内で使用する可変データの数から、先に求めた固定データの数を引くことにより求める。最初に固定データを使用するときには必ずラスタライズしなければならない。固定データの数が1つであればラスタライズされる固定データも1つ。固定データの数が2つであればラスタライズされる固定データも2つとなる。一方、再使用される際の時間は後述するように固定データによらず同じとしている。そこで、ここで求める固定データ再使用数は、固定データを使用する全ての可変データの数から先に求めた固定データの数を引けばよいことになる。
【0069】
たとえば、第1固定データを使用する可変データとして100ページ分と、第2固定データを使用する可変データとして20ページ分がある場合を想定する。この場合、使用する固定データの数は2である。一方、可変データの数は120であるから、再使用数は120−2=118となる。
【0070】
次に、このカテゴリーで使用する固定データを実際にRIP部22によりラスタライズさせて、そのラスタライズ時間をメモリ28に実績値として記憶する(S6)。これにより、固定データ1つ分のラスタライズにかかる実績時間(固定データラスタライズ実績値)が得られる。このとき、使用する固定データが複数ある場合は、それぞれの固定データについて実際にラスタライズし、それぞれの固定データラスタライズ実績値を求める。
【0071】
続いて、CPU21は、このカテゴリーで使用される固定データのそれぞれのラスタライズ実績値の和を求め、この和と、固定データ再使用数に固定データ再使用時間を乗算した結果を加算して固定データ総ラスタライズ時間を算出する(S7)。すなわち、Σ(それぞれの固定データラスタライズ実績値)+固定データ再使用数×固定データ再使用時間=固定データ総ラスタライズ時間となる。
【0072】
固定データ再使用時間は、既に展開用メモリ23に展開された固定データを転送用メモリ24に転送する時間である。この時間はメモリ間のデータ転送時間であり、装置固有の値として記憶しておけばよい。この値は、印刷枚数が数十枚程度であれば、実際にラスタライズする時間と比較すれば短い時間である。しかし、数百枚もの印刷となると、いかに短い時間でも無視できなくなるので、本実施形態では取り入れている。
【0073】
さらに厳密には転送されるデータ量によってもメモリ間の転送時間は異なる。しかし、通常、バリアブル印刷では、はがきサイズからA3サイズ程度の大きさの印刷となるため、この程度のデータ量の違いでは転送時間の違いは非常に少ない。このためここでは固定した装置固有の値とした。しかし、たとえば用紙サイズA0やA1などの大きな印刷物のデータと、はがきやA5サイズなど小さな印刷物のデータが異なる固定データとして使用される場合は、データ量の差が大きい。このためメモリ間転送時間も無視できなくなる。そのような場合は、再使用時間もそれぞれの固定データの再使用時間として設定するようにしてもよい。このような場合は、固定データ再使用時間として装置固有の値を使用するか、データ量に応じて設定するかはプリンタシステム1として印刷できる最大の大きさによってあらかじめ決めておくとよい。プリンタシステム1として最大A3までであれば固定してかまわない。一方、プリンタシステム1として最大A0(さらに大きい印刷など)の印刷が可能なシステムでは、固定データの再使用時間も実際に展開用メモリ23から転送用メモリ24への転送時間を実測して設定するようにしておくとよい。もちろんユーザが任意にこれらを切り替えて利用できるようにしておいてもよい。
【0074】
続いて、CPU21は、各可変データのグループごとに可変データ数をカウントして、各可変データのグループごとの可変データ数をメモリ28に記憶する(S8)。可変データの数は、このカテゴリーの下にそれぞれ分類されている可変データグループ内の可変データ数をカウントすればよい。
【0075】
続いて、CPU21は、各可変データのグループごとに可変データ1つを実際にラスタライズしてそのグループごとの可変データラスタライズ実績値を求めて、メモリ28に実績値として記憶する(S9)。ここでは、各グループ分けされている可変データのなかから1つの可変データを実際にラスタライズして、その時間を求める。可変データは、ほとんどは固定データとして提供されたフォーム内などに収まるようにしたデータである。したがって、1つひとつの可変データのラスタライズ時間は、ほとんど差がない。たとえば、顧客情報の住所や氏名は顧客ごとに異なる(長い住所や名前の人もいる)が、その差はデータ量としてごくわずかであるため、それをラスタライズする時間に差が出ることはない。また、商品写真など大きな可変データであっても、写真の内容自体は異なるがそれを印刷する際には、固定データ内の所定位置に収まるようにするので、写真の大きさは同じになる、このためこのような場合に可変データごとにラスタライズ時間が異なることはない。このため、このS8では1つのグループ内から1つの可変データを取り出して実際にラスタライズした時間をそのグループにおける可変データ1つ分のラスタライズ実績値とした。
【0076】
なお、1グループ内の複数の可変データを実際にラスタライズして、その平均を可変データ1つあたりのラスタライズ実績時間とするようにしてもよい。これはたとえばグループ内の可変データごとにラスタライズ時間が大きく差がつくことが予測されるよう場合に有効である。
【0077】
続いて、CPU21は、グループごとに可変データ数と可変データラスタライズ実績値を乗算して、グループごとの可変データラスタライズ時間を算出してそれらの和を求めて、これを可変データ総ラスタライズ時間としてメモリ28に記憶する(S10)。すなわち、Σ(グループごとの可変データ数×可変データラスタライズ実績値)=可変データ総ラスタライズ時間を求めることとなる。
【0078】
続いてCPU21は、可変データのグループごとに、ジョブチケットの内容が同か否かを判断する(S11)。これは、1つのカテゴリー内で異なる印刷形態がある場合に備えて、それぞれの可変データのグループごとにジョブチケットを確認し、印刷形態に合わせたラスタライズ時間を予測するためである。
【0079】
S11において、NOであれば、1つの可変データのグループに付属しているジョブチケットから印刷形態を判断して、その印刷形態にあった重み付け値を全ての可変データのラスタライズの重み付けとして設定する(S12)。すなわち、1つの可変データのグループの印刷形態から重み付け値を決定して、その値を可変で他のグループに依存せずに全ページ数分乗算した値を求めて、メモリ28に記憶しておくのである。
【0080】
一方、S11において、YESであれば、それぞれの可変データのグループに付属しているジョブチケットから印刷形態を判断して、それぞれのグループの可変データの印刷形態に適合した重み付け値を設定する(S13)。すなわち、可変データのグループごとに重み付け値を決定して、それぞれのグループごとにページ数分乗算したものの和を求め、メモリ28に記憶しておくのである。
【0081】
重み付け値は、解像度、用紙サイズ、白黒/カラーの違いなどジョブチケットに規定された設定によって影響を受けるラスタライズ時間について、基準値をあらかじめ決めておく。そして実際のジョブチケットの内容に応じて可変する(後述の事例参照)。解像度、用紙サイズ、白黒/カラーの違いなどはラスタライズする際に印刷形態ごとにラスタライズ時間が異なる要因となる。この基準値は、プリンタシステム1における装置固有の値として、装置内に記憶しておく。
【0082】
この重み付けについては、つねに同じ設定で印刷処理される装置であれば、重み付けの処理は必要ない。たとえば、用紙サイズ、解像度は一定で、白黒しか印刷できない機種ではその値をあらかじめ設定しておいて、予測時間の総和を求める段階(後述S14)でページ数分加算すればよい。同様にカラー印刷しない機種でもカラーの基準値を設けておいてページ数分加算すればよい。
【0083】
続いて、CPU21は、S7の固定データ総ラスタライズ時間、S10の可変データ総ラスタライズ時間、およびS11またはS12の重み付け結果の総和を求め、このカテゴリーにおける予測されたラスタライズ時間としてメモリ28に記憶する(S14)。すなわち、S7の固定データ総ラスタライズ時間+S10の可変データ総ラスタライズ時間+S11またはS12の重み付け結果=このカテゴリーのラスタライズ時間として算出するのである。
【0084】
続いて、CPU21は全てのカテゴリーについてラスタライズ時間の予測値を算出したか否かを判断し(S15)、全てのカテゴリーについてラスタライズ時間の予測値を算出していなければカテゴリーの順番をインクリメントして(S16)、S5に戻り、処理を継続してカテゴリーごとにラスタライズ時間の予測値を求める。
【0085】
一方、S15において全てのカテゴリーについてラスタライズ時間の予測が終了と判断されたなら(S15:YES)、ラスタライズ時間の長い方から短い方の順となるようにカテゴリーの順番を並び替えて、操作部27に表示する(S17)。このようにラスタライズ時間の長い方から順に(または短い方から順に)表示することで、ユーザはどのカテゴリーの印刷時間が長くなるか(または短いか)、見た目でおおよそわかるようになって便利である。表示する順、長い方からとするか短い方からとするか、切り替えたりできるようにしてもよい。なお、ここでカテゴリーを識別するための情報とは、たとえばカテゴリーごとにつけられた名称や分類名などであり、1つひとつのカテゴリーがわかるものであればよく、名称などがない場合は「カテゴリー1」、「カテゴリー2」、…などとしたり、「印刷ジョブ1」、「印刷ジョブ2」、…などとしたものでもかまわない。
【0086】
このようなラスタライズ時間の順番は、印刷データを送信したPCなどへ送信してプリンタシステム1から離れたところにいるユーザが受け取れるようにしてもよい。
【0087】
この表示後、ラスタライズ予測時間処理は終了する。
【0088】
その後、プリンタシステム1は印刷指示に従い、各ジョブを実行することになる。
【0089】
これには、たとえばあらかじめラスタライズにかかる時間の長い順(または短い順)に印刷実行することを指定しておいて、その順に実行させることもできる。あらかじめ指定するとは、たとえばバリアブル印刷データの送信時にPCから送信するようにしてもよい。
【0090】
また、ユーザが操作部27に表示されたラスタライズ時間の予測値を見て、カテゴリーごとにジョブとして印刷する順番を指示して実行させるようにしてもよい。たとえば、ラスタライズ予測時間が1時間程度のものはすぐに実行し、10時間程度と長いものは、他の印刷ジョブの割り込みがない深夜に実行するなどである。また、特定の時間になったら指定したカテゴリーをジョブとして実行するようにしてもよい。
【0091】
印刷処理においては、たとえば、表示順に印刷することが指定されている場合、その順に1つのカテゴリーを印刷ジョブとして、そのなかのジョブチケット115から印刷する形態を判断して、それにあわせて最初に印刷する可変データのグループに指定されている固定データをラスタライズする。このときラスタライズした固定データはそのまま展開用メモリ23に保持(キャッシュ)しておく。そして、次々に可変データをひとつずつ取り出してラスタライズした固定データに重ねてラスタライズして、1つの印刷画像をラスタライズしたら、転送用メモリ24に転送する。そして印刷エンジン32の空きを待って転送用メモリ24から印刷エンジン32にデータを転送して印刷する。複数の可変データのグループがある場合は、最初の可変データのグループの印刷が終了したなら、次の可変データのグループについて、全ての可変データのグループの印刷が終了するまで同様に印刷を実行する。そして1つのカテゴリーの印刷が全て終了したなら、次のカテゴリーがあれば同様に印刷することになる。
【0092】
また、ユーザから印刷するカテゴリーの順番が指定されたなら、上記同様に1つひとつのカテゴリーを、指定された順番で印刷する。さらに時間指定がる場合は、指定された時間になった時点で、そのカテゴリーを印刷する。
【0093】
次に、具体的なラスタライズ時間予測の一例として1つのカテゴリーにおける算出例を説明する。
【0094】
<バリアブル印刷データ例>(1つのカテゴリー内の例)
(1)可変データのグループ:2つ
・第1可変データのグループ:データ数100個、ジョブチケット115:A4、600dpi、カラー印刷、100ページ、第1固定データ使用(すなわち第1可変データのグループは、1つひとつの1データについて第1固定データを使用してA4サイズ一枚に1データを解像度600dpiでカラー印刷することになる)。
【0095】
・第2可変データのグループ:データ数20個、ジョブチケット115:A4、1200dpi、カラー印刷、20ページ、第2固定データ使用(すなわち第2可変データのグループは、1つひとつの1データについて第2固定データを使用してA4サイズ一枚に1データを解像度1200dpiでカラー印刷することになる)。
【0096】
(2)固定データ:第1固定データと第2固定データの2つ
<ジョブチケットのラスタライズ基準値>
A4、600dpi、白黒:50msec
<重み付け(基準値に対する倍数)>
用紙サイズ:A4=1倍、A3は2倍
解像度:600dpi=1倍、300dip=0.8倍、1200dip=1.4倍、2400dip=2.0倍
白黒/カラー:白黒=1倍、カラー=4.2倍
<ラスタライズ実績値>
第1固定データ1つ:400msec(S6での固定データラスタライズ実績値)
第2固定データ1つ:500msec(S6での固定データラスタライズ実績値)
固定データ1つの再使用時間:10msec(装置固有の値)
第1可変データ1つ:100msec(S9での可変データラスタライズ実績値)
第2可変データ1つ:200msec(S9での可変データラスタライズ実績値)
<ラスタライズ時間算出(ラスタライズ時間の予測)>
固定データの使用数および再使用数:
(1)このカテゴリー内で使用する固定データの数=2
(2)固定データ再使用数=118
(3)固定データ総ラスタライズ時間=400msec+500msec+118msec×10=2080msec(手順S7で算出される固定データ総ラスタライズ時間である)
(4)第1可変データのラスタライズ時間:100msec×100(データ数)=10000msec
(5)第2可変データのラスタライズ時間:200msec×20(データ数)=2000msec
(6)可変データ総ラスタライズ時間=上記(4)+上記(5)=12000msec(手順S10で算出される可変データ総ラスタライズ時間である)
(7)重み付け
(7a)第1可変データ:用紙サイズA4=1倍、解像度600dpi=1倍、カラー=4.2倍であるから、50msec×4.2×100(ページ数)=21000msecとなる。
【0097】
(7b)第2可変データ:用紙サイズA4=1倍、解像度1200dpi=1.4倍、カラー=4.2倍であるから、50msec×1.4×20(ページ数)+50msec×4.2×20(ページ数)=1400msec+4200msec=5600msecとなる。
【0098】
(7)総和
(上記(3)の固定データ総ラスタライズ時間)+(上記(6)の可変データ総ラスタライズ時間)+(上記(7a)の第1可変データ重み付け結果)+(上記(7b)の第2可変データ重み付け結果)=2080msec+12000msec+21000msec+5600msec=40680msec=40.7secとなる。
【0099】
次にカテゴリーごとにラスタライズ時間を予測した結果を表示した例を説明する。図5はカテゴリーごとにラスタライズ時間を予測した結果の表示例を示す図である。
【0100】
図するように、カテゴリーごとにラスタライズ時間を予測した結果をそれぞれのカテゴリーの後に付けて表示する。そして、その表示においては、S16の処理によってラスタライズ時間が、上から長い方から短い方の順となるように表示している。また、この表示例では、各可変データのグループごとのラスタライズ時間の予測結果も合わせて表示することとした。これにより、ユーザは、カテゴリーごとに1つのジョブとして印刷実行を指令するだけでなく、1つの可変データのグループを1つのジョブとして印刷実行を指令することもできるようにした。たとえば、1つのカテゴリーをジョブとして印刷を実行したのでは長い時間がかかるような場合に、そのなかの可変データのグループを1つずつジョブとして印刷実行できるので便利である。なお、カテゴリー内の可変データグループの順番も、予測されるラスタライズ時間に応じて並び替えて表示するようにしてもよい。
【0101】
以上説明した本実施形態によれば以下のような効果を奏する。
【0102】
バリアブル印刷データのなかから、固定データの数と、再使用する固定データ再使用数を求めて、それに基づいて全ての固定データをラスタライズする時間を算出し、さらに可変データの数から可変データをラスタライズする時間を算出して、それらの和を算出することで、バリアブル印刷データのラスタライズにかかる時間を予測することとしたので、固定データが再使用されることによりラスタライズ時間が短縮されることを考慮した精度の高いラスタライズ時間を予測することができる。しかも、ここでは最初の固定データのラスタライズ時間、および可変データのラスタライズ時間は実際にラスタライズ処理を行うことで実績値として求めたので、実際に印刷に使用する固定データや可変データのデータ量に合わせたラスタライズ時間を予測することができる。
【0103】
また、用紙サイズの違い、解像度の違い、白黒またはカラーの違いなどジョブチケット115で指定される印刷形態の違いを重み付けとして加算することとしたので、1つの印刷ジョブのなかでさまざまな印刷形態がある場合にも対応して正確なラスタライズ時間を予測することができる。
【0104】
また、カテゴリー(上位グループ)ごとにラスタライズ時間を予測することとしたので、カテゴリー単位でラスタライズ時間がわかるようになる。
【0105】
また、カテゴリー(上位グループ)ごとに予測したラスタライズ時間の予測値の順に表示することとしたので、ユーザにカテゴリーごとのラスタライズ時間の長短が分かりやすくなる。
【0106】
また、表示されたカテゴリーごとのラスタライズ時間の長さの順に印刷実行することとしたので、自動的に表示されたカテゴリーの順番で印刷できるようになる。
【0107】
また、表示されたカテゴリーのなかから任意に指定された順番で印刷できるようにしたので、ユーザの都合に合わせて印刷の終了を待つことができる。
【0108】
以上本発明を適用した実施形態を説明したが、本発明はこのような実施形態に限定されるものではない。
【0109】
たとえば、バリアブル印刷データとして、上位グループをカテゴリー、下位グループを可変データのグループとした2階層構造のグループ分けとしたが、これらはさらに複数の階層構造(3層以上)としてもよい。その場合、最上位のグループについてのみラスタライズ時間を予測してもよいし、下位のグループについてもそれぞれラスタライズ時間を予測してもよい。さらに印刷実行に際しては、最上位のグループ(上記カテゴリー)を1つのジョブ単位として印刷するだけでなく、下位のグループごとに1つのジョブ単位として印刷するようにしてもよい。
【0110】
また、プリンタシステム1は、制御部2と、印刷にかかわる印刷部3を1つのシステムとしてしたが、これらはそれぞれ別体の構成であってもよい。すなわち、各種制御(ラスタライズ時間の予測を含む)を行う制御部を持つ制御装置と、印刷にかかわる印刷部を持つ印刷装置が別々に構成されていて、これらが通信回線によって接続されているような形態であってもよい。
【0111】
そのほか、本発明は特許請求の範囲に記載された構成に基づきさまざまな改変が可能である。
【符号の説明】
【0112】
1 プリンタシステム、
2 制御部、
3 印刷部、
31 給紙部、
32 印刷エンジン、
33 後処理部、
21 CPU、
22 RIP部、
23 展開用メモリ、
24 転送用メモリ、
25 ハードディスク(HDD)、
26 通信インタフェース(NIC)、
27 操作部、
50 ネットワーク、
51 コンピュータ、
101 ドキュメント階層、
111 カテゴリー、
112 可変データ、
113 固定データ、
115 ジョブチケット、
116 カテゴリーに含まれない固定データ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定データと可変データを含むバリアブル印刷データを受け取る段階(a)と、
前記バリアブル印刷データのなかから使用する前記固定データの数および前記固定データを再使用する固定データ再使用数を求める段階(b)と、
前記使用する前記固定データを実際にラスタライズして得られた実績値と、前記固定データ再使用数にあらかじめ決められた再使用時間を乗算した結果とを加算して、前記固定データの総ラスタライズ時間を算出する段階(c)と、
前記可変データを少なくとも1つ実際にラスタライズして得られた実績値と使用する可変データの数を乗算して前記可変データの総ラスタライズ時間を算出する段階(d)と、
前記段階(c)で前記算出した前記固定データの総ラスタライズ時間と前記(d)で前記算出した前記可変データの総ラスタライズ時間を加算する段階(e)と、
を有する手順をコンピュータに実行させることを特徴とするバリアブル印刷データ処理時間予測プログラム。
【請求項2】
用紙サイズの違い、解像度の違い、白黒またはカラーの違いによるラスタライズにかかる時間の基準値と、これらの違いによって変更する前記基準値の倍数を設定しておき、前記用紙サイズの違い、解像度の違い、白黒またはカラーの違いの設定に対応した前記倍数を前記基準値に乗算した結果を、前記段階(e)の算出結果に加算する段階(f)を、さらに有することを特徴とする請求項1に記載のバリアブル印刷データ処理時間予測プログラム。
【請求項3】
前記バリアブル印刷データは、少なくとも1つの上位グループを有し、当該上位グループのなかに少なくとも1つの前記可変データが配置された階層と、前記上位グループ内および/または前記上位グループ外に少なくとも1つ配置された前記固定データを有して、前記可変データごとに使用する前記固定データがあらかじめ指定されており、
前記上位グループごとにラスタライズにかかる時間を算出することを特徴とする請求項1または2に記載のバリアブル印刷データ処理時間予測プログラム。
【請求項4】
前記上位グループごとに前記ラスタライズにかかる時間を算出した後、各上位グループを識別するための情報を、前記算出した前記ラスタライズにかかる時間の長さの順に表示する段階(g)をさらに有することを特徴とする請求項3に記載のバリアブル印刷データ処理時間予測プログラム。
【請求項5】
前記段階(g)において表示された前記ラスタライズにかかる時間の長さの順に、1つの前記上位グループを1つのジョブ単位として印刷を実行させる段階(h)をさらに有することを特徴とする請求項4に記載のバリアブル印刷データ処理時間予測プログラム。
【請求項6】
前記段階(g)において表示された前記上位グループから任意に指定された順番で、1つの前記上位グループを1つのジョブ単位として印刷を実行させる段階(i)をさらに有することを特徴とする請求項4に記載のバリアブル印刷データ処理時間予測プログラム。
【請求項7】
前記請求項1〜6のいずれか1つに記載のバリアブル印刷データ処理時間予測プログラムを記録したコンピュータ実行可能な記憶媒体。
【請求項8】
固定データと可変データを含むバリアブル印刷データを受け取る通信手段と、
印刷データをラスタライズするラスタライズ手段と、
前記バリアブル印刷データのなかから使用する前記固定データの数および前記固定データを再使用する固定データ再使用数を求め、前記使用する前記固定データを前記ラスタライズ手段にラスタライズさせて得られた実績値と前記固定データ再使用数にあらかじめ決められた再使用時間を乗算した結果とを加算して前記固定データの総ラスタライズ時間を算出し、前記可変データを少なくとも1つ前記ラスタライズ手段にラスタライズさせて得られた実績値と使用する前記可変データの数を乗算して前記可変データの総ラスタライズ時間を算出し、前記算出した前記固定データの総ラスタライズ時間と前記算出した前記可変データの総ラスタライズ時間を加算する制御手段と、
を有する画像形成装置。
【請求項9】
前記制御手段は、用紙サイズの違い、解像度の違い、白黒またはカラーの違いによるラスタライズにかかる時間の基準値と、これらの違いによって変更する前記基準値の倍数を設定しておき、前記用紙サイズの違い、解像度の違い、白黒またはカラーの違いの設定に対応した前記倍数を前記基準値に乗算した結果を、さらに加算することを特徴とする請求項8に記載の画像形成装置。
【請求項10】
少なくとも1つの上位グループを有し、当該上位グループのなかに少なくとも1つの前記可変データが配置された階層と、前記上位グループ内および/または前記上位グループ外に少なくとも1つ配置された前記固定データを有して、前記可変データごとに使用する前記固定データがあらかじめ指定されており、
前記制御手段は、前記上位グループごとにラスタライズにかかる時間を前記算出することを特徴とする請求項8または9に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記制御手段は、前記上位グループごとに前記ラスタライズにかかる時間を前記算出した後、各上位グループを識別するための情報を、前記ラスタライズにかかる時間の長さの順に表示手段に表示することを特徴とする請求項10に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記制御手段は、前記表示された前記ラスタライズにかかる時間の長さの順に、1つの前記上位グループを1つのジョブ単位として、印刷エンジンに印刷を実行させることを特徴とする請求項11に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記制御手段は、前記表示された前記上位グループから任意に指定された順番で、1つの前記上位グループを1つのジョブ単位として、印刷エンジンに印刷を実行させることを特徴とする請求項11に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−206433(P2012−206433A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−74821(P2011−74821)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】