説明

バリア性を有する蓋

【課題】バリア性、カップに対する安定したシール性、更には易開封性が従来品に対して格段に優れ、併せて開封をより分かりやすくするバリア性を有する蓋を提供する。
【解決手段】少なくとも最下層にポリエチレンのシーラント層8を備える最内層7と金属箔層10とからなる下層部4Aと、この下層部4Aに対して剥離可能な上層部4Bとからなり、前記下層部4Aの少なくとも最内層7には複数本の強度弱点部13が設けられていて、前記上層部4Bが剥離可能に下層部4Aから分離でき、また、使用時には前記強度弱点部13によって前記下層部4Aが破れて、開封し易くした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば紙カップの開口にシールされる、金属箔とプラスチックシートの積層体から成る構成の蓋に関する。更に詳しくは、紙カップにシールし密閉でき、バリア性を保ち、しかも押し破ることによって容易に開封できる蓋に関する。
【背景技術】
【0002】
破ることで開封する蓋は、例えばストローで突き刺して開封するものが多数提案され、また、市販されている。また、ミシン目や破断線、更にはカット線などを設けて開封の便を図る提案も多くなされている。
【0003】
ところで、一般的に、紙カップの蓋は、シールをしたときに紙カップのフランジやカールの段差を密閉できるように、蓋の最内層のシール層を厚くし、段差が埋まるように設計されている。紙カップは、矩形の用紙を円筒形或いは扇形の用紙を逆円錐台形状に巻き、その端同士を重合させてこの重合部を糊代としている。したがって、開口にフランジやカールがある場合には、この重合部で段差を生じ、気密性保持の観点から問題がある。これを解消するために、蓋の最下層の樹脂層を厚くして、気密性を保つようにしているのである。
更には、紙カップ用の蓋には、ホットメルトを最内層にする場合が多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の蓋の内、ストローで突き刺して破る形態のものは、大きく開口できる構造ではなく、また、破れ方によっては、蓋の破片が発生し、誤飲などの不測の事態をまねくおそれがある。また、カップのフランジやカールの段差が埋まるように最内層の樹脂層を厚くした場合は、その厚みのために、破って開封することはなかなか困難である。更に、ホットメルトを採用すると、ホットメルトの清浄性に問題の生じるおそれがある(ホットメルトの滓が生じる)。また、高温に晒されると溶融して不用意に開封してしまい、しかもホットメルト特有の臭気が商品価値を損ねるという問題もあった。
【0005】
本発明は、このような問題を解決すべくなされたもので、バリア性、カップに対する安定したシール性、更には易開封性が従来品に対して格段に優れ、併せて開封をより分かりやすくするバリア性を有する蓋を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の技術的な課題を解決するために、本発明の請求項1記載のバリア性を有する蓋は、少なくとも最下層にポリエチレンのシーラント層を備える最内層と金属箔層とからなる下層部と、この下層部に対して剥離可能な上層部とからなり、前記下層部の最内層には複数本の強度弱点部が設けられていて、前記上層部を下層部から剥離することで分離でき、また、使用時には前記強度弱点部によって前記下層部が破れて、開封し易くしたものである。
【0007】
このようなバリア性を有する蓋では、金属箔層によってバリア性を上手く確保する。最内層に放射状に設けられた強度弱点部は、これを押し破ろうとする外圧が負荷されると、強度弱点部に沿って中心から周辺に向かって複数の扇状に容易に分割されて押し破られる。また、この最内層はポリエチレンのシーラント層を有しているので、紙カップ等に用いると、そのフランジやカール部に生じる段差を埋めて気密性を実現する。更には、ホットメルトを採用しないために、高温に晒されても溶融が生じず、また、特有の臭気は全くない。
【0008】
そして本発明では、下層部の外側に剥離ニスやパターン状などに塗布した接着ニス或いはイージーピールフィルムを用いた剥離剤層若しくは異樹脂フィルムの接合を介して積層貼着されている上層部は、下層部を保護するように働く。また、この蓋を強度弱点部によって押し破る作業に先立って、この上層部を剥離することによって生じる剥離音がバージン性の付与に貢献する。
【発明の効果】
【0009】
したがって、この発明は以下の効果を奏する。
本発明のバリア性を有する蓋は、上層部の金属箔層で気密性を十分に確保できる。併せて、下層部の少なくとも最内層にミシン目やカット線などの強度弱点部を設けることによって、容易に押し破ることができる。しかも蓋の破片が生じるおそれも上手く解消できるようになった。また、下層部の最内層はポリエチレンのシーラント層を有するので、カップのフランジやカール部にある段差の存在にかかわらず、これを上手く密閉でき、気密性を十分に確保できる。更には、ホットメルトを採用しないために、安定したシール性が得られ、また、臭気の影響もなくすことができるようになった。
【0010】
特に本発明では、下層部の外側に剥離剤層或いは異樹脂フィルムの接合を介して上層部が積層貼着されている。その結果、内側に強度弱点部を備えた蓋であるに拘らず、下層部、特に強度弱点部を外的衝撃や押圧力、例えば輸送時の衝撃などからしっかりと保護する。したがって、下層部が容易に開封する不測の事態を未然に防止でき、安全性の高い蓋を提供できる。しかも、前記強度弱点部によってこの蓋を押し破る作業に先立って、この上層部を剥離すると、軽快な剥離音が生じるので、バージン性を強く印象付ける。
【0011】
また、本発明は、請求項2に記載のように、少なくとも最下層にポリエチレンのシーラント層を備える最内層の上に金属箔層、合成樹脂層、更には紙層の少なくともいずれか一つが積層された積層体で構成される下層部と、金属箔層を備えしかもこれに合成樹脂層、更には紙層の少なくともいずれか一つが積層された積層体で構成されて前記下層部の外側に剥離層を介して積層される上層部とからなり、前記下層部には複数本の強度弱点部が設けられていて、前記上層部が前記剥離層を介して下層部から分離でき、また、使用時には前記強度弱点部によって前記下層部が破れて、開封し易くすることもできる。
【0012】
更に、本発明は、請求項3に記載のように、少なくとも最下層にポリエチレンのシーラント層を備える最内層の上に接着剤層を介して金属箔層が貼着されてなる下層部と、この下層部の金属箔層の外側に剥離層を介して積層される紙を主体とする上層部とからなり、前記下層部の最内層には中央から放射状に複数本の強度弱点部が設けられていて、前記上層部が剥離層から分離でき、また、使用時には前記強度弱点部によって前記下層部の最内層を含み金属箔層も破れて、開封し易くすることもできる。
【0013】
請求項2並びに請求項3に記載の発明では、物流時等に負荷される外力に対し、下部層の強度弱点部が不用意に破断することのない、より望ましい蓋が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のバリア性を有する蓋の一実施形態を示し、図2中A−A線に沿った断面図である。
【図2】図1の蓋の底面図である。
【図3】図1のバリア性を有する蓋が適用される容器の一部を取り出して拡大表示した拡大図を含む全体分解斜視図である。
【図4】図3の容器が閉まっているときの容器の一端の断面図である。
【図5】図1のバリア性を有する蓋の作用の説明図で、ジャーへ内容物を補充する前の蓋と容器とジャーの関係を示す斜視図である。
【図6】図5に示す蓋の作用の説明図で、要部の断面図である。
【図7】図1のバリア性を有する蓋の作用の説明図で、ジャーへ内容物を補充する途中の蓋と容器とジャーの関係を示す斜視図である。
【図8】図7に示す蓋の作用の説明図で、要部の断面図である。
【図9】強度弱点部を6本にした場合の図2に対応する蓋の底面図である。
【図10】実施例2に示す蓋の構成を示し、図11中A−A線に沿った断面図である。
【図11】図10の蓋の底面図である。
【図12】実施例3の構成を示し、図10に対応する断面図である。
【図13】比較例を示す図12に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明のバリア性を有する蓋を、インスタントコーヒーの詰め替え用容器1に適用した場合の実施の形態について、図面に従って詳細に説明する。
尚、この発明は、基本的には、紙カップにシールされるバリア性を有する蓋で、蓋を破ることによって開封する態様のもの全般に適用できる。したがって、以下の実施例に記載の構造に限定されるものでないことは改めて言うまでもない。
【実施例1】
【0016】
先ず、詰め替え用容器1は、図3、4に示すように、容器本体2、ホッパ3、バリア性を有する蓋4、保護キャップ5からなる。
【0017】
容器本体2は有底の円筒形で、基材には矩形の紙片が用いられる。この紙製の円筒はその最外層から内に向かって順に紙、ポリエチレン、アルミニウム箔、ポリエチレンテレフタレート、更にポリエチレンが積層されてなる複合積層シートから作製される。湿気や通気を一切遮断するためである。内面のポリエチレン樹脂は蓋4との接着性を確保するためである。処理の手段は公知の技術が採用される。例えば、ラミネートや塗着などの一般的な手法である。容器本体2を作成するには、前記のように表面処理された矩形の紙片を筒状に丸め、左右両サイドを重合させ、この重合部を糊代として適宜に接着する。接着手段は、接着剤を使用したり、熱融着させたり、適宜公知の手段が採用される。そして、上端は、図3、4に示すように、外方へ環状に巻込んだ環状巻込み部(以下単にカール部と言う)6が形成されている。したがって、このカール部6の上面で前記両サイドの重合部では、どうしても上下方向で段差6Aが生じる。この段差6Aは気密性を損なうために、その始末が重要である。
【0018】
この容器本体2の開口部2A内には、図1に示すように、円筒形のホッパ3が嵌め込まれている。このホッパ3は前記容器本体2と同一の素材或いは厚みを0.8mmに設定された高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレンなど適宜の樹脂素材で形成されている。このホッパ3は周囲に、上端に外向きフランジを備えないストレートな立ち上がり壁3Aを備える。この立ち上がり壁3Aが、その上端を容器本体2の開口部2Aの上端、つまりカール部6の上端面6Bと同じ高さ位置にして、この開口部2A内に嵌め込まれている。また、この立ち上がり壁3Aの下端縁から一体に、上方かつ中央に向かって順次傾斜した漏斗3Bが備わっている。そしてこの漏斗3Bのテーパ角は、少なくとも20°、更に好ましくは40〜45°に設定される。
【0019】
ホッパ3はその漏斗3Bの上端が前記立ち上がり壁3A並びに容器本体2の開口部2Aの上端とほぼ同じ高さ位置に位置あわせされて、この開口部2Aに嵌め込まれる。つまりはほぼ同一平面上に配置できるように位置合わせされている。このホッパ3は嵌め込まれた後、開口部2Aの内周面に適宜に固定される。固定の手段は熱融着、高周波溶着、接着剤使用など、適宜最も好ましい手段が採用される。
【0020】
前記ホッパ3の上端にはバリア性を有する蓋4でシールされる。
このバリア性を有する蓋4は、図1に示すように、下層部4Aと上層部4Bと両者を剥離可能に接着する剥離剤層(後述)で積層した複合シートからなる。
先ず、下層部4Aはポリエチレンのシーラント層8を含む樹脂層からなる最内層7と、この最内層7の樹脂層の外側に接着層(後述)を介して貼着される金属箔層10とから構成される。上層部4Bである外側の層11は紙を主体として構成される。そして、前記下層部4Aの前記金属箔層10の外側に前記上層部4Bが剥離剤層18(後述)を介して貼着されて構成される。更に加えて、前記最内層7にはその中央から放射状に複数本の強度弱点部13が設けられていて、この強度弱点部13によって前記最内層7を含み金属箔層10も容易に破れて、開封し易くしてある。
【0021】
以上の構成を更に具体的に詳述する。
最内層7は最下層が40μmのポリエチレン(線状低密度ポリエチレン:LLDPE)のシーラント層8である。そして、このポリエチレンのシーラント層8の上面に20μmのポリエチレン(低密度ポリエチレン:LDPE)の押出し樹脂フィルム12を介して12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)9がラミネートされている。また、金属箔層10の基材である金属箔には9μmのアルミニウム箔14が採用されている。このアルミニウム箔14の下面に15μmのポリエチレン(低密度ポリエチレン:LDPE)の押出し樹脂フィルム15を介して前記最内層7のポリエチレンテレフタレート(PET)9が貼着積層されている。したがって、この押出し樹脂フィルム15が最内層7と金属箔層10との接着層としての機能を果たす。また、前記アルミニウム箔14の外側に貼着積層される上層部4Bである外側の層11は、坪量52.3g/m2 の上質紙16が採用される。この上質紙16の下面に15μmのポリエチレン(低密度ポリエチレン:LDPE)押出し樹脂フィルム17がラミネートされている。この押出し樹脂フィルム17と前記アルミニウム箔14が剥離ニスなどを用いた剥離剤層18を介して互いに貼着されて、複合シートに形成されている。この複合シートの処理の手段は、上記以外にも公知の技術が採用され、ラミネートや塗着などの一般的な手法である。また、剥離剤層18としては剥離ニス(塩化ゴム系のものをべた塗りしている)や接着ニス(塩化ゴム系のものをドット状に塗着している)が採用される。剥離ニスは一種以上、2層以上の組み合わせも採用できる。塗着の形態もべた塗り、ドット状何れでも良い。
【0022】
上記ポリエチレンのシーラント層8は望ましくは30〜200μmの範囲、その上のポリエチレンの押出し樹脂フィルム12は5〜50μmの範囲の厚さで適宜に選択される。また、金属箔層10のアルミニウム箔14は6〜50μmの範囲の厚さで適宜に選定される。このアルミニウム箔14の下面の前記ポリエチレンの押出し樹脂フィルム15は5〜50μmの範囲から適宜のものが選定される。更に、上質紙16は、望ましくは坪量30〜200g/m2 の範囲から適宜のものが選定される。また、この上質紙16の下面にラミネートされているポリエチレン(低密度ポリエチレン:LDPE)の押出し樹脂フィルム17は5〜50μmの範囲から適宜のものが選定される。剥離剤層18は剥離ニスや接着ニスが採用される。剥離ニスはべた塗りで、また、接着ニスはドット状に塗布される。尚、前記ポエチレンのシーラント層8にラミネートされる前記ポリエチレンテレフタレート(PET)9は5〜50μmの範囲から適宜のものが選定される。しかし、これのポリエチレンテレフタレート(PET)9は必要に応じて設けられれば良い。
【0023】
以上の蓋4の全体形状は、図3、4示すように、前記容器本体2の開口部2Aとほぼ同径、具体的には約90mmφの円形を呈する。そして、その周縁部4Aが容器本体2の開口部2Aの上端、つまりカール部6の上端面6Bに適宜に貼着される。一般的には熱融着される。但し、前記ホッパ3の立ち上がり壁3Aの上端面に貼着されても良いが、このホッパ3の前記漏斗3Bの上端縁、つまり開口3B1の上縁に対しては、単に接触するのみの構成としてある。
【0024】
更に、このバリア性を有する蓋4には、図1〜3に示すように、中央から放射方向に、周方向にほぼ等間隔で、3本の強度弱点部13としてのミシン目又はカット線(図例ではミシン目)が設けられている。設ける範囲は、最内層7並びに前記ポリエチレンの押出し樹脂フィルム15に至るようにしてある。この強度弱点部13であるミシン目又はカット線によって前記最内層7を含み金属箔層10も容易に破れて、開封し易くしてある。ミシン目又はカット線は、図2に示すように、ミシン目の長さは9mm、つなぎは1mmに設定されている。尚、3本という本数は、本発明の所期の目的を達成するための最低限の本数である。また、蓋4の大きさにもよるが、望ましい上限は10本である。11本以上であると逆にこの蓋4の強度を弱めることが懸念され、好ましくない。理想的には3〜10本(6本の例を図9に示す)である。
【0025】
保護キャップ5は、前記容器本体2と同一の素材或いは厚みを0.8mm程度に設定された高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレンなど適宜の樹脂が採用される。図3、4に示すように、前記容器本体2の開口部2Aに外嵌合し、前記蓋4を保護し、併せて内部を衛生的に保つように働く。
【0026】
この発明による前記詰め替え用容器1の内部に粉状のインスタントコーヒーPを収容する作業は、一般に、ホッパ3の開口3B1を介して行われる。
【0027】
次に、このように構成された実施例1の詰め替え用容器1の使用の仕方について説明する。
先ず、保護キャップ5を取り外す。すると、蓋4が露出するので、上層部4Bである外側の層11の縁を指先で摘み、これを上方へ引き上げる。この引き上げによって、外側の層11は剥離層としての剥離剤層18によって下の金属箔層10のアルミニウム箔14から剥がされる。このとき、剥離音が生じるので、バージン性を強く印象付けることができる。次に、図5並びに図6に示すように、容器本体2を逆さにし、ホッパ3の漏斗3Bを補充用の容器の一例であるジャー19の円筒状の口部19Aに内嵌合出来る位置に宛がう。容器本体2内のインスタントコーヒーPはホッパ3から漏斗3B内にも流下してきているが、蓋4によって保持されている。次いで、図7並びに図8に示すように、容器本体2に、その漏斗3Bをジャー19の口部19Aへ向かって押し込むように押圧力を負荷する。この押圧力は、ジャー19の口部19A、一般的には本体から円筒状に立ち上がる筒上部分が蓋4を押し破るための力として働く。すなわち、このジャー19の口部19Aが蓋4を押し上げて、これをホッパ3の立ち上がり壁3Aと漏斗3Bとの間の断面三角形上の空間S内に押し込む力として機能する。この押圧力が付加された蓋4は、強度弱点部13であるミシン目が放射状に設けられているために、たちまちの内に極めて容易にこのミシン目に沿って複数の分割片に破断分割される。同時にこの漏斗3Bはジャー19の口部19A内に入り込む。その結果、前記ホッパ3の漏斗3Bの開口3B1が開放され、容器本体2内のインスタントコーヒーPが、ホッパ3の漏斗3Bによって、センターへと案内されつつ、一挙にジャー19内へ案内流下される。ジャー19へ補充を終えたこの詰め替え用容器1は破棄される。図中2Bは容器本体2の底部である。
【0028】
したがって、ジャー19の口部19Aに内嵌合された漏斗3BはインスタントコーヒーPをジャー19の外部へ零れ落とすことも無くジャー19内へ案内流下させる。また、外気に必要以上触れさせるおそれもなく、したがって香りや風味が損なわれるおそれも可及的に少なくできるようになった。
【0029】
出来上がった蓋の性能試験を行った結果、中央部分が上手く押し破られた。因みに押し破り強度は100N以下であった。また、紙カップを用いた開口部2Aの段差6Aにおける浸透液のチェック試験では、漏れの発生が全く見られなかった。更に、高温保存時にも蓋が紙カップの開口部2Aから剥離する例は見られなかった。また、蓋全体のバリア性はアルミ蓋と遜色なく好ましい結果を得た。ホットメルト蓋と比較して臭気の発生は全くなかった。更に、2000km相当の輸送試験を行ってミシン目の破損状況を調べたが、紙を主体とする外側の層12の存在により、何れの試験品もミシン目の破れは生じなかった。
【0030】
このように、蓋4の最内層はポリエチレン(線状手低密度ポリエチレン:LLDPE)のシーラント層8を備えている。したがって、紙カップ特有の開口部2Aの段差6Aの存在にかかわりなく、蓋4で直接紙カップの開口部2Aをシールした場合でも、これを上手くシールできる。その結果、気密性を十分に確保できるようになった。更には、ホットメルトを採用しないために、安定したシール性が得られ、臭気の影響もなくすことができた。また、内側に強度弱点部13を備えた蓋4であるに拘らず、内側の金属箔層10や最内層7を外的衝撃や押圧力からこれをしっかりと保護でき、安全性の高い蓋4を提供できた。しかも、前記強度弱点部13によってこの蓋4を押し破る作業に先立って、この紙を主体とする外側の層11を剥離すると、軽快な剥離音が生じて、バージン性を強く印象付けることができる。
【実施例2】
【0031】
本第2実施例に示すバリア性を有する蓋4は、図10に示すように、ポリエチレンのシーラント層8を主体とする下層部4Aと金属箔層10を主体とする上層部4Bとが剥離剤層18を介して積層された複合シートで構成されている。
最内層7は最下層が40μmのポリエチレン(線状低密度ポリエチレン:LLDPE)のシーラント層8である。このポリエチレンのシーラント層8の上面に20μmのポリエチレン(低密度ポリエチレン:LDPE)の押出し樹脂フィルム12を介して12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)9がラミネートされている。また、金属箔層10の基材である金属箔には7μmのアルミニウム箔14が採用されている。このアルミニウム箔14の下面に20μmのポリエチレン(低密度ポリエチレン:LDPE)の押出し樹脂フィルム15がラミネートされている。一方、上面には15μmのポリエチレン(低密度ポリエチレン:LDPE)の押出し樹脂フィルム20を介して12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)21がラミネートされている。そして、前記最下層7のポリエチレンテレフタレート(PET)9と上層部4Bの最下面のポリエチレン(低密度ポリエチレン:LDPE)の押出し樹脂フィルム15とが前記剥離剤層18を介して互いに接着されている。この剥離剤層18としては剥離ニス(塩化ゴム系のものをべた塗りしている)や接着ニス(塩化ゴム系のものをドット状に塗着している)が採用される。剥離ニスは一種以上、2層以上の組み合わせも採用できる。塗着の形態もべた塗り、ドット状何れでも良い。本実施例では前記最内層7のポリエチレンテレフタレート(PET)9の上面に、先ず塩化ゴム系の剥離ニスをべた塗し、その上に塩化ゴム系の接着ニスをドット状に塗着した構成を採用している。
【0032】
以上の構成に於いて、下層部4Aはアルミニウム箔やプラスチックフィルム、更には紙等の積層体を採用しても良い。また、これらを採用せずに、単にポリエチレン(線状低密度ポリエチレン:LLDPE)のシーラント層8だけであっても良い。更に、上層部4Bにおいてもアルミニウム箔単体若しくはプラスチックフィルム、紙等の積層体が必要に応じて採用される。アルミニウム箔は6〜50μmの範囲のものが採用される。アルミニウム箔14下面のポリエチレン(低密度ポリエチレン:LDPE)の押出し樹脂フィルム15は5〜50μmの範囲のものを採用できる。
【0033】
また、前記剥離剤層18としては、イージーピールフィルムが採用されても良い。厚みは20〜100μm、上層部4Bの最下面にあるポリエチレン(低密度ポリエチレン:LDPE)の押出し樹脂フィルム15との接着強度は0.1〜8Nに設定される。
【0034】
また、蓋4には下層部4Aから上層部4Bにわたって、この蓋4の周縁から半径方向外方へ突設させたタブ22が備わっている。このタブ22は下層部4Aの周縁との間に設けられたカット線(ミシン目)23を介して上層部4Bを前記剥離剤層18でこの下層部4Aから剥離するように構成されている。このようなタブ22は前述の実施例1に設けてあっても良い。
【0035】
更に蓋4の形状は、図11に示すように、前記タブ22の構成を除いては基本的に実施例1と同様である。相違点は強度弱点部13であるミシン目が中心から端縁に向かって放射状に等間隔で6本設けられていることである。また、容器本体2としてアルミニウムを層構造とする紙カップが採用されている。
【0036】
出来上がった蓋の性能試験を行った結果は次の通りである。即ち、開封性、密封性、バリア性、臭気の有無、強度弱点部の保護、バージン性は何れも実施例1と同様の結果が得られた。併せて、タブ22より上層部を上手く剥離でき、良好な剥離感が得られた。
【実施例3】
【0037】
本第3実施例に示すバリア性を有する蓋4も、図12に示すように、ポリエチレンのシーラント層8を主体とする下層部4Aと金属箔層10を主体とする上層部4Bとが剥離面18Aを介して積層された複合シートに構成されている。
最内層7は最下層が40μmのポリエチレン(線状低密度ポリエチレン:LLDPE)のシーラント層8である。このポリエチレンのシーラント層8の上面に20μmの延伸ポリプロピレンフィルム(OPP)24をドライラミネート接着剤25を用いて積層することで下層部4Aとしての積層フィルムを得た。この積層フィルムの中心から容器本体2へのシール位置まで放射状に延びる方向に6本の強度弱点部13としてのミシン目を施した。ミシン目は9mm長さ、つなぎは1mmである。上層部4Bには金属箔層10として7μmのアルミニウム箔14が採用されている。更に、このアルミニウム箔14の上面に20μmのポリエチレン(PE)の押出し樹脂フィルム20を介して12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)21がラミネートされている。そして、前記最下層7の延伸ポリプロピレンフィルム(OPP)24の上面とアルミニウム箔14の下面とをポリエチレン(PE)の樹脂フィルム26で押しだしラミネートする。これによって2層の剥離可能な積層フィルムを得た。この積層フィルムを指定された大きさの円形でタブ付形状に打ち抜くことで蓋4を得た。前記押し出しポリエチレン(PE)の樹脂フィルム26と延伸ポリプロピレンフィルム(OPP)24は異樹脂である。したがって、完全な接着にはならず、この剥離面18Aで上層部4Bを下層部4Aから手で剥離することが出来た。この実施例3では、以上のように、下層部4Aの最上層の樹脂フィルムと上層部4Bの最下層の樹脂フィルムとを異樹脂とすることで易剥離面を得た。その結果、剥離剤層の構成を簡素にでき、製造の手数、工程を簡略化でき、廉価に提供できる。
【0038】
出来上がった蓋の性能試験を行った結果は以下の通りである。即ち、開封性、密封性、バリア性、臭気の有無、強度弱点部の保護、バージン性は何れも実施例1と同様の結果が得られた。併せて、タブ22より上層部を上手く剥離でき、良好な剥離感が得られた。
【0039】
以上の結果を検証するために、比較製品を作成した。
図13に示すように、厚さ20μmの延伸ポリプロピレンフィルム(OPP)と厚さ40μmのポリエチレン(線状低密度ポリエチレン:LLDPE)フィルムをドライラミネートして積層フィルムを得た。この積層フィルムにピナクル刃で、円形蓋材の中心からシール位置まで放射状に延びる方向に、目の長さは9mm、つなぎ1mmのミシン目を6本施して下層フィルムを得た。一方、ポリエチレン(PE)15μmの押し出しラミネートにて7μmのアルミニウム箔を貼り合せて上層フィルムを得た。そして、前記上下層のフィルムを上記延伸ポリプロピレンフィルム(OPP)面にアンカーコート剤を介して積層して積層フィルムを得、この積層フィルムを指定された大きさの円形に打ち抜いて、蓋材を得た。
【0040】
得られた蓋材を夫々実施例1に示されるインスタントコーヒー粉末が入った容器本体2の開口部2Aの周縁に貼着シールし、蓋の開封性と落下衝撃耐性について夫々性能試験をした。
開封性の検査では、本実施例に係る製品は、タブ22を摘まんで上層部4Bを剥がした後、また、比較例は、そのままの状態で夫々ガラス瓶への詰め替えを行い、その際の瓶口へ押し付けて蓋材が開封したときの押し付け強度を計測した。
【0041】
検査の結果では、本実施例の開封強度は90gであるのに対して、比較例では130gの数値を示し、本実施例によるものの方が遥かに開封性すぐれていることが判明した。
【0042】
また、落下衝撃耐性の検査では、本実施例、比較例共に何れも蓋材で容器本体2の開口部2Aをシールした状態で、高さ60cmから容器を落下させ、ミシン目からの破れがないかを目視により確認した。
【0043】
検査の結果では、本実施例、比較例共々に10回落としても破断が見られず、落下衝撃耐性に関しては、本実施例の優位性は得られなかった。
【0044】
尚、上述各実施例に於いて、ホッパ3の前記立ち上がり壁3Aの上端には、容器本体2の開口縁に気密的に嵌合する鍔部が備わっていて良い。蓋4そのものの上述した実施例1〜3に言う機能の内、開封性、高温保持性、バリア性、臭気、開封感、更には強度弱点部13の加工性、安定性等の利点は全く削がれることはなく、同等の効果を発揮できる。
【0045】
また、以上の実施例では内容物としてインスタンの粉コーヒーを対象としているが、その他にも食品、非食品の他の分流体に適用できる。例えば、水溶性のミルク(粉ミルク)、ココア、茶、またはこれらの組み合わせの粉などである。また、乾燥マッシュポテトや他の乾燥食品、ソースまたはグレービー粉、スープ粉などの他に複写機のトナーなどである。
【0046】
また、ジャー19に替わるものとして、コーヒー作成装置のコーヒー粉タンク、更には複写機のトナーの補充容器などにも適用できる。
【符号の説明】
【0047】
1…詰め替え用容器
2…容器本体
2A…開口部
3…ホッパ
4…蓋
4A…下層部
4B…上層部
5…保護キャップ
6…カール部
6A…段差
7…最内層
8…シーラント層
10…金属箔層
11…外側の層
13…強度弱点部
14…アルミニウム箔
18…剥離剤層
18A…剥離面
19…ジャー
【先行技術文献】
【特許文献】
【0048】
【特許文献1】登録実用新案第3035303号公報
【特許文献2】実開平06−085295号公報
【特許文献3】特開2002−104515号公報
【特許文献4】特開平09―110077号公報
【特許文献5】特開平06―001375号公報
【特許文献6】実開平07−017762号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも最下層にポリエチレンのシーラント層を備える最内層と金属箔層とからなる下層部と、この下層部に対して剥離可能な上層部とからなり、前記下層部の最内層には複数本の強度弱点部が設けられていて、前記上層部を下層部から剥離することで分離でき、また、使用時には前記強度弱点部によって前記下層部が破れて、開封し易くしたバリア性を有する蓋。
【請求項2】
少なくとも最下層にポリエチレンのシーラント層を備える最内層の上に金属箔層、合成樹脂層、更には紙層の少なくともいずれか一つが積層された積層体で構成される下層部と、金属箔層を備えしかもこれに合成樹脂層、更には紙層の少なくともいずれか一つが積層された積層体で構成されて前記下層部の外側に剥離層を介して積層される上層部とからなり、前記下層部には複数本の強度弱点部が設けられていて、前記上層部が前記剥離層を介して下層部から分離でき、また、使用時には前記強度弱点部によって前記下層部が破れて、開封し易くしたバリア性を有する蓋。
【請求項3】
少なくとも最下層にポリエチレンのシーラント層を備える最内層の上に接着剤層を介して金属箔層が貼着されてなる下層部と、この下層部の金属箔層の外側に剥離層を介して積層される紙を主体とする上層部とからなり、前記下層部の最内層には中央から放射状に複数本の強度弱点部が設けられていて、前記上層部が剥離層から分離でき、また、使用時には前記強度弱点部によって前記下層部の最内層を含み金属箔層も破れて、開封し易くしたバリア性を有する蓋。
【請求項4】
強度弱点部はミシン目又はカット線のいずれかである請求項1〜3のいずれかに記載のバリア性を有する蓋。
【請求項5】
強度弱点部は、中心から端縁に向かって放射状にほぼ同一の中心角をもって少なくとも三本以上設けられている請求項1〜4の何れかに記載のバリア性を有する蓋。
【請求項6】
下層部はその最内層の最下層がポリエチレン樹脂層で、このポリエチレン樹脂層の上に接着層を介して樹脂層が貼着された二層構造から成る請求項1〜2、4〜5の何れかに記載のバリア性を有する蓋。
【請求項7】
上層部は紙若しくは金属箔層と少なくともその裏面に押出しポリエチレン樹脂層が貼着されてなる請求項1〜6の何れかに記載のバリア性を有する蓋。
【請求項8】
剥離層は剥離ニスや接着ニス或いはイージーピールフィルムのいずれかである請求項1〜7のいずれかに記載のバリア性を有する蓋。
【請求項9】
下層部の最上層の樹脂フィルムと上層部の最下層の樹脂フィルムとを異樹脂とすることで上層部を下層部から剥離可能にしてある請求項1〜8のいずれかに記載のバリア性を有する蓋。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2009−280283(P2009−280283A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−96534(P2009−96534)
【出願日】平成21年4月10日(2009.4.10)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】