説明

バリア性積層体およびバリア性積層体の製造方法

【課題】有機層を塗布により形成する場合において、バリア性積層体の有機層の発泡を抑制する。
【解決手段】無機層、有機層および無機層が、該順に互いに隣接する構造を有するバリア性積層体であって、前記有機層は、25℃一気圧において、硬化前の粘度が400mPa・s以上の液体または固体であり、かつ、(メタ)アクリル当量が260以下の(メタ)アクリレートを固形分で50重量%以上と、(メタ)アクリロイルオキシ基を含むシランカップリング剤とを含む重合性組成物を層状に塗布して硬化させたものであるバリア性積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バリア性積層体およびこれを用いたガスバリアフィルムに関する。さらに、かかるバリア性積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、種々のガスバリアフィルムが検討されている(特許文献1〜6)。ここで、有機層を作成する際、官能基の数が多いモノマーを光硬化させて形成するとバリア性能が向上することが知られている。このような官能基の数が多いモノマーは、塗布により層状に形成することが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−205354号公報
【特許文献2】特開2010−30290号公報
【特許文献3】特開2010−105321号公報
【特許文献4】特開平10−278167号公報
【特許文献5】特開2006−193596号公報
【特許文献6】特開2007−76282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、官能基の数が多いモノマーを塗布により層状に形成し、硬化すると、高温処理した際に有機層の発泡などの故障が発生し、隣接する無機層にダメージを与えてしまうことがわかった。特に、2層の無機層の間に挟まれた有機層が隣接する無機層に大きなダメージを与えることが分かった。本発明は、かかる問題点を解決したものであり、塗布によって有機層を層状に形成しても、有機層の発砲などの故障が発生しにくいバリア性積層体およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる状況のもと、本願発明者が検討を行ったところ、特定の粘度以上の重合性モノマーを含む重合性組成物を塗布硬化して有機層を形成することにより、高温処理時の有機層の故障発生率を顕著に低下させることが可能であることを見出したこの効果は、アルコキシシリル基モノマー組成物を塗布硬化して形成することにより、より顕著であることが分かった。さらに、光硬化の光照射量を特定量以下とすることにより、特に顕著に、有機層の発泡等の故障を抑制できることが分かった。
【0006】
具体的には、上記課題は下記手段により達成されることを見出した。
(1)無機層、有機層および無機層が、該順に互いに隣接する構造を有するバリア性積層体であって、前記有機層は、25℃一気圧において、硬化前の粘度が400mPa・s以上の液体または固体であり、かつ、(メタ)アクリル当量が260以下の(メタ)アクリレートを固形分で50重量%以上と、(メタ)アクリロイルオキシ基を含むシランカップリング剤とを含む重合性組成物を層状に塗布して硬化させたものであるバリア性積層体。
(2)前記(メタ)アクリレートの(メタ)アクリロイルオキシ基の数が3〜5である、(1)に記載のバリア性積層体。
(3)前記(メタ)アクリレートが、25℃一気圧において、硬化前の粘度が1000mPa・s以上の液体または固体である、(1)または(2)に記載のバリア性積層体。
(4)前記(メタ)アクリレートとして、少なくとも25℃一気圧において固体であるものを含む、(1)または(2)に記載のバリア性積層体。
(5)前記(メタ)アクリレートの(メタ)アクリロイルオキシ基の数が4である、(1)〜(4)のいずれか1項に記載のバリア性積層体。
(6)前記無機層が、アルミニウムおよび/またはケイ素の酸化物および/または窒化物を含む、(1)〜(5)のいずれか1項に記載のバリア性積層体。
(7)前記重合性組成物が、さらに酸性モノマーを含む、(1)〜(6)のいずれか1項に記載のバリア性積層体。
(8)基材フィルムの上に、(1)〜(7)のいずれか1項に記載のバリア性積層体を有する、ガスバリアフィルム。
(9)前記基材フィルムが、ガラス転移温度(Tg)が100℃以上の基材フィルムである、(8)に記載のガスバリアフィルム。
(10)(1)〜(7)のいずれか1項に記載のバリア性積層体または(8)または(9)に記載のガスバリアフィルムを含むデバイス。
(11)無機層、有機層および無機層が、該順に互いに隣接する構造を有するバリア性積層体の製造方法であって、25℃一気圧において、硬化前の粘度が400mPa・s以上の液体または固体であり、かつ、(メタ)アクリル当量が260以下の(メタ)アクリレートを固形分で50重量%以上含む重合性組成物を無機層上に、塗布し硬化することを特徴とする、バリア性積層体の製造方法。
(12)前記重合性組成物がさらに(メタ)アクリロイルオキシ基を含むシランカップリング剤を含む、(11)に記載の製造方法。
(13)前記重合性組成物を紫外線波長365nmにおける照度が1200mw/sec以下の条件で光硬化して照射することを特徴とする、(11)または(12)に記載のバリア性積層体の製造方法。
(14)前記重合性組成物を硬化させるときのUVの積算光量が1500mj/sec以下であることを特徴とする、(11)〜(13)のいずれか1項に記載のバリア性積層体の製造方法。
(15)前記無機層が、プラズマCVD法によって成膜される、(11)〜(14)のいずれか1項に記載のバリア性積層体の製造方法。
(16)前記(メタ)アクリレートの(メタ)アクリロイルオキシ基の数が3〜5である、(11)〜(15)のいずれか1項に記載のバリア性積層体の製造方法。
(17)前記(メタ)アクリレートが、25℃一気圧において、硬化前の粘度が1000mPa・s以上の液体または固体である、(11)〜(16)のいずれか1項に記載のバリア性積層体の製造方法。
(18)前記(メタ)アクリレートとして、少なくとも25℃一気圧において固体であるものを含む、(11)〜(17)のいずれか1項に記載のバリア性積層体の製造方法。
(19)(8)または(9)に記載のガスバリアフィルムを適用した後、150℃以上、1時間以上で処理することを含む、デバイスの製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、有機層の発泡が抑制されたバリア性積層体およびガスバリアフィルムを提供することが可能になった。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【0009】
本発明のバリア性積層体は、無機層、有機層および無機層が、該順に互いに隣接する構造を有するバリア性積層体であって、前記有機層は、25℃一気圧において、硬化前の粘度が400mPa・s以上の液体または固体であり、かつ、(メタ)アクリル当量が260以下の(メタ)アクリレートを固形分で50重量%以上と、(メタ)アクリロイルオキシ基を含むシランカップリング剤とを含む重合性組成物を層状に塗布して硬化させたものであることを特徴とする。
従来から、多官能(メタ)アクリレートを有機層の材料として用いる場合、塗布によって、有機層を層状にして硬化することが有益であると考えられていた。しかしながら、本願発明者が検討を行ったところ、無機層に挟まれている層を多官能(メタ)アクリレートを用いた有機層を塗布によって形成すると、高温処理時に性能劣化が生じる場合があることが分かった。かかる状況のもと、本発明では、特定の重合性組成物を採用することにより、塗布によって有機層を形成しても、バリア性を維持しつつ性能劣化が生じないバリア性積層体の作成に成功したものである。そのため、該有機層に隣接する無機層にダメージを与えることがなくなる。このような問題は、気相蒸着重合では影響は少なく、溶剤塗布によって大面積に有機層を作製する場合に生じる問題である。
【0010】
次に本発明の重合性組成物に含まれる(メタ)アクリレートについて説明する。
【0011】
(メタ)アクリレート
本発明で用いる重合性組成物は、必須成分として、25℃一気圧において、硬化前の粘度が400mPa・s以上の液体または固体であり、かつ、(メタ)アクリル当量が260以下の(メタ)アクリレートを含む。このような(メタ)アクリレートを含むことにより、塗布によって有機層を形成しても、発泡を抑制することが可能になる。
(メタ)アクリレートは、硬化前の粘度が400mPa・s以上の液体または固体であり、硬化前の粘度が500mPa・s以上の液体または固体がより好ましく、硬化前の粘度が1000mPa・s以上の液体または固体がさらに好ましく、特に好ましくは固体である。液体である場合の粘度の上限値は特に定めるものではないが、通常、30000mPa・s以下の液体であることが好ましい。
さらに、(メタ)アクリレートは、その(メタ)アクリル当量が260以下である。このような化合物を用いるとにより、高いバリア性を維持することが可能になる。ここで、(メタ)アクリル当量とは、(メタ)アクリロイル基1モル当たりの分子量である。本発明において、(メタ)アクリル当量は、200以下が好ましい。(メタ)アクリル当量の下限値は特に定めるものではないが、通常、70以上である。
また、本発明で用いる(メタ)アリレート(1)は、(メタ)アクリロイルオキシ基の数が3〜5であることが好ましく、4であることがより好ましい。
本発明で用いる(メタ)アクリレートは、炭素原子、酸素原子、水素原子のみからなることが好ましく、下記一般式(A)または一般式(B)で表されるか化合物であることがより好ましい。
【化1】

(一般式(A)中、Acは、それぞれ、(メタ)アクリロイルオキシ基を示し、L1、L2、L3およびL4は、それぞれ、−CH2−、−CH(OH)−、−O−またはこれらの組み合わせからなる基である。)
【化2】

(一般式(B)中、Acは、それぞれ、(メタ)アクリロイルオキシ基を示し、L1、L2、L3およびL4は、それぞれ、−CH2−、CH(OH)−、−O−またはこれらの組み合わせからなる基である。R1およびR2は、それぞれ、水素原子または炭素数1〜3のアルキル基である。)
【0012】
一般式(A)および一般式(B)において、L1、L2、L3およびL4は、それぞれ、−CH2−、−O−またはこれらの組み合わせからなる基であることが好ましい。
一般式(B)において、R1およびR2は、それぞれ、エチル基が好ましい。
【0013】
以下に本発明で用いられる(メタ)アクリレートの例を示すが、本発明がこれらに限定されるものではないことは言うまでもない。
【0014】
【化3】

【0015】
【化4】

【0016】
【化5】

【0017】
【化6】

【0018】
本発明では、(メタ)アクリレートを重合性組成物の固形分に対し、50質量%以上含み、70質量%以上含むことが好ましい。上限値としては特に定めるものではないが、通常、95質量%以下である。
また、本発明では、(メタ)アクリレートを2種類以上含んでいても良く、この場合、それらの合計量が、50質量%以上であればよい。
【0019】
シランカップリング剤
本発明で用いる重合性組成物は、さらに、(メタ)アクリロイルオキシ基を含むシランカップリング剤を含むことが好ましい。このような化合物を含むことにより、発泡がより効果的に抑制される。
(メタ)アクリロイルオキシ基を含むシランカップリング剤としては、アルコキシシリル基を含むものが好ましく、アルコキシメチル基、アルコキシエチル基を含むものがより好ましい。
シランカップリング剤が含むアルコキシシリル基としては、下記一般式(1)で表されるものであることが好ましい。
一般式(1)
(R1m−Si−(R2n
[上式において、R1はアルコキシ基であり、R2は(メタ)アクリロイルオキシ基を含む有機基を表す。mは1〜3の整数であり、nは4−mの整数である。mが2または3であるとき、2つまたは3つのR1は互いに同一であっても異なっていてもよい。また、nが2または3であるとき、2つまたは3つのR2は互いに同一であっても異なっていてもよい。]
【0020】
一般式(1)において、R1は好ましくは炭素数1〜6のアルコキシ基であり、炭素数1〜4のアルコキシ基がより好ましい。一般式(1)において、R1が複数存在する場合は、R1は互いに同一であっても異なっていても構わないが、好ましいのは同一である場合である。
【0021】
一般式(1)において、R2で表される有機基の炭素数は、好ましくは2〜18であり、より好ましくは3〜14であり、さらに好ましくは4〜10である。一般式(1)において、R2が複数存在する場合は、R2は互いに同一であっても異なっていても構わないが、好ましいのは同一である場合である。(メタ)アクリロイルオキシ基は、通常、分子の末端に含まれる。
【0022】
一般式(1)において、mは1〜3の整数であり、nは4−mの整数であるが、好ましくはmが2または3であり、nが1または2である場合であり、より好ましくはmが3であり、nが1である場合である。
以下に本発明で用いられるシランカップリング剤の例を示すが、本発明がこれらに限定されるものではないことは言うまでもない。
【0023】
【化7】

【0024】
本発明では、シランカップリング剤を重合性組成物の固形分に対し、3〜30質量%含むことが好ましく、10〜25質量%含むことがより好ましい。
また、本発明では、シランカップリング剤を2種類以上含んでいても良く、この場合、それらの合計量が、上記範囲となる。
【0025】
(酸性モノマー)
本発明で用いる重合性組成物には、酸性モノマーが含まれていても良い。酸性モノマーを含めることにより、得られるバリア性積層体の層間密着性がより向上する。また、シランカップリング剤と組み合わせて用いた場合、シランカップリング剤の加水分解を促進し、本発明の発砲がより効果的に抑制される。したがって、酸性モノマーは、本発明で用いるシランカップリング剤と併用することが好ましい。
酸性モノマーとは、カルボン酸、スルホン酸、リン酸、ホスホン酸等の酸性基を含有するモノマーをいう。本発明で用いる酸性モノマーは、カルボン酸基またはリン酸基を含有するモノマーが好ましく、カルボン酸基またはリン酸基を含有する(メタ)アクリレートがより好ましく、リン酸エステル基を有する(メタ)アクリレートがさらに好ましい。
【0026】
(リン酸エステル基を有する(メタ)アクリレート)
リン酸エステル基を有する(メタ)アクリレートとしては、下記一般式(P)で表される化合物を含んでいることがより好ましい。リン酸エステル基を有する(メタ)アクリレートを含むことにより、無機層との密着性がより向上する。
一般式(P)
【化8】

(一般式(P)中、Z1はAc2−O−X2−、重合性基を有しない置換基または水素原子を表し、Z2はAc3−O−X3−、重合性基を有しない置換基または水素原子を表し、Ac1、Ac2およびAc3はそれぞれアクリロイル基またはメタクリロイル基を表し、X1、X2およびX3はそれぞれ2価の連結基を表す。)
一般式(P)で表される化合物は、以下の一般式(P−1)で表される単官能モノマー、以下の一般式(P−2)で表される2官能モノマー、および以下の一般式(P−3)で表される3官能モノマー、ならびにこれらの混合物が好ましい。
一般式(P−1)
【化9】

一般式(P−2)
【化10】

一般式(P−3)
【化11】

【0027】
Ac1、Ac2、Ac3、X1、X2およびX3の定義は、一般式(P)における定義と同じである。一般式(P−1)および(P−2)において、R1は重合性基を有しない置換基または水素原子を表し、R2は重合性基を有しない置換基または水素原子を表す。
一般式(P)、(P−1)〜(P−3)において、X1、X2およびX3は、2価の連結基を表すが、そのような2価の連結基の例として、アルキレン基(例えば、エチレン基、1,2−プロピレン基、2,2−プロピレン基(2,2−プロピリデン基、1,1−ジメチルメチレン基とも呼ばれる)、1,3−プロピレン基、2,2−ジメチル−1,3−プロピレン基、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロピレン基、1,6−ヘキシレン基、1,9−ノニレン基、1,12−ドデシレン基、1,16−ヘキサデシレン基等)、アリーレン基(例えば、フェニレン基、ナフチレン基)、エーテル基、イミノ基、カルボニル基、スルホニル基、およびこれらの2価の基が複数個直列に結合した2価残基(例えば、ポリエチレンオキシエチレン基、ポリプロピレンオキシプロピレン基、2,2−プロピレンフェニレン基等)を挙げることができる。これらの基は置換基を有してもよい。この中でも、アルキレン基、アリーレン基およびこれらが複数直列に結合した2価の基が好ましく、無置換のアルキレン基、無置換のアリーレン基およびこれらが複数直列に結合した2価の基がより好ましい。
1、X2およびX3として好ましいのは、アルキレン基、またはアルキレンオキシカルボニルアルキレン基、ならびに、これらの組み合わせである。
一般式(P)、(P−1)〜(P−3)において、重合性基を有しない置換基としては、例えばアルキル基、アリール基、またはこれらを組み合わせた基などを挙げることができる。好ましいのはアルキル基である。
アルキル基の炭素数は、1〜12が好ましく、1〜9がより好ましく、1〜6がさらに好ましい。アルキル基の具体例として、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基が挙げられる。アルキル基は、直鎖状であっても分枝状であっても環状であっても構わないが、好ましいのは直鎖アルキル基である。アルキル基は、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基などで置換されていてもよい。
アリール基の炭素数は、6〜14が好ましく、6〜10がより好ましい。アリール基の具体例として、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基が挙げられる。アリール基は、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基などで置換されていてもよい。
本発明では、一般式(P)で表されるモノマーを1種類だけ用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、組み合わせて用いる場合は、一般式(P−1)で表される単官能モノマー、一般式(P−2)で表される2官能モノマー、および一般式(P−3)で表される3官能モノマーのうちの2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明では、上記のリン酸エステル基を有する重合性モノマー類として、日本化薬(株)製のKAYAMERシリーズ、ユニケミカル(株)製のPhosmerシリーズ等、市販されている化合物をそのまま用いてもよく、新たに合成された化合物を用いてもよい。
【0028】
酸性モノマーは、重合性組成物の固形分に対し、0.5〜10質量%含むことが好ましく、1〜7質量%含むことがより好ましい。
また、本発明では、酸性モノマーを2種類以上含んでいても良く、この場合、それらの合計量が、上記範囲となる。
【0029】
以下に、本発明で好ましく用いられる酸性モノマーの具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0030】
【化12】

【0031】
本発明の重合性組成物に含まれる重合性化合物は、その90質量%以上が、(メタ)アクリレート、シランカップリング剤および酸性モノマーのいずれかであることが好ましく、実質的に、重合性成分の全てが、(メタ)アクリレート、シランカップリング剤および酸性モノマーのいずれかであることがより好ましい。
【0032】
(溶剤)
本発明の重合性組成物は、通常、溶剤を含んでいる。溶剤としては、ケトン、エステル系の溶剤が例示され、2−ブタノン、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、シクロヘキサノンが好ましい。
溶剤の含量は、重合性組成物の60〜97質量%が好ましく、70〜95質量%がより好ましい。
【0033】
(重合開始剤)
本発明で用いる重合性組成物は、重合開始剤を含んでいてもよい。光重合開始剤を用いる場合、その含量は、重合性化合物の合計量の0.1モル%以上であることが好ましく、0.5〜2モル%であることがより好ましい。このような組成とすることにより、活性成分生成反応を経由する重合反応を適切に制御することができる。光重合開始剤の例としてはチバ・スペシャルティー・ケミカルズ社から市販されているイルガキュア(Irgacure)シリーズ(例えば、イルガキュア651、イルガキュア754、イルガキュア184、イルガキュア2959、イルガキュア907、イルガキュア369、イルガキュア379、イルガキュア819など)、ダロキュア(Darocure)シリーズ(例えば、ダロキュアTPO、ダロキュア1173など)、クオンタキュア(Quantacure)PDO、日本シーベルヘグナー社から市販されているエザキュア(Ezacure)シリーズ(例えば、エザキュアTZM、エザキュアTZT、エザキュアKTO46など)等が挙げられる。
【0034】
(有機層の形成方法)
有機層の形成方法としては、溶液塗布によるものであれば、特に定めるものではないが、例えば、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、スライドコート法、或いは、米国特許第2681294号明細書に記載のホッパ−を使用するエクストル−ジョンコート法により塗布することができる。
【0035】
本発明では、通常、重合性化合物を含む組成物を、光照射して硬化させるが、照射する光は、通常、高圧水銀灯もしくは低圧水銀灯による紫外線である。紫外線波長365nmにおける照度が1200mw/sec以下が好ましく、1000mw/sec以下がより好ましい。下限値としては特に定めるものではないが、通常、50mw/sec以上が好ましい。このような範囲とすることにより、有機層の発泡をより効果的に抑制することが可能になる。
また、本発明においては、重合性組成物を硬化させるときのUVの積算光量が1500mj/sec以下であることが好ましく、1200mj/sec以下であることがより好ましい。下限値としては特に定めるものではないが、通常、100mj/sec以上が好ましい。このような範囲とすることにより、有機層の発泡をより効果的に抑制することが可能になる。
本発明では、また、空気中の酸素によって重合阻害を受けるため、重合時の酸素濃度もしくは酸素分圧を低くすることが好ましい。窒素置換法によって重合時の酸素濃度を低下させる場合、酸素濃度は2%以下が好ましく、0.5%以下がより好ましい。減圧法により重合時の酸素分圧を低下させる場合、全圧が1000Pa以下であることが好ましく、100Pa以下であることがより好ましい。
【0036】
本発明における有機層は、平滑で、膜硬度が高いことが好ましい。
有機層を構成する重合性モノマーの重合率は85%以上であることが好ましく、88%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましく、92%以上であることが特に好ましい。ここでいう重合率とは重合性組成物中の全ての重合性基(例えば、アクリロイル基およびメタクリロイル基)のうち、反応した重合性基の比率を意味する。重合率は赤外線吸収法によって定量することができる。
【0037】
有機層の膜厚については特に限定はないが、薄すぎると膜厚の均一性を得ることが困難になるし、厚すぎると外力によりクラックを発生してバリア性が低下する。かかる観点から、有機層の厚みは50nm〜2000nmが好ましく、200nm〜1500nmがより好ましい。
また、有機層は先に記載したとおり平滑であることが好ましい。有機層の平滑性は1μm角の平均粗さ(Ra値)として1nm未満が好ましく、0.5nm未満であることがより好ましい。有機層の表面にはパーティクル等の異物、突起が無いことが要求される。このため、有機層の成膜はクリーンルーム内で行われることが好ましい。クリーン度はクラス10000以下が好ましく、クラス1000以下がより好ましい。
有機層の硬度は高いほうが好ましい。有機層の硬度が高いと、無機層が平滑に成膜されその結果としてバリア能が向上することがわかっている。有機層の硬度はナノインデンテーション法に基づく微小硬度として表すことができる。有機層の微小硬度は100N/mm以上であることが好ましく、150N/mm以上であることがより好ましい。
【0038】
(無機層)
無機層は、通常、金属化合物からなる薄膜の層である。無機層の形成方法は、目的の薄膜を形成できる方法であればいかなる方法でも用いることができる。例えば、蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的気相成長法(PVD)、種々の化学的気相成長法(CVD)、めっきやゾルゲル法等の液相成長法があり、プラズマCVD法が好ましい。無機層に含まれる成分は、上記性能を満たすものであれば特に限定されないが、例えば、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属酸化窒化物または金属酸化炭化物であり、Si、Al、In、Sn、Zn、Ti、Cu、CeおよびTaから選ばれる1種以上の金属を含む酸化物、窒化物、炭化物、酸化窒化物または酸化炭化物などを好ましく用いることができる。これらの中でも、Si、Al、In、Sn、ZnおよびTiから選ばれる金属の酸化物、窒化物または酸化窒化物が好ましく、特にSiまたはAlの金属酸化物または窒化物が好ましい。これらは、副次的な成分として他の元素を含有してもよい。
本発明により形成される無機層の平滑性は、1μm角の平均粗さ(Ra値)として1nm未満であることが好ましく、0.5nm以下がより好ましい。無機層の成膜はクリーンルーム内で行われることが好ましい。クリーン度はクラス10000以下が好ましく、クラス1000以下がより好ましい。
【0039】
無機層の厚みに関しては特に限定されないが、1層に付き、通常、5〜500nmの範囲内であり、好ましくは10〜200nmである。無機層は複数のサブレイヤーから成る積層構造であってもよい。この場合、各サブレイヤーが同じ組成であっても異なる組成であってもよい。
【0040】
(有機層と無機層の積層)
有機層と無機層の積層は、所望の層構成に応じて有機層と無機層を順次繰り返し製膜することにより行うことができる。本発明では、少なくとも、無機層、有機層および無機層が該順に互いに隣接する構成を有しているが、さらに、有機層および無機層が積層していてもよい。
【0041】
(機能層)
本発明のデバイスにおいては、バリア性積層体上、もしくはその他の位置に、機能層を有していても良い。機能層については、特開2006−289627号公報の段落番号0036〜0038に詳しく記載されている。これら以外の機能層の例としてはマット剤層、保護層、耐溶剤層、帯電防止層、平滑化層、密着改良層、遮光層、反射防止層、ハードコート層、応力緩和層、防曇層、防汚層、被印刷層、易接着層等が挙げられる。
【0042】
バリア性積層体の用途
本発明のバリア性積層体は、通常、支持体の上に設けるが、この支持体を選択することによって、様々な用途に用いることができる。支持体には、基材フィルムのほか、各種のデバイス、光学部材等が含まれる。具体的には、本発明のバリア性積層体はガスバリアフィルムのバリア層として用いることができる。また、本発明のバリア性積層体およびガスバリアフィルムは、バリア性を要求するデバイスの封止にも用いることができる。本発明のバリア性積層体およびガスバリアフィルムは、光学部材にも適用することができる。以下、これらについて詳細に説明する。
【0043】
<ガスバリアフィルム>
ガスバリアフィルムは、基材フィルムと、該基材フィルム上に形成されたバリア性積層体とを有する。ガスバリアフィルムにおいて、本発明のバリア性積層体は、基材フィルムの片面にのみ設けられていてもよいし、両面に設けられていてもよい。
また、本発明におけるガスバリアフィルムは大気中の酸素、水分、窒素酸化物、硫黄酸化物、オゾン等を遮断する機能を有するバリア層を有するフィルム基板である。
ガスバリアフィルムを構成する層数に関しては特に制限はないが、典型的には2層〜30層が好ましく、3層〜20層がさらに好ましい。
【0044】
(基材フィルム)
本発明におけるガスバリアフィルムは、通常、基材フィルムとして、プラスチックフィルムを用いる。
特に本発明では、ガラス転移温度(Tg)が100℃以上の基材フィルムを用いることが好ましい。このような耐熱性の高い基材フィルムを用いることにより、素子に組み込んだ後高熱で処理しても、ダメージを受けにくいという利点がある。このような熱可塑性樹脂として、例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN:120℃)、ポリカーボネート(PC:140℃)、脂環式ポリオレフィン(例えば日本ゼオン(株)製 ゼオノア1600:160℃)、ポリアリレート(PAr:210℃)、ポリエーテルスルホン(PES:220℃)、ポリスルホン(PSF:190℃)、シクロオレフィンコポリマー(COC:特開2001−150584号公報の化合物:162℃)、ポリイミド(例えば三菱ガス化学(株)ネオプリム:260℃)、フルオレン環変性ポリカーボネート(BCF−PC:特開2000−227603号公報の化合物:225℃)、脂環変性ポリカーボネート(IP−PC:特開2000−227603号公報の化合物:205℃)、アクリロイル化合物(特開2002−80616号公報の化合物:300℃以上)が挙げられる(括弧内はTgを示す)。特に、透明性を求める場合には脂環式ポレオレフィン等を使用するのが好ましい。
【0045】
本発明の基板は水や酸素等により常温常圧下における使用によっても経年劣化しうる素子の封止に好ましく用いられる。例えば有機EL素子、液晶表示素子、太陽電池、タッチパネル等が挙げられる。
【0046】
本発明のバリア性積層体は、また、デバイスの膜封止に用いることができる。すなわち、デバイス自体を支持体として、その表面に本発明のバリア性積層体を設ける方法である。バリア性積層体を設ける前にデバイスを保護層で覆ってもよい。
【0047】
本発明のガスバリアフィルムは、デバイスの基板や固体封止法による封止のためのフィルムとしても用いることができる。固体封止法とはデバイスの上に保護層を形成した後、接着剤層、ガスバリアフィルムを重ねて硬化する方法である。接着剤は特に制限はないが、熱硬化性エポキシ樹脂、光硬化性アクリレート樹脂等が例示される。
【0048】
<デバイス>
本発明のバリア性積層体およびガスバリアフィルムは空気中の化学成分(酸素、水、窒素酸化物、硫黄酸化物、オゾン等)によって性能が劣化するデバイスに好ましく用いることができる。前記デバイスの例としては、例えば、有機EL素子、液晶表示素子、薄膜トランジスタ、タッチパネル、電子ペーパー、太陽電池等)等の電子デバイスを挙げることができ有機EL素子に好ましく用いられる。
【0049】
本発明のバリア性積層体は、また、デバイスの膜封止に用いることができる。すなわち、デバイス自体を支持体として、その表面に本発明のバリア性積層体を設ける方法である。バリア性積層体を設ける前にデバイスを保護層で覆ってもよい。
【0050】
本発明のガスバリアフィルムは、デバイスの基板や固体封止法による封止のためのフィルムとしても用いることができる。固体封止法とはデバイスの上に保護層を形成した後、接着剤層、ガスバリアフィルムを重ねて硬化する方法である。接着剤は特に制限はないが、熱硬化性エポキシ樹脂、光硬化性アクリレート樹脂等が例示される。
【0051】
(有機EL素子)
ガスバリアフィルム用いた有機EL素子の例は、特開2007−30387号公報に詳しく記載されている。
【0052】
(液晶表示素子)
液晶表示素子としては、特開2009−172993号公報の段落番号0044の記載を参酌することができる。
【0053】
(その他)
その他の適用例としては、特表平10−512104号公報に記載の薄膜トランジスタ、特開平5−127822号公報、特開2002−48913号公報等に記載のタッチパネル、特開2000−98326号公報に記載の電子ペーパー、特願平7−160334号公報に記載の太陽電池等が挙げられる。
【0054】
<光学部材>
本発明のガスバリアフィルムを用いる光学部材の例としては円偏光板等が挙げられる。(円偏光板)
本発明におけるかすバリアフィルムを基板としλ/4板と偏光板とを積層し、円偏光板を作製することができる。この場合、λ/4板の遅相軸と偏光板の吸収軸とが45°になるように積層する。このような偏光板は、長手方向(MD)に対し45°の方向に延伸されているものを用いることが好ましく、例えば、特開2002−865554号公報に記載のものを好適に用いることができる。
【0055】
また、従来のバリア性積層体は、有機EL素子等に組み込む際に、加熱を行うと有機層が故障が発生して有機層自体や隣接する無機層にダメージを与えていたが、本発明では、このような問題点も回避できた点でさらに有意義である。例えば、150℃以上で、1時間以上、好ましくは、170〜200℃で、1〜3時間加熱処理しても、ガスバリアフィルムがバリア性を維持したものとすることができる。
そもそも、高温処理によって発泡故障が生じるということ自体、全く知られておらず、本発明はかかる観点からも有意義である。具体的には、本発明のバリア性積層体およびガスバリアフィルムは、200℃で、2時間以上加熱してもバリア性能を維持し、15cm×25cmのサイズにおける発泡故障を10個以下とすることも可能である。
【実施例】
【0056】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0057】
ガスバリアフィルムの作成
PENフィルム(帝人デュポン・テオネックスQ65FA、厚さ100μm、Tg:113℃)をA4サイズに裁断し、その表面に以下の手順で、無機層、有機層、無機層を該順に形成して評価した。
【0058】
(無機層の作成)
PENフィルムの表面に、プラズマCVD法によるSiN膜を作成した。
【0059】
(重合性組成物の調製)
下記表に示す組成を有するアクリレート化合物を7.2g、紫外線重合開始剤(日本シーベルヘグナー製、KTO46)0.6g、および2−ブタノン110gからなる重合性組成物を調製した。また、添加剤を加える場合は、さらに、酸性モノマー(日本化薬製、PM−21)0.5gおよび/または3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学製、KBM5103)1.6gも配合した。
【0060】
<溶剤塗布>
PENフィルム上に、上記で調製した重合性組成物を、スピンコーターを用いて塗布し、窒素置換法によって酸素濃度が0.1%以下で高圧水銀ランプを用いて紫外線を下記表に示す積算光量および照度にて照射して有機層を硬化させ、膜厚が約500nmの有機層を形成した。
【0061】
<気相成膜>
PENフィルム上に、上記で調製した重合性組成物を、真空中でフラッシュ蒸着させ、そのまま真空中で高圧水銀ランプを用いて紫外線を下記表に示す積算光量および照度にて照射して有機層を硬化させ、膜厚が約500nmの有機層を形成した。
【0062】
(無機層の作成)
上記有機層の表面に、プラズマCVD法によってSiN膜を作成した。
【0063】
得られたガスバリアフィルムについて、以下の評価を行った。
(カルシウム法によるバリア性能評価)
G.NISATO、P.C.P.BOUTEN、P.J.SLIKKERVEERらSID Conference Record of the International Display Research Conference 1435-1438頁に記載の方法を用いて水蒸気透過率(g/m2/day)を測定した。このときの温度は40℃、相対湿度は90%とした。
【0064】
(2スタック品の作成)
上記ガスバリアフィルムの無機層の表面に、さらに、有機層および無機層を該順に積層した。
【0065】
(加熱評価)
上記のように作成した2スタック品について、200℃のオーブンで2時間ベーキングを行った後の、中央15cm×25cmの部分の膨れの個数をカウントした。
【0066】
下記表中の化合物は下記のとおりである。
PE−4A:共栄社化学製、ライトアクリレートPE−4A、官能基数4
M−408:東亜合成製、アロニックスM−408、官能基数3
A−BPE−4:新中村化学製、NKエステルA−BPE−4、官能基数2
M−350:東亜合成製、アロニックスM−350、官能基数3
A−BPE−10:新中村化学製、NKエステルA−BPE−10、官能基数2
701A:新中村化学製、NKエステル701A、官能基数2
A−600:新中村化学製 NKエステルA−600、官能基数2
【0067】
下記表において、固体または液体の状態は、25℃1気圧におけるものである。粘度は、25℃1気圧において、E型粘度計を用いて測定した場合の粘度であり、単位はmPa・sである。添加剤が○の場合は、上記酸性モノマーおよび3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランの両方を含んでいることを意味している。UV照度の単位は、「mw/sec」である。
【0068】
【表1】

【0069】
上記表から明らかなとおり、本発明で用いる重合性組成物を用いる場合、塗布によって有機層を層状に形成して硬化させても、気相蒸着によって有機層を形成した場合と同様のレベルまで膨れ個数を減らすことができた(実施例8と比較例1)。さらに、膨れ個数の減少は、アルコキシシリル基を含むアクリレートを添加した場合にさらに顕著であることが分かった(実施例1と実施例3、実施例4と実施例8)。また、塗布によって有機層を層状に形成して硬化させても、重合性組成物に含まれる(メタ)アクリレートの粘度が低い場合(比較例2、比較例6、比較例7)、膨れ個数が多くなってしまうことが分かった。特に、比較例2と比較例4の比較から明らかなとおり、同じアクリレートを主成分とする重合性組成物であっても、本発明の範囲外の重合性組成物を用いた場合、有機層を気相蒸着にて製膜した方が圧倒的に膨れ個数が少ないことが分かった。すなわち、本発明で採用する重合性組成物の組成が有機層を塗布にて形成する場合に、大きく寄与していることが分かる。特に、比較例2では、アルコキシシリル基を含むアクリレートを添加しているにもかかわらず、膨れ個数について顕著に劣っている。
以上より、重合性組成物として、25℃一気圧において、硬化前の粘度が400mPa・s以上の液体または固体であり、かつ、(メタ)アクリル当量が260以下の(メタ)アクリレートを固形分で50重量%以上を含む組成物を層状に塗布して有機層を設けることによって、気体蒸着と同等の優れたバリア性積層体が得られることが分かった。そして、その効果は、重合性組成物が(メタ)アクリロイルオキシ基を含むシランカップリング剤を含む場合にさらに顕著であることが分かった。
さらに、有機層を硬化させる際の、UV照度を1000mw/s以下とすることにより、膨れ個数がより減少することが分かった。
【0070】
有機EL発光素子の作成
ITO膜を有する導電性のガラス基板(表面抵抗値10Ω/□)を2−プロパノールで洗浄した後、10分間UV−オゾン処理を行った。この基板(陽極)上に真空蒸着法にて以下の化合物層を順次蒸着した。
(第1正孔輸送層)
銅フタロシアニン:膜厚10nm
(第2正孔輸送層)
N,N'−ジフェニル−N,N'−ジナフチルベンジジン:膜厚40nm
(発光層兼電子輸送層)
トリス(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム:膜厚60nm
(電子注入層)
フッ化リチウム:膜厚1nm
この上に、金属アルミニウムを100nm蒸着して陰極とし、その上に厚さ3μm窒化珪素膜を平行平板CVD法によって付け、有機EL素子を作成した。
次に、熱硬化型接着剤(エポテック310、ダイゾーニチモリ(株))を用いて、作成した有機EL素子上と、実施例1で作成したで作製したガスバリアフィルムを、180℃で2時間処理し、その後、バリア性積層体が有機EL素子の側となるように貼り合せ、65℃で3時間加熱して接着剤を硬化させた。
作成直後の有機EL素子をソースメジャーユニット(SMU2400型、Keithley社製)を用いて7Vの電圧を印加して発光させた。顕微鏡を用いて発光面状を観察したところ、ダークスポットの無い均一な発光を与えることが確認された。
一方、ガスバリアフィルムを比較例2で作成したガスバリアフィルムに代え、他は同様に行った場合、ダークスポットにムラがみられ、均一な発光が得られなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機層、有機層および無機層が、該順に互いに隣接する構造を有するバリア性積層体であって、前記有機層は、25℃一気圧において、硬化前の粘度が400mPa・s以上の液体または固体であり、かつ、(メタ)アクリル当量が260以下の(メタ)アクリレートを固形分で50重量%以上と、(メタ)アクリロイルオキシ基を含むシランカップリング剤とを含む重合性組成物を層状に塗布して硬化させたものであるバリア性積層体。
【請求項2】
前記(メタ)アクリレートの(メタ)アクリロイルオキシ基の数が3〜5である、請求項1に記載のバリア性積層体。
【請求項3】
前記(メタ)アクリレートが、25℃一気圧において、硬化前の粘度が1000mPa・s以上の液体または固体である、請求項1または2に記載のバリア性積層体。
【請求項4】
前記(メタ)アクリレートとして、少なくとも25℃一気圧において固体であるものを含む、請求項1または2に記載のバリア性積層体。
【請求項5】
前記(メタ)アクリレートの(メタ)アクリロイルオキシ基の数が4である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のバリア性積層体。
【請求項6】
前記無機層が、アルミニウムおよび/またはケイ素の酸化物および/または窒化物を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載のバリア性積層体。
【請求項7】
前記重合性組成物が、さらに酸性モノマーを含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載のバリア性積層体。
【請求項8】
基材フィルムの上に、請求項1〜7のいずれか1項に記載のバリア性積層体を有する、ガスバリアフィルム。
【請求項9】
前記基材フィルムが、ガラス転移温度(Tg)が100℃以上の基材フィルムである、請求項8に記載のガスバリアフィルム。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のバリア性積層体または請求項8または9に記載のガスバリアフィルムを含むデバイス。
【請求項11】
無機層、有機層および無機層が、該順に互いに隣接する構造を有するバリア性積層体の製造方法であって、25℃一気圧において、硬化前の粘度が400mPa・s以上の液体または固体であり、かつ、(メタ)アクリル当量が260以下の(メタ)アクリレートを固形分で50重量%以上含む重合性組成物を無機層上に、塗布し硬化することを特徴とする、バリア性積層体の製造方法。
【請求項12】
前記重合性組成物がさらに(メタ)アクリロイルオキシ基を含むシランカップリング剤を含む、請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
前記重合性組成物を紫外線波長365nmにおける照度が1200mw/sec以下の条件で光硬化して照射することを特徴とする、請求項11または12に記載のバリア性積層体の製造方法。
【請求項14】
前記重合性組成物を硬化させるときのUVの積算光量が1500mj/sec以下であることを特徴とする、請求項11〜13のいずれか1項に記載のバリア性積層体の製造方法。
【請求項15】
前記無機層が、プラズマCVD法によって成膜される、請求項11〜14のいずれか1項に記載のバリア性積層体の製造方法。
【請求項16】
前記(メタ)アクリレートの(メタ)アクリロイルオキシ基の数が3〜5である、請求項11〜15のいずれか1項に記載のバリア性積層体の製造方法。
【請求項17】
前記(メタ)アクリレートが、25℃一気圧において、硬化前の粘度が1000mPa・s以上の液体または固体である、請求項11〜16のいずれか1項に記載のバリア性積層体の製造方法。
【請求項18】
前記(メタ)アクリレートとして、少なくとも25℃一気圧において固体であるものを含む、請求項11〜17のいずれか1項に記載のバリア性積層体の製造方法。
【請求項19】
請求項8または9に記載のガスバリアフィルムを適用した後、150℃以上、1時間以上で処理することを含む、デバイスの製造方法。

【公開番号】特開2012−176519(P2012−176519A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−39979(P2011−39979)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】