説明

バルブの弁シートリーク早期発見方法

【課題】 簡単且つ確実にバルブの弁シートのリークを早期発見する方法を提供する。
【解決手段】 検出対象なるバルブ10のヨーク23またはグランドブッシュ26に赤外線温度計からの赤外線を照射する白色または黒色のマーク30を印し、正常時に赤外線温度計からの赤外線をマーク30に照射し、バルブ10の所定箇所の温度を記録し、検査時に赤外線温度計からの赤外線をマーク30に照射し、測定されたバルブ10の所定箇所の温度を記録されている正常時の所定箇所の温度と比較し、蒸気またはガスの漏洩を早期に発見する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気、ガス、ドレン等の流れを遮断するバルブの弁シートから蒸気、ガス、ドレン等が漏洩されているのを早期に発見できるようにしたバルブの弁シートリーク早期発見方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、火力発電所で用いられるボイラのドレンおよびブロー配管(以下、ドレン配管という)に用いられるバルブの弁閉止時にゴミの噛み込みで弁座および弁シートに傷が入ると、バルブシートとバルブディスクとの密着が不十分な弁シートリークを起し、弁閉止時に蒸気、ガス等が遮断出来ず、弁の目的を果たさなくなる。弁シートリークすることにより、無駄な蒸気等が外部に放出する。そのためにボイラでは通常より余計な蒸気を発生させることにより、多くの燃料を消費する。それに伴い空気及び給水量が増加し、動力費及び給水量も増加するので、ボイラの発電端効率が低下する。
【0003】
弁シートリークが初期のとき漏洩量は少量であるが、時間の経過と共に、蒸気の圧力で序々に弁シートが浸食し、弁座の傷が深くなる。弁座の傷が浅いとき弁シートとバルブディスクをサンドペーパー磨き、傷を無くし修理できる。
【0004】
さらには燃料と酸素の燃焼及び電気エネルギーなどの熱源を用いて溶射材料を加え、熱及び溶融またはそれに近い状態にした粒子を材料に吹き付けて被膜を形成し、弁シートの表面に被膜を形成し、修復することが出来る。しかし傷が深くなった際は、弁シートの擦り合わせが不可能で、弁シートとバルブディスクの交換となり弁シートの擦り合わせに比較して修繕費が高騰する。
【0005】
従って、バルブの弁シートのリーク早期発見が必要となる。弁シートリークの確認方法として、弁の聴音測定あるいは温度測定を行う方法がある。五感による判断には、個人差があり、対象弁の弁シートリークを見逃し又は誤りによる不要なバルブシートの修理をしてしまう懸念がある。
【0006】
バルブの弁シートのリーク早期発見方法は特許第3030132号公報にも記載されている(特許文献1)。
【0007】
図5に示すように、特許文献1には弁箱1の外表面の超音波探触子2を設置し、弁座3と弁体4とが擦り合される弁シート5に向けて超音波を放射して、弁シート面5から反射してくる超音波を測定する。また超音波探触子2は、所定方向、即ち弁体4と弁座3とが当接した弁シート面5へ向けて超音波を放射し得るようにするため楔6を介して入射角度φが調整される。
【0008】
先ず弁の一次側と二次側を同じ圧力にした状態で、超音波探触子2の取付け位置を弁シート面5に沿って移動させながら水中に超音波を放射し、弁シート面5から反射エコーを全周において記録する。次に弁の一次側と二次側に差圧を付けてから同様の測定を行う。弁シート面5に傷などが付いて漏洩が生じている場合には、弁差圧により漏洩口からの漏洩水は噴流になるので周囲の静止水とは大きな速度差が付き、水中に放射した超音波の伝播速度が噴流部で変化して、弁シート面5からの反射エコーは減衰する。そこで弁差圧時の反射エコーが同圧時に比較して減衰していれば弁に漏洩が発生していると判断できる。漏洩位置7は測定箇所から特定できる。
【特許文献1】特許第3030132号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述したように、バルブの弁シートのリーク早期発見方法として超音波を用いる方法があるが、検査するために先ず弁の一次側と二次側を同じ圧力にした状態で、超音波探触子の取付け位置を弁シート面に沿って移動させながら水中に超音波を放射し、弁シート面から反射エコーを全周において記録する。しかる後に弁の一次側と二次側に差圧を付けてから同様の測定を行う必要があるため手間が掛かる。
【0010】
弁体の温度が上昇しヨーク部の温度が上昇するのを温度測定し判別する方法がある。弁体の温度が上昇しヨーク部の温度が上昇するのを温度測定し判別する方法は判別が容易になるが、測定する場所により温度が異なり、また温度がどの程度上昇したとき弁シートのリークであると判断するかは個人により異なってしまう。そこで本発明はバルブの測定場所を定め且つ、測定基準となる温度を定め、弁シートのリークを容易に発見できるようにする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は確実にバルブの弁シートのリークを早期発見する方法を提供するものであり、検出対象となるバルブの所定箇所に放射型温度計、例えば赤外線温度計からの赤外線を照射するマークを印し、正常時に前記赤外線温度計からの赤外線をマークに照射し、前記バルブの所定箇所の温度を記録し、検査時に前記赤外線温度計からの赤外線をマークに照射し、測定されたバルブの所定箇所の温度を記録されている正常時の所定箇所の温度と比較し、記録されている温度より、測定温度が高いときは蒸気またはガスが漏洩していると判断し、ガスまたは蒸気の漏洩を早期に発見するバルブの弁シートリーク早期発見方法を提供する。
【0012】
また、本発明は前記マークがバルブのヨークまたはグランドブッシュに印したバルブの弁シートリーク早期発見方法を提供する。
【0013】
更に、本発明は前記マークが白色又は黒色であるバルブの弁シートリーク早期発見方法を提供する。
【0014】
更に、本発明は前記バルブをボイラのドレン配管の上流系統に設けられ通常時に開放する開バルブと、該開バルブの下流に設けられ通常時に閉塞する閉バルブとで構成し、正常時に赤外線温度計からの赤外線を閉バルブのマークに照射し、前記閉バルブの所定箇所の温度を記録し、検査時に前記赤外線温度計からの赤外線を閉バルブのマークに照射し、測定された閉バルブの所定箇所の温度を記録されている所定箇所の正常時の温度と比較し、温度変化により前記閉バルブの蒸気またはガスの漏洩を検査し、前記閉バルブの増し締めしても蒸気またはガスの漏洩が止まらない場合、前記開バルブを閉塞してドレン配管の蒸気またはガスの漏洩の変化を検査し、前記閉バルブからの蒸気またはガスの漏洩でないか否かを確認するバルブの弁シートリーク早期発見方法を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明に依るバルブの弁シートリーク早期発見方法は検出対象となるバルブの所定箇所に赤外線温度計からの赤外線を照射するマークを印したので、温度を測定する箇所が一定にされるので、確実にバルブの温度測定ができる。
【0016】
また、本発明のバルブの弁シートリーク早期発見方法は正常時に赤外線温度計からの赤外線をマークに照射し、バルブの所定箇所の温度を記録し、検査時に前記赤外線温度計からの赤外線をマークに照射し、測定されたバルブの所定箇所の温度を記録されている正常時の所定箇所の温度と比較するようにしたので、正常時と漏洩時との温度差が一目瞭然として判別でき、蒸気またはガスの漏洩を早期に発見することができる。
【0017】
更に、本発明はバルブをボイラのドレン配管の上流系統に設けられ通常時に開放する開バルブと、開バルブの下流に設けられ通常時に閉塞する閉バルブとで構成したので、蒸気またはガスの漏洩があるときには閉バルブの増し締めを行い、弁シートからのリークであるか否かを確認する。閉バルブの増し締めを行っても蒸気またはガスの漏洩が止まらない場合、開バルブを閉塞してドレン配管の蒸気またはガスの漏洩の変化を検査し、検査対象としている弁シートからの蒸気またはガスが漏洩しているか、あるいはそれ以外の箇所からの漏洩であるかを確認できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は本発明のバルブの弁シートリーク早期発見方法に用いられたバルブの側面図、 図2は本発明のバルブの弁シートリーク早期発見方法に実施されたバルブの設置を示す模型図、図3は本発明のバルブの弁シートリーク早期発見方法で測定された温度を示す表、
図4は本発明のバルブの弁シートリーク早期発見方法でのバルブの異常状態をチェックの仕方を示した説明図である。
【0019】
図1において、判別対象となるバルブ10は例えば、火力発電所のボイラに接続されたドレン配管11に設けられるものである。バルブ10は内部にボイラからの蒸気が流れ込む弁箱12、弁箱12の内部に弁座14、バルブディスク15が設けられたステム16、弁座14とバルブディスク15とを密着するためにバルブディスク15の周囲に設けられた弁シート17よりなる。弁箱12はバルブディスク15と弁座14とが弁シート17を介して密着することにより、下の部屋121と上の部屋122に仕切られている。
【0020】
下端にバルブディスク15が設けられたステム16はボンネット18に螺合されており、上部にハンドル21が設けられている。ステム16を螺合しているボンネット18にはヨーク23が取付けられ、ボンネット18とグランド24間には、グランドパッキング25とグランドブッシュ26が設けられている。ボンネット18の下面にはシートパッキング27とバックシート28が設けられている。
【0021】
ヨーク23には赤外線温度計からの赤外線を照射し、バルブ10の温度測定する場所を定めるためのマーク30が印されている。マーク30はペンキその他の塗料が用いられ、また色は白色、黒色を問わないが、放射型温度計、例えば赤外線温度計よりの赤外線を照射するには白色または黒色が好ましい。マーク30はグランドブッシュ26に印してもよい。
【0022】
バルブ10は例えば、火力発電所のボイラに接続されたドレン配管11に設けられる。通常はバルブディスク15と弁座14は弁シート17を介して密着していて、ドレン配管(ボイラ側)111からボイラからの蒸気及びドレンが弁箱12の下の部屋121に入っても阻止している。それによりボイラからの蒸気などがフラッシュパイプより外部に漏洩されないようにしている。
【0023】
しかし、ボイラの起動時あるいは点検時にバルブ10のハンドル21を回転し、それまで密着していたバルブディスク15と弁座14とを開放すると、ドレン配管(ボイラ側)111から来たボイラからの蒸気及びドレンを弁箱12の下の部屋121から上の部屋122を通過し、ドレン配管(フラッシュタンク側)112を通過しフラッシュパイプに放出されるようになっている。
【0024】
図2に示すように、バルブ10はボイラに近いドレン配管11の上流系統111に設けられ通常時に開放する開バルブ101と、開バルブ101の下流に設けられ通常時に閉塞する閉バルブ102となり、正常状態では開バルブ101は開放し、閉バルブ102にてボイラなどからの蒸気が漏れないようにしている。そして閉バルブ102のヨーク23に印されたマーク30に500MW時の赤外線温度計よりの赤外線を照射し、閉バルブ102の定められた箇所の温度を測定し記録している。
【0025】
図3は正常状態における閉バルブ102のヨーク23に印されたマーク30に500MW時の赤外線温度計よりの赤外線を照射し、閉バルブ102の温度を測定し記録した表である。表の過熱器スプレイドレンブロー弁・元弁(弁番号V05−118A及びV05―117A)は弁シート漏洩のためデータの記録がないことを示している。
【0026】
過熱器スプレイドレンブロー弁(弁番号V05−118B)が閉バルブ102に相当する。正常状態における閉バルブ102のヨーク23に印されたマーク30に500MW時の赤外線温度計よりの赤外線を5回照射し閉バルブ102の温度を測定し、測定の結果示された最高温度の40.1度が記録される。
【0027】
弁シート17が正常なときは弁座14とバルブディスク15とが弁シート17で密着されているので、ボイラからドレン配管11に流れた蒸気は弁箱12の下側の空間に来ても阻止され、弁箱12の上の部屋には漏れない。
【0028】
次に、ドレン配管11に設けられた閉バルブ102の弁シート17に傷などが付き、弁座14とバルブディスク15とが弁シート17で密着されず、聴覚などにより判断し蒸気の漏洩の疑いがあるときに、閉バルブ102のヨーク23に設けられたマーク30の赤外線温度計からの赤外線を照射する。弁シート17がリークしていると、ボイラからドレン配管(ボイラ側)111に流れ弁箱12の下側の部屋121に流れた蒸気が弁シート17の隙間から弁箱12の上側の部屋122に漏れる。
【0029】
弁箱12の下側の部屋121に流れた蒸気がシート17の隙間から弁箱12の上側の部屋122に漏れると、弁箱12の上側の部屋122の温度が上がる。それによりヨーク23の温度が上昇する。閉バルブ102のヨーク23に設けられたマーク30に赤外線温度計からの赤外線を照射し温度を測定したときに、図2の表に記録されている温度より上昇したときには弁シート17がリークしていると判断される。
【0030】
本発明ではヨーク23にマーク30を施したので、赤外線温度計から照射される赤外線をマーク30に照射すれば、常に閉バルブ102の同じ箇所の温度が測定され、しかも通常状態のその箇所の最高温度が記録されているため、通常状態の最高温度と測定時の温度とを比較し、通常状態の最高温度より測定時の温度が高いとき、弁シートリークであることが判別出来るので、弁シートリークの発見が容易である。
【0031】
前述した測定の結果、閉バルブ102の弁シート17の蒸気の漏洩と判断された場合、ハンドル21を回転しステム16を下げ、バルブディスク15を弁座14に押しつけ、閉バルブ102の増し締めを行い蒸気が漏洩量の変化を見る。増し締めを行い蒸気の漏洩が止まったときには、閉バルブ102の弁シート17に傷などがなく、シート漏洩でないことが確認される。
【0032】
閉バルブ102のハンドル21を回転し、閉バルブ102の増し締めを行っても、ドレン配管11の蒸気の漏洩が止まらない場合には、開バルブ101のハンドルを回転し開バルブ101の増し締めを行う。開バルブ101の増し締めを行い、ドレン配管11の蒸気の漏洩が止まった場合には、閉バルブ102から蒸気が漏洩していると判断される。
【0033】
弁シート17の傷が浅いとき、閉バルブ102を分解して弁シート17と弁座14をサンドペーパー磨き、傷を無くし修理できる。さらには燃料と酸素の燃焼及び電気エネルギーなどの熱源を用いて溶射材料を加え、熱及び溶融またはそれに近い状態にした粒子を材料に吹き付けて被膜を形成し、弁シート17の表面に被膜を形成し、修復することが出来る。
【0034】
開バルブ101の増し締めを行っても、ドレン配管11の蒸気の漏洩が止まらない場合には、開バルブ101以外の別の箇所から蒸気が漏洩していると判断される。
【0035】
バルブが1つしかないドレン配管の系統では、ドレン配管の上流系統のバルブ操作を行い、前述と同様に測定しその旨を記録する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明のバルブの弁シートリーク早期発見方法に用いられたバルブの側面図である。
【図2】本発明のバルブの弁シートリーク早期発見方法に実施されたバルブの設置を示す模型図である。
【図3】本発明のバルブの弁シートリーク早期発見方法で測定された測定温度を示す表である。
【図4】本発明のバルブの弁シートリーク早期発見方法でのバルブの異常状態をチェックの仕方を示した説明図である。
【図5】従来のバルブの弁シートのリーク早期発見方法に用いられたバルブの断面図である。
【符号の説明】
【0037】
10 バルブ
11 ドレン配管
12 弁箱
14 弁座
15 バルブディスク
17 弁シート
23 ヨーク
26 グランドブッシュ
30 マーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象となるバルブの所定箇所に放射型温度計からの放射が照射されるマークを印し、
正常時に前記放射型温度計からの放射を前記マークに照射し、前記バルブの所定箇所の正常時における温度を記録し、
検査時に前記放射型温度計からの放射を前記マークに照射し、測定された前記バルブの所定箇所の温度を記録されている所定箇所の正常時の温度と比較し、温度変化により蒸気またはガスの漏洩を早期に発見することを特徴とするバルブの弁シートリーク早期発見方法。
【請求項2】
前記放射型温度計は赤外線温度計であって、前記赤外線温度計から放射される赤外線を検出対象となる前記バルブの所定箇所のマークに照射することを特徴とする請求項1記載のバルブの弁シートリーク早期発見方法。
【請求項3】
前記マークはバルブのヨークまたはグランドブッシュに印すことを特徴とする請求項1記載のバルブの弁シートリーク早期発見方法。
【請求項4】
前記マークは白色又は黒色であることを特徴とする請求項1記載のバルブの弁シートリーク早期発見方法。
【請求項5】
前記バルブはドレンおよびブロー配管の上流系統に設けられ通常時に開放する開バルブと、該開バルブの下流に設けられ通常時に閉塞する閉バルブとなり、
正常時に放射型温度計からの放射を閉バルブのマークに照射し、前記閉バルブの所定箇所の温度を記録し、
検査時に前記放射温度計からの放射を閉バルブのマークに照射し、測定された閉バルブの所定箇所の温度を記録されている所定箇所の正常時の温度と比較し、温度変化により前記閉バルブの蒸気またはガスの漏洩を検査し、前記閉バルブの増し締めしても蒸気またはガスの漏洩が止まらない場合、前記開バルブを閉塞してドレン配管の蒸気またはガスの漏洩の変化を検査し、前記閉バルブからの蒸気またはガスの漏洩でないか否かを確認することを特徴とする請求項1記載のバルブの弁シートリーク早期発見方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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