説明

バンド組み付け装置およびバンド組み付け方法

【課題】スタック全体を上下反転させることなく、スタックの上下に対して、容易にバンドを組み付けることができるバンド組み付け装置およびバンド組み付け方法を提供する。
【解決手段】スタック34を水平方向に挟圧して保持するスタック保持機構4と、スタック保持機構4の下方で拘束バンド35を保持するバンド保持機構5と、バンド保持機構5を変位可能に支持する変位機構10と、を備え、スタック保持機構4は、スタック34に付与した荷重を検出する圧力センサ13と、スタック34の長さを検出する制御装置12と、を備え、制御装置12は、圧力センサ13による検出荷重が設計荷重Pであるときのスタック34の長さ(設計長さL)を検出し、スタック保持機構4は、スタック34に設計荷重Pより大きい荷重Qを付与して、設計長さL未満の長さ(L−ΔL)とし、変位機構10により、その状態で、拘束バンド35を所定位置に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組電池の製造のために用いるバンド組み付け装置およびバンド組み付け方法の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複数のセルを積層して形成されるスタックを有する組電池(例えば、リチウムイオン二次電池等)が広く用いられるようになっている。そして、このような組電池の構成としては、各セルをバンド(以下、拘束バンドと呼ぶ)で拘束することによって積層状態を保持するものが一般的に知られている。
各セルを拘束バンドで拘束して積層状態を保持する構成の組電池としては、例えば、以下に示す特許文献1に開示されているような構成のものが公知となっている。
【0003】
特許文献1に開示されている組電池は、複数のセルを積層するとともに、その積層方向の両端部に一対のエンドプレートを配置している。そして、各エンドプレートに合計4本の拘束バンドを掛け渡して、各エンドプレートの間隔を所定の間隔以下に保持することによって、各セルに所定の拘束力を負荷しつつ積層状態を保持して、組電池を形成する構成としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−48965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されているような、各セルをバンドで拘束して積層状態を保持する構成とした組電池を製造する場合、従来は、まずスタックを、拘束バンドを掛け渡す側の面を上方に向けた状態で配置するとともに、このときのスタックの上側の面に、二つの拘束バンドを載置する。
そして、まず各拘束バンドの一端部を、一方のエンドプレートに対して固定する。そして、スタックを前後方向に180度反転させた後に、各拘束バンドの他端部を他方のエンドプレートに対して固定する。
【0006】
次に、スタックの下側の面に拘束バンドを掛け渡すため、スタックを上下方向に反転させる。
そして、スタックを、未だ拘束バンドを掛け渡していない側の面を上方に向けた状態で配置するとともに、このときのスタックの上側の面に、二つの拘束バンドを載置する。
そして、まず各拘束バンドの一端部を、一方のエンドプレートに対して固定する。そして、スタックを前後方向に180度反転させた後に、各拘束バンドの他端部を他方のエンドプレートに対して固定する。
【0007】
以上のような工程を経て、合計4本の拘束バンドをスタックに対して組み付けて、拘束バンドによって、スタックを拘束して、組電池の積層状態を保持する構成としている。
【0008】
このように従来は、スタックに合計4つの拘束バンドを取り付けるに際し、スタックを上下に反転させたり、あるいは、スタックの締結位置を作業者の前面に配置するために、スタックを前後方向に向けて、少なくとも2度反転させたりする必要があったため、拘束バンドの組み付け作業に時間を要していた。
【0009】
また、拘束バンドは所定の拘束力を得るために、スタックおよびエンドプレートの積層長さに対するクリアランスを小さく設定してあるため、スタックおよびエンドプレートに拘束バンドを掛け渡す作業には手間が掛かっていた。
【0010】
本発明は、斯かる現状の課題を鑑みてなされたものであり、組電池の製造に要する時間の短縮を図るべく、スタック全体を上下反転させることなく、スタックに対して、容易に拘束バンドを組み付けることができるバンド組み付け装置置およびバンド組み付け方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0012】
即ち、請求項1においては、複数個のセルを積層して形成されるスタックを、水平方向に積層するとともに、水平方向に挟圧して保持するための機構であるスタック保持機構と、前記スタック保持機構により保持される前記スタックの下方において、該スタックを拘束するためのバンドである拘束バンドを保持するための機構であるバンド保持機構と、前記バンド保持機構を上下方向に変位可能に支持する機構である変位機構と、を備え、前記スタック保持機構は、前記スタックに付与した荷重を検出する荷重検出手段と、前記スタックの積層方向における長さを検出するスタック長さ検出手段と、を備え、前記スタック長さ検出手段は、前記荷重検出手段により検出する荷重が、前記スタックに付与すべき所定の設計荷重であるときの、前記スタックの積層方向における長さである第一の長さを検出し、前記スタック保持機構は、前記スタックに前記設計荷重よりも大きい荷重を付与して、前記第一の長さ未満の長さである第二の長さに前記スタックを保持し、前記変位機構は、前記スタックが、前記第二の長さで前記スタック保持機構により保持されている状態において、前記バンド保持機構により保持されている前記拘束バンドを前記スタックの下面に向けて変位させて、該拘束バンドを前記スタックの下部における所定の位置に配置するものである。
【0013】
請求項2においては、さらに、前記スタック保持機構を、鉛直方向に設定した軸心回りに回転させることができる機構である回転機構を備えるものである。
【0014】
請求項3においては、複数個のセルを積層して形成されるスタックを、水平方向に積層するとともに、水平方向に挟圧して保持するための機構であるスタック保持機構と、前記スタック保持機構により保持される前記スタックの下方において、該スタックを拘束するためのバンドである拘束バンドを保持するための機構であるバンド保持機構と、前記バンド保持機構を上下方向に変位可能に支持する機構である変位機構と、を備え、前記スタック保持機構は、前記スタックに付与した荷重を検出する荷重検出手段と、前記スタックの積層方向における長さを検出するスタック長さ検出手段と、を備えるバンド組み付け装置によるバンド組み付け方法であって、前記スタック長さ検出手段によって、前記荷重検出手段により検出する荷重が、前記スタックに付与すべき所定の設計荷重であるときの、前記スタックの積層方向における長さである第一の長さを検出し、前記スタック保持機構によって、前記スタックに前記設計荷重よりも大きい荷重を付与して、前記第一の長さ未満の長さである第二の長さに前記スタックを保持し、前記変位機構によって、前記スタックが、前記第二の長さで前記スタック保持機構により保持されている状態において、前記バンド保持機構により保持されている前記拘束バンドを前記スタックの下面に向けて変位させて、該拘束バンドを前記スタックの下部における所定の位置に配置するものである。
【0015】
請求項4においては、さらに、前記バンド組み付け装置は、前記スタック保持機構を、鉛直方向に設定した軸心回りに回転させることができる機構である回転機構を備え、前記スタックの一端部に前記拘束バンドを固定した後に、前記スタック保持機構を鉛直方向に設定した軸心回りに180度回転させて、その後、前記スタックの他端部に前記拘束バンドを固定するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0017】
請求項1においては、スタックの下側において、容易に拘束バンドを位置決めすることができる。
【0018】
請求項2においては、組電池の製造において、短時間で効率よく、スタックに拘束バンドを組み付けることができる。
【0019】
請求項3においては、スタックの下側において、容易に拘束バンドを位置決めすることができる。
【0020】
請求項4においては、組電池の製造において、短時間で効率よく、スタックに拘束バンドを組み付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係るバンド組み付け装置およびバンド組み付け方法の適用対象たる組電池の全体構成を示す模式図、(a)正面模式図、(b)側面模式図。
【図2】本発明の一実施形態に係るバンド組み付け装置およびバンド組み付け方法の適用対象たる組電池を構成する各部品を示す模式図、(a)スタックを示す正面および側面模式図、(b)拘束バンドを示す正面および側面模式図。
【図3】本発明の一実施形態に係るバンド組み付け装置の全体構成を示す模式図、(a)正面模式図、(b)側面模式図。
【図4】バンド組み付け装置を構成するバンド保持機構を示す模式図、(a)平面模式図、(b)正面模式図、(c)側面模式図。
【図5】バンド保持機構に備えられる押圧部を示す模式図、(a)拘束バンドを位置決めする前の状態を示す模式図、(b)拘束バンドを位置決めした後の状態を示す模式図。
【図6】バンド保持機構の変位状態(拘束バンドの配置が正常に成された場合)を示す模式図。
【図7】バンド保持機構の変位状態(拘束バンドの配置に失敗した場合)を示す模式図。
【図8】本発明の一実施形態に係るバンド組み付け方法の流れを示すフロー図。
【図9】バンド組み付け装置によるスタックに対する拘束バンドの配置状態を示す模式図。
【図10】バンド組み付け装置によるスタックの反転状況を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、発明の実施の形態を説明する。
まず始めに、本発明の一実施形態に係るバンド組み付け装置およびバンド組み付け方法の適用対象たる組電池の全体構成について、図1および図2を用いて説明をする。
図1(a)(b)に示す如く、本発明の一実施形態に係るバンド組み付け装置およびバンド組み付け方法の適用対象たる組電池の一例である組電池30は、複数のセル31・31・・・と一対のエンドプレート32・33からなるスタック34や、4本の拘束バンド35・35・35・35を備えている。
【0023】
複数のセル31・31・・・は、該セル31の厚み方向に積層されており、その積層方向における一端部にエンドプレート32を配置し、他端部にエンドプレート33を配置している。
即ち、スタック34は、図2(a)に示す如く、一対のエンドプレート32・33で、各セル31・31・・・を積層方向に向けて挟圧し、各セル31・31・・・を所定の荷重で拘束することによって、各セル31・31・・・の積層状態を保持して形成されている。
【0024】
また、組電池30において、一対のエンドプレート32・33は、4本の拘束バンド35・35・35・35によって連結されている。
さらに、エンドプレート32の外側面には、リベット36を留め付けるための4箇所の孔32a・32a・・・が形成されている。また、エンドプレート33の外側面にも同様に、リベット36を留め付けるための4箇所の孔33a・33a・・・が形成されている。
【0025】
図2(b)に示す如く、拘束バンド35は、所定の長さを有する鋼板製の平板状部材を基にして、当該平板状部材の長さ方向における両端部を、板厚方向に直交する同じ向きに(即ち、90度に)折り曲げることによって形成される部材である。
尚、以下の説明では、平板状部材の両端部において90度に折り曲げられた部位を折り曲げ部35a・35aと呼び、各折り曲げ部35a・35aを繋ぐ所定の長さを有する部位を基部35bと呼ぶ。
【0026】
そして、拘束バンド35は、各折り曲げ部35a・35a同士の対面距離(換言すれば、基部35bの長さ)が、その拘束バンド35を用いるスタック34の設計長さLに一致するように作成されている。
尚、ここで言う設計長さLとは、スタック34に設計荷重が付与されたときの当該スタック34の長さを意味している。
また、一つのスタック34に対して用いられる4本の各拘束バンド35・35・・・は、各折り曲げ部35a・35aの対面距離を設計長さLに一致させている。
【0027】
また、拘束バンド35の各折り曲げ部35a・35aには、該拘束バンド35の組み付けに用いるリベットを挿通するための孔35c・35cが形成されている。
【0028】
尚、スタック34の設計長さLは、使用するセル31・31・・・の組み合わせに応じて異なってくるため、拘束バンド35は、それが用いられるスタック34の設計長さLが判ってから、その都度、当該スタック34の設計長さLに合わせて、拘束バンド35を作成する(折り曲げ部35a・35aを形成する)構成としている。
【0029】
即ち、組電池30は、各エンドプレート32・33を、4本の各拘束バンド35・35・・・で連結することによって、各エンドプレート32・33の離間距離を一定(設計長さL)に保持し、これにより、各セル31・31・・・に対して、確実に設計荷重を付与して、所望する性能を確保するように構成されている。
【0030】
次に、本発明の一実施形態に係るバンド組み付け装置の全体構成について、図3〜図7を用いて説明をする。
図3(a)(b)に示す如く、本発明の一実施形態に係るバンド組み付け装置1は、組電池30(図1(a)(b)参照)を製造する工程のうち、拘束バンド35・35・・・の組み付け工程において用いられる装置であり、支持ベース2、回転機構3、スタック保持機構4、バンド保持機構5、制御装置12等を備えている。
【0031】
支持ベース2は、スタック保持機構4およびバンド保持機構5を支持するための部材であり、その支持面2aが水平となるように配置されている。
また、支持ベース2は、回転機構3によって回転可能に支持される構成としており、支持面2aの水平を保持しつつ、鉛直方向に設定した、回転機構3の軸芯X回りに回転することができる構成としている。
尚、回転機構3は、作業者が手動で回転力を付与することによって回転する構成のものや、駆動源を備え、スイッチ等の入切で回転する構成のもの等、種々の構成のものを採用することが可能である。
【0032】
スタック保持機構4は、バンド組み付け装置1の所定位置において、スタック34(複数のセル31・31・・・および各エンドプレート32・33)を、その積層方向を水平に向けた状態で保持することができる機構であり、支持ベース2の支持面2aから鉛直上向きに立設されている。
【0033】
また、スタック保持機構4は、スタック34を位置決めするときの基準となる、支持ベース2に対して変位不能に固定されている部位である固定部4aと、支持ベース2に対して変位可能な状態で支持されている部位である可動部4bと、を備えている。
固定部4aには、スタック34と当接して位置決めの基準となる面である基準面4cが形成されており、また、可動部4bには、基準面4cに対して平行な面であって、スタック34と当接する部位である押圧面4dが形成されている。
【0034】
さらに詳述すると、可動部4bは、支持ベース2に対して支持されている変位機構6によって支持されており、そして、可動部4bは、基準面4cに対して垂直な方向に突設されるガイド部材4e・4e・・・に沿って、変位される構成としている。
尚、スタック保持機構4において採用する変位機構6としては、電動アクチュエータ、油圧シリンダ、ボールねじとモータを組み合わせた機構等、種々の機構を採用することが可能である。
【0035】
また、スタック保持機構4は、固定部4aが、支持ベース2の支持面2aから鉛直上向きに立設され、その基準面4cが鉛直面となるように構成されており、かつ、押圧面4dが、変位機構6によって、水平方向に変位される構成としている。
このため、スタック保持機構4では、スタック34を、その積層方向が水平となる姿勢を保持することができ、また、この姿勢を保持した状態で、スタック34に対して、拘束バンド35・35・・・の組み付けを行うことができる。
【0036】
さらに、スタック保持機構4では、可動部4bの押圧面4dにおいて、圧力センサ13を設けている。これにより、固定部4aおよび可動部4bでスタック34を挟圧したときに、該スタック34に対して積層方向に付与される荷重を検出することができる。
圧力センサ13は、制御装置12と接続されており、圧力センサ13によって検出した荷重に関する情報を、制御装置12に出力する構成としている。
また、スタック保持機構4においては、変位機構6も制御装置12に接続されている。
【0037】
制御装置12は、可動部4bの動作を制御するための装置であり、圧力センサ13の検出した荷重が設計荷重に一致するか否か等を判定するとともに、検出した荷重に応じて、変位機構6の動作を制御する(即ち、可動部4bの変位位置を調整する)ことができる。
またさらに制御装置12は、変位機構6の作動状態から可動部4bの状態(変位位置)を検出することによって、積層方向におけるスタック34の長さを検出することができる。
【0038】
バンド保持機構5は、スタック保持機構4により水平な状態で保持されるスタック34の下方において、支持ベース2上に付設される機構であって、2本の拘束バンド35・35を保持するための機構であり、保持部材7・7、支持部材8等を備える構成としている。
【0039】
図4(a)(b)(c)に示す如く、保持部材7は、拘束バンド35を保持するための部材であり、拘束バンド35の形状に対応した凹状の部位である溝部7aが形成されている。また、本実施形態において示すバンド保持機構5は、二つの保持部材7・7を備えているため、一度に2本の拘束バンド35・35を保持することができる。
そして、各保持部材7・7の各溝部7a・7aに拘束バンド35・35を嵌り込ませることによって、バンド保持機構5において、2本の拘束バンド35・35を位置決めして保持する構成としている。
【0040】
また、保持部材7には、溝部7aに嵌り込んだ拘束バンド35が、溝部7aから外れてしまうことを防止するため、溝部7aの底部において、拘束バンド35を吸着するための部位である吸着部7b・7bを備えている。
本実施形態においては、吸着部7bとして磁石を採用する構成としており、磁力によって拘束バンド35を吸着する構成としている。また、吸着部7bとしては、例えば吸盤等を採用することも可能である。
【0041】
また、図5(a)(b)に示す如く、保持部材7には、溝部7aに嵌り込んだ拘束バンド35を、より精度よく位置決めするための機構である、押圧機構9を備えている。
押圧機構9は、拘束バンド35の折り曲げ部35aをその外側面側から押圧するための機構であり、押圧部材9a、弾性部材9c等を備えている。
【0042】
押圧部材9aは、拘束バンド35を押圧するための部材であり、拘束バンド35の折り曲げ部35aの外側面に当接して、拘束バンド35を押圧するための部位である略L字状の折り曲げ部である押圧部9dを備えている。
また、押圧部材9aの押圧部9dを備える側とは反対側の端部には、弾性部材9cによる弾性力が付与される部位である係止部9bを備えている。
【0043】
そして、押圧部材9aは、保持部材7の下面に突設して形成される保持部7eによって、保持部材7の長さ方向にむけてスライド可能な状態で保持されるとともに、溝部7aに連続させて保持部材7の端部に形成された切欠き部7fにおける拘束バンド35を押圧可能な位置に押圧部9dが位置するように配置されている。
また、押圧部材9aに形成された係止部9bには、弾性部材9cによるバネ力が常時付勢されている。この弾性部材9cによるバネ力は、保持部材7の長さ方向に略平行であって、溝部7aに嵌り込んだ拘束バンド35を、立ち上がり部7c側に押圧する方向に付勢されている。
【0044】
このため、溝部7aに嵌り込んだ拘束バンド35は、押圧部材9aの押圧部9dによって、立ち上がり部7c(固定部4a)側に常時押圧される。
即ち、拘束バンド35は、溝部7aに嵌り込んだ状態においては、押圧機構9(押圧部9d)によって、常に立ち上がり部7cに対して押圧され、スタック保持機構4における固定部4a側に隙間無く寄せられた状態となるため、保持部材7上において精度良く位置決めされる。
【0045】
支持部材8は、保持部材7を支持するための部材であり、支持部材8の支持面8a上に突設される複数の弾性部材8b・8b・・・を介して、保持部材7を支持する構成としている。
弾性部材8b・8b・・・としては、例えば、バネ部材を採用することができ、弾性部材8bが弾性変形する範囲で支持部材8の変位を許容する構成としている。
【0046】
各弾性部材8b・8b・・・と保持部材7は、継手8cを介して接続されており、継手8cにより、保持部材7と弾性部材8bが成す角度を変更できる態様で支持する構成としている。
また、継手8cは、略円筒状のガイド部材8dの内部に収容されており、該継手8cが、弾性部材8bの伸縮方向(ここでは上下方向)に向けて、ガイド部材8dに沿って変位できる構成としている。
このような構成により、支持部材8の微小な位置ズレを修正したり、あるいは、支持部材8に作用する荷重を吸収したりすることを、容易に実現している。
【0047】
また、バンド保持機構5において、各保持部材7・7は、それぞれ独立した弾性部材8b・8b・・・によって、支持部材8から支持されている。
このため、各保持部材7・7は、互いに干渉されることなく個別に変位することができるため、拘束バンド35の位置ズレ等の不具合に対して、より柔軟に対応することが可能になっている。
【0048】
また、図6に示す如く、支持部材8は、支持ベース2に対して、変位機構10を介して支持される構成としている。
変位機構10は、支持面2aに対して垂直な方向(即ち鉛直方向)に変位する部位である変位部10aを備える機構であり、変位部10aにおいて支持する支持部材8を、鉛直方向(即ち、上下方向)に変位可能に支持する構成としている。
変位機構10としては、油圧シリンダや電動アクチュエータ等の種々の伸縮可能な部位を備える機構を採用することができる。
このため、支持部材8により支持されている各保持部材7は、変位機構10の動作に応じて、一体的に上下方向に変位される構成としている。
そして、変位機構10の伸長量を適切に設定することによって、保持部材7において保持されている拘束バンド35を、スタック34の下面の所定位置に精度よく宛がうことができる。
尚、変位機構10の伸長量が若干大きくても、弾性部材8bによって変位を吸収することができるため、より確実に拘束バンド35をスタック34の下面に宛がうことができる。
【0049】
また、支持部材8の下面には、複数のセンサ11・11・・・が付設されている。
センサ11は、支持部材8が水平に保持されていることを確認するために設けられており、バンド保持機構5をスタック34に宛がったときに、例えば、図7に示すように拘束バンド35が所定の位置に嵌り込まない場合には、各センサ11による検出距離等が不一致となるため、配置不良の不具合を容易に検出することができる。
尚、センサ11としては、例えば、非接触式の赤外線センサや、接触式のリミットスイッチ等、種々のセンサを採用し得る。
【0050】
このように、バンド組み付け装置1においては、スタック保持機構4およびバンド保持機構5は、いずれも支持ベース2上に付設されており、また、支持ベース2は、回転機構3によって支持されているため、スタック保持機構4およびバンド保持機構5は一体的に回転機構3の軸心X回りに回転可能に構成されている(図3(a)(b)参照)。
【0051】
次に、本発明の一実施形態に係るバンド組み付け装置1を用いたバンド組み付け方法について、図8〜図10を用いて説明をする。
バンド組み付け装置1(図3参照)を用いて拘束バンド35の組み付けを行う場合には、図8に示す如く、まず始めに、スタック保持機構4によって、各セル31・31・・・に所定の拘束力が作用するように、スタック34を所定の設計荷重Pで積層方向に挟圧する(STEP−1)。
そして、このとき(即ち、スタック34を設計荷重Pで挟圧したとき)のスタック34の長さを、制御装置12によって、当該スタック34のあるべき長さ(以下、設計長さLと呼ぶ)として知得して、設計長さLの情報を、拘束バンド35を製造するための装置であるバンド製造装置(図示せず)に送信する。
バンド製造装置(図示せず)では、バンド組み付け装置1の制御装置12から送信された当該スタック34の設計長さLの情報に基づいて、当該スタック34用の拘束バンド35を合計4本加工する(STEP−2)。
このとき加工される4本の各拘束バンド35・35・・・は、対面する折り曲げ部35a・35aの離間距離を、設計長さLに一致する距離としている。
【0052】
次に、加工された拘束バンド35・35・・・を組み付ける工程に移行する。
拘束バンド35を組み付ける工程では、スタック保持機構4によって、スタック34を設計荷重Pよりもさらに大きい荷重Qで挟圧して、スタック34の長さをさらにΔLだけ小さくする(STEP−3)。
すると、このときのスタック34の長さは(L−ΔL)となる。
【0053】
このときの差分長さΔLは、拘束バンド35に生じる寸法誤差や、拘束バンド35に孔35cを形成する際に生じるバリの高さ等を考慮して設定される。
即ち、例えば、拘束バンド35に生じる各折り曲げ部35a・35aの対面距離の寸法誤差がL±Aであり、孔35cの加工時に生じるバリの最大高さが高さBであるような場合には、長さΔLを、ΔL>(A+B)となる寸法に設定する。
【0054】
これにより、拘束バンド35とスタック34とのクリアランスを小さく抑えつつ、拘束バンド35をスタック34に向けて宛がったときに、拘束バンド35がスタック34に引っ掛かるようなことが防止でき、スタック34の所定位置に速やかに拘束バンド35を宛がうことが可能になる。
【0055】
そして、図8および図9に示す如く、スタック34の全長を(L−ΔL)まで圧縮している状態で、バンド保持機構5の変位機構10を上方に伸長させて、バンド保持機構5に保持されている拘束バンド35を、スタック34の下面に宛がって、スタック34の下側に配置される2本の拘束バンド35・35を、所定の位置に配置する(STEP−4)。
【0056】
また、このとき作業者は、スタック34の全長を(L−ΔL)まで圧縮した状態で、スタック34の上側に配置される2本の拘束バンド35・35を、所定の位置に配置する。
【0057】
そして、図8および図10に示す如く、当該スタック34用に作成した4本全ての拘束バンド35・35・・・を、所定の位置に同時に配置した状態で、作業者は、まず一側のエンドプレート32に対して、4本の各拘束バンド35・35・・・をリベット36・36・・・により組み付ける(STEP−5)。
尚、本実施形態では、エンドプレート32・33と拘束バンド35の接合方法として、リベット止めを採用する場合を例示しているが、ボルトおよびナットによる接合方法や溶接による接合方法等を採用してもよく、拘束バンドの接合方法によって、本発明に係るバンド組み付け装置およびバンド組み付け方法を限定するものではない。
【0058】
そして、一側のエンドプレート32に対する、4本の各拘束バンド35・35・・・のリベット止めが完了したら、ここで、回転機構3によって、支持ベース2を軸心X回りに180度回転させて、スタック34を前後に反転させる(STEP−6)。
【0059】
そして次に、他側のエンドプレート33に対して、4本の各拘束バンド35・35・・・をリベット36・36・・・により組み付ける(STEP−7)。
以上で、スタック34に対して、4本の拘束バンド35・35・・・を組み付ける作業を完了する。
【0060】
このように、本発明の一実施形態に係るバンド組み付け装置1を用いて、本発明の一実施形態に係るバンド組み付け方法により拘束バンド35・35・・・の組み付けを行うと、スタック34の下側にも拘束バンド35を配置することができ、4本全ての拘束バンド35・35・・・を同時に所定位置に配置できる。このため、スタック34を上下に反転させる必要がなくなり、かつ、スタック34を前後方向に180度反転させる動作を1度行うだけでよくなる。
【0061】
このため、従来に比して、スタック34に対して拘束バンド35・35・・・を組み付けるのに要する時間を短縮することが可能になるとともに、拘束バンド35の組み付けに用いる装置を、より簡易な構成とすることが可能になる。
【0062】
即ち、本発明の一実施形態に係るバンド組み付け装置1は、複数個のセル31・31・・・を積層して形成されるスタック34を、水平方向に積層するとともに、水平方向に挟圧して保持するための機構であるスタック保持機構4と、スタック保持機構4により保持されるスタック34の下方において、該スタック34を拘束するためのバンドである拘束バンド35を保持するための機構であるバンド保持機構5と、バンド保持機構5を上下方向に変位可能に支持する機構である変位機構10と、を備え、スタック保持機構4は、スタック34に付与した荷重を検出する荷重検出手段たる圧力センサ13と、スタック34の積層方向における長さを検出するスタック長さ検出手段たる制御装置12と、を備え、制御装置12は、圧力センサ13により検出する荷重が、スタック34に付与すべき所定の設計荷重Pであるときの、スタック34の積層方向における長さである第一の長さ(即ち、設計長さL)を検出し、スタック保持機構4は、スタック34に設計荷重Pよりも大きい荷重Qを付与して、設計長さL未満の長さである第二の長さ(L−ΔL)にスタック34を保持し、変位機構10は、スタック34が、長さ(L−ΔL)でスタック保持機構4により保持されている状態において、バンド保持機構5により保持されている拘束バンド35をスタック34の下面に向けて変位させて、該拘束バンド35をスタック34の下部における所定の位置に配置するものである。
【0063】
また、本発明の一実施形態に係るバンド組み付け方法は、複数個のセル31・31・・・を積層して形成されるスタック34を、水平方向に積層するとともに、水平方向に挟圧して保持するための機構であるスタック保持機構4と、スタック保持機構4により保持されるスタック34の下方において、該スタック34を拘束するためのバンドである拘束バンド35を保持するための機構であるバンド保持機構5と、バンド保持機構5を上下方向に変位可能に支持する機構である変位機構10と、を備え、スタック保持機構4は、スタック34に付与した荷重を検出する荷重検出手段たる圧力センサ13と、スタック34の積層方向における長さを検出するスタック長さ検出手段たる制御装置12と、を備えるバンド組み付け装置1によるバンド組み付け方法であって、制御装置12によって、圧力センサ13により検出する荷重が、スタック34に付与すべき所定の設計荷重Pであるときの、スタック34の積層方向における長さである第一の長さ(即ち、設計長さL)を検出し、スタック保持機構4によって、スタック34に設計荷重Pよりも大きい荷重Qを付与して、設計長さL未満の長さである第二の長さ(L−ΔL)にスタック34を保持し、変位機構10によって、スタック34が、長さ(L−ΔL)でスタック保持機構4により保持されている状態において、バンド保持機構5により保持されている拘束バンド35をスタック34の下面に向けて変位させて、該拘束バンド35をスタック34の下部における所定の位置に配置するものである。
【0064】
このような構成により、スタック34の下側において、容易に拘束バンド35を位置決めすることができる。
【0065】
また、本発明の一実施形態に係るバンド組み付け装置1は、さらに、スタック保持機構4を、鉛直方向に設定した軸心X回りに回転させることができる機構である回転機構3を備えるものである。
【0066】
また、本発明の一実施形態に係るバンド組み付け方法において、バンド組み付け装置1は、スタック保持機構4を、鉛直方向に設定した軸心X回りに回転させることができる機構である回転機構3を備え、スタック34の一端部側のエンドプレート32に拘束バンド35を固定した後に、スタック保持機構4を鉛直方向に設定した軸心X回りに180度回転させて、その後、スタック34の他端部側のエンドプレート33に拘束バンド35を固定するものである。
【0067】
このような構成により、組電池30の製造において、短時間で効率よく、スタック34に拘束バンド35を組み付けることができる。
【符号の説明】
【0068】
1 バンド組み付け装置
2 支持ベース
3 回転機構
4 スタック保持機構
5 バンド保持機構
12 制御装置
13 圧力センサ
30 組電池
31 セル
32 エンドプレート
33 エンドプレート
34 スタック
35 拘束バンド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個のセルを積層して形成されるスタックを、水平方向に積層するとともに、水平方向に挟圧して保持するための機構であるスタック保持機構と、
前記スタック保持機構により保持される前記スタックの下方において、該スタックを拘束するためのバンドである拘束バンドを保持するための機構であるバンド保持機構と、
前記バンド保持機構を上下方向に変位可能に支持する機構である変位機構と、
を備え、
前記スタック保持機構は、
前記スタックに付与した荷重を検出する荷重検出手段と、
前記スタックの積層方向における長さを検出するスタック長さ検出手段と、
を備え、
前記スタック長さ検出手段は、
前記荷重検出手段により検出する荷重が、前記スタックに付与すべき所定の設計荷重であるときの、前記スタックの積層方向における長さである第一の長さを検出し、
前記スタック保持機構は、
前記スタックに前記設計荷重よりも大きい荷重を付与して、前記第一の長さ未満の長さである第二の長さに前記スタックを保持し、
前記変位機構は、
前記スタックが、前記第二の長さで前記スタック保持機構により保持されている状態において、前記バンド保持機構により保持されている前記拘束バンドを前記スタックの下面に向けて変位させて、該拘束バンドを前記スタックの下部における所定の位置に配置する、
ことを特徴とするバンド組み付け装置。
【請求項2】
さらに、
前記スタック保持機構を、鉛直方向に設定した軸心回りに回転させることができる機構である回転機構を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載のバンド組み付け装置。
【請求項3】
複数個のセルを積層して形成されるスタックを、水平方向に積層するとともに、水平方向に挟圧して保持するための機構であるスタック保持機構と、
前記スタック保持機構により保持される前記スタックの下方において、該スタックを拘束するためのバンドである拘束バンドを保持するための機構であるバンド保持機構と、
前記バンド保持機構を上下方向に変位可能に支持する機構である変位機構と、
を備え、
前記スタック保持機構は、
前記スタックに付与した荷重を検出する荷重検出手段と、
前記スタックの積層方向における長さを検出するスタック長さ検出手段と、
を備えるバンド組み付け装置によるバンド組み付け方法であって、
前記スタック長さ検出手段によって、
前記荷重検出手段により検出する荷重が、前記スタックに付与すべき所定の設計荷重であるときの、前記スタックの積層方向における長さである第一の長さを検出し、
前記スタック保持機構によって、
前記スタックに前記設計荷重よりも大きい荷重を付与して、前記第一の長さ未満の長さである第二の長さに前記スタックを保持し、
前記変位機構によって、
前記スタックが、前記第二の長さで前記スタック保持機構により保持されている状態において、前記バンド保持機構により保持されている前記拘束バンドを前記スタックの下面に向けて変位させて、該拘束バンドを前記スタックの下部における所定の位置に配置する、
ことを特徴とするバンド組み付け方法。
【請求項4】
さらに、
前記バンド組み付け装置は、
前記スタック保持機構を、鉛直方向に設定した軸心回りに回転させることができる機構である回転機構を備え、
前記スタックの一端部に前記拘束バンドを固定した後に、前記スタック保持機構を鉛直方向に設定した軸心回りに180度回転させて、
その後、前記スタックの他端部に前記拘束バンドを固定する、
ことを特徴とする請求項3に記載のバンド組み付け方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−114752(P2013−114752A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−256863(P2011−256863)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】