説明

バルブ構造

【課題】 背面バルブにおける吸込み性を悪くせずして背面バルブにおける高圧による撓みの発生阻止を可能にする。
【解決手段】 一方室と他方室とを隔成する環状に形成のバルブシート部材(11)と、このバルブシート部材(11)に形成されて一方室と他方室とを連通する通路(11a)と、バルブシート部材(11)に積層されて通路(11a)の下流側端を開放可能に閉塞する背面バルブ5とを有してなるバルブ構造において、背面バルブ5は、内周端固定に設けられて通路(11a)側からの圧力作用で撓み作動する環状リーフバルブ51と、この環状リーフバルブ51とバルブシート部材(11)との間にこのバルブシート部材(11)に対して昇降可能に配設されて通路(11a)の下流側端を開放可能に閉塞する環状に形成の補強体52とを有し、補強体は、この補強体52に積層される環状リーフバルブ51越しの圧力作用で変形しない強度を有してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、バルブ構造に関し、特に、車両に搭載される緩衝器におけるバルブ構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載される緩衝器におけるバルブ構造としては、従来から種々の提案があるが、その中で、たとえば、特許文献1には、環状に形成のバルブディスクからなるバルブシート部材に環状リーフバルブからなる背面バルブが積層されるバルブ構造が開示されている。
【0003】
すなわち、このバルブ構造にあって、バルブシート部材は、上流側と下流側とを隔成すると共に、この隔成された上流側と下流側とを連通する通路たる外側通路およびこの外側通路に並列される内側通路を有してなる。
【0004】
そして、背面バルブは、バルブシート部材の一端たる上端に積層され、内周側端部が固定部とされて、バルブシート部材の軸芯部周りとなる内周側ボス部に固定状態に定着される。
【0005】
また、この背面バルブにあっては、外周側部が撓み部とされて、バルブシート部材の一端に形成の外周側シート部に着座し、この外周側シート部の内側に開口する外側通路の下流側端を開放可能に閉塞する。
【0006】
さらに、この背面バルブにあっては、内周端寄りとなる内周側部に内側通路の上流側端に対向する連通孔を有する。そして、このバルブ構造にあっては、バルブシート部材における内側通路の下流側端を圧側減衰バルブで開放可能に閉塞してなる。
【0007】
それゆえ、この特許文献1に開示のバルブ構造にあって、背面バルブは、たとえば、この背面バルブの下方側たる上流側が高圧側となり、この背面バルブの上方側たる下流側が低圧側となるときに、外側通路を介しての下方側からの作動油で代表される作動流体によって外周側部が持ち上げられるように撓んで、外周側シート部から離れる。
【0008】
したがって、バルブシート部材に形成の外側通路が開放され、下方側からの作動流体がこの開放された外側通路を介して上流側に流入し得ることになり、背面バルブが吸込み弁として機能する。
【0009】
そして、下方側が低圧側になり上方側が高圧側になる反転時には、背面バルブがバネ力で旧状に復し、外側通路の下流側端を閉塞する。これにより、高圧側からの作動流体が外側通路を介して低圧側には流出し得なくなり、背面バルブが逆止弁として機能する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−275069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記した特許文献1に開示のバルブ構造にあっては、背面バルブが吸込み弁として機能すると共に、逆止弁として機能する点で、基本的に問題がある訳ではないが、利用の実際を勘案すると些かの不具合があると指摘される可能性がある。
【0012】
すなわち、背面バルブが外側通路の下流側端を閉塞して逆止弁として機能するときには、この背面バルブに言わば上方側からの高圧が作用する。
【0013】
そして、背面バルブに高圧が作用すると、背面バルブにおける外側通路の下流側端に対向する部位、すなわち、外周側部が言わば凹むように撓むことが懸念される。
【0014】
そして、背面バルブにおける外周側部が凹むように撓むことが繰り返される場合には、背面バルブにおける耐久性が低下される。また、バルブ構造が圧側減衰バルブを有する場合には、背面バルブにあって、外周側部が凹むように撓みきるまで、圧側減衰バルブの作動を期待できない、つまり、圧側減衰バルブにおける応答性が低下される。
【0015】
そこで、背面バルブの外周側部が高圧作用によって凹むように撓むことを阻止するためには、背面バルブにおける板厚を厚くするのが良いが、この場合には、背面バルブの外周側部における撓み性が低下される。
【0016】
そして、背面バルブにおける撓み性が低下される場合には、背面バルブにおける吸込み性が悪くなり、このバルブ構造を具現化する緩衝器が搭載される車両にあっては、乗り心地が悪化される不具合に繋がる。
【0017】
この発明は、上記した事情を鑑みて創案されたものであって、背面バルブにおける吸込み性を悪くせずして背面バルブにおける高圧による凹むようになる撓みの発生阻止を可能にするバルブ構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記した目的を達成するために、この発明によるバルブ構造の構成を、一方室と他方室とを隔成する環状に形成のバルブシート部材と、このバルブシート部材に形成されて一方室と他方室とを連通する通路と、上記バルブシート部材に積層されて上記通路の下流側端を開放可能に閉塞する背面バルブとを有してなるバルブ構造において、上記背面バルブは、内周端固定に設けられて上記通路側からの圧力作用で撓み作動する環状リーフバルブと、この環状リーフバルブと上記バルブシート部材との間にこのバルブシート部材に対して昇降可能に配設されて上記通路の下流側端を開放可能に閉塞する環状に形成の補強体とを有し、上記補強体は、この補強体に積層される上記環状リーフバルブ越しの圧力作用で変形しない強度を有してなるとする。
【0019】
それゆえ、この発明によるバルブ構造にあっては、バルブシート部材の、たとえば、下方側たる他方室が高圧側になるのに対して、上方側たる一方室が低圧側になるとき、作動油で代表される作動流体が通路を介して補強体を持ち上げるようにする。
【0020】
このとき、環状リーフバルブが外周側部を撓ませて、補強体の上昇を許容する。したがって、補強体が閉塞していた通路が開放され、下方側からの作動流体が開放された通路を介して上方側に流入し、背面バルブが吸込み弁として機能する。
【0021】
それに対して、上方側たる一方室が高圧側になるのに対して、下方側たる他方室が低圧側になるとき、環状リーフバルブが旧状に復し、バネ作用で補強体を下降させて、バルブシート部材に着座させる。
【0022】
これによって、通路が閉塞され、上方側からの作動流体が通路を介して下方側に流出し得なくなり、逆止弁機能が発揮される。
【0023】
このとき、補強体が環状リーフバルブとバルブシート部材との間に位置し、しかも、積層される環状リーフバルブ越しの圧力作用で変形しない強度を有してなるから、自身はもちろんのこと、環状リーフバルブが高圧作用で凹むように撓むことを阻止する。
【発明の効果】
【0024】
その結果、この発明のバルブ構造によれば、背面バルブにおける吸込み性を悪くせずして背面バルブにおける高圧による凹むようになる撓みの発生阻止を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この発明の一実施形態による緩衝器を示し、(A)は、緩衝器におけるボトム部分を示す部分半截縦断面図、(B)は、ベースバルブにおける背面バルブを構成する環状リーフバルブを示す半截平面図、(C)は、ベースバルブにおける背面バルブを構成する補強体を示す半截平面図である。
【図2】図1中の背面バルブ部分を拡大して示す部分縦断面図である。
【図3】他の実施形態による背面バルブ部分を図2と同様に拡大して示す部分縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図示した実施形態に基づいて、この発明を説明するが、図示するところでは、この発明によるバルブ構造が筒型に形成される緩衝器におけるボトム部分に配設されるベースバルブに具現化されてなる。
【0027】
緩衝器は、作動油で代表される作動流体によって減衰部、つまり、図示するボトム部分に配設されるベースバルブ10(図1(A)参照)と、図示しないピストン体に配設の減衰部とで所定の減衰作用をなす複筒型の流体圧緩衝器とされる。
【0028】
そのため、この緩衝器は、図1(A)に示すように、作動流体を収容するシリンダ体1と、このシリンダ体1の外にシリンダ体1と間隔を有して配設される外筒2と、外筒2の下端開口を閉塞するボトムキャップ3と、このボトムキャップ3に着座するベースバルブ10とを有してなる。
【0029】
シリンダ体1と外筒2との間はリザーバRとされ、このリザーバRは、ベースバルブ10の図中での下方、つまり、ベースバルブ10で隔成される他方側たる下部容室R1に連通する一方で、図示しないが、上方側部に作動流体の液面で画成される気室を有し、この気室は、液面の昇降に伴う膨縮の際にエアバネ力を発揮する。
【0030】
シリンダ体1内には、図示しないが、この緩衝器における上端側部材とされて車両の車体側に連結されるロッド体の下端側部たる先端側部が挿通され、このロッド体の先端部には、同じく図示しないが、シリンダ体1内に摺動可能に収装されるピストン体が連結される。
【0031】
そして、このピストン体は、同じく図示しないが、シリンダ体1内にロッド体を挿通させるロッド側室と、ロッド体を挿通させないピストン側室R2(図1(A)参照)とを画成する。
【0032】
そしてまた、このピストン体は、同じく図示しないが、上記のロッド側室とピストン側室R2との連通を許容する減衰部を有し、この減衰部は、作動流体が通過するときに、すなわち、ピストン体がシリンダ体1内を摺動するときに所定の減衰作用をなす。
【0033】
ちなみに、上記のピストン体に設けられる減衰部については、図示しないが、ピストン体から分離されて、たとえば、緩衝器の外に設けられてシリンダ体1内のロッド側室とピストン側室R2とを連通する外部通路中に配設されるとしても良い。
【0034】
減衰部が緩衝器の外に設けられる外部通路中に配設される場合には、この減衰部におけるチューニングが、また、手動操作による減衰作用の制御が可能になる点で有利となる。
【0035】
シリンダ体1と外筒2の上端開口は、図示しないが、軸芯部に上記のロッド体を貫通させるロッドガイドおよびヘッドキャップで封止され、このロッドガイドあるいはヘッドキャップは、多くの場合に、シリンダ体1内からの作動流体がロッド体の外周に付着してシリンダ体1の外に漏出することを阻止するオイルシールと、シリンダ体1の外からのダストがロッド体の外周に付着してシリンダ体1内に侵入するのを阻止するダストシールとを有する。
【0036】
そして、上記のロッドガイドは、同じく図示しないが、多くの場合に、上記のオイルシールで掻き落された作動流体を上記のリザーバRに戻すための戻し通路を有してなる。
【0037】
また、ボトムキャップ3の下端には、この緩衝器の車両における車軸側への連結を可能にする取付部材たるアイ31が連結される。ちなみに、図示しないが、ロッド体の上端部は、取付部材たるアイを有する他、車両における車体側やマウントへの連結を可能にする螺条を有する。
【0038】
ベースバルブ10は、シリンダ体1の下端開口を閉塞するように配設され、このとき、上半側をシリンダ体1の下端部内に臨在させ、下半側の外周部をシリンダ体1の下端とボトムキャップ3との間に挟持させてなる。
【0039】
このことから、ベースバルブ10は、いわゆる前側が図中で上方側となる一方側、すなわち、シリンダ体1内のピストン側室R2に対向し、いわゆる後側が図中で下方側となる他方側、すなわち、上記したリザーバRに連通する下部容室R1に対向する。
【0040】
少し説明すると、このベースバルブ10は、環状に形成のバルブシート部材たるバルブディスク11を有し、このバルブディスク11は、一方室たるシリンダ体1内のピストン側室R1と他方室たる下部容室R1とを隔成するように設けられる。
【0041】
その一方で、このバルブディスク11は、シリンダ体1内のピストン側室R2と下部容室R1との連通を許容する複数の通路、すなわち、外側通路11aと複数の内側通路11bとを並列に有し、内周側端部、すなわち、後述する内周側ボス部11gから内周側部、すなわち、後述するバルブシート部11eにかけての下端に圧側減衰バルブ4を積層させ、ピストン側室R2に対向する上端面に背面バルブ5を積層させる。
【0042】
内側通路11bは、図中で下端となる下流側端が上記の圧側減衰バルブ4で開放可能に閉塞され、外側通路11aは、図中で上端となる下流側端が上記の背面バルブ5で開放可能に閉塞される。
【0043】
外側通路11aおよび内側通路11bの上流側端および下流側端は、それぞれ環状溝(符示せず)で繋がっており、この環状溝を形成させる環状の隆起部(符示せず)がバルブシート部とされる。
【0044】
すなわち、バルブディスク11の図中での上端にあって、環状の隆起部が外側バルブシート部11cおよび内側バルブシート部11dとされ、バルブディスク11の図中での下端にあって、環状の隆起部がバルブシート部11eとされる。
【0045】
なお、バルブディスク11の軸芯部側部の上下端部は、内周側ボス部11f,11gとされ、この内周側ボス部11f,11gも上記の環状溝を形成する。
【0046】
バルブディスク11は、外周側部の下端側部をボトムキャップ3の内底に下端を着座させる脚部11hとし、この脚部11hは、切欠き11iを有し、この切欠き11iは、リザーバRと下部容室R1とを連通させる。
【0047】
圧側減衰バルブ4は、複数枚の環状リーフバルブを積層してなり、内周側端部(符示せず)がバルブディスク11の軸芯部を上下方向に貫通するセンターガイド12の図中での下端部たるバルブストッパ部12aに担持される。
【0048】
その一方で、この圧側減衰バルブ4の内周側端部は、バルブディスク11の下端側の内周側ボス部11gに係止され、この状態で、センターガイド12の図中での上端部たる螺条部12bに螺合される締付ナット13のワッシャ14を介しての締め付けで所定位置に内周端固定で外周端自由の態勢に定着される。
【0049】
なお、この圧側減衰バルブ4の外周側部は、外周側撓み部(符示せず)とされ、いわゆる静止時にバルブシート部11eに着座する。
【0050】
そして、このバルブシート部11eに外周側撓み部を着座させるいわゆる最内側のリーフバルブ(符示せず)は、外周側撓み部に図中で上方となる内側通路11aに対向するオリフィスたる切欠き4aを有する。なお、この切欠き4aについては、これがバルブシート部11eに設けられる打刻溝からなるとしても良い。
【0051】
それゆえ、この圧側減衰バルブ4にあっては、このベースバルブ10の上方側、つまり、一方側たるシリンダ体1内のピストン側室R2の圧力が高まり、このピストン側室R2において作動流体が過剰となると、外周側部が撓んでバルブシート部11eから離座し、内側通路11bを開放し、ピストン側室R2からの余分な作動流体をリザーバRへ排出させ、作動流体が圧側減衰バルブ4を通過するときに所定の減衰作用をなす。
【0052】
なお、圧側減衰バルブ4は、図示するところにおいて、一部外径の異なる複数枚の環状リーフバルブを積層してなるが、この積層される環状リーフバルブの枚数については、具現化される減衰特性(ピストン速度に対する減衰力の関係)によって任意とされて良く、また、緩衝器に発生させる減衰特性によって複数枚とされても一枚のみでも差し支えなく、そして、緩衝器に発生させ減衰特性によって各環状リーフバルブの外径を同じにするように設定されても良い。
【0053】
背面バルブ5は、図示するところにあって、環状リーフバルブ51と環状に形成の補強体52とを有し、補強体52が積層される環状リーフバルブ51越しの圧力作用で変形しない強度を有してなる。
【0054】
順次説明すると、この背面バルブ5にあって、環状リーフバルブ51は、内周端固定に設けられてバルブディスク11における外側通路11a側からの圧力作用で撓み作動するように設定される。
【0055】
すなわち、この背面バルブ5にあって、環状リーフバルブ51は、下方の補強体52に積層される状態で内周側端部(符示せず)が固定部とされ、この固定部がバルブディスク11における内周側ボス部11fとこの内周側ボス部11fに上方から対向するセンターガイド12の螺条部12bに螺装の締付ナット13との間にワッシャ14を介して固定的に挟持される。
【0056】
そして、この環状リーフバルブ51は、内周側部(符示せず)に補強体52における開口52bに対向する連通孔51aを有し、また、補強体52の外周側部(符示せず)に積層される外周側端部(符示せず)を有する。
【0057】
そしてまた、この環状リーフバルブ51にあっては、外周側端部が撓み部とされ、この外周側端部が下方の補強体52を介しての圧力作用で撓むとき、この補強体52の上昇を許容する。
【0058】
なお、上記の連通孔51aについては、図示するところでは、図1(B)に示すように、周方向に間隔を有して位置決めされる複数の丸孔からなる。ちなみに、この連通孔51aに対向する後述の補強体52に形成の開口52bは、図1(C)に示すように、径方向に位置決めされる複数の連結部52cで隔成される円弧状に形成される。
【0059】
また、上記の連通孔51aは、丸孔に限られず、矩形状の孔であっても良く、多角形状の孔であっても良い。
【0060】
そこで、図示しないが、補強体52に形成される開口52bを周方向に間隔を有して位置決めされる複数の丸孔からなるとする一方で、この環状リーフバルブ51に形成される連通孔51aを複数の連結部で隔成される円弧状に形成する場合には、この環状リーフバルブ51における撓み性を向上させることが可能になる点で有利となる。
【0061】
一方、補強体52は、環状リーフバルブ51とバルブディスク11との間にあって、内周端が固定されずしてバルブディスク11に離着座可能に積層、すなわち、バルブディスク11に対して昇降可能に配設され、バルブディスク11への着座時に外側通路11aの図中で上端となる下流側端を開放可能に閉塞する。
【0062】
そして、この補強体52は、環状リーフバルブ51が積層されている状態のときに、この環状リーフバルブ51越しにシリンダ体1内のピストン側室R2から圧力作用があるとしても、この圧力作用で、たとえば、凹むように撓み変形しない強度を有してなる。
【0063】
この強度を有するためには、環状リーフバルブ51における板厚が、たとえば、0.254mmとされるとき、この補強体52における板厚を、たとえば、0.305mmにするとしても良い。
【0064】
また、補強体52が上記の強度を有するのについて、上記した板厚によるとするのではなく、環状リーフバルブ51と構成素材を異ならせても良い。
【0065】
つまり、補強体52は、環状リーフバルブ51よりも撓み剛性の大きい素材にて形成されるとしても良い。
【0066】
この場合には、補強体52の板厚を環状リーフバルブ51の板厚よりも厚く形成する必要がなくなる。
【0067】
そのため、補強体52の板厚を環状リーフバルブ51の板厚と同一の板厚にしたり、補強体52の板厚を環状リーフバルブ51の板厚よりも薄く形成したりすることができる。
【0068】
すなわち、補強体52および環状リーフバルブ51の板厚の設定における自由度をより大きくすることができる。
【0069】
さらに、補強体52は、環状リーフバルブ51よりも撓み剛性の小さい素材で形成されると共に、補強体52の板厚は、環状リーフバルブ51の板厚よりも厚く形成されても良い。
【0070】
そして、この補強体52は、外周側端部をバルブディスク11における外側バルブシート部11cに着座させ、この外周側端部には外側通路11aの下流側端に対向するオリフィスたる切欠き52aを有する。
【0071】
また、この補強体52にあっては、内周側部をバルブディスク11における内周側バルブシート部11dに着座させると共に、この内周側部にバルブディスク11における内側通路11bの図中で上端となる上流側端に対向する開口52bを有する。そして、この開口52bは、前記したように、環状リーフバルブ51における連通孔51aに対向する。
【0072】
ちなみに、この補強体52における外周側端部に形成される上記の切欠き52aにあっては、図示するところでは、補強体52における板厚を貫通するように切欠き形成される。
【0073】
しかし、この切欠き52aがオリフィスとして利用されることを鑑みると、上記したところに代えて、図示しないが、補強体52における板厚を削るようにして形成される切欠き溝からなるとしても良い。
【0074】
そして、同じく図示しないが、上記のオリフィスが補強体52に形成されるのに代えて、バルブディスク11における外側バルブシート部11cに形成される打刻溝からなるとしても良い。
【0075】
ところで、補強体52における内周側端部は、この補強体52が内周側固定とされないので、バルブディスク11の軸芯部側部となる内周側ボス部11fに着座しない。
【0076】
そして、補強体52における内周端は、バルブディスク11における内周側ボス部11fの外周に近隣して、内周側ボス部11fに対して昇降可能とされる。
【0077】
このことからすると、図2に示すように、ワッシャ14の外径D1は、補強体52の内径D2より同一以下に、好ましくは、小さく設定されるのが良い。
【0078】
つまり、補強体52における内周端がワッシャ14の外周端より小径になる場合には、ワッシャ14を介して締付ナット13の締付力が補強体52の内周側端部に作用する可能性がある。
【0079】
そして、締付ナット13の締付力が補強体52の内周側端部に作用する場合には、この補強体52におけるリフトアップ作動が阻害される。
【0080】
このことからすると、締付ナット13の締付力を補強体52の内周側端部に絶対的に作用させないためには、ワッシャ14の外径D1が補強体52の内径D2より小さくなるのが良い。
【0081】
以上のように形成された背面バルブ5を有するバルブ構造にあっては、以下のように作動する。
【0082】
先ず、バルブディスク11の、たとえば、上流側たる上方側が下流側たる下方側に比較して高圧側になるとき、背面バルブ5は、バルブディスク11に着座し、バルブディスク11における外側通路11aの下流側端を閉塞する。このとき、背面バルブ5にあって、環状リーフバルブ51にシリンダ体1内のピストン側室R2からの高圧が作用する。
【0083】
環状リーフバルブ51は、バルブディスク11に着座する補強体52で下方から支えられ、補強体52は、積層される環状リーフバルブ51越しの圧力作用で変形しない強度を有してなるから、補強体52にあって、外側通路11aの下流側端を閉塞する外周側部が凹むように撓むことがなく、したがって、この補強体52に積層される環状リーフバルブ51にあって、相応する部位が凹むように撓むことがない。
【0084】
このことから、背面バルブ5にあっては、逆止弁として機能するのはもちろんのこと、上流側たるピストン側室R2から繰り返し高圧作用を受けることがあっても、いたずらに変形することがなく、変形に起因する耐久性の低下を危惧しなくて済む。
【0085】
上記に対して、バルブシート部材11の下方側が上方側に比較して高圧側になるとき、下部容室R1側からの作動流体がバルブディスク11における外側通路11aを介して補強体52を持ち上げるようにする。
【0086】
このとき、環状リーフバルブ51が外周側端部を撓ませて、補強体52の上昇を許容するから、補強体52が閉塞していた外側通路11aが開放され、下方側からの作動流体が上方側に流入する。
【0087】
ちなみに、いわゆるピストン速度が、たとえば、0.6m/secに至らない微低速領域にあるときには、高圧側からの作動流体が補強体52における切欠き52aを介して低圧側に流入する。
【0088】
そして、ピストン速度が微低速領域を超えて0.6m/sec以上になると、高圧側からの作動流体が補強体52を持ち上げるようになり、このとき、環状リーフバルブ51における外周側撓端部が撓んで補強体52におけるリフト作動を許容する。
【0089】
このことから、この背面バルブ5にあっては、下方側からの作動流体の上方側への言わば円滑な流入を許容することになり、吸込み弁として機能する。
【0090】
以上のように、この発明のバルブ構造にあっては、背面バルブ5を構成する補強体52が環状リーフバルブ51とバルブシート部材11との間に配設されると共に、積層される環状リーフバルブ51越しの圧力作用で変形しない強度を有してなる。
【0091】
その結果、背面バルブ5にあっては、ピストン側室R2からの高圧が作用しても、この高圧作用によっていたずらに変形しなくなる。
【0092】
このことから、この発明のバルブ構造にあっては、背面バルブ5における耐久性の保障が可能になるが、その一方で、図示するように、このバルブ構造が圧側減衰バルブ4を有してなる場合には、この圧側減衰バルブ4における応答性の低下を防止できる。
【0093】
つまり、前述したが、シリンダ体1内のピストン側室R2からの高圧作用で、背面バルブの変形が危惧される場合には、この背面バルブにおける変形が停止するまでの間、圧側減衰バルブ4が作動し得ないことになる。
【0094】
しかし、この発明のバルブ構造のように、背面バルブ5にあって、シリンダ体1内のピストン側室R2からの高圧作用で変形することが阻止される場合には、その分、圧側減衰バルブ4における応答性が低下されなくなり、圧側減衰バルブ4に所定の作動を期待できることになる。
【0095】
のみならず、この発明のバルブ構造にあっては、背面バルブ5におけるいわゆるチューニング性が良くなる。
【0096】
つまり、前記した特許文献1に開示の背面バルブにあっては、吸込み弁としての作動保障と、逆止弁としての機能保障とが一枚の環状リーフバルブにおける板厚のみによって左右されることになり、両者の最適な調整が容易でない。
【0097】
それに対して、この発明のバルブ構造にあっては、背面バルブ5が環状リーフバルブ51と補強体52とからなるから、逆止弁としての機能保障はともかくとして、吸込み弁としての作動保障のために、環状リーフバルブ51における撓み性を良くすように任意に変更することが可能になる利点がある。
【0098】
図3は、他の実施形態を示すが、この実施形態が意図するところは、背面バルブ5を構成する補強体52におけるリフトアップ性を向上させることである。
【0099】
すなわち、図3に示すところにあって、ワッシャ14は、外周側端部(符示せず)の下端面を上方に上向く湾曲面あるいは傾斜面にする。
【0100】
これによって、環状リーフバルブ52における外周側端部の撓み時にその撓み量を大きくでき、その分、補強体52におけるリフトアップ量を大きくできる。
【0101】
そして、この図3に示すところにあっても、前記したように、ワッシャ14の外径D1が補強体52の内径D2と同一以下になるのが良い。
【0102】
一方、環状リーフバルブ52における外周側端部の撓み量を大きくする観点からすれば、図中に一点鎖線図で示すように、ワッシャ14の外径を、たとえば、締付ナット13の外径と同じにした上で、ワッシャ14の外周側端部の下端面を上方に上向く湾曲面あるいは傾斜面にするとしても良い。
【0103】
前記したところでは、この発明によるバルブ構造が緩衝器におけるボトム部分に配設のベースバルブ10に具現化されるとしたが、この発明が意図するところからすると、この発明によるバルブ構造が緩衝器におけるピストン体に配設の、あるいは、緩衝器の外の外部通路に配設の減衰部に具現化されるとしても良い。
【0104】
そして、前記したところでは、この発明によるバルブ構造が背面バルブ5の他に圧側減衰バルブ4を有してなるが、背面バルブ5における凹むようになる撓みの発生を阻止するとの観点からすれば、バルブ構造が背面バルブ5のみを有して、圧側減衰バルブ4、すなわち、減衰バルブを有しない構造に具現化されても良い。
【0105】
つまり、ユニフロー型に形成される緩衝器にあっては、ボトム部分に配設のベースバルブにあって、また、シリンダ体内のピストン体にあって、逆止弁として機能する背面バルブのみを有すれば良いとされるので、この場合の具現化に向く構造とされても良い。
【0106】
さらに、前記したところにあっては、補強体52が環状リーフバルブではない、つまり、環状リーフバルブとは別物で形成されるとして説明したが、要は、補強体52が積層される環状リーフバルブ51越しの圧力作用で変形しない強度を有してなるとすれば良いから、この観点からすれば、補強体52が環状リーフバルブ51より板厚を大きくした環状リーフバルブからなるとしても良い。
【符号の説明】
【0107】
1 シリンダ体
2 外筒
3 ボトムキャップ
4 圧側減衰バルブ
4a,11i,52a 切欠き
5 背面バルブ
10 ベースバルブ
11 バルブディスク
11a 外側通路
11b 内側通路
11c 外側バルブシート部
11d 内側バルブシート部
11e バルブシート部
11f,11g 内周側ボス部
11h 脚部
12 センターガイド
12a バルブストッパ部
12b 螺条部
13 締付ナット
14 ワッシャ
31 アイ
51 環状リーフバルブ
51a 連通孔
52 補強体
52b 開口
52c 連結部
D1 ワッシャの外径
D2 補強体の内径
R リザーバ
R1 下部容室
R2 ピストン側室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方室と他方室とを隔成する環状に形成のバルブシート部材と、このバルブシート部材に形成されて一方室と他方室とを連通する通路と、上記バルブシート部材に積層されて上記通路の下流側端を開放可能に閉塞する背面バルブとを有してなるバルブ構造において、
上記背面バルブは、内周端固定に設けられて上記通路側からの圧力作用で撓み作動する環状リーフバルブと、
この環状リーフバルブと上記バルブシート部材との間にこのバルブシート部材に対して昇降可能に配設されて上記通路の下流側端を開放可能に閉塞する環状に形成の補強体とを有し、
上記補強体は、この補強体に積層される上記環状リーフバルブ越しの圧力作用で変形しない強度を有してなることを特徴とするバルブ構造。
【請求項2】
上記補強体は、上記環状リーフバルブと同一の素材で形成され、
上記補強体の板厚は、上記環状リーフバルブの板厚よりも厚く形成されてなる請求項1に記載のバルブ構造。
【請求項3】
上記補強体は、上記環状リーフバルブよりも撓み剛性の大きい素材で形成され、
上記補強体の板厚は、上記環状リーフバルブの板厚よりも薄く形成されてなる請求項1に記載のバルブ構造。
【請求項4】
上記バルブシート部材は、上記通路に並列する内側通路を有すると共にこの内側通路の下流側端を開放可能に閉塞する減衰バルブを有し、
上記補強体は、上記内側通路の上流側端に対向する開口を有し、
上記環状リーフバルブは、上記補強体における上記開口に対向する連通孔を有してなる請求項1,請求項2または請求項3に記載のバルブ構造。
【請求項5】
上記補強体は、外周側端部に上記通路の下流側端に対向する切欠きを有してなる請求項1,請求項2,請求項3または請求項4に記載のバルブ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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