説明

バンパー補修用一液水性パテ及び樹脂バンパーの補修方法

【課題】自動車のバンパー補修用パテにおいて、硬化後においても柔軟性を有する一液水性パテを得る。
【解決手段】ゴムを基材とするエマルジョンを主成分とすることで熱処理下において架橋可能とし、体質顔料を含有することで分量及び粘度を調整してバンパー補修用一液水性パテとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は補修用一液水性パテに関し、特に、自動車の前後に装着される樹脂性バンパー(PPバンパー)の損傷箇所を補修するのに適したバンパー補修用一液水性パテ及びこれを使用した樹脂バンパーの補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の構成部材である板金やプラスチック成形品は、事故等における外部からの力によって損傷することがあるが、このような場合、損傷部にパテを塗布し、これを硬化させた後に平滑化するための研磨をし、その上に塗装を施すことで補修を行う。
この種のパテとしては、促進硬化型の二液性パテが存在する。このパテは、使用直前に主剤に硬化剤を混合した後に、損傷箇所へのパテ付けを行った後に形を整えて硬化させ、研磨、塗装処理が行われる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述の二液性パテの場合、ポリエステル樹脂を基材としているので、硬化した場合において軟らかな樹脂性バンパー上を硬質なパテで被覆することになり、衝撃が加わった場合において、バンパー部分の変形に対して硬質なパテ部分が追従できずパテで補修された部分が割れ易いという問題があった。
【0004】
また、二液性パテの場合、硬化剤を反応させて使用するので、余ったパテを戻すことができず、また、主剤と硬化剤を混合させて使用するので、損傷箇所への必要量以上にパテを混合消費する傾向があった。
【0005】
その一方、例えば特許文献1に示すような一液型水性パテも提案されているが、常温中で硬化させるため、硬化するまでの時間が長く、業務用のパテとして適さないという問題点があった。
【特許文献1】特開2005−29716
【0006】
本発明は上記実情に鑑みてなされたもので、硬化した場合においても柔軟性を有することで、自動車のバンパー補修用パテとして適した一液型水性パテを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明のバンパー補修用一液水性パテは、ゴムを基材とするエマルジョンを主成分とすることで熱処理下において架橋可能とし、体質顔料を含有することで分量及び粘度を調整したことを特徴としている。
【0008】
請求項2のバンパー補修用一液水性パテは、請求項1において、スプレー塗布が可能な粘度に調整したことを特徴としている。
【0009】
請求項3の樹脂バンパーの補修方法は、ゴムを基材とするエマルジョンを主成分とする一液水性パテを樹脂バンパーの損傷部に塗布する塗布工程と、熱処理下において前記一液水性パテを架橋する架橋工程とを具備することを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明のバンパー補修用一液水性パテによれば、主剤に対して硬化剤を混合させて硬化する二液型でないため溶剤を含んでおらず、乾燥する(水分を飛ばす)だけで硬化させることができる。
【0011】
ゴムを基材とするエマルジョンで構成されているので、乾燥時においてクラックの発生を防止でき、熱処理下での架橋を可能することで、硬化速度を速くすることができる。
【0012】
ゴムを基材とするエマルジョンで構成されているので、硬化時において柔軟性を有するので樹脂バンパーの変形に対して追従でき、衝撃が加わった場合においても割れることがなく、バンパー補修用パテに適した性質を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のバンパー補修用一液水性パテの実施の形態の一例について説明する。
バンパー補修用一液水性パテは、ゴムを基材とするエマルジョンを主成分とし、体質顔料を含有して構成されている。すなわち、50重量部のゴム基材に対して、40〜55重量部の水を混合してエマルジョン化し、190〜210重量部の体質顔料を含有させることで、全体の分量を増量させるとともに、へらで塗布可能な粘度を有するバンパー補修用一液水性パテを得る。
【0014】
体質顔料は、全体の分量を増加させること、粘度を調整すること、硬化時における良好な研磨性を確保すること、を目的に使用されるものである。
すなわち、バンパー補修用一液水性パテの粘度は、体質顔料の量を調整することで、全体量を調整するとともに、容器やチューブに充填可能とし、へらを用いて樹脂バンパーに塗布し易い粘度に調整することができる。
また、溶剤を含有していないため、樹脂成型の自動車バンパーの樹脂表面に塗布した場合において、膜の下層と上層との間で乾燥が一様に進行しクラックの発生が生じ難くすることができる。
【0015】
バンパー補修用一液水性パテは、低分子構造を有するゴムを基材とするエマルジョンで構成することにより、乾燥時において収縮が生じずクラックの発生を防止できるとともに、熱処理下での架橋を可能することで、硬化の速度を速くすることができる。すなわち、本発明の一液水性パテは、常温で架橋する場合は4時間程度の時間が必要であるが、熱処理下で架橋させることで早期の硬化が可能となり、作業性の向上を図ることができる。
また、バンパー補修用一液水性パテは、ゴムを基材とするエマルジョンで構成されているので、硬化した後においても柔軟性を有することで、外力による衝撃が加わった場合にその衝撃をある程度吸収するとともに、樹脂バンパーの変形に対して追従でき、衝撃が加わった場合においてもパテ部分が割れることがない。
【0016】
上記したバンパー補修用一液水性パテの使用方法について説明する。
樹脂バンパーの損傷箇所を覆うようにへら等により補修用一液水性パテを塗布し(塗布工程)、1mm〜2mm程度の膜厚となるように形状を整える。乾燥用ランプにより熱処理(60℃ 20分)を行い、パテを硬化させる(架橋工程)。続いて硬化したパテを研磨して、損傷前のバンパー形状に復元する(研磨工程)。その後にパテ硬化部分を含む周囲に塗装を施し(塗装工程)、補修作業を完了する。
【0017】
上述のバンパー補修用一液水性パテは、へらにより塗布するような粘度のものを使用したが、体質顔料の含有量を調整することでスプレー塗布が可能な粘度に調整し、スプレー塗布可能なようにしてもよい。この場合、樹脂バンパーの損傷箇所を覆うように複数回の噴霧によるスプレーで塗膜を形成(塗布工程)してから上記同様の処理(架橋工程、研磨工程、塗装工程)で補修作業を行う。
【実施例】
【0018】
バンパー補修用一液水性パテの具体例について説明する。
(へら塗布用パテ)
バンパー補修用一液水性パテとして、下表の材料及び配合で作成したものを使用した。
このバンパー補修用一液水性パテは、へらによりバンパーの損傷箇所に塗布し、60℃の熱処理下で20分で硬化し、クラックの発生もなかった。
【0019】
(表1)
ゴムエマルジョン 100重量部
体質顔料(増量剤) 200重量部
【0020】
ゴムエマルジョンは、ゴム基材(ゴム固形分)をエマルジョン化したもので、ゴム基材(固形分)50部に対して40〜55重量部の水分を含んでいる。
体質顔料としては、炭酸カルシウム、タルク等、通常使用されるものを用いる。
また、バンパー補修用一液水性パテにカルボキシル基を含有させることで、耐溶剤性を高めることでき、パテ上に塗布される塗料がパテ部に浸透するのを防止することで塗料の光沢状態を維持することが可能となる。
【0021】
(スプレー塗布用パテ)
スプレー塗布可能なバンパー補修用一液水性パテとしては、下表の材料及び配合で作成したものを使用した。
このバンパー補修用一液水性パテは液体で構成され、バンパーの損傷箇所にスプレーにより噴霧して塗布することで1〜2mmの膜厚とし、60℃の熱処理下で20分で硬化し、クラックの発生もなかった。
【0022】
(表2)
ゴムエマルジョン 100重量部
体質顔料(増量剤) 140重量部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴムを基材とするエマルジョンを主成分とすることで熱処理下において架橋可能とし、体質顔料を含有することで分量及び粘度を調整したことを特徴とするバンパー補修用一液水性パテ。
【請求項2】
スプレー塗布が可能な粘度に調整した請求項1に記載のバンパー補修用一液水性パテ。
【請求項3】
ゴムを基材とするエマルジョンを主成分とする一液水性パテを樹脂バンパーの損傷部に塗布する塗布工程と、熱処理下において前記一液水性パテを架橋する架橋工程とを具備することを特徴とする樹脂バンパーの補修方法。

【公開番号】特開2006−291108(P2006−291108A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−116293(P2005−116293)
【出願日】平成17年4月13日(2005.4.13)
【出願人】(394012980)メグロ化学工業株式会社 (6)
【Fターム(参考)】