説明

バルコニーの防水構造

【課題】手摺ユニットが設置されるバルコニーにおいて防水シートの敷設作業の容易化を図る。
【解決手段】建物10においてインナバルコニー41の床部は、バルコニー床大梁23B、バルコニー床小梁53、床下地材75、バルコニー床断熱材76、防水シート77を含んで構成されており、インナバルコニー41の床部における屋外開放側には手摺ユニット90が設けられている。手摺ユニット90の下部には、バルコニー床大梁23Bの上部を覆うように配置された笠木91が設けられており、笠木91は横断面略コ字状に形成されている。防水シート77は、インナバルコニー41の床面を形成する床敷設部77aと、手摺ユニット90の笠木91に取り付けられた手摺側取付部77cとを有しており、手摺側取付部77cは笠木91の内周面に重ねて取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルコニーの防水構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
住宅等の建物にバルコニーが設けられている場合、そのバルコニーの床面に対しては防水処理が施されている。例えば特許文献1には、外側縁部に手摺部が設けられているバルコニーにおいて、床面材の上面部に床面用の防水シートが貼着されている構成が記載されている。この構成では、手摺部と床面材との間には、それら手摺部と床面材との間を被覆する繋ぎ用の防水シートが設けられており、繋ぎ用の防水シートは床面用の防水シートに重合状態で接着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平3−6290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1に記載の構成では、バルコニーにおいて手摺部の設置作業及び防水シートの敷設作業を行う場合に、手摺部を構成する手摺ユニット、繋ぎ用の防水シート、床面用の防水シートといった部材を別々の状態でバルコニーに運び、それら部材の設置作業や敷設作業を別々の工程で行うことになる。ここで、手摺部を構成する各種部材をあらかじめユニット化しておけば、その分だけ手摺部の設置作業は容易化されると考えられるが、防水シートの敷設作業が容易化されるわけではない。したがって、バルコニーにおける防水シートの敷設作業を容易化する上で改善の余地がある。
【0005】
本発明は、手摺ユニットが設置されるバルコニーにおいて防水シートの敷設作業の容易化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、第1の発明のバルコニーの防水構造は、屋外開放側に手摺ユニットが設けられており、バルコニー床部において前記手摺ユニットが設けられている一端側とそれとは反対側の他端側との間に防水シートが敷設されているバルコニーに適用され、前記防水シートは、前記手摺ユニットの下部に取り付けられている手摺側取付部と、前記バルコニー床部に敷設されている床敷設部とを有しており、前記床敷設部は、前記バルコニー床部において前記一端側と前記他端側との間の床長さ寸法と少なくとも同じ長さ寸法を有しており、前記手摺側取付部は、前記手摺ユニットが前記バルコニーに設置される前にあらかじめ前記手摺ユニットの下部に取り付けられていることを特徴とする。
【0007】
第1の発明によれば、手摺ユニットがバルコニーに設置される前に、防水シートの手摺側取付部があらかじめ手摺ユニットの下部に取り付けられている。この場合、手摺ユニットを設置することが防水シートにおける屋外開放側の端部をバルコニー床部に対して位置決めすることになるため、手摺ユニットの設置作業と防水シートの位置決め作業とを別々に行う必要がない。したがって、手摺ユニットを設置した後は、防水シートの床敷設部を手摺ユニットに近い場所から遠い場所に向けて順に延ばすように敷設すればよく、位置決め作業を行わない分だけ防水シートの敷設作業を容易化できる。しかも、防水シートの床敷設部はバルコニー床部の床長さ寸法と少なくとも同じ長さ寸法を有しているため、防水シートの長さが足りずに別の防水シートを継ぎ足して敷設するという手間を省くことができる。
【0008】
以上の結果、手摺ユニットが設置されるバルコニーにおいて防水シートの敷設作業の容易化を図ることができる。
【0009】
第2の発明では、前記バルコニーにおいて、前記バルコニー床部の屋外開放側にはその屋外開放側の端部に沿って延び且つ前記バルコニー床部よりも上方に突出する突出部が設けられており、前記手摺ユニットは前記突出部に組み付けられており、前記手摺ユニットの下部には前記突出部に沿って延び且つ前記突出部を上方から覆う笠木が設けられており、前記笠木は、前記防水シートの前記手摺側取付部が取り付けられている取付部である。
【0010】
第2の発明によれば、笠木は、バルコニー床部の屋外開放側の端部に沿って延びる長尺状部材であるため、防水シートの端部(手摺側取付部)を笠木に沿って延びる状態であらかじめ固定しておく固定対象として好都合である。なお、防水シートの手摺側取付部が笠木に沿ってその長手方向に取り付けられることにより、防水シートを、床敷設部に皺を生じさせずに防水シートを敷設することの容易化を図ることができる。
【0011】
第3の発明では、前記笠木は、前記突出部の上方に配置される上板部と、前記上板部を挟んで設けられ前記突出部のバルコニー床部側及びその反対側に配置される一対の側板部とを有しており、前記防水シートの前記手摺側取付部は、前記笠木において前記一対の側板部のうちバルコニー床部側の側板部の内側面に重ねて取り付けられている。
【0012】
第3の発明によれば、防水シートの手摺側取付部が断面略コ字状の笠木に収納された状態で設けられている。この場合、それによって笠木の内側への雨水の浸入が抑制されるため、防水シートの手摺側取付部と笠木との重なり部分において雨水が浸入することを回避できる。
【0013】
第4の発明では、前記防水シートの前記手摺側取付部は、前記笠木において前記上板部及び前記一対の側板部の各内側面に重ねて取り付けられている。
【0014】
第4の発明によれば、笠木の内側面の全体に防水シートが取り付けられているため、笠木における防水効果を高めることができる。つまり、仮に笠木の上板部や側板部に雨水が浸み込んでしまってもその雨水が笠木の内側に浸入することを防水シートの手摺側取付部により抑制できる。
【0015】
第5の発明では、前記突出部として、前記バルコニー床部の床面より立ち上げられた立ち上げ面を形成する立ち上がり板部を有し、前記防水シートは、前記手摺側取付部と前記床敷設部との間に前記立ち上がり板部に重ねて取り付けられている繋ぎ取付部を有している。
【0016】
第5の発明によれば、防水シートは手摺側取付部と床敷設部とに加えて繋ぎ取付部を有しているため、笠木側の手摺側取付部とバルコニー床部側の床敷設部との間に繋ぎ用の防水シートを敷設するのではなく、一枚の防水シートを笠木とバルコニー床部と間の部分を跨ぐように連続的に敷設することができ、しかも繋ぎ取付部を立ち上がり板部に取り付けることで固定できる。したがって、笠木とバルコニー床部との間の部分において、防水性能の低下を抑制しつつ防水シートによる仕上面の美観を高めることができる。
【0017】
第6の発明では、前記手摺ユニットは、支持フックが着脱可能に取り付けられるフック用被取付部を有しており、前記支持フックは、前記バルコニー床部に対する敷設前の前記防水シートの前記床敷設部を支持する。
【0018】
第6の発明によれば、手摺ユニットをバルコニーに設置する際、防水シートの床敷設部を支持フックに引っ掛けておき、その状態のまま手摺ユニットをバルコニーに設置することができる。これにより、防水シートの手摺側取付部が手摺ユニットに取り付けられている構成において、防水シートの床敷設部が手摺ユニットの設置作業の支障となることを抑制できる。また、支持フックは着脱可能となっているため、防水シートの敷設作業が完了した後に支持フックを手摺ユニットから取り外すことにより、手摺ユニットの美観が支持フックにより損なわれることを回避できる。
【0019】
第7の発明では、前記バルコニーは、床大梁、天井大梁及びこれら両大梁を結ぶ柱を有する建物ユニットの内部に形成されたインナバルコニーであって、前記手摺ユニットの設置作業及び前記防水シートの敷設作業は建物ユニット製造工場にてあらかじめ行われ、その状態で建物施工現場に搬送される。
【0020】
第7の発明によれば、手摺ユニットの設置作業及び防水シートの敷設作業が建物ユニット製造工場にてあらかじめ行われるため、それら設置作業や敷設作業が建物施工現場において行われる場合に比べて施工誤差を小さくできるとともに、建物施工現場での作業工数の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】建物の外観を示す図であり、(a)は正面図、(b)は概略斜視図。
【図2】建物の一階部分及び二階部分の間取り図。
【図3】建物ユニットの構成を示す斜視図。
【図4】バルコニーユニットの構成を示す斜視図。
【図5】バルコニーユニットとその下方の建物ユニットとの階間部の構成を示す断面図。
【図6】支柱の構成を示す図。
【図7】バルコニーユニットと手摺ユニットとの分解斜視図。
【図8】バルコニー床大梁付近の納まりを示す断面図。
【図9】手摺ユニットの取り付け手順について説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、建物10の外観を示す図であり、(a)は正面図、(b)は概略斜視図である。図2は、建物10の一階部分及び二階部分の間取り図である。
【0023】
建物10は、2階建てユニット式建物として構築されており、基礎11上に固定された建物本体12と、建物本体12の上方に設置された屋根13とを有して構成されている。建物本体12は、複数の建物ユニット20が互いに連結される等して構築されており、一階部分と二階部分とを有している。屋根13は寄せ棟式の屋根であり、建物本体12の全体を覆うようにして設置されている。ただし、屋根13は切り妻式の屋根や平屋根であってもよい。
【0024】
建物ユニット20の構成を図3を用いて説明する。建物ユニット20は、その四隅に配設される4本の柱21と、各柱21の上端部及び下端部をそれぞれ連結する各4本の天井大梁22及び床大梁23とを備える。そして、それら柱21、天井大梁22及び床大梁23により直方体状の骨格(躯体)が形成されている。柱21は四角筒状の角形鋼よりなる。また、天井大梁22及び床大梁23は断面コ字状の溝形鋼よりなり、その開口部が向き合うようにして、すなわち溝部をユニット内側に向けるようにして設置されている。なお、溝形鋼の相対向する一対のフランジは上下に位置している。
【0025】
建物ユニット20の長辺部(桁部)の相対する天井大梁22の間には、所定間隔で複数の天井小梁25が架け渡されて固定されている。同じく建物ユニット20の長辺部(桁部)の相対する床大梁23の間には、所定間隔で複数の床小梁26が架け渡されて固定されている。天井小梁25及び床小梁26は、それぞれ同一の間隔でかつ短辺側(妻側)の天井大梁22及び床大梁23に水平に設けられている。例えば、天井小梁25はリップ溝形鋼よりなり、床小梁26は角形鋼よりなる。天井小梁25によって天井面材27が支持され、床小梁26によって床面材28が支持されている。
【0026】
本実施形態では特に、建物本体12の構造として、複数の建物ユニット20を離し置きし、その離し置き中間部分に建物ユニット20とは異なる構成の中間構造部を構築した、いわゆるユニット離隔配置工法を用いたものを採用している。図2の間取り図で言えば、一階部分及び二階部分において、X1,X2の建物部分が、複数の建物ユニット20を互いに連結させてなるユニット構造部であり、X3の建物部分が、ユニット構造部X1,X2の間の中間スペースに設けられた中間構造部である。なお、図2には、建物ユニット20同士が結合される境界線を示すドッキングライン(ユニット境界線)を一点鎖線で示している。
【0027】
中間構造部X3には建物ユニット20が設置されておらず、中間構造部X3は、ユニット構造部X1,X2の建物ユニット20を利用して、具体的には中間構造部X3を挟んで対向する建物ユニット20に各種建材を架け渡して構築されている。図示の構成では、建物ユニット20がその短手方向(妻方向)に1ユニット分離間して離し置きされており、これにより、中間構造部X3が建物ユニット20の短辺側(妻面側)の幅とほぼ同じ幅で形成されている。
【0028】
ユニット離隔配置工法について簡単に説明すると、離し置きされた両建物ユニット20の間には、内通りの天井大梁22(桁側天井大梁)に架け渡した状態で中間天井梁が設けられている。中間構造部X3では、中間天井梁に支持された状態で外壁パネルが取り付けられる。また、一階床部分では基礎上に載置された状態で床フレームが固定され、二階床部分では中間天井梁上に載置された状態で床フレームが固定されるようになっている。なお、床フレームは、建物ユニット20の床部と同じ構成を有するものであり、4つの仕口部(柱レスの仕口)と床フレーム大梁とを有する。中間構造部X3では、一階部分及び二階部分の両方において柱レス構造となっており、その分、柱露出部分の縮小化が可能となっている。すなわち、例えば図2のY1,Y2部は、通常のユニット工法では4本の柱が集結する部位であるが、本建物10では、2本の柱のみが集結する構成となっている。
【0029】
建物10において、一階部分には、建物10の外壁を屋内側に後退させてアルコーブ(凹所)31が形成されており、そのアルコーブ31の屋内側に居室32が形成されている。アルコーブ31には、建物ユニット20の柱21により規定される外壁面から屋内側に後退させた位置にアルコーブ窓部33が設けられており、アルコーブ窓部33の左右両側であってアルコーブ31の側方部分にはアルコーブ袖壁部34が設けられている。アルコーブ袖壁部34は、屋内方向に向けて斜めに配置されたアルコーブ壁面材35によりアルコーブ空間から区画されて形成されており、アルコーブ壁面材35の裏面側の空間部に柱21が収容される構成となっている。アルコーブ壁面材35は例えばガルバリウム等の化粧板により構成されている。アルコーブ壁面材35は、アルコーブ31の屋外開放側に向けてアルコーブ空間が広がるように設置されており、アルコーブ壁面材35によりアルコーブ31の入隅コーナー部分が覆われている。
【0030】
また、二階部分には、アルコーブ31の上方となる部位にインナバルコニー41が設けられている。インナバルコニー41は、1つの建物ユニット20の約半分のスペースを使って設けられるものであり、その屋内側に居室42が形成されている。特に、インナバルコニー41は、建物ユニット20を短手方向に二分してその一方に設けられている。この場合、1つのユニット躯体内に屋内部とインナバルコニー41とが形成されている。インナバルコニー41と居室42との間には例えば掃出窓からなるバルコニー窓部43が設けられており、バルコニー窓部43の左右両側であってインナバルコニー41の側方部分にはバルコニー袖壁部44が設けられている。バルコニー袖壁部44は、屋内方向に向けて一部が斜めに配置されたバルコニー壁面材45によりバルコニー空間から区画されて形成されており、バルコニー壁面材45の裏面側の空間部に柱21が収容される構成となっている。バルコニー壁面材45は、アルコーブ壁面材35と同様、例えばガルバリウム等の化粧板により構成されている。バルコニー壁面材45は、インナバルコニー41の屋外開放側に向けてバルコニー空間が広がるように設置されており、バルコニー壁面材45によりインナバルコニー41の入隅コーナー部分が覆われている。また、インナバルコニー41の屋外開放側には手摺部46が設けられている。
【0031】
一階側のアルコーブ袖壁部34と二階側のバルコニー袖壁部44とは互いに真下及び真上となる位置に設けられており、それらの内部空間が連通している。それらの内部空間は、例えば上下方向に延びる配管スペースとなっており、同空間には、屋根面を流れる雨水を回収し下方に導く雨樋等の配管47が一階/二階を通じて設けられている。その他、アルコーブ袖壁部34及び二階側のバルコニー袖壁部44には空調ダクトや換気ダクトが適宜設けられる。
【0032】
図4は、インナバルコニー41を構築するために用いられる建物ユニット(以下、バルコニーユニット20Aという)を示す斜視図である。バルコニーユニット20Aは、図3で説明した建物ユニット20と同様の基本構成を有しており、四隅に配設される柱21と、各柱21を連結する天井大梁22及び床大梁23とを備える点で同様であり、床部分の構成が相違している。図4には、図3と同じ構成については同じ符号を付しており、その説明については省略する。
【0033】
バルコニーユニット20Aでは、建物ユニット20と相違する構成として、短辺側の一対の床大梁23に架け渡すようにして中間梁51が設けられている。つまり、中間梁51は、長辺側の一対の床大梁23の間であってかつこれらに平行に設けられている。なお、図4では、長辺側の一対の床大梁23のうち図の奥側が屋内側(図2の居室42側)の床大梁であり、図の手前側が屋外側(図2のインナバルコニー41側)の床大梁である。以下説明の便宜上、居室42側の床大梁23を「居室床大梁23A」、インナバルコニー41側の床大梁23を「バルコニー床大梁23B」とも言う。
【0034】
中間梁51は、床大梁23と同じ溝形鋼により構成されるとともに、同じ高さ位置に設けられており、その両端部が図示しないブラケットにより短辺側の一対の床大梁23に連結されている。中間梁51は、その溝部を居室床大梁23Aに向けて設けられており、中間梁51と居室床大梁23Aとの間には複数の居室床小梁52が固定されている。この居室床小梁52は、通常の建物ユニット20の床小梁26と同様の角形鋼よりなりかつその固定方法も同様であるが、その長さが床小梁26の約1/2である点で相違している。
【0035】
また、中間梁51とバルコニー床大梁23Bとの間には複数のバルコニー床小梁53が固定されている。このバルコニー床小梁53は、居室床小梁52よりも高さ方向の幅寸法が小さい角形綱により構成されており、一端がバルコニー床大梁23Bの溝部側に固定されるとともに、他端が中間梁51の溝部とは反対側(ウェブ外側面)に固定されている。固定方法は、ブラケット固定、溶接、ボルト締め等が用いられる。
【0036】
居室床小梁52は、中間梁51の上面部(上側フランジの上面部)よりも上方に一部が突き出るようにして固定されているのに対し、バルコニー床小梁53は、中間梁51の上面部(上側フランジの上面部)よりも下方に固定されている。つまり、居室床小梁52とバルコニー床小梁53とは、それらを比較して前者の上面部が高い位置に、後者の上面部が低い位置になるように配置されている。ただし、バルコニー床小梁53の下面部は、床大梁23及び中間梁51の下面部から下方にはみ出ない位置に設定されており、本実施形態では、バルコニー床小梁53の下面部と床大梁23及び中間梁51の下面部とは同一レベルの高さとなっている。なお、居室床小梁52の下面部も同様に、床大梁23及び中間梁51の下面部から下方にはみ出ない位置に設定されている。また、居室床小梁52とバルコニー床小梁53とは基本的に、ユニット短手方向に見て一直線上に、かつ同じピッチで設けられている。
【0037】
図5は、バルコニーユニット20Aとその下方の建物ユニット20との階間部の構成を示す断面図であり、これは図2(b)のA−A線断面図に相当する。
【0038】
一階部分の構成として、一対の天井大梁22(桁側天井大梁)の間には天井小梁25が設けられ、その天井小梁25の下側に野縁61が固定されるとともに、野縁61の下面に天井板62が固定されている。天井板62の上にはグラスウール等の断熱材63が配設されている。また、天井板62には、アルコーブ窓部33用のサッシ枠64が固定されており、そのサッシ枠64によりガラス戸65が開閉可能に支持されている。サッシ枠64よりも屋外側には、アルコーブ天井部となる軒天板66が固定されている。
【0039】
一方、二階部分の構成として、中間梁51と居室床大梁23Aとの間に固定されている居室床小梁52の上には床下地材71が固定され、その上にはパーティクルボード等の床仕上げ材72が固定されている。床下地材71の下面側には床断熱材73が設けられている。
【0040】
また、中間梁51とバルコニー床大梁23Bとの間に固定されているバルコニー床小梁53の上には床下地材75が固定され、その上にはバルコニー床断熱材76が設けられている。バルコニー床断熱材76は、その上面が一方向に傾斜した勾配断熱材であり、その上面には防水シート77が設けられている。図示は省略するが、バルコニー床断熱材76の上面側にはバルコニー床仕上げ材が適宜敷設される。ここでは、バルコニー床大梁23B、バルコニー床小梁53、床下地材75、バルコニー床断熱材76、防水シート77を含んでバルコニー床部が構成されている。また、バルコニー床断熱材76の勾配低位側であってバルコニー先端側の端部(図の左端部)には排水部が設けられるとともに、その排水部に排水配管が設けられている。
【0041】
中間梁51には、ブラケット81を介してバルコニー窓部43用のサッシ枠82が固定されており、そのサッシ枠82によりガラス戸83が開閉可能に支持されている。ここで、上述のとおり居室床小梁52とバルコニー床小梁53とには高低差があり、居室床小梁52の上面が高い位置に、バルコニー床小梁53の上面が低い位置になっている。そのため、居室床小梁52とバルコニー床小梁53との段差を利用してサッシ枠82を設置することができ、居室42の床面との段差の無い状態でサッシ枠82の取り付けが可能となっている。この場合、居室床面に連続して設けられるサッシ枠82の下枠部82aは、その高さ位置が居室42の床面と略同一高さに設定されており、バルコニー窓部43を介しての人の出入りが容易となっている。また、居室32の床面よりもインナバルコニー41の床面(バルコニー床仕上げ材の上面)が低く設定されており、インナバルコニー41側から居室42側への水等の浸入が生じにくくなっている。
【0042】
バルコニー床大梁23Bには、その上側フランジに連結された状態で支柱85が立設されている。詳しくは、図6に示すように、バルコニー床大梁23Bの溝部内には、同床大梁23Bの上下のフランジ間の距離と同じ高さ寸法を有する補強ブラケット86が溶接等により固定されている。補強ブラケット86はT字状をなし、上側フランジの内面に固定される水平板部86aと鉛直方向に延びる鉛直板部86bとが溶接されることにより製作されている。水平板部86aの下面側には、鉛直板部86bを挟んで両側に複数のウェルドナット87が溶接固定されている。一方、支柱85の下端部には、上側フランジの上面に当接されるエンドプレート85aが一体に設けられている。支柱85のエンドプレート85aと補強ブラケット86の水平板部86aとは、バルコニー床大梁23Bの上側フランジを挟んで上下同じ位置に設けられており、それらエンドプレート85aと水平板部86aと上側フランジとが複数のボルト88とウェルドナット87とにより一体に締結されている。なお、支柱85には、上下2カ所に、バルコニー床大梁23Bの長手方向に貫通する孔部85bが形成されている。
【0043】
支柱85は、バルコニー床大梁23Bの長手方向に沿って所定間隔ごとに複数設置されており、その支柱85に対して、手摺部46を構成する手摺ユニット90が取り付けられるようになっている。図7は、バルコニーユニット20Aと手摺ユニット90との分解斜視図であり、図8は、バルコニー床大梁23B付近の納まりを示す断面図である。
【0044】
図7,図8に示すように、手摺ユニット90は、バルコニー床大梁23Bに上方から被せられる長尺状の笠木91と、その笠木91の上面から延び支柱85と同じピッチで設けられる複数の支柱カバー92と、各支柱カバー92の上端部に設けられる手摺バー93と、各支柱カバー92の屋外側に取り付けられる手摺パネル94とを有している。手摺パネル94は、例えば半透明なアクリル板よりなり、ブラケット95により支柱カバー92に取り付けられている。手摺パネル94により、支柱カバー92同士が連結されている。
【0045】
笠木91はバルコニー床大梁23Bに沿って延びている。また、笠木91は全体として横断面略コ字状の板材により形成されており、その開放部内にバルコニー床大梁23Bの上部を入り込ませた状態で設置されている。この場合、笠木91においてその笠木91の上面を形成する上板部91aは、バルコニー床大梁23Bの上側フランジの上方にあり、その上側フランジと対向している。また、笠木91において上板部91aを挟んで対向する一対の側板部91bは、一方がバルコニー床大梁23Bよりバルコニー側にあり、他方がバルコニー床大梁23Bより屋外側にある。
【0046】
バルコニー床大梁23Bの上側フランジには複数の笠木ホルダ97が設けられており、その笠木ホルダ97には、手摺ユニット90の笠木91を位置保持するための保持部97aが設けられている。笠木ホルダ97は保持部97aを弾性変形可能とする材料により形成されており、保持部97aは弾性変形した状態で笠木91の各側板部91bをそれぞれ押圧して笠木91を固定している。笠木ホルダ97は支柱85と同数となっており、支柱85とほぼ同位置に配置されている。
【0047】
図5において、一階部分の天井大梁22と、二階部分のバルコニー床大梁23Bとには外壁パネル101,102が固定されており、その見切り部には見切り材としての外壁化粧板103が設けられている。
【0048】
次に、インナバルコニー床部の防水構造について説明する。
【0049】
図8に示すように、バルコニー床大梁23Bの屋内側には、同床大梁23Bの長手方向に沿って立ち上がるようにして防水プレート105が設けられている。この防水プレート105は、その下端部が床下地材75上にビス等により固定されている。笠木91はバルコニー床断熱材76から上方に離間した位置にあり、笠木91とバルコニー床断熱材76との離間部分に防水プレート105の立ち上がり部105aが存在している。また、防水プレート105の立ち上がり部105aは、笠木91の各側板部91bの間においてバルコニー側の側板部91b寄りに配置されている。本実施形態では、バルコニー床大梁23B及び防水プレート105により、手摺部46の下部であって、同下部における手摺立ち上がり部46aが構成されている。
【0050】
なお、手摺立ち上がり部46aが突出部に相当し、防水プレート105の立ち上がり部105aが立ち上がり板部に相当する。また、防水プレート105の立ち上がり部105aにより突出部のバルコニー側の側面が形成されており、バルコニー床大梁23Bのウェブにより突出部の屋外側の側面が形成されている。
【0051】
防水シート77は、インナバルコニー41の床面を形成する床敷設部77aと、防水プレート105に沿って上下方向に延びる立ち上がり部77bと、手摺ユニット90の笠木91に取り付けられた手摺側取付部77cとを有しており、それら床敷設部77a、立ち上がり部77b、手摺側取付部77cは1つの長尺状シート材が敷設されることで形成されている。床敷設部77aは、バルコニー床面において手摺ユニット90側の端部とそれとは反対側(屋内側)の端部の間の床長さ寸法と同じ又はそれより大きい長さ寸法を有している。
【0052】
防水シート77の立ち上がり部77bは防水プレート105の立ち上がり部105aのバルコニー側面と重なっており、その重なっている部分において溶着等により防水プレート105と接合されている。この場合、防水シート77の立ち上がり部77bは、平面視で笠木91よりもバルコニー側には突出していない。また、立ち上がり部77bは繋ぎ取付部に相当する。
【0053】
防水シート77の手摺側取付部77cは、笠木91の開放部の内周面の略全体に沿って延びている。この場合、手摺側取付部77cは笠木91の上板部91a及び各側板部91bのそれぞれと重なっており、それら上板部91a及び各側板部91bに対して溶接等により接合されている。手摺側取付部77cは、笠木91の開放部内において笠木ホルダ97の保持部97aと笠木91(上板部91a及び各側板部91b)との間に挟まれている。この場合、笠木ホルダ97は、保持部97aの弾性変形により笠木91を固定しているため、防水シート77の手摺側取付部77cにネジ孔などを形成する必要がない。したがって、笠木91の保持部分において防水シート77の防水性が低下することを抑制できる。
【0054】
なお、防水シート77は、バルコニー床面の屋内側端部においてサッシ枠82に向けて上方に立ち上がる立ち上がり部を有している。この立ち上がり部は床敷設部77aと連続しており、ブラケット81に対して固定されている。
【0055】
次に、手摺ユニット90及び防水シート77がバルコニーユニット20Aに取り付けられる場合の作業手順について図9を参照しつつ説明する。図9は、手摺ユニット90の取り付け手順について説明するための図である。
【0056】
図9(a)に示すように、バルコニーユニット20Aに設置される前の手摺ユニット90に支持フック111を着脱可能に取り付ける。支持フック111は、手摺バー93と平行に延びる支持棒112と、支持棒112を支柱カバー92からバルコニー側へ離間した位置にて支持する支持アーム113と、支持アーム113に接続され且つ手摺ユニット90の支柱カバー92及びブラケット95に係止可能な係止部114とを有しており、係止部114を支柱カバー92及びブラケット95に係止させることで支持フック111を手摺ユニット90に取り付ける。この場合、支柱カバー92及びブラケット95がフック用被取付部に相当する。
【0057】
また、防水シート77の端部(手摺側取付部77cに相当する部分)を手摺ユニット90の笠木91の開放部内に収納させ、その状態で防水シート77を笠木91の内周面に接合させる。そして、防水シート77における非接合の部分(床敷設部77a及び立ち上がり部77bに相当する部分)を支持フック111の支持棒112に引っ掛ける。このようにして、手摺ユニット90と防水シート77とを一体化した状態で容易に移動させることができるようにする。
【0058】
その後、図9(b)に示すように、バルコニーユニット20A側の支柱85に支柱カバー92を被せるとともに、手摺立ち上がり部46aに笠木91を被せる。そして、支柱85の孔部85bとこの孔部85bに挿通されるボルト98等を利用して支柱カバー92を支柱85に固定するとともに、笠木91の開放側から開放部内側にバルコニー床大梁23B上の笠木ホルダ97に嵌め込んで笠木91を固定させる(図8参照)。このようにして、インナバルコニー41の屋外開放側に手摺部46を形成する。この場合、手摺ユニット90を設置することが、防水シート77における手摺部46側の端部の位置決めを行うことにもなる。
【0059】
手摺ユニット90の設置後、図9(c)に示すように、防水シート77の敷設を、既に位置決めされた手摺側取付部77cを基準として行う。ここでは、笠木91の開放側からバルコニー側に延出している防水シート77を、手摺立ち上がり部46aにおける防水プレート105の立ち上がり部105aに重ねつつ接合させ、バルコニー床断熱材76に重ねつつ接合させる。これにより、防水シート77における立ち上がり部77b及び床敷設部77aを形成する。この結果、バルコニー床面において手摺ユニット90側の端部とそれとは反対側(屋内側)の端部との間の全体に防水シート77を敷設したことになる。そして、支柱カバー92及びブラケット95に対する係止部114の係止状態を解除させ、支持フック111を手摺ユニット90から取り外す。
【0060】
このように、建物ユニット製造工場では、バルコニー床大梁23Bに対して支柱85が固定され、その支柱85に対して手摺ユニット90があらかじめ取り付けられ、さらに防水シート77が敷設され、バルコニーユニット20Aはその状態でトラック等により施工現場に搬送される。
【0061】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0062】
手摺ユニット90がバルコニーユニット20Aに設置される前に、手摺ユニット90の笠木91に防水シート77の一端(手摺側取付部77c)があらかじめ取り付けられているため、手摺ユニット90をバルコニーユニット20Aの屋外開放側に設置することが、防水シート77の一端の位置決めを行うことになる。この場合、手摺ユニット90を設置した後に防水シート77の一端の位置決めを行う必要がないため、手摺ユニット90の設置後には、防水シート77を手摺ユニット90に近い部分から遠い部分に向けて順に延ばすように敷設すればよく、位置決め作業を行わない分だけ防水シート77の敷設作業を容易化できる。
【0063】
防水シート77の床敷設部77aの長さ寸法は、バルコニー床部において手摺ユニット90側の端部とそれとは反対側(屋内側)の端部の間の床長さ寸法と少なくとも同じになっているため、防水シート77の床敷設部77aの長さが足りずに屋内側に別の防水シートを継ぎ足すという手間を省くことができる。
以上の結果、手摺ユニット90が設置されるインナバルコニー41において防水シート77の敷設作業の容易化を図ることができる。
【0064】
防水シート77の手摺側取付部77cは手摺ユニット90の笠木91に沿って延びるように設けられているため、笠木91に対して防水シート77を広範囲で固定することができる。したがって、笠木91は防水シート77の固定対象として好都合である。また、防水シート77の手摺ユニット90側の端部は、その広範囲が手摺側取付部77cとして笠木91に対して固定されているため、笠木91に対して防水シート77が歪むことを抑制できる。ここで、防水シート77の床敷設部77aを手摺ユニット90に近い部分から遠い部分に向けて順に敷設する場合、近い部分で防水シート77が歪んでいると遠い部分ではその歪みがさらに大きくなることが懸念される。これに対して、手摺ユニット90に近い部分において防水シート77の歪みを抑制できるため、遠い部分を含めて防水シート77の床敷設部77a全体を歪まないように敷設することができる。
【0065】
防水シート77の端部が笠木91の開放部の内周面に対して固定されているため、防水シート77と笠木91との境界部は笠木91の開放部内側に存在する。したがって、例えば防水シート77が笠木91の外周側に取り付けられている構成とは異なり、防水シート77が笠木91に接合された部分から雨水が浸入することを回避できる。
【0066】
防水シート77の手摺側取付部77cは笠木91の上板部91a及び各側板部91bのそれぞれの内側面と重ねて取り付けられているため、笠木91の板面を通じて開放部内に雨水等の水が浸入することを防水シート77の手摺側取付部77cにより防止できる。つまり、笠木91における防水効果を高めることができる。また、手摺ユニット90がバルコニーユニット20Aに設置される前に、防水シート77の手摺側取付部77cが笠木91の開放部内に取り付けられているため、手摺ユニット90を、笠木91の開放部内に手摺立ち上がり部46aの上部を入り込ませた状態でインナバルコニー41に設置することができる。
【0067】
防水シート77は、床敷設部77aと手摺側取付部77cとに加えて立ち上がり部77bを有しているため、バルコニー床部と笠木91の開放側内部と手摺立ち上がり部46aとに別々の防水シートを個別に取り付けるのではなく、防水シート77を形成する一枚のシート材を笠木91からバルコニー床部に架け渡すように連続的に敷設することができる。したがって、手摺立ち上がり部46aにおいて防水性能の低下を抑制しつつ防水シート77による仕上面の美観を高めることができる。
【0068】
防水シート77の立ち上がり部77bが手摺立ち上がり部46aにおいて防水プレート105の立ち上がり部105aに接合されているため、笠木91とインナバルコニー41の床面とが上下に離間していても、その離間部分において防水シート77を防水プレート105により位置保持することができる。ここで、防水シート77は、手摺側取付部77c、立ち上がり部77b、床敷設部77aの順で敷設されるため、立ち上がり部77bを敷設する時には防水シート77の大部分(床敷設部77aに相当する部分)が未敷設の状態となっている。この場合、床敷設部77aを敷設する前に立ち上がり部77bを敷設することは作業性の低下が懸念されるが、笠木91とバルコニー床面との間において防水シート77を手摺立ち上がり部46aの側面に対して単に押し付けることにより防水シート77を手摺立ち上がり部46aに固定することができるため、立ち上がり部77bの敷設の作業性低下を抑制できる。
【0069】
手摺ユニット90がインナバルコニー41に設置される前に、手摺ユニット90に支持フック111が取り付けられ、防水シート77のうち立ち上がり部77b及び床敷設部77aが支持フック111に仮に引っ掛けられる。このため、手摺ユニット90をインナバルコニー41に設置する際に、防水シート77における未敷設の部分が手摺ユニット90の設置作業の支障となることを抑制できる。また、支持フック111は手摺ユニット90から取り外し可能であるため、手摺ユニット90の設置作業及び防水シート77の敷設作業の完了後に支持フック111を取り外すことにより、支持フック111が手摺部46の美観を損なうといった不都合を抑制できる。
【0070】
手摺ユニット90の設置作業及び防水シート77の敷設作業が建物ユニット製造工場においてあらかじめ行われるため、それら設置作業や敷設作業が建物施工現場において行われる場合に比べて施工誤差を小さくできるとともに、建物施工現場での作業工数の低減を図ることができる。
【0071】
(他の実施形態)
本発明は上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。
【0072】
(1)防水シート77において床敷設部77aと立ち上がり部77bとの境界部には立ち上がり部77bに対する床敷設部77aの角度を保持する角度保持部材が設けられていてもよい。例えば、横断面L字状のアングル部材が角度保持部材として防水シート77の下面側に取り付けられている構成とする。この構成では、手摺ユニット90がバルコニーユニット20Aに設置される前において、アングル部材があらかじめ防水シート77に取り付けられており、アングル部材は防水シート77とともに支持フック111に引っ掛けられた状態となっている。そして、手摺ユニット90が設置された後、アングル部材が手摺立ち上がり部46aのバルコニー側に設置されることにより防水シート77の立ち上がり部77bが床敷設部77aに対して角度保持される。この場合、防水プレート105が設けられていなくても、防水シート77の立ち上がり部77bをアングル部材により固定することができる。
【0073】
また、アングル部材は、バルコニー床面における手摺部46とは反対側の端部に設けられていてもよい。例えば、防水シート77においてサッシ枠82の下方の立ち上がり部と床敷設部77aとの境界部に設けられている構成とする。この場合でも、防水シート77において立ち上がり部を床敷設部77aに対して位置保持できる。
【0074】
(2)防水シート77の手摺側取付部77cは、笠木91の内周面の少なくとも一部に重ねて取り付けられていればよい。例えば、防水シート77の手摺側取付部77cが笠木91のうちバルコニー床部側の側板部91bの内周面に取り付けられている構成や、バルコニー床部側の側板部91b及び上板部91aの各内周面に取り付けられている構成とする。この構成でも、防水シート77の手摺側取付部77cが笠木91の開放部内に収納されているため、防水シート77と笠木91との重なり部分において雨水が浸入することを回避できる。
【0075】
(3)防水シート77の手摺側取付部77cは手摺ユニット90の下部に取り付けられていればよい。例えば、防水シート77の手摺側取付部77cは、笠木91の外周面に取り付けられていてもよく、支柱カバー92のバルコニー側の側面の下部に取り付けられていてもよい。なお、防水シート77の手摺側取付部77cが支柱カバー92に取り付けられている構成は、笠木91が設けられていない手摺ユニット90に対して適用されることが好ましい。
【0076】
(4)手摺立ち上がり部46aにおいて、防水シート77の立ち上がり部77bが取り付けられる防水プレート105は、床下地材75ではなくバルコニー床大梁23Bに対して固定されていてもよい。
【0077】
(5)防水シート77があらかじめ取り付けられた手摺ユニット90は、バルコニーユニット20A内に設けられたインナバルコニー41ではなく、建物10の外壁から屋外側へ張り出した張出部により形成されたバルコニーに設置されていてもよい。この場合、手摺ユニット90は、張出部における屋外側周縁部に配置されていることが好ましい。また、手摺ユニット90は、屋上階を有する建物10において屋上階に設置されていてもよい。
【0078】
(6)手摺ユニット90の設置作業及び防水シート77の敷設作業は、バルコニーユニット20Aが建物ユニット製造工場から建物施工現場に搬送され後に建物施工現場において行われてもよい。また、建物ユニット製造工場において防水シート77の敷設作業が完了したバルコニーユニット20Aの床部に対して、建物施工現場に搬送された後に別の防水シートが敷設されてもよい。つまり、バルコニー床部に対して防水シートが二重に敷設されてもよい。これにより、バルコニ床部における防水性能を高めることが可能となる。
【0079】
(7)防水シート77があらかじめ取り付けられた手摺ユニット90の設置対象となるバルコニーは、鉄骨軸組工法により構築された建物や、在来木造工法により構築された建物等、他の構造の建物に設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0080】
10…建物、20…建物ユニット、21…柱、22…天井大梁、23…床大梁、23B…バルコニー床部を構成するバルコニー床大梁、41…バルコニーとしてのインナバルコニー、46a…突出部としての手摺立ち上がり部、53…バルコニー床部を構成するバルコニー床小梁、75…バルコニー床部を構成する床下地材、76…バルコニー床部を構成するバルコニー床断熱材、77…バルコニー床部を構成する防水シート、77a…床敷設部、77b…繋ぎ取付部としての立ち上がり部、77c…手摺側取付部、90…手摺ユニット、91…笠木、91a…上板部、91b…側板部、92…フック用被取付部としての支柱カバー、95…フック用被取付部としてのブラケット、105…立ち上がり板部を構成する防水プレート、105a…立ち上がり板部としての立ち上がり部、111…支持フック。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋外開放側に手摺ユニットが設けられており、バルコニー床部において前記手摺ユニットが設けられている一端側とそれとは反対側の他端側との間に防水シートが敷設されているバルコニーに適用され、
前記防水シートは、前記手摺ユニットの下部に取り付けられている手摺側取付部と、前記バルコニー床部に敷設されている床敷設部とを有しており、
前記床敷設部は、前記バルコニー床部において前記一端側と前記他端側との間の床長さ寸法と少なくとも同じ長さ寸法を有しており、
前記手摺側取付部は、前記手摺ユニットが前記バルコニーに設置される前にあらかじめ前記手摺ユニットの下部に取り付けられていることを特徴とするバルコニーの防水構造。
【請求項2】
前記バルコニーにおいて、前記バルコニー床部の屋外開放側にはその屋外開放側の端部に沿って延び且つ前記バルコニー床部よりも上方に突出する突出部が設けられており、
前記手摺ユニットは前記突出部に組み付けられており、前記手摺ユニットの下部には前記突出部に沿って延び且つ前記突出部を上方から覆う笠木が設けられており、
前記笠木は、前記防水シートの前記手摺側取付部が取り付けられている取付部であることを特徴とする請求項1に記載のバルコニーの防水構造。
【請求項3】
前記笠木は、前記突出部の上方に配置される上板部と、前記上板部を挟んで設けられ前記突出部のバルコニー床部側及びその反対側に配置される一対の側板部とを有しており、
前記防水シートの前記手摺側取付部は、前記笠木において前記一対の側板部のうちバルコニー床部側の側板部の内側面に重ねて取り付けられていることを特徴とする請求項2に記載のバルコニーの防水構造。
【請求項4】
前記防水シートの前記手摺側取付部は、前記笠木において前記上板部及び前記一対の側板部の各内側面に重ねて取り付けられていること特徴とする請求項3に記載のバルコニーの防水構造。
【請求項5】
前記突出部として、前記バルコニー床部の床面より立ち上げられた立ち上げ面を形成する立ち上がり板部を有し、
前記防水シートは、前記手摺側取付部と前記床敷設部との間に前記立ち上がり板部に重ねて取り付けられている繋ぎ取付部を有していることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載のバルコニーの防水構造。
【請求項6】
前記手摺ユニットは、支持フックが着脱可能に取り付けられるフック用被取付部を有しており、
前記支持フックは、前記バルコニー床部に対する敷設前の前記防水シートの前記床敷設部を支持することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のバルコニーの防水構造。
【請求項7】
前記バルコニーは、床大梁、天井大梁及びこれら両大梁を結ぶ柱を有する建物ユニットの内部に形成されたインナバルコニーであって、
前記手摺ユニットの設置作業及び前記防水シートの敷設作業は建物ユニット製造工場にてあらかじめ行われ、その状態で建物施工現場に搬送されることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のバルコニーの防水構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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