説明

バーコード付マニフェストとこれを用いた産業廃棄物処理情報管理システム

【課題】マニフェストへの入出力操作を容易にしマニフェストに係る事務処理を簡素化するとともに、正確さを期して信頼性を向上させる。
【解決手段】複数頁複写式マニフェストの表または裏、およびそれ以外の所定頁の所定箇所に交付番号とマニフェストの各頁を特定するバーコード(領域1G参照)を記録した図示のようなマニフェスト1を用い、そのバーコードを読取手段で読み取って、産業廃棄物処理に必要なデータをマスターデータとして記憶した計算機に入力することにより、排出事業者または事業場に固有の運搬受託者,運搬先事業場および処分受託者を含む情報を印刷できるようにし、キーボード入力による従来操作を不要として印刷作業を容易にし正確さを期する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、バーコード付マニフェストおよびこれを用いた産業廃棄物処理情報管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
産業廃棄物処理は、マニフェストで管理することが法律で義務付けられており、マニフェスト管理のための出願も種々なされている(例えば特許文献1,2参照)。
このマニフェスト制度は、産業廃棄物(産廃とも略記する)の処理を委託する際に渡されるいわゆるマニフェストに、少なくとも産業廃棄物の種類,数量,運搬委託名,処分委託者名を記入し、業者から業者へ産業廃棄物とともにマニフェストを渡しながら、処理の流れを確認するシステムで、それぞれの処理後に、排出事業者が各業者から処理終了を記載したマニフェストを受け取ることで、委託内容通りに廃棄物が処理されたことを確認できるようにし、これによって不適正な処理による環境汚染や、社会問題ともなっている不法投棄を未然に防ぐことを目的とするものである。
【0003】
【特許文献1】特開2002−215767号公報
【特許文献2】特開2003−212304号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、運搬委託者はマニフェストの「排出事業者または事業場」,「運搬受託者」,「運搬先事業場」,「処分受託者」,「積替え又は保管」等の項目を予め印刷して、排出事業者または事業場に赴くわけであるが、排出事業者または事業場は数十から数百、場合によっては数千に及ぶことがあり、また印刷項目も複数項目にわたるため、その組合わせも考慮すると膨大な量の印字が必要となるが、従来はこれをキーボードにより一々入力して印字しているため、多大の労力や時間を要するだけでなく、ミスも発生し易く正確さを期し難いという問題がある。
【0005】
また、マニフェストには確認,保存義務があるため、保管元別に分類したり、保管元へ送り状を送付したりする作業が必要であるが、これらの作業も煩雑で長時間を要するという問題、さらには、運搬委託者が排出事業者または事業場から処理費用(運搬費,処分費)を受け取ったときに発行する領収書及び有価物を含む廃棄物を受け取ったときに発行する支払書の作成についても、多大の労力や時間を必要とするという問題もある。
したがって、この発明の課題は、マニフェストへの入出力操作を容易にしマニフェストに係る事務処理を簡素化するとともに、正確さを期して信頼性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を解決するため、請求項1の発明では、産業廃棄物処理に当って用いられる複数頁複写式マニフェストの表または裏、およびそれ以外の所定頁の所定箇所に、交付番号とマニフェストの当該頁を特定するバーコードを記録しておくことを特徴とする。
請求項2の発明では、産業廃棄物処理に当って用いられる複数頁複写式マニフェストの表または裏、およびそれ以外の所定頁の所定箇所に交付番号とマニフェストの当該頁を特定するバーコードを記録したマニフェストと、このマニフェストの前記バーコードを読み取る読取装置と、産業廃棄物処理に必要なデータをマスターデータとして記憶した計算機とを設け、前記読取手段で読み取った情報を計算機に入力することにより、排出事業者または事業場,運搬受託者,運搬先事業場および処分受託者を含む情報を組にして印刷可能にしたことを特徴とする。
【0007】
上記請求項2の発明においては、前記バーコードを読み取るとともに所定の操作をすることにより、選択された排出事業者に固有の産業廃棄物の種類,処理方法および荷姿情報の少なくとも1種類の情報を、バーコードで一覧表示するバーコード表を印刷可能にすることができ(請求項3の発明)、または、前記排出事業者と、排出事業者に固有の産業廃棄物の種類,処理方法および荷姿情報等の情報をバーコードで一覧表示するバーコード表を用意しておき、前記マニフェストのバーコードとバーコード表の該当箇所とを読取手段にて読み取ることにより、排出事業者とこの排出事業者に固有の産業廃棄物の種類,処理方法および荷姿情報の少なくとも1つを特定して入力可能にすることができる(請求項4の発明)。この請求項4の発明においては、前記読取手段のほかに入力手段を設け、前記産業廃棄物の数量を入力可能にすることができ(請求項5の発明)、この請求項5の発明においては、前記入力手段を携帯情報端末とすることができる(請求項6の発明)。
【0008】
上記請求項6の発明においては、前記携帯情報端末に前記計算機のマスターデータの一部を転送し、計算機から離れた場所で排出事業者に関する情報の収集を可能にすることができ(請求項7の発明)、これら請求項6または7の発明においては、印字手段を設け、排出事業者とこの排出事業者に固有の産業廃棄物の種類,処理方法および荷姿情報の少なくとも1種類の情報が特定され、産業廃棄物の数量が入力されたときは、領収書,支払書またはこれらに関連する書類を発行可能にすることができる(請求項8の発明)。
上記請求項1〜7のいずれかの発明においては、前記各マニフェストのバーコードを読み取り履歴データとして管理しておくことにより、管理票,送付状の印刷をすることができる(請求項9の発明)。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、排出事業者のマニフェスト番号を示すバーコードを付したマニフェストを利用することにより、特に従来キーボードで入力していた操作を不要にでき労力や時間が大幅に短縮できるだけでなく、入力ミスも著しく少なくなり信頼性が向上する。また、産業廃棄物処理に関する諸々の事務処理が容易となり、処理スピードを上げることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1はこの発明の実施の形態を示す構成図である。
これは、この発明で用いるマニフェストの例を示す。同図からも明らかなように、複数頁(例えばA票,B1票,B2票,C1票,C2票,D票,E票の7枚)複写式マニフェスト1の各頁の所定箇所(図1ではB2票の右下隅)に、排出事業者のコード番号(マニフェスト番号または交付番号)だけでなく、マニフェストの各票または頁(例えばA,B1票…のいずれか)を特定するバーコードをそれぞれ記録したものである。このように、排出事業者のコード番号とマニフェストの各票または頁とを特定するバーコードが予め付与されたマニフェスト用いることで、産業廃棄物処理に係る作業を容易かつ正確にするものである。
【0011】
なお、図1の1Aは排出事業者(名称,住所,電話番号)、交付年月日、および交付担当者を記入する欄、1Bは実際に産業廃棄物を出す場所の名称,住所,電話番号を記入する排出事業場欄、1Cは産業廃棄物の種類の該当する項目にマークを入れるとともに名称,数量,荷姿,処分方法を記入する産業廃棄物欄、1Dは産業廃棄物を運搬する業者の名称,住所,電話番号の記入欄、1Eは産業廃棄物が搬入される処分委託者の処分事業場の名称,所在地,電話番号の記入欄(中間処理を行なう場合は中間処理委託者の名称,所在地,電話番号を記入)、1Fは産業廃棄物を処分する業者の名称,住所,電話番号の記入欄、1Gはバーコード記録欄をそれぞれ示す。バーコード記録欄は、各票の適宜な位置にすることができる。
【0012】
図2はこの発明におけるマニフェストの流れを説明する説明図である。
図1で説明したようにマニフェストは例えば7枚複写式となっており、ここでは運搬委託者から排出事業者,中間(最終)処分者へと交付するものとする。まずA票を排出事業者の保管用とし、B1票は自分の保管用、B2票を排出事業者に運搬終了を報告する返送用とし、残るC1票,C2票,D票,E票を中間(最終)処分者へと交付する。中間(最終)処分者はC1票を保管用とし、C2票,D票,E票を処分終了を報告する返送用としてC2票は運搬委託者へ、D票,E票は排出事業者へとそれぞれ返送する。なお、ここでは、バーコードは原則的に全ての票に付されるが、交付番号は共通としても各票の区別もするので、当然各票ごとに異っている。
【0013】
図3はこの発明の別の実施の形態を説明する説明図で、図1のようなバーコード付マニフェストを用いた産業廃棄物処理情報管理システムを示す。
これは、例えば運搬委託者が図示されない計算機に対して行なう作業または操作を説明するもので、11は初期準備作業時(システム導入時)に行なわれる、産業廃棄物処理に必要な各種データ(マスターデータ)の登録作業を示している。このマスターデータとしては、例えば「排出事業者または事業場」,「運搬受託者」,「運搬先事業場」,「処分受託者」,「積替え又は保管」,「廃棄物種類」,「運搬荷姿」,「処分方法」および「取引単価」などがある。
【0014】
ここでは、バーコードリーダ(読取装置)の機能を有する携帯情報端末を利用するものとし、符合12では、この携帯情報端末に対し、マスターデータの一部である「排出事業者または事業場」,「廃棄物種類」,「運搬荷姿」,「処分方法」および「取引単価」などの情報を転送する。これは、運搬受託者が携帯情報端末を携行して排出事業者または事業場に赴き、そこで操作を行なうに当って必要な情報を保持させるものである。なお、携帯情報端末の代わりに、バーコードリーダと入力装置とを別々に設けるようにしても良いのは言うまでもない。
【0015】
また、符号13はマニフェストの印刷業務で、上記携帯情報端末によりマニフェストのバーコードを読み取り、「排出事業者または事業場」,「運搬受託者」,「運搬先事業場」,「処分受託者」,「積替え又は保管」を印刷するもので、排出事業者または事業場対応のバーコードを読み取ったときに、「運搬受託者」,「運搬先事業場」,「処分受託者」,「積替え又は保管」を組として印刷するプログラムを用意しておくにより、簡単に実現することができる。このために、バーコードリーダを設けるか、読取機能付き携帯情報端末が必要となる。
【0016】
符号14はバーコード表の印刷作業を示し、マスターデータ内のデータから排出事業者または事業場の名称,廃棄物の種類,処理の方法および運搬荷姿などのコードを印刷する。なお、上記マニフェストの印刷と区別するために、テンキー入力など何らかの追加または選択的な操作が必要である。
図4に排出事業者または事業場がX病院(コード番号は“633”で、そのバーコードが右上欄に示されている)の場合のバーコ−ド印刷例を示す。廃棄物には感染性廃棄物,廃アルカリなど、処理方法には焼却,中和など、また、運搬荷姿には20Lペール缶や45LHビニール(半透明)などの項目がそれぞれバーコードで表わされている。「廃棄物種類」,「処理方法」および「運搬荷姿」のバーコ−ド全てではなく、すくなくとも1種類(例えば廃棄物種類のみ)のバーコードを印刷するだけでも良いのは勿論である。
【0017】
図5はこの発明のさらに別の実施の形態を説明する説明図で、排出事業者または事業場内での運搬委託者による作業を示している。21は運搬委託者がマニフェスト,バーコード表および携帯情報端末を、排出事業者または事業場内へ持参する作業を示し、22は運搬廃棄物の搭載作業を示している。マニフェスト,バーコード表および携帯情報端末を持参したことにより、バーコード表およびマニフェストのバーコードの読み取りと、運搬廃棄物の数量を携帯情報端末のキーボード(テンキー)から入力する携帯情報端末操作1(23)が可能になる。また、廃棄物の数量に携帯情報端末へ予め転送された取引単価から、廃棄物処理費の請求金額及び廃棄物に含まれる有価物の支払金額が計算されるので、印刷装置を予め用意しておけば、排出事業者からの入金により領収書を発行すること、運搬委託者の支払いにより支払書を発行することが可能である(24:携帯情報端末操作2)。
【0018】
図6はこの発明の他の実施の形態を説明する説明図である。
以上のようにして、運搬委託者の排出事業者または事業場内での廃棄物収集と、情報収集を含む操作,作業とが終了すると、運搬委託者は携帯情報端末を持ち帰り(31)、通信装置やインタフェースに結合させることにより(32)、排出事業者または事業場内で収集した情報を計算機に自動的に入力でき(33)、これに基き実績表(管理表),法定報告書,請求書等を簡単に作成することができる(34:データ処理)。
【0019】
なお、35はマニフェストへの保管元への送付日の記入作業、36,37はマニフェスト送付状,マニフェスト管理表の作成作業をそれぞれ示している。つまり、日付けを付された一連のマニフェストのバーコードをリーダにて次々に読み取ることにより、全てのマニフェストの履歴データを計算機に格納することができ、したがって図7のような管理表の作成や、図8のような業者別の送付状の作成が容易になると言うわけである。
【0020】
以上の処理を概念的に示すと、図9のようになる。
すなわち、図9(a)はバーコードリーダを併用した一連のマニフェストのデータ入力作業を、同(b)は履歴データの検索操作を、また同(c)は帳票(管理表,送付状)の作成・印刷作業を示している。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の実施の形態を説明する説明図
【図2】マニフェストの流れ説明図
【図3】この発明の別の実施の形態を説明する説明図
【図4】バーコ−ド表の例を示す説明図
【図5】この発明のさらに別の実施の形態を説明する説明図
【図6】この発明の他の実施の形態を説明する説明図
【図7】管理表のサンプル図
【図8】送付状のサンプル図
【図9】マニフェストの履歴管理を説明する概念図
【符号の説明】
【0022】
1…マニフェスト、1G…バーコード記録欄、11…マスターデータの登録、12…マスターデータの転送、13…マニフェストの印刷、14…バーコード表の印刷、23…携帯情報端末操作1、24…携帯情報端末操作2、32…携帯情報端末データの転送、33…運搬データ入力、34…データ処理。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業廃棄物処理に当って用いられる複数頁複写式マニフェストの表または裏、およびそれ以外の所定頁の所定箇所に、交付番号とマニフェストの当該頁を特定するバーコードを記録しておくことを特徴とするバーコード付マニフェスト。
【請求項2】
産業廃棄物処理に当って用いられる複数頁複写式マニフェストの表または裏、およびそれ以外の所定頁の所定箇所に交付番号とマニフェストの当該頁を特定するバーコードを記録したマニフェストと、このマニフェストの前記バーコードを読み取る読取装置と、産業廃棄物処理に必要なデータをマスターデータとして記憶した計算機とを設け、前記読取手段で読み取った情報を計算機に入力することにより、排出事業者または事業場,運搬受託者,運搬先事業場および処分受託者を含む情報を組にして印刷可能にしたことを特徴とするバーコード付マニフェストを用いた産業廃棄物処理情報管理システム。
【請求項3】
前記バーコードを読み取るとともに所定の操作をすることにより、選択された排出事業者に固有の産業廃棄物の種類,処理方法および荷姿情報の少なくとも1種類の情報を、バーコードで一覧表示するバーコード表を印刷可能にしたことを特徴とする請求項2に記載のバーコード付マニフェストを用いた産業廃棄物処理情報管理システム。
【請求項4】
前記排出事業者と、排出事業者に固有の産業廃棄物の種類,処理方法および荷姿情報等の情報をバーコードで一覧表示するバーコード表を用意しておき、前記マニフェストのバーコードとバーコード表の該当箇所とを読取手段にて読み取ることにより、排出事業者とこの排出事業者に固有の産業廃棄物の種類,処理方法および荷姿情報の少なくとも1つを特定して入力可能にしたことを特徴とする請求項2に記載のバーコード付マニフェストを用いた産業廃棄物処理情報管理システム。
【請求項5】
前記読取手段のほかに入力手段を設け、前記産業廃棄物の数量を入力可能にしたことを特徴とする請求項4に記載のバーコード付マニフェストを用いた産業廃棄物処理情報管理システム。
【請求項6】
前記入力手段は携帯情報端末であることを特徴とする請求項5に記載のバーコード付マニフェストを用いた産業廃棄物処理情報管理システム。
【請求項7】
前記携帯情報端末に前記計算機のマスターデータの一部を転送し、計算機から離れた場所で排出事業者に関する情報の収集を可能にしたことを特徴とする請求項6に記載のバーコード付マニフェストを用いた産業廃棄物処理情報管理システム。
【請求項8】
印字手段を設け、排出事業者とこの排出事業者に固有の産業廃棄物の種類,処理方法および荷姿情報の少なくとも1種類の情報が特定され、産業廃棄物の数量が入力されたときは、領収書,支払書またはこれらに関連する書類を発行可能にすることを特徴とする請求項6または7に記載のバーコード付マニフェストを用いた産業廃棄物処理情報管理システム。
【請求項9】
前記各マニフェストのバーコードを読み取り履歴データとして管理しておくことにより、管理票,送付状の印刷を可能にしたことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のバーコード付マニフェストを用いた産業廃棄物処理情報管理システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−263976(P2006−263976A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−81940(P2005−81940)
【出願日】平成17年3月22日(2005.3.22)
【出願人】(505103585)株式会社 タカヤナギ (1)
【出願人】(505104777)株式会社 エムシービー (4)
【出願人】(505104788)株式会社 リバティーシステム (2)
【Fターム(参考)】