説明

バルク型レンズを用いた自転車用ライト

【課題】車輪に摩擦を与えることなく発電し、その電力をLEDや半導体レーザーなどの光源に供給し、その光を集光して外部へ出射することができる、バルク型レンズを用いた自転車用ライトを提供する。
【解決手段】バルク型レンズ20と、このバルク型レンズ20に収納される光源1と、磁石の磁束の変化によって生じる起電力を基に光源1に電流を供給する発電部30とをそなえた自転車用ライトであって、バルク型レンズ20が、頂部と、底部と、外周部と、底部から頂部に向かって形成された天井部と内周部とからなる凹部とを有している光学媒体からなり、凹部が光源の収納部であり、天井部が第1のレンズ面として、内周部が光入射面として、外周部が全反射面として、底部が反射面として、頂部が第2のレンズ面として機能する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な構造の光学レンズの提案に基づき、特に発光ダイオード(LED)などの半導体発光素子用の光学レンズとして好適なレンズを用いた自転車用ライトに関する。さらに、ライト点灯用の光源として、半導体素子の発光を新規な構造のレンズで集光して外部へ出射する光源を用いた自転車用ライトに関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)等の半導体発光素子は電気エネルギーを直接光エネルギーに変換するため、ハロゲンランプ等の白熱球や蛍光灯に比し、高効率で、しかも発光に際し発熱を伴わないという特徴を有する。白熱球においては、電気エネルギーを熱エネルギーに変換し、その発熱に伴う光の輻射を利用しているのであり、電気エネルギーの光への変換効率は低く1%を超えることはない。蛍光灯においては、電気エネルギーは放電エネルギーに変換されており、その光への変換効率はまだ低い。一方、LEDにおいては、電気エネルギーの光への変換効率は20%を超える程度が可能で、白熱球や蛍光灯に比し100倍を超える変換効率が容易に達成できる。さらに、LED等の半導体発光素子は、半永久的とも言える長寿命であり、かつ蛍光灯のようなちらつきの問題もないので、目や人体に悪影響を及ぼさない、人にやさしい光源ということが言える。
【0003】
LEDはこのように優れた特徴を有するものの、光の出射面積が、1mm2 程度の小さな面積であるため、照明光やライト光源として利用する場合は1個のLEDでは光束が不足し、多数のLEDを配列する必要がある。また、LEDの発散角が、チップ状態では90度、パッケージタイプのものでも40度前後と大きいため、光を収束するためのレンズを必要とする。このため、多数のLEDをマトリックス状に配列し、個々のLEDに光収束用レンズを装着しなければならない。しかしながら、凸形状の球面レンズなどを使用する従来の光学系を使用したのではLEDの発散角が大きいために、低光損失で収束しようとすればレンズ系が巨大化してLEDを密に配列できない、あるいは、レンズ系を小さくしてLEDを密に配列すると極端に光損失が大きくなるといった問題が生ずる。また、従来のレンズ系を利用する場合は、LEDとレンズを光軸を合わせて保持する保持具が必要であり、このような保持具は精密加工を必要とするからコストが高くなる。また、LEDとレンズを保持具に固定するときには、光軸合わせの調整工程を必要とするのでコストが高くなる。
上記問題点は、LEDが照明光やライト光源として利用されていない主要な原因である。
【0004】
ところで、従来の自転車のライトとしては、発電機の回転部(特にローラー)をタイヤに当接させて、そのローラーの回転によりライトの電力を発電するものが一般に知られており、このライトの発光源としては電球が用いられている(特許文献1参照)。回転部としてのローラーは、その表面が摩擦係数が大きくなるように、複数の溝等を設ける粗面処理が施されている。
【0005】
【特許文献1】特開平07−108967号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような自転車用ライトにおいては、電球を用いているため、消費電力が大きくなり、発電量も大きくなければならないので、発電機自体大型になる。
また、発電に際し、発電量の大きな発電機を用いているので、車輪を回転させるのにペダルを踏む力を大きくしなければならない。
また、電球の代わりにLEDなどの光源を用いた場合、上記したようにLEDから出射される光の照度はライト点灯用には充分ではない。
【0007】
そこで、本発明は上記課題を解決するために創作されたものであり、車輪に摩擦を与えることなく発電し、その電力をLEDや半導体レーザーなどの光源に供給し、その光を集光して外部へ出射することができる、バルク型レンズを用いた自転車用ライトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため本発明のバルク型レンズを用いた自転車用ライトは、バルク型レンズと、このバルク型レンズに収納される光源と、磁石の磁束の変化によって生じる起電力を基に上記光源に電流を供給する発電部と、をそなえ、上記バルク型レンズが、頂部と、底部と、外周部と、前記底部から前記頂部に向かって形成された天井部と内周部とからなる凹部とを有している光学媒体からなり、上記凹部が上記光源の収納部であり、上記天井部が第1のレンズ面として、上記内周部が光入射面として、上記外周部が全反射面として、上記底部が反射面として、上記頂部が第2のレンズ面として機能することを特徴としている。
凹部の内部に光源を収納した場合は、天井部がレンズの入射面として、頂部がレンズの出射面として機能する。内周部から光学媒体に入射した光は、全反射して、又は底部で反射されて頂部に伝送される。「バルク型」とは、砲弾型、卵型、繭型、蒲鉾型等、ある程度の厚み又は膨らみを有する固形体を意味する。光軸方向に垂直な断面の形状は、真円、楕円、三角形、四角形、多角形等が可能である。バルク型のレンズ本体の外周部は、円柱、角柱の円周部のような光軸に平行な面でも良く、光軸に対してテーパを有していてもかまわない。また、天井部及び頂部のレンズ面は、凸面、凹面、平面、フレネルレンズ面のいずれかを適宜選択できる。
【0009】
本自転車用ライトに用いるバルク型レンズは、レンズ作用及び入射面と出射面とを接続する光伝送作用を有するので、光の波長に対して透明な材料であり、かつ、屈折率が空気の屈折率とは異なる必要がある。このような材料としては、アクリル樹脂等の透明樹脂(透明プラスチック材料)、石英ガラス、ソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸ガラス、鉛ガラス等の種々のガラス材料等が使用可能である。或いは、酸化亜鉛(ZnO)、硫化亜鉛(ZnS)、炭化珪素(SiC)等の結晶性材料を用いてもかまわない。又、可とう性、屈曲性や伸縮性のある透明ゴムのような材料でもかまわない。なお、光源として、ハロゲンランプ等の白熱球を用いる場合は、これによる発熱を考慮し、耐熱性光学材料を用いるべきである。耐熱性光学材料としては、石英ガラス、サファイアガラス等の耐熱ガラスが好ましい。或いは、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリカーボネイト樹脂、ポリエーテルエステルアミド樹脂、メタクリル樹脂、非晶性ポリオレフィン樹脂、パーフルオロアルキル基を有する高分子材料等の耐熱性樹脂等の耐熱性光学材料が使用可能である。SiC等の結晶性材料も耐熱性に優れている。
【0010】
光源としては、LEDや半導体レーザ等のように、発光に際して顕著な発熱作用を伴わない光源が好ましい。LED等を用いれば、本発明の第1の特徴に係るバルク型レンズの凹部(収納部)の内部に、「光源」を収納した場合において、その発熱作用によって、バルク型レンズに熱的影響を与えることがない。
【0011】
前記バルク型レンズを使用すれば、自転車用ライトの光源の数を多数必要とすることなく、所望の照度を有する自転車用ライトを簡単に得ることが出来る。この照度は、光源の数を同一として較べれば、従来公知のレンズ等の光学系では達成不可能な照度である。本発明は、従来の技術では達成出来ない照度を、簡単且つ小型な構成で実現出来る。詳細は後述するが、従来の「両凸レンズ」、「平凸レンズ」、「メニスカス凸レンズ」、「両凹レンズ」、「平凹レンズ」、「メニスカス凹レンズ」等の薄型レンズでは、直径が無限大の大型なレンズを用いなければ、本発明の自転車用ライトに用いるバルク型レンズに等価な機能を達成出来ない。
【0012】
LEDには内部量子効率と外部量子効率があるが、通常、外部量子効率は内部量子効率よりも低い。本発明に用いるバルク型レンズにより、LEDを収納部(凹部)に収納することにより、内部量子効率とほぼ等しい効率で、潜在的なLEDの光エネルギを有効に取り出すことが可能となる。
その原理は、(a)バルク型レンズの頂部及び天井部であるレンズ面、及び外周部での反射光(迷光)が外周部で全反射することによりバルク型レンズ外にほとんど散逸しない、(b)上記反射光(迷光)の一部が頂部及び天井部であるレンズ面にもどる、(c)上記反射光(迷光)の一部が底部で反射されて頂部及び天井部であるレンズ面にもどる、(d)上記反射光(迷光)の一部がLED光源に吸収され再発光する、さらに、(e)内側面に入射する光も全反射により導光し有効利用している、ことなどが考えられる。
【0013】
また、本発明に用いるバルク型レンズによれば、LED等の光源それ自身は、何ら手を加えることなく、容易に、光の発散、収束等の光路の変更や焦点の変更が可能である。すなわち、本発明の第1の特徴に係る光源の発散角が既知であれば、第1及び第2の湾曲面の曲率半径等の選定が簡単に出来る。なお、第1及び第2の湾曲面のいずれか一方は、曲率半径が無限大、若しくは無限大に近い平坦な面であっても良い。第1及び第2の湾曲面のいずれか一方が無限大ではない所定の(有限の)曲率半径を有していれば、光の収束、発散の制御が可能である。又、「所定の発散角」は0°、即ち平行光線であっても良い。また発散角が90度であっても、収納部が光源の発光部を完全に光学的に覆っているため、有効にその光を集光することが可能である。これは、従来のレンズ等の光学系では不可能な作用である。即ち、天井部以外の収納部の内周部も、有効な光の入射部として機能し得る。
【0014】
具体的には、本発明の第1の目的に係る光源は、チップ状の半導体発光素子、透明材料でモールドされた半導体発光素子、又は、他の光源から光を導く光ファイバの出射端面である。これらの光源を光学媒質を介して収納部に収納しても良い。屈折率によって光学媒質を適宜選択することによっても、光の発散、収束等の光路の変更や焦点の変更が可能であり、また、内周面から凹部に入射する光の屈折角を変えることができ、凹部の全反射をより効果的にすることもできる。
ここで、光学媒質には、固体、液体、気体、のみならず、ゾル状、コロイド状若しくはゲル状の光の波長に対して透明な物質も含まれる。
【0015】
また、上記目的を達成するために、本発明のバルク型レンズを用いた自転車用ライトは、バルク型レンズと、このバルク型レンズに収納される光源と、磁石の磁束の変化によって生じる起電力を基に上記光源に電流を供給する発電部とをそなえ、上記バルク型レンズが、頂部と、底部と、外周部と、上記底部から上記頂部に向かって形成された天井部と内周部からなる凹部とを有している光学媒体からなり、上記凹部が光源の収納部であり、上記天井部が第1のレンズ面として、上記内周部が光入射面として、上記外周部が全反射面として、上記底部が反射面として、また、上記頂部が第2のレンズ面として機能するとともに、上記内周部の光入射面が所定の傾きを有する少なくとも光波長以上の大きさの凹凸面で構成されていることを特徴としている。
この構成によれば、例えば、端面発光LEDのように、ほとんどの出射光がチップの側面から出射するようなLEDを使用する場合においても、全ての出射光を集光できる。また所定の傾きφは、凹部の屈折率をn、光学媒体の屈折率をn 、光学媒体内の外周部面における全反射角をθt光源の発散角をθd として、sin−1{n /n cos(θd +φ)}=θt から定まる角度であることを特徴とする。
【0016】
さらに、前記発電部は、好ましくは、車輪の少なくとも一本のスポークに取り付けられた磁石と、車輪の回転面に垂直に軸を向けて車体に取り付けられたコイルと、をそなえて構成され、前記発光素子に供給される電流が、車輪の回転により上記コイルの開口付近を横切る上記磁石の磁束の変化によって生じる起電力に基づくことを特徴としている。
また、本自転車用ライトは、好ましくは、前記発電部によって生ずる電流の前記光源への供給を制御する制御部と、光を検知するとともに上記制御部へ光検知信号を送る検知部とをそなえて構成され、上記制御部が上記検知部からの信号に基づき、前記光源の点灯と消灯との切り替えを自動に行うようになっている。
【0017】
また、本自転車用ライトは、好ましくは、前記発電部によって生ずる交流電流を直流電流に変換するダイオードが設けられている。
さらに、本自転車用ライトは、前記発電部によって生ずる交流電圧を前記光源に供給するコンデンサーが設けられて構成されても良い。さらに、本発明の自転車用ライトは、コイル内に磁性体が設けられて構成されるのが望ましい。さらに、前記磁石が馬蹄形状に形成されても良い。
【0018】
本発明の自転車用ライトは、バルク型レンズを用いることにより、ライトの照明強度を、半導体素子を増やすことなく大幅に上げることができ、LD,LEDなどの半導体素子の発光を有効に利用することができ、比較的高価な発光素子でも、実用として十分に利用できる。
【発明の効果】
【0019】
このように本発明の自転車用ライトによれば、LEDなどの発光源を用いているので、電球に比べて消費電力を小さくすることができ、その結果、発電機を小さくできる。また、光源から出射される光をバルク型レンズが集光して外部へ出射するので、照度の高い光を得ることができる。
さらに、自転車用ライトは、磁束変化に基づく起電力を光源に供給するように構成されているので、従来の発電機のローラーとタイヤとの摩擦がないため、従来のローラーがタイヤに接触している場合に比べて自転車のペダルを軽く踏むことができる。
また、LEDなどの光源の消費電力は、電球に比べて1/10〜1/100であるので、例えばコイルと磁性体と磁石とで構成される簡単な構造の発電機で良く、簡素な構造で構成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。以下の図面の記載において、同一または類似の部分には同一の符号または類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。従って、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0021】
図1は本発明の実施形態に係るバルク型レンズを用いた自転車用ライトを示すブロック図であり、この図1に示す自転車用ライト100は車輪に摩擦を与えることなく発電し、その電力をLEDや半導体レーザーなどの光源に供給し、その光を集光して外部へ出射するものである。
このため、自転車用ライト100は、図1に示すように、光源1と、バルク型レンズ20と、発電部30とを備えて構成されている。
光源1は発光に際し発熱作用の少ない、LEDなどの半導体素子であり、発電部30は磁束の変化によって生じる起電力を基に光源1に電圧(電流)を供給するものである。
バルク型レンズ20は、LED等の市販されている光源を用いることが可能で、且つ、集光効率が高いので、バルク型レンズ20を用いれば、光源の数を多数必要とすることなく、所望の照度を得ることが可能である。
ここで、自転車用ライト100に用いるバルク型レンズ20の第一の実施例と第二の実施例とそれらの変形例とに分けて説明する。
【0022】
バルク型レンズの第1の実施例を説明する。
図2は、本発明の実施形態に使用する、照明ライトの光源1とバルク型レンズ20との模式的な断面図である。図2に示すように、この照明ライトは、所定の波長帯域の光を発するLED等の光源1と、この光源1を完全に囲むバルク型レンズ20とから少なくとも構成されている。そして、このバルク型レンズ20は、頂部3と底部7と外周部9と、底部7から頂部3に向かって形成された天井部2と内周部5とから成る凹部6とから成る光学媒体であり、この凹部6にスペーサ8を介して光源1がバルク型レンズ20と同心的に且つ完全に収納、固定され、上記天井部2がレンズの光入射面として、上記頂部3がレンズの出射面として機能するように構成されている。
【0023】
図2の光源1は、LEDチップ13と、このLEDチップ13を載置する電極を兼ねた支持ピン11と、LEDチップ13のもう一方の電極に電力を供給する電極ピン12と、チップ13、支持ピン11及び電極ピン12を覆う透明な樹脂モールド14で構成されている。樹脂モールド14は、側部が円筒形を成しており、バルク型レンズ20の凹部6の円筒形を成す内周部5とスペーサ8を介して嵌合している。
【0024】
樹脂モールド14の側面は、例えば、直径(2r)が2〜3mmφの円柱形状であり、バルク型レンズ20の凹部6の内周部5は、例えば直径が2.5〜4mmφの円柱形状となっている。LED1とバルク型レンズ20とを固定するために、LED1とバルク型レンズ20の凹部6との間には、厚さ0.25〜0.5mm程度のスペーサ8が挿入されている。スペーサ8はLED1の発光部を除く位置、即ち、図2においてLEDチップ13の底面より底部7側に配置する。
【0025】
バルク型レンズ20は、例えば頂部3が凸形状球面を有し、外周部9が円柱形状を成している。この外周部9の直径(2R)は、例えば、10〜30mmφであるが、使用目的に応じて任意に選択できる。しかしながら、より集光効率を高くするためには、
10r>R >3r (1)
の関係を満足することが好ましい。バルク型レンズ20の外周部9の直径(2R )は、凹部6の内周部5の内径(2r)の10倍以上でも、本発明の実施形態に係るバルク型レンズは機能するが、必要以上に大きくなり、小型化を目的とする場合は好ましくない。
【0026】
上記構成の本発明に使用するバルク型レンズは、以下に説明する理由により、従来の凸型形状の球面レンズを用いた光学系よりも極めて低損失で収束できる。LEDは発散角の大きな光源であるため、従来の凸型形状の球面レンズによって、LEDから発する全ての光を平行光線とすると光損失が避けられない。
図3は、従来の凸型形状球面レンズによる集光作用を示す図で、図3(A)は凸型片球面レンズを使用して、LED光源からの光を平行光とする状態を示している。図において、レンズは曲率半径rを有し、光源から焦点距離fに配置している。片球面レンズの焦点距離は、レンズの屈折率をnとして、f=r/(n−1)であるから、屈折率n=1.5とした場合、f=2rとなる。従って、図から明らかなように、レンズが受光できる発散角の最大は30°となり、図のBに示す光線は平行光とすることができない。すなわち、従来のレンズを使用したのでは、焦点距離と曲率半径の関係から定まる開口角以上の光は取り込むことができないので、損失が大きい。
LED光源は30°以上の発散角を有するものが多く、この場合には、上記理由により、大きな損失が生じる。従来はこのような場合、高屈折率レンズを使用して改善しているが、コストが高くなる。あるいは、レンズを複雑に組み合わせて対処している例もあるが、この場合には、下記に説明するフレネル反射損が増大してしまう。
【0027】
図3(B)は、従来の凸型片球面レンズ入射面における反射の状況を示す図である。図において、矢印のついた線は、LED1から出射し、凸型形状球面レンズの光入射面で反射される光線を表す。θ(θ、θ )はLEDから出射角、すなわち発散角を表し、φ(φ、φ )はそれぞれの光線のレンズ面での入射角を表す。
図4は、フレネルの反射の法則を表した図である。図において、横軸は光線の入射角であり、縦軸は光強度の反射率であり、レンズの屈折率を1.5とし、空気中から光線がレンズ面に入射する場合を表している。図から明らかなように、入射角が50°あたりまでは反射率が低く一定であるが、50°を越えたあたりから急激に反射率が増加するのがわかる。
図3(B)に示した入射角が大きい光線は、図4のフレネルの反射の法則から明らかなように反射される割合が高い。例えば、屈折率1.5の片凸型球面レンズを使用し、このレンズの焦点距離に、発散角30°の光源をおいて平行光を作る場合には、上記の反射光による損失は全光量の30%近くに達する。
従って、従来の光学系におけるように、レンズを多段に接続したのでは、フレネル反射が多段に生ずることになり、損失が増えてしまう。これらの反射光は空間に散逸してしまい、収束光として利用することはできない。
【0028】
一方、本発明の実施形態に係るバルク型レンズにおいては、発散角が大きい光束であっても、全ての光束をレンズ面に入射させることができ、バルク型レンズの幾何学構造の設計により、全ての光束を平行光線にできるから、極めて損失の少ないレンズである。
また、フレネルの反射を起こす反射面は、天井部2及び頂部3であるから、これらの面で反射した反射光(迷光)はバルク型レンズ内に反射される。これらの反射光(迷光)は、外周部9で全反射することによりバルク型レンズ外に散逸せず、一部が頂部3及び天井部2であるレンズ面にもどり収束光となる。また、他の一部は、底部7で反射されて頂部3又は天井部2にもどり、収束光となる。また、他の一部はLED光源で吸収されて再発光し、収束光となる。
【0029】
図5は、LED光源1にもどった光が再発光する過程を示す図である。
図において、もどってきた光はPN接合で吸収されてホールと電子を生じ、このホールと電子が再結合して再発光する。特にこの効果は、ヘテロ構造を有するLEDの場合に大きい。ヘテロ構造のLEDは、発光部であるPN接合部のバンドギャップ・エネルギーが、P及びN領域のバンドギャップ・エネルギーよりも小さく形成されているので、反射光(迷光)はP又はN領域では吸収されずに、PN接合部のみで吸収され、再発光する。
さらにまた、本発明の実施形態に係るバルク型レンズにおいては、内周部5に入射する光も外周面9における全反射によって頂部3に導かれ、収束光となって出射する。この効果は、LED光源1を、バルク型レンズの光学媒質よりも屈折率の高い光学媒質を介して収納部に収納するとさらに効果が高まる。
本発明の実施形態に係るバルク型レンズにおいては上記に説明した相乗効果により、内部量子効率とほぼ等しい効率で、LED光源の光を有効に収束光として取り出しているため、従来の凸型形状の球面レンズに較べ極めて低損失になると考えられる。
【0030】
図6は、本発明の実施形態に係るバルク型レンズの第1の実施例と従来の凸形状の球面レンズとで平行光を作成した場合の特性を比較するための測定系を示す図である。図6(A)は、バルク型レンズ20を用いた場合の、光軸方向に対して垂直方向に光強度(照度)分布を測るための測定系を示す模式図である。バルク型レンズ20の出射面からの出力光の強度(照度)を、LED1からの測定距離x=一定とし、照度計102をy軸方向に移動して測定する。測定距離(x)は、光軸方向に測る。一方、図6(B)は、同様な測定を従来の両凸レンズを用いて行うことを示す図である。
【0031】
図6(A)及び(B)に示す測定においては、本発明に用いるバルク型レンズ20の外径は30mmφとし、比較に用いた両凸レンズ101の外径は、この2倍強の63mmφとした。両凸レンズ101は、焦点距離150mmのものを用い、LED1からx方向に150mmの位置に配置した。また、LED光源1の発散角は約12度のものを使用した。
【0032】
図7は、本発明の実施形態に係るバルク型レンズの第1の実施例と従来の凸形状の球面レンズとで平行光を作成した場合の特性を比較した図であり、本発明の実施形態に係るバルク型レンズ20、従来の薄型レンズ(両凸レンズ)101、及びバルク型レンズを用いない裸のLEDのそれぞれの出力光のy方向に沿った強度(照度)分布を、測定距離x=1mにおいて測定した場合の結果を示す。本発明の第1の実施の形態に係るバルク型レンズ20が、従来の薄型レンズ(両凸レンズ)101の2倍の照度が得られている。
この結果は、本発明の実施形態に係るバルク型レンズが従来の光学系では実現できない効果を有することを示している。
【0033】
図8は、本発明に実施形態に係るバルク型レンズの第1の実施例と従来の凸形状の球面レンズとで作成した平行光の平行度を評価した図である。
図6と同様にy方向に沿った強度(照度)分布を、測定距離xを変化させて測定したデータをまとめたものである。図の横軸は、測定距離xの逆数の2乗、即ち1/x2 を示し、縦軸は測定距離xにおける最大強度(ピーク強度)を示す。図から明らかなように、本発明の実施形態に係るバルク型レンズの場合は、逆2乗則、即ち1/x2 を示す線上にきれいに測定点がプロットされる。一方、従来の薄型レンズ(両凸レンズ)101の場合は、逆2乗則からずれていることがわかる。
この結果は、バルク型レンズ20は、平行度においても十分であり、従来のレンズ系に較べ、勝るとも劣らない性能を実現できることを示している。
【0034】
図9は本発明に用いるバルク型レンズ(第1の実施例)の幾何学的構造と集光率の関係を示す図である。ここで、「集光率」とは、「バルク型レンズからの±1°以内の発散角における出力光の光量」を、「光源(LED)からの±12°以内の発散角における光量」で除した量で定義している。すなわち光線ビーム径に対応する量である。頂部3の曲率半径R、バルク型レンズの全長L、媒体長(頂部と天井部のレンズ間距離)D、収納部内径(凹部の内周部系)r、天井部2の曲率部分長さΔをパラメータとして、集光率を測定した。尚ここで、Δの符号は図2に示すように、天井部2が凹である場合を負とし、凸の場合を正と定義する。
図10は、作製した本発明の実施形態に係るバルク型レンズの幾何学的構造を示す図である。図9から、集光率を向上するためには、
0.93 < k(R/L) < 1.06 ・・・・・(2)
k = 1/(0.35・n −0.168) ・・・・・(3)
を満足することが好ましいことが実験的にわかる。ここで、nは、バルク型レンズの材料である光学媒質の屈折率である。なお、バルク型レンズ20の円柱形状部分の半径Roと、頂部3の曲率半径をRとは、必ずしも等しい必要はない。
【0035】
次に、本発明のバルク型レンズの第2の構造例を説明する。
図11は、天井部2を凸形状にした本発明のバルク型レンズの構造を示す図である。図11において、バルク型レンズ22は、天井部2の形状が異なる外は、図2に示したバルクレンズ20と同等である。測定に用いたバルク型レンズ22の円柱形状部分の外径2Roは15mmφ、バルク型レンズの全長Lは、25mm、頂部と天井部のレンズ間距離Dは16mm、収納部6の内径rは5.2mm、バルク型レンズの屈折率nは1.54である。このバルク型レンズの頂部3の曲率半径Rは8.25mmである。又、測定に用いた樹脂モールドされたLED1の外径は5mmφである。
【0036】
図12(A)〜(C)及び図13(A)〜(C)は、天井部2の凸部の高さΔと、ビーム強度プロファイルとの関係を示す図である。光源からの距離x=1mで照度を測定した。図から明らかなように、天井部2を凸形状のレンズとしても集光特性が得られることがわかる。
【0037】
このようにして、本発明に用いる第1及び第2の実施例に係る発光体によれば、樹脂モールドされたLED1の数を多数必要とすることなく、照明に寄与する光ビームとして所望の照射面積の光束を確保し、且つ所望の照度を簡単に得ることが出来る。この照度は従来公知のレンズ等の光学系では達成不可能な照度である。驚くことに、現在市販されているハロゲンランプを用いた細身の懐中電灯と同程度の照度がたった1個のLEDで実現出来たのである。このように、本発明に用いる第1の実施例の発光体によれば、従来の技術では実現できない照度を、図2に示すような簡単な構造で実現できる。
【0038】
なお、本発明に用いる第1及び第2の実施例に係る発光体に用いる樹脂モールドされたLED1としては、種々の色(波長)のLEDが使用可能である。但し、自転車用ライトとして点灯目的のためには、白色LEDが人間の目には自然である。白色LEDは種々の構造のものが使用出来る。例えば、赤(R)、緑(G)及び青(B)の3個のLEDチップを縦に積層して構成しても良い。この場合、樹脂モールド14から、それぞれの色のLEDチップに対応し、合計6本のピンが導出されても良く、樹脂モールド14の内部配線として6本のピンを2本にまとめ、外部ピンとしては2本設けられた構造としてもかまわない。又、一方の電極(接地電極)を共通とすれば、外部ピンは4本でよい。又、赤(R)色、緑(G)色及び青(B)色の3枚のLEDチップの駆動電圧を互いに独立に制御出来るようにしておけば、あらゆる色の混合が可能であるので、色合いの変化を楽しむことが可能である。
【0039】
本発明に用いる第1及び第2の実施例に係る発光体のバルク型レンズ20としては、アクリル樹脂等の透明プラスチック材料、石英ガラス、ソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸ガラス、鉛ガラス等の種々のガラス材料等が使用可能である。或いは、ZnO、ZnS、SiC等の結晶性材料を用いてもかまわない。又、可とう性、屈曲性や伸縮性のあるゾル、ゲル、ゾル・ゲル混合物、或いは透明ゴムのような材料でもかまわない。また、ゾル、ゲル、ゾル・ゲル混合物等を、透明ゴムやフレキシブルな透明プラスチック材料等に格納して用いても良い。アクリル樹脂等の透明プラスチック材料等は、バルク型レンズ20を大量生産するのに好適な材料である。即ち、一度金型を作り、この金型により成形加工すればバルク型レンズ20が簡単に大量生産出来る。
【0040】
次に、第1及び第2の実施例の変形例について説明する。
第1及び第2の実施例の変形例で使用するバルク型レンズは、端面放射型LEDのように、LEDチップの側面から発光する光源であっても使用できる。端面放射型LEDはLEDチップの側面から発光するため、上記実施例1及び2のバルク型レンズにこのLEDチップを装着した場合には、バルク型レンズの内周部5に垂直に入射する成分が多くなるため、全反射されずにバルク型レンズの外部に散逸する光が多くなる。
第1及び第2の実施例の変形例のバルク型レンズはこのような光源に対しても、極めて低損失で収束光を得ることができる。
【0041】
図14は、本発明のバルク型レンズの内周部5と外周部9とが傾きを有する場合の光線の光路を示す図である。
図において、光源の発散角をθd 、内周部5と外周部9との傾き角をφ、外周部9の全反射角をθt 、内周部5における光線の入射角、屈折角をθ 及びθ、そしてバルク型レンズの光学媒質の屈折率、収納部(凹部)6の屈折率をn 及びn とする。図は、光源の最大出射角、すなわち、発散角の光線が傾き角をφにより、全反射条件を満たし、全反射されている状態を表している。
内周部5において、スネルの屈折の法則より、θ とθの間には、
sinθ /sinθ =n /n (4)
が成り立ち、また、図から明らかなように、θt 、φ、θの間には、
θt =φ+θ (5)
が成り立つ。また、図から明らかなように、θd 、θ 、φの間には、
θd =90°−(θ +φ) (6)
の関係が成り立つ。上記(4)、(5)、(6)式よりθ とθを消去すると、バルク型レンズが全反射角θt を有し、光源の発散角がθd である場合の、全反射するために必要な傾き角φを与える関係式として、
sin−1{n /n cos(θd +φ)}=θt (7)
が得られる。すなわち、(7)式を満たす傾き角φ以上で内周部5と外周部9が傾いていれば、たとえ、内周部5に垂直に光が入射する場合(θd=90°)でも全反射され、頂部3へあるいは底面7で反射して頂部3へ導かれるから、収束光を得ることができる。
【0042】
図15は上記のバルク型レンズの構成を示す図である。
図15(A)は、バルク型レンズ20の内周部5の表面に微細な凹凸を設けた例を示している。この凹凸は少なくとも(7)式を満足するφ以上の傾き角を有しており、また、この凹凸の大きさは光波長程度でよい。また、この凹凸は、内周部5の光源近傍に設けるだけでよい。
このような凹凸は、適切な粒径の研磨剤を用いて、内周部5の表面を磨くことによって簡単に形成できる。
図15(B)は、ほぼ真横方向に出射した光線がバルク型レンズ内を全反射して又は底面7で反射してかつ側壁で全反射して頂部3に導かれる様子を示している。このように、例えば、端面発光LEDのようにほとんどの出射光がチップの側面から出射するようなLEDを使用する場合においても、全ての出射光を収束できる。
さらにまた、レンズ部と光源を収納する収納部とが一体で形成されているため、従来のレンズ系では必要であったレンズと光源を光学的位置合わせをして保持する保持部を必要とせず、また、光学的位置合わせ工程を必要とせず、ただ光源にかぶせるだけでよいので、極めて低コストである。
【0043】
次に、発電部30の構成を例示して本発明の自転車用ライトの実施例を説明する。図16は本発明の実施例に係る自転車用ライト111を示す斜視図であり、図17は図16の断面図であり、図18は自転車用ライトを自転車に取り付けた状態を示す斜視図である。
【0044】
図17に示すように、自転車用ライト111は、樹脂成形されたケース40の内部に、複数のバルク型レンズ20と、それらの収納部(凹部)6に収容される光源1と、回路41が搭載された回路基板42と、円筒状のコイル43と、その筒内に挿入される磁性体44と、ケース40外部に配置される磁石50とを備えて構成される。
【0045】
ケース40は、端部に光出射口が形成されており、この光出射口に発光源防滴用の防滴カバー45が嵌め込まれている。この防滴カバー45は、光透過性の良いアクリル板やプラスチック板が用いられる。
各バルク型レンズ20は、図17に示すように、ケース40に嵌め込まれたレンズ固定板46に穿設された穴46aに底部7を嵌挿されて取り付けられており、取り付けに際し、バルク型レンズ20とレンズ固定板46とは、接着或いは溶融により固着されるようになっている。
【0046】
回路41は複数の光源1にそれぞれ同じ電圧(電流)を供給するように設計されており、この回路41とコイル43とは配線材47,47によって短絡されている。この回路41に接続されている各光源1は、レンズ固定板46の穴46aに挿入されて、バルク型レンズ20の収納部(凹部)6内に収容されるようになっている。
なお、コイル43は、N(>0)巻きの円筒形状に形成されているが、直方体状などに形成されても良い。
【0047】
図17に示すように、ケース40の光出射口と対向する端部は、自転車軸60を挟持するために、端部が分離できるようになっている。すなわち、ケース40の端部には、ボルト48aとナット48bとによって着脱可能な挟持部40aが取り付けられるようになっている。この挟持部40aとケース40とが衝接する面には、それぞれ自転車軸60を挟む為の溝401,402が凹設されている。ケース40と挟持部40aとの間に、すなわち、溝401と溝402とで形成される固定穴に自転車軸60を挟み、ケース40と挟持部40aとをボルト48aとナット48bとで固定することで、ケース40は自転車に取り付けられる。なお、各ケース40と挟持部40aとには、ボルト48aやナット48bが外部に突出しないように、凹み49が形成されている。
【0048】
次に、コイル43や磁性体44は、それらの円筒軸を車輪の回転面に対して垂直になるようにケース40内に設けられ、ケース40はその内部でコイル43や磁性体44とが固定されるように樹脂成形される。
一方、ケース40外部に設けられる磁石50は永久磁石であり、例えば(1)ストロンチウム・フェライト磁石、(2)サマリウム・コバルト磁石、(3)ネオジウム・鉄・ホウ素磁石、(4)サマリウム・鉄・窒素磁石、(5)アルニコ磁石などを用いることができる。
【0049】
なお、磁石50は、図19に示すように、円盤状に形成され、二つの磁石50が純鉄、ケイ素鋼或いは方向性ケイ素鋼などの高透磁率の板51の片面に取り付けられて全体で馬蹄形状を呈するように形成されている。なお、板51に取り付けられる二つの磁石50は、外部に露呈する面が対極となるように取り付けられている。また、図17や図20に示すように、磁石50,50や板51は砂鉄や水などの付着防止のために保護カバー52に収容されており、この保護カバー52とともに、車輪のスポーク61に取り付けられている。なお、保護カバー52は二つに分離可能になっており、これらがスポーク61を挟持し、ビス53等で一体にすることで、磁石50はスポーク61に取り付けられる。この保護カバー52は、樹脂やテフロン(登録商標)やプラスチックなどでできている。また、図19に示す磁石50を載置した板51は、図17に示すように、磁石50,50載置面をコイル43や磁性体44側へ向けてスポーク61に取り付けられている。
【0050】
一方、上記バルク型レンズ20や光源1などを収納したケース40は、図18に示すように保護カバー52を取り付けた車輪を支持する自転車軸60に、コイル43や磁性体44を設けた側を近接させて取り付けられている。なお、磁石50は、車軸の轂(こしき)からコイル43や磁性体44が取り付けられた高さ位置でスポーク61に取り付けられるようになっている。
さらに、図16や図21に示すように、保護カバー52を取り付けたスポーク61がコイル43と最も近接した際に、コイル43や磁性体44が収納されているケース40と磁石50が収納されている保護カバー52との隙間間隔L1が、1mm〜5mmとなるように設計するのが望ましい。
【0051】
図18に示す保護カバー52と磁石50との取り付け例としては、車輪の輪と車軸の轂をつなぐ2本のスポーク61,61にそれぞれ一つ取り付けた例を示しているが、他の複数のスポークに保護カバー52と磁石50と板51を取り付けても良い。
【0052】
上述の如く構成された自転車用ライト111の動作を説明する。
保護カバー52に収納された磁石50は、車輪の回転に伴って、車軸の轂を中心に回転して円運動を行い、図21に示すように、コイル43と磁性体44とを収容したケースの横を横切る。
その際、コイル43や磁性体44の筒内を通過する磁束が変化する。このように、ケース40の横を磁石50が一つ横切ると、コイル43に起電力が生じる。ここで、図22は、ケース40の横を保護カバー52が二つ横切った時に生じた起電力を示すグラフである。この起電力が光源1に供給されて光が出射される。そして、光源1から放射状に出射された光がバルク型レンズ20によって集光されて、照度の高い光が防滴カバー45を経由して外部へ照射される。
また、複数のスポーク61に磁石50を取り付けた場合、車輪の回転に伴って、ケース40の横を横切る磁石50は複数になるため、コイル43に生じる起電力は図23に示すように連続的になる。
【0053】
このように本発明の実施例に係る自転車用ライト111によれば、光源1としてLED等を用いているので、電球に比べて消費電力を小さくすることができ、そのため発電機を小さくできる。また、光源1から出射される光をバルク型レンズ20が集光して外部へ出射するので、照度の高い光を得ることができる。
さらに、自転車用ライト111は、コイル43と磁性体44と磁石50とによって、発電部30として磁束変化に基づく起電力を光源1に供給するように構成されているので、従来の発電機のローラーとタイヤとの摩擦がないため、従来のローラーがタイヤに接触している場合に比べて自転車のペダルを軽く踏むことができる。
また、光源1の消費電力は、電球に比べて1/10〜1/100であるので、上記の如くコイル43と磁性体44と磁石50とで構成される簡単な構造の発電機で良く、簡素な構造で構成できる。
【0054】
次に、本発明の他の実施例について説明する。
なお、上記の説明で用いた符号と同一の符号を示すものは、上記と同一のものであるので、その説明は省略する。
図24は本発明の他の実施例に係る自転車用ライト112の内部構造を示す図であり、この図に示すように、自転車用ライト112は、ケース40内にバルク型レンズ20、コイル43、磁性体44、ダイオード71、コンデンサー72、制御部73、をそなえ、制御部73と短絡されたセンサ74と、車輪のスポーク61に取り付けられた磁石50,50と板51とをそなえて構成される。
なお、図24においては、図17に示す回路41、回路基板42、防滴カバー45などの記載を省略するが、自転車用ライト112は、それらを内蔵して構成されても良い。また、図24に示す自転車用ライト112は、光源1やバルク型レンズ20を一つずつ設ける場合を例示するが、図17に示すように光源1とバルク型レンズは複数設けられても良い。
【0055】
この図24に示すダイオード71はコイル43から送られてくる交流電流を直流電流に変換するものであり、コンデンサー72はコイル43から送られてくる交流電流を直流電流にして光源1に供給するものである。また、センサ74は、光源1の光以外の自然光などを検知するホトセンサーであり、例えば、フォトダイオードなどを用いることができる。制御部73は、センサ74からの信号を基に、コイル43から供給される電圧(電流)を光源1に送る制御を行うものであり、例えば、センサ74としてのフォトダイオードから信号が送られてきたときには、コイル43からの電圧(電流)を光源1に供給しないようになっている。具体的に言えば、太陽光などの自然光をセンサ74が検知した時には、光源1は光を出射しないようになっている。
【0056】
図24に示すように構成された自転車用ライトによれば、ダイオード71を設けることで、LEDなどの光源1を交流電流による損壊を確実に免れることができ、また、コンデンサー72を設けることで、交流電流をも有効に光源1が発光するためのエネルギーに用いることができる。さらに、センサ74と制御部73とを設けることで、ライトの点灯と消灯との切り替えを自動に行える。
なお、自転車用ライトは制御部73とセンサ74とを備えずに構成されても良く、また、制御部73とセンサ74とコンデンサー72とを備えずに構成することもできる。
【0057】
上記説明では、自転車用ライト111,112に設けられる複数のバルク型レンズ20は、個々に別体に設けられる場合を示したが、図25に示すように、複数のバルク型レンズ20を一体にしたバルク型レンズ20Aを用いて構成してもよい。
なお、図26(A)及び(B)は、それぞれ本発明の実施例に係るバルク型レンズ20Aの構成例を示す正面図であり、図26(A)に示すバルク型レンズ20Aは5つのバルク型レンズ20を放射状に配置して一体に形成したものであり、図26(B)に示すバルク型レンズ20Aは3つのバルク型レンズ20を直列配置して一体に構成したものである。
図26(A)及び(B)に示すバルク型レンズ20Aによっても、各光源1から発光された光を集光して外部へ出射できる。
また、図25に示す自転車用ライトは、ケース40の光出射口にOリングを用いてバルク型レンズ20Aを挟持するように構成することもできる。
上記詳述した以外に、本発明は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で様々な形態で実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施形態に係る自転車用ライトを示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係る光源とバルク型レンズとの模式的な断面図である。
【図3】従来技術のレンズ系による損失の状況を示す図である。
【図4】フレネル反射を示す図である。
【図5】LEDのPN接合において反射光(迷光)が再発光する過程を示す図である。
【図6】本発明の自転車用ライトに用いるバルク型レンズの第1の実施例と従来のレンズとの特性比較に用いた測定系を示す図である。
【図7】本発明の自転車用ライトに用いるバルク型レンズの第1の実施例と従来のレンズの集光特性を比較した図である。
【図8】本発明の自転車用ライトに用いるバルク型レンズの第1の実施例と従来のレンズの集光特性を比較した図である。
【図9】本発明の自転車用ライトに用いるバルク型レンズの幾何学形状の違いによる特性変化の実測値を示す図である。
【図10】図9の測定に用いたバルク型レンズの幾何学形状を示す図である。
【図11】本発明の自転車用ライトに用いるバルク型レンズの第2の実施例の構成を示す断面図である。
【図12】バルク型レンズの第2の実施例の幾何学形状の違いによる特性変化の実測値を示す図である。
【図13】バルク型レンズの第2の実施例の幾何学形状の違いによる特性変化の実測値を示す図である。
【図14】第1及び2の変形例に係るバルク型レンズの原理を説明する模式図である。
【図15】第1及び2の変形例に係るバルク型レンズの構成を示す図である。
【図16】本発明の実施例に係る自転車用ライトを示す斜視図である。
【図17】図16の断面図である。
【図18】本発明の実施例に係る自転車用ライトを自転車に取り付けた状態を示す斜視図である。
【図19】本発明の実施例に係る磁石を示す斜視図である。
【図20】本発明の実施例に係る磁石を車輪のスポークに取り付け状態を示す斜視図である。
【図21】本発明の実施例に係る磁石とコイルとの配置例を示す図である。
【図22】本発明の実施例に係るケース2の横を保護カバーが二つ横切った時に生じた起電力を示すグラフである。
【図23】本発明の実施例に係るケースの横を保護カバーが複数横切った時に生じた起電力を示すグラフである。
【図24】本発明の他の実施例に係る自転車用ライトの内部構造を示す図である。
【図25】本発明の他の実施例に係る自転車用ライトを示す部分断面図である。
【図26】(A)及び(B)はそれぞれ本発明の実施例に係るバルク型レンズの構成例を示す正面図である。
【符号の説明】
【0059】
1 光源
2 天井部
3 頂部
4 光学媒体
5 内周部
6 凹部
7 底部
8 スペーサ
9 外周部
20 バルク型レンズ
30 発電部
40 ケース
40a 挟持部
41 回路
42 回路基板
43 コイル
44 磁性体
50 磁石
60 自転車軸
61 スポーク
71 ダイオード
72 コンデンサー
73 制御部
74 センサ
100,111,112 バルク型レンズを用いた自転車用ライト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルク型レンズと、このバルク型レンズに収納される光源と、磁石の磁束の変化によって生じる起電力を基に上記光源に電流を供給する発電部と、をそなえ、
上記バルク型レンズが、頂部と、底部と、外周部と、上記底部から上記頂部に向かって形成された天井部と内周部とからなる凹部とを有している光学媒体からなり、上記凹部が上記光源の収納部であり、上記天井部が第1のレンズ面として、上記内周部が光入射面として、上記外周部が全反射面として、上記底部が反射面として、また、上記頂部が第2のレンズ面として機能することを特徴とする、バルク型レンズを用いた自転車用ライト。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図3】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−1277(P2009−1277A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−229164(P2008−229164)
【出願日】平成20年9月6日(2008.9.6)
【分割の表示】特願2001−22460(P2001−22460)の分割
【原出願日】平成13年1月30日(2001.1.30)
【出願人】(599104299)ラボ・スフィア株式会社 (8)
【Fターム(参考)】