説明

バーチャルスタッフ写真寸法管理方法

【課題】 スタッフ設置の手順を削減し、かつ効率的に寸法管理可能な工事写真情報を提供する。
【解決手段】 工事写真に仮想のスタッフを写し込んで写真の寸法を管理するバーチャルスタッフ写真寸法管理方法であって、予め寸法を計測し縦方向及び横方向の寸法が既知の白板又は黒板とともに工事写真を撮影し、撮影した画像内に白板又は黒板の位置を指定し、指定された位置に基づき撮影した画像を正射投影画像に変換し、正射投影画像内に白板又は黒板の寸法を基準にした仮想のスタッフ像を写し込むことにより、撮影した工事写真の寸法を管理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工事写真に仮想のスタッフを写し込んで写真の寸法を管理するバーチャルスタッフ写真寸法管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図4は従来のスタッフ写し込み写真の例を示す図、図5は従来のスタッフ内装法を説明する図、図6は従来のカメラ焦点距離法を説明する図である。
【0003】
建設現場での施工状況を撮影する際、図4に示すように場所や部位などを記した白板と長さを示す目安として物差し(スタッフ)を写し込むことが通例となっている。
【0004】
しかし、写真撮影時のスタッフの設置は手間がかかり、また、配置場所も限られる。特に工事写真撮影の場合、撮影時間も限られる場合が多く、スタッフの再配置などはできるだけ迅速に行い撮影を終了させなくてはならない。
【0005】
このような手間をできるだけ避けるための提案として、工事用黒板のように黒板内にスケールを内装させる図5の方法(例えば、特許文献1参照)や、カメラの焦点距離に応じてファインダ内やフイルムに寸法を写し込む図6の方法(例えば、特許文献2参照)などの提案がある。
【特許文献1】特開平07−159248号公報
【特許文献2】特開平03−316691号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、黒板にスケールを内装させる方法では、スタッフを設置する場所が黒板周辺に限定されてしまうため、利用できる箇所が床や壁などとかなり限定を受けることになる。また、カメラの焦点距離により対象の大きさを推定しフイルムに寸法を写し込む方法では、対象までの距離計測において基本的な精度が低く、工事写真のような寸法精度を求められる写真には不向きと言える。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するものであって、スタッフ設置の手順を削減し、かつ効率的に寸法管理可能な工事写真情報を提供するものである。
【0008】
そのために本発明は、工事写真に仮想のスタッフを写し込んで写真の寸法を管理するバーチャルスタッフ写真寸法管理方法であって、予め寸法を計測し縦方向及び横方向の寸法が既知の部材とともに工事写真を撮影し、前記撮影した画像内に前記寸法が既知の部材の位置を指定し、前記指定された位置に基づき前記撮影した画像を正射投影画像に変換し、前記正射投影画像内に前記既知の部材の寸法を基準にした仮想のスタッフ像を写し込むことにより、前記撮影した工事写真の寸法を管理することを特徴とする。
【0009】
前記寸法が既知の部材は、白板又は黒板であり、前記仮想のスタッフ像は、像自体の透明度を変えて写し込み、前記仮想のスタッフ像を写し込んだ正射投影画像を前記撮影した工事写真の画像に逆変換することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、工事写真撮影の際にスタッフを設置する必要がなくなり、スタッフ設置の手間を省き、工事写真の撮影を簡便に行うことができる。しかも、撮影は作業の合間を縫って頻繁に行う必要があるが、臨機応変に撮影を行うことができ、作業員の肉体的・精神的負担も大幅に軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。図1は本発明に係るバーチャルスタッフ写真寸法管理方法の実施の形態を説明する図、図2は撮影された工事写真の画像を正射投影画像に変換するまでの画像の例を示す図、図3は仮想スタッフを写し込んだ写真画像の例を示す図である。
【0012】
図1において、画像入力部1は、カメラで撮影された工事写真の画像を入力するものであり、位置入力部2は、画像入力部1で入力された撮影画像内に位置及び寸法を入力するものである。画像変換部3は、位置入力部2で撮影画像内に入力された位置及び寸法に基づき撮影画像を正射投影画像に変換するものである。スタッフ写し込み部4は、正射投影画像にピッチを表す補助線などを含む仮想スタッフを写し込んで、さらにその透明度を変え、スタッフ像の回転操作を行うものである。写真寸法管理部5は、仮想のスタッフ像を写し込んだ工事写真を撮影時の画像、あるいは正射投影に変換した画像で格納し保管するものである。
【0013】
寸法を把握するために写し込むスタッフは、基本的には写真内に写されている対象の大きさを写真情報だけから推定するために設置されるものである。そのため従来は長さが既知の大きさのスタッフを工事写真の撮影のときに写し込んでいる。つまり、大きさが既知であれば写し込む対象は何でも良い。
【0014】
工事写真の場合、スタッフ以外に黒板を写し込むことになっているので、本実施形態では、この黒板の大きさをもとに寸法の推定も行うものであり、しかも、黒板の場合には、長方形であることが一般的で、直角方向の軸を推定することからその黒板を含む平面の全てを正射投影に変換して再現することができる。以下、その手順を説明する。
【0015】
まず、予め寸法を計測し縦方向及び横方向の寸法が既知の白板又は黒板(以下、黒板という)とともにスタッフのない状態で図2(A)に示すような工事写真を撮影する。この写真画像を入力すると、適宜必要に応じて画像レンズの歪みを補正する。その後、図2(B)に示すように黒板の角(隅)の位置を画像内に指定することにより、その位置を基に、黒板を含む画像を図2(C)に示すような正射投影画像に変換する。これらの処理により、画像は、縦方向及び横方向共に正確な寸法を再現した一定の縮尺の画像となる。
【0016】
次に、この正射投影画像において寸法を示す印として仮想のスタッフ(バーチャルスタッフ)の像を図3(A)に示すように写し込む。これを画像処理による幾何補正を行い、撮影した元の工事写真の画像に逆変換して仮想スタッフを写し込んでいるかのような画像に戻した例を示したのが図3(B)である。この仮想スタッフの位置は、任意の位置に設定することができる。
【0017】
図に示す例は床面の画像であるため、仮想スタッフをどこにおいてもあまり差異はない。しかし、例えば梁や柱の場合には、対象自体にスタッフの像がかぶらないように配置される。また、ピッチを表す補助線などの表示も任意に設定される。仮想スタッフの特徴として、さらにその像自体の透明度を変え、仮想スタッフの下の像を薄く見えるようにしてもよい。このように仮想のスタッフの像を任意の位置に写し込むため、スタッフの像自体を回転させることも可能である。
【0018】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば上記実施の形態では、黒板を含む画像を正射投影画像に変換するために黒板の角(隅)の位置を画像内に指定したが、中間位置や黒板内の特定の位置を指定してもよいし、また、撮影する工事写真の画像に縦方向及び横方向の寸法が既知の部材、例えば構造枠などが含まれる場合には、黒板に代えてその構造枠を利用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係るバーチャルスタッフ写真寸法管理方法の実施の形態を説明する図である。
【図2】撮影された工事写真の画像を正射投影画像に変換するまでの画像の例を示す図である。
【図3】仮想スタッフを写し込んだ写真画像の例を示す図である。
【図4】従来のスタッフ写し込み写真の例を示す図である。
【図5】従来のスタッフ内装法を説明する図である。
【図6】従来のカメラ焦点距離法を説明する図である。
【符号の説明】
【0020】
1…画像入力部、2…位置入力部、3…画像変換部、4…スタッフ写し込み部、5…写真寸法管理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工事写真に仮想のスタッフを写し込んで写真の寸法を管理するバーチャルスタッフ写真寸法管理方法であって、
予め寸法を計測し縦方向及び横方向の寸法が既知の部材とともに工事写真を撮影し、
前記撮影した画像内に前記寸法が既知の部材の位置を指定し、
前記指定された位置に基づき前記撮影した画像を正射投影画像に変換し、
前記正射投影画像内に前記既知の部材の寸法を基準にした仮想のスタッフ像を写し込むことにより、前記撮影した工事写真の寸法を管理することを特徴とするバーチャルスタッフ写真寸法管理方法。
【請求項2】
前記寸法が既知の部材は、白板又は黒板であることを特徴とする請求項1記載のバーチャルスタッフ写真寸法管理方法。
【請求項3】
前記仮想のスタッフ像は、像自体の透明度を変えて写し込むことを特徴とする請求項1記載のバーチャルスタッフ写真寸法管理方法。
【請求項4】
前記仮想のスタッフ像を写し込んだ正射投影画像を前記撮影した工事写真の画像に逆変換することを特徴とする請求項1記載のバーチャルスタッフ写真寸法管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−135862(P2006−135862A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−325039(P2004−325039)
【出願日】平成16年11月9日(2004.11.9)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】