説明

バルーンカテーテル

【課題】シャフトの後端側にハイポチューブを備えたバルーンカテーテルにおいて、曲がり癖がつきにくくすることを目的とする。
【解決手段】バルーンカテーテル1は、ハイポチューブ3の先端部31が、傾斜して開口する傾斜開口部33と半円筒状の平面開口部34とを有する。そして、コアワイヤ4は、先端側がシャフト2の先端側に内挿される先端部41と、先端部41の後端側に設けられるとともに、ハイポチューブ3の先端部31に内挿されて固定される後端部42とを有し、コアワイヤ4の後端部42は、コアワイヤ4の先端部41と後端部42との境界43の断面積よりも小さい断面積を有し、コアワイヤ4の後端45は、少なくとも傾斜開口部33の後端の位置まで延びている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管などの生体内管腔内に挿入されて、血管閉塞部を拡張したり、血流を阻止したりするために用いられるバルーンカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
図4に示すように、従来のバルーンカテーテル100として、先端にバルーン(図示せず)を設けた可撓性のシャフト101の後端側に、高剛性のハイポチューブ102を接続したものが知られている。
そして、ハイポチューブ102とシャフト101との間の急激な剛性変化を緩和するために、ハイポチューブ102の先端部103を傾斜してカットし、先端側に向けて剛性が低くなるようにし、さらに、先端側がシャフト101に内挿されるとともに後端側がハイポチューブ102の先端部103に固定されるコアワイヤ104を設ける従来技術がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、この従来技術では、バルーンを拡張させる流体の流路断面積を確保するため、コアワイヤ104は小径のものに制限される。このため、バルーンカテーテル100において、コアワイヤ104は内挿されているがハイポチューブ102が内挿されていない部分の剛性は向上せず、ハイポチューブ102が内挿された部分とハイポチューブ102が内挿されていない部分との境界での剛性変化は、やはり急激なものとなってる。
そのため、屈曲血管や湾曲血管にバルーンカテーテル100を導入すると、ハイポチューブ102が内挿された部分とハイポチューブ102が内挿されていない部分との境界付近に曲がり癖がつきやすく、折れが生じるという問題がある。
【0004】
また、この従来技術では、コアワイヤ104の設置される位置が、ハイポチューブ102内の後端側にいけばいくほど、流体の流出入がしにくくなり、バルーン拡張収縮が遅延するため、軸方向において、傾斜してカットされた先端部103の途中の位置にコアワイヤ104の後端106が配されるように設けなければならない。
【0005】
この場合、傾斜してカットされたハイポチューブ102の先端部103には、内部にコアワイヤ104が設けられていない部分108が生じる。この部分108と、内部にコアワイヤ104が設けられた部分109とでは、剛性が大きく異なるので、さらに、曲がり癖がつきやすくなる原因となっている。
【特許文献1】特開2003−164528公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、シャフトの後端側にハイポチューブを備えたバルーンカテーテルにおいて、曲がり癖がつきにくくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
〔請求項1の手段〕
請求項1に記載のバルーンカテーテルは、先端にバルーンを設けた可撓性のシャフトと、先端部がシャフトの後端側に内挿されて、内腔がバルーンに流出入する流体の流路をなすハイポチューブと、先端側がシャフトの先端側に内挿される先端部、及び、該先端部の後端側に設けられるとともにハイポチューブの先端部に内挿されて固定される後端部を有するコアワイヤとを備える。また、ハイポチューブの先端部は、傾斜して開口する傾斜開口部を有する。そして、コアワイヤの後端部は、コアワイヤの先端部の後端の断面積よりも小さい断面積を有し、コアワイヤの後端は、少なくとも傾斜開口部の後端の位置まで延びている。
【0008】
これによれば、ハイポチューブの先端部に固定されるコアワイヤの後端部の断面積を、コアワイヤの先端部の後端の断面積よりも小さくすることで、ハイポチューブの先端部から流出入する流体の流路面積を確保することができる。このため、ハイポチューブの先端部からの流体の流出入をスムーズに可能としつつ、可撓性のシャフト内に径の大きいコアワイヤを設けることができる。この結果、コアワイヤは内挿されているがハイポチューブが内挿されていない部分の剛性が向上し、ハイポチューブが内挿された部分とハイポチューブが内挿されていない部分との境界での剛性変化が緩和され、曲がり癖や折れの問題が解消される。
【0009】
また、コアワイヤの後端が、少なくとも傾斜開口部の後端の位置まで延びているため、傾斜開口部を有するハイポチューブの先端部には、内部にコアワイヤが設けられていない部分は生じず、曲がり癖がつきにくい。
【0010】
〔請求項2の手段〕
請求項2に記載のバルーンカテーテルによれば、コアワイヤの後端部は、ハイポチューブが開口している側を傾斜させて、後端側へ向かうにつれて径方向長さが小さくなるように設けられている。
これにより、ハイポチューブの傾斜開口部側に流路面積が確保され、流体の流出入をスムーズに行うことができる。
【0011】
〔請求項3の手段〕
請求項3に記載のバルーンカテーテルによれば、コアワイヤの後端部は異型ワイヤである。
【0012】
〔請求項4の手段〕
請求項4に記載のバルーンカテーテルによれば、ハイポチューブの先端部は、少なくとも径方向の中間の位置まで傾斜した傾斜開口部と、傾斜開口部の先端側に軸方向に沿ってカットされた平面開口部とを有する。
【0013】
〔請求項5の手段〕
請求項5に記載のバルーンカテーテルは、傾斜開口部及び平面開口部の外周側を覆う中空コイル体を備える。
これにより、傾斜開口部及び平面開口部が設けられることにより強度が低下した分を補強することができる。また、バルーンカテーテルが屈曲血管や湾曲血管に導入されることにより折れ曲がった場合に、平面開口部が径方向に拡張しようとするのを中空コイル体で抑えることができ、曲がり癖が生じにくくなり、曲げの方向性を緩和することができる。
【0014】
〔請求項6の手段〕
請求項6に記載のバルーンカテーテルによれば、中空コイル体は、素線の断面形状が平板状である。
これにより、中空コイル体の壁厚を小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
最良の形態1のバルーンカテーテルは、先端にバルーンを設けた可撓性のシャフトと、先端部がシャフトの後端側に内挿されて、内腔がバルーンに流出入する流体の流路をなすハイポチューブと、先端側がシャフトの先端側に内挿される先端部、及び、該先端部の後端側に設けられるとともにハイポチューブの先端部に内挿されて固定される後端部を有するコアワイヤとを備える。また、ハイポチューブの先端部は、傾斜して開口する傾斜開口部を有する。そして、コアワイヤの後端部は、コアワイヤの先端部の後端の断面積よりも小さい断面積を有し、コアワイヤの後端は、少なくとも傾斜開口部の後端の位置まで延びている。
【0016】
また、コアワイヤの後端部は、ハイポチューブが開口している側を傾斜させて、後端側へ向かうにつれて径方向長さが小さくなるように設けられている。
また、ハイポチューブの先端部は、少なくとも径方向の中間の位置まで傾斜した傾斜開口部と、傾斜開口部の先端側に軸方向に沿ってカットされた平面開口部とを有する。
また、傾斜開口部及び平面開口部の外周側を覆う中空コイル体を備え、中空コイル体は、素線の断面形状が平板状である。
【0017】
最良の形態2のバルーンカテーテルは、コアワイヤの後端部が異型ワイヤである。
【実施例1】
【0018】
〔実施例1の構成〕
図1及び図2は実施例1を示したものである。
バルーンカテーテル1は、シャフト2と、シャフト2の後端側に内挿されたハイポチューブ3と、先端側がシャフト2に内挿され、後端側がハイポチューブ3に固定されるコアワイヤ4とを備える。
【0019】
シャフト2は、例えば、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリエステルエラストマーで形成される可撓性の円管体であり、先端にバルーン21が設けられている。なお、シャフト2内には、ガイドワイヤ(図示せず)が貫挿されるガイドワイヤ用ルーメン22と、バルーン21を拡張収縮するための流体の流路となる流体用ルーメン23とが設けられている。
【0020】
ハイポチューブ3は、例えば、ステンレス鋼、超弾性合金で形成される高剛性の円管体であり、先端部31がシャフト2の後端側に内挿されている。また、シャフト2の後端24はハイポチューブ3の外周面に液密に固着され、ハイポチューブ3の内腔32は、流体用ルーメン23と連通して、バルーン21に流出入する流体の流路をなしている。
【0021】
また、ハイポチューブ3の先端部31は、少なくとも径方向の中間の位置まで傾斜した傾斜開口部33と、傾斜開口部33の先端側に軸方向に沿ってカットされた平面開口部34とを有する。すなわち、先端部31を、傾斜して径方向の中間位置までカットし、さらに、先端側にむけて軸方向に平行にカットして形成されており、平面開口部34は、略半円筒形状を呈している。
【0022】
コアワイヤ4は、例えば、ステンレス鋼、超弾性合金で形成されるものであって、先端側に先端へ向かうにつれて縮径するテーパ状の先端部41と、先端部41の後端側に設けられるとともに、ハイポチューブ3の先端部31に固定される後端部42とを有する。
尚、本実施例では、先端部41の全体が先細りのテーパ状を呈しているが、軸方向に向かって外径が変化しない同径部分が一部に含まれていてもよい。
【0023】
そして、コアワイヤ4の後端部42は、ハイポチューブ3が開口している側を傾斜させて、後端側へ向かうにつれて径方向長さが小さくなるように設けられている。すなわち、コアワイヤ4の後端部42は、コアワイヤ4の先端部41と後端部42との境界43(コアワイヤ4の先端部41の後端)の断面積よりも小さい断面積となっており、後端側へ向かうほど断面積が小さくなっている。
【0024】
また、コアワイヤ4の後端45は、傾斜開口部33の後端の位置まで延びている。そして、コアワイヤ4の先端部41と後端部42との境界43は、流体の円滑な流通のため、傾斜開口部33の先端側に位置している必要があり、本実施例では、ハイポチューブ3の先端36付近(先端36よりもわずかに後端側)に位置している。
なお、コアワイヤ4の後端部42は、ハイポチューブ3の先端部31の内壁にロー付けあるいはレーザーによる溶接等により固着されている。
【0025】
また、バルーンカテーテル1は、傾斜開口部33及び平面開口部34の外周側を覆う中空コイル体5を備えている。
中空コイル体5は、断面形状が平板状の複数本の素線を螺旋巻きして形成されており、ハイポチューブ3の外周に、傾斜開口部33及び平面開口部34を覆うように配される。
【0026】
なお、本実施例では、例えば、後端側のシャフト2の内径が0.78mm、ハイポチューブ3の外径が0.62mm、内径が0.48mmであり、コアワイヤ4の先端部41と後端部42との境界43での外径が0.45mmである。また、シャフト2の長さは 346〜358mm(バルーン長による)であり、ハイポチューブ3の平面開口部34の長さが8mm、傾斜開口部33の長さが2mmであり、コアワイヤ4の先端部41の長さが100mm、コアワイヤ4の後端部42の長さが7mmである。
【0027】
〔実施例1の作用効果〕
実施例1のバルーンカテーテル1では、ハイポチューブ3の先端部31に固定されるコアワイヤ4の後端部42は、ハイポチューブ3が開口している側を傾斜させて、後端側へ向かうにつれて径方向長さが小さくなるように設けられている。
すなわち、コアワイヤ4の後端部42の断面積を、コアワイヤ4の先端部41と後端部42との境界43の断面積よりも小さくすることで、ハイポチューブ3の先端部31から流出入する流体の流路面積を確保することができる。
【0028】
このため、ハイポチューブ3の先端部31の傾斜開口部33及び平面開口部34からの流体の流出入をスムーズに可能としつつ、シャフト2内に径の大きいコアワイヤ4を設けることができる。
この結果、シャフト2の後端側では、比較的径大のコアワイヤ4が内挿されるために剛性が向上し、バルーンカテーテル1において、ハイポチューブ3が内挿された部分とハイポチューブ3が内挿されていない部分との境界での剛性変化が緩和され、曲がり癖や折れの問題が解消される。
【0029】
また、コアワイヤ4の後端45が、軸方向において、傾斜開口部33の後端の位置まで延びているため、ハイポチューブ3の先端部31には、内部に必ずコアワイヤ4が設けられており、従来技術のような内部にコアワイヤ4が設けられていない部分(図4参照)が生じないので、曲がり癖がつきにくい。
【0030】
さらに、実施例1のバルーンカテーテル1は、傾斜開口部33及び平面開口部34の外周側を覆う中空コイル体5を備えているため、傾斜開口部33及び平面開口部34を設けたことによって強度が低下した分を補強することができる。
また、バルーンカテーテル1が屈曲血管や湾曲血管に導入されることにより、平面開口部34が折れ曲がった場合に、平面開口部34が径方向に拡張しようとする(図2(b)矢印参照)のを中空コイル体5が抑えるため、曲がり癖や折れが生じにくい。
【0031】
また、中空コイル体5の素線を平板状とすることで、中空コイル体の壁厚を薄くすることができ、シャフト2の内壁とハイポチューブ3の外壁との間が狭い場合にでも用いることができる。
【実施例2】
【0032】
〔実施例2の構成〕
実施例2を、図3を用いて、実施例1と異なる点を中心に説明する。
実施例2のバルーンカテーテル1は、コアワイヤ4の後端部42は、先端部41と後端部42との境界43の断面積よりも小さい断面積であり、且つ、異型ワイヤである。
例えば、断面形状が十字状である異型ワイヤ(図3(a)、(b)参照)、断面形状が直角三角形である異型ワイヤ(図3(c)、(d)参照)、(c)のような断面形状がY字形状の異型ワイヤ(図3(e)、(f)参照)を用いる。
【0033】
これによれば、コアワイヤ4とハイポチューブ3の内壁に空間が形成され、その空間が流路として機能することができる。
【0034】
〔変形例〕
実施例1、2では、ハイポチューブ3の先端部31は、傾斜開口部33と平面開口部34とを有していたが、ハイポチューブ3の先端部31は、ハイポチューブ3の先端まで傾斜してカットして、平面開口部34を設けない形態であってもよい。
また、実施例1、2では、中空コイル体5は、複数本の素線を螺旋巻きして形成されていたが、単線で構成してもよい。ただし、複数本の素線で構成した方が強度が向上するため、より好ましいといえる。
また、コアワイヤ4、ハイポチューブ3、中空コイル体5の外側を覆うシャフト2を形成する際に、シャフト2を形成する樹脂を溶融状態にして中空コイル体5の素線間隙間に流し込むことで、中空コイル体5の素線間隙間に樹脂が埋め込まれた構成としてもよい。これによれば、バルーンカテーテル1の引張強度を増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】バルーンカテーテルの要部の側部断面図である(実施例1)。
【図2】(a)は、図1の要部拡大図であり、(b)は、(a)のA−A断面図である(実施例1)。
【図3】(a)、(c)、(e)は、コアワイヤの構成図であり、(b)、(d)、(f)は、それぞれ(a)、(c)、(e)を軸方向から見た図である(実施例2)。
【図4】(a)は、バルーンカテーテルの要部の拡大断面図であり、(b)は、(a)のB−B断面図である(従来例)。
【符号の説明】
【0036】
1 バルーンカテーテル
2 シャフト
21 バルーン
3 ハイポチューブ
31 (ハイポチューブの)先端部
32 内腔
33 傾斜開口部
34 平面開口部
4 コアワイヤ
41 (コアワイヤの)先端部
42 (コアワイヤの)後端部
43 先端部と後端部との境界(コアワイヤの先端部の後端)
45 (コアワイヤの)後端
5 中空コイル体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端にバルーンを設けた可撓性のシャフトと、
先端部が前記シャフトの後端側に内挿されて、内腔が前記バルーンに流出入する流体の流路をなすハイポチューブと、
先端側が前記シャフトの先端側に内挿される先端部、及び、該先端部の後端側に設けられるとともに前記ハイポチューブの先端部に内挿されて固定される後端部を有するコアワイヤとを備えるバルーンカテーテルであって、
前記ハイポチューブの先端部は、傾斜して開口する傾斜開口部を有し、
前記コアワイヤの後端部は、前記コアワイヤの先端部の後端の断面積よりも小さい断面積を有して、
前記コアワイヤの後端は、少なくとも前記傾斜開口部の後端の位置まで延びていることを特徴とするバルーンカテーテル。
【請求項2】
請求項1に記載のバルーンカテーテルにおいて、
前記コアワイヤの後端部は、前記ハイポチューブが開口している側を傾斜させて、後端側へ向かうにつれて径方向長さが小さくなるように設けられていることを特徴とするバルーンカテーテル。
【請求項3】
請求項1に記載のバルーンカテーテルにおいて、
前記コアワイヤの後端部は異型ワイヤであることを特徴とするバルーンカテーテル。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のバルーンカテーテルにおいて、
前記ハイポチューブの先端部は、
少なくとも径方向の中間の位置まで傾斜した前記傾斜開口部と、
前記傾斜開口部の先端側に軸方向に沿ってカットされた平面開口部とを有することを特徴とするバルーンカテーテル。
【請求項5】
請求項4に記載のバルーンカテーテルにおいて、
前記傾斜開口部及び前記平面開口部の外周側を覆う中空コイル体を備えることを特徴とするバルーンカテーテル。
【請求項6】
請求項5に記載のバルーンカテーテルにおいて、
前記中空コイル体は、素線の断面形状が平板状であることを特徴とするバルーンカテーテル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate