説明

バルーン拡張用注入器

【課題】本発明の課題は、バルーン付きカテーテルのバルーンの過注入が構造上出来ない拡張用注入器を提供して、不慣れな術者でも準備中、術中に過注入を行い、狭窄部を過剰に拡張して合併症を発生させる可能性や、バルーン補強用の複合糸を切断して、以後の手術に使用できない状態にする可能性を排除することである。
【解決手段】バルーンが弾性糸と非弾性糸からなる複合糸で補強されてなり、該複合糸が該弾性糸を芯、該非弾性糸を鞘とする芯鞘糸であるバルーン付きカテーテルのバルーン拡張用注入器において、バルーン外径を規定以上に拡張しないよう、壁面に注入量を規制するための貫通孔が設けられた事を特徴とするバルーン拡張用注入器を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療において、狭窄した心臓の僧帽弁を拡張し血流を正常にする等の治療を行う時に用いられるバルーン付カテーテルの付属品に係り、特に過注入による合併症の防止とバルーンを補強している複合糸の切断を防止するバルーン拡張用注入器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、バルーン付カテーテルを用いた治療方法が広く普及している。バルーンの径を収縮させた(縮径させた)状態で狭窄あるいは閉塞した血管等に潜り込ませておき、流体を圧入してバルーンを膨張させることにより血管等を拡張し狭窄部あるいは閉塞部を正常化する治療が行われているのである。また、老化や石灰化あるいはリュウマチ熱の後遺症で狭窄している心臓弁の弁切開手術や人工弁の弁置換手術に代わる非切開手術的な経皮的弁裂開術にも、バルーン付カテーテルが、既に多く使用されている。従来のバルーン付カテーテルでは、図1に示すように、チューブ2の先端部に付設されているバルーン1を狭窄した部位に潜り込ませた状態でバルーン1を図2の様に流体を圧入して膨張させて狭窄した部位を拡張させ、治療を行う。バルーンを拡張する際はバルーン拡張用注入器として注射筒3がよく使用される。バルーン拡張用注入器の注射筒3には図3に示すように注入量6とバルーン外径7の関連が表示されている。6aまで注入液を満たし、その注入液を全量注入すれば、バルーン1の中央外径が30mmまで拡張し、6aから6bまで注入液を注入すればバルーン1の先端側のみが拡張し、僧帽弁への位置決めが出来るという表示である。しかしながら、不慣れな術者は理解せずに準備中、術中に過注入を行い、狭窄部を過剰に拡張して合併症を発生る可能性や、バルーン補強用の複合糸を切断して、以後の手術に使用できない状態にする可能性があった。
【0003】
合併症、バルーン補強用の複合糸の切断について更に詳細に1例を説明する。バルーンは取扱説明書に記載されたバルーン拡張径(規定外径)では複合糸が切れない様、安全性を持たせるため、取扱説明書に記載されたバルーン拡張径以上に拡張できる設計になっている。また、拡張用注射筒も多種の注入量に対応できるよう余裕を持った容量になっているため過注入出きる構造になっている。しかしながら、不慣れな術者は注入量とその注入量でのバルーン拡張径をバルーン拡張用注入器に表示してあるに関わらず、それらを理解せずに準備中、術中にバルーン拡張用注入器で過注入を行い、狭窄部を過剰に拡張して合併症を発生させる可能性や、バルーン補給用の複合糸を切断して、以後の手術に使用できない状態にする可能性があった。ここで、過注入による合併症とは狭窄した僧帽弁を過剰に拡張してしまい、僧帽弁が閉塞すべき時に閉塞が不十分になり、血液が一部逆流する症状をいう。次にバルーン補強用の複合糸の切断について説明する。バルーンは1本の複合糸を図6の様に平編みした筒状の編み物で補強されている。この筒状の編み物で補強されているため、狭窄した僧帽弁を機械的に拡張できるほどのバルーン内圧を発生させることが出きる。しかし、過注入によって、設計値以上の過剰な内圧が付与されると、図7に示す様に複合糸の1個所Aが切断し、パンティストッキングの伝線と同様に、図8、図9の順に編み物の編み目が外れる。編み目が外れると図10の様に編み目が外れた部分21と編み目が外れていない部分22とが出きる。そうすると、複合糸が切れて補強できなくなった部分20の弾性フィルム部分が拡張するため、バルーン内圧が低下し僧帽弁を拡張出来なくなる。
【特許文献1】特許第2545981号公報
【特許文献2】特開2001−276228号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記の事情に鑑み、過注入が構造上出来ない拡張用注入器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
1.バルーンが弾性糸と非弾性糸からなる複合糸で補強されてなり、該複合糸が該弾性糸を芯、該非弾性糸を鞘とする芯鞘糸であるバルーン付きカテーテルのバルーン拡張用注入器において、バルーン外径を規定以上に拡張しないよう、壁面に注入量を規制するための貫通孔が設けられた事を特徴とするバルーン拡張用注入器。
2.前記貫通孔が側壁面に設けられた事を特徴とする前記1に記載のバルーン拡張用注入器。
3.前記貫通孔が最大注入量を表示する位置から0.1〜0.5mm手元側に離れた位置に設けられた事を特徴とする前記2に記載のバルーン拡張用注入器。
4.前記貫通孔の径が0.1〜0.9mmであることを特徴とする前記1〜3のいずれかに記載のバルーン拡張用注入器。
【発明の効果】
【0006】
本発明においては、バルーン付きカテーテルのバルーンの過注入が構造上出来ない拡張用注入器を提供することで、不慣れな術者でも準備中、術中に過注入を行い、狭窄部を過剰に拡張して合併症を発生させる可能性や、バルーン補強用の複合糸を切断して、以後の手術に使用できない状態にする可能性を排除する事ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明のバルーン拡張用注入器について説明する。バルーン付きカテーテルには、取扱説明書に記載されている最大規定径に応じた注入量とその注入量に応じた外径表示を有する、図3に示す様な樹脂製の30ミリリットル用注射筒が一般的に広く使用されている。最大規定径以上にバルーン外径を拡張すると合併症や筒状の編み物で補強された複合糸を切断し、合併症による患者の疾患や複合糸の切断による以後の手術が不能となる可能性がある。そこで、最大規定径以上に拡張できない構造にするため、図3に示すように最大注入量を示す位置である6aから0.1mm〜0.5mm手元側に離れた位置に外筒3aを貫通する外径0.1mm〜0.9mmの孔5を開けることが好ましい。6aの位置は最大拡張径に到達させるために必要な注入量を示す位置であるが、この注入量は確保しつつ、オーバーさせない様な孔の位置とするため、6aの位置から0.1mm〜0.5mm手元側に離れた位置とする。すなわち、最大拡張径より少し大きく拡張させても良い安全設計になっているため、0.1mm〜0.5mm手元側にある場合は影響はない。貫通する孔の外径は0.1mmあれば満足する機能を果たすが、生産するときの孔加工工程に支障を及ぼさない範囲で、広く使用されている注射筒のシールゴムを傷つけず、注射筒のストロークがスムーズに行える孔とするため、0.1mm〜0.9mmであることが好ましい。孔5の形状はどんな形状でもよく、貫通していればその機能が果たせる。孔5は押子3b先端のシール用ゴム先端のシール幅より小さいことが望ましい。孔5の加工は外筒3aを成形する時に施行してもよく、成形後の後加工で切削、溶融による方法でも可能である。
【0008】
続いて、バルーン付カテーテルの最良の形態を図面を参照しながら説明する。図1は一実施形態のバルーン付きカテーテルとバルーン拡張用注入器の全体の概略構成を示す平面図である。
【0009】
図1に示すバルーン付きカテーテルは、断面が丸くて表面が滑らかな細長いチューブ1と、チューブ1の先端部に付設されているバルーン2とを備えている他、必要に応じてチューブ1の後端に流体導入口などを備えている構成となっている。
【0010】
バルーン付きカテーテルのチューブ1は、図5に示すように、互いに軸方向に摺動可能なようにして同心的に挿し通されている内チューブ14と外チューブ11とからなる二重管式チューブである。バルーン2は、流体の導入RAにより膨張する内バルーン9と、流体導入に伴って膨張した内バルーン9を表側から受ける外バルーン10とからなる二重袋式バルーンである。
【0011】
内バルーン9は筒状の弾性フィルムからなり、内バルーン9の表裏両面にはシリコーングリースが塗布されている。外バルーン10は、外側の筒状の弾性フィルム10bと内側のバルーン補強用の筒状の芯鞘糸物10aとからなり、バルーン補強用の芯鞘糸物10aは弾性フィルム10bの内面にゴム糊等で貼り付けられていて、弾性フィルム10bの飛散防止と共に、バルーンの膨張・収縮によってずれたりせず、均等な膨張が得られるよう構成されている。バルーン2の長さは自由であるが、15〜70mmの範囲が適当である場合が多い。
【0012】
このように、バルーン2の全体層構造としては、前記の弾性フィルム/筒状の芯鞘糸物/弾性フィルムの3層構造であることが望ましい。内バルーン9の弾性フィルムは、2層構成の外バルーン10のうちでも、とりわけの芯鞘糸物10aによる補強効果を受けて伸縮性と耐圧性が十分にあって(弁を機械的に裂開させられる2〜5気圧程度の)大きなバルーン内圧の達成が可能な構成となっている。また、滑らかな表面の弾性フィルム10bは、拡張したバルーンを収縮させる働きと、血管内での通過性を良くする作用を有する。
【0013】
さらに、図2に示すように、バルーン2を膨張させた時に瓢箪形にするため、外バルーン10の中ほどに弾性体のバンド8をゴム糊等で接着してある。すなわち、弾性フィルム10bと芯鞘糸物10aとの間にはバンド8が嵌められて接着されていて、バンド8のところでは膨張が他より抑えられることで瓢箪形を呈することなのである。拡張したい弁口をバンド8の位置に合わせ、バルーンが弁口から滑り落ちない構成にされている。勿論、バルーンを瓢箪形としない場合には弾性体のバンド8は不要である。
【0014】
なお、液体が導入されて膨張中の内バルーン9が破れる事故があって、注射筒での液体吸引も出来ず、液体の逃げ口がなくてバルーン2を萎ませられない事態を回避するために、外バルーン10に逃がし細孔16が幾つか設けられている。バルーン2が膨張したままではカテーテルを体外に引き出せない。内バルーン9が破れた時には、液体が逃がし細孔16から放出されてバルーン2が自動的に萎む(収縮する)よう構成されているのである。
【0015】
両バルーン9,10に使われる弾性フィルムは、伸縮性が大きく表面が滑らかな薄膜で先端側の厚みが後端側より薄く制作されることが多い。先端側の厚みが後端側より薄いと先端側から先に膨張する(拡張される)。弾性フィルムの素材としては、ポリウレタンやラテックス等のゴムが挙げられ、特にゴムは初期弾性率が小さく、バルーン用として好適である。
【0016】
弾性フィルムの厚みは0.1〜0.4mmの範囲が好ましい。両バルーン9,10に使われる弾性フィルムは同一厚みである必要はない。また、先端側と後端側の厚みの差は5〜25%位でよく、例えば筒状の弾性フィルムを製作する際に薄くするか,また簡単な方法としては、製作した筒状の弾性フィルムの該当部分を膨張させて、残留伸びを固定させて膜厚を薄くするなどの方法で得られる。
【0017】
一方、筒状の芯鞘糸物10aは、芯用弾性糸と芯用弾性糸より自由長の大きい鞘用非弾性糸とからなる芯鞘糸(複合糸)を素材として作られており、編物、織物、組紐、大きな綾角で筒状に巻いたものが挙げられるが、中でも伸縮性のある筒編構造のものが好ましい。
【0018】
芯用弾性糸と鞘用非弾性糸の自由長の比は0.15〜0.5であることが好ましい。さらに好ましくは0.2〜0.35である。この値が大きすぎるとバルーンは十分に膨張し難くなる。また、この値が小さすぎると非弾性糸による補強効果が十分に発揮されず、バルーン膨張時に破損が生じ易くなる。ただし破損を回避するために細心の注意を払って製造すれば、上記の比がより大きい場合にも本発明の効果をいかすことができる。
【0019】
なお、上記自由長の比は、芯鞘糸のS−Sカーブが高張力側に屈折する点を測定することによって知ることができる。非弾性糸の自由長のバラツキがあって、前記の屈折点が不明瞭な場合は、前後の直線部から外捜することにより知ることができる。
【0020】
芯鞘糸は弾性糸を芯、非弾性糸を鞘とする構造である。すなわち、内圧により膨張し易くするため、或いは膨張の部分的順序や最終的な膨張形状を設定しておくために、あらかじめ膨張・収縮させて癖付をしておくような場合があり、この場合には両構成糸の分離が悪影響を及ぼす恐れがあるのである。
【0021】
芯鞘糸の作り方としては、非弾性糸をオーバーフィードしながら交撚または流体交絡する方法、特にウレタン糸(弾性糸)に合成繊維の撚糸(非弾性糸)を螺旋状に巻いた芯鞘糸がコンパクトである点で好ましい。非弾性糸は加工糸である方が、伸縮性や弾性フィルムとの接着性等に優れていて好ましい。加工糸の中でも伸縮性に優れる仮撚加工糸が良い。加工糸でない場合は弾性糸との分離を起こしやすい欠点があるが、それも撚数を十分大きくするなどの対策により、分離し易い欠点を回避することは可能である。
【0022】
芯用の弾性糸としては、伸縮性のある繊維であれば別に制約されない。例えば天然ゴムや合成ゴムなどのゴム並びにポリウレタンの単糸や撚糸が適当であり、巻きつける合成繊維(非弾性糸)の糸はナイロン、ポリエステルや「テフロン」(登録商標)などの強力糸の他、ポリイミドやポリエチレンなどの高強力糸の単糸でもよいが、撚糸の方が撓やかで好ましい。これらの糸の太さは作用部位や目的に合わせて要求される耐圧性が異なるので特に限定されないが、芯用の弾性糸は10〜50D、巻き付ける強力糸や高強力糸の非弾性糸は30〜150Dの範囲で選ばれることが多い。
【0023】
そして、バルーン1は、図5に示すように、一端が内チューブ14の側に固定されて他端が外チューブ11の側に固定されることによりチューブ2に付設されている。すなわち、内チューブ9の先端に金属製先端パイプ15を全長の半分くらいまで納まるように差し込んだ上から糸を縛り付けて止め付けることにより金属製先端パイプ15が固定されていて、内バルーン9の一端が糸で先端パイプ15の差し込み域に縛り付けられて固定されているとともに、外バルーン10の一端が、やはり糸で先端パイプ15の差し込み域に縛り付けられて固定されている。また、チューブ2の最先端部分では、エポキシ樹脂系等の接着剤17によって先細りテーパー状の先端チップ18が接着固定されている他、バルーン端部や接続部はエポキシ樹脂系等の接着剤17によって滑らかに仕上げられている。
【0024】
また、外チューブ11の先端に金属製接続パイプ15を全長の1/3くらいまで納まるように差し込んだ上から糸を縛り付けて止め付けることにより金属製接続パイプ13が固定されていて、内バルーン9の他端が接続パイプ13の先端に糸で縛り付けられて固定されているとともに、外バルーン10の他端が接続パイプ13の中程に糸で縛り付けられて固定されている。また、エポキシ樹脂系等の接着剤19でバルーン端部や接続部は滑らかに仕上げられている。
【0025】
血管や心臓内腔への挿入時あるいは引出時においては、外チューブ11に対して内チューブ14を(軸方向に)摺動前進させて、内外の両バルーン9,10を軸方向に伸張させ縮径させる(径を縮める)操作を行う。
【0026】
また、バルーン2を下にして拡張用液体をベントチューブ4から注入することによって、バルーン及びカテーテル内の空気を抜くと共に拡張用液体を充填出きる。
【0027】
チューブ2の長さについては、患者の年齢、体格や挿入部から治療する場所までの距離によって異なるので特定の長さに規定されるものではないが、好ましくは20〜120cmの範囲のものが使用される。
【0028】
剛性のある内チューブ14としては、例えばポリエチレン、「テフロン」(登録商標)、ポリプロピレン、あるいはナイロンのような合成樹脂製のチューブが挙げられる。これらのチューブの他に、可塑剤を溶媒で抽出して剛性をもたせた塩化ビニル樹脂製のチューブや、放射線照射で架橋硬化させて剛性をもたせた樹脂製のチューブ、さらには、可塑剤を少なくして剛性をもたせた樹脂製のチューブ等も使用することができる。一方、トルク性のある硬い外チューブ11の方も、内チューブ14と同様の材質のチューブを使用できる。さらに、これらのチューブに硫酸バリウムやビスマスの化合物あるいはタングステンのような金属粉末の造影剤を混入させておくと、血管内の位置をレントゲン撮影により知る助けとなり好ましい。
【0029】
また、図5において、外チューブ11の内面と金属製接続パイプ13の表面の間に先端が挟み付けられて取り付けられ、手元側へ導き出されているリード糸(ケブラー糸)12は、外チューブ11に対して内チューブ14を(軸方向に)摺動前進させて、内外の両バルーン9,10を軸方向に伸張させ縮径させた時に、外チューブ11が伸びないよう歯止めをかけるためのものである。外チューブ11の伸びをおさえる糸としては、特定の素材のものに限られないが、弾性率の高い繊維、例えばポリアミド糸が適当である。さらに、外チューブ11の伸びをおさえるのに、糸でなく編物を用いてもよい。また、外チューブ11の伸びをおさえる糸や編物は外チューブ11に埋設してもよい。
【0030】
バルーン2を膨張させる流体は、図5に矢印RAで示すように、内チューブ14と外チューブ11の間隙を経由して内バルーン9ヘ送り込まれる。バルーン2を膨張させる流体としては、例えば生理食塩水や造影液などの液体や炭酸ガスなどの気体が用いられる。これらの流体は、注射筒等により、その一定量を圧入する方法で用いられる。内バルーン9に流体が十分に送りこまれると、図2に示
すように、バルーン2が瓢箪形に膨張する。
【実施例】
【0031】
続いて、以上に説明した最良の形態のカテーテル、バルーン拡張用注入器に則した具体的な構成を有する
実施例を説明する。
【0032】
30Dのポリウレタン糸(芯用弾性糸)に70D−24fのポリエステル糸からなる仮撚加工糸(鞘用非弾性糸)を、ポリウレタン糸に対して370%オーバーフィードして412T/mで交撚して芯鞘糸(複合糸)を製造した。両糸の自由長の比をS−Sカーブから読み取ると0.26であった。
【0033】
このように製造した芯鞘糸を、直径22mmの円周に54本の編み針を並べた編み機で筒編みして、外バルーン10に用いる筒状の芯鞘糸物10aを得た。
【0034】
一方、外チューブ11として、DOP40重量部および造影剤50重量%を含有する12Frで長さ690mmの塩化ビニルチューブの中空側にリード糸12として200Dのポリイミド撚糸を沿わせるとともに、先端にステンレスパイプを金属製接続パイプ13として装着し、後端には4方コネクタを装着しておく。
【0035】
他方、内チューブ14として、DOP24重量部を含有する先端部外径1.7mmのポリ塩化ビニルチューブに外径1.5mmのステンレスパイプを金属製先端パイプ15として装着し、後端に外径2.5mm長さ30mmの針基付きステンレスパイプを挿入した。各ステンレスパイプは70μm及び110μmのナイロン糸で内チューブ及び外チューブに縛り付けてしっかり固定した。なお、内チューブ14の曲げモーメントは20g・cmであった。 そして、内チューブ14を先ず4方コネクタに通してから、さらに外チューブ11に挿入した後、外チューブ11を4方コネクタに固定して、カテーテルのチューブ2となる部分を作製した。
【0036】
次に、厚さ0.3mm、長さ25mmのゴムチューブを内バルーン9の弾性フィルムとして、その一端と他端を内チューブ14および外チューブ11の先端に70μmのナイロン糸でそれぞれ縛り付けて固定してからゴムチューブの表面にシリコーングリースを少量塗布した。また、芯鞘糸物10aの中ほどに厚み0.2mm、長さ7mmのゴム帯を弾性体のバンド16としてゴム糊で貼りつけた後、さらにその外側に先端側の厚みが0.2mmで後端側の厚みが0.3mmであるゴムチューブを外バルーン10における弾性フィルム10bとして貼り付けた。これを内バルーン9に被せて全長が25mmになるように合わせて、内チューブ14および外チューブ11に70μm及び90μmのナイロン糸で縛り付けて固定した。そして、余分の編物部分やゴム部分は切り取り、内バルーン9および外バルーン10からなるバルーン1を作製した。その後、4方コネクタに二方活栓を取り付けるとともに、内バルーン9の手元側まで届く外径0.5mmの延長チューブを取り付けたバルーン付きカテーテル内のガス抜き用の2方活栓付きベントチューブ4を取り付け、バルーン1の両端や先端及び継ぎ部分をエポキシ樹脂系接着剤で滑らかに仕上げして実施例1のバルーン付カテーテルを完成した。
【0037】
完成したバルーン付カテーテルに30ミリリットル用注射筒を取り付けて、2方活栓付きベントチューブ4からバルーン付きカテーテル内の空気を抜きながら水に置き換えた後、2方活栓付きベントチューブ4の2方活栓を閉止し、バルーン拡張用注入口の2方活栓に注射筒3を取り付けて約7ミリリットルの水を注入した。バルーン1は先端のみが約20mmに膨張した。また、さらに注入量を24ミリリットルにすると、バルーン1の中央部は約30mmに膨張した。最大注入量が24ミリリットルでそのときのバルーン拡張時の最大規定径が30mmと表示された注射筒の最大注入量表示から0.1mm手元側に離れた位置に外径0.3mmの注射筒外筒を貫通する孔を開けて、最大注入量まで注入液を入れバルーンを再度拡張したところ、バルーン外径は30mmまで拡張できた。また、最大注入量を超えて注入液を満たそうとすると大量の気泡が入り、最大注入量以上に注入出来ないことを確認した。同様に合計10本製作して、結果が同じであることを確認した。
【0038】
本発明は、下記のように変形実施することができる。
(1)図1のカテーテルは、二重袋式バルーンであったが、バルーンが単一袋式バルーンである構成のカテーテルも、変形例として挙げることができる。
【0039】
具体的には、図5において内バルーン9である弾性フィルムも芯鞘糸物10bに接着されている多層単一袋式バルーンや、さらには芯鞘糸物10bもない単一層単一袋式バルーンのカテーテル等が挙げられる。芯鞘糸物10bもない単一層単一袋式バルーンのカテーテルの場合は破裂、漏れ防止に有効である。
(2)図1のカテーテルは、バルーンが瓢箪形に膨らむ構成であったが、バルーンに弾性体のバンド8が取り付けられていない非瓢箪形に膨らむ構成のカテーテルも、変形例として挙げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施形態のバルーン付きカテーテルとバルーン拡張用注入器の全体の概略構成を示す平面図
【図2】バルーン付きカテーテルの拡張したバルーンを示す平面図
【図3】本発明の一実施形態の全体を示す平面図
【図4】本発明の一実施形態の図3のX−X断面図
【図5】一実施形態のバルーン部の断面図
【図6】一実施形態の複合糸の編み方を示す構造図
【図7】一実施形態の編み物の複合糸が切れた瞬間を示す平面図
【図8】一実施形態の編み物の複合糸が切れた後の編み目の外れの初期を示す平面図
【図9】一実施形態の編み物の複合糸が切れた後の編み目の外れの後期を示す平面図
【図10】一実施形態の編み物の複合糸が切れた後の弾性フィルムの拡張を示す平面図
【符号の説明】
【0041】
1 バルーン
2 チューブ
3 注射筒
4 ベントチューブ
5 孔
6 注入量表示
7 拡張径表示
8 バンド
9 内バルーン
10 外バルーン
11 外チューブ
12 リード糸
13 金属製接続パイプ
14 内チューブ
15 金属製先端パイプ
16 細孔
17 接着剤
18 先端チップ
19 接着剤
20 弾性フィルムの拡張
21 編み目が外れた部分
22 編み目が外れていない部分
A 複合糸の切断部
RA バルーン拡張時の流入方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルーンが弾性糸と非弾性糸からなる複合糸で補強されてなり、該複合糸が該弾性糸を芯、該非弾性糸を鞘とする芯鞘糸であるバルーン付きカテーテルのバルーン拡張用注入器において、バルーン外径を規定以上に拡張しないよう、壁面に注入量を規制するための貫通孔が設けられた事を特徴とするバルーン拡張用注入器。
【請求項2】
前記貫通孔が側壁面に設けられた事を特徴とする請求項1に記載のバルーン拡張用注入器。
【請求項3】
前記貫通孔が最大注入量を表示する位置から0.1〜0.5mm手元側に離れた位置に設けられた事を特徴とする請求項2に記載のバルーン拡張用注入器。
【請求項4】
前記貫通孔の径が0.1〜0.9mmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のバルーン拡張用注入器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−291345(P2009−291345A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−146553(P2008−146553)
【出願日】平成20年6月4日(2008.6.4)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】